特許第6126548号(P6126548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126548磁気弾性センサを備える自由輪ハブ、および自由輪ハブを備える自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126548
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】磁気弾性センサを備える自由輪ハブ、および自由輪ハブを備える自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20170424BHJP
   B62M 6/50 20100101ALI20170424BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20170424BHJP
【FI】
   G01L3/10 301A
   B62M6/50
   B62J99/00 J
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-67555(P2014-67555)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-219387(P2014-219387A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】13166421.1
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502173523
【氏名又は名称】メソッド・エレクトロニクス・マルタ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】ギーシブル ヨハネス
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−267174(JP,A)
【文献】 特表2011−514530(JP,A)
【文献】 特開2005−351750(JP,A)
【文献】 特開2013−047078(JP,A)
【文献】 特表2009−519592(JP,A)
【文献】 特表平09−511832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/12
G01L 3/10
G01L 5/00
B62J 99/00
B62M 6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由走行輪を担持するための回転ハブシェルを備えた自由輪ハブであって、前記ハブシェルに結合されるか、又は前記ハブシェルの一部を形成するトルク伝達部材を介して、トルクが前記回転ハブシェルに伝搬される自由輪ハブにおいて、
前記トルク伝達部材の自由端と、第1端において噛み合うように形成されたスプロケット支持体であって、前記トルクが、前記スプロケット支持体を介して、前記トルク伝達部材に作用するように形成されたスプロケット支持体と、
a)少なくとも1つの磁気弾性活性領域であって、作用した前記トルクが、少なくとも1つの磁気分極領域を含む前記活性領域に伝達されるような仕方であって、作用した前記トルクが増大するにつれて分極が次第にらせん形状になるように、前記トルク伝達部材の一部を形成し、前記少なくとも1つの磁気弾性活性領域が、少なくとも第1磁気弾性活性領域と第2磁気弾性活性領域とを含むならば、前記少なくとも1つの磁気弾性活性領域は、軸方向に離間される前記少なくとも1つの磁気弾性活性領域と、
b)少なくとも1つの磁場センサを有し、該磁場センサが前記磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する信号を出力するために前記少なくとも1つの磁気弾性活性領域の近くに配置された、磁気弾性センサ手段と
を備え、
前記トルク伝達部材は、内部空間を有する中空軸であり、且つ前記磁気弾性センサ手段の前記少なくとも1つの磁場センサが前記中空軸の前記内部空間内に配置され
前記スプロケット支持体は、第2端において、前記ハブシェルに対して回転可能に支持され、且つ、前記スプロケット支持体と前記中空軸との間に空隙が形成される
自由輪ハブ。
【請求項2】
前記回転ハブシェルが非回転固定軸によって支持され、前記磁気弾性センサ手段が、前記非回転固定軸上に固定される、請求項1に記載の前記ハブ。
【請求項3】
前記中空軸は、前記回転ハブシェルの前部に結合されている、請求項1又は2に記載の前記ハブ。
【請求項4】
自由輪装置又はオーバーランニングクラッチ装置が前記中空軸と結合され、前記自由輪装置又は前記オーバーランニングクラッチ装置が前記中空軸によって支持される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項5】
駆動スプロケットが前記自由輪装置又は前記オーバーランニングクラッチ装置を介して前記中空軸に結合され、それによって前記駆動スプロケットによって駆動される自由輪ハブをもたらす、請求項4に記載の前記ハブ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁場センサが感知方向を有し、該感知方向が前記磁気分極領域から発生する前記トルク由来の磁束の軸方向成分を検出するように軸芯に対して少なくとも実質的に平行である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項7】
前記磁気弾性センサ手段が少なくとも2つの磁場センサを備え、該磁場センサが感知方向を有し、該感知方向が互いに少なくとも実質的に180°反対である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの磁気弾性活性領域が前記中空軸の円周に沿って膨出し、全占有磁化領域が最大でも前記中空軸の円周方向のプラスマイナス45°の限界値内にあるように前記少なくとも1つの領域が磁化される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項9】
a)前記中空軸は、第1の磁気弾性活性領域および第2の磁気弾性活性領域を含み、該第1の磁気弾性活性領域および第2の磁気弾性活性領域が軸方向に離間され且つ前記トルクが前記磁気弾性活性領域に伝達されるような仕方で、前記中空軸の一部に直接的もしくは間接的に取り付けられ又は前記中空軸の一部を形成し、各々の磁気弾性活性領域が磁気分極領域を含み、前記第1の磁気弾性活性領域の磁気分極および前記第2の磁気弾性活性領域の磁気分極が互いに実質的に反対であり、
