特許第6126618号(P6126618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126618後方障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126618
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】後方障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   A24B15/16
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-541632(P2014-541632)
(86)(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公表番号】特表2014-533117(P2014-533117A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】EP2012072557
(87)【国際公開番号】WO2013072336
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】11250893.2
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツ シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】デグモワ イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァンシー フレデリク
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05105831(US,A)
【文献】 特表平04−501523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反対側にある前面及び後面を有し、前記前面から前記後面に延びる少なくとも1つの空気流チャネル(16)を有する可燃性熱源(4)と、
前記可燃性熱源(4)の下流にあり、少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含むエアロゾル形成基材(6)と、
を備え、
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティング(14)が、実質的に前記可燃性熱源(4)の前記後面全体の上に設けられ、ガスが前記少なくとも1つの空気流チャネル(16)を通して吸引されるのを可能にし、
前記非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、50モルパーセント未満の元素金属又は合金含有量を有することを特徴とする喫煙物品(2)。
【請求項2】
前記第1の障壁コーティング(14)は、少なくとも約10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の喫煙物品(2)。
【請求項3】
前記第1の障壁コーティング(14)は、実質的に空気に対して不透過性である、請求項2に記載の喫煙物品(2)。
【請求項4】
前記第1の障壁コーティングは、粘土、ガラス、又はアルミナを含む、請求項1から3の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項5】
前記可燃性熱源(4)は、炭素質熱源である、請求項1から4の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項6】
前記可燃性熱源(4)は着火助剤を含む、請求項1から5の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項7】
前記着火助剤は酸化剤である、請求項6に記載の喫煙物品(2)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの空気流チャネル(16)の内面上に、耐ガス性、耐熱性の第2の障壁コーティングを設けることを特徴とする、請求項1から7の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項9】
前記第2の障壁コーティングは、実質的に空気に対して不透過性である、請求項に記載の喫煙物品(2)。
【請求項10】
前記エアロゾル形成基材(6)は、均質化されたタバコ由来の材料を含む、請求項1から9の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項11】
前記可燃性熱源(4)の後方部分(4b)及び隣接する前記エアロゾル形成基材(6)の前方部分(6a)の周りで接触状態の熱伝導素子(22)をさらに含む、請求項1から10の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項12】
前記エアロゾル形成基材(6)の下流に膨張チャンバ(8)をさらに含む、請求項1から11の何れかに記載の喫煙物品(2)。
【請求項13】
前記膨張チャンバ(8)の下流に吸口(10)をさらに含む、請求項12に記載の喫煙物品(2)。
【請求項14】
請求項1から13の何れかに記載の喫煙物品(2)で用いる、反対側にある前面及び後面を有する可燃性熱源(4)であって、
前記可燃性熱源(4)の前記前面から前記後面に延びる少なくとも1つの空気流チャネル(16)と、
ガスが前記少なくとも1つの空気流チャネル(16)を通して吸引できるようにする、実質的に前記可燃性熱源(4)の前記後面全体の上の非金属、不燃性、耐ガス性の障壁コーティング(14)と、
を備え、
