【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これらの目的及び後述するその他の目的を達成するために、前立腺癌又はその再発を治療又は予防する組成物であって、この組成物は、有効成分、好ましくはその唯一の有効成分として、Brassica Oleracea Italica種の未発芽ブロッコリー種子の非水性抽出物を含むものであり、この非水性抽出物は、スルフォラファンが豊富に含まれているとともに、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される化合物によって被覆されており、この組成物は、カプセル、錠剤、コーティング丸薬又はフィルムコーティング錠の形状であるとともに、2〜200mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回経口投与されるものである。
【0016】
したがって、本発明は、スルフォラファンを非常に豊富に含むことが判明している特定のブロッコリー種の非水性抽出物を使用して、前立腺癌又はその再発を予防又は治療する組成物を製造するための革新的なアプローチに基づくものである。本発明者らは、実際、Brassica Oleracea Italica種のブロッコリーの未発芽種子が、特にグルコラファニンに富んでおり、且つ最適な効率を有する組成物を得るためには、この種子の非水性抽出物を使用することが適切であるという知見を得た。
【0017】
一般に、発芽種子がグルコラファニンに富むことは知られている。しかし現実には、このような種子が発芽を始めると、これら種子からグルコラファニンなどの有効成分を抽出する方法を工業的規模で実施するのが難しくなる。実際、発芽苗は老廃物を生じ、これは、このような方法において使用されるフィルター膜を詰まらせる可能性がある。そのため、これら老廃物を除去するための追加ステップを加える必要がある。
【0018】
未発芽ブロッコリー種子は、一般に、グルコラファニンなどの有効成分が発芽種子よりも遥かに少量しか含有しないことが知られており、そのため、現実ではほとんど使用されていない。しかしながら、本発明者らは、特定のブロッコリー種、すなわち、Brassica Oleracea Italicaの未発芽種子が、グルコラファニンを有し、その含有量は、有効に活用することで、有効成分に富む抽出物を得るのに十分なほど高いという知見を得た。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る組成物は、栄養補助的に使用することができ、2〜20mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回にわけて投与することができる。「栄養補助組成物」又は「機能性食品」(「ファーマフーズ」とも呼ばれる)という用語は、健康及び病理予防へのプラス効果及び有意な効果を有する食物に基づく組成物を意味すると理解すべきである。
【0020】
発癌現象の開始期は、外部から攻撃される又は内因により誘発される細胞内遺伝子の突然変異に相当する。発癌を誘発することが知られている外部からの攻撃のタイプには、紫外線、煙草及びアルコールの摂取などがある。内因の一つには、例えば慢性の炎症から生じる酸化ストレスもある。これら2つのメカニズムは、DNA突然変異を誘発するフリーラジカルの形成を招く。そのため、少量のスルフォラファンの定期的な摂取は、生体がスルフォラファンの有益性を統合し、かつ高めることを可能にし、スルフォラファンの抗酸化性は、DNA修復系に局在化する欠損(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ中の欠損)を埋め合わせる。本発明の組成物によって、発癌性の突然変異の発生が予防される。
【0021】
更に、このような組成物は、少量のスルフォラファンを有するので、スルフォラファンの細胞毒性に侵されずに、栄養補助物としてこれらを日常的に摂取できる。そのため、特に、前立腺癌の発症が起こりやすいという家族的背景がある場合、これらは、そのリスクを抑えたい成人男子に役立つこともある。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、本発明に係る組成物は、医薬用途のためのものであり、かつ20〜200mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回にわけて投与することができる。
【0023】
このような組成物は、前立腺癌の診断後に前立腺の外科的切除を受けた患者に、毎日投与することができる。化学療法、放射線療法、凍結療法に付随する治療として、これらの組成物を投与することができる。このことにより、これら療法の患者へ施される量を減らすことが可能である。したがって、これは、患者、特に肝臓に疾患がある患者に対して、これら療法の悪影響を弱める効果があろう。更に、これは、患者及びその親類縁者にとって、治療のストレスと不安感を減らすであろう。
【0024】
このような組成物は、化学療法、凍結療法又は放射線療法が施される期間の間に投与することもできる。人の器官に悪影響が無いので、これらの組成物は、患者に十分に支持される。同時に、これらは患者を有効に保護し、二次性腫瘍の進行又は癌の再発を著しく遅らせる。
【0025】
本発明の更にもう一つの目的は、被覆化(encapsulation)により安定化されたスルフォラファンの非水性抽出物を得て、本発明に係る組成物を調製する方法を提供することであり、この方法は、