b)前記磁気弾性センサ手段は、第1の対のセンサを備え、該第1の対のセンサが第1および第2の磁場センサを備え、該第1および第2の磁場センサが前記第1の磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する第1の信号を出力するために前記第1の磁気弾性活性領域の近くに配置され、さらに
c)前記磁気弾性センサ手段は、第2の対のセンサを備え、該第2の対のセンサが第1および第2の磁場センサを備え、該第1および第2の磁場センサが前記第2の磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する第2の信号を出力するために前記第2の磁気弾性活性領域の近くに配置され、
d)前記ハブは、さらに、前記第1の対のセンサの信号および前記第2の対のセンサの信号の差分評価を実施することによって、作用した前記トルクを決定するように構成された制御ユニットを備える、請求項1から8までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項10】
前記磁気弾性センサ手段が、第1の磁気弾性活性領域から発生するトルク依存磁束に対応する第1の信号を出力するために前記第1の磁気弾性活性領域の近くに配置された、複数の一次磁場センサと、
a)前記複数の一次磁場センサから所定の第1の距離だけ第1の方向に軸方向に離間されており、第2の磁気弾性活性領域から発生するトルク依存磁束および近接磁場源から発生する周囲磁束に対応する第2の信号を出力するために前記第2の磁気弾性活性領域の近くに配置される、少なくとも1つの二次磁場センサと、
b)前記複数の一次磁場センサから所定の第2の距離だけ前記第1の方向とは実質的に反対の第2の方向に軸方向に離間されており、第3の磁気弾性活性領域から発生するトルク依存磁束および近接磁場源から発生する周囲磁束に対応する第3の信号を出力するためにこの第3の磁気弾性活性領域の近くに配置される、少なくとも1つの別の二次磁場センサと、
c)前記第2の信号および前記第3の信号を用いて前記第1の信号を調整するための手段であって、それによって前記近接磁場源の効果を解消する、前記手段と
を備える、請求項1から8までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの磁場センサがベクトルセンサであり、特に、前記少なくとも1つのベクトルセンサは、ホール効果、磁気抵抗、磁気トランジスタ、磁気ダイオード、MAGFET場センサ又はフラックスゲート磁気計のうちの1つである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項12】
前記中空軸が、電磁気効果をもたらすのに適した、特にNiを含む強磁性材料から少なくとも部分的に形成される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の前記ハブ。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の自由輪ハブを備える、自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車。
【請求項14】
トルクを前記ハブの前記中空軸に作用させる電池式電気駆動装置をさらに備える、請求項13に記載の自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由走行輪を担持するための回転ハブシェルを備える自由輪ハブであって、少なくとも1つの磁気弾性センサが、作用したトルクの決定のために自由輪ハブ内に組み込まれる、自由輪ハブに関する。本発明は、さらに、この自由輪ハブを備える自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車およびエルゴメータは、トレーニング装置として、又は、たとえばリハビリテーション用の医療装置として使用されることが多い。ユーザ又は患者が自らのトレーニング装置に作用する力や出力は、さまざまな理由から有益なパラメータになる。これらは、トルクを測定することによって決定することができる。このトルクは、ユーザがクランクペダルを踏んで自転車に作用したものである。トレーニングデータ又は医療データは、作用したトルクの値から導出することができる。又は自動ギアシフトを開始することができる。さらに、作用したトルクは、パラメータとなる。このパラメータは、自転車又はエルゴメータの使用を監視するために、多目的ディスプレイ又は自転車コンピュータ上に表示することができる。
【0003】
独国特許出願公開第102007040016A1号明細書は、エルゴメータ用のトルク測定装置を開示している。この装置は、ボトムブラケット軸受内に組み入れられる。トルクは、ボトムブラケット軸に対し、この軸にリンク結合されたクランクペダルのそれぞれ1つを介して誘発され、このトルクが決定される。トルクの伝達の結果、軸の弾性捩じりが生じる。この捩じりは測定にかけられる。作用したトルクは、捩じり量から導出される。作用した力又はトルクは、ユーザの左脚によって駆動される左側のクランクと、ユーザの右脚によって駆動される右側のクランクの両方について、それぞれ検出することができる。しかし、このトルクデータの個別取得には、トルクの伝達がボトムブラケット軸の左端部および右端部から軸の中心までであることが必要である。軸の中心には、駆動スプロケット又はプーリを装着することができる。しかし、この特定の設計は、エルゴメータのみに適用可能である。このことは、ほとんどすべての自転車では、ボトムブラケット軸が軸の両端部の一方の近く、すなわち左のクランクペダル又は右のクランクペダルの近くに、駆動スプロケットを担持しているという事実に由来する。このタイプのボトムブラケット軸を有する自転車においては、トルク測定装置は、駆動スプロケットの反対側にあるクランクペダルを介して作用したトルクのみを捉える。このクランクペダルのトルクは、ボトムブラケット軸を介してスプロケットに伝達され、したがって活用することができる。換言すれば、参照文献の独国特許出願公開第102007040016A1号明細書によるトルク測定装置は、左のクランクペダル又は右のクランクペダルを介して作用したトルクを決定することにだけ適している。
【0004】
