特許第6126314号(P6126314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特許6126314ポリチオール、不飽和化合物、及び染料を含む組成物、並びにその組成物に関する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126314
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ポリチオール、不飽和化合物、及び染料を含む組成物、並びにその組成物に関する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20170424BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20170424BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20170424BHJP
   C07D 277/82 20060101ALN20170424BHJP
【FI】
   C08G75/045
   C09K3/10 Z
   C09B67/20 K
   !C07D277/82
【請求項の数】8
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-543603(P2016-543603)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-508029(P2017-508029A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】US2014071688
(87)【国際公開番号】WO2015102967
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】61/921,744
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】イエ シュヨン
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン エス.シャファー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エス.ウェンドランド
(72)【発明者】
【氏名】スーザン イー.デモス
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ディー.ズック
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/040103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/045
C09B 67/20
C09K 3/10
C07D 277/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と、以下の式:
【化1】
によって表わされる染料化合物とを含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、直接結合であるか、又はエーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールである、硬化性組成物。
【請求項2】
Zがアクリルアミド、アクリレート、又はメタクリレートである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
Yが、直接結合であるか、又は−O−、−O−C(O)−、もしくは−O−C(O)−NRであるか、又は任意で少なくとも1つのエーテル、エステル、カーボネート、又はカルバメートによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされているアルキレンである、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
−X−Y−Zが、−CHCH−O−C(O)−CH=CH、−CHCH−O−C(O)−C(CH)=CH、又は−CHCH−O−C(O)−C(CHNHC(O)−CH=CHである、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
フリーラジカル開始剤を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
架橋ポリマーネットワークであって、
2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と架橋したポリチオールと、
該架橋ポリマーネットワークに共有結合で組み込まれた、下記の式:
【化2】
で表わされる染料化合物とを含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、直接結合であるか、又はエーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールである、架橋ポリマーネットワーク。
【請求項7】
請求項6に記載の架橋ポリマーネットワークを含む、シーラント。
【請求項8】
ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物とを含む硬化性組成物を、安定化させる方法であって、該方法は、下記の式:
【化3】
の染料化合物を前記組成物に添加する工程を含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、直接結合であるか、又はエーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールであり、
前記染料化合物の量は、前記染料化合物を含まないこと以外同じ硬化性組成物である比較組成物に比べて、前記硬化性組成物の粘度増加を低減するのに十分な量である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年12月30日に出願された米国特許仮出願第61/921,744号の優先権を主張するものであり、その開示は、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
硬化剤又は触媒組成物に染料を含めることは、例えば、硬化性樹脂を配置し硬化させる前に硬化剤又は触媒をその樹脂と混合しなければならない場合、有用であり得る。染料は、例えば、硬化剤又は触媒が硬化性樹脂と均一に混合されたことを示すために有用であり得る。硬化性樹脂の硬化中にラジカルを生成するためにペルオキシドが用いられたときに色が消失するペルオキシド及び染料製剤も知られている。例えば、特開昭59〜120612号(1984年7月21日公開)及び米国特許出願公開第2006/0202158号(Chenら)を参照。硬化系における硬化の程度を判定する多くの方法が存在するが、ほとんどの方法は、サンプルを採取し、次いで、多数の技術(例えば、分光法、クロマトグラフィー、及びレオロジー測定)のうちのいずれかを用いてそのサンプルを分析することを必要とする。これら方法は、機器を必要とし、また、これら方法の多くは製造プロセスが行われている間に実施することができないので、プロセスを中断する必要が生じ得る。更に、分析方法の多くは、結果を解釈することができる熟練したユーザを必要とする。硬化時に色が消失する染料及び触媒又は硬化剤を含む製剤は、硬化の視覚的指標を提供し、これは、機器も詳細な解釈も必要としない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示による組成物及び方法は、硬化組成物に共有結合で組み込まれ得る染料化合物を含み、この組成物は、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物とを含む。そのようなポリチオールと不飽和化合物とを含む組成物は、一般にチオール・エン又はエン・チオール組成物と呼ばれ、フリーラジカル開始重合によって硬化する。染料化合物を共有結合で組み込むことにより、染料化合物がブルームしたり硬化系から浸出したりする可能性を排除する。この染料は、硬化時にフリーラジカルが組成物中に生成されると、可視の色変化を提供する。典型的に、そして驚くべきことに、この染料化合物はまた、フリーラジカル阻害効果も提供し、本明細書で開示される組成物の早期重合を防ぐ。
【0004】
一態様において、本開示は硬化性組成物であって、ポリオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と、以下の式:
【0005】
【化1】
によって表わされる染料化合物とを有する、硬化性組成物を提供する。
【0006】
別の一態様において、本開示は架橋ポリマーネットワークであって、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と架橋したポリチオールと、この架橋ポリマーネットワークに共有結合で組み込まれた染料化合物とを含む、架橋ポリマーネットワークを提供する。この染料化合物は以下の式:
【0007】
【化2】
によって表わされる。
【0008】
別の一態様において、本開示は、硬化性組成物中の硬化を示すための方法を提供する。この方法は、上記の硬化性組成物を提供する工程と、この組成物を硬化させて硬化組成物を提供する工程とを含む。この化合物は、この組成物に400ナノメートル〜700ナノメートルの範囲の波長で第1吸光度を提供するのに十分な量で組成物中に存在し、この硬化組成物は、第1吸光度とは異なる波長に第2吸光度を有する。
【0009】
別の一態様において、本開示は、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物とを含む硬化性組成物を、安定化させる方法を提供する。この方法は、この組成物に染料化合物を添加する工程を含み、この染料化合物の量は、染料化合物を含まないこと以外同じ硬化性組成物である比較組成物に比べて、硬化性組成物の粘度増加を低減するのに十分な量である。この染料化合物は以下の式:
【0010】
【化3】
によって表わされる。
【0011】
上記の任意の態様において、染料化合物中、Rは水素又はアルキルであり、Xはアルキレンであり、Yは、結合、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールである。
【0012】
本願では、
「a」、「an」、及び「the」等の用語は、1つの実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示のために用いることができる一般部類を含む。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。
【0013】
