(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(ばら積み貨物の陸揚げの概要)
まず、ばら積み貨物の陸揚げの概要を
図1に基づいて説明する。ばら積み貨物を積載した船舶301が接岸する岸壁には、ガントリークレーン101が設置されている。このガントリークレーン101のトロリ121には、ユニット化されたニューマチックアンローダ201が吊り下げられている。ニューマチックアンローダ201は、船舶301によって運搬される粒状物などのばら積み貨物を吸入管211により吸い上げて、ニューマチックアンローダ201から排出管221に排出するようになっている。
【0012】
排出されたばら積み貨物は、通常の貨物コンテナと同様の外形を有するコンテナ401に充填されるようになっている。上記コンテナ401は、台車501に載置されて艀601に積み込まれ、他の岸壁に運ばれて、台車501ごと岸壁に降ろし得るようになっている。
【0013】
以下、上記各構成要素について説明する。
【0014】
(ガントリークレーン101)
ガントリークレーン101は、コンテナヤードと称される岸壁に設置されているもので、一般に、例えば次のような構造を有している。すなわち、ガントリークレーン101は、鉛直方向に設けられた脚部102・103を有し、上記脚部102・103は、連結部104、および補強部105・106により連結、補強されている。脚部102・103の下部には車輪107が取り付けられ、ガントリークレーン101を岸壁に沿って移動させ得るようになっている。脚部102・103の上方部には、水平方向に張り出して設けられたブーム108と、そのブーム108の先端部と脚部102の頂部とを斜めに連結するテンションバー109・110とが取り付けられている。ブーム108には、これに沿って移動可能なトロリ121が設けられている。トロリ121は、スプレッダ122を備え、以下に詳述するニューマチックアンローダ201や、コンテナ船によって運搬される貨物コンテナを吊り下げられるようになっている。
【0015】
(ニューマチックアンローダ201)
ニューマチックアンローダ201は、フレーム202と、水平方向に設けられたブーム203と、上記フレーム202とブーム203とを連結するテンションバー204・205とを備えている。フレーム202には、それぞれ上記ブーム203等によって支持される吸入管211、および排出管221が接続されている。吸入管211には、伸縮管212、およびフレキシブル管213を介して吸入ノズル214が接続され、船舶301の船倉内のばら積み貨物を吸い上げるようになっている。また、排出管221には、伸縮管222、およびフレキシブル管223を介して排出ノズル224が接続され、船舶301から吸い上げられたばら積み貨物を排出するようになっている。
【0016】
上記ニューマチックアンローダ201は、
図2に示すように、フレーム202の上部に設けられた、例えばISO規格等に準拠した一般的な貨物コンテナと同様の構造、配置の係合部202aによって、ガントリークレーン101のスプレッダ122に連結され得るようになっている。すなわち、上記ニューマチックアンローダ201は、通常のガントリークレーン101が設置されていれば、それに連結して利用できるようになっている。
【0017】
フレーム202内には、吸入管211、および排出管221が接続される分離機231が設けられている。上記分離機231には、空気管232を介して空気を吸引するブロワ233が接続され、船舶301に積載されたばら積み貨物が、空気とともに吸い上げられ、分離機231により分離されて、排出管221から排出されるようになっている。
【0018】
上記のようなニューマチックアンローダ201が用いられることによって、通常のガントリークレーン101が設置されて貨物コンテナの荷役を行うコンテナ船用の岸壁でも、ばら積み貨物の陸揚げ等を行うことが容易にできるので、ばら積み貨物の陸揚げの融通性を高め、岸壁の有効利用を図ることも容易にできる。
【0019】
なお、ニューマチックアンローダ201のフレーム202は分離機231等を密閉状態で収容するようにすれば、一般に粉塵等の発生を抑制しやすいが、これに限らず、骨組み構造など、特に密閉されていない構造を用いるなどしてもよい。
【0020】
