特許第6126542号(P6126542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126542
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】新規組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/30 20060101AFI20170424BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20170424BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A01N25/30
   A01N59/00 Z
   A01P3/00
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-27208(P2014-27208)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2014-159420(P2014-159420A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】1302867.5
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514040848
【氏名又は名称】ライフクリーン・インターナショナル・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタッファン・サンドストレーム
(72)【発明者】
【氏名】カール−グスタフ・ミリンゲル
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0067470(US,A1)
【文献】 特開2005−281651(JP,A)
【文献】 特表平06−505207(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0028965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A61L
A61K
A61P
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胞子形成菌の胞子を除去するための、約1から約4のpHを有する酸性水系組成物であって、
約100から約2000ppmの溶存二酸化塩素と、濡れ効果および胞子可溶化効果を有する界面活性剤系とを含み、該界面活性剤系は、酸性のpHにおいて酸化に安定な2種以上の炭化水素イオン性界面活性剤を含み、該炭化水素イオン性界面活性剤の内、2種以上の界面活性剤は、4個以上の炭素原子の炭化水素鎖長差を有し、2種以上の界面活性剤が、6から18個の炭素原子を含むアルキル基を有するアミンオキシドである、組成物。
【請求項2】
1種の界面活性剤がC8アミンオキシドであり、1種の界面活性剤がC12アミンオキシドである、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
1種の界面活性剤がオクチルジメチルアミンオキシドであり、1種の界面活性剤がラウリルジメチルアミンオキシドである、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤の量が、約0.2%(体積/体積)であり、ならびに本質的に等しい量のオクチルジメチルアミンオキシドおよびラウリルジメチルアミンオキシドを含む、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌の胞子形成の阻害に効果があるように適合された二酸化塩素の新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は公知の殺菌剤であり、1950年代から水洗浄および水処理に用いられている。二酸化塩素は周知の不安定な化合物であり、この理由は二酸化塩素が強力な酸化剤であるためである。二酸化塩素は一般的に、水溶液中に保存されている間は不安定であると考えられていることから、多くの技術的開示は、使用時に二酸化塩素を製造するためのシステムおよび装置を教示している。一般に用いられるものの一つは、速やかに使用可能な二酸化塩素製剤を製造するために、亜塩素酸ナトリウムの溶液と、強力な酸性溶液、例えば塩酸を含む酸性溶液とを組み合わせることである。WO2007/079287(CDG Technology Inc.)は、製品の貯蔵寿命を延ばすべく、低濃度の二酸化塩素溶液を安定化するための方法を開示している。W02009/058530(Ecolab)は、アニオン性界面活性剤と共に低濃度の二酸化塩素を示す組成物を開示しており、この組成物はコクシジウム寄生虫の不活性化における効果を示す。
【0003】