リストの前の語句「のうちの少なくとも1つを含む」は、リストの中の項目のいずれか1つ、及びリストの中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを含むことを指す。リストの前の語句「少なくとも1つの」は、リストの中の項目のいずれか1つ、又はリストの中の2つ以上の項目の任意の組み合わせ指す。
【0014】
用語「硬化」及び「硬化性」とは、通常架橋分子又は基を介して、ポリマー鎖が共有化学結合で互いに結合して網状ポリマーを形成することを指す。したがって、本開示では、用語「硬化」及び「架橋」は、互換的に用いることができる。硬化又は架橋ポリマーは、一般に、不溶性であることを特徴とするが、適当な溶媒の存在下では膨潤性であることもある。
【0015】
「ポリマー又はポリマーの」という用語は、ポリマー、コポリマー(例えば、2種以上の異なるモノマーを用いて形成されたポリマー)、ポリマーを形成することができるオリゴマー又はモノマー、及びこれらの組み合わせに加えて、ブレンドすることができるポリマー、オリゴマー、モノマー又はコポリマーを含むと理解される。
【0016】
「アルキル基」及び接頭辞「アルキ(alk-)」は、直鎖基及び分枝鎖基の両方並びに環状基を含む。幾つかの実施形態では、特に指定しない限り、アルキル基は、30個以下の炭素(幾つかの実施形態では、20、15、12、10、8、7、6又は5個以下の炭素)を有する。環状基は、単環式であっても多環式であってもよく、幾つかの実施形態では、3〜10個の環炭素原子を有する。末端「アルケニル」基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。
【0017】
「アルキレン」は、上に定義した「アルキル」基の多価(例えば、二価又は三価)形態である。
【0018】
「アリールアルキレン」とは、アリール基が結合している「アルキレン」部分を指す。「アルキルアリーレン」は、アルキル基が結合している「アリーレン」部分を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」及び「アリーレン」は、例えば、1、2、又は3個の環を有し、任意で少なくとも1個のへテロ原子(例えば、O、S、又はN)を環内に有し、任意で4個以下の炭素原子を有する1個又は2個以上のアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、4個以下の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロ基(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、ヒドロキシ基、又はニトロ基等を含む5個以下の置換基によって置換されている、炭素環式芳香族環又は環系を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニルに加えて、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、及びチアゾリルが挙げられる。
【0020】
「置換スチレン」としては、アルキル、アルケニル、アルコキシ、及びハロゲン置換スチレンが挙げられる。
【0021】
すべての数値範囲は、特に断らない限り、その端点と、端点の間の非整数値を含むものとする(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
幾つかの実施形態では、染料は、以下の式:
【0023】
【化4】
によって表わされる。
【0024】
式I中、Rは、水素又はアルキルである。幾つかの実施形態では、Rは、水素、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はsec−ブチル)である。幾つかの実施形態では、Rは、水素である。
【0025】
式I中、Xは、アルキレンであり、幾つかの実施形態では、1〜6個又は2〜6個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、Xは、−CH−CH−である。
【0026】
式I中、Yは、結合、エーテル(即ち、−O−)、チオエーテル(即ち、−S−)、アミン(即ち、−NR−)、アミド(即ち、−N(R)−C(O)−又は−C(O)−N(R)−)、エステル(即ち、−O−C(O)−又は−C(O)−O−)、チオエステル(即ち、−S−C(O)−、−C(O)−S−、−O−C(S)−、−C(S)−O−)、カーボネート(即ち、−O−C(O)−O−)、チオカーボネート(即ち、−S−C(O)−O−又は−O−C(O)−S−)、カルバメート(即ち、−(R)N−C(O)−O−又は−O−C(O)−N(R)−、チオカルバメート(即ち、−N(R)−C(O)−S−又は−S−C(O)−N(R)−、尿素(即ち、−(R)N−C(O)−N(R)−)、チオ尿素(即ち、−(R)N−C(S)−N(R)−)、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル(即ち、−O−)、チオエーテル(即ち、−S−)、アミン(即ち、−NR−)、アミド(即ち、−N(R)−C(O)−又は−C(O)−N(R)−)、エステル(即ち、−O−C(O)−又は−C(O)−O−)、チオエステル(即ち、−S−C(O)−、−C(O)−S−、−O−C(S)−、−C(S)−O−)、カーボネート(即ち、−O−C(O)−O−)、チオカーボネート(即ち、−S−C(O)−O−又は−O−C(O)−S−)、カルバメート(即ち、−(R)N−C(O)−O−又は−O−C(O)−N(R)−、チオカルバメート(即ち、−N(R)−C(O)−S−又は−S−C(O)−N(R)−、尿素(即ち、−(R)N−C(O)−N(R)−)、又はチオ尿素(即ち、−(R)N−C(S)−N(R)−)のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされている。Rを含むこれら基ではいずれも、Rは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキレニル、又はアルキルアリーレニルである。幾つかの実施形態では、Rは、水素、又は例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はsec−ブチル)である。幾つかの実施形態では、Rは、メチル又は水素である。語句「少なくとも1つの官能基によって中断される」とは、官能基の両側にアルキレン、アリールアルキレン、又はアルキルアリーレン基の部分を有することを指す。エーテルによって中断されているアルキレンの例は、−CH−CH−O−CH−CH−である。少なくとも1つの官能基によって「終端となる」という語句は、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレン基の一端又は他端に結合している官能基を指す。末端官能基はX又はZのいずれかに結合し得る。幾つかの実施形態では、末端官能基は、Xに結合している−O−、−O−C(O)−、−O−C(O)−O−、−O−C(O)−NR−である。幾つかの実施形態では、Yは、結合、−O−、−O−C(O)−、−O−C(O)−NR−、又は任意で少なくとも1つのエーテル、エステル、カーボネート、又はカルバメートによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされているアルキレンである。幾つかの実施形態では、Yは、結合である。Yが結合であるとき、Zは直接Xに結合していることが理解されよう。換言すれば、Yは式Iに存在しない。幾つかの実施形態では、Yは、−O−C(O)−である。幾つかの実施形態では、Yは、任意で少なくとも1つのエーテル又はエステルによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされているアルキレンである。これらの実施形態では、Yは例えば、−O−CH−CH−O−CH−CH−又は−CHCH−O−C(O)−C(CH−であり得る。
【0027】
式I中、Zは、重合性基である。典型的には、フリーラジカル開始重合を受け得る基である。Zは、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル基、末端アルケニル、又はメルカプタンであってよい。末端アルケニルは、ビニル基であってよく(例えば、Y末端が−O−である場合、ビニルエーテル)、又は末端アルケニルは少なくとも3つの炭素原子を有し得る(例えば、アリル)。幾つかの実施形態では、Zは、アクリレート、メタクリレート、メルカプタン、又はアクリルアミドである。幾つかの実施形態では、Zは、アクリレート又はメタクリレートである。幾つかの実施形態では、Zはアクリルアミドである。
【0028】
式Iの化合物は、例えば、式X:
【0029】
【化5】
によって表わされるエステルで出発して調製することができ、これは、例えば、Winchem Industrial Co.Ltd(China)及びChina Langchem Inc.(China)から「DISPERSE RED 177」として市販されている。この化合物は、公知の鹸化条件下で加水分解されて、式XIとして以下に示すヒドロキシル化合物を提供することができる。あるいは、式Iの化合物は、Cojocariu,C.,et al.J.Mater.Chem.,2004,vol.14,pages 2909〜2916に記載の方法に従って濃硫酸中で亜硝酸ナトリウムからその場で調製したニトロシル硫酸溶液で市販の2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾールを処理することによって調製することができる。この反応は、室温未満に冷却した後、ジクロロ酢酸と氷酢酸との混合物中で便利に実施することができる。得られるジアゾニウム硫酸塩をN−(2−シアノエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アニリンとカップリングさせてよい。他のアルキル置換N−(2−シアノエチル)−N−(2−ヒドロキシアルキル)−アニリン(公知の方法によって調製することができる)もカップリング反応において有用であり得る。
【0030】
得られる式XIの化合物:
【0031】
【化6】