別の従来技術のトルク測定装置が、独国実用新案第202007019291U1号明細書に開示されている。ボトムブラケット軸は、第1および第2の中空軸部材を有し、これらは相互に回転可能に固定されている。該ボトムブラケット軸は、上記軸部材の何れか一つに、トルクセンサ装置を組み込んでいる。誘発されたトルクは、磁気センサ装置を用いることで取得される。しかし、トルク測定装置は、2つのクランクペダルの1つを介して作用したトルクだけを取得するように設計されている。その結果、自転車のユーザの片脚のみでかけたトルクを決定することができる。
【0005】
電動アシスト自転車又は電動自転車に関しては、ユーザの両脚からかかったトルクを活
用することが望ましい。作用したトルクは、補助電気駆動装置の制御のためのパラメータとしての役割を果たすことができる。たとえば、作用したトルクがある一定の閾値を超えたときに、該駆動装置を作動させることができる。これに加えて、補助電気駆動装置が及ぼしたトルクの値を俊敏に得ることが望ましい。このことは、過荷重保護のための値としての役割を果たし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007040016A1号明細書
【特許文献2】独国実用新案第202007019291U1号明細書
【特許文献3】米国特許第6、553、847B2号明細書
【特許文献4】米国特許第5、520、059号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自由走行輪に作用したトルクの決定に適する装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、自由走行輪を有する自転車、電動アシスト自転車、又は電動自転車のトルク測定を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様では、自由走行輪を担持するための回転ハブシェルを備える自由輪ハブが提供される。トルクは、トルク伝達部材を介して回転ハブシェルに伝搬される。トルク伝達部材は、ハブシェルに結合され、又はハブシェルの一部を形成する。自由輪ハブには、少なくとも1つの磁気弾性活性領域が設けられる。この領域は、トルク伝達部材の一部に直接的もしくは間接的に取り付けられ又はトルク伝達部材の一部を形成する。磁気弾性活性領域は、少なくとも1つの磁気分極領域を含み、この磁気弾性活性領域に、作用したトルクが伝達されるように構成される。磁気分極は、作用したトルクが増大するにつれて次第にらせん形状になる。さらに、自由輪ハブは、磁気弾性センサ手段を備える。磁気弾性センサ手段は、少なくとも1つの磁気弾性活性領域の近くに配置された少なくとも1つの磁場センサを有する。この少なくとも1つの磁場センサは、磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する信号を出力するように構成されており、前記トルク伝達部材は、内部空間を有する中空軸であり、且つ前記磁気弾性センサ手段の前記少なくとも1つの磁場センサが前記中空軸の前記内部空間内に配置される。
【0009】
有利には、トルク測定は、自由輪ハブにおいて直接的に実施される。このことは、自転車、電動自転車又は電動アシスト自転車において実現される。本明細書の文脈では、電動自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、および電気駆動装置、特に補助電気駆動装置を備えるすべての他の種類の自転車は、電動自転車と称される。
【0010】
トルク測定装置は自由輪ハブに組み込まれているため、活用可能なトルク値は、左のクランクペダル又は右のクランクペダル、すなわち単一のクランクペダルを介して作用したトルクに制限されない。ボトムブラケット軸に組み込まれたトルク測定装置とは対照的に、自由走行輪に作用したトルクの合計値を決定することができる。たとえば、自由輪は、自転車チェーンおよび歯付きスプロケットの対応する組み合わせによって駆動される。この場合、典型的には、大きい方の駆動スプロケットがボトムブラケット軸受軸に配置され、従動スプロケットは、自由輪ハブに結合される。自転車又は電動自転車において、合計トルクは、自転車チェーンを介して自由走行後輪に伝達される。これは、ボトムブラケット軸受がスリーブに組み込まれており、このスリーブに、しばしば電動自転車の補助駆動装置が組み込まれていたり、あるいは、配置されていたりすることが多いという事実によるものである。しかし、後輪ハブに組み入れられる補助電気駆動装置を有する電動自転車であっても、本発明の態様による自由輪ハブを適用することができる。このタイプの電動自転車の場合、トルクは、電気駆動装置によって生成される。このトルクは、トルク伝達
部材に、あるいはスプロケット支持部材であってこの構造にスプロケットを担持しないものに、さらには、回転ハブシェルに、直接的に伝搬することができる。たとえば、中空軸は、適切な遊星ギアによって駆動することができる。遊星ギア又は遊星ギアのピニオンは、外歯又は内歯を有する軸である中空軸と噛合することができる。
【0011】
自転車又は電動自転車の個々の設計に拘わらず、ユーザおよび/又は補助電気装置が及ぼした合計トルクの値を測定することができる。このことは、電動自転車に関して特に有利である。合計トルクの取得された値は、補助電気駆動装置の制御のためのパラメータとしての役割を果たすことができる。たとえば、電気駆動装置の出力する動力は、トルクがある一定又は臨界の閾値を超えたときに小さくすることができる。補助装置が作動停止しているとき、合計トルクは、ユーザが及ぼしたトルクと等しい。この状況では、ユーザの及ぼしたトルクが別の閾値に到達したときに電気駆動装置を作動することができる。このことは、電動自転車がユーザの関節が楽になるように電気駆動装置の制御が駆動装置を作動させることを可能にする。これに加えて、ユーザが及ぼしたトルクは、たとえば多目的自転車コンピュータで表示するための有益なパラメータとなり得る。このことはまた、有利には、補助駆動装置を有さない自転車にも適用される。本発明の態様による自由輪ハブがエルゴメータに適用された場合、ユーザの及ぼしたトルクは、患者の治療処置に有益なパラメータとなり得る。
【0012】