米国特許出願第2009/0028965号(Clinimax Limited)は、使用時に二酸化塩素溶液を製造することができる多液型組成物を開示している。生じた組成物は、低濃度の二酸化塩素に加えて洗浄剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを含み、pHを約5.0に保持する。たとえ本文献が有望な結果を示したとされていても、ヘルスケア環境の現場で試験される場合には、関連製品および別の二酸化塩素放出製品は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の胞子への効果が限定されると思われる(SD Goldenberg他、in Journal of Hospital Infection、2012年、第82巻、64−67頁参照)。この問題はS.Ali他、in Journal of Hospital Infection、2011年、第79巻、78−79頁でも確認されており、この文献では、胞子懸濁液のチューブ上で試験される際にたとえ市販の殺胞子製剤が殺胞子の必要条件を明白に満たしても市販の殺胞子製剤は表面上の胞子を十分に除去できないことが報告されている。効果的な殺菌剤ならびに表面に結合したクロストリジウム・ディフィシルおよび類似の病理学的胞子形成微生物の胞子に対する効果を確認する試験方法の両方が欠けていることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/079287号
【特許文献2】国際公開第2009/058530号
【特許文献3】米国特許出願第2009/0028965号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】SD Goldenberg他、in Journal of Hospital Infection、2012年、第82巻、64−67頁
【非特許文献2】S.Ali他、in Journal of Hospital Infection、2011年、第79巻、78−79頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、病院環境における表面上のクロストリジウム・ディフィシル等の病原性細菌の病原性胞子の形態である胞子も効果的に阻害するように適合された、適度に安定であるとともに低濃度である二酸化塩素溶液を提供することが強く望まれている。有利には、そのような殺菌溶液は、腐食性を弱めるとともに二酸化塩素に関する一般的な衛生的制限を考慮しつつ、特別に設計された衛生化領域への任意の移転を必要とすることなく人が多い病院環境内においても露出した表面への投与に便利であると同時に、保存および取り扱いが安全でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、最も一般的な言葉では、胞子形成菌の胞子を除去するための酸性水系組成物であって、約100から約2000ppmの溶存二酸化塩素、濡れ効果および胞子可溶化効果の両方を有する界面活性剤系を含む酸性水系組成物に関する。本発明の組成物用の二酸化塩素の濃度範囲についての別の代表例は約100から約1600ppmであり、約100から約1000ppmであり、約500から約1000ppmである。本発明に係る組成物中の二酸化塩素の適切な濃度の例は約100ppmであり、約200ppmであり、約300ppmであり、約400ppmであり、約500ppmであり、約600ppmであり、約700ppmであり、約800ppmであり、約900ppmであり、約1000ppmであり、約1100ppmであり、約1200ppmであり、約1300ppmであり、約1400ppmであり、約1500ppmであり、約1600ppmである。ここで用語「約」は、組成物製品中の二酸化塩素の濃度が組成物製品の製造からその使用までにわずかに低下する可能性があるためという実態を示す。組成物は約1から約4のpHを一般的に有する。組成物は、ガラス、木材、金属および様々なプラスチック材料で形成された物体の表面上の、特に病院環境における表面上の細菌の胞子、特にクロストリジウム・ディフィシル等のクロストリジウム属の細菌種の胞子の除去に発明的な方法で適合されている。組成物は、キャビティもしくはマイクロキャビティまたは従来の殺菌剤が届き難い別の不規則な表面構造に付着する胞子の除去に特に適合されている。組成物は、10分未満の短い接触時間でも組成物の殺菌能力を最大化しつつ殺菌プロセス中の環境への影響を最小化するように更に適合されている。本発明に文脈において用語除去は、胞子が破壊されており生き延びて増殖することができないことを意味する。
【0008】
これらの目的のために、組成物は、胞子に対して適度に強力な酸化攻撃を発揮する能力を備える有効量の二酸化塩素ならびに比較的低濃度でも二酸化塩素の殺菌能力を補助することにより様々な補完効果を備える界面活性剤を含む界面活性剤系を含む。従って、本発明の組成物は、組成物の濡れ効果に寄与する能力を備える1種以上の界面活性剤および胞子可溶化効果に寄与する1種以上の界面活性剤を含む。
【0009】
本文脈において「濡れ効果」は、組成物が表面へ塗布され表面に対して広がって密着膜を形成することに容易に適用可能であることを意味する。本発明の意味において「濡れ効果」は、二酸化塩素組成物が表面のキャビティに対して適切に広がり、溶存二酸化塩素と胞子との間での適切な除去接触を可能にすることに寄与する。
【0010】
また、本発明の全文脈において「可溶化効果」は、組成物が胞子の表面への付着を弱めるまたは除去する能力があることを意味する。「可溶化効果」は、表面から胞子を除去することを含む、組成物の「一般的な界面活性」効果に関し、二酸化塩素との接触を補助するのに寄与して胞子に化学的酸化攻撃を受けさせる。
【0011】
更に本文脈において、界面活性剤が「濡れ効果」に寄与するという用語は、界面活性剤が特定の「可溶化効果」も有することを除外せず、逆もまた同じである。意図する意味は、1種以上の界面活性剤が可溶化効果よりも濡れ効果により顕著に寄与しており、1種以上の界面活性剤が濡れ効果よりもより顕著な可溶化効果を有することである。
【0012】