(式中、X及びRは、上記実施形態のいずれかに定義した通りである)を、様々な公知の合成方法を用いて式Iによる化合物に変換することができる。例えば、式XIの化合物におけるヒドロキシル基を、塩基の存在下で、それぞれ塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルを用いてアクリレート又はメタクリレートに変換して、式Iの化合物(式中、Yは、結合であり、Zは、アクリレート又はメタクリレート基である)を提供することができる。アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの等価物を用いる他のエステル化反応法も有用であり得る。また、式XIの化合物中のヒドロキシル基を、光延反応条件下で置換若しくは非置換ビニル安息香酸又はこれらの等価物と反応させて、化合物(式中、Yは−O−C(O)−であり、Zは、スチレン又は置換スチレンである)を提供することもできる。都合のよいことに、光延カップリングは、好適な溶媒中で、トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアゾジカルボキシレート又はジエチルアゾジカルボキシレートの存在下で実施される。この反応は、周囲温度以下で行うことができるので都合がよい。また、式XIの化合物中のヒドロキシル基を、ビニル置換アズラクトンと反応させて、式Iの化合物(式中、Yは、−O−C(O)−アルキレンであり、Zは、アクリルアミド基である)を提供することもできる。この反応は、ヒンダードアミンの存在下で都合よく実施することができる。また、式XIの化合物をイソシアナトアルキルアクリレート若しくはメタクリレート、又はアリルイソシアネートで処理して、式Iの化合物(式中、Yは、−O−C(O)−NR−又は−O−C(O)−NR−アルキレンであり、Zはアクリレート、メタクリレート、又は末端アルケニル基である)を提供することもできる。このような反応は、周囲温度で、スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート)の存在下で実施することができる。また、標準的な官能基操作を用いて、ヒドロキシル基をアミン又はチオールに変換することもできる。得られるアミン又はメルカプタンを、公知の化学反応を用いてカルボン酸及びその等価物、アズラクトン、並びにイソシアネートと反応させて、式Iの化合物中に様々なY及びZ基を提供することができる。式Iの化合物の更なる調製方法は、後述の実施例に見出すことができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、上記及び下記実施形態のいずれかにおける本開示による組成物は、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.1重量パーセント〜0.00001重量パーセントの量で式Iの化合物を含む。幾つかの実施形態では、式Iの化合物は、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.05重量パーセント〜0.00001重量パーセント、0.04重量パーセント〜0.0001重量パーセント、又は0.02重量パーセント〜0.001重量パーセントの量で組成物中に含まれる。
【0033】
様々なポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物とが、本開示による組成物において有用であり得る。幾つかの実施形態では、ポリチオールはモノマーである。これらの実施形態では、ポリチオールは、少なくとも2つのメルカプタン基を有するアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、又はアルキレンアリールアルキレンであってよく、このアルキレン、アルキルアリーレン、アリールアルキレン、又はアルキレンアリールアルキレンのいずれも任意に、1つ又は2つ以上のエーテル(即ち、−O−)、チオエーテル(即ち、−S−)、又はアミン(即ち、−NR−)基で中断されていてよく、かつ任意にアルコキシ又はヒドロキシルで置換されていてよい。有用なモノマーポリチオールは、2つを超える(幾つかの実施形態では、3つ又は4つの)メルカプタン基を備えたジチオール又はポリチオールであり得る。幾つかの実施形態では、このポリチオールはアルキレンジチオールであり、このアルキレンは任意に、1つ又は2つ以上のエーテル(即ち、−O−)又はチオエーテル(即ち、−S−)基で中断されている。有用なジチオールの例としては、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、及びこれらの混合物が挙げられる。2つを超えるメルカプタン基を有するポリチオールには、プロパン−1,2,3−トリチオール、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアへプチル)メタン、及びトリチオシアヌル酸が挙げられる。これらの任意の組み合わせ、又は上記のジチオールの任意のものとの組み合わせが、有用であり得る。
【0034】
炭素−炭素二重結合及び/又は炭素−炭素三重結合を有する不飽和化合物は反応性であり、一般に芳香環の一部ではないことが理解されよう。これらの幾つかの実施形態では、この炭素−炭素二重結合及び三重結合は、直鎖脂肪族化合物の末端基である。しかしながら、スチリル基及びアリル置換芳香環も有用であり得る。この不飽和化合物はまた、1つ又は2つ以上のエーテル(即ち、−O−)、チオエーテル(即ち、−S−)、アミン(即ち、−NR−)、又はエステル(例えば、これにより化合物がアクリレート又はメタクリレートとなる)基と、1つ又は2つ以上のアルコキシ又はヒドロキシル置換基を含み得る。好適な不飽和化合物には、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、エン−イン、及びこれらの任意の三官能性バージョンが挙げられる。これらの基の任意の組み合わせもまた有用であり得る。
【0035】
2つ以上のビニルエーテル基を有する好適なビニルエーテルの例としては、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。式CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH(式中、RはC〜C分枝状アルキレン)の有用なジビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることにより調製することができる。このタイプの化合物の例としては、Rが−CH(CH)−などのアルキル置換メチレン基(例えば、BASF(Florham Park,N.J)から商品名「PLURIOL」として入手できるもので、式中、Rはエチレン、mは3.8)、又は−CHCH(CH)−などのアルキル置換エチレン(例えば、International Specialty Products(Wayne,N.J.)から商品名「DPE」(例えば「DPE−2」及び「DPE−3」)として入手できるもの)が挙げられる。
【0036】
少なくとも2つの炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する不飽和化合物の他の好適な例としては、トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、1,5−シクロオクタジエン、1,6−ヘプタジイン、1,7−オクタジイン、及びフタル酸ジアリルが挙げられる。2つのチオール基を有するポリチオールを使用する場合、少なくとも1つの不飽和化合物が2つの炭素−炭素二重結合又は三重結合を有し、かつ少なくとも1つの不飽和化合物が少なくとも3つの炭素−炭素二重結合又は三重結合を有するような、不飽和化合物の混合物が有用であり得る。少なくとも3つの炭素−炭素二重結合又は三重結合を有するポリエンにより寄与される炭素−炭素二重結合又は三重結合官能価が少なくとも5パーセントである不飽和化合物の混合物が、有用であり得る。
【0037】
典型的に、ポリチオール(複数可)と不飽和化合物(複数可)の量は、メルカプタン基と炭素−炭素二重結合及び三重結合とが化学量論的に等価となるような硬化性組成物のために選択される。
【0038】
本開示による組成物は、フリーラジカル重合を用いて硬化させることができる。したがって、本開示による組成物は典型的に、フリーラジカル開始剤を含む。任意のフリーラジカル開始剤が有用であり得る。好適なフリーラジカル開始剤の例としては、アゾ化合物(例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、又はアゾ−2−シアノ吉草酸)が挙げられる。幾つかの実施形態では、フリーラジカル開始剤は、有機ペルオキシドである。有用な有機ペルオキシドの例としては、ヒドロペルオキシド(例えば、クメン、tert−ブチル又はtert−アミルヒドロペルオキシド)、ジアルキルペルオキシド(例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、又はシクロヘキシルペルオキシド)、ペルオキシエステル(例えば、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルモノペルオキシマレエート、又はジ−tert−ブチルペルオキシフタレート)、ペルオキシカーボネート(例えば、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、又はジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)、ケトンペルオキシド(例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及びシクロヘキサノンペルオキシド)、並びにジアシルペルオキシド(例えば、ベンゾイルペルオキシド又はラウリルペルオキシド)が挙げられる。有機ペルオキシドは、例えば、有機ペルオキシドの使用に望ましい温度、及び硬化性組成物との適合性に基づいて選択してよい。また、2つ以上の有機ペルオキシドの組み合わせも有用であり得る。
【0039】
フリーラジカル開始剤はまた、光開始剤であってもよい。有用な光開始剤の例としては、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル又はベンゾインブチルエーテル)、アセトフェノン誘導体(例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン又は2,2−ジエトキシアセトフェノン)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、並びに、アシルホスフィンオキシド誘導体及びアシルホスホネート誘導体(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、イソプロポキシフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、又はジメチルピバロイルホスホネート)が挙げられる。多くの光開始剤は、例えば、BASFから商品名「IRGACURE」として入手可能である。光開始剤は、例えば、硬化のための望ましい波長、及び硬化性組成物との適合性に基づいて選択してよい。光開始剤を用いる場合、組成物は典型的に、化学線光源を用いて硬化可能である。幾つかの実施形態では、組成物は、青色光源を用いて硬化可能である。幾つかの実施形態では、組成物は、UV光源を用いて硬化可能である。
