【課題を解決するための手段】
【0012】
<基本形状>
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、回転軸体と、前記回転軸体の周りを回転する翼型の横断面を有し前記回転軸体の軸方向に沿って対数螺旋状で変化するように形成されたブレードと、前記回転軸体と前記ブレードとを連結する腕部とを備えて構成される。即ち、たとえば
図1に示されるように(ただし
図1に示されるものに限定されるものではない。以下同様に、本「課題を解決するための手段」項において、「たとえば」の後に図面を示す場合、本発明の態様は当該示された図面に限定されるものではない)、回転軸体と、たとえば
図2に示すように回転軸体の長さ方向を翼幅とし、たとえば
図3に示すようにブレードの回転円周方向の長さを翼弦とする翼型の断面を持つブレードが円板状の台座や水平方向に伸ばした腕部などで回転軸体に連結される垂直軸型螺旋タービンの形状として構成される。そのブレードは、たとえば
図2に示すように、翼端が翼根元に対して後退するように後退角を持ちつつ、
図3に示すように回転軸からの半径を翼根元から翼端側に広げる拡大角θ(0度<θ<90度)によって、ほぼ対数螺旋状の前縁及び後縁を持つ形状とする。拡大角θは対数螺旋のピッチと同意である。
【0013】
<基本形状の特徴と形状全体による効果>
上記の構成を持つ垂直軸型対数螺旋タービンは、従来のヘリカルタービン同様に後退角を有しているため、流体の流れに対してブレードの断面のいずれかが常時最適な位置になることが保証され、タービンの自己起動を容易にし、回転を安定させることができる。さらに垂直軸型対数螺旋タービンは拡大角θによってブレード全体が翼根元から翼端側に回転半径が広がるように傾斜を持っているため、前縁または後縁の長さは翼幅÷signθで求められることになり、同一スケールの翼幅及び回転半径の従来の直線翼タービンやヘリカルタービンに比べ、前縁及び後縁の長さが長くなる。これはブレード1枚あたりの面積を拡張することになるため、抗力と揚力とを問わずに受風によるエネルギーの獲得に有利となる。よって、タービンの初動時に特に必要となる抗力の増大によって初期の起動性が高まると同時に、揚力の増大によって回転時のトルクを増大することが期待できる。
【0014】
<基本形状における流体の流れによる効果>
上記構成を有する垂直軸型対数螺旋タービンは、前述の通り翼根元から翼端に向けて回転半径が広がることになるので、常に翼端側の周速が翼根元よりも速くなる。すなわち翼表面の流れの速度は常に翼端側が翼根元側よりも速くなる。ベルヌーイの定理により流体の速度が増加すると圧力は降下するので翼端側が翼根元側よりも負圧となる。ここで翼端側は翼根元よりも回転軸に対して後退しているため、たとえば
図4Bに示されるように、正圧側の翼根元より負圧側の翼端に向けての2次的な流れが生じることになる。
【0015】
特に垂直軸タービンにおいて大きな揚力を発生させる回転角位相(時計周りの回転方向の場合は2時から4時の間に相当する回転角位相)では周速の差によって発生する圧力差から生じる流体の流れと、タービンに流入する一様の流れとが合成されることにより、翼の上面及び下面表面の流れが常に翼端側に引き上げられつつ加速することになる。タービンに流入する流体の流れが元々は水平であると仮定した場合、従来の垂直軸型タービンはその流れを二次元的に水平のままタービン後方に流していくが、垂直軸型対数螺旋タービンでは、前述の負圧による引き上げ効果と傾斜角とによって、流れが後ろ斜め上方に三次元的に傾くことが予測される。これは流体が単一時間内に翼表面のより長い距離に対して働きかけを行ったことになる。
【0016】
この効果は翼弦長を長くして揚力を増やすことと同じであるとも言えるが、実際には翼弦長を伸ばしていないためタービンへの流体の流入量を減らすことがない。一般にタービンの出力エネルギー量Pは[数1]式に示すとおり回転角速度ω[rad/s] とトルクQ[Nm]とによって求められる。また、風車において受風面積に対する実際の翼の持つ表面積の占める割合をソリディティと言うところ、ソリディティと回転角速度、トルクには以下の[表1]の関係があるとされる。すなわちトルク増大のためにはソリディティの増大(翼弦長の拡大)が必要となり、それに伴い時間あたりのタービンへの流体の流入量が減るため回転角速度が減少する。つまり、トルクと回転角速度とはソリディティを介して相反する関係にあるわけである。この点において、本発明ではソリディティを増大させないようにするために回転角速度は減少させずに、流体の流れを三次元的に傾けることで揚力の働く面を拡大してトルクを増大させることを企図している。つまり風車の出力エネルギー量を求める式[数2]におけるエネルギー変換効率Cpを高めていることになる。