更に大まかにいうと、特に列挙した二酸化塩素含有組成物において濡れ効果および可溶化効果を効果的に発揮するという要求を満たすために、界面活性剤系は、約1から約4の酸性pHにおいて酸化に対して安定な2種以上の炭化水素イオン性界面活性剤を含み、これらの炭化水素イオン性界面活性剤の内、2種以上の界面活性剤が炭化水素鎖の長さにおいて差異を有する。適切な差異の例は4個以上の炭素原子である。
【0013】
本文脈において「炭化水素イオン性界面活性剤」は、炭化水素イオン性界面活性剤が酸性pHにおいてイオン性であり、直鎖のまたは分岐した炭化水素鎖を含むと定義される。炭化水素鎖は飽和または不飽和であることができ、それにより直鎖または分岐したアルキル、アルケニルまたはアルキニルと称され得る。炭化水素鎖は、任意の表面活性に寄与するもしくは該表面活性を高めるまたは安定性を生じさせる基で更に置換され得る。炭化水素鎖は、アルコキシ鎖のように1個以上のヘテロ原子で更に中断され得る。イオン性界面活性剤についての文脈において、当業者は、何が炭化水素鎖を示すか、および炭化水素イオン性界面活性剤をベースとする様々な種類の界面活性剤がイオン基をもたらす同じ化学構造をベースとする場合に鎖長を変更することができることを明確に理解する。
【0014】
本文脈において「安定性」は、界面活性剤が約1−4の酸性pHにおいて実質的に分解されず、界面活性剤が二酸化塩素により酸化され易くない、即ち「二酸化塩素に安定」であることを意味する。別の文脈において安定性は、輸送および保存中でも化学分解から実質的に安定であるが、沈殿、混濁または界面活性剤の機能もしくは組成物の任意の一般的な外観に影響を及ぼす任意の別の現象等の溶液中における任意の形態の物理的不安定化からも実質的に安定であることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的な態様において、本発明に係る二酸化塩素を含む組成物は、酸性pHにおいて酸化に対して安定な2種以上の炭化水素イオン性界面活性剤を含む界面活性剤系を含み、2種以上の界面活性剤は、前述した望ましい特性を備えた界面活性剤系をもたらすために様々な鎖長の炭化水素鎖を有する。
【0016】
一態様において、本発明に係る組成物は、約1から約4のpHを有し、約100から約2000ppmの溶存二酸化塩素、濡れ効果および胞子可溶化効果を有する界面活性剤系を含む、胞子形成菌の胞子を除去するための酸性水系組成物に関し、界面活性剤系は、約1から約4のpHにおいて酸化に対して安定な2種以上の炭化水素イオン性界面活性剤を含み、これらの炭化水素イオン性界面活性剤の内、前記2種以上の界面活性剤が炭化水素鎖の長さにおいて4個以上の炭素原子の差異を有する。
【0017】
一態様において、2種以上の界面活性剤は、約0.01から約2%(体積/体積)の量で存在し、例えば0.02%から約2%(体積/体積)で存在し、約0.1から約1%(体積/体積)で存在する。
【0018】
一態様において、2種以上の界面活性剤は、約1から約4の範囲のpHにおいてカチオン性界面活性剤である。
【0019】
一態様において、本発明に係る組成物は、低いpHおよび二酸化塩素の存在下で安定なアミンオキシド等の2種以上のカチオン性界面活性剤を含む。本発明での使用に適したアミンオキシドとしてアルキルジ(低級アルキル)アミンオキシドが挙げられ、アルキルジ(低級アルキル)アミンオキシドでは、アルキル基は6−20個の炭素原子を有することができ、好ましくは8−18個の炭素原子を有することができ、飽和または不飽和の直鎖または分岐した鎖を有することができる。低級アルキル基は、1から7個の炭素原子を有する。例としてC8アミンオキシドおよびC12アミンオキシドが挙げられ、一態様において、組成物は、C8アミンオキシドである1種の界面活性剤およびC12アミンオキシドである1種の界面活性剤を含む。そのような界面活性剤の例として、オクチルジメチルアミンオキシドおよびラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0020】
別のアミンオキシドとしてアルキル(ジヒドロキシ低級アルキル)アミンオキシドが挙げられ、アルキル基は6−20個の炭素原子を有することができ、好ましくは8−18個の炭素原子を有することができ、飽和または不飽和の直鎖または分岐した鎖を有することができる。低級アルキル基は1から7個の炭素原子を有する。
【0021】
更に別のアミンオキシドとして、6−20個の炭素原子を含む、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキルモルホリンオキシドが挙げられる。
【0022】
本発明の一態様において、組成物は、約100から約2000ppmの二酸化塩素、前述したように濡れ効果および可溶化効果の両方を確立するために様々な鎖長の炭化水素鎖を有する約0.1から約2(体積/体積)%の2種のカチオン性界面活性剤を含み、各カチオン性界面活性剤は、等しい量でまたはほぼ等しい量で組成物中に存在することができる。各カチオン性界面活性剤は、4個以上の炭素原子で鎖長が異なることができる。
【0023】
一態様において、組成物は約100から約1600ppmの二酸化塩素を含み、界面活性剤の量は、本質的に等しい量のオクチルジメチルアミンオキシドおよびラウリルジメチルアミンオキシドを含む約0.2%(体積/体積)である。
【0024】
本発明の一態様において、組成物は、約1から約4の範囲のpHにおいて安定なアニオン性界面活性剤である2種以上の界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤は、濡れ効果および可溶化効果の両方に寄与するように選択される。
【0025】
