(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための最良の形態の例を説明するが、本技術は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.固体撮像素子の概要
2.固体撮像素子の第1実施形態
3.第1実施形態の半導体装置の製造方法
4.固体撮像素子の第2実施形態
5.固体撮像素子の第3実施形態
6.固体撮像素子の第4実施形態
7.固体撮像素子の第5実施形態
8.固体撮像素子の第6実施形態
9.固体撮像素子の第7実施形態
10.固体撮像素子の第8実施形態
11.固体撮像素子の第9実施形態
12.固体撮像素子の第10実施形態
13.固体撮像素子の第11実施形態
14.電子機器
【0013】
〈1.固体撮像素子の概要〉
まず、本技術の固体撮像素子の実施形態の説明に先立ち、固体撮像素子の概要について説明する。負の固定電荷を有する膜を備える裏面照射型固体撮像素子では、半導体基体の界面準位に起因する暗電流の発生を抑制するため、半導体基体の全面に負の固定電荷を有する膜が形成される。この構造では、負の固定電荷を有する膜は、半導体基体に形成される光電変換素子(フォトダイオードPD)上だけでなく、隣接するフォトダイオードPD間の分離領域(画素間領域)上や、周辺回路が形成される周辺回路部上にも設けられている。このような構造の固体撮像素子では、いくつかの課題を有している。
【0014】
負の固定電荷を有する膜として、半導体基体よりも屈折率が小さい材料を用いると、入射光の反射が抑制されるため、反射防止膜として機能する。光電変換素子上に低反射膜を形成した場合には、反射防止特性により感度が上がるために好ましい。
【0015】
しかし、半導体基体よりも屈折率が小さい負の固定電荷を有する膜を、光電変換素子だけでなく、画素間領域を含む画素領域全体に形成すると、混色が増大してしまうという問題がある。具体的には、負の固定電荷を有する膜による反射防止特性によって、半導体基体全体の感度が上がり、画素間領域の半導体基体で発生する信号電荷の量も増加する。そして、画素間領域での信号電荷が増加することにより、迷走する信号電荷の量が増加し、光電変換素子への流入量が増加してしまう。この結果、混色が増大してしまう。以上のように、負の固定電荷を有する膜を備える固体撮像素子では、画素間の混色の増加が問題となる。
【0016】
上述の混色の問題に対しては、例えば、画素間領域上に金属遮光層を格子状に形成することが有効である。しかし、半導体基体と金属遮光層の間には負の固定電荷を有する膜や絶縁膜が積層されるため、金属遮光層から半導体基体までの距離が離れている。このため、斜め方向から入射する光に対して、金属遮光層による遮光が十分に行えない。上述のように、負の固定電荷を有する膜を備える構成は、光電変換素子では反射防止特性を備えたことによる暗電流抑制と感度の向上が有効であるが、画素間領域での感度増加による混色の問題がある。
【0017】
また、半導体基体の外部に光電変換材料を設ける構成の固体撮像素子(積層型撮像素子)も提案されている。この構成の固体撮像素子では、半導体基体の第2面側の表面に、光電変換材料で光電変換された電荷が転送されるコンタクト部が形成される。光電変換材料で光電変換された電荷は、このコンタクト部を介して半導体基体の回路形成面に読み出される。コンタクト部は、暗電流抑制のために高濃度不純物領域とすることが望ましい。この構成の固体撮像素子においても、半導体基体の表面の暗電流抑制のためには、負の固定電荷を有する膜を半導体表面に積層する手法が有効である。
【0018】
積層型撮像素子では、コンタクト部の周囲には、コンタクト部と逆導電型のウェルが形成される。そして、コンタクト部とウェルの間には、空乏層が形成される。この空乏層は、半導体基体内のコンタクト部とウェルとの界面から、界面準位等のキャリア発生源が多い半導体基体の表面にも広がる。
【0019】
このため、負の固定電荷を有する膜を、上述の撮像素子のコンタクト部上に形成すると、コンタクト部の周囲に形成される空乏層が、コンタクト部側に広がる。或いは、この空乏層の電界強度が強くなる。さらに、半導体基体の表面に負の固定電荷を有する膜を設けることにより、半導体基体界面に形成されるホール蓄積層と、コンタクト部との間に空乏層が形成される。このため、コンタクト部における暗電流が増加する。以上のように、第2の課題は、暗電流の増加である。
【0020】
本技術の一実施の形態では、負の固定電荷を有する膜を備える固体撮像素子において、光電変換素子における暗電流抑制及び感度の向上と、画素間領域における混色の抑制との両立が可能な構成を提案する。さらに、半導体基体の外部に光電変換材料を設ける構成の固体撮像素子において、負の固定電荷を有する膜による半導体基体界面での暗電流の抑制と、コンタクト部での暗電流の抑制との両立が可能な構成を提案する。半導体基体界面での暗電流の抑制とコンタクト部での暗電流の抑制と、画素間領域における混色の抑制、又は、コンタクト部での暗電流の抑制と両立が可能な構成により、撮像特性に優れた固体撮像素子を構成する。
【0021】
〈2.固体撮像素子の第1実施形態〉
[固体撮像素子の概略構成]
本技術が適用される固体撮像素子の実施形態について説明する。
図1に、本技術が適用される固体撮像素子の一例として、CMOS型の固体撮像素子1の概略構成を示す。
図1の構成は、下記に説明する各実施形態に係る固体撮像素子に共通の構成である。また、以下の実施形態では、半導体基体の回路形成面(表面)側とは反対(裏面)側を光の入射面とする、いわゆる、裏面照射型のCMOS型固体撮像素子として説明する。
【0022】
[固体撮像素子の全体構成]
図1は、第1実施形態に係るCMOS型の固体撮像素子1の全体を示す概略構成図である。本実施形態例の固体撮像素子1は、半導体基体11上に配列された複数の画素2から構成される画素領域3と、垂直駆動回路4と、カラム信号処理回路5と、水平駆動回路6と、出力回路7と、制御回路8等を有して構成される。
【0023】
画素2は、光電変換素子であるフォトダイオードと、複数の画素トランジスタとから構成され、半導体基体11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列される。画素2を構成する画素トランジスタは、転送トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタ、増幅トランジスタで構成される4つの画素トランジスタであってもよく、また、選択トランジスタを除いた3つのトランジスタであってもよい。
【0024】
画素領域3は、2次元アレイ状に規則的に複数配列された画素2から構成される。画素領域3は、実際に光を受光し光電変換によって生成された信号電荷を増幅してカラム信号処理回路5に読み出す有効画素領域と、黒レベルの基準になる光学的黒を出力するための黒基準画素領域(図示せず)とから構成されている。黒基準画素領域は、通常は、有効画素領域の外周部に形成される。
【0025】
制御回路8は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、及び水平駆動回路6等の動作の基準となるクロック信号や制御信号などを生成する。そして、制御回路8で生成されたクロック信号や制御信号等は、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5及び水平駆動回路6等に入力される。
【0026】
垂直駆動回路4は、例えばシフトレジスタによって構成され、画素領域3の各画素2を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各画素2のフォトダイオードにおいて受光量に応じて生成した信号電荷に基づく画素信号を、垂直信号線9を通してカラム信号処理回路5に供給する。
【0027】
カラム信号処理回路5は、例えば、画素2の列毎に配置されており、1行分の画素2から出力される信号を画素列毎に黒基準画素領域(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅等の信号処理を行う。カラム信号処理回路5の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線10との間に設けられている。
【0028】
水平駆動回路6は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路5の各々を順番に選択し、カラム信号処理回路5の各々から画素信号を水平信号線10に出力させる。出力回路7は、カラム信号処理回路5の各々から水平信号線10を通して、順次に供給される信号に対し信号処理を行い出力する。
【0029】
[固体撮像素子の要部の構成(平面図)]
図2に、固体撮像素子の単位画素2における概略平面構成を示す。単位画素2は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれの波長の光を光電変換する第1〜第3光電変換素子が3層に積層された光電変換領域と、各光電変換素子に対応する電荷読み出し部とから構成されている。本実施形態例においては、光電変換領域は、半導体基体中に形成された第1光電変換素子及び第2光電変換素子と、半導体基体の受光面上に形成された第3光電変換素子(光電変換膜)とから構成される。また、光電変換領域には、第1光電変換素子と接続された不純物拡散領域13、第2光電変換素子と接続された不純物拡散領域12、及び、第3光電変換素子(光電変換膜)と接続された不純物拡散領域14を備える。電荷読み出し部は、第1〜第3光電変換素子に対応した第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCで構成されている。固体撮像素子1では、単位画素2において縦方向の分光がなされる。
【0030】
