【実施例】
【0032】
[実施例1]
二酸化塩素組成物の製造
二酸化塩素は、該二酸化塩素の気体の爆発性に起因して従来の方法では気体で保存され得ないが、一般的に水に高溶解性である。しかしながら、二酸化塩素は極めて揮発性であり、二酸化塩素には、著しく失うことなく高濃度の二酸化塩素溶液を製造し、輸送し、保存することについて問題が残っている。本発明の文脈において、水系二酸化塩素組成物は、EPA Guidelines Manual Alternative Disinfectants and Oxidant、1999年4月、第4章Chlorine Dioxide、4−1から4−41頁に概説されている様々なプロトコルに従って製造され得る。
【0033】
本発明の100から2000ppmの溶存二酸化塩素を有する組成物を製造するために、二酸化塩素を、9%(重量/体積)のHClと、強酸性環境下で速やかに反応して二酸化塩素ClO
2およびNaClを生成する7%(重量/体積)のNaClO
2(亜塩素酸ナトリウム)とを混合することによって製造する。
【0034】
約1600ppmの二酸化塩素を含むプロトタイプのストック溶液5リットルを、300mlの9%(重量/体積)HClと、4.4リットルの高純度水(Millipore Milli−Q)で希釈した300mlの7%(重量/体積)NaClO
2(亜塩素酸ナトリウム)とを混合して調製した。
【0035】
製造時と以下の実施例に係る表面試験時との間での濃度の低下を補うために、ストック溶液を故意に約10−20%過剰な二酸化塩素で製造した。このため、100−1600ppmの範囲である試験中の例示した溶液の濃度値は名目値と見なされるべきであり、20%まで変化する可能性があり、例えば該溶液の示されている濃度値から10−20%変化する可能性がある。
【0036】
[実施例2A]
試験用の溶液を、
1800mLのストック溶液、
1.8mLのMacat(登録商標)AO−8(約30%オクチルジメチルアミンオキシド)、
1.8mLのMacat(登録商標)AO−12(約30%ラウリルジメチルアミンオキシド)
を混合して、約0.1%(体積/体積)のAO−8および約0.1%(体積/体積)のAO−12を含む、二酸化塩素が約1600ppmでpHが約1の試験溶液にすることにより、ストック溶液から製造した。
【0037】
[実施例2B]
複数の試験溶液を、二酸化塩素の濃度が異なる実施例2Aのカチオン性界面活性剤を用いて、実施例1に従って製造したストック溶液から製造した。
【0038】
実施例2の溶液からのアリコートを、約0.1%(体積/体積)のAO−8および0.1%(体積/体積)のAO−12を含有するMilliQ水で2倍、4倍、8倍、16倍に更に希釈した。試験溶液の最終セットは、1600、800、400、200および100ppmのClO
2および全量で0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含有していた。
【0039】
[実施例3]
試験用の第2の溶液を、1000mlのストック溶液と、1mLのDOWFAX(登録商標)3B2(約38%のベンゼンスルホン酸,デシル(スルホフェノキシ)−,二ナトリウム塩および約8%のベンゼンスルホン酸,オキシビス(デシル)−,二ナトリウム塩)ならびに1mLのDOWFAX(登録商標)8390(38.5%のモノおよびジヘキサデシルジスルホン化ジフェニルオキシド二ナトリウム塩)とを混合して、約1600ppmの二酸化塩素を含む約1のpHの試験溶液にすることにより、ストック溶液から製造した。
【0040】
[実施例4]
本実施例では、本発明に係る組成物が表面上の胞子形成菌に関する除去能力を示すかどうかを調べるための方法が概説されている。本実施例はまた、従来の抗菌剤とも比較し、従来の抗菌剤が相対的に無効果であることも裏付ける。
【0041】
表面上のクロストリジウム・ディフィシルの胞子の除去
【0042】
方法および材料
【0043】
胞子懸濁液
Cディフィシル胞子PCRリボタイプ023(ECDC/Cardiff nomenclature)を凍結試料からFastidious Anaerobe Agar(FAAAP)が入っているプレートに移し、2日にわたり嫌気条件下で培養した。培養物を大気条件に移し、Cディフィシルのコロニーに胞子形成させた。胞子を採取して滅菌水(逆浸透(RO))中に溶解し、アルコールショック(70%)に曝し、洗浄し、遠心分離し、胞子の懸濁液として回収した。胞子を、Burkerチャンバ中において、懸濁液中の約80%の胞子に匹敵する2.4×10
8個の胞子(即ち、試験表面上の胞子)まで計数した。
【0044】
寒天プレート
本実験において、Fastidious Anaerobe Agar(FAAAP)にタウロコレート(1g/l)を添加し(ろ過に関するコントロールを除く)、C.ディフィシルに対する選択的寒天プレートを用いた。
【0045】
表面の調製
調製では、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライド、真ちゅうまたは銅の滅菌プレートに移した。胞子懸濁液が乾燥したら、0.2mlの以下の溶液を添加した:
実施例2Aに従って製造した溶液、
Virkon 1%、
エタノール 70%、
滅菌RO水。
【0046】
溶液に10分暴露した後、ガラスおよびプレートをそれぞれ500mlのガラスフラスコに移して希釈するとともに殺菌を中断した。フラスコを200rpmで20分にわたり回転させた。
【0047】
培養
回転させた各フラスコから0.1mlを寒天プレートに移した(培養1)。試料をチューブ中において二段階で1/10に希釈した。各チューブから、0.1mlを寒天プレートに移した(培養2および3)。
【0048】