本発明の有利な実施形態によれば、回転ハブシェルは、非回転固定軸によって支持される。これは、自転車又は電動自転車のフレームに装着することができる。さらに、磁気弾性センサ手段を該車軸に固定することができる。特に、磁気弾性センサ手段は、固定位置を有するように配置される。換言すれば、センサ手段は、自由輪ハブの非回転部分である。用語「非回転」は、センサ手段が、たとえば自転車又は電動自転車のフレームに関して固定座標を有すると理解される。この非回転のセンサ構成は、必要な場合、その配線を容易にする。このことは、たとえば、センサ手段へのおよびセンサ手段からの動力供給および/又はデータ伝達のための配線に関係する。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、トルク伝達部材としての中空軸は、回転ハブシェルの前部に結合される。自由輪装置又はオーバーランニングクラッチ装置は、中空軸に結合することができる。特に、自由輪装置又はオーバーランニングクラッチ装置は、中空軸とハブシェルとの間に配置することができる。中空軸は、たとえば歯付きスプロケットによって駆動させることができる。歯付きスプロケットは、さらに、自転車チェーンによって駆動される。後者は通常、ボトムブラケット軸受に配置された、大きい方の駆動歯付きスプロケットと噛合する。電気駆動装置を備える電動自転車において、電気駆動装置は、ボトムブラケットに配置される。この電動自転車において、自転車チェーンを介して作用したトルクは、ユーザおよび電気駆動装置によって供給された合計トルクである。この合計トルクは、ユーザの及ぼしたトルク、又は電気駆動装置のトルクにユーザの及ぼしたトルクを加えたものの何れかである。このことは、補助電気駆動装置が作動しているか、あるいは作動停止しているか、によって決まる。電気駆動装置の作動状況を示す信号は、通常、駆動制御装置内で入手可能である。従って、この状況信号を考慮に入れることにより、ユーザの及ぼしたトルクおよび電気駆動装置のトルクを容易に区別することができる。
【0014】
特に、磁気弾性センサ手段を中空軸の内部空間に組み入れることによって、コンパクトで頑強な自由輪ハブを実現することができる。本発明のこの態様によれば、中空軸は、この内部空間を含む中空軸である。センサ手段の磁場センサが、内部空間内に配置される。特に、磁場センサは、内部空間内に全体的に配置される。有利には、センサは、埃、雨、又は他の汚染物質などの環境影響から保護される。このことは、自由輪ハブを、厳しい作動条件下でも特に信頼性の高いものにする。有利には、自由輪ハブは、オフロード自転車又はマウンテンバイクに使用することができる。
【0015】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、少なくとも1つの磁場センサは、感知方向を有する。感知方向は、軸芯に対して少なくとも実質的に平行である。このセンサ構成は、磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束の軸方向成分を検出するのに適している。センサ手段は、さらに、少なくともふたつの磁場センサを備えることができる。これらふたつの磁場センサは、センサの感知方向が、互いに少なくとも実質的に180°反対になるように配置される。この「逆も同様の」構成は、有利には、トルク由来の磁束の差分測定(differential measurement)を可能にする。トルクの測定は、一方ではより感応性が高く、他方ではより信頼性が高いものである。
【0016】
本発明の有利な実施形態によれば、少なくとも1つの磁気弾性活性領域は、中空軸の円周に沿って膨出する。少なくとも1つの領域は、全占有磁化領域が、最大でも中空軸の円周方向のプラスマイナス45°の限界値内にあるような仕方で磁化される。有利には、円周方向の磁化は、たとえば永久磁石又は電流磁石を用いて、軸材料を適切に磁化することによりもたらすことができる。このことは、残留する円周方向磁化を有する軸領域を作り出すためのものである。軸領域は、磁気弾性センサ手段と相互作用する活性領域の一部を形成する。しかしながら、中空軸にはまた、適切に磁化された材料を含む別部材のスリーブを設けることもできる。さらに、このタイプの磁気弾性トルク測定に関するさらなる技術的詳細は、以下の参照文献に説明され、表わされている。すなわち、米国特許第6,553,847B2号明細書、およびGarshelisの米国特許第5,520,059号明細書であり、その開示は、参照によって全体的に本明細書に組み込まれる。米国特許’847号の参照文献では、軸の材料は、それ自体が円周方向に磁気分極されている。したがって、このセンサは、磁気材料を含む別部材のスリーブ又はリングを有さずにすむ。別部材のスリーブを備えるトルク測定装置は、米国特許’059号の参照文献に開示される。
【0017】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、中空軸は、第1の磁気弾性活性領域および第2の磁気弾性活性領域を含む。第1および第2の領域は、軸方向に離間され、中空軸の一部に直接的もしくは間接的に取り付けられ又は中空軸の一部を形成する。磁気弾性活性領域は、トルクが活性領域に伝達されるように構成される。各々の活性領域は磁気分極領域を含む。この場合第1の活性領域の磁気分極と第2の活性領域の磁気分極とは、互いにほぼ反対である。本発明のこの実施形態による自由輪ハブの磁気弾性センサ手段は、第1の磁気弾性活性領域の近くに配置された第1および第2の磁場センサを有する第1の対のセンサを備える。これらのセンサは、第1の磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する第1の信号を出力する。さらに、磁気弾性センサ手段には、第2の対のセンサが設けられる。この第2の対のセンサは、別の第1および第2の磁場センサを備える。この第2の対のセンサは、第2の磁気弾性活性領域の近くに配置される。第2の対のセンサは、第2の磁気分極領域から発生するトルク由来の磁束に対応する第2の信号を出力する。これに加えて、本発明のこの実施形態による自由輪ハブは、作用したトルクを決定するように構成された制御ユニットを備える。制御ユニットは、第1の対のセンサの信号および第2の対のセンサの信号の差分評価を実施する。第1および第2の磁気分極領域を用いるトルクの差分測定はエラーが起こりにくく、特に外部磁場の存在下であってもエラーが起こりにくい。
【0018】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、磁気弾性センサ手段は、複数の一次磁場センサを備える。複数の一次磁場センサは、第1の磁気弾性活性領域の近くに配置される。一次磁場センサは、第1の信号を出力する。第1の信号は、第1の活性領域から発生するトルク依存磁束に対応する。さらに、磁気弾性センサ手段は、少なくとも1つの二次磁場センサを備える。少なくとも1つの二次磁場センサは、複数の一次磁場センサから所定の第1の
