【実施例】
【0056】
2パスループ反応器を用いた本発明方法の操作を
図3に関連して図示し、説明する。
図3には、2パスループ反応器12、変速駆動装置18を持つモータ16により駆動される再循環ポンプ14、供給および再循環ループ20、製品出口22を含む反応器系10が概略的に示されている。
【0057】
反応器12は、供給室24、上昇流のための複数のチューブ26、下降流のための複数のチューブ28、上プレナム30、および循環された材料の受入室32を含む。反応器12は従来のデザインであり、1−2シェルアンドチューブ型熱交換器(1シェル、2パス)として当業界で知られている。この反応器は、チューブ外径が0.375インチで肉厚が0.035インチのチューブ1164本を持つのが好適である。重合反応は高度に発熱性であるので、冷やされた冷却液を循環させるために、これらのチューブはシェル34と36で取り囲む。
【0058】
運転中、イソブチレン供給原料は供給管路40を介して残存反応器流38に送られて、反応混合物を形成するが、この反応混合物には必要に応じ触媒変性剤、通常はメタノール、をポンプ14のちょうど上流の注入点42で供給する。ポンプ14は、
図3に示す差圧ΔPで作動し、ループ20を介して反応器12内に反応混合物を再循環させる。触媒注入口44は、例えばメタノールとBF
3との1:1モル混合物からなる触媒錯体を供給室24の上流で反応混合物に供給する。
【0059】
変速駆動装置18はモータ16に接触して、ポンプ14をポンプでの差圧ΔPで駆動すると、反応器内での反応混合物の再循環流量が得られる。当業者が容易に判る通り、反応混合物の流量特性も反応器内の温度、分子量、単量体と希釈剤の含量等から影響を受ける。したがって、反応混合物の流量特性は、以下の実施例で見られるように、供給材料と触媒の量、単量体の転化率、混合物の組成、反応器内の温度により制御される。所定の混合物にとっては、供給量と温度、再循環量、したがって反応器のチューブ内の反応混合物の速度は、ポンプ14の速度を制御することにより、ポンプでの差圧ΔP(図でDP)を与えるように制御するのがもっとも便利である。
【0060】
ポンプは反応混合物を供給室24に循環させ、そこから混合物は複数の上向チューブ26に供給され、上向チューブからプレナム30に流れ、その後、混合物は複数の下向チューブ28に移され、下向チューブから受入室32に流れる。重合製品は圧力逃し弁46を通じて22の箇所で取出される。残存反応器流38は系内に留まり、供給管路40は上述のように新しい単量体を残存流に提供する。反応器12は、反応混合物とその成分を液状に維持するのに十分な圧力かつ反応温度、好適には約華氏40度〜約華氏90度の範囲の温度で運転する。反応器12の操作についてのいっそうの詳細は欧州特許第1242464号に与えられており、その開示内容を本明細書に引用して援用する。
【0061】
通常、本発明方法は、再循環量を以下の実施例に示すように供給量よりはるかに多くして実行される。34、36、48、50で示した反応器のシェル側における冷却液は、反応の熱を除去する。どのような好適な冷却液を用いてもよく、例えば、水とメタノールとの50:50w/w混合物を冷却し、シェル部分に循環させて、反応器温度を制御してもよい。
【0062】
上記の手順と材料を利用して、1−2チューブ&シェル型反応器を操作し、イソブタンで希釈した精製イソブチレンとBF
3/メタノール触媒と変性剤の系を用いてPIBを製造した。詳細と結果を表4〜9に示す。表4〜9において、“触媒錯体”とはBF
3/メタノールの1:1w/w混合物を指す。これらの表中、熱伝達係数Qはすぐ下に説明したように、また
図4の式(1)〜(6)に関連して、対数平均温度差から算出される。
【0063】
伝達された熱(Q)は、シェル側(冷却用流体)またはチューブ側(プロセス流体)データを用いて式(1)により算出してよい。
【0064】
Q(BTU(英熱量単位、Btu/時間)はチューブ反応側データを用いて算出した。
【0065】
式(1)の各項は以下の通りである:
m=シェル側流体(メタノール−水)の質量流量;
c
P=シェル側(冷却用)流体の比熱;
t
1=冷却器温度、入口;
t
2=冷却器温度、出口;
M=チューブ側流体(プロセス流体)の質量流量;
C
P=チューブ側流体(プロセス流体)の比熱;
T
1=プロセス流体の(反応器)入口温度;
T
2=プロセス流体の(反応器)出口温度;
熱伝達のフーリエ式は、総括伝熱係数‘U’を伝熱量(Q)と関連させている。1−2熱交換器(1シェルおよび2チューブパス)については、この式は式(2)と式(3)の形に書ける。(Process heat transfer、D.Q.Kern,McGraw Hill, 1950、144頁)。
【0066】
式(3)のΔtも対数平均温度差(LMTD)として知られている;
