特許第6126422号(P6126422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126422
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/06 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   E05C1/06 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-60249(P2013-60249)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185449(P2014-185449A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆之
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−006447(JP,U)
【文献】 実開平03−130876(JP,U)
【文献】 特開2004−285610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00 − 21/02
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物開口部に設けられる枠体と、この枠体に開閉自在に支持される面材と、前記枠体に対して前記面材を施解錠する錠装置とを備えた建具であって、
前記錠装置は、
前記枠体および面材のうちの一方に設けられて施錠位置と解錠位置との間で移動可能な錠係合部と、前記枠体および面材のうちの他方に設けられて前記錠係合部に係合可能な錠受け部と、操作部材の操作により前記錠係合部を連動させて施錠位置と解錠位置との間で移動させる連動部と、を備え、
前記連動部は、前記枠体の見込み面と前記面材の見込み面との間の設置空間に配置され、かつ前記面材が施錠されている状態において、前記連動部の見込み方向であって前記操作部材が挿入される側の端縁が前記面材の見込み方向の端縁と同じか前記設置空間の内部に位置し、
前記操作部材は、前記連動部に着脱可能であり、屋内側あるいは屋外側から前記枠体の見込み面と前記面材の見込み面との間の空間に挿入して前記連動部を操作可能である建具。
【請求項2】
前記連動部は、前記操作部材によって回動操作されるレバーと、このレバーに連結され前記レバーの回動操作により進退する作動片と、この作動片と前記錠係合部とに連結されるリンク部とを有し、
前記レバーには係合ピンが設けられ、この係合ピンに係合する係合溝が前記作動片に設けられるとともに、
前記係合溝は、前記レバーの前記回動操作を許容し前記作動片の移動を許容しない空転領域と、この空転領域に連続して設けられ前記レバーの回動操作を前記作動片に伝達する係合領域と、を有する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記錠装置は、前記レバーが前記面材の見込み方向の端縁から突出しない状態を維持する付勢部材を備えている請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記操作部材の先端部には係合突起が設けられ、かつ、前記レバーには、前記係合突起に係合可能とされる係合用切欠が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記レバーには、さらに前記係合突起に係合可能とされる係合用孔が設けられている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記操作部材は、前記係合突起が設けられた先端部と、握り部が形成された基端部とを備え、前記係合突起は、最も先端側に配置された第一係合突起と、この第一係合突起とそれぞれ同じ寸法離れて配置される第二係合突起及び第三係合突起とを備えた請求項5に記載の建具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、詳しくは、建物開口部に枠体が設けられ、この枠体に面材が開閉自在に支持され、枠体に対して面材を錠装置で施解錠する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉窓や縦辷り出し窓等の建具では、枠体に対して障子(面材)が錠装置で施解錠されている。
建具には、防犯上の理由から、障子を枠体に対して施錠し、あるいは、解錠するハンドルが着脱自在とされたタイプのものがある。