また、吸入管211や排出管221は、ブーム203等によって支持されるのに限らず、例えばガントリークレーン101のブーム108に別途設けられた1つ以上のトロリ121によって支持されるようにしてもよい。
【0021】
また、吸入管211、および排出管221の少なくとも一方を複数本設けるなどして、より高い輸送能力が得られるようにしてもよい。
【0022】
また、吸入管211や排出管221(およびブーム203等)を水平方向にも伸縮可能にしたり、鉛直方向に旋回可能にして、トロリ121およびニューマチックアンローダ201を移動させることなく、吸入ノズル214や排出ノズル224による吸入、排出位置を移動させ得るようにしてもよい。
【0023】
(コンテナ401)
上記のようなニューマチックアンローダ201によって船舶301から吸い上げられたばら積み貨物は、サイロ等に貯留されたりトラックに積み込まれたりするようにしてもよいが、
図3に示すようなコンテナ401に充填することによって、通常の貨物コンテナと同じように取り扱うことができる。
【0024】
このコンテナ401の外郭の上部には、例えばISO規格等に準拠したサイズ、形状を有し、上下面の4隅にはツイストロック等と称される連結具に係合される係合部402が設けられている。コンテナ401の上部には、また、ばら積み貨物を流入させる開口部403が設けられているこの開口部403は、上記ニューマチックアンローダ201の排出ノズル224がフランジ結合などにより密閉性を保って接続可能にされることが好ましいが、ばら積み貨物の種類等によっては、単に開放された開口部が形成されるだけでもよい。
【0025】
コンテナ401の上面には、また、フィルタ404が設けられ、ばら積み貨物が充填される際に、コンテナ401内の空気を排気しつつ、粉塵等の流出を抑制し得るようになっている。
【0026】
コンテナ401の底部には、ばら積み貨物を排出する排出口411が設けられ、回動軸412a回りに回動可能な排出蓋412により開閉し得るようになっている。また、コンテナ401の内部には、上記排出口411の周縁部から側壁にかけて傾斜板413が設けられ、内部のばら積み貨物を確実に排出させることが容易にできるようになっている。
【0027】
上記のようなコンテナ401が用いられることによって、ばら積み貨物の荷役用のグラブバケット、ニューマチックアンローダなどの荷役装置や、サイロ等の貯留設備などが設けられていないコンテナヤードなどにおいても、そのようなばら積み貨物を一般的な貨物コンテナと同様に取り扱うことが容易にできるので、ばら積み貨物の陸揚げの融通性を高め、岸壁の有効利用を図ることも容易にできる。
【0028】
なお、コンテナ401内におけるフィルタ404の内側付近に邪魔板(バッフル板)を設け、ばら積み貨物がフィルタ404に直接接触しにくいようにして、粉塵等の流出をより抑制しやすくするようにしてもよい。
【0029】
また、フィルタ404は1箇所に設けられるのに限らず、複数箇所に分散して設けられてもよい。また、必要に応じて邪魔板や仕切壁などが用いられて側壁に設けられるなどしてもよい。さらに、コンテナ401の長手方向両端部など、側壁に複数設けられたり上壁と側壁にそれぞれ1つ以上設けられたりしてもよい。
【0030】
また、排出蓋412は、上記のように1つだけ設けられるのに限らず、2つ以上に分割されて両開きになるような形で設けられてもよい。また、コンテナ401の底部の全部または大部分を覆い、底部を全開またはほぼ全開できるような排出蓋が設けられてもよい。また、長手方向端部の側壁や長手方向に沿った側壁の全部または一部に扉を設けて開閉できるようにしてもよい。
【0031】
また、開口部403を塞ぐための、一体的または分離した蓋やハッチなどが設けられてもよい。
【0032】
また、上記のようなコンテナ401の内部に、温度や湿度の少なくとも一方を制御可能な空気調和ユニットが設けられてもよい。このようなユニットが設けられることによって、例えば穀物などが充填される場合に、そのまま保管しておくことが容易になるので、サイロが設けられていない埠頭で陸揚げして、その場で保管しておいたり、運搬先で保管しておいたりすることができ、埠頭利用の柔軟性を大幅に向上させ、またはサイロ等の設置負担を軽減(設置の必要性を回避)することなどができる。さらに、災害時などに、コンテナ401をばら積み貨物の輸送手段として用いると共に輸送先で貯蔵手段として用いることなども可能になる。
