特許第6126561号(P6126561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126561
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】エレベータ遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20170424BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   B66B11/02 FZIT
   B66B5/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-171619(P2014-171619)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44069(P2016-44069A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恭志
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−113905(JP,A)
【文献】 特開2002−308539(JP,A)
【文献】 特開平08−067443(JP,A)
【文献】 特開昭58−162481(JP,A)
【文献】 特開2009−067540(JP,A)
【文献】 特開2015−224115(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0144645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00−11/08
B66B 5/00− 5/28
G08B 23/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域毎に設置された複数のエレベータと、前記エレベータの異常を検出して通報する監視端末と、この監視端末と通信回線を介して接続され、前記エレベータの状態を遠隔的に監視する監視センタとを備え、
前記エレベータは、昇降路内を昇降する乗りかごと、前記乗りかご内を換気するファンと、前記ファンの運転を制御するファン運転制御部とを含むエレベータ遠隔監視システムにおいて、
前記ファンの運転状態を前記監視センタへ通知するファン運転状態通知部を備え、
前記監視センタは、
前記ファン運転状態通知部によって通知された前記ファンの運転状態が動作状態である動作件数又は前記ファンの運転状態が停止状態である停止件数を前記地域毎に演算する演算部と、
この演算部によって演算された前記動作件数が所定の第1閾値に達した地域があるかどうか、又は前記停止件数が所定の第2閾値に達した地域があるかどうかを判定する地域判定部と、
前記地域判定部によって前記動作件数が前記所定の第1閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する前記各エレベータの前記ファンを動作させる制御指令を前記ファン運転制御部へ送信し、又は前記地域判定部によって前記停止件数が前記所定の第2閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する前記各エレベータの前記ファンを停止させる制御指令を前記ファン運転制御部へ送信する制御指令送信部とを含むことを特徴とするエレベータ遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの状態を遠隔的に監視するエレベータ遠隔監視システムに係り、特に乗りかご内を換気するファンの運転を制御するのに好適なエレベータ遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータは、昇降路内を昇降する乗りかごを備えており、この乗りかご内の環境は、乗客の人数、温度、湿度、及び季節等によって変化する。そのため、エレベータには、乗りかご内を換気するファンが設けられており、このファンが回転することによって乗りかご内の環境を快適に保つようにしている。このようなエレベータでは、ファンの運転の切替は、エレベータが設置されたビルを管理する管理人又はエレベータの保守作業を行う保守員によって、乗りかご内に設けられたファン専用スイッチを操作して行われている。
【0003】
ところで、ビルの管理人は、エレベータの乗客からクレームを受けることにより、乗りかご内の乗客が室内の環境に対して不快に感じている状態が判明した後、ファン専用スイッチを操作してファンを動作させたり、あるいはビルの管理人が不在である場合には、エレベータの保守員が呼び出しを受けることにより、当該エレベータのビルへ出動した後、ファン専用スイッチを操作してファンを動作させていた。そのため、乗りかご内の環境の変化に対してファンの運転を迅速に切替えることができず、乗りかご内の乗客に不快感を与える虞があった。
【0004】
