特許第6126592号(P6126592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126592前立腺癌の治療又は予防用のブロッコリー種子抽出物含有組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126592
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】前立腺癌の治療又は予防用のブロッコリー種子抽出物含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/31 20060101AFI20170424BHJP
   A61K 31/26 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A61K36/31
   A61K31/26
   A61P13/08
   A61P35/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-517550(P2014-517550)
(86)(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公表番号】特表2014-518227(P2014-518227A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2012060069
(87)【国際公開番号】WO2013004436
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】1155926
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514000277
【氏名又は名称】ソジャサン・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】エフスタシウ,テオ
(72)【発明者】
【氏名】プリュ,ニコラ
【審査官】 鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02888235(FR,A1)
【文献】 国際公開第2010/001096(WO,A1)
【文献】 特開平11−255612(JP,A)
【文献】 J. Biol. Chem.,2005年,Vol.280 No.20,pp.19911-19924
【文献】 Carcinogenesis,2004年,Vol.25 No.1,pp.83-90
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2007年,Vol.55,pp.8047-8053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/31
A61K 31/26
A61P 13/08
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌又はその再発を治療又は予防するための組成物を調製するために、被覆化により安定化されたスルフォラファンを得る方法であって、
a.ブロッコリー(Brassica Oleracea Italica)の未発芽種子を機械的に常温プレスして、部分的に脱脂されたケーキを得るステップと、
b.前記種子中に含有されるグルコラファニンをスルフォラファンに加水分解するために、ステップaで得られた前記部分的に脱脂されたケーキを酵素加水分解して、その加水分解物を得るステップと、
c.ステップbで得られた前記加水分解物の脂肪及びエルカ酸の含有量を、アセトンを添加して5重量%未満の濃度まで下げることにより、ステップbで得られた前記加水分解物を精製するステップと、
d.前記加水分解物を濾過して、脂肪及びエルカ酸の含有量を低くした濾液を回収するステップと、
e.ステップdで得られた前記濾液中に含有される前記アセトンを蒸発させて、水相を回収するステップと、
f.ステップeで得られた前記水相からスルフォラファンを抽出するために、酢酸エチルを添加して、この酢酸エチル及びスルフォラファンを含有する相を回収するステップと、
g.ステップfで回収された前記相中に含有される前記酢酸エチルを蒸発させて、スルフォラファンを少なくとも30重量%含有する抽出物を得るステップと、
h.ステップgで得られた前記抽出物を、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類支持体上で乾燥させて、粉末を得るステップと、
i.ステップhで得られた前記粉末のスルフォラファンの安定性を増加させるために、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類マトリックスで被覆し、スルフォラファンを少なくとも10重量%含有する被覆された粉末を得るステップと