本発明の一態様において、組成物は、約100から約1600ppmの二酸化塩素、前述したように濡れ効果および可溶化効果の両方を確立するために様々な鎖長の炭化水素鎖を有する約0.1から約1(体積/体積)%の2種のアニオン性界面活性剤を含み、各アニオン性界面活性剤は、等しい量でまたはほぼ等しい量で組成物中に存在することができる。各アニオン性界面活性剤は、4個以上の炭素原子で鎖長が異なることができる。
【0026】
本発明の一態様において、2種以上のアニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート、アルキル鎖中に6から25個の炭素原子またはアルキル鎖中に8から19個の炭素原子を有する、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート(アルキルベンゼンスルホネート)およびアリールスルホネートの可溶性塩から成る群から選択される。
【0027】
一態様において、アニオン性界面活性剤は、アルキル鎖中に6から19個の炭素原子を有するアルキル−ジフェニルオキシド−ジスルホネートまたはアルキル−フェニル/ジフェニル−スルホネートのナトリウム塩である。アニオン性界面活性剤の一例として、アルキルジフェニルオキシドジスルホネートおよび/またはアルキル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホネートが挙げられる。一例として、Dow Chemical Companyから商品名Dowfax3B2で販売されている製品に含まれるデシル(スルホフェノキシ)二ナトリウム塩が挙げられる。一例として、Dow Chemical Companyから商品名Dowfax8390で販売されている製品に含まれるモノおよびジヘキサデシルジスルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩が挙げられる。
【0028】
一態様において本発明は、表面と有効量の二酸化塩素および界面活性剤系中の2種以上の界面活性剤を含む組成物とを接触させることによる、表面上の胞子形成菌の胞子の除去方法に関し、1種以上の界面活性剤が、組成物が表面の全域に安全に密着して広がるために濡れ効果に寄与し、更に、1種以上の界面活性剤が、胞子に二酸化塩素の効果をより受けやすくさせるために胞子表面に直接的にまたは間接的に影響を及ぼすという意味で胞子の可溶化効果に寄与する。本文脈において、有効量は、本明細書で言及された任意の濃度または濃度範囲を意味する。また本文脈において、2種以上の界面活性剤は概説したように選択されることができ、本明細書の前記箇所において例示した任意の組成物で用いることができる。特に、2種以上の界面活性剤は炭化水素鎖の長さにおいて著しい差異を有しており、著しい差異は2から12個の炭素基の差異を意味する。例示する差異は4個の炭素基である。更に本文脈において、表面に接触することは、胞子により汚染された表面または胞子により汚染されるリスクがあると考えられている表面を十分に覆うためのまたは該表面を十分に覆うことを目的とする本発明の係る組成物の表面への任意の投与または塗布を含む。本方法の特に好ましい有用性は、クロストリジウム属の胞子の除去であり、特にクロストリジウム・ディフィシルの胞子の除去である。
【0029】
説明した方法の一態様において、表面上の胞子形成菌の胞子の除去は、例えば10分以下の限られた接触時間または例えば9分、8分、7分、6分、5分、4分、3分、2分、30秒以下等の1分以下の接触時間中に既に開示したように有効量の任意の組成物を表面に接触させることに関する。
【0030】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、二酸化塩素および補完効果を備える様々な界面活性剤の説明した系の組み合わせを含む本発明は、表面に結合している胞子の除去に必須であると思われることが明らかである。組成物を表面の全領域に広げるための適切な濡れ効果に加えて、界面活性効果が、胞子と表面との間の接着が破壊されることにより得られる。更に、本発明に係る組成物は、胞子表面への直接的な可溶化効果を有すると思われ、該可溶化効果は胞子の完全性の欠如をもたらし、胞子を二酸化塩素の酸化攻撃の影響を受けやすくさせることができ、二酸化塩素の酸化攻撃を強化することができる。
【0031】
以下の例示的箇所において、試験は本発明の組成物および方法を用いて概説されており、該試験は、特に流行性事象中の臨床環境で通常直面する条件を超えるように設計された汚染レベルでの非常に厳密な条件において表面上の胞子の除去に対する有効性を検証する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
二酸化塩素組成物の製造
二酸化塩素は、該二酸化塩素の気体の爆発性に起因して従来の方法では気体で保存され得ないが、一般的に水に高溶解性である。しかしながら、二酸化塩素は極めて揮発性であり、二酸化塩素には、著しく失うことなく高濃度の二酸化塩素溶液を製造し、輸送し、保存することについて問題が残っている。本発明の文脈において、水系二酸化塩素組成物は、EPA Guidelines Manual Alternative Disinfectants and Oxidant、1999年4月、第4章Chlorine Dioxide、4−1から4−41頁に概説されている様々なプロトコルに従って製造され得る。
【0033】
本発明の100から2000ppmの溶存二酸化塩素を有する組成物を製造するために、二酸化塩素を、9%(重量/体積)のHClと、強酸性環境下で速やかに反応して二酸化塩素ClOおよびNaClを生成する7%(重量/体積)のNaClO(亜塩素酸ナトリウム)とを混合することによって製造する。