【0017】
【数1】
【0018】
【表1】
【0019】
【数2】
【0020】
<基本形状の変形要素及び変形例>
この基本形状は、翼型の形状(前縁半径の大きさや、翼弦長など)と翼幅の長さ、ヘリカルタービンにて導入された後退角、そして本発明で導入された半径の拡大角θという概念的要素を備えて構成される。ここにおいて、前述の対数螺旋による効果を得るためには、翼の一部に基本形状が取り入れられていれば良い。翼の性能は設置される環境や発電機などの特徴によって、トルクを増大させた方が有利な場合と回転速度を増大させた方が有利な場合とがある。これは主に翼弦長の調整によって、ソリディティを変化させることで実現可能であるが、翼弦長や後退角は必ずしも固定である必要はない。例えば、後退角と水平断面におけるソリディティとを固定とした場合、たとえば
図5Aにその一例を示すが、翼根元から翼端に向かって翼弦長が大きくなる形状となる。また、前縁の後退角と翼弦長とを固定とした場合、たとえば
図5Bにその一例を示すが、後縁の後退角はおのずと小さくなる。翼端に向かうに従って、翼弦長を小さくする、いわゆるテーパー形状を形成する場合、たとえば
図5Cにその一例を示すが、前縁の後退角を翼端に向けて次第に大きくするか、後縁の後退角を次第に小さくすることになる。
【0021】
翼弦長や後退角の調整だけではなく、拡大角θ(=対数螺旋のピッチ)を翼幅の途中で変更することもできる。例えば、拡大角θを0度とした場合は、従来の直線翼型タービンやヘリカルタービンと同一形状となるが、これと対数螺旋状の形状とを組み合わせた形状は回転半径を一定程度に留めながら翼幅の長さを拡大させる手段として有効である。対数螺旋状の形状を翼根元側や翼端側、またはその両方として、従来の直線翼型タービンやヘリカルタービンと接合させることや、その逆パターン、接合を交互に繰り返すことが可能である。たとえば
図6ではeの部分がヘリカルタービンと同じθ=0度となっている。
【0022】
<スリットの導入による効果>
本発明の第2の態様として、本発明の第1の態様において、前記ブレードが前記翼型の翼幅の方向に形成された1又は2以上のスリットを備える構成としても良い。一般に風向きが安定している場合においては、水平軸タービンは垂直軸タービンに比べてエネルギー変換効率が高い。これは水平軸型タービンの受風面が風向きに対して直交しているときには、ブレードはその回転角位相の360度のすべての位置において同一の的確な迎角を保って回転することができるのに対し、垂直軸型タービンではブレードの回転角位相の360度のすべての位置において迎角が変わり、受風によってモーメントを発生させる方法やエネルギー変換効率も変わるからである。その上、垂直軸型タービンでは、揚力を発生させることが困難となって失速状態となる回転角位相が存在するからである。さらにこの失速状態となる回転角位相において、回転方向とは逆向きの摩擦抗力も増大する回転角位相がある。翼上面をタービン内側として回転方向が時計周りのタービンの場合には、回転角位相がおおよそ4時から6時の位置にあるときがそれにあたる。
【0023】
この垂直軸型タービンが避けて通ることができない不都合をもたらす可能性のある回転角位相をなるべく減少させるために、本発明の別の態様として、ブレードを複数に分割してサブブレードとし、タービンの外側から回転方向の後ろに向けて、各サブブレードの外側から次のサブブレード内側に流体が斜めに抜けるようにスリットを設置する。スリットを設けることで、たとえば
図7に示されるように、風の流入側となる翼下面から翼上面へ勢いのある流れが送出され、隙間より後方にあたる翼上面の流速を取り戻し、翼下面の流速を減衰させる。これにより翼上面の境界層における流体の隔離が遅延され翼の揚力を維持するとともに、翼下面に発生する回転とは逆向きの大きな摩擦効力を低減するという二つの効果が期待できる。
【0024】