を含み、
前記方法が、ステップgとステップhとの間でいかなる水抽出ステップを挟まずに実施される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、前立腺癌を治療又は予防するための栄養補助又は医薬組成物である。
【0002】
更に詳細には、本発明は、男性の前立腺癌を治療又は予防するためのブロッコリー抽出物に基づいた組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
前立腺癌は、欧州及び米国では第二に大きな死亡原因であり、通常、50歳以上の年齢の人に発生する。この癌には幾つかのタイプがあるが、その中で、最も一般的かつ最も深刻なタイプは、前立腺腺癌(adenocarcinoma)である。この癌は、最初極めて限局性であり、迅速に隣接組織へ広がり、他の組織(骨、リンパ節など)に転移を形成する。
【0004】
一般に施される治療は、例えば化学療法、凍結療法又は外部放射線治療などの治療を伴う前立腺の外科的全切除である。それにもかかわらず、患者の30〜50%は、最初の治療後10年以内に、生物学的再発又は回帰を示す。生物学的再発は、最初の根治治療後に、原始(primitive)腫瘍と同一の組織型の悪性腫瘍が形成されることである。この再発を監視するために、患者へ血清投与を実施して、前立腺特異抗原(PSA)レベルを定期的に測定する。
【0005】
更に、再発の場合に患者へ提案される唯一の選択肢は、
・疾病の迅速な発生進展の場合は、簡単なモニタリング後に、アンドロゲン遮断、又は
・早期のアンドロゲン遮断
である。
【0006】
アンドロゲン遮断は、患者に対して化学的又は外科的去勢からなる。前立腺癌は、ホルモン依存性の癌種なので、最後の頼みの綱として、この急進的なアプローチが必要となる。それでもなお、その有効性は限定的であり、ホルモンの刺激とは無関係に、クローンが迅速に出現することがある。そうなれば、このステージで、この治療は単なる緩和ケアになってしまう。
【0007】
更に、外科的切除を伴うこの治療は、患者に多数の副作用を引き起こす。そのような副作用の例は、吐き気、大きな疲労感、ヘモグラムの変異、勃起及び尿障害、消化系障害などである。
【0008】
そのため、手術を受けた患者に再発の発現を防止するか又は少なくとも限定し、そのような治療で患者が受ける副作用を限定し、かつ不快感を減らす代替手段が必要である。
【0009】
アブラナ科植物の摂取は、前立腺癌に有効な役割を果たすことが知られている。含まれる活性薬剤は、スルフォラファン(4−(メチルスルフィニル)ブチルイソチオシアネート)であり、これは、喘息、気道の炎症、肺癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、肝臓癌及び乳癌などの多数の病変を予防する役割を有することが知られている強力な抗酸化剤である(Verhoeven et al,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.,1996;Steinmetz et al.J.Am.Diet.Assoc.,1996,Zhang et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1992)。スルフォラファンそれ自体は、アブラナ科植物に存在しない。スルフォラファンは、その前駆体であるグルコラファニンが、アブラナ科植物に内在する酵素であるミロシナーゼにより酵素加水分解されて得られるものである。
【0010】
スルフォラファンの化学発癌抑制作用は、第I相酵素(シトクロムP450酵素)を抑制し、第II相酵素(例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ)を活性化させるその抗酸化性によるものである。
【0011】
更に、スルフォラファンは、細胞を「G2/M期」で停止させるので、アポトーシス促進活性(pro-apoptotic activity)も有し、分裂期に入るのを阻止して、アポトーシスプロセスを活性化させる。スルフォラファンは、用量依存的に細胞毒性であることが示されている。
【0012】