そこで、乗りかごに設置されたかご内環境を感知するかご内環境感知手段と、乗りかごに設置されたファンの運転を制御するファン運転制御手段と、かご内環境感知手段により得られた環境データと遠隔監視センタ内に設置された記憶手段に予め記憶されているかご運転データ等とに基づいてかご内環境最適条件を設定するかご内環境最適条件設定手段と、このかご内環境最適条件設定手段によって得られたかご内環境最適条件に基づいてファンの運転を指令するファン運転指令手段とを、遠隔監視センタに設けたエレベータ用かご内ファンの自動制御装置が従来技術の1つとして提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この従来技術のエレベータ用かご内ファンの自動制御装置は、かご内環境最適条件設定手段によって設定されたかご内環境最適条件に基づいたファン運転指令手段からの指令によりファン運転制御手段を作動させるようにしているので、ビルの管理人やエレベータの保守員の手を煩わすことなく、乗りかご内を自動的に快適な環境にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−20060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された従来技術のエレベータ用かご内ファンの自動制御装置では、かご内環境感知手段として、例えば、乗りかご内の温度、湿度、においの強さあるいは空気の汚れ度合等の乗りかご内の環境を感知するセンサを乗りかご内に設置する必要があるので、このセンサ自体が高価であったり、あるいは専門技術者によるセンサの施工費がかかることが問題になっている。さらに、建物に設置されたエレベータが稼働してからある程度の時間が経過した後に、センサを乗りかご内に後付けする場合には、エレベータ等の設計変更やセンサの施工に対して多大なコストを費やすことが懸念されている。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、乗りかご内の環境を安価で快適な状態に保つことができるエレベータ遠隔監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベータ遠隔監視システムは、地域毎に設置された複数のエレベータと、前記エレベータの異常を検出して通報する監視端末と、この監視端末と通信回線を介して接続され、前記エレベータの状態を遠隔的に監視する監視センタとを備え、前記エレベータは、昇降路内を昇降する乗りかごと、前記乗りかご内を換気するファンと、前記ファンの運転を制御するファン運転制御部とを含むエレベータ遠隔監視システムにおいて、前記ファンの運転状態を前記監視センタへ通知するファン運転状態通知部を備え、前記監視センタは、前記ファン運転状態通知部によって通知された前記ファンの運転状態が動作状態である動作件数又は前記ファンの運転状態が停止状態である停止件数を前記地域毎に演算する演算部と、この演算部によって演算された前記動作件数が所定の第1閾値に達した地域があるかどうか、又は前記停止件数が所定の第2閾値に達した地域があるかどうかを判定する地域判定部と、前記地域判定部によって前記動作件数が前記所定の第1閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する前記各エレベータの前記ファンを動作させる制御指令を前記ファン運転制御部へ送信し、又は前記地域判定部によって前記停止件数が前記所定の第2閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する前記各エレベータの前記ファンを停止させる制御指令を前記ファン運転制御部へ送信する制御指令送信部とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエレベータ遠隔監視システムによれば、乗りかご内の環境を安価で快適な状態に保つことができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るエレベータ遠隔監視システムの一実施形態の構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る監視センタによって遠隔的に行われるファンの運転の制御について説明する図である。
図3】本実施形態に係る監視センタの制御処理を説明するフローチャートである。
図4】本実施形態に係る監視端末の制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータ遠隔監視システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0013】
本発明に係るエレベータ遠隔監視システムの一実施形態は、例えば図1図2に示すように、地域A〜C毎に設置された複数のエレベータ1と、これらの各エレベータ1に設置され、各エレベータ1の異常を検出して通報する複数の監視端末2と、これらの各監視端末2と通信回線としての公衆回線網4を介して接続され、各エレベータ1の状態を遠隔的に監視する監視センタ3とを備えている。なお、各監視端末2は、例えば、各エレベータ1と同一の建物内に設置されている。
【0014】