またスリットは、好適には、迎角がおおよそ90度になるあたりでスリットが見えなくなるように次のサブブレードが重なりあう形状とする。こうすることで、抗力を主体に回転のモーメントが得られることになる6時の方向の回転角位相以降はスリットから流体が抜けづらくなり、影響を抑えることができる。このスリットを用いた手法は翼上面がタービンの内側に向いている形態で特に効果を発揮するが、翼上面がタービン外側に向いている形状であっても、一定の効果を発揮することができる。その場合はスリットを翼上面か翼下面に流れが吸い込まれることによって流速の減衰を防ぐことになる。
【0025】
<翼表面への乱流発生による流体の剥離遅延効果>
本発明の第3の態様として、本発明の第1の態様または第2の態様において、前記ブレードが、前記翼型の表面に流体渦を発生させるための流体渦発生機構としてのボルテックスジェネレータを備えた構成としても良い。即ち、各ブレードの翼上面または翼下面に、たとえば
図8Aのように複数の小さな楔状凸型や、複数の小さな窪み状凹型など、前記ボルテックスジェネレータを配置することができる。実際にボルテックスジェネレータを配置した態様の例が、たとえば
図8Bに示される。ボルテックスジェネレータはブレードの翼表面に小さな渦流を発生させることで境界層の運動量を高め翼表面からの流体の剥離を抑制することができるため、迎角の大きい回転角位相のときの流体の剥離を遅延させて揚力低減を防ぐことができる。
【0026】
<前縁のドッグトゥース形状によるアウトフロー抑止効果>
ブレードの前縁の後退角を大きめにしてブレードを形成した場合、たとえば
図9Aのように、流体が翼上面方向ではなく、前縁から翼端方向に横滑りしてしまうアウトフローが発生しやすくなる。このアウトフローは、翼上面を前縁から後縁に向かうべき流体の流れを減少させてしまうことで、揚力を発生させることができない前縁失速状態を引き起こす。これを避けるために、本発明の第4の態様として、本発明の第1の態様から第3の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードが、前記翼型の前縁部に流体渦を発生させるための流体渦発生機構としてのドッグトゥース形状を備えた構成としても良い。即ち、たとえば
図9Bのように、翼の前縁をギザギザの形状いわゆるドッグトゥース形状とするものである。これは、いわゆるボルテックスジェネレータの別の態様でもある。ドッグトゥースはアウトフローを遮る役割と、翼上面に強い帯状の乱流を発生させることで、翼端側に極端にそれてしまう流れを翼上面に安定させる働きとを持っている。
【0027】
<ウィングレットにより翼端渦の影響による揚力低下を抑制する効果>
一般に翼端においては、たとえば
図10のように、負圧側となる翼上面へ正圧側の翼下面からの流体の回り込みの渦が発生する。この渦は翼端渦と呼ばれ、翼端における揚力の低下をもたらすことが知られている。これに鑑み、本発明の第5の態様として、本発明の第1の態様から第4の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードが、前記翼型の翼端に流体による翼端渦を防止するための翼端渦防止機構としての平面状あるいは立体的なウィングレットを備えた構成としても良い。あるいは本発明の第6の態様として、本発明の第1の態様から第4の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードが、前記翼型の翼端に流体による翼端渦を利用するための翼端渦利用機構としての立体的形状のウィングレットを備えた構成としても良い。即ち、この翼端渦の影響による揚力低下を抑制する手段として、翼端にいわゆるウィングレットを設置することとする。一般に、ウィングレットには以下にあげるタイプがある。
a)翼端に遮蔽板を設けてしまうことで翼端渦の回り込みを防止するタイプ
b)翼端の形状を丸めたり狭めたりするなどの形状を与えることで圧力差そのものを低減するタイプ
c)翼端の形状を翼上面または翼下面方向に折り曲げることで、揚力の働くベクトルを変え、主たる翼部の揚力低下を防ぐタイプ
d)b)とc)とを組み合わせたタイプ
【0028】
ここで、鳥類の一部などは翼端の羽の間隔を広げることで、翼端渦の影響を低減していると考えられている。これは単に揚力の低減を防ぐだけでなく、風切り音を低減することにもつながる。これらの考察を踏まえて、たとえば
図11に、本発明に適用することが可能と本発明者が考えたウィングレットの形態の例を示す。このような形状にすることはブレード成型時などでより手間が掛かることになるが、翼端渦の発生を抑制することにより揚力の低下を防ぐことができるので、更なる効率の向上を図ることが可能となる。また、風切り音の低減効果も期待できる。