前記非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、50モルパーセント未満の元素金属又は合金含有量を有する可燃性熱源(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性熱源と、該可燃性熱源の下流にある少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含むエアロゾル形成基材とを含む喫煙物品、このような喫煙物品で用いるための可燃性熱源、及び喫煙物品中の可燃性熱源の燃焼中に特定の有害な煙成分の形成を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野では、タバコを燃焼させるのではなくて加熱する多くの喫煙物品が提案されている。このような喫煙物品の狙いは、従来のシガレットにおいてタバコの燃焼及び熱分解劣化によって発生する公知の有害な煙成分を減少させることである。一般にこのような喫煙物品において、可燃性燃料要素又は熱源からエアロゾル形成基材への熱伝達によってエアロゾルが発生し、エアロゾル形成基材は、燃料要素の内部、周囲、又は下流に配置することができる。喫煙中に、揮発性化合物は、燃料要素からの熱伝達によってエアロゾル形成基材から放出され、喫煙物品を通じて吸引された空気中に取り込まれる。放出された化合物が冷えると、これらは凝結して消費者が吸入するエアロゾルを形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開特許第2009/022232号
【特許文献2】米国特許第5,040,551号
【特許文献3】米国特許第4,714,082号
【特許文献4】欧州公開特許第0 337 507号
【特許文献5】欧州公開特許第0 337 508号
【特許文献6】米国特許第5,156,170号
【特許文献7】国際公開特許第2009/074870号
【特許文献8】国際公開特許第2009/022232号
【特許文献9】国際公開特許第2009/074870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、国際公開特許第2009/022232号は、可燃性熱源、可燃性熱源の下流のエアロゾル形成基材、及び可燃性熱源の後方部分及び隣接するエアロゾル形成基材の前方部分の周りで接触状態にある熱伝導素子を含む喫煙物品を開示する。国際公開特許第2009/022232号の喫煙物品において、エアロゾル形成基材の表面は、可燃性熱源と直接接触している。
【0005】
従来から、熱源の燃焼中に生成される一酸化炭素を二酸化炭素に変換するために熱源に触媒を用いることよって、加熱可能な喫煙物品のための炭素質熱源の燃焼中に生成される一酸化炭素の量を減少させようとするいくつかの試みがなされている。米国特許第5,040,551号のような他の先行技術には、炭素質燃料要素の燃焼で生成される一酸化炭素の量を、炭素質燃料の燃焼温度では実質的に不燃性の固体粒子状物質の薄い微細孔層でもって炭素質燃料要素の暴露面の一部又は全てをコーティングすることによって減少させる方法が開示される。米国特許第5,040,551号によれば、微細孔層は、炭素質燃料の燃焼を過度に妨げないように十分に薄く、空気に対して透過性である必要がある。国際公開特許第2009/022232号の喫煙物品と同様に、米国特許第5,040,551号のエアロゾル形成基材の表面は、可燃性熱源と直接接触している。
【0006】
エアロゾル形成を容易にするために、公知の加熱可能な喫煙物品のエアロゾル形成基材は、一般に、グリセリン又は他の公知のエアロゾル形成剤のような多価アルコールを含む。貯蔵及び喫煙中に、エアロゾル形成剤は、公知の加熱可能な喫煙物品のエアロゾル形成基材からその可燃性熱源に移動する可能性がある。このエアロゾル形成剤の移動は、不都合なほどに、特に加熱可能な喫煙物品の喫煙中にこれらの分解につながる可能性がある。加熱可能な喫煙物品のエアロゾル形成基材からその可燃性熱源へのエアロゾル形成剤の移動を阻止するために、従来、いくつかの試みがなされている(例えば、米国特許第4,714,082号、欧州公開特許第0 337 507号、欧州公開特許第0 337 508号、及び米国特許第5,156,170号を参照)。一般に、このような試みは、エアロゾル形成基材を金属ケージのような不燃性カプセルに包んで貯蔵及び使用中にエアロゾル形成基材から可燃性熱源へのエアロゾル形成剤の移動を低減した喫煙物品をもたらすが、依然として貯蔵及び使用中に可燃性熱源がエアロゾル形成基材からのエアロゾル形成剤と直接接触する喫煙物品がもたらされる。このような先行技術の設計では、不都合なことに、可燃性熱源から発生する分解及び燃焼ガスを直接主流エアロゾルに吸引することが可能であり、公知の機械及び方法を使用して喫煙物品を生産することが難しく、適切な温度を達成して消費者による最初の数回の吸煙中に満足できるエアロゾルを提供する喫煙物品の能力を妨げる場合がある。
【0007】
可燃性熱源と、公知の製造機器を用いて作ることができる少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含むエアロゾル形成基材とを含む、改良された加熱可能な喫煙物品に対するニーズがある。また、可燃性熱源と、エアロゾル形成基材から可燃性熱源への少なくとも1つのエアロゾル形成剤の移動を実質的に阻止又は抑制した少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含むエアロゾル形成基材とを含む、改良された加熱可能な喫煙物品に対するニーズがある。さらに、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びフェノール樹脂などのカルボニル化合物のような加熱可能な喫煙物品の主流エアロゾル中の有害な煙成分のレベルを低下させるニーズが依然としてある。
【0008】
本発明により、反対側にある前面及び後面を有し、この前面から後面に延びる少なくとも1つの空気流チャネルを有する可燃性熱源と、可燃性熱源の下流にあり少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含むエアロゾル形成基材とを含む喫煙物品が提供される。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、実質的に可燃性熱源の後面全体に設けられ、これによりガスを少なくとも1つの空気流チャネルを通って吸引することができる。
【0009】
第1の障壁コーティングの厚さは少なくとも約10ミクロンである、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0010】
第1の障壁コーティングは実質的に空気に対して不透過性である、本発明による喫煙物品がさらに提供される
【0011】