A=熱交換に利用可能な面積。
【0067】
式(4)において、F
t=真温度差のLMTDに対する分数比である。
【0068】
1−2熱交換器の良好な運転のためには、F
tの数値は一般的に0.75より大きいのが望ましい(Process heat transfer、D.Q.Kern,McGraw Hill, 1950、145頁)。F
tは、式(4)と(5)により、または無次元パラメータRおよびSの数値をF
tと関連付ける数字(
図18、828頁、Kern,D.Q.)を介して算出できる。
【0069】
式(4)のRおよびSの数値は表中で算出してある。F
tは、RおよびSの数値から算出した。
【0070】
総括‘U’値は、式(2)を式(6)に示した形に整理することにより、再計算できる。
【0071】
式(6)に示した総括U値も表4〜7に示す。
【0072】
【表4-1】
【0073】
【表4-2】
【0074】
【表4-3】
【0075】
【表4-4】
【0076】
【表4-5】
【0077】
【表5-1】
【0078】
【表5-2】
【0079】
【表5-3】
【0080】
【表5-4】
【0081】
【表5-5】
【0082】
【表6-1】
【0083】
【表6-2】
【0084】
【表6-3】
【0085】
【表6-4】
【0086】
【表6-5】
【0087】
【表7-1】
【0088】
【表7-2】
【0089】
【表7-3】
【0090】
【表7-4】
【0091】
【表7-5】
【0092】
本発明の様々な構成と利点は、表4〜7および添付の図面から容易に明らかとなろう。表4は、約1,000の数平均分子量を持つ、ビニリデンが高含量の高反応性(HR)PIBについての結果を示している。反応器のチューブ内の反応混合物の線速度と共に、再循環ポンプでの差圧ΔPが増加すると、転化率が劇的に増大することが
図1からわかる。上記の実施例全体で、差圧と線速度の増加に伴い、触媒の生産性も劇的に増加する。この側面が図示されている
図2および5を参照のこと。HRPIBを製造する際には、高循環量で変性剤の消費は減少し、転化率が増加することがわかる(
図6、7を参照)。
【0093】
反応系において線速度の増加につれて、より高い分子量のHR PIBで同様の結果が認められる。3.5分の滞留時間では、転化率は50重量%からほぼ60重量%へと増加し(
図7)、触媒錯体流量は12〜15%減少する(
図8)。変性剤消費(この場合にはメタノール)はさらに多く減少する(
図9)。反応器入口温度はより高い循環量では上昇し(
図10)、プロセス中の熱伝達を改善させる。
【0094】
中域ビニリデン製品でも、表6、7に記載したように同様の結果が見られる。差圧と線速度が増加すると、転化率は劇的に増加する(
図11、12)。
【0095】
触媒生産性(効率)は、先行技術の系に比べ予想外に改善される。表8において、本発明の方法を先行技術の反応系と比較する。算出についての詳細は表9にまとめた。触媒生産性は、本発明の方法では触媒錯体1ポンド当たり重合体約650ポンド〜触媒錯体1ポンド当たり重合体約2000ポンドまでであり、先行技術の報告では触媒錯体1ポンド当たり重合体約150ポンド〜触媒錯体1ポンド当たり重合体約300ポンドである。BF
3のみに基づいて計算すると、生産性の同様の増加が得られる。
【0096】
【表8】
【0097】
【表9-1】
【0098】
【表9-2】
【0099】
上記の事柄から、先行技術の教示に反し、同一の滞留時間では再循環量が増加すると転化率が予想外に増加する事がわかるであろう。資本費用や処理費用を著しく追加しなくとも、より高い収量が達成される。他の条件が全て同じなら、循環量が増大すると、実質的に同一の滞留時間で多分散性が低下することもわかった。また、本発明の方法では、製造された製品は予想外に特により高い分子量でより低い多分散性を持ち、これも先行技術の教示に反していた。この特徴は、製品がアルキルフェノールのような誘導体および/または燃料または潤滑油添加剤を作るのに用いられる場合には特に望ましい。
【0100】
特に有用で予想外の結果は、高速度の系が製品の製造に用いられる場合、転化率が増加してもアルファ含量は減少しないことである。
【0101】
[追加の態様]
本発明は添付の請求項にさらに明記する。本発明のさらなる態様は以下を含む:熱媒体と接触させた1本以上の反応チューブを持つ再循環型ループ反応器中でポリイソブチレン重合体を製造する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:(a)イソブチレン、触媒、必要に応じ他の供給成分を残存反応器流に供給量で供給して、反応混合物を形成する工程;(b)35psi〜70psiの差圧、ΔP、で稼動する再循環ポンプを利用して、ループ反応器の1本以上の反応チューブ内において再循環量で反応混合物を再循環させる工程;(c)ループ反応器の1本以上のチューブ内で反応混合物を重合させて、重量%で表される転化率でイソブチレンをポリイソブチレン重合体に転化し、その際、ループ反応器の1本以上のチューブを熱媒体で冷却する工程;(d)工程(b)と(c)の再循環量、ΔP、および重合反応を制御して、少なくとも30:1の再循環量と供給量との再循環比を与える工程;および(e)ループ反応器からポリイソブチレン重合体を取出す工程。