距離だけ第1の方向に軸方向に離間される。また、この少なくとも1つの二次磁場センサは、第2の磁気弾性活性領域の近くに配置される。少なくとも1つの二次磁場センサは、トルク依存磁束に対応する第2の信号を出力する。第2の信号は、上記第2の活性領域から発生する。少なくとも1つの二次磁場センサはまた、近磁場の磁場源(near field magnetic field source)から発生する周囲磁束を測定するように構成される。
【0019】
本発明のこの実施形態による自由輪ハブは、少なくとも1つの別の二次磁場センサを備える。この別のセンサは、第1の方向に対して実質的に反対である第2の方向に軸方向に離間される。別の二次センサは、所定の第2の距離だけ複数の一次磁場センサから離される。この少なくとも1つの別の二次磁場センサは、第3の磁気弾性活性領域の近くに配置され、第3の活性領域から発生するトルク依存磁束に対応する第3の信号を出力するように構成される。これに加えて、別の二次磁場センサは、二次磁場センサと同様に、近接磁場源から発生する周囲磁束を検出する。
【0020】
第1から第3の磁気弾性活性領域は、互いに軸方向に離間され、又は近接して配置される。これらは、中空軸の一部に直接的もしくは間接的に取り付けられ又は中空軸の一部を形成することができる。磁気弾性活性領域の構成は、トルクが活性領域に伝達されるように構成される。各々の活性領域は、磁気分極領域を含む。この場合、第1および第3の活性領域の磁気分極と第2の活性領域の磁気分極とは、互いに実質的に反対である。
【0021】
これに加えて、本実施形態による自由輪ハブは、第2および第3の信号を用いて第1の信号を調整するための手段、特に制御ユニットを備え、それによって近接磁場源の効果を解消する。
【0022】
有利には、本発明のこの実施形態による自由輪ハブは、近接磁場源からの磁場を解消することができる。このことは、補助電気駆動装置が自由輪ハブの近くに配置される場合、又はその中に組み入れられる場合に特に有利である。電気駆動装置は、浮遊磁場を発生させることが多い。しかし、この磁場は、トルク測定の精度に影響を与えない。磁気弾性センサ手段は、3つのグループの磁場センサを用いてこの近接磁場の影響を解消することができる。補助電気駆動装置を有するコンパクトな自由輪ハブは、トルク測定の確実性が低いというリスクを負うことなく提供することができる。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの磁場センサは、ベクトルセンサである。特に、ベクトルセンサは、ホール効果、磁気抵抗、磁気トランジスタ、磁気ダイオード、又はMAGFETセンサのうちの1つである。特に、磁場センサは、フラックスゲート磁気計である。これらの磁場センサは、自由輪ハブに適用するのに特に適することが見出された。
【0024】
本発明の別の実施形態では、中空軸は、磁気弾性効果をもたらすのに適した強磁性物質から少なくとも部分的に形成される。この強磁性物質は、特にニッケル(Ni)を含む。たとえばX20Cr13とする工業鋼又は類似の材料を適用することができる。このタイプの中空軸においては、円周方向の磁化が軸材料に内在することができる。従って、本発明のこの態様によるハブは、トルク依存磁束を発生させるトルクに露出される磁気材料を含む追加のスリーブ又はリング部材を有さずにすますことができる。
【0025】
本発明の別の有利な態様によれば、本発明の態様による自由輪ハブを備える自転車、電動アシスト自転車(ペダル式電気サイクル)、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車が、提供される。この自転車、電動アシスト自転車又は電動自転車においては、自由輪ハブを介して自由走行輪に作用した合計トルクの測定を実施することができる。人が誘発し
たトルクおよび補助電気駆動装置のトルクの何れか、又は双方を決定することができる。このことは、補助電気駆動装置の作動および制御に有利である。特に駆動装置の作動、作動停止、および/又はトルク制御を確立することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車にはさらに、電池式電気駆動装置を設けることができる。この電池式電気駆動装置は、中空軸にトルクをかける。特に、この駆動装置は、トルクを、本発明の態様による自由輪ハブの中空軸に結合する。電気駆動装置は、たとえば、12V作動電圧で作動する電気DCモータであることができる。
【0027】
本発明のさらなる態様および特性は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明で明らかにされる。添付の図を参照して:
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態による自由輪ハブの簡略化された断面図である。
図2】本発明の実施形態による自由輪ハブ内のトルク伝達部材の簡略化された側面図である。
図3図2に示す軸の簡略化された断面図である。
図4】本発明の別の実施形態による自由輪ハブの簡略化された断面図である。
図5】本発明の実施形態による自由輪ハブ内のトルク伝達部材の簡略化された側面図である。
図6図5に示す軸の簡略化された断面図である。
図7】本発明の実施形態による磁場センサの配置および相互接続を示す概略図である。
図8】本発明の実施形態による自由輪ハブの詳細な簡略化された断面図である。
図9図8の線IX−IXに沿った断面図である。
図10】本発明の実施形態による、自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車、又は電動自転車の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の実施形態による、自由輪ハブ2の簡略化された断面図がある。自由輪ハブ2は、たとえば、自転車、電動アシスト自転車、電動自転車などのフレーム上に装着された非回転固定軸4を備える。車軸4の左右の端部は、たとえば、ねじを用いて自転車のフレーム上に装着することができる。複数のスポーク8を担持するハブシェル6は、軸受10を介して、固定軸4上に回転可能に装着される。軸受10は、自由輪ハブ2の左右の前部近くに位置している。軸受10は、玉軸受もしくは針軸受などの転がり軸受、又は任意の他の適切なタイプの軸受であることができる。たとえば、自由輪ハブ2は、自転車、電動アシスト自転車(ペダル式電気自転車)又は電動自転車の後輪を担持する。複数のスポーク8は、回転ハブシェル6上に装着される。スポーク8の内側端部は、ハブシェル6上にその円周に沿って固定される。反対側の外側端部では、スポーク8は、自由走行輪(図示せず)の一部を構成する車輪リムを担持する。