【0040】
上述の実施形態の任意のものについて、本開示による組成物は、この組成物を硬化させるのに十分な時間、加熱するか又は光に曝すことができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、本開示による硬化性組成物中のポリチオールは、オリゴマー又はポリマーである。有用なオリゴマー又はポリマーのポリチオールの例としては、ポリチオエーテル及びポリスルフィドが挙げられる。ポリチオエーテルには、その主鎖構造内にチオエーテル連結(即ち、−S−)が含まれる。ポリスルフィドには、その主鎖構造内にジスルフィド連結(即ち、−S−S−)が含まれる。
【0042】
ポリチオエーテルは、例えば、フリーラジカル条件下で、ジチオールを、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、エン−イン、又はこれらの組み合わせと反応させることにより、調製することができる。有用なジチオールには、上述のジチオール、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、及びエン−インの任意のものが挙げられる。有用なポリチオエーテルの例は、例えば、米国特許第4,366,307号(Singhら)、同第4,609,762号(Morrisら)、同第5,225,472号(Cameronら)、同第5,912,319号(Zookら)、同第5,959,071号(DeMossら)、同第6,172,179号(Zookら)、及び同第6,509,418号(Zookら)に記述されている。幾つかの実施形態では、ポリチオエーテルは式HS−R−[S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R−]−SHで表わされ、式中、各R及びRは独立にC2〜6アルキレン(アルキレンは直鎖状又は分枝状であり得る)、C6〜8シクロアルキレン、C6〜10アルキルシクロアルキレン、−[(CH−)−X−]−(−CH−)であり、式中、少なくとも1つの−CH−が任意にメチル基で置換され、XはO、S及び−NR−からなる群から選択される1つであり、Rは水素又はメチルを表わし、mは0〜10の数であり、nは1〜60の数であり、pは2〜6の整数であり、qは1〜5の整数であり、並びにrは2〜10の整数である。2つを超えるメルカプタン基を備えたポリチオエーテルもまた有用であり得る。上述のフリーラジカル開始剤及び方法の任意のものが、ポリチオエーテルの調製に有用であり得る。幾つかの実施形態では、上述の熱反応開始剤を、ジチオールと、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、エン−イン、又はこれらの組み合わせと共に混合し、結果として得られる混合物を加熱して、ポリチオエーテルが得られる。
【0043】
ポリチオエーテルはまた、例えば、ジチオールをジエポキシドと反応させることによって調製することができ、これは、任意に三級アミン触媒(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO))の存在下で、室温で撹拌することによって実施可能である。有用なジチオールは、上述の任意のものを含む。有用なエポキシドは、2つのエポキシド基を有する任意のものであり得る。幾つかの実施形態では、このジエポキシドは、ビスフェノールジグリシジルエーテルであり、このビスフェノール(即ち、−O−C−CH−C−O−)は無置換(例えば、ビスフェノールF)であってよく、また、フェニル環又はメチレン基がハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、メチル、トリフルオロメチル、又はヒドロキシメチルで置換されていてもよい。ジチオールとジエポキシドから調製されるポリチオエーテルは、ペンダントヒドロキシル基を有し、かつ、式−S−R−S−CH−CH(OH)−CH−O−C−CH−C−O−CH−CH(OH)−CH−S−R−S−で表わされる構造的繰り返し単位を有してよく、式中、Rは上記で定義される通りであり、ビスフェノール(即ち、−O−C−CH−C−O−)は無置換(例えば、ビスフェノールF)であってよく、また、フェニル環又はメチレン基がハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、メチル、トリフルオロメチル、又はヒドロキシメチルで置換されていてもよい。この種のメルカプタン末端ポリチオエーテルは、フリーラジカル条件下で、上述のジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、及びエン−インの任意のものと反応させることができる。上述のフリーラジカル開始剤及び方法の任意のものが、ポリチオエーテルの調製に有用であり得る。幾つかの実施形態では、上述の熱反応開始剤を使用し、結果として得られる混合物を加熱して、ポリチオエーテルを得る。
【0044】
このポリチオエーテルはまた、反応の化学量論に応じて、炭素−炭素二重結合末端であってもよい。これらの実施形態では、ポリチオエーテルは、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和化合物として作用し得る。
【0045】
ポリスルフィドは典型的に、ポリスルフィドナトリウムをビス−(2−クロロエチル)ホルマールと縮合させることにより調製され、これにより2つの末端メルカプタン基を有する直鎖ポリスルフィドが得られる。3つ以上のメルカプタン基を有する分枝状ポリスルフィドは、反応混合物中でトリクロロプロパンを用いて調製することができる。有用なポリスルフィドの例は、例えば、米国特許第2,466,963号(Patrickら)、同第2,789,958号(Fettesら)、同第4,165,425号(Bertozzi)、及び同第5,610,243号(Viettiら)に記述されている。ポリスルフィドは、商品名「THIOKOL」及び「LP」としてToray Fine Chemicals Co.,Ltd.(Urayasu,Japan)から市販されており、例えば等級「LP−2」、「LP−2C」(分枝状)、「LP−3」、「LP−33」、及び「LP−541」がある。
【0046】
ポリチオエーテル及びポリスルフィドは、様々な有用な分子量を有し得る。幾つかの実施形態では、ポリチオエーテル及びポリスルフィドの数平均分子量は、500グラム/モル〜20,000グラム/モルの範囲、1,000グラム/モル〜10,000グラム/モルの範囲、又は2,000グラム/モル〜5,000グラム/モルの範囲である。
【0047】
メルカプタン末端を有するポリチオエーテル及びポリスルフィドを、上述のフリーラジカル開始剤及び方法のいずれかを用い、上述の少なくとも2つの炭素−炭素二重結合又は三重結合を含む不飽和化合物と混合することにより、本開示による硬化組成物を提供することができる。
【0048】
上記実施形態の任意のものにおいて、ポリチオールと、上述の2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを有する化合物とで調製された架橋ネットワークは、様々な用途に有用である。例えば、そのような架橋ネットワークは、シーラント(例えば航空燃料耐性シーラント)として有用であり得る。航空燃料耐性シーラントは、数多くの目的のために航空産業に広く使用されている。これらの使用の主な目的は、一体型燃料タンク及び空洞の封止、高高度で与圧を維持するための客室キャビンの封止、並びに、航空機外表面の、航空力学的平滑化である。本開示による組成物は、例えば、燃料耐性と低いガラス転移温度を有しているため、これらの用途に有用であり得る。
【0049】
シーラント用途に使用される場合、例えば、本開示による組成物は充填剤も含み得る。例えばシリカ(例えば、ヒュームドシリカ)、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、及びカーボンブラックなどの従来型の無機充填剤が、有用かつまた低密度の充填剤であり得る。幾つかの実施形態では、本開示による組成物は、シリカ、中空セラミック素子、中空ポリマー素子、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、又はカーボンブラックのうち少なくとも1つを含む。シリカは、例えば、1マイクロメートル超、100ナノメートル〜1マイクロメートル、及び100ナノメートル未満の平均粒径を有する粒子を含む、任意の所望の寸法であってよい。シリカは、例えば、ナノシリカ及び非晶質ヒュームドシリカを含んでよい。好適な低密度充填剤は、約1.0〜約2.2の範囲の比重を有し得、例えば、ケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、及びポリエチレンが挙げられる。例としては、比重2.1〜2.2で粒径3〜4マイクロメートルのケイ酸カルシウム(「HUBERSORB HS−600」、J.M.Huber Corp.)、及び、比重1.7〜1.8で粒径1未満のヒュームドシリカ(「CAB−O−SIL TS−720」、Cabot Corp.)が挙げられる。他の例としては、比重2〜2.1の沈降シリカ(「HI−SIL TS−7000」、PPG Industries)、及び比重1〜1.1で粒径10〜20マイクロメートルのポリエチレン(「SHAMROCK S−395」、Shamrock Technologies Inc.)が挙げられる。用語「セラミック」は、ガラス、結晶性セラミック、ガラスセラミック、及びこれらの組み合わせを指す。中空セラミック素子は、中空球及び球状体を含んでよい。中空セラミック素子及び中空ポリマー素子は、様々な有用な寸法のうち1つを有し得るが、典型的に最大寸法が10ミリメートル(mm)未満、より典型的には1mm未満である。微小球の比重は約0.1〜0.7の範囲であり、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリアクリレート及びポリオレフィンの微小球、並びに、粒径5〜100マイクロメートルの範囲で比重0.25のシリカ微小球(「ECCOSPHERES」、W.R.Grace & CO.)が挙げられる。他の例としては、粒径5〜300マイクロメートルの範囲で比重0.7のアルミナ/シリカ微小球(「FILLITE」、Pluess−Stauffer International)、比重約0.45〜約0.7のケイ酸アルミニウム微小球(「Z−LIGHT」)、及び、比重0.13の炭酸カルシウムコーティングされたポリビニリデンコポリマー微小球(「DUALITE 6001AE」、Pierce & Stevens Corp.)が挙げられる。このような充填剤は、単独で又は組み合わせて、充填剤組成物の総重量に基づいて、10重量パーセント〜55重量パーセント、幾つかの実施形態では、20重量パーセント〜50重量パーセントの範囲でシーラント中に存在し得る。