しかしながら、本願特許出願人の知る限りでは、前立腺癌の発症又はその再発を治療又は予防することを目的とし、かつアブラナ科植物の抽出物のみを使用するという組成物は未だ開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前立腺癌又はその再発を治療又は予防することができる組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、少なくとも一つの実施形態において、前立腺癌又はその再発を治療又は予防するために、このような組成物に添加することができるブロッコリー種子の非水性抽出物を抽出する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、これらの目的及び後述するその他の目的を達成するために、前立腺癌又はその再発を治療又は予防する組成物であって、この組成物は、有効成分、好ましくはその唯一の有効成分として、Brassica Oleracea Italica種の未発芽ブロッコリー種子の非水性抽出物を含むものであり、この非水性抽出物は、スルフォラファンが豊富に含まれているとともに、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される化合物によって被覆されており、この組成物は、カプセル、錠剤、コーティング丸薬又はフィルムコーティング錠の形状であるとともに、2〜200mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回経口投与されるものである。
【0016】
したがって、本発明は、スルフォラファンを非常に豊富に含むことが判明している特定のブロッコリー種の非水性抽出物を使用して、前立腺癌又はその再発を予防又は治療する組成物を製造するための革新的なアプローチに基づくものである。本発明者らは、実際、Brassica Oleracea Italica種のブロッコリーの未発芽種子が、特にグルコラファニンに富んでおり、且つ最適な効率を有する組成物を得るためには、この種子の非水性抽出物を使用することが適切であるという知見を得た。
【0017】
一般に、発芽種子がグルコラファニンに富むことは知られている。しかし現実には、このような種子が発芽を始めると、これら種子からグルコラファニンなどの有効成分を抽出する方法を工業的規模で実施するのが難しくなる。実際、発芽苗は老廃物を生じ、これは、このような方法において使用されるフィルター膜を詰まらせる可能性がある。そのため、これら老廃物を除去するための追加ステップを加える必要がある。
【0018】
未発芽ブロッコリー種子は、一般に、グルコラファニンなどの有効成分が発芽種子よりも遥かに少量しか含有しないことが知られており、そのため、現実ではほとんど使用されていない。しかしながら、本発明者らは、特定のブロッコリー種、すなわち、Brassica Oleracea Italicaの未発芽種子が、グルコラファニンを有し、その含有量は、有効に活用することで、有効成分に富む抽出物を得るのに十分なほど高いという知見を得た。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る組成物は、栄養補助的に使用することができ、2〜20mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回にわけて投与することができる。「栄養補助組成物」又は「機能性食品」(「ファーマフーズ」とも呼ばれる)という用語は、健康及び病理予防へのプラス効果及び有意な効果を有する食物に基づく組成物を意味すると理解すべきである。
【0020】
発癌現象の開始期は、外部から攻撃される又は内因により誘発される細胞内遺伝子の突然変異に相当する。発癌を誘発することが知られている外部からの攻撃のタイプには、紫外線、煙草及びアルコールの摂取などがある。内因の一つには、例えば慢性の炎症から生じる酸化ストレスもある。これら2つのメカニズムは、DNA突然変異を誘発するフリーラジカルの形成を招く。そのため、少量のスルフォラファンの定期的な摂取は、生体がスルフォラファンの有益性を統合し、かつ高めることを可能にし、スルフォラファンの抗酸化性は、DNA修復系に局在化する欠損(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ中の欠損)を埋め合わせる。本発明の組成物によって、発癌性の突然変異の発生が予防される。
【0021】
更に、このような組成物は、少量のスルフォラファンを有するので、スルフォラファンの細胞毒性に侵されずに、栄養補助物としてこれらを日常的に摂取できる。そのため、特に、前立腺癌の発症が起こりやすいという家族的背景がある場合、これらは、そのリスクを抑えたい成人男子に役立つこともある。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、本発明に係る組成物は、医薬用途のためのものであり、かつ20〜200mg/日の服用量の範囲で1日に1〜3回にわけて投与することができる。
【0023】
このような組成物は、前立腺癌の診断後に前立腺の外科的切除を受けた患者に、毎日投与することができる。化学療法、放射線療法、凍結療法に付随する治療として、これらの組成物を投与することができる。このことにより、これら療法の患者へ施される量を減らすことが可能である。したがって、これは、患者、特に肝臓に疾患がある患者に対して、これら療法の悪影響を弱める効果があろう。更に、これは、患者及びその親類縁者にとって、治療のストレスと不安感を減らすであろう。