このタイプの建具として、ハンドルの回転操作により回転軸が回転する窓サッシの開閉機構を備え、ハンドルが回転軸に対して着脱可能とされた竪軸辷り窓の従来例がある(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の従来例は、ハンドル取付部と窓の開度調節つまみとが一体的に設けられた窓操作部を備えており、この窓操作部は窓の下枠に取り付けられている。ハンドルには、開閉機構の回転軸に対する取り付け取り外しを可能とする着脱機構が設けられており、この着脱機構は、回転軸の周面を先端が係合する係合部をハンドルに回動自在に設け、この係合部を回動させることで、ハンドルが回転軸に対して着脱となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−285610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、ハンドルを窓操作部から取り外しても、窓操作部が下枠から屋内に突出した状態で残される。
そのため、ハンドルがない状態でも、窓操作部が台座として下枠に残るので、窓の外観が不良となる。この点、窓操作部を小さくして目立たなくすることも考えられるが、ハンドルを回転軸に連結するために、窓操作部に大きなスペースが必要とされるので、窓操作部自体を小さくすることに限界がある。
【0006】
本発明の目的は、操作部材に連結される台座が外部に露出することがなく、外観が良好な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、建物開口部に設けられる枠体と、この枠体に開閉自在に支持される面材と、前記枠体に対して前記面材を施解錠する錠装置とを備えた建具であって、前記錠装置は、前記枠体および面材のうちの一方に設けられて施錠位置と解錠位置との間で移動可能な錠係合部と、前記枠体および面材のうちの他方に設けられて前記錠係合部に係合可能な錠受け部と、操作部材の操作により前記錠係合部を連動させて施錠位置と解錠位置との間で移動させる連動部と、を備え、前記連動部は、前記枠体の見込み面と前記面材の見込み面との間の設置空間に配置され、かつ前記面材が施錠されている状態において、前記連動部の見込み方向であって前記操作部材が挿入される側の端縁が前記面材の見込み方向の端縁と同じか前記設置空間の内部に位置し、前記操作部材は、前記連動部に着脱可能であり、屋内側あるいは屋外側から前記枠体の見込み面と前記面材の見込み面との間の空間に挿入して前記連動部を操作可能であることを特徴とする。
【0008】
この構成の発明では、面材を解錠するため、屋内側あるいは屋外側から操作部材を枠体の見込み面と面材の見込み面との間の空間に挿入して連動部に係合させた後、操作部材によって連動部を操作する。すると、係合部が錠受け部から外れて面材の開放操作が可能となる。逆に、面材を施錠するため、面材で枠体を閉じた後、操作部材によって連動部を先ほどとは逆に操作する。すると、連動部を介して錠係合部が解錠位置から施錠位置に移動し、錠係合部が錠受け部に係合される。施錠されたら、操作部材を連動部から外す。操作部材が連動部から外されているので、錠装置を操作することができない。
本発明では、連動部が面材と枠体との間に設けられた設置空間に配置されており、しかも、面材が施錠されている状態において、連動部の見込み方向であって操作部材が挿入される側の端縁が面材の見込み方向の端縁と同じかあるいは設置空間の内部にあるので、操作部材が係合される連動部が面材の見込み方向の端縁から露出することがなく、建具の外観が良好となる。
【0009】
本発明の建具では、前記連動部は、前記操作部材によって回動操作されるレバーと、このレバーに連結され前記レバーの回動操作により進退する作動片と、この作動片と前記錠係合部とに連結されるリンク部とを有し、前記レバーには係合ピンが設けられ、この係合ピンに係合する係合溝が前記作動片に設けられるとともに、前記係合溝は、前記レバーの前記回動操作を許容し前記作動片の移動を許容しない空転領域と、この空転領域に連続して設けられ前記レバーの回動操作を前記作動片に伝達する係合領域と、を有する構成が好ましい。
【0010】
この構成では、面材が施錠されている状態で、操作部材をレバーに装着して回動操作すると、レバーに設けられた係合ピンが係合溝の空転領域を移動する。係合ピンが空転領域を移動している状態では、レバーの回動操作が許容されるが、作動片が移動しないままとなり、レバーの一部が面材の見込み方向の端縁から引き出される。レバーの一部が面材から引き出されたら、必要に応じて、操作部材のレバーへの係合位置を変える。その後、操作部材によってレバーをさらに回動し続けると、係合ピンが空転領域から係合領域に係合され、レバーの回動によって係合ピンが係合領域を移動することによって作動片が前進する。すると、リンク部を介して錠係合部が施錠位置から解錠位置に移動し、錠係合部が錠受け部から外れて面材の開放操作が可能となる。