本実施形態では、以下の説明を分かり易くするために、例えば、市町村単位で予め設定された地域A、地域B、及び地域Cの3つの地域を一例として挙げているが、地域を設定する単位や地域数は、必ずしも上述した場合に限定されるものではない。また、本実施形態では、地域A〜C毎に複数のエレベータ1が設置されているが、これら各エレベータ1の構成はそれぞれ同等であるので、図1において便宜的に複数のエレベータ1のうち1台のみ図示し、各エレベータ1の構成及び作用について重複する説明を省略する。同様に、各監視端末2の構成はそれぞれ同等であるので、図1において便宜的に複数の監視端末2のうち1台のみ図示し、各監視端末2の構成及び作用について重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、各エレベータ1は、地域A〜Cに属する各建物の昇降路内に配置された乗りかご6と、図示されないが、この乗りかご6と主ロープを介して吊下げられた釣合い錘と、主ロープが巻き掛けられ、回転駆動することで乗りかご6及び釣合い錘を相対的に昇降させる巻上機と、乗りかご6の運転を操作する操作盤とを含んでいる。
【0016】
また、各エレベータ1は、乗りかご6に設けられ、乗りかご6内を換気するファン7と、乗りかご6内に設けられ、ファン7の運転を手動で操作するファンスイッチ8と、巻上機やファン7のようにエレベータ1に設置された各機器の動作を制御するエレベータ制御装置9とを含んでいる。
【0017】
ファン7は、例えば、乗りかご6の天井に取り付けられており、回転することによって乗りかご6と昇降路との間で空気の入れ替えを行うものである。ファンスイッチ8は、例えば、乗りかご6内の操作盤に取付けられたON・OFFスイッチから成り、このON・OFFスイッチの操作信号はエレベータ制御装置9へ入力される。
【0018】
エレベータ制御装置9は、巻上機を回転駆動して乗りかご6の昇降動作を制御するものであり、またファン7の運転を制御するファン運転制御部としての機能も有している。エレベータ制御装置9は、ファンスイッチ8がON状態に操作されることにより、ファン7の運転状態を動作状態に切替え、ファンスイッチ8がOFF状態に操作されることにより、ファン7の運転状態を停止状態に切替える制御を行う。なお、ファン7の運転状態が動作状態であるとは、ファン7が回転して乗りかご6内を換気している状態であり、ファン7の運転状態が停止状態であるとは、ファン7の回転が停止して乗りかご6内を換気していない状態である。
【0019】
監視端末2は、エレベータ制御装置4に通信ケーブル等で通信接続された対エレベータ用送受信部11と、外部の監視センタ3と公衆回線網4を介して通信接続された対監視センタ用送受信部12と、乗りかご6のファン7の運転状態等の各種の情報を記憶する記憶部13と、これらの対エレベータ用送受信部11、対監視センタ用送受信部12、及び記憶部13の動作を制御する制御部14とを含んでいる。
【0020】
対エレベータ用送受信部11は、エレベータ制御装置4との間で各種のデータや信号の送受信を行うものである。対監視センタ用送受信部12は、監視センタ3との間で各種のデータや信号の送受信を行うものである。
【0021】
記憶部13は、例えば、制御部14で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)、エレベータ制御装置9及び監視センタ3に対して送受信する情報を固定的に記憶するHDD(Hard Disk Drive)、及び制御部14がプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含むハードウェアから構成されている。
【0022】
制御部14は、例えば、記憶部13に記憶されたプログラムを実行して各種の演算を行うマイコンとして機能する。そして、制御部14は、対エレベータ用送受信部11及びエレベータ制御装置9を介してエレベータ1の状態を監視しており、エレベータ1の状態が異常であることを検出した場合に、対監視センタ用送受信12を介してエレベータ1の異常信号を監視センタ3へ送信する。また、制御部14は、ファン7の運転状態を監視センタ3へ通知するファン運転状態通知部14Aを具備している。
【0023】
このファン運転状態通知部14Aは、対エレベータ用送受信部11によって入力されたファンスイッチ8の操作信号に基づいて、ファン7の運転状態を判別する。そして、ファン運転状態通知部14Aは、ファン7の運転状態が動作状態であると判別した場合に、対監視センタ用送受信部12を介してファン7の動作状態信号を監視センタ3へ送信する。
【0024】
一方、ファン運転状態通知部14Aは、ファン7の運転状態が停止状態であると判別した場合に、対監視センタ用送受信部12を介してファン7の停止状態信号を監視センタ3へ送信する。従って、ファンスイッチ8がON状態又はOFF状態に操作されると、ファンスイッチ8のON状態又はOFF状態の操作信号がエレベータ制御装置9から監視端末2に送信された後、ファン7の動作状態信号及び停止状態信号のいずれかを示す運転状態信号が監視端末2から監視センタ3へ送信されることになる。
【0025】