第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCは、光電変換領域の周辺に形成され、それぞれ4つのMOS型トランジスタで構成されている。第1画素トランジスタTrAは、後述する第1光電変換素子で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力する、第1転送トランジスタTr1、リセットトランジスタTr4、増幅トランジスタTr5、選択トランジスタTr6から構成されている。第2画素トランジスタTrBは、後述する第2光電変換素子で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力する、第2転送トランジスタTr2、リセットトランジスタTr7、増幅トランジスタTr8、選択トランジスタTr9から構成されている。第3画素トランジスタTrCは、後述する第3光電変換素子(光電変換膜)で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力する、第3転送トランジスタTr3、リセットトランジスタTr10、増幅トランジスタTr11、選択トランジスタTr12から構成されている。
【0031】
第1転送トランジスタTr1は、不純物拡散領域13に隣接する半導体基体の表面(第1面)側に形成されたフローティングディフュージョン部FD1と、半導体基体11上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極15とで構成される。第2転送トランジスタTr2は、不純物拡散領域12に隣接する半導体基体の表面(第1面)側に形成されたフローティングディフュージョン部FD2と、半導体基体11上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極16とで構成される。第3転送トランジスタTr3は、不純物拡散領域14に隣接する半導体基体表面(第1面)側に形成されたフローティングディフュージョン部FD3と、半導体基体11上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極17とで構成される。
【0032】
また、裏面照射型の固体撮像素子では、半導体基体11の表面(回路形成面)側に、リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10、増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11、選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12が構成されている。リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10は、ソース・ドレイン領域23,24と、ゲート電極20とで構成されている。増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11は、ソース・ドレイン領域24,25と、ゲート電極21とで構成されている。選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12は、ソース・ドレイン領域25,26と、ゲート電極22とで構成されている。
【0033】
そして、これらの画素トランジスタTrA,TrB,TrCにおいては、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3が、対応するリセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10の一方のソース・ドレイン領域23に接続されている。さらに、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3は、対応する増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11のゲート電極21に接続されている。また、リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10と増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11とで共通のソース・ドレイン領域24には、電源電圧配線Vddが接続されている。また、選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12の一方のソース・ドレイン領域26には、選択信号配線VSLが接続されている。
【0034】
[固体撮像素子の画素部の構成]
図3に、
図2に示す光電変換領域の概略構成を示す。
図3は、固体撮像素子の光電変換領域における、要部の断面構成である。
図3では、第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCのうち第1〜第3転送トランジスタTr1,Tr2,Tr3のみを図示し、他の画素トランジスタの図示を省略する。本実施形態の固体撮像素子は、半導体基体11の表面(第1面)側の画素トランジスタが形成された側とは反対側の裏面(第2面)側から光が入射される裏面照射型の固体撮像素子である。
図4では、図面上方を受光面側とし、下方を画素トランジスタや、ロジック回路等の周辺回路等が形成された回路形成面とする。
【0035】
図3に示す固体撮像素子は、単位画素2として、上述の第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2、及び、光電変換膜32と縦型転送路40とが形成されている領域を有する。また、隣接する単位画素2の間の領域に、画素間領域30を有する。
【0036】
図3に示す固体撮像素子は、半導体基体11内に、第1及び第2光電変換素子となる、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2を備える。そして、半導体基体11の第2面側に、第3光電変換素子となる光電変換膜32を備える。第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、半導体基体11において、光の入射方向に積層され、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2上に光電変換膜32が積層されている。
【0037】
このように、本例の固体撮像素子は、光の入射方向から、光電変換膜32、第1フォトダイオードPD1、及び、第2フォトダイオードPD2が積層された構成を有する。そして、積層された光電変換膜32、第1フォトダイオードPD1、及び、第2フォトダイオードPD2により1つの単位画素2が構成されている。
【0038】
第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2は、シリコン等からなる第2導電型(本例ではn型)の半導体基体11の、第1導電型(本例ではp型)の半導体領域からなるウェル領域(p−Well)44に形成されている。第1フォトダイオードPD1は、半導体基体11の受光面となる裏面(第2面)側に形成された第2導電型(本例ではn型)不純物によるn型半導体領域45を有する。第2フォトダイオードPD2は、半導体基体11の表面(第1面)側に形成されたn型半導体領域46からなる。そして、n型半導体領域46の表面(第1面)側の半導体基体11の界面には、ホール蓄積層となる高濃度のp型半導体領域(図示省略)が形成されている。
【0039】
また、第1フォトダイオードPD1に隣接して、転送ゲート電極15及びフローティングディフュージョン部FD1が形成され、第1転送トランジスタTr1が構成されている。転送ゲート電極15は、半導体基体11の第1面側からn型半導体領域45の近傍まで形成されたトレンチ内に、ゲート絶縁膜を介して形成されている。フローティングディフュージョン部FD1は、半導体基体11の第1面側に形成されている。転送ゲート電極15により半導体基体11の表面のフローティングディフュージョン部FD1まで電荷が転送される。
【0040】
第2フォトダイオードPD2に隣接して、フローティングディフュージョン部FD2と転送ゲート電極16とが形成され、第2転送トランジスタTr2が構成されている。転送ゲート電極16は、半導体基体11の表面上にゲート絶縁膜を介して形成されている。そして、第2フォトダイオードPD2から転送ゲート電極16を挟んで、半導体基体11の表面にフローティングディフュージョン部FD2が形成されている。
【0041】
光電変換膜32は、半導体基体11の裏面(第2面)側において、第2膜部材36上に形成されている。そして、光電変換膜32の上下両面には、上部電極33及び下部電極31が形成されている。上部電極33及び下部電極31は、光透過性の材料で構成される。また、上部電極33上には、平坦化層38が形成されている。さらに、平坦化層38上には、オンチップレンズ39が形成されている。
【0042】
第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2は、吸収係数の違いによりそれぞれ異なる波長の光を光電変換する。第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2で発生した電荷は、同領域に蓄積された後、読み出し回路により外部に出力される。受光面から一番離れた領域に形成された第2フォトダイオードPD2は、赤色の波長の光を光電変換する光電変換素子となる。受光面側に形成された第1フォトダイオードPD1は、青色の波長の光を光電変換する光電変換素子となる。そして、半導体基体11の裏面上に配置された光電変換膜32が、緑色の波長の光を光電変換する光電変換素子となる。
【0043】