【0029】
<加速された気流と翼端渦とを利用した推進力の獲得効果>
従来の垂直軸型タービンとは異なり、垂直軸型対数螺旋タービンでは、束縛渦及び気流そのものが翼端側すなわち、回転方向の後方に傾き加速する特性を持つため、その翼端において気流は最大速になっていると考えられる。翼端形状を回転軸側に折り曲げるだけでなく、気流が後方に流れるように後退角をさらに大きくし、たとえば
図12のように翼端を狭めることで、加速された気流と翼端渦とを積極的に取り入れ、推力に変換することが可能となる。
【0030】
<腕部に翼型を採用し副翼とする効果>
垂直軸型螺旋タービンでは、各ブレードが回転軸体に対して腕部により連結されるが、腕部も回転し流体を受けることから、当該腕部の断面を翼型にして摩擦抗力を低減することはエネルギー変換効率を高めることになると考えられる。そこで本発明の第7の態様として、本発明の第1の態様から第6の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記腕部の横断面が翼型を形成し、該腕部が縦方向が螺旋状あるいは対数螺旋状に形成される構成としても良い。たとえば
図13のように、この腕部をブレードと同様に対数螺旋状あるいは螺旋状の形状にする構成とするのも好ましい。このようにすることで、主たるブレードに対する副翼的な効果を持たせて、この腕部からも揚力及び抗力による回転モーメントを発生することで、更に効率を向上させることが可能となる。
【0031】
<垂直軸型螺旋タービンの連結設置による効果>
本発明の第8の態様として、本発明の第1の態様から第7の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記回転軸体の軸方向に複数段連結されたタンデム型の垂直軸型螺旋タービン、としても良い。この場合、ブレード回転半径を下部に向けて対数螺旋状に減少する型(A型)と、下部に向けて対数螺旋状に増加する型(B型)との組み合わせは、たとえば
図18A、
図18B、
図18C、
図18Dに示されるように、A+A、A+B、B+A、B+Bなど、色々な組み合わせが可能であるが、設置場所や季節などの条件により好適な組合せを選ぶことが望ましい。これらは少ない設置面積で総受風面積を増やすことになるので、より大きな運動エネルギーを得ることが可能となる。
【0032】
<ブレードの回転半径を下部に向けて減少させることの効果>
本発明の第9の態様として、本発明の第1の態様から第7の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードの一部または全部の回転半径が、縦方向に下部に向けて対数螺旋状に減少するよう形成された構成としても良い。翼端が垂直軸型螺旋タービンの上部側になるように形成した場合は、気流の上昇成分の運動エネルギーを回転数増加につなげることができることになるので、ビルなどの建物の屋上や、山の稜線上など、気流の上昇成分が多くなる場所に設置する場合に、より大きな運動エネルギーを得ることが可能となる。
【0033】
<ブレードの回転半径を下部に向けて増加させることの効果>
本発明の第10の態様として、本発明の第1の態様から第7の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードの一部または全部の回転半径が、縦方向に下部に向けて対数螺旋状に増加するよう形成された構成としても良い。このように翼端をタービンの下部になるように形成した場合は、気流の下降成分や降雨、降雪が持つ運動エネルギーをブレードが受けとめることから、回転数増加につなげることができる。したがって、高層ビルの下などのように気流の下降成分が多くなる場所や、降雨や降雪の多い地域に設置する場合に、より大きな運動エネルギーを得ることが可能となる。
【0034】
<垂直軸型螺旋タービンの向きを上下逆にできることの効果>
本発明の第11の態様として、本発明の第1の態様から第7の態様までのうちいずれか1つの態様において、垂直軸型螺旋タービンを上下の向きを逆向きに変更することが可能な機構を更に備えた構成としても良い。前述のように垂直軸型螺旋タービンでは、設置場所や季節などの条件により、翼端側をタービンの上部になるように設置するか下部になるようにするか、どちらかがより好適となるが、それらの条件は変化することも考えられる。従って、これらの条件に対応して、対数螺旋状タービンの天地を変えることができるような機構にすることにより、より好適な回転効率を得ることが可能となる。