フラスコ中の溶液をろ過し、100mlの緩衝ペプトン水(PENAL)で3回すすいだ。ろ過を二段階で行なった。最初に1mlをろ過し、次いでフラスコ中の溶液の残量(約249ml)をろ過した。ろ液を寒天プレート上で培養した(培養4および5)。
【0049】
2回、40mlの試料をろ液から採取した。これらを遠心分離して上清を廃棄し、沈殿物を0.1mlの0.85%NaCl溶液中に再懸濁した。全量を寒天プレート上に移した。
【0050】
生存可能な胞子がガラスおよびプレートの表面上に残存しているかどうかを評価するために、これらに湿ったコットンチップを擦り付けた(「二重のS」形状に沿って全て擦り付けた)。チップを、何度か繰り返して1/10に希釈した2mlの前希釈PYブロス中で培養し、寒天プレート(0.2ml/プレート)上で培養した(培養6から9)。
【0051】
全ての培養プレートを、2日にわたり36℃の嫌気条件下で培養した。
【0052】
結果を以下の表1に示す。
【0053】
表1では、結果を、3種の異なる表面(ガラス、真ちゅう、銅)および4種の異なる試験溶液に対する培養1から9に関して示す。丸括弧内の結果は、フラスコ中におけるCFU(コロニー形成単位)の全量、即ち試験溶液による処理を生き延びてフラスコの回転中に表面から離れた胞子の量に関する。表1はまた、試験溶液の処理を生き延びているがフラスコの回転中に表面に付着したままである胞子の量に関する、未希釈のPYブロス中におけるCFUの量も示す。
【0054】
表1は、実施例2に関する試験溶液がCディフィシルの胞子を除去する優れた能力を有することを示す。また、実施例2Aに係る試験溶液が、表面に付着し、この結果、除去が困難であるまたは従来の除去剤の影響を受け難い胞子を除去する能力を有することも重要である。
【0055】
表1の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例5]
胞子懸濁液を有する滅菌顕微鏡スライド(ガラス表面)を実施例4に従って調製した。
【0058】
1600、800、400、200および100ppmのClO
2ならびに全量で0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含有する、実施例2Bで調製した溶液を、実施例4に従ってガラス表面に塗布した。
【0059】
ガラススライドを実施例4と同じように処理し、試料を実施例4と同じように採取して培養した。
【0060】
結果を、1600、800、400、200および100ppmのClO
2を含む溶液に関して表2に示す。結果を表1と同じように示す。
【0061】
100ppmのような極めて低濃度の二酸化塩素を有する本発明の組成物は、エタノールおよびVirkon等の従来の薬剤と比較してCディフィシルの胞子の除去効果が改善されていることは明らかである。結果はまた、本発明に係る組成物が様々な種類の表面上で組成物の効果を発揮する能力を有することも示す。
【0062】
表2の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0063】
【表2】
【0064】
[実施例6]
表面上のCディフィシルの胞子の除去に関して、様々な種類および組み合わせの界面活性剤と二酸化塩素との組み合わせを評価するため、実施例6を設計した。以下の試験溶液を用いた:
滅菌RO水、
エタノール70%、
1600ppmの二酸化塩素を含む溶液LC1、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD1およびRD2を含む溶液LC1_12、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含む溶液LC1_34、
800ppmの二酸化塩素を含む溶液LC2、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD1を含む溶液LC2_1、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD2を含む溶液LC2_2、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD3を含む溶液LC2_3、
800ppmの二酸化塩素および0.2%(体積/体積)のRD3を含む溶液LC2_4、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD1およびRD2を含む溶液LC2_12、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含む溶液LC2_34。
【0065】
溶液を実施例2、2Aおよび3に従って調製した。RD1およびRD2は実施例3のアニオン性界面活性剤、商標DOWFAX3B2およびDOWFAX8390をそれぞれ示す。RD3およびRD4は、実施例2Aのカチオン性界面活性剤、商標AO−8MacatおよびAO−12Macatを示す。
【0066】
胞子懸濁液を実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;8.0×10
9個の胞子/mL(ガラス表面上に8.0×10
8個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子。
【0067】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を1から10分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中に配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0068】
観測したCFUに関する培養の結果を表4に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0069】