光電変換膜32は、緑色の波長の光を光電変換する光電変換素子として用いられる場合には、例えば、ローダーミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン等を含む有機光電変換材料から構成される。また、上部電極33及び下部電極31は、光透過性の材料で構成され、例えば、インジウム錫(ITO)膜、酸化インジウム亜鉛膜等の透明導電膜で構成される。
【0044】
なお、光電変換膜32を、青色又は赤色の波長の光を光電変換する材料で構成し、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2を、他の波長に対応させる構成としてもよい。例えば、光電変換膜32で青色の光を吸収させる場合には、半導体基体11の受光面側に形成される第1フォトダイオードPD1を、緑色の光を光電変換する光電変換素子として設定する。そして、第2フォトダイオードPD2を、赤色の光を光電変換する光電変換素子として設定する。また、光電変換膜32で赤色の光を吸収させる場合には、半導体基体11の受光面側に形成される第1フォトダイオードPD1を、青色の光を光電変換する光電変換素子として設定する。そして、第2フォトダイオードPD2を、緑色の光を光電変換する光電変換素子として設定する。青色の光を光電変換する光電変換膜は、例えば、クマリン酸色素、トリス−8−ヒドリキシキノリAl(Alq3)、メラシアニン系色素等を含む有機光電変換材料から構成される。また、赤色の光を光電変換する光電変換膜は、フタロシアニン系色素を含む有機光電変換材料から構成される。
【0045】
本例の固体撮像素子では、半導体基体11内で光電変換する光を、青色の波長及び赤色の波長と設定する。そして、光電変換膜32で光電変換する光を緑色の波長と設定する。このような構成では、光電変換膜32で中間波長の緑色の波長を受光することで、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2間における分光特性を向上させることができる。
【0046】
光電変換膜32の半導体基体11側に形成される下部電極31には、第2膜部材36を貫通するコンタクトプラグ34が接続されている。コンタクトプラグ34は、半導体基体11の第1面側から第2面側にかけて形成された縦型転送路40に接続されている。
【0047】
縦型転送路40は、半導体基体11の第2面側から第1面側にかけて縦方向に形成されたコンタクト部41、電位障壁部42、及び、電荷蓄積部43により構成されている。コンタクト部41は、半導体基体11の第2面側に形成された高濃度のn型不純物領域からなる。コンタクト部41は、コンタクトプラグ34とのオーミック接続を取るために構成されている。電位障壁部42は、低濃度のp型不純物領域からなり、コンタクト部41と電荷蓄積部43との間でポテンシャルバリアとなる。電荷蓄積部43は、光電変換膜32から転送された信号電荷を蓄積する領域であり、コンタクト部41よりも低濃度のn型不純物領域で構成されている。また、半導体基体11の最表面に、高濃度のp型不純物領域(図示省略)が形成され、半導体基体11界面での暗電流の発生が抑制される。
【0048】
縦型転送路40に隣接して、フローティングディフュージョン部FD3と転送ゲート電極17とが形成され、第3転送トランジスタTr3が構成されている。転送ゲート電極17は、半導体基体11の表面上にゲート絶縁膜を介して形成されている。そして、縦型転送路40から転送ゲート電極17を挟んで、半導体基体11の表面にフローティングディフュージョン部FD3が形成されている。
【0049】
半導体基体11の第1面上には、層間絶縁層37が形成されている。層間絶縁層37は、半導体基体11上に形成されている転送ゲート電極15,16,17及びその他のゲート電極等を覆って形成されている。また、層間絶縁層37内に、ゲート電極やフローティングディフュージョン部等に接続されるプラグや配線等の導体層が形成されている。
【0050】
(第1膜部材、第2膜部材)
半導体基体11の第2面側と光電変換膜32との間には、第1膜部材51と第2膜部材36とが形成されている。第1膜部材51は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上にのみ形成されている。そして、第2膜部材36は、第1膜部材で覆われている領域以外と、第1膜部材51上とを覆って形成されている。また、下部電極31及びコンタクトプラグ34は、第2膜部材36中に形成されている。そして、第2膜部材36において、画素間領域30に遮光層35が形成されている。
【0051】
第1膜部材51は、負の固定電荷を有する膜から構成されることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、例えば、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化チタン等が挙げられる。また、上記以外の材料としては、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化プロメチウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜等から負の固定電荷を有する膜を形成することも可能である。さらに、2種類以上の負の固定電荷を有する膜を積層してもよい。また、負の固定電荷を有する膜は、絶縁性を損なわない範囲で、膜中にシリコン(Si)や窒素(N)が添加されていてもよい。その濃度は、膜の絶縁性が損なわれない範囲で適宜決定される。このように、シリコン(Si)や窒素(N)が添加されることによって、膜の耐熱性や製造工程中でのイオン注入の阻止能力を上げることが可能になる。
【0052】
第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2上に負の固定電荷を有する膜を設けることにより、第1フォトダイオードPD1の界面にホール蓄積(ホールアキュミュレーション)層が形成される。このホール蓄積層によって、界面からの電子の発生を抑制し、さらに、発生した電子がホール蓄積層で消滅するため、固体撮像素子の暗電流の抑制が可能となる。
【0053】
さらに、負の固定電荷を有する膜として、半導体基体11よりも屈折率が小さい材料を用いると、負の固定電荷を有する膜が反射防止膜として機能する。このため、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2上に低反射膜となる負の固定電荷を有する膜を形成した場合には、固体撮像素子の感度が向上する。
【0054】
第2膜部材36は、上述の第1膜部材51とは異なる材料から形成されている。第2膜部材36は、一般的な半導体装置において層間絶縁膜として用いられる材料からなり、例えば、シリコンの酸化膜や窒化膜、酸窒化膜等からなる。
【0055】
第2膜部材36は、画素間領域30において半導体基体11上に形成されている。このため、半導体基体11よりも屈折率の小さい材料を用いると、半導体基体11の画素間領域30の入射光量が増加し、画素間領域30で発生する信号電荷の量が増加するため、画素間の混色の増加の原因となる。従って、第2膜部材36としては、第1膜部材51よりも屈折率の高い材料を用いることが好ましい。さらに、第2膜部材36は、半導体基体11よりも屈折率の高い材料を用いることが好ましい。
【0056】
また、第2膜部材36は、コンタクト部41上にも形成されている。コンタクト部41と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面には、空乏層が形成されている。この空乏層は、半導体基体11の第2面の表面にも形成されている。このため、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材が、このコンタクト部41とp−well44との界面の空乏層上に形成されると、負の固定電荷を有する膜が誘起する電界により、p−well44のp型が強化される。つまり、負の固定電荷を有する膜が形成されていない場合に比べて空乏層が強化される。さらに、空乏層がp−well44からコンタクト部41側の方向に広がる。この結果、空乏層からコンタクト部41に流れる暗電流の量が増加する。
【0057】
従って、コンタクト部41上に形成する第2膜部材36としては、第1膜部材よりも負の固定電荷量が小さい材料を用いる。負の固定電荷量が小さい材料を用いることにより、第2膜部材36によってコンタクト部41の界面の空乏層の強化及び拡大を抑制することができる。特に、シリコンからなる半導体基体11との間で界面準位を発生しにくい材料、例えば、シリコンと反応生成することで形成される酸化膜等を用いることが好ましい。この構成により、コンタクト部41における暗電流の抑制が可能となる。なお、第2膜部材36は、コンタクト部41上に加えて、コンタクト部41とp−well44との界面において空乏層が広がる領域上にも形成されていることが好ましい。空乏層上に負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材51を形成しないことにより、さらに暗電流の抑制が可能となる。
【0058】
図3に示すように、画素間領域30とコンタクト部41上とに同じ第2膜部材36を構成する場合には、上述のように、画素間領域30における混色の抑制と、コンタクト部41における暗電流の抑制とが可能な材料から、第2膜部材36を構成することが好ましい。つまり、第2膜部材36として、第1膜部材51よりも、屈折率が高く、負の固定電荷量が小さい材料を用いることが好ましい。
【0059】
上述のように、本例の固体撮像素子では、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材を、フォトダイオードPD上にのみ選択的に形成する。そして、フォトダイオードPD上を除く領域には、第1膜部材と異なる材料からなる第2膜部材を形成する。この構成により、フォトダイオードPDにおいて、負の固定電荷を有する膜による暗電流の抑制が可能となる。さらに、フォトダイオードPD以外の領域において、負の固定電荷を有する膜による好ましくない作用を防ぐことができる。