【0050】
シーラント用途に使用された場合、例えば、本開示による組成物はまた、硬化促進剤、界面活性剤、接着促進剤、揺変剤、及び溶媒のうち少なくとも1つを含み得る。
【0051】
シーラントは、任意に、例えばオーバーリベット(over rivets)、ボルト、又はその他のタイプの締着具と組み合わせて使用することができる。シールキャップ成形型を使用して、硬化性シーラントを充填し、締着具の上に配置して、シールキャップを作製することができる。その後、硬化性シーラントを硬化させることができる。幾つかの実施形態で、シールキャップ及び硬化性シーラントは、同じ材料で作製され得る。幾つかの実施形態で、このシールキャップは本明細書に開示の硬化性組成物で作製され得る。シールキャップに関する詳細は、例えば、国際特許出願公開第WO2014/172305号(Zookら)を参照のこと。
【0052】
式Iの染料化合物は、本開示による組成物において硬化の度合を示すのに有用であり得る。式Iの化合物は、フリーラジカルの存在下で色を変化させるので、系におけるフリーラジカルの濃度の相関によって硬化を直接示すことができる。式Iの化合物は、以下の実施例に示す通り、最初は色のついた状態を有し、最後は色の薄い又は無色の状態を有する。
【0053】
したがって、本開示は、また、上記硬化性ポリマー樹脂のいずれかを含む、硬化性ポリマー樹脂中の硬化を示すための方法を提供する。この方法は、硬化性ポリマー樹脂と、フリーラジカル開始剤と、400ナノメートル〜700ナノメートルの波長に第1の吸光度を有する組成物を提供するのに十分な量の式Iの化合物とを含む組成物を提供する工程を含む。波長は、例えば、450ナノメートル〜650ナノメートル、典型的には500ナノメートル〜550ナノメートルの範囲であってよい。組成物を硬化させること、又は組成物が硬化することにより、第1の吸光度とは異なる波長に第2の吸光度を有する硬化組成物が得られる。幾つかの実施形態では、選択された波長における吸光度は、少なくとも20、25、30、35、40、45、又は50パーセント以上減少する。初期及び最終吸光度は、例えば、UV/VIS分光計又は比色計を用いて測定することができる。400ナノメートル〜700ナノメートルの波長に吸光度を有する組成物は、典型的に、ヒトの眼によって特定の色として知覚される。幾つかの実施形態では、組成物の色は、硬化組成物ではもはや視認できない。これら実施形態では、第2の吸光度と第1の吸光度との差は、視覚的に測定される。幾つかの実施形態では、この組成物を提供する工程は、硬化性ポリマー樹脂を、フリーラジカル開始剤及び式Iの化合物と混合する工程を含む。このフリーラジカル開始剤は、上述の任意のものであり得る。混合は、可視色が組成物中に均一に分散するまで行うことができ、これは、比較的高い粘度の組成物に有用であり得る。
【0054】
光硬化する組成物では、本開示による組成物はまた、いつ硬化光に曝露されたかを示すことができるという利点ももたらす。これらの場合では、色が消えたり弱まったりすることは、組成物が硬化光に曝露されたことを示し得る。本開示の組成物の色変化は、フリーラジカルが生成されたことを示す。この特徴は、製造ラインが停止したときに有益であり得、例えば、その結果、操作者が、曝露された組成物と曝露されていない組成物とを容易に判別することができる。
【0055】
後述の実施例に示すように、特定の光開始剤を含む組成物は、硬化に伴って色を変化させることができ、典型的に、式Iで表わされる染料化合物が存在するとき、より可視性の高い色変化が生じる。例えば、後述の表2に示すように、式Iで表わされる染料化合物を含まない組成物は、硬化前と後とで低いΔE値を呈する(例えば、5〜12の範囲)。これは、BASFから商品名「IRGACURE 819」として入手した光開始剤が、露光後に黄色から無色へと色を失うことによる。一方、式Iの染料化合物を含む実施例1、2、及び4では、硬化前と後とで高いΔE値を呈する(例えば、典型的に30を超える)。本開示の組成物の硬化に伴うこの赤から無色への変化は、可視性の高い効果指標を提供する。
【0056】
現在航空機産業で使用されている既存のシーラント製品は典型的に、二剤製品又は一剤製品のいずれかである。二剤製品の場合、ユーザがこの二剤を混合すると反応が始まり、シーラントがエラストマー性固体を形成し始める。混合後、シーラントが使用可能な時間のことを、塗布寿命と呼ぶ。塗布寿命の間、シーラントの粘度は徐々に増加し、最後にはシーラントは粘度が高すぎて塗布できなくなる。塗布寿命と硬化時間は典型的に、短い塗布寿命の製品のほうが素早く硬化するという関係にある。逆に言えば、長い塗布寿命の製品はゆっくり硬化する。実践上、顧客は、具体的な用途に応じて、異なる塗布寿命と硬化時間の製品を選択する。このため、航空機の構築と修理の製造流動性要件に対応するため、顧客が複数の製品在庫を維持しなければならなくなる。一剤製品の場合、ユーザは煩雑な混合工程を避けることができるが、製品は、塗布するまでの輸送及び保管を冷凍庫で行わなければならない。有利なことに、数多くの実施形態では、本開示による組成物は、一剤シーラントと同様に有用であり、長い塗布寿命を有し得ると同時に、必要時に硬化させることができる。
【0057】
後述の実施例に示すように、本開示による組成物は、式Iの染料化合物を含み、これは、硬化が望ましい時点より前に、組成物内で重合に伴う粘度増加が起こるのを防ぐのに有用である。表1に示すように、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及びトリアリルシアヌレートを含む組成物は、18日間で粘度が約0.003Pa−sから59Pa−sへと増加する。実施例2において、式Iの染料化合物が、同じ組成物に添加された場合、18日間で観察された粘度は、約0.003Pa−sから1.65Pa−sへと増加した。驚くべきことに、式Iの染料化合物により提供される安定化作用は、従来のフリーラジカル阻害剤p−メトキシフェノール(MEHQ)により提供される安定化作用よりも良い。比較実施例Aに示すように、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及びトリアリルシアヌレートを含む組成物にMEHQが添加された場合、組成物の粘度は18日間で約0.003Pa−sから11.5Pa−sへと増加する。
【0058】
便宜上、本開示による組成物はまた溶媒も含み得る。溶媒は、式Iの化合物(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、又は酢酸エチル)、又は組成物の他の化合物(例えば、フリーラジカル開始剤)を溶解させることができる任意の材料であってよい。後述の実施例に示すように、式Iで表わされる染料化合物をN−メチルピロリジノンに溶かしてから、本開示による組成物に加えた場合、結果として得られる組成物で示される色変化及びフリーラジカル阻害効果は、式Iの染料化合物を固体として添加した場合ほど明らかではない。しかしながら、色変化及びフリーラジカル阻害は、染料を含まない組成物に比べれば観察されている。例えば、表1及び2の実施例3を参照のこと。したがって、幾つかの実施形態では、本開示による組成物は、N−メチルピロリジノンを含まない。幾つかの実施形態では、本開示による組成物は、N−メチルピロリジノンに溶解した染料化合物を、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む化合物とに添加することによって調製されるものではない。幾つかの実施形態では、本開示による組成物は、溶媒を含まない。幾つかの実施形態では、本開示による組成物は、溶媒に溶解した染料化合物を、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む化合物とに添加することによって調製されるものではない。
【0059】
上述のように、本開示による染料化合物は、硬化性組成物に共有結合し、有利なことに、時間が経っても硬化系から移動することはない。これは例えば、硬化組成物が航空燃料に曝される場合に有利であり得る。組成物に共有結合で組み込まれている染料化合物は、そのような燃料に曝されても浸出することはできない。
【0060】
式Iの化合物は、硬化時に無色になる能力を失うことなく、本開示の硬化性組成物に共有結合で組み込まれ得るが、これはすべての染料においてそうなるわけではない。国際特許出願公開第WO2014/151708号(Wendlandら)に報告されているように、アゾ−2−ナフトール染料Sudan IIIを3M Premium Body Filler(3M部品番号50597)に添加し、次いで硬化させると、約6分間で初期のピンク色が消失したことが示された。しかし、Sudan IIIをアクリレートに変換してからボディ充填剤に組み込んだ場合、硬化時に初期色の退色は観察されなかった。いずれの場合も、ボディ充填剤は、染料が存在していないときと同様に硬化した。この染料が無色になる機序は、重合性基を共有結合で染料構造に組み込むことによって乱されたと考えられる。
【0061】
本開示の幾つかの実施形態
第1の実施形態では、本開示は硬化性組成物であって、ポリオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と、以下の式:
【0062】
【化7】
によって表わされる染料化合物とを含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、結合、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、及び、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールである、硬化性組成物を提供する。
【0063】
第2の実施形態では、本開示は、Rが水素である、第1の実施形態に記載の硬化性化合物を提供する。
【0064】
第3の実施形態では、本開示は、Zがアクリルアミド、アクリレート、又はメタクリレートである、第1又は第2の実施形態に記載の硬化性組成物を提供する。
【0065】
第4の実施形態では、本開示は、Yが、結合、−O−、−O−C(O)−、−O−C(O)−NR−、又は任意に少なくとも1つのエーテル、エステル、カーボネート、若しくはカルバメートによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされるアルキレンである、第1〜第3の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0066】
第5の実施形態では、本開示は、Yが、結合、−O−C(O)−、又は任意に少なくとも1つのエーテル若しくはエステルによって中断若しくは終端のうちの少なくとも1つをされるアルキレンである、第1〜第4の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0067】