a.Brassica Oleracea Italica種の未発芽ブロッコリー種子を機械的に常温プレスして、部分的に脱脂されたケーキを得るステップと、
b.この種子中に含有されるグルコラファニンをスルフォラファンに加水分解するために、ステップaで得られた部分的に脱脂されたケーキを酵素加水分解して、その加水分解物を得るステップと、
c.ステップbで得られた加水分解物の脂肪及びエルカ酸の含有量を、アセトンを添加して5重量%未満の濃度まで下げることにより、ステップbで得られた加水分解物を精製するステップと、
d.この加水分解物を濾過して、脂肪及びエルカ酸の含有量を低くした濾液を回収するステップと、
e.ステップdで得られた濾液中に含有されるアセトンを蒸発させて、水相を回収するステップと、
f.ステップeで得られた水相からスルフォラファンを抽出するために、酢酸エチルを添加して、この酢酸エチル及びスルフォラファンを含有する相を回収するステップと、
g.ステップfで回収された相中に含有される酢酸エチルを蒸発させて、スルフォラファンを少なくとも30重量%含有する非水性抽出物を得るステップと、
h.ステップgで得られた非水性抽出物を、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類支持体上で乾燥させて、粉末を得るステップと、
i.ステップhで得られた粉末のスルフォラファンの安定性を増加させるために、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類マトリックスで被覆し、スルフォラファンを少なくとも10重量%含有する被覆された粉末を得るステップと
を含み、
本方法は、ステップgとステップhとの間でいかなる水抽出ステップを挟まずに実施される。
【0026】
確かに、得られた抽出物が、非水性であることは不可欠である。この点において、アブラナ科植物の種子、特にブロッコリー種子からスルフォラファンを抽出し、水性抽出物の収得に至る一つの方法が、先行技術ですでに提案されていることに注目できる。仏国特許発明第2888235号明細書に記載されたこの方法は、水性抽出物の生成に至り、この水性抽出物は、本発明に係る組成物の製造には適さないことが判明した。
【0027】
本発明の方法によれば、医薬的使用又は栄養補助的使用のために、包装され、商業的に流通され、貯蔵できる安定化したスルフォラファンに基づく組成物を製造することができる。
【0028】
機械プレスによる抽出は、未発芽ブロッコリー種子中に存在する脂質の一部の除去することができる。こうして得られたケーキは、幾つかある成分の中で特に、グルコラファニンと、ブロッコリーに内在するミロシナーゼとを含有する。水の添加は、ミロシナーゼを活性化させ、グルコラファニンをスルフォラファンに加水分解することができる。こうして得られた加水分解物は、除去すべき脂質を少なくともある程度は依然として含有する。これらの脂質の一つは、エルカ酸、すなわち13−ドコセン酸である。エルカ酸は、動物に対し毒性を有する脂肪酸である。そのため、その濃度を許容レベル、すなわち5%未満まで減らす必要がある。この削減は、加水分解物をアセトンで処理することで達成できる。この溶媒は、また、スルフォラファンと高い親和性を有する。そのため、活性成分を損失せずに、加水分解されたケーキの脱脂を継続することが可能である。更に、この溶媒の使用は、食品及び製薬産業で許可されている。
【0029】
このようにして、脂質およびエルカ酸の含有量が低い加水分解物が得られる。次いで、この加水分解物を濾過した後、乾燥させて、固形老廃物を全て除去し、アセトン不含の濾液を回収する。その際、好ましくは、スルフォラファンが酢酸エチルの添加により抽出される。有利には、酢酸エチルは、加水分解物に対し、1/1の割合で添加する。このステップは、大部分の極性分子、例えば炭水化物、ポリフェノール及び特定のたんぱく質を除去する。スルフォラファンは、平均極性(average polarity)を有するので、この溶媒の使用は、存在するスルフォラファン全体を保護する。
【0030】
次いで、スルフォラファンを30重量%含む非水性抽出物が得られる。次いで、この非水性抽出物を、マルトデキストリン及びアラビアガム(E414)のマトリックス上で乾燥させる。この樹脂の乾燥により粉末が得られる。この粉末の粒子を、ついで、これらと同じ成分、すなわちアラビアガム及びマルトデキストリンで完全に被覆される。このように被覆することで、スルフォラファン分子を安定化させ、スルフォラファンを10%含有する粉末が得られる。事実、スルフォラファンは、極めて不安定な化合物であり、そのような被覆化をしなければ、形成後、非常に迅速に劣化する。
【0031】
そのため、本発明に係る方法は、安定化されたスルフォラファンに富む抽出物を得ることができ、これは、引き続き、栄養補助組成物及び医薬組成物の製造のために常温及び大気条件で貯蔵することができる。
【0032】
被覆化は、マルトデキストリン又はアラビアガム(E414)でコーティングすることができる当業者に公知の任意の方法により実施する。
【0033】
次いで、本発明の方法により得られた被覆された粉末に、当業者に公知の任意の方法により、追加の圧縮ステップを施して、錠剤を得ることができる。
【0034】
次いで、この錠剤を、当業者に公知の任意の方法によりコーティングして、コーティング丸薬を得ることができる。