【0060】
特に、上述の構成の第2膜部材として、第1膜部材及び半導体基体よりも屈折率の高い材料を用いた場合には、画素間領域での光電変換による混色を抑制することができる。また、上述の構成の第2膜部材として、第1膜部材よりも負の固定電荷が弱い材料を用いた場合には、コンタクト部における暗電流を抑制することができる。
【0061】
なお、上述の構成の固体撮像素子において、画素領域に隣接して設けられる周辺回路領域において、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材の有無は問わない。しかしながら、負の固定電荷を有する膜による周辺回路への作用を考慮すると、画素間領域と同様に第1膜部材を設けない構成とすることが好ましい。
【0062】
また、上述の実施形態で、第3光電変換素子として設けられた光電変換膜32は、コンデンサのように電子を保持することが可能な電荷保持部により構成されていてもよい。上述の本実施形態及び後述する各実施形態では、第3光電変換素子に光電変換膜32を備える構成により本技術の一例を説明するが、この光電変換素子を電荷保持部と読みかえることで、電荷保持部を備える構成としてもよい。
【0063】
〈3.第1実施形態の半導体装置の製造方法〉
次に、上述の第1実施形態の固体撮像素子の製造方法について説明する。
図4〜
図9は、第1実施形態の固体撮像素子の製造工程図であり、特に、光電変換素子が形成される領域における製造工程を示す図である。
【0064】
まず、
図4に示すように、半導体基体11の所定の位置に、p−well44を形成する。さらに、p−well44中の所定の位置に、縦型転送路40を構成するコンタクト部41、及び、電荷蓄積部43を形成する。さらに、縦型転送路40と同じ工程において、第1フォトダイオードPD1を構成するn型半導体領域、及び、第2フォトダイオードPD2を構成するn型半導体領域を形成する。半導体基体としては、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板等を用いる。また、半導体基体11の第1面側に、図示しないゲート酸化膜を介して転送ゲート電極15,16,17を形成する。そして、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3を形成する。イオン注入後、アニール処理を行う。アニール処理による拡散を考慮してイオン注入の領域を設計する。イオン注入は、複数回に分けて行ってもよい。さらに、半導体基体11の表面上に層間絶縁層37を形成する。その後、半導体基体11の第1面側に、図示しない支持基板、又は、他の半導体基体等を接合して上下反転する。そして、半導体基体11を酸化物層から分離し、第2面側を露出させる。
図4に示す半導体基体11の各構成は、従来公知のイオン注入やCVD等、通常のCMOSプロセスで使用されている技術を用いて形成することができる。
【0065】
次に、
図5に示すように、半導体基体11の第2面側に、第1膜部材51を形成する。第1膜部材51は、半導体基体11の第2面側の全面に形成する。第1膜部材51としては、上述の負の固定電荷を有する膜を用いる。第1膜部材51は、単層でもよく、また、複数の層を積層してもよい。そして、
図6に示すように、第1膜部材51上に、フォトレジスト52を形成する。そして、露光、現像するフォトリソグラフィ工程により、フォトダイオードPDが形成される領域以外のフォトレジストを除去する。さらに、ドライエッチングやウェットエッチングにより、フォトレジスト52から露出する第1膜部材51を除去する。これにより、
図7に示すように、第1膜部材51のパターニングを行う。
【0066】
次に、
図8に示すように、第1膜部材51及び半導体基体11の第2面側を覆って、第2膜部材36を形成する。第2膜部材36は、例えば、HDP−CVD法等を用いて絶縁層を形成する。そして、第2膜部材36上に遮光層35を形成する。遮光層35は、画素間領域に形成する。さらに、第2膜部材36に、コンタクト部41に接続するコンタクトプラグ34を形成する。コンタクトプラグ34は、第2膜部材36の所定の位置を開口してコンタクトホールを形成する。そして、コンタクトホールの側壁及び底部にバリメタル膜を成膜し、金属材料を埋め込むことによって形成する。コンタクトプラグ34は、コンタクト部41との間でオーミック接続を得るために、例えば、バリアメタル膜としてチタン(Ti)と窒化チタン(TiN)の積層膜、埋め込み金属材料としてタングステン(W)を用いる。
【0067】
さらに、
図9に示すように、第2膜部材36を積層した後、コンタクトプラグ34と接続する下部電極31を形成する。下部電極31である透明電極としては、例えばスパッタ法を用いて成膜された100nm程度の厚みのITO膜を用いる。さらに、下部電極31を被覆するように、第2膜部材36を積層形成し、この第2膜部材36に下部電極31が露出する開口部を形成する。そして、開口部を被覆して光電変換膜32を形成する。その後、光電変換膜32の上部全面に、上部電極33を形成する。上部電極33も下部電極31と同様に、例えばスパッタ法を用いて、100nm程度の厚みのITO膜を用いる。その後、上部電極33上部に、平坦化層38及びオンチップレンズ39を形成する。以上の工程により、第1実施形態の固体撮像素子を製造することができる。
【0068】
なお、第1膜部材51のパターニングを行う工程において、フォトレジストのかわりに、第1膜部材51上に酸化膜や窒化ケイ素等を用いたハードマスク加工法を行ってもよい。例えば、第1膜部材51上に酸化膜や窒化ケイ素等を堆積し、フォトリソグラフィとエッチングによってハードマスクのパターンを形成する。そして、このハードマスクを用いて、第1膜部材51をエッチングすることにより、第1膜部材51のパターニングを行ってもよい。また、以下に説明する各実施形態の固体撮像素子についても、上述の実施形態に説明する製造方法と、公知の半導体装置の製造方法を組み合わせることにより製造することができる。
【0069】
〈4.固体撮像素子の第2実施形態〉
次に、固体撮像素子の第2実施形態について説明する。
図10に、第2実施形態の固体撮像素子の光電変換領域における、要部の断面構成を示す。なお、第2実施形態において上述の第1実施形態と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図10に示す固体撮像素子は、半導体基体11内に形成された光電変換素子となる第1フォトダイオードPD1と、第1フォトダイオードPD1を含む第1転送トランジスタTr1とを備える。第1フォトダイオードPD1は、半導体基体11に形成された第2導電型(本例ではn型)不純物によるn型半導体領域45からなる。このn型半導体領域45は、シリコン等からなる第2導電型(本例ではn型)の半導体基体11の、第1導電型(本例ではp型)の半導体領域からなるウェル領域(p−well)44に形成されている。
【0071】
第1フォトダイオードPD1に隣接して、半導体基体11上に転送ゲート電極53が形成されている。さらに、第1フォトダイオードPD1に対向する位置の半導体基体11の表面に、転送ゲート電極53に隣接するフローティングディフュージョン部FD1が形成されている。このように、半導体基体11の第1面側において、第1フォトダイオードPD1に、転送ゲート電極53及びフローティングディフュージョン部FD1が隣接して形成され、第1転送トランジスタTr1が構成されている。また、半導体基体11の表面上には、転送ゲート電極53等を覆って層間絶縁層37が形成されている。
【0072】
また、半導体基体11の裏面上には、第1膜部材51と第2膜部材36とが形成されている。第1膜部材51は、第1フォトダイオードPD1が形成されている部分に形成されている。そして、第1膜部材51上、及び、第1膜部材51が形成されていない半導体基体11の第2面上を覆って、第2膜部材36が形成されている。
【0073】
また、第2膜部材36には、画素間領域30において遮光層35が形成されている。そして、第2膜部材36及び遮光層35上に、平坦化層55を介して、第1フォトダイオードPD1に対応したカラーフィルタ56が形成されている。さらに、カラーフィルタ56上に、平坦化層38を介して、第1フォトダイオードPD1に対応したオンチップレンズ39が形成されている。
【0074】
第1膜部材51は、上述の第1実施形態と同様に負の固定電荷を有する膜から構成される。負の固定電荷を有する膜としては、上述の材料を用いることができる。また、平坦化層38,55及びオンチップレンズ39は、上述の第1実施形態と同様の構成である。カラーフィルタ56には、従来公知の固体撮像素子と同様のカラーフィルタを適用できる。
【0075】
第2膜部材36は、
図10に示すように画素間領域30上に形成されている。さらに、画素領域の周囲に形成される周辺回路領域においても、半導体基体11の裏面上を覆っていることが好ましい。画素間領域30上に形成されているため、第2膜部材36としては、第1膜部材51よりも屈折率の高い材料を用いることが好ましい。さらに、第2膜部材36は、半導体基体11よりも屈折率の高い材料を用いることが好ましい。さらに、周辺回路領域にも半導体基体11の裏面上に第2膜部材36が形成されている場合には、第2膜部材36として、第1膜部材51よりも負の固定電荷量が少ない材料を用いることが好ましい。
【0076】
本実施の形態では、
図10に示すように、単位画素2内にフォトダイオードPDが単独で形成されている構成においても、フォトダイオードPD上に第1膜部材51を形成し、それ以外の領域上を第2膜部材36で覆う構成とすることが可能である。この構成においても、フォトダイオードPD上では、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材51により、暗電流を抑制することができる。さらに、第1膜部材51をフォトダイオードPD上にのみ選択的に形成し、画素間領域30に第1膜部材51よりも屈折率の高い第2膜部材36を形成することにより、混色を抑制することができる。
