(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126557
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】塗膜剥離装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20170424BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
B29B17/02
B29B17/00ZAB
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-146457(P2014-146457)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-22608(P2016-22608A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591162413
【氏名又は名称】須河車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝司
(72)【発明者】
【氏名】乾 伸也
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−277537(JP,A)
【文献】
特開2001−1338(JP,A)
【文献】
特開2001−30244(JP,A)
【文献】
特開2001−30250(JP,A)
【文献】
特開2001−30243(JP,A)
【文献】
特開2010−179603(JP,A)
【文献】
特開平11−10645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
B29B 17/00
B07B 1/00
B05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被剥離物(200)に付着した塗膜を剥離するための塗膜剥離装置であって、
設置面(S)に設置される設置台(1)と、
前記設置面(S)に対して30〜60度の所定角度(θ1)で傾斜するように、前記設置台(1)に取り付けられたメインプレート(2)と、
前記メインプレート(2)に対して垂直に前記メインプレート(2)の下端(2a)に取り付けられると共に、前記被剥離物(200)より小さな複数の孔部(30)を有するメッシュプレート(3)と、
前記メインプレート(2)を前記メッシュプレート(3)と共に囲むように、前記メインプレート(2)の上端(2b)及び左右端(2c,2d)に取り付けられた上プレート(4)及び左右プレート(5,6)と、
前記メインプレート(2)に対向する開口部(70)を開閉するための開閉プレート(7)と、
前記メインプレート(2)に垂直に取り付けられた回転軸(8)と、
前記回転軸(8)に取り付けられた複数の回転翼(9)と、
前記回転軸(8)を回転する駆動部(10)と、
圧縮空気を前記メッシュプレート(3)に向けて噴射するための噴射口(11)と、を備え、
複数の前記被剥離物(200)は、前記回転翼(9)の回転によって撹拌され、それによって、前記被剥離物(200)に付着した前記塗膜が剥離し、前記被剥離物(200)から剥離した前記塗膜が、前記噴射口(11)から噴射される前記圧縮空気によって、前記メッシュプレート(3)の前記孔部(30)を通じて排出される
ことを特徴とする塗膜剥離装置。
【請求項2】
前記駆動部(10)は、圧縮空気で前記回転軸(8)を回転するものであって、
前記噴射口(11)から噴射される前記圧縮空気は、前記駆動部(10)から排出されるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の塗膜剥離装置。
【請求項3】
前記噴射口(11)は、前記上プレート(4)に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗膜剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被剥離物に付着した塗膜を剥離するための塗膜剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディー等の被塗装物を電着塗装するとき、被塗装物に設けられたボルト孔の溝が塗膜によって埋まることがある。ボルト孔の溝が塗膜で埋まらないように、被塗装物を塗装する前に、ボルト孔に樹脂製の柔軟なボルト栓を嵌め込む。これにより、ボルト孔がボルト栓で塞がれるので、その状態で被塗装物を塗装すると、ボルト孔の溝が塗膜で埋まらない。塗装後、ボルト孔からボルト栓を外すと、ボルト栓に塗膜が付着している。従って、塗膜が付着したボルト栓を再利用するには、ボルト栓(被剥離物)から塗膜を剥離する必要がある。
【0003】
そこで、被剥離物に付着した塗膜を剥離するための塗膜剥離装置が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載された塗膜剥離装置では、攪拌機20の容器21に小塊(被剥離物)9を入れて、微量水と空気とを導入しながら小塊9を回転翼22によって撹拌し、それによって、小塊9から塗膜を剥離し、取出し口28から取り出すように構成されている。
【0004】