表3の結果に加え、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。表3は、胞子除去効果は、様々な補完効果を備える2種の界面活性剤を組み合わせた場合、単一の界面活性剤を含む溶液と比較して改善されたことを示す。
【0070】
【表3】
【0071】
[実施例7]
実施例7は、本発明に係る二酸化塩素溶液への様々な接触による試験を概説する。胞子懸濁液を、実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;9.6×10
8個の胞子/mL(ガラス表面上に9.6×10
7個の胞子))懸濁液中の約80%の胞子。
【0072】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を1から10分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中に配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0073】
試験溶液は、
滅菌RO水 10分、
エタノール70% 10分、
二酸化塩素1600 1分、
二酸化塩素1600 2分、
二酸化塩素1600 3分、
二酸化塩素1600 4分、
二酸化塩素1600 5分、
二酸化塩素1600 6分、
二酸化塩素1600 7分、
二酸化塩素1600 8分、
二酸化塩素1600 9分、
二酸化塩素1600 10分であった。
【0074】
二酸化塩素を含む試験溶液を実施例2Bに従って調製し、該試験溶液は、1600ppmの二酸化塩素ならびに同量のオクチルジメチルアミンオキシドおよびラウリルジメチルアミンオキシドを含む0.2%(体積/体積)のカチオン性界面活性剤を含む。回転後、フラスコの内容物を、実施例4による手順および寒天プレートを用いて処理して培養した。
【0075】
観測したCFUに関する培養の結果を表4に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0076】
表4の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0077】
表4の結果は、試験溶液は、非常に短い接触時間でも胞子の高い汚染表面に対して高効率であることを示す。また、1分以下の短い接触時間で、試験溶液は二酸化塩素に胞子除去効果を発揮させるための適切な効能を備える。
【0078】
胞子懸濁液(リボタイプ25:4.8×10
8個の胞子/mL(ガラス表面上に4.8×10
7個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子)に基づく繰り返し試験は、同じ試験溶液を用いて15秒の短い接触時間での有効性を示す。
【0079】
【表4】
【0080】
[実施例8]
実施例8は、実施例2Aに従って製造した様々な濃度の界面活性剤を有する800および1600ppmの二酸化塩素溶液を用いた試験を概説する。胞子懸濁液を、実施例4に従って製造して計数した:
リボタイプ25;8.0×10
8個の胞子/mL(ガラス表面上に8.0×10
7個の胞子)懸濁液中の約80%の胞子。
【0081】
ガラス表面を、0.1mlの胞子懸濁液を顕微鏡スライドに移すことにより調製した。懸濁液が乾燥した後、0.2mlの試験溶液を2分の塗布時間にわたりスライドに添加した。その後、ガラス表面を250mlの0.85%NaCl溶液が入った500mlのガラスフラスコ中にそれぞれ配置し、200rpmで20分にわたり回転させた。
【0082】
試験溶液は、
滅菌RO水、
エタノール70%、
1600ppmの二酸化塩素を含むLC1A_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1B_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.02%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1C_2、
1600ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC1E_2、
800ppmの二酸化塩素を含むLC2A_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2B_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.02%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2C_2、
800ppmの二酸化塩素ならびに0.2%(体積/体積)のRD3およびRD4を含むLC2E_2であった。
【0083】
RD3およびRD4は、実施例2Aのカチオン性界面活性剤、Macat(登録商標)AO−8およびMacat(登録商標)AO−12を示す。
【0084】
回転後、フラスコの内容物を、実施例4による手順および寒天プレートを用いて処理して培養した。
【0085】
観測したCFUに関する培養の結果を表5に示し、該結果は、フラスコ中のCFUの数および未希釈のPYブロス中のCFUの数も丸括弧で示しており、回転中に表面から離れた、生き延びている胞子の数および回転中に表面から離れずに生き延びた胞子の数もそれぞれ示している。
【0086】
表5の結果に加えて、ろ液から採取した試料からの培養では増殖が見られなかったことを確認した。
【0087】
表5は、0.2%(体積/体積)の濃度の二酸化塩素溶液が、二酸化塩素の両方の試験強度(800および1600ppm)における高濃度および低濃度の両方の界面活性剤と比較して、表面上の胞子を除去するのにより有利な性能を有することを示す。結果はまた、二酸化塩素がその除去効果を発揮するのを補助する本界面活性剤の効能を裏付ける。
【0088】
【表5】