【0077】
[変形例]
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
図11に、第2実施形態の固体撮像素子の変形例の構成を示す。変形例では、半導体基体11に形成されるフォトダイオードPDの構成が、上述の第2実施形態と異なる。
【0078】
図11に示す固体撮像素子は、半導体基体11に、第1及び第2光電変換素子となる、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2を備える。第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2は、半導体基体11において、光の入射方向に積層されている。
【0079】
第1フォトダイオードPD1に隣接して、転送ゲート電極15及びフローティングディフュージョン部FD1が形成され、第1転送トランジスタTr1が構成されている。転送ゲート電極15は、半導体基体11の第1面側から第1フォトダイオードPD1の領域まで形成されたトレンチ内に、ゲート絶縁膜を介して形成されている。フローティングディフュージョン部FD1は、半導体基体11の第1面側に形成されている。
【0080】
また、第2フォトダイオードPD2に隣接して、フローティングディフュージョン部FD2と転送ゲート電極16とが形成され、第2転送トランジスタTr2が構成されている。転送ゲート電極16は、半導体基体11の表面上にゲート絶縁膜を介して形成されている。そして、第2フォトダイオードPD2から転送ゲート電極16を挟んで、半導体基体11の表面にフローティングディフュージョン部FD2が形成されている。
【0081】
半導体基体11の表面上には、転送ゲート電極17等を覆って層間絶縁層37が形成されている。また、半導体基体11の裏面上には、第1膜部材51と第2膜部材36とが形成されている。第1膜部材51は、第1フォトダイオードPD1が形成されている領域上にのみ形成されている。そして、第1膜部材51上、及び、第1膜部材51が形成されていない半導体基体11の第2面上を覆って、第2膜部材36が形成されている。
【0082】
また、第2膜部材36には、画素間領域30において遮光層35が形成されている。そして、第2膜部材36及び遮光層35上に、平坦化層55を介して、第1フォトダイオードPD1に対応したカラーフィルタ56が形成されている。さらに、カラーフィルタ56上に、平坦化層38を介して、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2に対応したオンチップレンズ39が形成されている。
【0083】
図11に示すように、フォトダイオードPDが積層された構成の固体撮像素子においても、第2実施形態と同様に本技術を適用することができる。さらに、半導体基体内にフォトダイオードPDが3層形成された構成の固体撮像素子にも、第2実施形態と同様に本技術を適用することができる。これらの構成においても、第1膜部材と第2膜部材とを用いて、第1膜部材をフォトダイオードPD上にのみ選択的に形成することにより、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
〈5.固体撮像素子の第3実施形態〉
次に、固体撮像素子の第3実施形態について説明する。なお、以下に説明する第3実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0085】
[膜部材]
第3実施形態の固体撮像素子の構成を
図12に示す。
図12に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材51、第2膜部材36、及び、第3膜部材57が形成されている。第1膜部材51は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上にのみ形成されている。そして、第1膜部材51上に第3膜部材57が形成されている。第3膜部材57は、第1膜部材51上の全面に形成され、第1膜部材51上以外の領域には形成されていない。
【0086】
また、第2膜部材36は、第1膜部材51及び第3膜部材57で覆われている領域以外と、第3膜部材57上とを覆って形成されている。また、下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第2膜部材36中に形成されている。
【0087】
第1膜部材51及び第3膜部材57は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。第1膜部材51と第3膜部材57とは、それぞれ同じ材料から構成されていてもよく、また、異なる材料から構成されていてもよい。好ましくは、第1膜部材51と第3膜部材57とで、有する負の固定電荷量が異なる構成とする。また、第2膜部材36としては、上述の第1実施形態と同様の材料を用いることが好ましい。
【0088】
図12に示すように、フォトダイオードPDが形成される領域上では、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材51と第3膜部材57とが積層された構成としていてもよい。負の固定電荷を有する膜を複数層形成することにより、半導体基体11に与えられる電界が、形成された複数の膜の電界の総計となる。このため、第1膜部材51及び第3膜部材57について、それぞれの材料、厚さ、及び、成膜方法等を調整することにより、半導体基体11に与える電界の強さを制御することができる。このような構成とすることにより、負の固定電荷を有する膜を単独で形成した場合に比べ、半導体基体11に与えられる電界の制御が容易になる。また、膜部材の構成の選択性の自由度が向上するため、半導体基体の生産性を向上させることも可能となる。
【0089】
〈6.固体撮像素子の第4実施形態〉
次に、固体撮像素子の第4実施形態について説明する。なお、以下に説明する第4実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第4実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0090】
[膜部材]
第4実施形態の固体撮像素子の構成を
図13に示す。
図13に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材61、第2膜部材62、及び、第3膜部材63が形成されている。第1膜部材61は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上と、画素間領域30上に形成されている。そして、第1膜部材61上と、コンタクト部41上とに連続して第2膜部材62が形成されている。さらに、第2膜部材62上を覆って、第3膜部材63が形成されている。
【0091】
第1膜部材61は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。また、第3膜部材63は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。また、下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第3膜部材63中に形成されている。コンタクトプラグ34は、コンタクト部41上の第2膜部材62を貫通して、コンタクト部41に接続されている。
【0092】
第2膜部材62は、コンタクト部41上の領域において、半導体基体11上に直接形成されている。半導体基体11上に第2膜部材62が形成される領域は、少なくとも、コンタクト部41と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面において、空乏層が形成される以上の範囲とする。また、第2膜部材62は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。但し、第2膜部材62は、第1膜部材61よりも有する負の固定電荷量が少ない材料を用いることが好ましい。
【0093】
図13に示す構成の半導体装置では、コンタクト部41においても、半導体基体11の表面の界面準位による暗電流の発生が懸念される。このため、負の固定電荷を有する膜を形成することにより、半導体基体11の表面からの暗電流を抑制することができる。しかし、負の固定電荷量が多いと、コンタクト部41とp−well44との界面の空乏層に影響を与え、暗電流が増加する。このため、第2膜部材62としては、半導体基体11の表面からの暗電流の抑制量と、コンタクト部41とp−well44との界面の空乏層からの暗電流の増加量とを考慮し、全体として暗電流の抑制が可能な材料を適用することが好ましい。
【0094】
なお、本例では、画素間領域30に第1膜部材61及び第2膜部材62が形成されている構成を示しているが、画素間領域30においては、形成する膜部材の屈折率を考慮して、膜部材の構成を適宜選択することができる。例えば、画素間領域30で発生する電荷による混色の問題が発生しない、又は、無視できる程度である場合には、本例のように、画素間領域30上に第1膜部材61及び第2膜部材62が形成されていてもよい。また、混色の発生を考慮する場合には、画素間領域30に第1〜第3膜部材61,62,63から、好ましい屈折率の膜を適宜選択して形成してもよい。
【0095】
〈7.固体撮像素子の第5実施形態〉
次に、固体撮像素子の第5実施形態について説明する。なお、以下に説明する第5実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第5実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0096】