【0024】
このような組成物は、化学療法、凍結療法又は放射線療法が施される期間の間に投与することもできる。人の器官に悪影響が無いので、これらの組成物は、患者に十分に支持される。同時に、これらは患者を有効に保護し、二次性腫瘍の進行又は癌の再発を著しく遅らせる。
【0025】
本発明の更にもう一つの目的は、被覆化(encapsulation)により安定化されたスルフォラファンの非水性抽出物を得て、本発明に係る組成物を調製する方法を提供することであり、この方法は、
a.Brassica Oleracea Italica種の未発芽ブロッコリー種子を機械的に常温プレスして、部分的に脱脂されたケーキを得るステップと、
b.この種子中に含有されるグルコラファニンをスルフォラファンに加水分解するために、ステップaで得られた部分的に脱脂されたケーキを酵素加水分解して、その加水分解物を得るステップと、
c.ステップbで得られた加水分解物の脂肪及びエルカ酸の含有量を、アセトンを添加して5重量%未満の濃度まで下げることにより、ステップbで得られた加水分解物を精製するステップと、
d.この加水分解物を濾過して、脂肪及びエルカ酸の含有量を低くした濾液を回収するステップと、
e.ステップdで得られた濾液中に含有されるアセトンを蒸発させて、水相を回収するステップと、
f.ステップeで得られた水相からスルフォラファンを抽出するために、酢酸エチルを添加して、この酢酸エチル及びスルフォラファンを含有する相を回収するステップと、
g.ステップfで回収された相中に含有される酢酸エチルを蒸発させて、スルフォラファンを少なくとも30重量%含有する非水性抽出物を得るステップと、
h.ステップgで得られた非水性抽出物を、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類支持体上で乾燥させて、粉末を得るステップと、
i.ステップhで得られた粉末のスルフォラファンの安定性を増加させるために、アカシアガム、マルトデキストリン及びこれらの混合物を含んでなる群から選択される多糖類マトリックスで被覆し、スルフォラファンを少なくとも10重量%含有する被覆された粉末を得るステップと
を含み、
本方法は、ステップgとステップhとの間でいかなる水抽出ステップを挟まずに実施される。
【0026】
確かに、得られた抽出物が、非水性であることは不可欠である。この点において、アブラナ科植物の種子、特にブロッコリー種子からスルフォラファンを抽出し、水性抽出物の収得に至る一つの方法が、先行技術ですでに提案されていることに注目できる。仏国特許発明第2888235号明細書に記載されたこの方法は、水性抽出物の生成に至り、この水性抽出物は、本発明に係る組成物の製造には適さないことが判明した。
【0027】
本発明の方法によれば、医薬的使用又は栄養補助的使用のために、包装され、商業的に流通され、貯蔵できる安定化したスルフォラファンに基づく組成物を製造することができる。
【0028】
機械プレスによる抽出は、未発芽ブロッコリー種子中に存在する脂質の一部の除去することができる。こうして得られたケーキは、幾つかある成分の中で特に、グルコラファニンと、ブロッコリーに内在するミロシナーゼとを含有する。水の添加は、ミロシナーゼを活性化させ、グルコラファニンをスルフォラファンに加水分解することができる。こうして得られた加水分解物は、除去すべき脂質を少なくともある程度は依然として含有する。これらの脂質の一つは、エルカ酸、すなわち13−ドコセン酸である。エルカ酸は、動物に対し毒性を有する脂肪酸である。そのため、その濃度を許容レベル、すなわち5%未満まで減らす必要がある。この削減は、加水分解物をアセトンで処理することで達成できる。この溶媒は、また、スルフォラファンと高い親和性を有する。そのため、活性成分を損失せずに、加水分解されたケーキの脱脂を継続することが可能である。更に、この溶媒の使用は、食品及び製薬産業で許可されている。
【0029】
このようにして、脂質およびエルカ酸の含有量が低い加水分解物が得られる。次いで、この加水分解物を濾過した後、乾燥させて、固形老廃物を全て除去し、アセトン不含の濾液を回収する。その際、好ましくは、スルフォラファンが酢酸エチルの添加により抽出される。有利には、酢酸エチルは、加水分解物に対し、1/1の割合で添加する。このステップは、大部分の極性分子、例えば炭水化物、ポリフェノール及び特定のたんぱく質を除去する。スルフォラファンは、平均極性(average polarity)を有するので、この溶媒の使用は、存在するスルフォラファン全体を保護する。
【0030】
次いで、スルフォラファンを30重量%含む非水性抽出物が得られる。次いで、この非水性抽出物を、マルトデキストリン及びアラビアガム(E414)のマトリックス上で乾燥させる。この樹脂の乾燥により粉末が得られる。この粉末の粒子を、ついで、これらと同じ成分、すなわちアラビアガム及びマルトデキストリンで完全に被覆される。このように被覆することで、スルフォラファン分子を安定化させ、スルフォラファンを10%含有する粉末が得られる。事実、スルフォラファンは、極めて不安定な化合物であり、そのような被覆化をしなければ、形成後、非常に迅速に劣化する。