以上の構成によれば、係合ピンに係合する係合溝は、レバーの回動操作を作動片に伝達する係合領域の他に、レバーの前記回動操作を許容し作動片の移動を許容しない空転領域を有するから、レバーを面材から引き出す際に、作動片が動かず大きな力がかからない。そのため、レバーの一部が面材から露出した状態で、最も力をかけやすい位置に操作部材をレバーに取り付けることが可能となり、解錠操作など容易に行える。
【0011】
本発明の建具では、前記錠装置は、前記レバーが前記面材の見込み方向の端縁から突出しない状態を維持する付勢部材を備えている構成が好ましい。
この構成では、レバーに設けられた係合ピンが係合溝の空転領域にあって、レバーが回動しやすい状態であっても、付勢部材によって、レバーが面材から突出しない状態で維持される。そのため、地震などによって外部から面材や錠装置に力がかかってレバーが動こうとしても、面材が施錠されている状態では、レバーが面材の見込み方向の端縁から誤って突出することがないので、良好な外観を維持できる。
【0012】
本発明の建具では、前記操作部材の先端には係合突起が設けられ、かつ、前記レバーには、前記係合突起に係合可能とされる係合用切欠が設けられている構成が好ましい。
この構成では、操作部材の係合突起をレバーの係合用切欠の開口から内部に挿入して操作部材を係合用切欠に係合させ、その状態で、操作部材を引っ張ることで、レバーを容易に引き出すことができる。
【0013】
本発明の建具では、前記レバーには、さらに前記係合突起に係合可能とされる係合用孔が設けられている構成が好ましい。
この構成では、操作部材の係合突起をレバーの係合用切欠に係合させて操作部材を引っ張ってレバーを面材から引き出した後、係合突起を係合用孔に係合して操作部材によりレバーを回動操作する。操作部材の係合突起が係合用孔に係合されているので、操作部材がレバーから抜けにくくなり、操作部材の力をレバーに効率的に伝達することができる。
【0014】
本発明の建具では、前記操作部材は、前記係合突起が設けられた先端部と、握り部が形成された基端部とを備え、前記係合突起は、最も先端側に配置された第一係合突起と、この第一係合突起とそれぞれ同じ寸法離れて配置される第二係合突起及び第三係合突起とを備えた構成が好ましい。
この構成では、第一係合突起で係合用切欠を係合してレバーを引き出し、その後、第二係合突起および第三係合突起の一方を係合用孔に係合して操作部材でレバーを所定方向、例えば、時計回りに回動操作する。また、面材のヒンジ装置などの取付位置が逆である場合には、第一係合突起で係合用切欠を係合してレバーを引き出した後、第二係合突起および第三係合突起の他方を係合用孔に係合し、操作部材でレバーを所定方向、例えば、反時計回りに回動操作する。
これにより、ヒンジ装置などの面材の回動中心の取付位置が相違する面材でも、使用する3つの係合突起のうち使用する係合突起を選択するだけで、1つの操作部材で面材を施解錠することができる。そのため、面材の種類が複数あっても、操作部材を共用することができるので、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、操作部材に連結される台座が面材の外部に露出することがなく、建具の外観が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る建具の全体構成を屋内から見た正面図。
図2】建具の横断面図。
図3】建具の縦断面図。
図4】錠装置を示す展開斜視図。
図5】錠装置を示す分解斜視図。
図6】建具の要部を示す縦断面図。
図7】錠装置の要部を示す平面図。
図8】(A)はレバーを引き出した状態を示す錠装置の展開斜視図、(B)はレバーを回動して解錠した状態を示す錠装置の展開斜視図。
図9】(A)はレバーを引き出した状態を示す建具の縦断面図、(B)はレバーを回動して解錠した状態を示す建具の縦断面図。
図10】(A)はレバーを引き出した状態を示す錠装置の要部平面図、(B)はレバーを回動して解錠した状態を示す錠装置の要部平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3において、本実施形態の建具は、建物開口部Pに設けられる枠体1と、この枠体1に開閉自在に支持される2枚の面材としての障子2および2枚の内倒し窓3と、これらの障子2および内倒し窓3の屋外側に配置された2枚の外部サッシ窓4と、枠体1に対して障子2を施解錠する錠装置5とを有するもので、障子2は定期点検(例えば、月に一度のメンテナンス)のために開閉される。
枠体1は、障子2および内倒し窓3を保持する方立11および無目12と、外部サッシ窓4を保持する枠部13とを備えている。