[膜部材]
第5実施形態の固体撮像素子の構成を
図14に示す。
図14に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材64、第2膜部材65、第3膜部材66、及び、第4膜部材67が形成されている。第1膜部材64は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上にのみ形成されている。第2膜部材65は、コンタクト部41上と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面に広がる空乏層上とを覆って形成されている。第3膜部材66は、画素間領域30において半導体基体11上に形成されている。さらに、第1〜3膜部材64,65,66上を覆って、第4膜部材67が形成されている。
【0097】
第1膜部材64は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。また、第4膜部材67は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。また、下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第4膜部材67中に形成されている。コンタクトプラグ34は、コンタクト部41上の第2膜部材65を貫通して、コンタクト部41に接続されている。
【0098】
第2膜部材65は、第4実施形態と同様に、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。但し、第2膜部材65は、第1膜部材64よりも有する負の固定電荷量が少ない材料を用いることが好ましい。第2膜部材65にこのような負の固定電荷を有する膜を選択することにより、コンタクト部41での暗電流の抑制が可能となる。第3膜部材66は、第1膜部材64と同様に負の固定電荷を有する膜を用いることが好ましい。負の固定電荷を有することにより、半導体基体11表面からの暗電流が抑制される。
【0099】
さらに、第3膜部材66は、第1膜部材64よりも高い屈折率を有することにより、画素間領域30での電荷発生を抑制し、混色の抑制が可能となる。例えば、半導体基体11がSiからなり、配線層を構成する第4膜部材67がSiO
2からなる場合には、第1膜部材64は、SiとSiO
2との間の屈折率を有することにより、第1膜部材64による反射防止特性が効果的となる。そして、第3膜部材66は、屈性率がSiO
2と同様かそれ以上とすることで、第3膜部材66での反射成分が増大する。このため、画素間領域30での電荷発生を抑制し、混色の抑制が可能となる。
【0100】
上述のように、フォトダイオードPD上、画素間領域、及び、コンタクト部の各領域に、異なる材料からなる負の固定電荷を有する膜を形成することもできる。全ての領域に負の固定電荷を有する膜を形成することにより、半導体基体11の表面からの暗電流を抑制することができる。さらに、各領域において、膜部材が有する負の固定電荷量や、屈折率等が最適となるように、材料、膜厚、成膜方法等を選択することにより、暗電流の抑制や混色の抑制等が可能となる。
【0101】
〈8.固体撮像素子の第6実施形態〉
次に、固体撮像素子の第6実施形態について説明する。なお、以下に説明する第6実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第6実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0102】
[膜部材]
第6実施形態の固体撮像素子の構成を
図15に示す。
図15に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材68、第2膜部材69、及び、第3膜部材71が形成されている。第2膜部材69は、コンタクト部41と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面において、空乏層が形成される領域上に形成されている。そして、第1膜部材68は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上と、第2膜部材69上に形成されている。さらに、第3膜部材71は、第1膜部材68が形成されていない半導体基体11上と、第1膜部材68上とを覆って、形成されている。
【0103】
第1膜部材68は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。また、第3膜部材71は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第3膜部材71中に形成されている。コンタクトプラグ34は、コンタクト部41上の第1膜部材68及び第2膜部材69を貫通して、コンタクト部41に接続されている。
【0104】
第2膜部材69は、界面準位の少ない材料から形成されている。例えば、半導体基体11の材料と反応生成することで形成された酸化膜等から構成される。また、第2膜部材69は、コンタクト部41とその周囲に形成される空乏層に対して、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材68の影響を与えない厚さに形成する。
【0105】
第2膜部材69を、コンタクト部41及びその周囲と第1膜部材68との間に形成することにより、コンタクト部41の周辺に第1膜部材68が直接接しない構成となる。この構成とすることにより、コンタクト部41と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面の空乏層が影響を受けない。このため、空乏層からの暗電流の発生を抑制することができる。
【0106】
さらに、第1膜部材68で覆われている部分は、負の固定電荷を有する膜により半導体基体11の表面からの暗電流が抑制される。このため、フォトダイオードPDの形成領域において、半導体基体11の表面からの暗電流を抑制することができる。また、第2膜部材69として界面準位の少ない材料を用いることにより、第2膜部材69で覆われているコンタクト部41周辺の暗電流を抑制することができる。また、画素間領域30においては、反射成分が増加するような屈折率を有する第3膜部材71を設けることにより、画素間領域30での電荷発生を抑制し、混色の抑制が可能となる。
【0107】
上述のように、フォトダイオードPD上、画素間領域、及び、コンタクト部の各領域に、負の固定電荷を有する膜の選択的な形成に加えて、半導体基体11と負の固定電荷を有する膜との間に異なる種類の膜を設けてもよい。このような構成とすることにより、暗電流の抑制や混色の抑制等が可能となる。
【0108】
〈9.固体撮像素子の第7実施形態〉
次に、固体撮像素子の第7実施形態について説明する。なお、以下に説明する第7実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第7実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0109】
[膜部材]
第7実施形態の固体撮像素子の構成を
図16に示す。
図16に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材72、第2膜部材73、及び、第3膜部材74が形成されている。第1膜部材72は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上にのみ形成されている。第2膜部材73は、コンタクト部41上と、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面に広がる空乏層上とを覆って形成されている。第3膜部材74は、第1膜部材72と第2膜部材73とが形成されていない半導体基体11上と、第1膜部材72及び第2膜部材73上とを覆って形成されている。
【0110】
第1膜部材72及び第2膜部材73は、それぞれ導体層から構成されている。第1膜部材72は、電圧を印加可能な透明電極により構成されている。第1膜部材72と第2膜部材73は、それぞれ第3膜部材74を介して分離された構成である。そして、第1膜部材72及び第2膜部材73には、それぞれ図示しない配線が接続され、それぞれ独立して電圧を印加できる構成である。透明電極としては、上述の上部電極33及び下部電極31と同じ材料を用いることができる。また、第2膜部材73には、一般的に半導体装置において配線や電極として用いられる材料を適用することができる。特に、第2膜部材73は、第1膜部材72と同じ透明電極により形成すると、第1膜部材72と第2膜部材73とを同一工程で作製できる。このため、第2膜部材73を第1膜部材72と同じ透明電極で形成することが好ましい。
【0111】
第3膜部材74は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第3膜部材74中に形成されている。コンタクトプラグ34の周囲には絶縁層75が形成され、第2膜部材73とコンタクトプラグ34とが非接触に構成されている。
【0112】
第1膜部材72及び第2膜部材73を導体層で構成することにより、この第1膜部材72及び第2膜部材73に負のバイアスを印加することで半導体基体11の界面からの電子の発生が抑制され、暗電流を抑制することができる。負のバイアスを印加することにより、負の固定電荷を有する膜を形成した場合と同様に、半導体基体11の表面にホール蓄積層が形成されて、暗電流が抑制される。
【0113】