【0030】
トルクが、トルク伝達部材12を介して自由輪ハブ2および自由走行輪に作用する。図1の実施形態によれば、トルク伝達部材12は、回転ハブシェル6のその正面側に結合される。一例にすぎないが、正面とは、部材12の左正面である。図1では、トルク伝達部材12は別部材である。しかし、このことは、必須ではない。自由輪ハブ2は、トルク伝達部材12が回転ハブシェル6の一体的部位を形成するように設計することができる。
【0031】
図1の実施形態によれば、トルク伝達部材12は中空軸である。トルクは、スプロケット支持体14を介してトルク伝達部材12に作用する。このスプロケット支持体14は、
トルク伝達部材12の自由端部とその円周の周りで噛合するように構成される。反対側の端部のところで、スプロケット支持体14は、別の軸受10を用いることにより、ハブシェル6に対して回転可能に支持される。トルク伝達部材12およびハブシェル6は、自由輪装置24、又はオーバーランニングクラッチを用いて結合される(さらなる詳細に関しては、図8および9も参照されたい)。スプロケット支持部材14とトルク伝達部材12の間には、これらの2つの部分間のいかなる摩擦も回避するように空隙13がある。スプロケット(図示せず)は、これをスプロケット支持体14上に配置することができる。この場合、このスプロケットは、トルクが自由走行輪に作用するように自転車のチェーンによって駆動される。自転車チェーンは、典型的には大きい方の駆動スプロケットと噛合する。この大きい方のスプロケットは、ボトムブラケット軸受軸に結合される。ボトムブラケット軸受軸は、自転車のユーザによって踏まれる左右のクランクペダルを担持する。しかしながら、自由輪ハブ2を駆動させるために、他のトルクの伝達装置を適用することもできる。たとえば、トルクの伝達は、歯付きベルト又は伝達軸を介して実施することができる。スプロケット支持部材14とハブシェル6の間のトルクの伝達に関するさらなる詳細は、図8を参照する際に説明されるであろう。
【0032】
自由輪ハブ2は、さらに、自由走行輪に伝達されたトルクを測定するための磁気弾性センサ手段を備える。磁気弾性センサ手段は、第1の対のセンサを有する。第1の対のセンサは、第1のセンサS11および第2のセンサS12を備えている。この第1の対のセンサS11、S12は、第1の磁気弾性活性領域R1の近くに配置される。磁気弾性センサ手段は、さらに、第2の対のセンサS21、S22を備える。この第2の対は、第1のセンサS21および第2のセンサS22を備える。第1のセンサS21および第2のセンサS22は、第2の磁気弾性活性領域R2と相互作用する。センサS21、S22は、この領域の近くに配置される。
【0033】
第1の対のセンサS11、S12は、第1の活性領域R1から発生するトルク由来の磁束を検出するように構成される。同様に、第2の対のセンサS21、S22は、第2の活性領域R2から発生するトルク由来の磁束を検出するように構成される。トルクが作用している際、活性領域R1、R2の分極は、作用したトルクが増大するにつれて次第にらせん形状になり、あるいは次第にらせん形状を指向する。活性領域R1、R2のそれぞれ1つの磁気分極のトルク由来のシフト(torque-induced shift)が、第1および第2の対のセンサによってそれぞれ検出される。
【0034】
第1および第2の磁気弾性活性領域R1、R2は、作用したトルクが活性領域R1、R2のそれぞれ1つに伝達されるような仕方で、トルク伝達部材12の一部を形成する。図1の実施形態によれば、該活性領域R1、R2は、トルク部材12自体のそれぞれの領域を磁化することによってもたらされる。換言すれば、トルク伝達部材12の材質が磁気的に分極されているのである。特に、トルク伝達部材12は、ある一定量のニッケルを含むことができる強磁性材料を用いて製造することができる。トルク伝達部材12は、領域R1、R2を形成するべく、磁石(図示せず)又は電流を用いて磁化することができる。
【0035】
別の実施形態(図示せず)によれば、磁気弾性活性領域は、別部材内に組み込まれる。この別部材は、磁気的に分極した材料を含むリング又はスリーブであることができる。
【0036】
磁気弾性活性領域R1、R2は、これらが軸内に形成されるか、別部材内に形成されるかに拘わらず、トルク伝達部材12の全円周に沿って膨出することができる。これらは円周方向の磁化を有する。
【0037】
特に、センサS11、S12、S21およびS22は、ベクトルセンサである。たとえば、センサは、ホール効果、磁気抵抗、磁気トランジスタ、磁気ダイオード又はMAGF
ETフィールドトランジスタセンサの1つである。さらに、フラックスゲート磁気計を磁気センサとして適用することができる。ベクトルセンサが適用される場合、すべてのセンサS11、S12、S21およびS22は、ある一定の感知方向D11、D12、D21およびD22を有する。第1のグループのセンサ(すなわちセンサS11、S12のうちの1つ)および第2のグループのセンサ(すなわちセンサS21、S22のうちの1つ)は、互いに少なくとも実質的に180°反対である感知方向D11、D12およびD21、D22を有する構成とすることができる。さらに、すべてのセンサS11、S12、S21およびS22の感知方向D11、D12、D21、D22は、図1では一点鎖線で示される軸芯Aに対して実質的に平行とすることができる。
【0038】
特に、第1および第2の磁気弾性活性領域R1、R2は、領域R1、R2のそれぞれ1つ内の占有磁化のすべてが、最大でもトルク伝達部材12の円周方向のプラスマイナス45°の限界値内にあるように円周方向に磁化される。図1の実施形態によるセンサ構成は、トルク由来の磁束の軸方向成分を検出するのに適しており、円周方向に分極された第1の磁気弾性活性領域R1から発生する軸方向成分の検出(については、第1のセンサ対S11、S12を用いることにより)、第2の磁気弾性活性領域R2から発生する軸方向成分の検出(については、センサS21、S22を備える第2の対を用いることにより)に適している。
【0039】
回転ハブシェル6は、固定軸4によって支持される。車軸4は非回転部分であるが、一方でトルク伝達部材12およびスプロケット支持体14を含むハブシェル6は、回転部分である。図1の実施形態による磁気弾性センサ手段は、車軸4上に固定された非回転スリーブ16内に配置される。換言すれば、センサ手段は非回転部分である。スリーブ16は、車軸4を囲繞し、磁気弾性センサ手段のセンサS11、S12、S21およびS22のハウジングとしての役割を果たす。