【0018】
障子2は、上框21、下框22および左右の縦框23を四周框組みした内部に、ガラスパネル24を嵌め込んで構成されている。
2枚の障子2のうち図1において右側に配置される障子2は、図1の右側の縦框23が図示しないヒンジ装置などを介して図1中右側に配置される方立11に支持され、図1の左側の縦框23が開放可能に構成されている。2枚の障子2のうち図1において左側に配置される障子2は、図1の左側の縦框23が図示しないヒンジ装置などを介して左側に配置された方立11に支持され、図1の右側の縦框23が屋内側に開放可能に構成されている。左右の障子2の間には方立11が配置されている。
【0019】
内倒し窓3は、それぞれ障子2の下方に配置されている。
内倒し窓3は、上框31、下框32および左右の縦框33を四周框組みした内部に、ガラスパネル34を嵌め込み、かつ、下框32が図示しないヒンジ装置などを介して図1中最も下方に配置された無目12に支持され、上框31が開放可能に構成されている。
外部サッシ窓4は、枠部13に保持される上框41、下框42および左右の縦框43を四周框組みした内部に、ガラスパネル44を嵌め込んだ構成である。
【0020】
錠装置5の構成が図4から図7に示されている。これらの図を用いた錠装置5の説明は、図2中、左右の障子2のうち右側に配置された障子2に用いられた錠装置5についての説明である。図2中、左側の障子2に配置された錠装置5は、右側の障子2に配置された錠装置5と左右を反転させた構成であるため、詳細な説明は省略する。
図4から図7において、錠装置5は、障子2の縦框23に設けられ施錠位置と解錠位置との間で移動可能な錠係合部51と、方立11に設けられて錠係合部51に係合可能な錠受け部52と、錠係合部51を施錠位置と解錠位置とに移動させる操作部材6と、この操作部材6と錠係合部51とを連動させる連動部7とを備えている。
錠係合部51はロックピンからなり、縦框23の見込み面23Aに対向する板部510と、この板部510から突出して形成された円柱状の突出部511とを有する。
錠受け部52は方立11の見込み面11Aに固定されており、突出部511に係合するU字状の係合凹部520を有する。
【0021】
連動部7は、方立11および無目12の見込み面11A,12Aと、障子2の下框22および縦框23の見込み面22A,23Aとの間の設置空間Sに配置されるものであり、下框22の見込み面22Aに取り付けられるベース部材70と、このベース部材70に回動自在に設けられるレバー8と、このレバー8に重ね合わされる板部91を有する作動片9と、作動片9と錠係合部51とに連結されるリンク部10と、レバー8が障子2の見込み方向の端縁から突出しない状態を維持する付勢部材としてのばね部材100と、を備えて構成されている。
ベース部材70は、レバー8および作動片9の板部91を取り付ける凹部701と、この凹部701の両端側にそれぞれ設けられる取付片部702とを備え、取付片部702は下框22の下面に図示しない固着具で固定されている。凹部701の深さはレバー8および板部91の合計の厚さ寸法より大きい。なお、ベース部材70の下框22への取付位置は左右の障子2の間に配置された方立11に近接した位置である。
凹部701には、レバー8を回動自在に支持する支点ピン71と、作動片9を案内するガイドピン72と、ばね部材100を取り付ける取付用ピン73とがそれぞれ設けられている。
【0022】
レバー8は、板状部80の屋内側の部分に係合用切欠81と係合用孔82とが並んで形成された構造である。レバー8の板状部80には作動片9に係合する係合ピン83が設けられている。
レバー8は、障子2が施錠されている状態では、屋内側の端縁が下框22の見込み方向の屋内側端縁より屋内側にあり、この状態がばね部材100で維持される。この状態において、係合用切欠81と同じ平面形状となるようにベース部材70の端縁に切り込み70Aが形成されている。
ばね部材100は、取付用ピン73に係合される巻回部100Aと、この巻回部100Aに接続されレバー8の端部に形成された係合凹部80Aに係合される係合部100Bとを有する。なお、本実施形態では、付勢部材をばね部材100に代えてゴムなどの弾性部材を用いてもよい。
【0023】
作動片9は、板部91と、この板部91の屋外側端縁から起立して設けられた係合片部92とを有する。
板部91には、係合ピン83に係合する係合溝93が設けられている。この係合溝93は、レバー8の回動操作を作動片に伝達する係合領域93Aと、この係合領域93Aに連続して設けられレバー8の回動操作を許容し作動片9の移動を許容しない空転領域93Bと、を有する。係合領域93Aは作動片9の進退方向と直交する方向(見込み方向)に延びて形成されている。