第6の実施形態では、本開示は、−X−Y−Zが、−CHCH−O−C(O)−CH=CH、−CHCH−O−C(O)−C(CH)=CH、又は−CHCH−O−C(O)−C(CHNHC(O)−CH=CHである、第1〜第5の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0068】
第7の実施形態では、本開示は、末端アルケニルが少なくとも3つの炭素原子を含む、第1〜第6の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0069】
第8の実施形態では、本開示は、更にフリーラジカル開始剤を含む、第1〜第7の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0070】
第9の実施形態では、本開示は、フリーラジカル開始剤が光開始剤である、第8の実施形態に記載の硬化性組成物を提供する。
【0071】
第10の実施形態では、本開示は、フリーラジカル開始剤が熱反応開始剤である、第8の実施形態に記載の硬化性組成物を提供する。
【0072】
第11の実施形態では、本開示は、ポリチオールがモノマーである、第1〜第10の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0073】
第12の実施形態では、本開示は、ポリチオールがオリゴマー又はポリマーである、第1〜第10の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0074】
第13の実施形態では、本開示は、ポリチオールが、ジチオールと、ジエン又はジビニルエーテルとを含む構成成分から調製されるオリゴマー又はポリマーである、第12の実施形態に記載の硬化性組成物を提供する。
【0075】
第14の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの不飽和化合物が、2つの炭素−炭素二重結合を含み、3つの炭素−炭素二重結合を含む第2の不飽和化合物を更に含む、第1〜第13の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0076】
第15の実施形態では、本開示は、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物が、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、又はエン−インのうち少なくとも1つを含む、第1〜第14の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0077】
第16の実施形態では、本開示は、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、又はケイ酸アルミニウムのうち少なくとも1つを更に含む、第1〜第15の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する。
【0078】
第17の実施形態では、本開示は架橋ポリマーネットワークであって、
2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物と架橋したポリチオールと、
架橋ポリマーネットワークに共有結合で組み込まれた、下記の式:
【0079】
【化8】
で表わされる染料化合物とを含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、結合、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、及び、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールである架橋ポリマーネットワークを提供し、
架橋ポリマーネットワークは、第1〜第16の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物から調製される。
【0080】
第18の実施形態では、本開示は、第17の実施形態に記載の架橋ポリマーネットワークを含むシーラントを提供する。
【0081】
第19の実施形態では、本開示は、硬化性組成物中の硬化を示すための方法であって、
第1〜第16の実施形態のいずれか一項に記載の硬化性組成物を提供する工程であって、化合物が、組成物に400ナノメートル〜700ナノメートルの範囲の波長で第1吸光度を提供するのに十分な量で組成物中に存在する、工程と、
組成物を硬化させて、第1の吸光度とは異なる波長に第2の吸光度を有する硬化組成物を提供する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0082】
第20の実施形態では、本開示は、第1の吸光度と第2の吸光度との差が視覚的に測定される、第19の実施形態に記載の方法を提供する。
【0083】
第21の実施形態では、本開示は、組成物が均一に着色されるまで混合を実施する、第19又は第20の実施形態に記載の方法を提供する。
【0084】
第22の実施形態では、本開示は、ポリチオールと、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物とを含む硬化性組成物を、安定化させる方法であって、下記の式:
【0085】
【化9】
の染料化合物を組成物に添加する工程を含み、式中、
Rは、水素又はアルキルであり、
Xは、アルキレンであり、
Yは、結合、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、アルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、又はアリーレンであり、ここにおいてアルキレン、アリールアルキレン、アルキルアリーレン、及びアリーレンは、任意で、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、カルバメート、チオカルバメート、尿素、又はチオ尿素のうちの少なくとも1つによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされ、及び、
Zは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレニル、末端アルケニル、又はチオールであり、
染料化合物の量は、染料化合物を含まないこと以外同じ硬化性組成物である比較組成物に比べて、硬化性組成物の粘度増加を低減するのに十分な量である、方法を提供する。
【0086】
第23の実施形態では、本開示は、Rが水素である、第22の実施形態に記載の方法を提供する。
【0087】
第24の実施形態では、本開示は、Zがアクリルアミド、アクリレート、又はメタクリレートである、第22〜第23の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0088】
第25の実施形態では、本開示は、Yが、結合、−O−、−O−C(O)−、−O−C(O)−NR−、又は任意に少なくとも1つのエーテル、エステル、カーボネート、若しくはカルバメートによって中断又は終端のうちの少なくとも1つをされるアルキレンである、第22〜第24の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0089】
第26の実施形態では、本開示は、Yが、結合、−O−C(O)−、又は任意に少なくとも1つのエーテル若しくはエステルによって中断若しくは終端のうちの少なくとも1つをされるアルキレンである、第22〜第25の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0090】
第27の実施形態では、本開示は、−X−Y−Zが、−CHCH−O−C(O)−CH=CH、−CHCH−O−C(O)−C(CH)=CH、又は−CHCH−O−C(O)−C(CHNHC(O)−CH=CHである、第22〜第26の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0091】
第28の実施形態では、本開示は、末端アルケニルが少なくとも3つの炭素原子を含む、第22〜第27の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0092】
第29の実施形態では、本開示は、フリーラジカル開始剤を更に含む、第22〜第28の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0093】
第30の実施形態では、本開示は、フリーラジカル開始剤が光開始剤である、第29の実施形態に記載の方法を提供する。
【0094】
第31の実施形態では、本開示は、フリーラジカル開始剤が熱反応開始剤である、第29の実施形態に記載の方法を提供する。
【0095】
第32の実施形態では、本開示は、ポリチオールがモノマーである、第22〜第31の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0096】
第33の実施形態では、本開示は、ポリチオールがオリゴマー又はポリマーである、第22〜第31の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0097】
第34の実施形態では、本開示は、ポリチオールが、ジチオールと、ジエン又はジビニルエーテルとを含む構成成分から調製されるオリゴマー又はポリマーである、第33の実施形態の方法を提供する。
【0098】
第35の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの不飽和化合物が、2つの炭素−炭素二重結合を含み、3つの炭素−炭素二重結合を含む第2の不飽和化合物を更に含む、第22〜第34の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0099】
第36の実施形態では、本開示は、2つ以上の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、又はこれらの組み合わせを含む少なくとも1つの不飽和化合物が、ジエン、ジイン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、又はエン−インのうち少なくとも1つを含む、第22〜第35の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0100】
第37の実施形態では、本開示は、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、又はケイ酸アルミニウムのうち少なくとも1つを更に含む、第22〜第36の実施形態のいずれか一項に記載の方法を提供する。
【0101】