監視センタ3は、外部の監視端末2と公衆回線網4を介して通信接続された対監視端末用送受信部16と、後述する地域A〜C毎のファン7の動作件数等の各種の情報を記憶する記憶部17と、地域A〜Cに属する各エレベータ1の物件情報を登録する物件データベース(図1では、便宜的にデータベースをDBと略記する)18A〜18Cと、これらの対監視端末用送受信部16、記憶部17、物件データベース18A〜18Cの動作を制御する制御部19と、地域A〜Cに属する各エレベータ1の物件情報を入力すると共に、各種の情報を映像により出力する入出力部20とを含んでいる。
【0026】
対監視端末用送受信部16は、監視端末2との間で各種のデータや信号の送受信を行うものである。記憶部17は、例えば、監視端末2の記憶部13と同様に、制御部19で実行されるプログラムを格納するROM、監視端末2に対して送受信する情報や入出力部20によって入力された情報等を固定的に記憶するHDD、及び制御部19がプログラムを実行する際の作業領域となるRAM等の記憶装置を含むハードウェアから構成されている。また、記憶部17は、監視センタ3によってファン7が遠隔的に動作したかどうかを示す動作フラグ、及び監視センタ3によってファン7が遠隔的に停止したかどうかを示す停止フラグの情報を記憶する。
【0027】
各物件データベース18A〜18Cは、例えば、情報を固定的に記憶するHDD等の記憶装置から構成されており、物件データベース18Aは、物件情報として例えば、地域Aに属する各エレベータ1を識別する識別番号、地域Aに属する各エレベータ1が設置された建物の住所、及び地域Aに属する各エレベータ1におけるファン7の設置台数等の情報を格納している。
【0028】
物件データベース18Bは、物件情報として例えば、地域Bに属する各エレベータ1を識別する識別番号、地域Bに属する各エレベータ1が設置された建物の住所、及び地域Bに属する各エレベータ1におけるファン7の設置台数等の情報を格納している。物件データベース18Cは、物件情報として例えば、地域Cに属する各エレベータ1を識別する識別番号、地域Cに属する各エレベータ1が設置された建物の住所、及び地域Cに属する各エレベータ1におけるファン7の設置台数等の情報を格納している。
【0029】
制御部19は、例えば、物件データベース18A〜18Cに登録された物件情報を参照しながら記憶部17に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の演算を行うマイコンとして機能する。
【0030】
具体的には、制御部19は、ファン運転状態通知部14によって通知されたファン7の運転状態が動作状態である動作件数を地域A〜C毎に演算すると共に、ファン運転状態通知部14によって通知されたファン7の運転状態が停止状態である停止件数を地域A〜C毎に演算する演算部19Aと、この演算部19Aによって演算されたファン7の動作件数が所定の第1閾値に達した地域があるかどうかを判定すると共に、演算部19Aによって演算されたファン7の停止件数が所定の第2閾値に達した地域があるかどうかを判定する地域判定部19Bとを含んでいる。
【0031】
さらに、制御部19は、地域判定部19Bによってファン7の動作件数が所定の第1閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する各エレベータ1のファン7を動作させる制御指令(以下、便宜的に動作制御指令と称する)を、監視端末2を介してエレベータ制御装置9へ送信し、地域判定部19Bによってファン7の停止件数が所定の第2閾値に達した地域があると判定されたとき、当該地域に属する各エレベータ1のファン7を停止させる制御指令(以下、便宜的に停止制御指令と称する)を、監視端末2を介してエレベータ制御装置9へ送信する制御指令送信部19Cとを含んでいる。
【0032】
ここで、上述の第1閾値及び第2閾値は、任意で設定可能であり、それぞれ同じ値であっても良いし、それぞれ異なる値であっても良い。具体例として、第1閾値及び第2閾値を、物件データベース18A〜18Cに登録された全物件情報に含まれるエレベータ1のファン7に対して3%の値にそれぞれ設定したり、10件等のように固定した値としてそれぞれ設定することができる。
【0033】
従って、地域A〜Cのうち、例えば図2に示すように、地域Bにおけるファン7の動作件数が所定の第1閾値(図2に示す例では3件)に達した場合には、制御指令送信部19Cによって動作制御指令が監視センタ3から監視端末2を介して地域Bの各エレベータ1のエレベータ制御装置9へ送信されるので、これらのエレベータ制御装置9によって地域Bに属する全てのエレベータ1のファン7が一斉に動作する。
【0034】
入出力部20は、例えば、監視センタ3内のユーザが操作するマウスやキーボード等の操作装置、及び映像を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置を含むパソコンから構成されており、このパソコンの操作装置の操作を通じてユーザの入力を受け付けたり、表示装置の映像を通じて監視対象である地域A〜Cの各エレベータ1に関する情報等をユーザに提供したりするユーザインターフェースとして機能する。
【0035】
次に、本実施形態に係る監視センタ3の制御処理について、図3を参照して詳細に説明する。
【0036】
図3は監視センタ3の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