空転領域93Bは係合領域93Aから作動片の進退方向(下框22の長手方向)に向かって支点ピン71を中心に回転する方向に形成されている。
【0024】
板部91には、支点ピン71を案内する第一ガイド溝901と、ガイドピン72を案内する第二ガイド溝902とがそれぞれ作動片9の進退方向、つまり、下框22の長手方向に沿って形成されている。なお、支点ピン71の頂部には、レバー8の抜け止めをするために、第一ガイド溝901の幅寸法より直径の大きな抜止部710が設けられている。同様に、ガイドピン72の頂部には、レバー8の抜け止めをするために、第二ガイド溝902の幅寸法より直径の大きな抜止部720が設けられている。
【0025】
リンク部10は、作動片9の係合片部92と係合される連結金物101と、この連結金物101に取り付けられ下框22の長手方向に沿って延びる下框連動バー102と、この下框連動バー102に連結されて下框22と縦框23とのコーナー部分に設けられるコーナー連動部103と、このコーナー連動部103に連結されて縦框23に沿って移動可能な縦框連動バー104とを備えて構成されている。
【0026】
連結金物101には係合片部92を係合するための係合孔101Aが形成されている。
コーナー連動部103は、下框連動バー102の進退動を縦框連動バー104の進退動に変換するものであり、下框用ブラケット105により下框22に取り付けられ、縦框用ブラケット106により縦框23に取り付けられる。
縦框連動バー104には錠係合部51を係合する係合孔104Aが形成されている。
縦框連動バー104はバーガイド107によって縦框23に進退自在に取り付けられる。
なお、縦框連動バー104の長さと錠係合部51および錠受け部52の設置個数は、建具の大きさに応じて適宜設定されるものである。図4および図5では、錠係合部51および錠受け部52の個数は、それぞれ1個であるが、大きな建具の場合には、縦框連動バー104を長くし、この縦框連動バー104に2個目、あるいは3個目の錠係合部51を設け、これらの錠係合部51に対応する方立11に錠受け部52を設けるものでもよい。
【0027】
図6において、障子2が施錠されている状態では、連動部7の見込み方向の寸法Lは障子2の下框22の見込み方向の寸法M以下である。連動部7の見込み方向であって屋内側の端縁L1が無目12の屋内側端縁M1および下框22の見込み方向の屋内側端縁N1と同じか設置空間Sの内部に位置し、連動部7の見込み方向であって屋外側の端縁L2が無目12の屋外側端縁M2および下框22の見込み方向の屋外側端縁N2より設置空間Sの内部に位置する。
【0028】
操作部材6は、レバー8を回動操作するものであり、屋内側から下框22と無目12との間に挿入可能とされる。
操作部材6は、長尺状の基端部60Aおよび基端部60Aに一体形成された三角形状の先端部60Bを有するプレート60を備えている。基端部60Aは握り部を構成する。
プレート60の先端部60Bには、レバー8の係合用切欠81と係合用孔82とに係合する第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63が設けられている。
第一係合突起61は最も先端側に配置されており、第二係合突起62と第三係合突起63とは、それぞれ第一係合突起61とは同じ寸法離れて配置されている。操作部材6の長手方向に沿った線分であって第一係合突起61を通る線分に対して、第二係合突起62と第二係合突起63とは同じ寸法離れて配置されている。
【0029】
屋内側から障子2を開放する操作について説明する。
点検などのために、図2中、右側に配置された障子2を開閉する。そのため、まず、作業員は操作部材6を手にし、この操作部材6の先端部60Bを無目12と下框22との間に挿入する(図6および図7参照)。
そして、図8(A)、図9(A)および図10(A)に示される通り、操作部材6の先端にある第一係合突起61で係合用切欠81を係合し、そのまま引っ張る。すると、ばね部材100の付勢力に抗してレバー8がばね部材100から外れ、レバー8が支点ピン71を中心に回動するとともに係合ピン83が係合溝93の空転領域93Bを移動する。この状態では、レバー8の回動操作が許容されるが、作動片9が移動しないままであり、係合用孔82が露出するまでレバー8の一部が下框22の見込み方向の屋内側端縁から引き出されることになる。
【0030】
レバー8の一部が下框22の見込み方向端部から引き出されたら、図8(B)、図9(B)および図10(B)に示される通り、操作部材6の最先端にある第一係合突起61で係合用切欠81を再度係合し、第二係合突起62で係合用孔82を係合して操作部材6によってレバー8を所定の方向(図8では時計回り)に回動する。すると、係合ピン83が空転領域93Bから係合領域93Aに係合され、さらに、係合ピン83が係合領域93Aを移動することで、作動片9が前進する。