【0033】
(台車501)
台車501は、
図4に示すように、例えば上記のようなコンテナ401を複数載置可能な載置台502を備えている。載置台502の上面には、船舶やトレーラにおいてコンテナを固定するのと同様の例えばISO規格等に準拠した係合部503が設けられている。なお、さらに、コンテナを個縛するための部材等が設けられたりしてもよい。
【0034】
載置台502の下部には、適宜個数の車輪504が取り付けられている。この車輪504は、方向が固定されたものでもよく、また、一部または全部が操舵(鉛直軸回りに例えば90°以上、180°以上、または360°など回動)可能なものであってもよい。特に、全ての車輪504を鉛直な軸回りに回動可能に設ける場合には、台車504の向きを変えずに移動方向を変えることができるので、例えば艀601に積み込むときと荷下ろしするときとで移動方向を異ならせることなどができ、舷側から積み込んで船首または船尾から荷下ろしすることや、その逆なども容易にできる。また、例えば上記操舵可能な車輪など、一部または全部の車輪を駆動する駆動モータを設けて、台車501を自走可能にしてもよい。
【0035】
上記のような台車501が用いられることによって、複数のコンテナ401を一括してハンドリングすることができるので、コンテナクレーンや岸壁の稼働率を高めることが容易にできる。特に、このような台車501を以下のような艀601と組み合わせて他の岸壁に運搬することによって、そのような台車501を艀から陸揚げすることや、台車501に載置されたコンテナ401をトレーラに積み込むことなどが、コンテナヤードに設置されたコンテナクレーンを使用しなくても容易に行えるので、コンテナクレーンや岸壁の稼働率を一層高めることが容易にできる。
【0036】
なお、上記のような台車501には、コンテナ401を多段に積み上げて載置するようにしてもよい。
【0037】
また、上記のような台車501には、ばら積み貨物が充填されるコンテナ401を載置するのに限らず、通常の貨物コンテナを載置して搬送するようにしてもよい。
【0038】
また、台車501が走行する際の安定度を高めるために、側方にスライドして張出し可能なアームや、鉛直軸回りに回動して側方に張出し可能なアームと、これらのアームに設けられた車輪とを有する補助輪装備(トリガー装備)を設け、必要に応じて左右車輪間の最大距離(トレッド)を大きくし得るようにしてもよい。
【0039】
(艀601)
上記のような台車501を積載して運搬するのに適した艀601には、
図5〜
図7に示すように、船体上に甲板602が設けられている。この甲板602は、複数の油圧シリンダ603によって支持され、甲板602の高さを岸壁の高さに合わせるように制御し得るようになっている。これによって、岸壁との間で台車501を容易に移動させることができる。
【0040】
甲板602上には、岸壁との間での台車501の移動(積み込みおよび/または陸揚げ)を駆動する台車駆動部611が設けられている。その駆動の方法は特に限定されないが、例えばモータにより駆動されるチェーンに取り付けられた連結アーム612を台車501に連結して駆動することなどができる。
【0041】
ここで、上記のような艀は、エンジン等を搭載して自走可能なものであってもよいし、曳き船によって牽引されるものなどであってもよい。
【0042】
上記のような艀601を用いれば、コンテナクレーンを用いることなく、複数のコンテナが載置された台車501の積み卸しが容易にできるので、例えばコンテナクレーンが設置されていない岸壁を利用して、コンテナのトレーラによる輸送を分散して行うことなどが容易にできる。したがって、コンテナヤードにおけるトレーラの交通渋滞を緩和し、コンテナクレーンや岸壁の稼働率を高めることが容易にできる。
【0043】
なお、甲板602には、さらに台車501の車輪504を案内するレールやガイドなどを設けてもよい。また、積載された台車501を固定するために手動または自動の固定機構やストッパが設けられるなどしてもよい。
【0044】
また、甲板602と岸壁との間に掛け渡す例えば折り畳み可能な渡し板が、甲板602の舷側部に設けられるなどしてもよい。
【0045】