図3に示すように、まず監視センタ3の制御部19は、監視端末2から対監視端末用送受信部16を介して乗りかご6のファン7の運転状態信号を受信したかどうかを検知する(ステップ(以下、Sと記す)301)。このとき、制御部19は、乗りかご6のファン7の運転状態信号を受信していないことを検知すると(S301/NO)、S301の制御処理が繰り返される。
【0038】
一方、S301において、制御部19は、ファン7の運転状態信号を受信したことを検知すると(S301/YES)、受信した信号の送信元のエレベータ1の識別番号を基に物件データベース18A〜18Cの物件情報を検索することにより、当該送信元の地域を特定する(S302)。制御部19は、S301において受信したファン7の運転状態信号が動作状態信号であるかどうかを判定する(S303)。
【0039】
S303において、制御部19は、ファン7の運転状態信号が動作状態信号であると判定すると(S303/YES)、記憶部17に記憶された情報を参照することにより、S302において特定した地域に対応する動作フラグがON状態になっているかどうか、すなわち監視センタ3によるファン7の運転の遠隔的な制御によって当該地域の各エレベータ1のファン7が既に一斉に動作しているかどうかを確認する(S304)。このとき、制御部19は、当該地域に対応する動作フラグがON状態になっていると判定すると(S304/YES)、S301からの制御処理が行われる。
【0040】
S304において、制御部19は、当該地域に対応する動作フラグがON状態になっていない、すなわちOFF状態になっていると判定すると(S304/NO)、制御部19の演算部19Aは、内部において地域A〜C毎に設定された動作カウンタ(図示せず)のうち、S302において特定した地域に対応する動作カウンタをインクリメントすることにより、当該地域に属するエレベータ1のファン7の動作件数を演算する(S305)。
【0041】
次に、制御部19の地域判定部19Bは、演算部19Aによって演算された当該地域に属するエレベータ1のファン7の動作件数が所定の第1閾値に達しているかどうかを判定する(S306)。このとき、地域判定部19Bは、当該地域に属するエレベータ1のファン7の動作件数が所定の第1閾値に達していないと判定すると(S306/NO)、S301からの制御処理が行われる。
【0042】
一方、S306において、地域判定部19Bは、当該地域に属するエレベータ1のファン7の動作件数が所定の第1閾値に達していると判定すると(S306/YES)、制御部19の制御指令送信部19Cは、対監視端末用送受信部16を介して当該地域に対する動作制御指令を監視端末2へ送信する(S307)。
【0043】
そして、制御部19は、当該地域に対応する動作フラグをON状態にした後(S308)、内部において地域A〜C毎に設定された停止カウンタ(図示せず)のうち、S302において特定した地域に対応する停止カウンタを0に設定し(S309)、S301からの制御処理が繰り返される。
【0044】
S303において、制御部19は、ファン7の運転状態信号が動作状態信号でない、すなわち停止状態信号であると判定すると(S303/NO)、記憶部17に記憶された情報を参照することにより、S302において特定した地域に対応する停止フラグがON状態になっているかどうか、すなわち監視センタ3によるファン7の運転の遠隔的な制御によって当該地域に属する各エレベータ1のファン7が既に一斉に停止しているかどうかを確認する(S310)。このとき、制御部19は、当該地域に対応する停止フラグがON状態になっていると判定すると(S310/YES)、S301からの制御処理が行われる。
【0045】
S310において、制御部19は、当該地域に対応する停止フラグがON状態になっていない、すなわちOFF状態になっていると判定すると(S310/NO)、制御部19の演算部19Aは、内部において地域A〜C毎に設定された停止カウンタ(図示せず)のうち、S302において特定した地域に対応する停止カウンタをインクリメントすることにより、当該地域に属するエレベータ1のファン7の停止件数を演算する(S311)。
【0046】
次に、制御部19の地域判定部19Bは、演算部19Aによって演算された当該地域に属するエレベータ1のファン7の停止件数が所定の第2閾値に達しているかどうかを判定する(S312)。このとき、地域判定部19Bは、当該地域に属するエレベータ1のファン7の停止件数が所定の第2閾値に達していないと判定すると(S312/NO)、S301からの制御処理が行われる。
【0047】
一方、S312において、地域判定部19Bは、当該地域に属するエレベータ1のファン7の停止件数が所定の第2閾値に達していると判定すると(S312/YES)、制御部19の制御指令送信部19Cは、対監視端末用送受信部16を介して当該地域に対する停止制御指令を監視端末2へ送信する(S313)。
【0048】
そして、制御部19は、当該地域に対応する停止フラグをON状態にした後(S314)、内部において地域A〜C毎に設定された動作カウンタ(図示せず)のうち、S302において特定した地域に対応する動作カウンタを0に設定し、S301からの制御処理が繰り返される。