作動片9が前進すると、作動片9と係合される連結金物101、下框連動バー102、コーナー連動部103および縦框連動バー104が前進し、錠係合部51が施錠位置から解錠位置に移動して錠係合部51が錠受け部52から外れる。
この状態で、操作部材6をさらに引き続けると、障子2が開放される。
【0031】
点検が終了して障子2を施錠するには、障子2を枠体1に閉じ、操作部材6によってレバー8を逆の方向(図8では反時計回り)に回動し、作動片9を後退させる。作動片9の後退に伴って、連結金物101、下框連動バー102、コーナー連動部103および縦框連動バー104が後退し、錠係合部51が解錠位置から施錠位置に移動して錠係合部51が錠受け部52に係合される。
また、図2中、左側の障子2を開放する方法は、右側の障子2を開放する方法と同じであるが、障子2のヒンジ装置の取付位置が左右の方立11で逆のため、下框22の見込み方向端部から一部が引き出されたレバー8を操作部材6で回動操作するために、操作部材6の最先端にある第一係合突起61で係合用切欠81を係合し、第三係合突起63で係合用孔82を係合して操作部材6によってレバー8を所定の方向(図8では反時計回り)に回動することになる。
【0032】
従って、本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)障子2に移動可能に設けられた錠係合部51と操作部材6とを連動させ操作部材6により操作される連動部7を、方立11および無目12の見込み面11A,12Aと障子2の見込み面22A,23Aとの間の設置空間Sに配置し、操作部材6を屋内側から無目12と障子2との間に挿入可能とし、障子2が施錠されている状態において、連動部7の見込み方向であって操作部材6が挿入される屋内側の端縁が障子2の見込み方向の端縁と同じか設置空間Sの内部に位置する構成としたので、閉じられている障子2から連動部7が露出することがないから、建具の外観が良好となる。しかも、操作部材6が連動部7に着脱自在とされているので、障子2が閉じられている状態では、操作部材6を連動部7から外すことにより、連動部7を操作できなくなり、防犯上、好ましい。
【0033】
(2)連動部7は、操作部材6により回動操作されるレバー8を有し、レバー8に係合ピン83が設けられ、この係合ピン83に係合する係合溝93が作動片9に設けられ、係合溝93は、レバー8の回動操作を許容し作動片9の移動を許容しない空転領域93Bと、この空錬領域93Bに連続して設けられレバー8の回動操作を作動片に伝達する係合領域93Aと、を有するから、レバー8を障子2から引き出す際に、空転領域93Bがあることで作動片9を動かさなくてもすむので、大きな力を必要としない。そのため、レバー8の一部が障子2から露出した状態で、最も力をかけやすい位置に操作部材6をレバー8に取り付けることが可能となり、解錠施錠の操作を容易に行える。
【0034】
(3)レバー8に設けられた係合ピン83が空転領域93Bにあってレバー8が回動しやすい状態にあっても、レバー8が障子2の見込み方向の端縁から突出しない状態を維持するばね部材100により、レバー8が障子2から突出しない。そのため、障子2が施錠されている状態で、レバー8が障子2から突出することがないので、良好な外観を維持できる。
【0035】
(4)操作部材6の先端には係合突起61が設けられ、レバー8には、係合突起61に係合可能とされる係合用切欠81が設けられているから、係合突起61をレバー8の係合用切欠81の開口から内部に移動して係合用切欠81に係合させ、その状態で、操作部材6を引っ張ることで、レバー8を容易に引き出すことができる。
【0036】
(5)係合突起62に係合可能とされる係合用孔82が操作部材6に設けられているので、係合突起61を係合用切欠81に係合させて操作部材6を障子2から引き出した後で、操作部材6でレバー8を回動操作する際に、係合突起62を係合用孔82に係合しているので、操作部材6がレバー8から抜けにくくなり、操作部材6の力をレバー8に効率的に伝達することができる。
【0037】
(6)操作部材6は、先端部60Bと握り部とされた基端部60Aとを有し、先端部60Bにおいて、第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63を設けたから、ヒンジ装置の位置が左右で異なる2種類の障子2を開閉する際に、1つの操作部材6を兼用することができる。
【0038】