【0040】
図1の実施形態では、トルク伝達部材12は、環状スリーブ16を収容するための内部空間を有する中空軸である。換言すれば、磁気弾性センサ手段のすべてのセンサS11、S12、S21、S22は、全体的にトルク伝達部材12の内部空間内に配置される。
【0041】
図2は、図1の自由輪ハブ2のトルク伝達部材12を示す簡略化された側面図である。第1の磁気弾性活性領域R1および第2の磁気弾性活性領域R2は、互いに実質的に180°逆向きの第1の磁気分極P1および第2の磁気分極P2を有する。トルクがトルク伝達部材12に作用した際、第1の磁気弾性活性領域R1の磁気分極P1および第2の磁気弾性活性領域R2の第2の分極P2は、それぞれ反対方向に次第にらせん形状になる。この事実により、センサS11、S12、およびS21、S22の第1および第2の対の感知方向D11、D12およびD21、D22は、互いに少なくともおよそ180°反対になるように構成され、差分測定が実施することができる。この差分測定は、トルク測定の感知性を向上させる。
【0042】
図3では、図1から知られているトルク伝達部材12の簡略化された断面がある。第1の円周方向に分極した磁気弾性活性領域R1に対して、第1の感知方向D11を有する第1のセンサS11、および第2の感知方向D12を有する第2のセンサS12を備える第1のセンサ対の構成が、より詳細に示される。同様に、第1の感知方向D22を有する第1のセンサS21、および第2の感知方向D22を有する第2のセンサS22を備える第2のセンサ対の構成もまた、より詳細に示される。センサS11、S12、S21、S22は、第1および第2の磁気的に分極した、磁気弾性活性領域R1およびR2それぞれの近くに配置される。換言すれば、センサS11、S12、S21およびS22は、トルク伝達部材12としての役割を果たす中空軸の内側壁の近くに配置される。特に、センサ対のそれぞれ1つの第1および第2のセンサは、軸芯Aに対して互いに実質的に反対になる
ように配置される。
【0043】
図4の実施形態は、別の自由輪ハブ2を示している。図4の自由輪ハブ2は、図1の実施形態の自由輪ハブ2と同様に構成される。類似の部分には、同じ参照番号が与えられる。
【0044】
しかし、図1の実施形態とは対照的に、図4に示される自由輪ハブ2は、トルク伝達部材12を備える。トルク伝達部材12は、中空軸であり、3つの磁気弾性活性領域R1からR3を有する。ここでも、トルク伝達部材12は、たとえば磁石又は電流を用いて磁化することができ、それによって残留する円周方向磁化を有する領域R1、R2、R3を形成する。
【0045】
この実施形態の磁気弾性センサ手段は、一次磁場センサのグループを形成する第1のセンサS11および第2のセンサS22を備える。一次磁場センサS11、S22は、第1の磁気弾性活性領域R1から発生するトルク由来の磁場を取得する。これに加えて、これらは、近磁場源(図示せず)の近接磁場を測定する。磁気弾性センサ手段は、さらに、二次磁場センサRおよびLを備える。これらは、一次磁場センサS11、S22の左右に配置される。二次磁場センサRおよびLは、第2および第3の磁気弾性活性領域R2、R3それぞれから発生するトルク由来の磁場を測定する。センサRおよびLは、さらに、近磁場源の近接磁場を取得する。近接磁場は、任意の近磁場源によって生成し得る。
【0046】
二次磁場センサR、Lによって測定された近接磁場は、一次磁場センサS11、S22によって測定された近接磁場によって打ち消されるが(これらは反対方向に配向されるため)、一次磁場センサS11、S22によって判明したトルク由来の磁場は、二次磁場センサRおよびLによって測定された値によって打ち消されることはない。実際には、トルク由来の磁場は、第1の活性領域R1と、この第1の活性領域R1を中心とする左右の第2および第3の活性領域R2、R3との間の反対方向に分極した磁化によりアディティブである。望ましくない近接磁場は打ち消され、トルク由来の磁場だけが、一次磁場センサS11、S22によって判明する。正味の近磁場の効果値および正味のトルク由来の場の値の実際の算出は、算術演算処理ユニット(ALU)になり得る適切な制御ユニットを用いて実施することができる。
【0047】
第1および第2のセンサS11、S22は、互いに実質的に180°反対である感知方向D11、D22をそれぞれ有する。これらは、さらに、軸芯Aに対して実質的に平行である。右手の二次センサRの感知方向DRおよび左手の二次センサLの感知方向DLもまた、軸芯Aに対して実質的に平行である。第1および第2のセンサS11、S22の感知方向とは対照的に、これらは、ほぼ同じ軸方向を指す。
【0048】
図5では、図4の実施形態による自由輪ハブ2のトルク伝達部材12を示す簡略化された側面図がある。第1の活性領域R1ならびに第2および第3の活性領域R2、R3は、互いに実質的に隣接するように軸方向に配置される。第1の磁気分極P1と第2および第3の磁気分極P2、P3は、互いにほぼ180°反対である。
【0049】
図6は、中空軸であるこのトルク伝達部材12を貫通する軸方向の簡略化された断面である。この図は、第1から第3の活性領域R1からR3に対する、方向感知性一次センサS11、S22および二次センサRおよびLの構成を示している。図6のトルク伝達部材12は、図4の実施形態の部材12の詳細図である。
【0050】
図7は、本発明の実施形態による、一次磁場センサS11およびS22ならびに二次磁場センサRおよびLのトルク伝達部材12の内側での配置を示す概略図である。トルク伝
達部材12は、それぞれの活性領域R1からR3の内側で矢印を用いて示されるように、分極P1、P2、およびP3を有する3つの磁気分極領域R1、R2およびR3を有する。近接磁場又は浮遊磁場22を発生させる近磁場源20がある。近磁場源20は、近接磁場のいかなるソースにもなり得る。
【0051】
この実施形態は、少なくとも4つの磁場センサS11、S22、LおよびRを、少なくとも部分的に中空の長手方向に延びるトルク伝達部材12(中空軸)の内側であって、且つ軸の内面において検出可能なように磁化された磁気領域R1、R2、R3の近くに置くことによって、外部磁場を打ち消すことによるものである。磁場センサS11、S22、LおよびRの少なくとも一部(又はこれらのすべて)は、基板上に、特に印刷回路基板(PCB)上への配置とすることができる。この態様は、互いに対する、ならびに磁気領域R1、R2、およびR3に対する磁場センサS11、S22、LおよびRの(自動の)位置合わせを実現する。
【0052】