【0034】
約1600ppmの二酸化塩素を含むプロトタイプのストック溶液5リットルを、300mlの9%(重量/体積)HClと、4.4リットルの高純度水(Millipore Milli−Q)で希釈した300mlの7%(重量/体積)NaClO(亜塩素酸ナトリウム)とを混合して調製した。
【0035】
製造時と以下の実施例に係る表面試験時との間での濃度の低下を補うために、ストック溶液を故意に約10−20%過剰な二酸化塩素で製造した。このため、100−1600ppmの範囲である試験中の例示した溶液の濃度値は名目値と見なされるべきであり、20%まで変化する可能性があり、例えば該溶液の示されている濃度値から10−20%変化する可能性がある。
【0036】
[実施例2A]
試験用の溶液を、
1800mLのストック溶液、
1.8mLのMacat(登録商標)AO−8(約30%オクチルジメチルアミンオキシド)、
1.8mLのMacat(登録商標)AO−12(約30%ラウリルジメチルアミンオキシド)
を混合して、約0.1%(体積/体積)のAO−8および約0.1%(体積/体積)のAO−12を含む、二酸化塩素が約1600ppmでpHが約1の試験溶液にすることにより、ストック溶液から製造した。
【0037】
[実施例2B]
複数の試験溶液を、二酸化塩素の濃度が異なる実施例2Aのカチオン性界面活性剤を用いて、実施例1に従って製造したストック溶液から製造した。
【0038】
実施例2の溶液からのアリコートを、約0.1%(体積/体積)のAO−8および0.1%(体積/体積)のAO−12を含有するMilliQ水で2倍、4倍、8倍、16倍に更に希釈した。試験溶液の最終セットは、1600、800、400、200および100ppmのClOおよび全量で0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含有していた。
【0039】
[実施例3]
試験用の第2の溶液を、1000mlのストック溶液と、1mLのDOWFAX(登録商標)3B2(約38%のベンゼンスルホン酸,デシル(スルホフェノキシ)−,二ナトリウム塩および約8%のベンゼンスルホン酸,オキシビス(デシル)−,二ナトリウム塩)ならびに1mLのDOWFAX(登録商標)8390(38.5%のモノおよびジヘキサデシルジスルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩)とを混合して、約1600ppmの二酸化塩素を含む約1のpHの試験溶液にすることにより、ストック溶液から製造した。
【0040】
[実施例4]
本実施例では、本発明に係る組成物が表面上の胞子形成菌に関する除去能力を示すかどうかを調べるための方法が概説されている。本実施例はまた、従来の抗菌剤とも比較し、従来の抗菌剤が相対的に無効果であることも裏付ける。
【0041】
表面上のクロストリジウム・ディフィシルの胞子の除去
【0042】
方法および材料
【0043】
胞子懸濁液
Cディフィシル胞子PCRリボタイプ023(ECDC/Cardiff nomenclature)を凍結試料からFastidious Anaerobe Agar(FAAAP)が入っているプレートに移し、2日にわたり嫌気条件下で培養した。培養物を大気条件に移し、Cディフィシルのコロニーに胞子形成させた。胞子を採取して滅菌水(逆浸透(RO))中に溶解し、アルコールショック(70%)に曝し、洗浄し、遠心分離し、胞子の懸濁液として回収した。胞子を、Burkerチャンバ中において、懸濁液中の約80%の胞子に匹敵する2.4×10個の胞子(即ち、試験表面上の胞子)まで計数した。
【0044】
寒天プレート
本実験において、Fastidious Anaerobe Agar(FAAAP)にタウロコレート(1g/l)を添加し(ろ過に関するコントロールを除く)、C.ディフィシルに対する選択的寒天プレートを用いた。
【0045】
表面の調製
調製では、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライド、真ちゅうまたは銅の滅菌プレートに移した。胞子懸濁液が乾燥したら、0.2mlの以下の溶液を添加した:
実施例2Aに従って製造した溶液、
Virkon 1%、
エタノール 70%、
滅菌RO水。
【0046】
溶液に10分暴露した後、ガラスおよびプレートをそれぞれ500mlのガラスフラスコに移して希釈するとともに殺菌を中断した。フラスコを200rpmで20分にわたり回転させた。
【0047】
培養
回転させた各フラスコから0.1mlを寒天プレートに移した(培養1)。試料をチューブ中において二段階で1/10に希釈した。各チューブから、0.1mlを寒天プレートに移した(培養2および3)。
【0048】
フラスコ中の溶液をろ過し、100mlの緩衝ペプトン水(PENAL)で3回すすいだ。ろ過を二段階で行なった。最初に1mlをろ過し、次いでフラスコ中の溶液の残量(約249ml)をろ過した。ろ液を寒天プレート上で培養した(培養4および5)。
【0049】
2回、40mlの試料をろ液から採取した。これらを遠心分離して上清を廃棄し、沈殿物を0.1mlの0.85%NaCl溶液中に再懸濁した。全量を寒天プレート上に移した。
【0050】
生存可能な胞子がガラスおよびプレートの表面上に残存しているかどうかを評価するために、これらに湿ったコットンチップを擦り付けた(「二重のS」形状に沿って全て擦り付けた)。チップを、何度か繰り返して1/10に希釈した2mlの前希釈PYブロス中で培養し、寒天プレート(0.2ml/プレート)上で培養した(培養6から9)。