【0102】
本発明をどのように実施する場合でも、イソブチレンの重合体への転化率は50%〜80%であり、好適には少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%である。同様に、どの態様においても、再循環ポンプのΔPは通常少なくとも40psi、好適には少なくとも45psi、であり、好ましくは、再循環ポンプのΔPが少なくとも50psiまたは少なくとも55psiである場合がある。
【0103】
特定の用途における本発明の方法は、30:1〜50:1の再循環比、例えば少なくとも35:1、少なくとも37.5:1、または少なくとも40:1の再循環比で操作してもよく、または少なくとも45:1の再循環比で操作してもよい。
【0104】
また別の態様は以下を含む:熱媒体と接触させた1本以上の反応チューブを持つ再循環型ループ反応器内でポリイソブチレン重合体を製造する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:(a)イソブチレン、触媒、必要に応じ他の供給成分を残存反応器流に供給量で供給して、反応混合物を形成する工程;(b)35psi〜70psiの差圧、ΔP、で稼動する再循環ポンプを利用して、供給量より大きい再循環量でループ反応器の1本以上の反応チューブ内において反応混合物を再循環させる工程;(c)ループ反応器の1本以上のチューブ内で反応混合物を重合させて、重量%で表される転化率でイソブチレンをポリイソブチレン重合体に転化し、その際、ループ反応器の1本以上のチューブを熱媒体で冷却する工程;(d)工程(b)と(c)の再循環量、ΔP、および重合反応を制御して、ループ反応器の1本以上のチューブ内で少なくとも11フィート/秒の反応混合物の線速度を与える工程;但し、イソブチレンの転化率が55%未満である場合、工程(b)と(c)の再循環量、ΔP、重合反応を制御して、1本以上の反応チューブ内で少なくとも13.5フィート/秒の反応混合物の線速度を与える、工程;および(e)ループ反応器からポリイソブチレン重合体を取出す工程。
【0105】
本発明のさらに別の態様は以下を含む:熱媒体と接触させた1本以上の反応チューブを持つ再循環型ループ反応器内でポリイソブチレン重合体を製造する方法であって、以下の工程を含んでなる方法:(a)イソブチレン、触媒、必要に応じ他の供給成分を残存反応器流に供給量で供給して、反応混合物を形成する工程;(b)35psi〜70psiの差圧、ΔP、で稼動する再循環ポンプを利用して、供給量より大きい再循環量でループ反応器の1本以上の反応チューブ内において反応混合物を再循環させる工程;(c)ループ反応器の1本以上のチューブ内で反応混合物を重合させて、重量%で表される転化率でイソブチレンをポリイソブチレン重合体に転化し、その際、ループ反応器の1本以上のチューブを熱媒体で冷却する工程;(d)工程(b)と(c)の再循環量、ΔP,および重合反応を制御して、ループ反応器の1本以上のチューブ内で少なくとも11フィート/秒の反応混合物の線速度を与える工程;但し、イソブチレンの転化率が55%未満である場合、工程(b)と(c)の再循環量、ΔP,重合反応を制御して、1本以上の反応チューブ内で少なくとも13.5フィート/秒の反応混合物の線速度を与え、さらに、少なくとも30:1の再循環量と供給量との再循環比を与える、工程;および(e)ループ反応器からポリイソブチレン重合体を取出す工程。
【0106】
本発明のどの具体的態様においても、上記方法は、1〜10分の滞留時間で連続して実施してよく、通常は2〜8分の滞留時間で連続して実施してよく、好ましくは3〜6分の滞留時間で連続して実施してよいことが多い。
【0107】
以上、本発明を詳細に説明したが、発明の精神及び範囲内での変更は当業者には容易に明らかであろう。上記の論述、当業界における関連知識、および発明の背景および詳細な説明に関連して上に論じた引用文献―それらの開示は参考のため本明細書中に引用して援用した―に鑑みると、いっそうの説明は不要とみなされる。さらに、本発明の諸側面および各種態様の様々な部分は全体的または部分的に組合わせ又は入れ替え可能であることを理解すべきである。また、以上の記載は例示のためだけに示してあり、発明を限定するものではないことを当業者であれば理解するであろう。