本開示をより十分に理解できるように、以下の実施例を記載する。これら実施例は、単に例示を目的とするものであり、いかなる方法でも本開示を限定すると解釈してはならないことを理解すべきである。
【実施例】
【0102】
以下の略称を用いて実施例を説明する。
【0103】
【表1】
【0104】
試薬
特に記載のない限り、他のすべての試薬は、Sigma−Aldrich Company(St.Louis,Missouri)、EMD Millipore Chemicals(Billerica,Massachusetts)、Alfa Aesar(Ward Hill,Massachusetts)、J.T.Baker(Phillipsburg,New Jersey)、BDH Merck Ltd.(Poole,Dorset,UK)、及びCambridge Isotope Laboratories,Inc.(Andover,Massachusetts)などの精密化学製品供給業者から入手されたか若しくは、入手可能であるか、又は、既知の方法により合成可能である。特に報告しない限り、すべての比は、重量基準である。
【0105】
実施例に使用される試薬に対する略語は以下の通りである。
【0106】
【表2】
【0107】
3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリルの合成:
5.00グラム(25.6mmol)の2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾールを、250mLフラスコ中の、ジクロロ酢酸:氷酢酸5:1(体積比)の溶液66mLに加え、50℃で15分間加熱して溶かした。この溶液を0℃に冷却し、次に、13mL濃硫酸中1.94グラム(28.1mmol)硝酸ナトリウムの溶液が入った0℃に維持した250mLフラスコに、10分間かけて、常時撹拌しながらゆっくり加えた。更に30分撹拌した後、この溶液を、これも0℃に維持した、13mL酢酸中4.20グラム(22.1mmol)のN−(2−シアノエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アニリンの混合物が入った250mLフラスコにゆっくりと加え、1時間撹拌した。次いで、反応混合物のpHが約7になるまで炭酸ナトリウム飽和水溶液を添加することによって、反応混合物を中和し、得られた沈殿を真空濾過によって単離した。沈殿を塩化メチレン200mLに溶解させ、次いで、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮した。結果として得られた固体を、3×23cmのシリカゲルカラムにロードし、アセトン:塩化メチレン溶液で、溶媒体積比を10:90から30:70まで徐々に変えることにより溶出させ、更に精製を行った。結果として得られた純粋化合物を含む画分を合わせ、減圧下で濃縮してから、0.3mm Hg(40.0Pa)の真空下約21℃で乾燥させて、4.30グラムの紫色の固体を得た。これは、NMRスペクトルにより3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリルであることが確認された。[H NMR(500MHz,d−DMSO)δ 9.07(d,J=2.4Hz,1H),8.32(dd,J=2.4,8.9Hz,1H),8.17(d,J=8.9Hz,1H),7.91(d,J=9.4Hz,2H),7.11(d,J=9.4Hz,2H),4.99(t,J=5.1Hz,1H),3.95(t,J=7.1Hz,2H),3.69(m,4H),2.91(t,J=6.9Hz,2H)]。
【0108】
調製1
2−メチル−アクリル酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの合成:
【0109】
【化10】
【0110】
約21℃のテトラヒドロフラン20mL中3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリル0.55グラム(1.39mmol)の溶液を収容している50mLのフラスコに、トリエチルアミン0.29mL(2.1mmol)を添加し、その後、それを0℃に冷却した。162μL(1.67mmol)メタクリロイルクロリドを加え、温度を0℃に維持しながら、窒素雰囲気下で16時間混合物を撹拌した。この反応混合物を濾過し、濾液をロータリーエバポレータで濃縮した。得られた紫色の物質をクロロホルムに溶解させ、炭酸ナトリウム飽和溶液で2回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄し、塩化ナトリウム飽和溶液で1回洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって有機部分を乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮した。結果として得られた固体を、3×23cmのシリカゲルカラムにロードし、メチルtert−ブチルエーテル:塩化メチレン溶液で、溶媒体積比を4:96から10:90まで徐々に変えることにより溶出させ、更に精製を行った。結果として得られた純粋化合物を含む画分を合わせ、減圧下で濃縮してから、0.3mm Hg(40.0Pa)の真空下約21℃で乾燥させて、190mgの固体を得た。これは、NMRスペクトル法により2−メチル−アクリル酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルであることが確認された。[H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.84(d,J=2.3Hz,1H),8.40(dd,J=2.3,9.0Hz,1H),8.23(d,J=9.0Hz,1H),8.11(d,J=9.3Hz,2H),6.93(d,J=9.4Hz,2H),6.15(m,1H),5.68(m,1H),4.49(t,J=5.9Hz,2H),3.98(m,4H),2.82(t,J=6.9Hz,2H),1.99(m,3H)]。
【0111】
調製2
アクリル酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの合成:
【0112】
【化11】
【0113】
約21℃のN,N−ジメチルホルムアミド20mL中3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリル0.399グラム(1.01mmol)の溶液を収容している100mLのフラスコに、トリエチルアミン422μL(3.03mmol)を添加した。この溶液を、約21℃で10分間、窒素雰囲気下で撹拌した。次に、195μL(2.41mmol)のアクリロイルクロリドを加えた。フラスコを油浴に入れ、温度を約70℃に維持しながら、窒素雰囲気下で18時間混合物を撹拌した。この反応混合物を次に、水(約50mL)と塩化メチレン(約50mL)との間で分配した。重炭酸ナトリウム飽和水溶液5mLを添加することによって、水層を塩基性にした。次いで、有機層を除去し、水層を塩化メチレン(各回約50mL)で更に2回抽出した。次いで、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮した。得られた固体を、4×30cmのシリカゲルカラムにロードし、次いで、約5:95(体積比)酢酸エチル:塩化メチレン溶液で溶出させることによって、更に精製した。結果として得られた純粋化合物を含む画分を合わせ、減圧下で濃縮してから、0.3mm Hg(40.0Pa)の真空下約21℃で乾燥させて、280mgの固体を得た。これは、NMRスペクトル法によりアクリル酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルであることが確認された。[H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.78(d,J=2.2Hz,1H),8.34(dd,J=2.2,8.9Hz,1H),8.17(d,J=8.9Hz,1H),8.06(m,2H),6.86(m,2H),6.42(dd,J=1.2,17.3Hz,1H),6.11(dd,J=10.5,17.3Hz,1H),5.89(dd,J=1.2,10.5Hz,1H),4.43(t,J=5.8Hz,2H),3.91(t,J=6.8Hz,2H),3.90(t,J=5.8Hz,2H),2.75(t,J=6.8Hz,2H)]。
【0114】
調製3
2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの合成:
【0115】
【化12】
【0116】
約21℃のN,N−ジメチルホルムアミド30mL中3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリル0.399グラム(1.01mmol)の溶液を収容している100mLのフラスコに、ビニルジメチルアズラクトン540μL(4.04mmol)を添加した。次に、15μL(101μmol)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを加えた。この混合物を窒素雰囲気下、約21℃で18時間撹拌した。この反応混合物を次に、水(約50mL)と塩化メチレン(約50mL)との間で分配した。次いで、有機層を除去し、水層を塩化メチレン(各回約50mL)で更に2回抽出した。この有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮してから、0.3mm Hg(40.0Pa)の真空下約21℃で乾燥させて、465mgの固体を得た。これは、NMRスペクトル法により2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルであることが確認された。[H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.78(d,J=2.2Hz,1H),8.35(dd,J=2.2,8.9Hz,1H),8.16(d,J=8.9Hz,1H),8.05(m,2H),6.84(m,2H),6.28(dd,J=1.3,17.0Hz,1H),6.06(dd,J=10.8,17.0Hz,1H),5.86(s,1H),5.68(dd,J=1.3,10.8Hz,1H),4.41(t,J=5.6Hz,2H),3.92(t,J=7.0Hz,2H),3.87(t,J=5.6Hz,2H),2.75(t,J=7.0Hz,2H),1.53(s,6H)]。
【0117】
調製4
4−ビニル−安息香酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの合成:
【0118】
【化13】
【0119】