(7)レバー8および作動片9を障子2の下框22に取り付けるためベース部材70を備え、このベース部材70の凹部701に、レバー8を回動自在に支持する支点ピン71と、作動片9を案内するガイドピン72とを設け、支点ピン71を案内する第一ガイド溝901と、ガイドピン72を案内する第二ガイド溝902とをそれぞれ作動片9の進退方向に沿って形成したので、レバー8の回動操作によって進退する作動片9の直進性が確保されることになり、連動部7を正確に作動させることができる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、操作部材6をレバー8に着脱自在に取り付ける構成として、操作部材6に第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63を設け、レバー8に第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63に係合可能とされる係合用孔82と係合用切欠81とを設けた構成としたが、本発明では、操作部材6とレバー8とを連結する構成は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、係合用切欠81に代えて係合用孔82を用いてもよい。つまり、第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63に係合される対象を全て孔から形成するものでもよい。ただし、前記実施形態のように、レバー8を引き出すために係合用切欠81を用いれば、施錠されてレバー8が障子2と無目12との間に隠れていても、操作部材6をレバー8に向けて差し込むことで、第一係合用切欠81に係合突起61を容易に係合させることができる。さらに、第一係合突起61、第二係合突起62および第三係合突起63に係合される対象を全て係合用切欠から形成するものでもよい。
さらに、本発明では、レバー8に突起を設け、この突起に係合されるフックを操作部材6のプレート60に設けるものでもよい。さらに、操作部材6はプレート状に限定されるものではなく、棒状部材から形成されるものでもよい。特に、握り部を棒状部材から形成することで、操作性が良好となる。
【0040】
前記実施形態では、係合溝93を、レバー8の回動操作を作動片に伝達する係合領域93Aと、この係合領域93Aに連続して設けられレバー8の回動操作を許容し作動片9の移動を許容しない空転領域93Bとを有する構成としたが、本発明では、係合領域のみとし、空転領域を省略するものでもよい。この構成では、レバーを回動し始める時から操作部材に負荷がかかるが、錠装置全体が軽量であり円滑に作動する場合には、使用に際しての不都合は少ないものとなる。
【0041】
前記実施形態では、建具を内開き窓として説明したが、外開き窓としてもよい。外開き窓の場合では、火災等の非常時において、消防隊などが屋外側から屋内に進入しようとした場合にのみ開放される窓であってもよい。
また、本発明の建具は、内倒し窓や外倒し窓にも利用することが可能であり、さらに、縦辷り出し窓などにも利用することが可能である。
【0042】
さらに、方立11および無目12からなる枠体に面材である障子2が支持されるものに限らず、枠体としては、枠材を四周枠組みした窓枠であってもよく、面材としては、単体のパネル材等から構成されるものであってもよい。
また、前記実施形態では、錠装置5のうち錠係合部51と、連動部7とを障子2に設け、錠受け部52を方立11に設けたが、本発明では、これとは逆、つまり、錠係合部51と、連動部7とを方立11および無目12に設け、錠受け部52を障子2に設けるものでもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、錠装置として、一般的なシリンダー錠のような構成でもよく、その他任意の形式の錠が利用できる。そして、本発明では、操作部材としては、錠装置を解錠するための機能のみを有したもの、例えば、操作つまみやレバー、ダイアルなどであってもよく、この場合には、屋内側から面材を開放操作するための固定ハンドルが別途設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…枠体、2…障子(面材)、5…錠装置、6…操作部材、7…連動部、8…レバー、9…作動片、10…リンク部、11…方立、12…無目、11A,12A,22A,23A…見込み面、83…係合ピン、51…錠係合部、52…錠受け部、60…プレート、60A…基端部、60B…先端部、61…第一係合突起、62…第二係合突起、63…第三係合突起、81…係合用切欠、82…係合用孔、93…係合溝、93A…係合領域、93B…空転領域、100…ばね部材(付勢部材)、S…設置空間
図1
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