第1の、中央の領域R1の磁場センサS11、S22は、左右の領域R2、R3にある磁場センサL、Rに対して反対の感知極性を有する。したがって、中央領域R1にある一次磁場センサS11、S22によって測定された近磁場は、左右の領域R2、R3にある二次磁場センサL、Rによって測定された近接磁場の平均化された値と同じ大きさの反対符号のものである。
【0053】
図7の図では、磁場センサS11、S22、RおよびLをどのように結合させることができるかも示されている。第1の一次磁場センサS11は、正極が第2の一次磁場センサS22の負極に結合される。第1の一次磁場センサS11の負極および第2の一次磁場センサS22の正極は、近接磁場源20の効果を解消するための手段に結合される。この手段は、評価ステージ又は評価ユニット(図示せず)とすることができる。本発明の有利な実施形態によれば、電気供給装置、データ通信インターフェースなどのすべての必要な周辺装置を含むこの評価ステージ又は制御ユニットは、スリーブ16の内側への配置とすることができる(図1および図4参照)。換言すれば、センサ手段全体は、トルク伝達部材12の内部空間内への配置とすることができる。このことは、中空軸である場合に特に有利である。しかし、評価ステージ又は制御ユニットがスリーブ16の外側および中空のトルク伝達部材12の外部に配置されることもまた、可能である。
【0054】
引き続き、図7に示すセンサの配線に関し、右の二次センサRの正極が左の二次センサLの負極に結合されることを見てとることができる。右センサRの負極は、評価ユニットに結合される。左センサLの正極は、センサS22の正極、さらには評価ユニットに結合される。後者は、近接磁場源20の効果を解消するために、二次センサR、Lの信号を用いて一次センサS11、S22の第1の信号を調整するように構成される。
【0055】
中心Cは、この配置の対称点の場所を示している。この点Cに対する対称性は、すでに良好なノイズ低減をもたらしている。
【0056】
関連する電子装置と組み合わせた磁場センサの相互接続は、左右の領域R2、R3の値を平均化し、その平均に中心領域センサS11、S22の値を合計するように構成される。中心領域センサS11、S22の値は、反対の極性で配向されているために、近磁場の測定誤差の影響を効果的に打ち消す。3つの磁化された領域R1、R2、R3を用いたこの配置はまた、「三バンドトルクセンサ」とも称される。
【0057】
近磁場が打ち消される一方で、一次および二次の磁場センサによって測定されたトルク由来の磁場は、打ち消されない。中心領域、又は一次センサの出力が、左右の領域のセンサに対する差分測定値だからである。
【0058】
図8には、自由輪ハブ2の詳細がある。磁気弾性センサ手段は、図では省略されている。しかしながらこれは、図1から7の実施形態の1つによって構成することができる。ここでも、類似の部分は、同じ参照番号が与えられる。自由輪ハブ2には、自由輪装置24又はオーバーランニングクラッチが設けられる。このオーバーランニングクラッチは、従動部材が駆動部材より速く回転するとき、トルク伝達部材12を従動ハブシェル6から遮断する。トルクTは、スプロケット支持部材14を介して自由輪ハブ2に作用する。図8に示す線は、トルクTが、どのようにしてトルク伝達部材12にさらに伝搬されるかを示している。スプロケット支持体14とトルク伝達部材12の間の空隙13は、2つの部分間のいかなる摩擦も回避するためのものである。トルクTは、自由輪装置24を介してハブシェル6にさらに伝搬される。
【0059】
図9は、図8の線IX−IXに沿った簡略化された断面である。自由輪装置24の従動アウタシェル26は、ハブシェル6に回転可能に固定される。この従動アウタシェル26は、その内側がのこぎり歯になっている。こののこぎり歯は、幾分ラチェットのようなばね荷重ピン27と共働する。ピン27を担持する支持体28は、トルク伝達部材12に結合される(図8参照)。一方向に回転することにより、従動アウタシェルののこぎり歯は、ピン27でロックされ、ハブシェル6をトルク伝達部材12と同じ速度で回転させる。仮に駆動部分が回転を減速したり、あるいは停止させた場合、ピン27は、のこぎり歯上を摺動し、ハブシェル6は回転し続けて、特徴のあるクリック音が生じる。自由輪クラッチ24のよりいっそう洗練された設計さえ、たとえば、ばね荷重鋼ローラを有するものでさえ、適用することができる。
【0060】
図10は、本発明の実施形態による簡略化された自転車、電動アシスト自転車、高速電動アシスト自転車又は電動自転車30である。電動自転車30には、補助電気駆動装置を装備することができる。本発明の実施形態によれば、電動自転車30のフレーム32は、自由輪ハブ2を担持する。複数のスポーク8は、自由輪ハブ2の回転ハブシェル6上に装着される(図1参照)。これらスポーク8は、車輪リムおよびタイヤと一緒になって、電動自転車30の後輪34を形成する。
【0061】
自転車チェーン36は、トルクの伝達装置としての役割を果たす。該伝達装置は、大きい駆動スプロケット38を、自由輪ハブ2に結合された小さい方のスプロケットに結合する。ボトムブラケット軸受軸は、大きいギア付きスプロケット38、およびペダル42を担持する2つのクランク軸40に結合される。補助電気駆動装置は、ボトムブラケット軸受44内に組み入れることができる。この電気駆動装置は、電池46を用いて動力供給される。
【0062】
トルクは、電動自転車30のユーザがペダル42およびクランク軸40を介してボトムブラケット軸受軸に、大きいスプロケット38および自転車チェーン36をさらに介して自由輪ハブ2に作用する。このトルクは、自由輪ハブ2の内側の磁気弾性センサ手段を用いることで、取得される。補助電気駆動装置が作動状態であるか、あるいは非作動状態であるかによって、測定されたトルク値は、ユーザの及ぼしたトルク、又はユーザおよび電気駆動装置によって生成された合計トルクを指す。取得されたトルク値は、電気補助駆動装置の制御に関して、その作動に関しておよび/又は作動停止に関して適用することができる。適切な制御ユニット50は、電動自転車30のどのような場所にも組み入れられ得る。さらに測定されたトルク値は、多目的自転車コンピュータ52上に表示することができる。
【0063】
本発明は、特有の実施形態を参照して本明細書の上記で説明されてきたが、この説明は、これらの実施形態に限定されず、当然ながら、特許請求される本発明の範囲内にある別
の代替策が、当業者に想定されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10