また、本例では、フォトダイオードPDが形成される領域と、コンタクト部41が形成される領域とで、別々の導体層が形成されている。このため、それぞれの膜部材への印加電圧を独立に適宜調整可能である。例えば、第1膜部材72への印加電圧を、第2膜部材73の印加電圧よりも高くすることにより、フォトダイオードPD上の半導体基体11の界面でのホール蓄積量を高めて、暗電流を抑制することができる。また、このときの第2膜部材73への印加電圧を低くすることにより、コンタクト部41の周囲での半導体基体11の界面からの暗電流を抑制すると共に、コンタクト部41の周囲の空乏層への影響を抑えて、空乏層による暗電流の発生を抑制することができる。
【0114】
上述のように、フォトダイオードPD上、及び、コンタクト部の各領域に、負の固定電荷を有する膜に変えて導体層を選択的に形成してもよい。このような構成とすることにより、暗電流の抑制や混色の抑制等が可能となる。
【0115】
〈10.固体撮像素子の第8実施形態〉
次に、固体撮像素子の第8実施形態について説明する。なお、以下に説明する第8実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第8実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0116】
[膜部材]
第8実施形態の固体撮像素子の構成を
図17に示す。
図17に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材76、及び、第2膜部材36が形成されている。
【0117】
第1膜部材76は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上にのみ形成されている。そして、第2膜部材36は、コンタクト部41の周囲のp−well44との界面に広がる空乏層上、及び、画素間領域30を含む第1膜部材で覆われていない領域と、第1膜部材51上とを覆って形成されている。また、下部電極31及びコンタクトプラグ34は、第2膜部材36中に形成されている。そして、第2膜部材36において、画素間領域30に遮光層35が形成されている。
【0118】
第1膜部材76は、半導体基体11よりもバンドギャップの広い半導体材料から構成される。バンドギャップの広い半導体材料としては、例えば、炭化珪素系混晶、ZnCdSe系混晶、AlGaInN系混晶、AlGaInP系混晶等を含む半導体材料を挙げられる。第1膜部材76として、バンドギャップの広い半導体材料を用いることにより、負の固定電荷を有する膜が誘起するホール蓄積層と同様に暗電流の発生確率を低下させることができる。このため、フォトダイオードPD上にバンドギャップの広い半導体材料からなる第1膜部材76を形成することにより、半導体基体11の界面からの暗電流を抑制することができる。
【0119】
〈11.固体撮像素子の第9実施形態〉
次に、固体撮像素子の第9実施形態について説明する。なお、以下に説明する第9実施形態は、半導体基体11の第2面側の形状及び膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態と同様の構成である。このため、以下の第9実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0120】
[膜部材]
第9実施形態の固体撮像素子の構成を
図18に示す。
図18に示す固体撮像素子では、半導体基体11の第2面側に、埋め込み型の素子分離部77が形成されている。また、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材78、及び、第2膜部材79が形成されている。
【0121】
素子分離部77は、STIのように半導体基体11をエッチングして形成した溝(トレンチ)と、トレンチ内に埋め込まれた第1膜部材78及び第2膜部材79とからなる。また、素子分離部77は、縦型転送路40の周囲の側面に形成され、且つ、縦型転送路40に接する位置に形成されている。そして、素子分離部77は、半導体基体11の第2面側からコンタクト部41と電位障壁部42とを超える深さまで形成されている。
【0122】
素子分離部77は、電荷蓄積部43の外周よりも外側から、電荷蓄積部43の外周よりも内側まで形成され、コンタクト部41と電位障壁部42との側面、及び、電荷蓄積部43の上部の側面が、素子分離部77に接して形成されている。さらに、素子分離部77は、縦型転送路40と接する面以外が、縦型転送路40の周囲のp−well44と接して形成されている。つまり、素子分離部77の内周側の側面から縦型転送路40が露出され、内周側の側面からp−well44が、トレンチの側面に露出される構成である。
【0123】
第1膜部材78は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上に形成されている。また、第1膜部材78は、素子分離部77において、トレンチの内面に露出されているp−well44上に形成されている。第1膜部材78は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。
【0124】
第2膜部材79は、第1膜部材78で覆われていない領域と、第1膜部材78上とを覆って形成されている。具体的には、コンタクト部41上、トレンチの側面に露出されているコンタクト部41と電位障壁部42と電荷蓄積部43上、及び、画素間領域30を含む第1膜部材78で覆われていない領域に第2膜部材79が形成されている。さらに、素子分離部77において、トレンチ全体を埋め込んで第2膜部材79が形成されている。
【0125】
また、第2膜部材79は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。特に、界面順位が少ない材料と製法で形成した絶縁膜、例えばSiと反応生成することで製膜した酸化膜などを配置することが好ましい。下部電極31、コンタクトプラグ34及び遮光層35は、第2膜部材79中に形成されている。また、第2膜部材79は、素子分離部77を構成するトレンチ内に埋め込まれていることを除き、上述の第1実施形態の第2膜部材と同様の構成である。
【0126】
上述の構成では、フォトダイオードPDが形成された領域の半導体基体11上、及び、トレンチの内のp−well44上に負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材78が形成されている。フォトダイオードPD上に負の固定電荷を有する膜を有することにより、半導体基体11の界面からの暗電流を抑制することができる。さらに、トレンチの内面に露出するp−well44では、この界面において不純物が不足して暗電流が発生する恐れがある。このため、トレンチの内のp−well44上に負の固定電荷を有する膜を形成することにより、素子分離部77の界面からの暗電流を抑制することができる。
【0127】
また、素子分離部77を設けることにより、コンタクト部41におけるpn接合の接合面積が減少する。このため、リーク電流を抑制することができる。さらに、コンタクト部41の周囲、及び、画素間領域30に第1膜部材78が配置されていない。このような構成とすることにより、暗電流の抑制や混色の抑制等が可能となる。
【0128】
なお、上述の実施形態では、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材を単一層として形成しているが、例えば、上述の第3実施形態や第4実施形態のように、多層膜により形成してもよい。また、第1膜部材として、負の固定電荷を有する膜のかわりに、上述の第7実施形態で説明した透明電極や、第8実施形態で説明したバンドギャップが広い材料を用いることもできる。さらに、上述の第4実施形態や第7実施形態のように、コンタクト部41上及び縦型転送路40が露出されているトレンチ内面に、負の固定電荷を有する膜や導体層を形成する構成としてもよい。このような構成とした場合にも、上述の第9実施形態の効果に加えて、各実施形態の構成による効果を得ることができる。
【0129】
〈12.固体撮像素子の第10実施形態〉
次に、固体撮像素子の第10実施形態について説明する。なお、以下に説明する第10実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態及び第9実施形態と同様の構成である。このため、以下の第10実施形態の説明では、第1実施形態又は第9実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0130】
[膜部材]
第10実施形態の固体撮像素子の構成を
図19に示す。
図19に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材81、第2膜部材82、第3膜部材83、及び、第4膜部材87が形成されている。第1膜部材81は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上と、素子分離部77においてトレンチの側面から露出されているp−well44上に形成されている。第2膜部材82は、コンタクト部41上と、トレンチの側面から露出されるコンタクト部41、電位障壁部42及び電荷蓄積部43上に形成されている。第3膜部材83は、画素間領域30において半導体基体11上とに形成されている。さらに、第1〜3膜部材81,82,83上、及び、素子分離部77のトレンチ内を埋め込んで第4膜部材87が形成されている。
【0131】
第1膜部材81は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。第2膜部材82は、第1膜部材81と同様に、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。但し、第2膜部材82は、第1膜部材81よりも有する負の固定電荷量が少ない材料を用いることが好ましい。第2膜部材82にこのような負の固定電荷を有する膜を選択することにより、縦型転送路40での暗電流の抑制が可能となる。
【0132】