また、甲板602の高さを制御するためには、上記のように油圧シリンダ603を用いるのに限らず、例えば
図8に示すように船体内にバラストタンク621を設け、これに注排水するようにしてもよい。また、バラストタンク621を左舷側と右舷側とに分割して、左右非対称な注排水によって甲板602を船体と共に傾け、その傾斜によって台車501を岸壁との間で移動させ得るようにしたり、そのような移動を容易にするようにしたり、また、前記のように自走能力を有する台車401を用いる場合などには、駆動負荷を軽減できるようにしたりしてもよい。
【0046】
また、例えば
図9に示すように、右舷側または左舷側の少なくとも一方の油圧シリンダ603に代えて、シリンダボディの端部が回動ピン605によって回動自在に軸支された油圧シリンダ604を設け、これらの油圧シリンダ603・604を別個に作動させることによって甲板602を傾け得るようにしてもよい。
【0047】
また、上記のような油圧シリンダとバラストタンクとを組み合わせて、高さや傾きの調節範囲を大きくしたり、油圧シリンダとバラストタンクとの一方で(主にまたは専ら)高さの調節、他方で傾きの調節をするようにしたりしてもよい。また、水深が深いところではバラストタンクを用い、浅瀬では油圧シリンダを用いて高さを調節することもできる。
【0048】
ここで、上記のように甲板602を傾けて台車501を移動させるようにする場合には、艀601または台車501に制動機構を設け、手動または自動で台車501の速度や移動位置を制御できるようにしてもよい。より具体的には、例えば所定以上の速度になるのを抑制するように制動されるようにしたりしてもよい。そのような制動は、電子的に行ってもよいし、遠心力を利用するなどして機械的に行ってもよい。
【0049】
また、甲板602と岸壁との高さの差を検出して、甲板602の高さを岸壁の高さに合わせるように、油圧シリンダ603等を自動制御するようにしてもよい。このような制御を用いる場合には、特に、台車501の重心の移動に応じた甲板602の高さや傾きの調節をすることも容易に可能になる。より具体的には、例えば、甲板602上で台車501が移動するのに伴って、甲板602を水平に保ったり所定の傾きになるように調整したりしてもよい。また、台車501の車輪が甲板602と岸壁とにまたがって乗る場合には、甲板602にかかる荷重の大きさや位置に応じて、甲板602の高さや傾きが調整されるようにしてもよい。
【0050】
また、上記のように甲板602の高さを調整可能にすることによって岸壁との間で積み荷の移動が容易になる効果は、台車501に限らず、他の台車や積載物を運搬する場合でも得ることはできる。
【0051】
なお、上記のようなコンテナ401、台車501、および艀601を組み合わせて、ばら積み貨物の陸揚げを行う場合、以下のような種々の何れの手順を用いることも可能である。
【0052】
(a) 個々のコンテナ401にばら積み貨物を充填した後、そのコンテナ401を台車501に載置し、その台車501を艀601に積み込む。
【0053】
(b) 予め台車501に載置したコンテナ401にばら積み貨物を充填した後、その台車501を艀601に積み込む。
【0054】
(c) 個々のコンテナ401にばら積み貨物を充填した後、そのコンテナ401を、予め艀601に積み込まれた台車501に載置する。
【0055】
(d) 予め艀601に積み込まれた台車501に載置されたコンテナ401に、順次、ばら積み貨物を充填する。
【0056】
また、上記のような台車501と、艀601とを組み合わせて、船舶301からガントリークレーン101によって陸揚げされた貨物コンテナのトレーラ輸送等を分散して行う場合には、以下のような何れの手順を用いることも可能である。
【0057】
(a) 船舶301に積載された貨物コンテナを、ガントリークレーン101によって台車501に載置し、その台車501を艀601に積み込む。
【0058】
(b) 船舶301に積載された貨物コンテナを、ガントリークレーン101によって、予め艀601に積み込まれた台車501に載置する。
【0059】
なお、上記の説明では、船舶301によって運搬されるばら積み貨物や貨物コンテナが陸揚げされる例を説明したが、同様にして、ばら積み貨物や貨物コンテナを船舶301に積み込むようにすることも容易にできる。