【0031】
そのため、本発明に係る方法は、安定化されたスルフォラファンに富む抽出物を得ることができ、これは、引き続き、栄養補助組成物及び医薬組成物の製造のために常温及び大気条件で貯蔵することができる。
【0032】
被覆化は、マルトデキストリン又はアラビアガム(E414)でコーティングすることができる当業者に公知の任意の方法により実施する。
【0033】
次いで、本発明の方法により得られた被覆された粉末に、当業者に公知の任意の方法により、追加の圧縮ステップを施して、錠剤を得ることができる。
【0034】
次いで、この錠剤を、当業者に公知の任意の方法によりコーティングして、コーティング丸薬を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一般的原理は、前立腺癌の治療又は再発予防のために、所定の服用量のスルフォラファンを定期的に投与することに基づくものである。
【0036】
前述した本発明の方法を使用して、コーティングにより安定化されたスルフォラファンの非水性抽出物が、スルフォラファンを10重量%含有する被覆された粉末の形状で得られた。この粉末は、圧縮され、次いでコーティングされて、コーティング丸薬の形状である本発明の組成物が得られた。
【0037】
本実施形態に関連して、コーティング丸薬の形状のこの組成物は、以下の組成を有する。
・ブロッコリー:Brassica Oleracea(var.Italica)の種子の非水性性抽出物。
・希釈剤:二塩基燐酸カルシウム、微結晶セルロース。
・抗凝集剤:炭酸マグネシウム、シリカ、ステアリン酸マグネシウム。
・コーティング剤:ラッカーゴム、サッカロース、二酸化チタン、ポリビニルピロリドン、蜜ろう、カルナバ・ワックス、タルク。
・着色剤:スクロース、二酸化チタン(E171)、アカシアガム(E414)、ブリリアントブルーFCF(E133)、キノリンイエロー(E104)、安息香酸ナトリウム(E211)、インジゴチン(E132)。
【0038】
被覆されたスルフォラファンを含有し、コーティング丸薬の形状である組成物の効能をテストした。
【0039】
これに関連して、前立腺の腺癌(グリソンスコア<7)と組織学的に判明した診断後に前立腺の外科的切除をうけた患者16人を選び、この研究の被験者とした。これらの患者全員が、0.2ng/mlを超えるPSAレベルの増加により明示される生物学的再発を示し、そのため、補足的に外部放射線療法で治療を行った。
【0040】
これらの患者は、1日当たりの服用量30mgを3箇月経口摂取した。すなわち、コーティング丸薬3錠を1日を通して配分し、各錠剤はスルフォラファン10mgを含有するものであった。
【0041】
各患者は、徹底的な臨床検査を受けた(血液検査、ヘモグラム、計量など)。
【0042】
各患者のPSAは、t=0、t=14日、t=30日、t=3箇月で血液サンプルを採って測定した。サンプルを、t=4箇月、t=5箇月で、すなわち、それぞれ治療終了の1箇月及び2箇月後に採取し、治療の終わりの、PSAレベルの進展を観察した。
【0043】
治療効果は、PSA倍加期間の測定により評価した。これは、患者のPSAが倍の値になるために必要な月数として定義される。これは、原始前立腺癌の毒性及び転移進行の速度の信頼性のある指標である。
【0044】
患者の20%で、治療の間にPSAは大きく減少した。この結果は、PSAを生じる転移が退行していることを示唆する。
【0045】
患者の60%で、治療の間にPSA倍加時間が長くなった。
【0046】
患者の残り20%では、治療停止にもかかわらず、PSAレベル倍加時間は伸び続けた。
【0047】
PSAレベル倍加時間が長くなったこれら80%の患者の半分以上は、50%増加率を示し、その3分の1は、200%を超える増加率を示した。
【0048】
そのため、本発明に係る医薬組成物が、PSAレベル倍加時間を有効に減速できることが明らかであるに見ることができる。この減速は、PSAの発生原因である腫瘍の成長が、きわめて阻害されていることを意味する。更に、患者の寿命を延ばすことができ、そうしてより上質の生活をもたらすことができ、かつ腫瘍がまだ治癒可能な段階である場合は、処置を講じることができるのは、明らかに有意義なことである。
【0049】
この研究の結果を述べると、本発明に係る組成物は、そのため、
・PSAを減らし、腫瘍の退行を反映するか、又は
・腫瘍の進行をきわめて減速させることを可能にする。
その上、16人の患者の誰もが、この治療に何らアレルギー反応を示すことはなかった。
【0050】
他の実施形態において、スルフォラファン抽出物を10重量%より多く含有する組成物を使用することができる。