【0051】
全ての培養プレートを、2日にわたり36℃の嫌気条件下で培養した。
【0052】
結果を以下の表1に示す。
【0053】
表1では、結果を、3種の異なる表面(ガラス、真ちゅう、銅)および4種の異なる試験溶液に対する培養1から9に関して示す。丸括弧内の結果は、フラスコ中におけるCFU(コロニー形成単位)の全量、即ち試験溶液による処理を生き延びてフラスコの回転中に表面から離れた胞子の量に関する。表1はまた、試験溶液の処理を生き延びているがフラスコの回転中に表面に付着したままである胞子の量に関する、未希釈のPYブロス中におけるCFUの量も示す。
【0054】
表1は、実施例2に関する試験溶液がCディフィシルの胞子を除去する優れた能力を有することを示す。また、実施例2Aに係る試験溶液が、表面に付着し、この結果、除去が困難であるまたは従来の除去剤の影響を受け難い胞子を除去する能力を有することも重要である。
【0055】
表1の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例5]
胞子懸濁液を有する滅菌顕微鏡スライド(ガラス表面)を実施例4に従って調製した。
【0058】
1600、800、400、200および100ppmのClOならびに全量で0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含有する、実施例2Bで調製した溶液を、実施例4に従ってガラス表面に塗布した。
【0059】
ガラススライドを実施例4と同じように処理し、試料を実施例4と同じように採取して培養した。
【0060】
結果を、1600、800、400、200および100ppmのClOを含む溶液に関して表2に示す。結果を表1と同じように示す。
【0061】
100ppmのような極めて低濃度の二酸化塩素を有する本発明の組成物は、エタノールおよびVirkon等の従来の薬剤と比較してCディフィシルの胞子の除去効果が改善されていることは明らかである。結果はまた、本発明に係る組成物が様々な種類の表面上で組成物の効果を発揮する能力を有することも示す。
【0062】
表2の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0063】
【表2】
【0064】
[実施例6]
表面上のCディフィシルの胞子の除去に関して、様々な種類および組み合わせの界面活性剤と二酸化塩素との組み合わせを評価するため、実施例6を設計した。以下の試験溶液を用いた:
滅菌RO水、
エタノール70%、
1600ppmの二酸化塩素を含む溶液LC1、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD1およびRD2を含む溶液LC1_12、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含む溶液LC1_34、
800ppmの二酸化塩素を含む溶液LC2、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD1を含む溶液LC2_1、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD2を含む溶液LC2_2、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD3を含む溶液LC2_3、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD3を含む溶液LC2_4、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD1およびRD2を含む溶液LC2_12、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含む溶液LC2_34。
【0065】
溶液を実施例2、2Aおよび3に従って調製した。RD1およびRD2は実施例3のアニオン性界面活性剤、商標DOWFAX3B2およびDOWFAX8390をそれぞれ示す。RD3およびRD4は、実施例2Aのカチオン性界面活性剤、商標AO−8MacatおよびAO−12Macatを示す。
【0066】
胞子懸濁液を実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;8.0×10個の胞子/mL(ガラス表面上に8.0×10個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子。
【0067】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を1から10分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中に配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0068】
観測したCFUに関する培養の結果を表4に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0069】
表3の結果に加え、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。表3は、胞子除去効果は、様々な補完効果を備える2種の界面活性剤を組み合わせた場合、単一の界面活性剤を含む溶液と比較して改善されたことを示す。
【0070】
【表3】
【0071】
[実施例7]