第3膜部材83は、第1膜部材81と同様に負の固定電荷を有する膜を用いることが好ましい。負の固定電荷を有することにより、半導体基体11表面からの暗電流が抑制される。さらに、第3膜部材83は、第1膜部材81よりも高い屈折率を有することにより、画素間領域30での電荷発生を抑制し、混色の抑制が可能となる。また、第4膜部材87には、一般的に半導体装置において配線や電極として用いられる材料を適用することができる。
【0133】
上述のように、フォトダイオードPD上、画素間領域30、コンタクト部41、及び、素子分離部77の各領域に、異なる材料からなる負の固定電荷を有する膜を形成することができる。全ての領域に負の固定電荷を有する膜を形成することにより、半導体基体11の表面からの暗電流を抑制することができる。さらに、各領域において、膜部材が有する負の固定電荷量や、屈折率等が最適となるように、材料、膜厚、成膜方法等を選択することにより、暗電流の抑制や混色の抑制等が可能となる。
【0134】
〈13.固体撮像素子の第11実施形態〉
次に、固体撮像素子の第11実施形態について説明する。なお、以下に説明する第11実施形態は、半導体基体11の裏面上の膜部材の構成を除き、上述の第1実施形態及び第9実施形態と同様の構成である。このため、以下の第11実施形態の説明では、第1実施形態又は第9実施形態と同様の構成には同じ符号を付しての説明を省略する。
【0135】
[膜部材]
第11実施形態の固体撮像素子の構成を
図20に示す。
図20に示す固体撮像素子では、半導体基体11の裏面上に、第1膜部材84、第2膜部材85、及び、第3膜部材86が形成されている。
【0136】
第2膜部材85は、コンタクト部41上と、トレンチの側面から露出されるコンタクト部41、電位障壁部42及び電荷蓄積部43上とに形成されている。そして、第1膜部材84は、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2が形成されている領域上と、素子分離部77においてトレンチの側面から露出されているp−well44上と、第2膜部材85上とに形成されている。さらに、第3膜部材86は、第1膜部材84が形成されていない半導体基体11上と、第1膜部材84上とを覆って、形成されている。
【0137】
第1膜部材84は、負の固定電荷を有する膜から構成されていることが好ましい。負の固定電荷を有する膜としては、上述の第1実施形態で示す材料を用いることができる。第2膜部材85は、界面準位の少ない材料から形成されている。例えば、半導体基体11の材料と反応生成することで形成された酸化膜等から構成される。また、第2膜部材85は、縦型転送路40に対して、負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材84の影響を与えない厚さに形成する。第3膜部材86は、半導体装置において一般的に配線層の層間絶縁膜として用いられている材料を適用することができる。
【0138】
第2膜部材85が、コンタクト部41上、及び、素子分離部77のトレンチ側面に露出する縦型転送路40上において、第1膜部材84との間に形成されている。つまり、第2膜部材85により、縦型転送路40と第1膜部材84とが直接接しない構成となる。この構成では、縦型転送路40が負の固定電荷を有する膜からなる第1膜部材84による影響を受けない。このため、縦型転送路40における暗電流の発生を抑制することができる。さらに、第2膜部材85として界面準位の少ない材料を用いることにより、第2膜部材85で覆われている縦型転送路40の界面からの暗電流を抑制することができる。
【0139】
〈14.電子機器〉
次に、上述の固体撮像素子を備える電子機器の実施形態について説明する。上述の固体撮像素子は、例えば、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラシステム、撮像機能を有する携帯電話、又は、撮像機能を備えた他の機器などの電子機器に適用することができる。
図21に、電子機器の一例として、固体撮像素子を静止画像又は動画を撮影が可能なカメラに適用した場合の概略構成を示す。
【0140】
この例のカメラ100は、固体撮像素子101と、固体撮像素子101の受光センサ部に入射光を導く光学系102と、固体撮像素子101及び光学系102間に設けられたシャッタ装置103と、固体撮像素子101を駆動する駆動回路104とを備える。さらに、カメラ100は、固体撮像素子101の出力信号を処理する信号処理回路105を備える。
【0141】
固体撮像素子101には、上述の各実施形態及び変形例に示す固体撮像素子を適用することができる。光学系(光学レンズ)102は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像素子101の撮像面(不図示)上に結像させる。これにより、固体撮像素子101内に、一定期間、信号電荷が蓄積される。なお、光学系102は、複数の光学レンズを含む光学レンズ群で構成してもよい。また、シャッタ装置103は、入射光の固体撮像素子101への光照射期間及び遮光期間を制御する。
【0142】
駆動回路104は、固体撮像素子101及びシャッタ装置103に駆動信号を供給する。そして、駆動回路104は、供給した駆動信号により、固体撮像素子101の信号処理回路105への信号出力動作、及び、シャッタ装置103のシャッタ動作を制御する。すなわち、この例では、駆動回路104から供給される駆動信号(タイミング信号)により、固体撮像素子101から信号処理回路105への信号転送動作を行う。
【0143】
信号処理回路105は、固体撮像素子101から転送された信号に対して、各種の信号処理を施す。そして、各種信号処理が施された信号(映像信号)は、メモリなどの記憶媒体(不図示)に記憶される、又は、モニタ(不図示)に出力される。
【0144】
上述のカメラ100等の電子機器によれば、固体撮像素子101により撮像特性が向上した電子機器を提供することができる。
【0145】
なお、上述の半導体撮像素子では、第2導電型、例えばn型の半導体基体に形成した第1導電型、例えばp型の半導体領域に、第2導電型のFD領域と、第2導電型のフォトダイオードPD領域を形成しているが、本技術においてはn型とp型の導電型を逆にしてもよい。この場合には、光電変換膜から半導体基体に転送される信号電荷をホールとし、光電変換膜に接続される縦型転送路のn型とp型のとの導電型を逆にする。
【0146】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)半導体基体と、前記半導体基体に設けられた光電変換素子と、前記半導体基体の受光面側に配置された光電変換膜と、前記半導体基体に設けられている、前記光電変換膜で生成された信号電荷が読み出されるコンタクト部と、前記光電変換素子上を覆う第1膜部材と、前記コンタクト部上に設けられた第2膜部材と、を備える固体撮像素子。
(2)隣接する前記光電変換素子の間の画素間領域において、前記半導体基体上に前記第2膜部材を備える(1)に記載の固体撮像素子。
(3)隣接する前記光電変換素子の間の画素間領域において、前記半導体基体上に前記第1膜部材及び第2膜部材と異なる材料からなる第3膜部材を備える(1)に記載の固体撮像素子。
(4)前記第1膜部材が、異なる種類の膜部材が積層された構成を有する(1)から(3)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)前記第1膜部材上に前記第2膜部材が積層されている(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)前記第1膜部材が、負の固定電荷を有する膜、前記半導体基体よりもバンドギャップが広い半導体材料、及び、導体層から選ばれる少なくとも1種類以上を含む(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)前記第2膜部材が、前記第1膜部材よりも負の固定電荷量が少ない膜、前記半導体基体よりも界面準位の少ない膜、及び、導体層から選ばれる少なくとも1種類以上を含む(1)から(6)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)前記コンタクト部の周囲に、埋め込み型の素子分離部を備える(1)から(7)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(9)前記素子分離部内に前記第1膜部材を備える(8)に記載の固体撮像素子。
(10)前記素子分離部において、前記コンタクト部と接する部分に前記第2膜部材を備える(8)又は(9)に記載の固体撮像素子。
(11)半導体基体と、前記半導体基体に設けられた光電変換素子と、前記光電変換素子上に設けられた第1膜部材と、隣接する前記光電変換素子の間の画素間領域において、前記半導体基体上に設けられた前記第2膜部材と、を備える固体撮像素子。
(12)半導体基体に光電変換素子とコンタクト部とを形成する工程と、前記光電変換素子上を覆う位置の前記半導体基体上に、第1膜部材を形成する工程と、前記コンタクト部上を覆う位置の前記半導体基体上に、第2膜部材を形成する工程と、前記半導体基体の受光面上に光電変換膜を形成する工程と、を有する固体撮像素子の製造方法。
(13)(1)から(10)のいずれかに記載の半導体装置と、前記半導体装置の出力信号を処理する信号処理回路と、を有する電子機器。
(14)(11)に記載の半導体装置と、前記半導体装置の出力信号を処理する信号処理回路と、を有する電子機器。
【0147】
本出願は、日本国特許庁において2012年6月29日に出願された日本特許出願番号第2012−146499号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0148】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。