3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリル0.199グラム(503μmol)、4−ビニル安息香酸57.6mg(389μmol)、及びトリフェニルホスフィン0.229グラムを、約21℃で100mLのフラスコ内のテトラヒドロフラン10mLに溶解させた。フラスコを氷水浴に入れることにより、この溶液を0℃に冷却した。フラスコは、テトラヒドロフラン(THF)5mL中ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)265μL(1.35mmol)の溶液を収容している付加漏斗を備えていた。温度を約0℃に維持しながら、窒素雰囲気下、この撹拌反応混合物に、DIAD/THF溶液を30分間かけて滴下で加えた。添加が完了したら、反応混合物を約21℃まで温めた。次にこの反応混合物を窒素雰囲気下、約21℃で18時間撹拌した。この反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮した。得られた物質を水(約50mL)と塩化メチレン(約50mL)との間で分配した。次いで、有機層を除去し、水層を塩化メチレン(各回約50mL)で更に2回抽出した。次いで、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮した。得られた固体を、4×20cmのシリカゲルカラムにロードし、次いで、約5:95(体積比)酢酸エチル:塩化メチレン溶液で溶出させることによって、更に精製した。結果として得られた純粋化合物を含む画分を合わせ、減圧下で濃縮してから、0.3mm Hg(40.0Pa)の真空下約21℃で乾燥させて、143mgの固体を得た。これは、NMRスペクトル法により4−ビニル−安息香酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルであることが確認された。[H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.71(d,J=2.2Hz,1H),8.29(dd,J=2.2,8.9Hz,1H),8.12(d,J=8.9Hz,1H),8.00(m,2H),7.92(m,2H),7.44(m,2H),6.88(m,2H),6.71(dd,J=10.7,17.6Hz,1H),5.85(d,J=17.6Hz,1H),5.37(d,J=10.7Hz,1H),4.57(t,J=5.8Hz,2H),3.99(t,J=5.8Hz,2H),3.93(t,J=6.8Hz,2H),2.77(t,J=6.8Hz,2H)]。
【0120】
調製5
アリル−カルバミン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの合成:
【0121】
【化14】
【0122】
約21℃のN,N−ジメチルホルムアミド10mL中3−{(2−ヒドロキシ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−プロピオニトリル0.200グラム(505μmol)の溶液を収容している20mLのバイアル瓶に、アリルイソシアネート180μL(2.04mmol)を添加した。次に、30μL(505μmol)のジブチルスズジラウレートを加えた。バイアル瓶に蓋をし、機械的振盪器、モデル「WRIST ACTION SHAKER MODEL 75」(Burrell Scientific(Pittsburgh,Pennsylvania)製)にて約21℃で18時間混合した。この反応混合物を次に、水(約50mL)と塩化メチレン(約50mL)との間で分配した。次いで、有機層を除去し、水層を塩化メチレン(各回約50mL)で更に2回抽出した。この有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムの床に通すことによって乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレータで濃縮してから、1.0mm Hg(133.3Pa)の真空下約90℃で乾燥させて、260mgの固体を得た。これは、NMRスペクトル法によりアリル−カルバミン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルであることが確認された。[H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.68(d,J=2.2Hz,1H),8.26(dd,J=2.2,9.0Hz,1H),8.09(d,J=9.0Hz,1H),7.89(m,2H),6.81(m,2H),5.78(m,1H),5.14(d,J=17.3Hz,1H),5.10(d,J=10.2Hz,1H),4.94(t,J=5.5Hz,1H),4.33(t,J=5.6Hz,2H),3.86(t,J=6.8Hz,2H),3.83(t,J=5.6Hz,2H),2.75(t,J=6.8Hz,2H)]。
【0123】
ポリチオエーテル1(PTE−1)
次のように、硬化性ポリチオエーテル組成物を調製した。40mLのアンバーガラスバイアルに、5.000グラムのDMDO、3.7229グラムのDVE、0.0937グラムのI−819、及び0.6473グラムのTACを21℃で入れた。次いで、バイアルを密封し、I−819が溶解するまで10分間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0124】
ポリチオエーテル2(PTE−2)
次のように、硬化性ポリチオエーテル組成物を調製した。40mLのアンバーガラスバイアルに、5.000グラムのDMDO、3.1067グラムのDVE、0.0940グラムのI−819、及び1.2946グラムのTACを21℃で入れた。次いで、バイアルを密封し、I−819が溶解するまで10分間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0125】
ポリチオエーテル3(PTE−3)
次のように、硬化性ポリチオエーテル組成物を調製した。40mLのアンバーガラスバイアルに、10.0000グラムのオリゴマー1、0.1088グラムのI−819、及び0.8794グラムのTACを21℃で入れた。次いで、バイアルを密封し、I−819が溶解するまで8時間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0126】
(実施例1)
上述のように、PTE−1のサンプルを調製し、I−819を添加した後、このアンバーバイアルに、0.0015グラムの2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルを加えた。次いで、バイアルを密封し、染料とI−819が溶解するまで24時間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0127】
(実施例2)
上述のように、PTE−2のサンプルを調製し、I−819を添加した後、このアンバーバイアルに、0.0005グラムの2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルを加えた。次いで、バイアルを密封し、染料とI−819が溶解するまで24時間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0128】
(実施例3)
上述のように、PTE−2のサンプルを調製し、I−819を添加した後、このアンバーバイアルに、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの、N−メチルピロリジノン中0.005重量%溶液100μLを加えた。次いで、バイアルを密封し、染料とI−819が溶解するまで10分間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0129】
(実施例4)
おおむね実施例3に記述された手順を繰り返し、ただし、PTE−2の代わりに同重量のPTE−3を使用した。染料とI−819が溶解するまで、ロールミルを8時間続けた。
【0130】
比較実施例A
おおむね実施例2に記述された手順を繰り返し、ただし、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−プロピオン酸2−{(2−シアノ−エチル)−[4−(6−ニトロ−ベンゾチアゾール−2−イルアゾ)−フェニル]−アミノ}−エチルエステルの代わりに、同重量のMEHQを使用した。次いで、バイアルを密封し、I−819が溶解するまで24時間、実験室用ロールミル上に置いた。
【0131】
試験方法
下記の試験方法は、未硬化サンプルの安定性と硬化時の色変化を評価するために使用された。
【0132】
安定性
未硬化の樹脂安定性は、動的粘度変化の関数として、アンバーバイアル中21℃で18日後、PTE−2、及び対応する実施例2、3、及び比較実施例Aについて測定した。表1に示す結果は、TA Instruments(New Castle,Delaware)から入手したモデル「AR2000」レオメーターを用いて測定された。
【0133】
サンプルを、公称2×2×0.2cmのシリコーンゴム成形型に注ぎ、Clearstone Technologies,Inc.(Minneapolis,Minnesota)から入手したモデル「CF2000」コントローラーを使用して、21℃で、455nm LEDから距離1.27cmで30秒間露光させることにより硬化させた。
【0134】
色測定
硬化時の色変化は、ΔE値として定義され、例えばモデル「MINISCAN XE PLUS D/8S」又は「MINISCAN EZ」(Hunter Associates Laboratory.Inc.(Reston,Virginia)から入手)などの比色計を用いて、モードD65/10で測定された。結果を表2に示す。
【0135】
Tg:
硬化ポリチオエーテル樹脂PTE−1及びPTE−3、並びに対応する実施例1及び4のガラス転移温度を、TA Instrumentsから入手したモデル「DSC Q2000」示差走査熱量計を使用して測定した。結果を表3に示す。
【0136】
ジェット燃料耐性
硬化ポリチオエーテル樹脂PTE−1及びPTE−3、並びに対応する実施例1及び4はまた、自動車技術者協会(SAE)国際規格AS5127/1に従って、ジェット燃料耐性の評価が行われた。硬化材料を、ジェット基準液タイプ1(JRF1)に60℃で7日間含浸した後、サンプルの膨潤百分率及び重量増加百分率を判定した。JRF1の組成は、SAE規格AMS2629によって定められている。結果を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく、当業者は、本開示の種々の修正及び変更を行うことができ、また、本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不当に限定されないと理解すべきである。