実施例7は、本発明に係る二酸化塩素溶液への様々な接触による試験を概説する。胞子懸濁液を、実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;9.6×10個の胞子/mL(ガラス表面上に9.6×10個の胞子))懸濁液中の約80%の胞子。
【0072】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を1から10分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中に配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0073】
試験溶液は、
滅菌RO水 10分、
エタノール70% 10分、
二酸化塩素1600 1分、
二酸化塩素1600 2分、
二酸化塩素1600 3分、
二酸化塩素1600 4分、
二酸化塩素1600 5分、
二酸化塩素1600 6分、
二酸化塩素1600 7分、
二酸化塩素1600 8分、
二酸化塩素1600 9分、
二酸化塩素1600 10分であった。
【0074】
二酸化塩素を含む試験溶液を実施例2Bに従って調製し、該試験溶液は、1600ppmの二酸化塩素ならびに同量のオクチルジメチルアミンオキシドおよびラウリルジメチルアミンオキシドを含む0.2%(体積/体積)のカチオン性界面活性剤を含む。回転後、フラスコの内容物を、実施例4による手順および寒天プレートを用いて処理して培養した。
【0075】
観測したCFUに関する培養の結果を表4に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0076】
表4の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0077】
表4の結果は、試験溶液は、非常に短い接触時間でも胞子の高い汚染表面に対して高効率であることを示す。また、1分以下の短い接触時間で、試験溶液は二酸化塩素に胞子除去効果を発揮させるための適切な効能を備える。
【0078】
胞子懸濁液(リボタイプ25:4.8×10個の胞子/mL(ガラス表面上に4.8×10個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子)に基づく繰り返し試験は、同じ試験溶液を用いて15秒の短い接触時間での有効性を示す。
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例8]
実施例8は、実施例2Aに従って製造した様々な濃度の界面活性剤を有する800および1600ppmの二酸化塩素溶液を用いた試験を概説する。胞子懸濁液を、実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;8.0×10個の胞子/mL(ガラス表面上に8.0×10個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子。
【0081】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を2分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中にそれぞれ配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0082】
試験溶液は、
滅菌RO水、
エタノール70%、
1600ppmの二酸化塩素を含むLC1A_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1B_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.02%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1C_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1E_2、
800ppmの二酸化塩素を含むLC2A_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2B_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.02%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2C_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2E_2であった。
【0083】
RD3およびRD4は、実施例2Aのカチオン性界面活性剤、Macat(登録商標)AO−8およびMacat(登録商標)AO−12を示す。
【0084】
回転後、フラスコの内容物を、実施例4による手順および寒天プレートを用いて処理して培養した。
【0085】
観測したCFUに関する培養の結果を表5に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0086】
表5の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0087】
表5は、0.2%(体積/体積)の濃度の二酸化塩素溶液が、二酸化塩素の両方の試験強度(800および1600ppm)における高濃度および低濃度の両方の界面活性剤と比較して、表面上の胞子を除去するのにより有利な性能を有することを示す。結果はまた、二酸化塩素がその除去効果を発揮するのを補助する本界面活性剤の効能を裏付ける。
【0088】
【表5】