【0049】
次に、本実施形態に係る監視端末2の制御処理について、図4を参照して詳細に説明する。
【0050】
図4は監視端末2の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
図4に示すように、監視端末2の制御部14は、対エレベータ用送受信部11を介してエレベータ制御装置9からファンスイッチ8の操作信号を受信したかどうかを確認する(S401)。このとき、制御部14は、ファンスイッチ8の操作信号を受信したことを確認すると(S401/YES)、制御部14のファン運転状態通知部14Aは、受信したファンスイッチ8の操作信号からファン7の運転状態が動作状態であるかどうかを判断する(S402)。
【0052】
S402において、ファンスイッチ8の操作信号がON状態の操作信号のときには、ファン運転状態通知部14Aは、ファン7の運転状態が動作状態であると判断するので(S402/YES)、対監視センタ用送受信部12を介してファン7の動作状態信号を監視センタ3へ送信し(S403)、S401からの制御処理が行われる。
【0053】
S402において、ファンスイッチ8の操作信号がOFF状態の操作信号のときには、ファン運転状態通知部14Aは、ファン7の運転状態が動作状態でない、すなわちファン7の運転状態が停止状態であると判断するので(S402/NO)、対監視センタ用送受信部12を介してファン7の停止状態信号を監視センタ3へ送信し(S404)、S401からの制御処理が行われる。
【0054】
一方、S401において、制御部14は、ファンスイッチ8の操作信号を受信していないことを確認すると(S401/NO)、対監視センタ用送受信部12を介して監視センタ3から動作制御指令を受信したかどうかを確認する(S405)。このとき、制御部14は、動作制御指令を受信したことを確認すると(S405/YES)、対エレベータ用送受信部11を介して当該動作制御指令を、該当する地域に属する各エレベータ1のエレベータ制御装置9へ送信し(S406)、S401からの制御処理が繰り返される。
【0055】
S405において、制御部14は、動作制御指令を受信していないことを確認する(S405/NO)、対監視センタ用送受信部12を介して監視センタ3から停止制御指令を受信したかどうかを確認する(S407)。このとき、制御部14は、停止制御指令を受信したことを確認すると(S407/YES)、対エレベータ用送受信部11を介して当該停止制御指令を、該当する地域に属する各エレベータ1のエレベータ制御装置9へ送信し(S408)、S401からの制御処理が繰り返される。
【0056】
S407において、制御部14は、停止制御指令を受信していないことを確認すると(S407/NO)、S401からの制御処理が繰り返される。
【0057】
このように構成した本実施形態によれば、監視センタ3における制御部19の制御指令送信部19Cが、地域A〜Cのうち、地域判定部19Bによって判定された動作件数が所定の第1閾値に達した地域に属する各エレベータ1のエレベータ制御装置9に動作制御指令を送信することにより、これらのエレベータ制御装置9によって当該地域の各エレベータ1のファン7が一斉に動作する。そのため、当該地域において、例えば、夏場のように各エレベータ1の乗りかご6内の温度や湿度等が上昇しても、乗りかご6内の乗客が室内の環境に対して不快に感じる前に、乗りかご6内がファン7によって自動的に換気されることにより、当該地域の気候の変化に応じて乗りかご6内の環境を適切に調整することができる。
【0058】
また、制御指令送信部19Cが、地域A〜Cのうち、地域判定部19Bによって判定された停止件数が所定の第2閾値に達した地域に属する各エレベータ1のエレベータ制御装置9に停止制御指令を送信することにより、これらのエレベータ制御装置9によって当該地域の各エレベータ1のファン7が一斉に停止する。そのため、当該地域において、例えば、夜間のように各エレベータ1の乗りかご6内の温度や湿度等が低下しても、ファン7による乗りかご6内の換気が迅速に中止されることにより、乗りかご6内が過度に冷却されるのを抑制することができる。
【0059】
このように、本実施形態は、乗りかご6内に温度や湿度等を感知するセンサを設置しなくても、地域A〜C毎における各エレベータ1の乗りかご6内の環境の変化を捉えて乗りかご6のファン7の運転を自動的に切替えることができるので、乗りかご6内の環境を安価で快適な状態に保つことができる。これにより、エレベータ1の乗客に対して優れたサービス性を提供することができる。
【0060】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 エレベータ
2 監視端末
3 監視センタ
4 公衆回線網(通信回線)
6 乗りかご
7 ファン
8 ファンスイッチ
9 エレベータ制御装置(ファン運転制御部)
11 対エレベータ用送受信部
12 対監視センタ用送受信部
13 記憶部
14 制御部
14A ファン運転状態通知部
16 対監視端末用送受信部
17 記憶部
18A〜18C 物件データベース
19 制御部
19A 演算部
19B 地域判定部
19C 制御指令送信部
20 入出力部
図1
図2
図3
図4