しかし、上記の従来の塗膜剥離装置では、被剥離物と、被剥離物から剥離した塗膜とが、分離されず、塗膜と被剥離物とが共に撹拌され、塗膜と一緒に被剥離物を取出し口から取り出さなければならない。そのため、従来の塗膜剥離装置では、被剥離物を再利用するために、被剥離物と塗膜とを分離する手間を必要とする。また、従来の塗膜剥離装置では、容器の下部に回転翼が設けられているので、被剥離物を効率よく撹拌できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−58383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被剥離物と塗膜とを分離可能であると共に、被剥離物を効率よく撹拌できる塗膜剥離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る塗膜剥離装置は、
被剥離物(200)に付着した塗膜を剥離するための塗膜剥離装置であって、
設置面(S)に設置される設置台(1)と、
設置面(S)に対して
30〜60度の所定角度(θ1)で傾斜するように、設置台(1)に取り付けられたメインプレート(2)と、
メインプレート(2)に対して垂直にメインプレート(2)の下端(2a)に取り付けられると共に、被剥離物(200)より小さな複数の孔部(30)を有するメッシュプレート(3)と、
メインプレート(2)をメッシュプレート(3)と共に囲むように、メインプレート(2)の上端(2b)及び左右端(2c,2d)に取り付けられた上プレート(4)及び左右プレート(5,6)と、
メインプレート(2)に対向する開口部(70)を開閉するための開閉プレート(7)と、
メインプレート(2)に垂直に取り付けられた回転軸(8)と、
回転軸(8)に取り付けられた複数の回転翼(9)と、
回転軸(8)を回転する駆動部(10)と、
圧縮空気をメッシュプレート(3)に向けて噴射するための噴射口(11)と、を備え、
複数の被剥離物(200)は、回転翼(9)の回転によって撹拌され、それによって、被剥離物(200)に付着した塗膜が剥離し、被剥離物(200)から剥離した塗膜が、噴射口(11)から噴射される圧縮空気によって、メッシュプレート(3)の孔部(30)を通じて排出される。
【0008】
好ましくは、
駆動部(10)は、圧縮空気で回転軸(8)を回転するものであって、
噴射口(11)から噴射される圧縮空気は、駆動部(10)から排出されるものである。
【0010】
好ましくは、
噴射口(11)は、上プレート(4)に設けられる。
【発明の効果】
【0012】
上記の通り、本発明の塗膜剥離装置は、設置面に対して所定角度で傾斜するように設けられたメインプレートと、被剥離物より小さな複数の孔部を有するメッシュプレートと、メインプレートに垂直に取り付けられた回転軸と、回転軸に取り付けられた複数の回転翼と、回転軸を回転する駆動部と、圧縮空気をメッシュプレートに向けて噴射するための噴射口と、を備える。
【0013】
さらに、本発明の塗膜剥離装置では、複数の被剥離物が、回転翼の回転によって撹拌され、それによって、被剥離物に付着した塗膜が剥離し、被剥離物から剥離した塗膜粉が、噴射口から噴射される圧縮空気によって、メッシュプレートの孔部を通じて排出される。
【0014】
従って、本発明の塗膜剥離装置は、メッシュプレートを介して、被剥離物と塗膜とを分離できるので、簡単に被剥離物だけを取り出すことができ、被剥離物と塗膜とを分離する手間が必要ない。このように、圧縮空気によって、被剥離物と塗膜粉とを分離でき、清掃する必要がなく、被剥離物を簡単に取り出すことができる。さらに、塗膜を排出しながら、被剥離物を撹拌できるので、被剥離物に塗膜が再度付着することがなく、被剥離物と塗膜とを効率よく分離できる。
【0015】
また、仮にメインプレートが設置面に対して平行(水平方向)とすると、回転翼も設置面に対して平行に配置されるので、被剥離物と塗膜とを分離するためのメッシュプレートを配置できない。また、仮にメインプレートが設置面に対して垂直(垂直方向)とすると、回転翼も設置面に対して垂直に配置されるので、被剥離物を効率よく撹拌できない。
【0016】
従って、本発明の塗膜剥離装置では、メインプレートが設置面に対して所定角度で傾斜するように設けられており、被剥離物を効率よく撹拌できると共に、メッシュプレートで被剥離物と塗膜とを分離できるように構成されている。
【0017】
また、本発明の塗膜剥離装置では、水や薬品を使用することなく、被剥離物が壁にぶつかり、相互にぶつかり合うことで、被剥離物から塗膜を剥離できる。さらに、本発明の塗膜剥離装置では、ショット・ブラスト機などのように、研磨剤を被剥離物に当てることがないので、被剥離物を傷つけることなく、塗膜を除去できる。また、本発明の塗膜剥離装置は、研磨剤などを使用しないので、ランニングコストが非常に優れている。
【0018】
また、好ましくは、本発明の塗膜剥離装置では、回転翼は、メインプレートに対して所定角度で傾斜し、回転翼とメインプレートとの間における回転翼の回転方向と反対の角度が、30〜60度である。従って、被剥離物は、傾斜した回転翼によって効率よく撹拌される。
【0019】
本発明の塗膜剥離装置では、メインプレートの角度、回転翼の角度、材質、形状、上下プレートの形状などを変更することで、様々な被剥離物に対応できる。また、本発明の塗膜剥離装置では、構造が比較的単純であるため、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1の矢視Aから見た塗膜剥離装置を示す図。
【
図3】
図2のB部分を拡大して示すC−C線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明に係る塗膜剥離装置を説明する。
【0022】
図1の