【0035】
<翼弦長が一定であることの利点>
本発明の第12の態様として、本発明の第1の態様から第11の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記ブレードの幅が一定である構成としても良い。翼弦長を一定にすることは、対数螺旋状で3次元的に回転半径が変化するブレードを形成するときに、形成しやすい利点がある。形成しやすいといってもブレードは対数螺旋状であるので、ここまで述べてきたように、従来型の垂直軸型螺旋タービンに比べ、より良い回転効率を得ることが可能である。
【0036】
<翼弦長と翼弦の中心と回転軸体の間隔が共に増加することの利点>
本発明の第13の態様として、本発明の第1の態様から第11の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記回転軸体と前記ブレードに係る翼弦長の中心との間隔が、前記回転軸体の翼根元側から翼端側にかけて対数螺旋状で増加するのに合わせて、前記翼弦長も増加するように形成される構成としても良い。回転軸体と翼弦長の中心との間隔が対数螺旋状に増加する場合は、翼弦長も同時に増加させ、ソリディティを保つ方が自然で、ブレードを形成しやすいという利点がある。この形状とした場合には、ブレードの面積を若干拡大することになり、トルクを得やすく、弱風時の初動に有利となる。
【0037】
<翼弦の中心と回転軸体との間隔が拡大する中で翼弦長が減少することの利点>
本発明の第14の態様として、本発明の第1の態様から第11の態様までのうちいずれか1つの態様において、前記回転軸体と前記ブレードに係る翼弦の中心との間隔が、前記回転軸体の翼端側から翼根元側にかけて対数螺旋状で拡大する中で、前記翼弦長は逆に縮小するように形成される構成としても良い。回転軸体と翼弦の中心との間隔が対数螺旋状に拡大する中で、翼弦長を逆に縮小させることは、ブレードを形成し難いというデメリットがある。しかし、回転軸体と翼弦の中心との間隔が拡大していき、周速が早まるにつれ、ブレードの面積も減少することになるので、より良い回転効率につなげられるという効果が得られる。
【0038】
<マグヌス効果の利用>
本発明の第15の態様として、本発明の第1の態様から第14の態様までのうちいずれか1つの態様に示される垂直軸型螺旋タービンと、前記垂直軸型螺旋タービンを同一円周上に配置できるような一体型フレームと、前記一体型フレームの回転軸と、前記一体型フレームの外周脚部を支え、かつ、回転が可能となるような軌道溝とを更に備え、前記一体型フレームの回転方向と前記垂直軸螺旋タービンの回転方向とが同じになるように形成された構成を有する垂直軸型螺旋タービン群体として本発明を実現しても良い。
【0039】
一様流の中の回転する円柱体や円錐台には、移動方向または一様流に対して垂直の
揚力が発生することが知られている。これをマグヌス効果と言うが、垂直軸型螺旋タービンにおいても、そのブレードが回転しているときのタービン全体の形状は円柱形となるので、ブレードやタービン自体にもマグヌス効果が働くことになる。垂直軸型タービンは水平軸型タービンのように重心が高くなることはなく、タービン全体に風圧がかかることになるので、強風時において安全性の面では有利であるが、同一方向からの強風が一定時間吹くような環境にあるときには、このマグヌス効果によりタービン全体または腕部等へ強い圧力がかかることになる。
【0040】
このように強い風圧からタービンを守り、このマグヌス効果による揚力も回転エネルギーに変換する設置方法としては、たとえば
図19に示すような複数の垂直軸型螺旋タービンを同一円周上に配置できるような一体型フレームと、その一体型フレームの回転軸と、一体型フレームの外周脚部を支え、かつ、回転が可能となるような軌道溝とで、複数の垂直軸型螺旋タービンを設置するというものがある。
【0041】
個々の垂直軸螺旋タービンの回転が時計回りになるように設置されている場合は、一体型フレームの回転もマグナス効果が働き、時計回りとなる。この機構により、一体型フレームは、単独の垂直軸型螺旋タービンのフレームより頑強な構造にすることができ、かつ強風時の強いマグヌス効果による回転軸への圧力も、回転運動に変換することで安全性を図れる。ここで得た回転エネルギーは個々の垂直軸型螺旋タービンの回転と同様に電力などに変換して利用することができる。