とおり、塗膜剥離装置は、被剥離物200に付着した塗膜を剥離する。塗膜剥離装置は、設置面Sに設置される設置台1を備える。塗膜剥離装置は、設置台1に取り付けられた矩形状のメインプレート2を備えており、メインプレート2は、設置面Sに対して所定角度θ1で傾斜するようになっている。設置面Sとメインプレート2との間の所定角度θ1は、30〜60度であればよく、本実施形態では、約45度となっている。
【0023】
塗膜剥離装置は、被剥離物200より小さな孔部30を有するメッシュプレート3を備える。メッシュプレート3は、メインプレート2に対して垂直になるように、メインプレート2の下端2aに取り付けられる。さらに、塗膜剥離装置は、上プレート4を備え、上プレート4は、メインプレート2の上端2bに取り付けられる。また、
図2の
とおり、塗膜剥離装置は、左右プレート5,6を備え、左右プレート5,6は、メインプレート2の左右端2c,2dに取り付けられる。
【0024】
メインプレート2は、メッシュプレート3と共に、上プレート4及び左右プレート5,6に囲まれる。従って、
図1の
とおり、塗膜剥離装置には、メインプレート2に対向する開口部70が形成される。塗膜剥離装置は、開口部70を開閉するための開閉プレート7を備える。メインプレート2、メッシュプレート3、上プレート4、左右プレート5及び開閉プレート7によって、被剥離物200を収容するための収容器102が形成される。開閉プレート7を閉じると、収容器102に被剥離物200を収容でき、一方、開閉プレート7を開くと、収容器102から被剥離物200を出し入れできる。
【0025】
図1及び
図2の
とおり、塗膜剥離装置は、メインプレート2に垂直に取り付けられた回転軸8を備える。回転軸8は、回転自在になっている。また、回転軸8には、円盤状の回転プレート80が取り付けられている。回転プレート80は、メインプレート2に平行に配置される。回転プレート80には、4つの回転翼9が取り付けられている。回転軸8の回転によって、回転プレート80と共に、回転翼9が回転するようになっている。なお、回転翼9の数は、2つ以上であればよく、特に制限はない。
【0026】
塗膜剥離装置は、回転軸8を圧縮空気で回転する駆動部10を備える。駆動部10は、コンプレッサー101からの圧縮空気を回転軸8へ供給することで、回転軸8の回転を駆動するように構成されている。また、駆動部10には、接続管100の一端が接続されており、接続管100によって、駆動部10から排出される圧縮空気が導かれる。接続管100の他端は、上プレート4に設けられた噴射口11に接続されており、駆動部10からの圧縮空気が、噴射口11から噴射するようになっている。従って、圧縮空気は、噴射口11からメッシュプレート3に向けて噴射する。
【0027】
これによって、1つのコンプレッサー101で、駆動部10を駆動すると共に、噴射口11から圧縮空気を噴射できる。また、本発明の塗膜剥離装置では、圧縮空気の供給管を接続するだけなので、簡単に操作できると共に、持ち運びが容易である。
【0028】
次に、被剥離物200に付着した塗膜を剥離する際の塗膜剥離装置の動作について説明する。
先ず、塗膜が付着した複数の被剥離物200を、開口部70から収容器102に収容し、開閉プレート7によって開口部70を閉じる。そして、駆動部10を駆動して、収容器102に収容された被剥離物200を回転翼9の回転によって撹拌する。この撹拌によって、被剥離物200が互いに衝突して、被剥離物200に付着した塗膜が剥離する。
【0029】
さらに、被剥離物200から剥離した塗膜が、噴射口11から噴射される圧縮空気によって、メッシュプレート3の孔部30を通じて排出される。これによって、塗膜が剥離された被剥離物200は、収容器102に残り、剥離した塗膜が、廃棄部12に排出される。その結果、被剥離物200と塗膜とは、メッシュプレート3を介して分離される。
【0030】
また、
図3の
とおり、回転翼9は、メインプレート2に対して所定角度θ2で傾斜している。回転翼9とメインプレート2との間における回転翼9の回転方向9aと反対の角度θ2は、30〜60度であればよく、本実施形態では、約45度となっている。これによって、被剥離物200が、回転する回転翼9に衝突すると、被剥離物200をメインプレート2から遠くへ飛ばすことができ、被剥離物200を効率よく撹拌できる。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記構成を適宜変更することもで
きる。例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実
施することもできる。
【0032】
本実施形態では、噴射口11は、上プレート4に設けられているが、圧縮空気をメッシュプレート3に向けて噴射できるように、左右プレート5,6に設けても良い。また、回転翼9は、回転軸8に直接取り付けられていても良い。
【0033】
本実施形態では、コンプレッサー101で駆動部10を駆動すると共に、駆動部10からの圧縮空気が噴射口11から噴射されるが、駆動部10が電気モーターからなり、コンプレッサー101からの圧縮空気を直接噴射口11から噴射しても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 設置台
2 メインプレート
2a メインプレートの下端
2b メインプレートの上端
2c メインプレートの左端
2d メインプレートの右端
3 メッシュプレート
30 孔部
4 上プレート
5 左プレート
6 右プレート
7 開閉プレート
70 開口部
8 回転軸
9 回転翼
9a 回転翼の回転方向
10 駆動部
11 噴射口
200 被剥離物
θ1 メインプレートと設置面との角度
θ2 回転翼とメインプレートとの角度
S 設置面