第1の障壁コーティングは粘土、ガラス、又はアルミナを含む、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0012】
可燃性熱源は炭素質熱源である、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0013】
可燃性熱源は着火助剤を含む、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0014】
着火助剤は酸化剤である、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0015】
少なくとも1つの空気流チャネルの内面に耐ガス性、耐熱性の第2の障壁コーティングを設けた、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0016】
第2の障壁コーティングは実質的に空気に対して不透過性である、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0017】
エアロゾル形成基材は均質化されたタバコ由来の材料を含む、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0018】
可燃性熱源の後方部分及び隣接するエアロゾル形成基材の前方部分の周りで接触状態の熱伝導素子をさらに含む、本発明による喫煙物品がさらに提供さる。
【0019】
エアロゾル形成基材の下流に膨張チャンバをさらに含む、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0020】
膨張チャンバの下流に吸口をさらに含む、本発明による喫煙物品がさらに提供される。
【0021】
本発明による喫煙物品で用いる、反対側にある前面及び後面を有する可燃性熱源が提供され、実質的に可燃性熱源の後面全体は、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する。
【0022】
喫煙物品中の可燃性熱源の燃焼中に生成される一酸化炭素の量を低下させるための、本発明による喫煙物品が提供される。
【0023】
喫煙物品中の可燃性熱源の燃焼中に生成される一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びフェノール樹脂などの特定の有害な煙成分の量を低下させるための、本発明による喫煙物品が提供される。
【0024】
喫煙物品中の可燃性熱源の燃焼中に生成される一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びフェノール樹脂などの特定の有害な煙成分の量を低下させるための、本発明による可燃性熱源が提供される。
【0025】
本発明による喫煙物品を形成するステップを含む喫煙物品中の可燃性熱源の燃焼中に主流エアロゾルにおいて生成される、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フェノール樹脂及びこれらの混合物から成るグループから選択されたガスの形成を低下させる、本発明による方法が提供される。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「上流」及び「前方」並びに「下流」及び「後方」は、その使用中に可燃性熱源及び喫煙物品を通って吸引される空気の方向に対して、本発明による可燃性熱源及び喫煙物品の構成要素又は構成要素の一部の相対的な位置を説明するために使用される。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「コーティング」は、熱源をカバーしてこれに接着される材料層を説明するために使用される。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「非金属」は、主として元素金属又は合金から形成されない障壁コーティング、すなわち50モルパーセント未満の元素金属又は合金含有量の障壁コーティングを説明するために使用される。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「不燃性」は、燃焼中の可燃性熱源又はその着火によって得られる温度で実質的に不燃性である障壁コーティングを説明するために使用される。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「耐ガス性」は、少なくとも実質的にガスに対して不透過性の障壁コーティングを説明するために使用される。好ましくは、第1の障壁コーティングは、少なくとも実質的に空気に対して不透過性である。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル形成基材」は、加熱するとエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出できる担体を説明するために使用される。
【0032】
実質的に可燃性熱源の後面全体に非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けると、本発明による喫煙物品の貯蔵及び使用中に、エアロゾル形成基材から可燃性熱源への少なくとも1つのエアロゾル形成剤の移動を好都合に阻止又は抑制する。従って、本発明による喫煙物品の使用中の少なくとも1つのエアロゾル形成剤の分解を好都合に回避又は低減する。
【0033】
また、実質的に可燃性熱源の後面全体に非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けると、本発明による喫煙物品の貯蔵及び使用中に、エアロゾル形成基材から可燃性熱源へのエアロゾル形成基材の他の揮発性化合物の移動を好都合に制限又は阻止することができる。
【0034】
また、可燃性熱源の後面に設けられた非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、使用中に喫煙物品を通って吸引される流入空気から、可燃性熱源の着火及び燃焼中に形成された燃焼生成物及び分解生成物を好都合に阻止又は抑制する。以下に詳細に説明するように、このことは、可燃性熱源が、可燃性熱源又はそれを組み合わせたものの着火又は燃焼を助ける1つ又はそれ以上の添加剤を含む場合に特に好都合である。
【0035】
また、可燃性熱源の後面に設けられた非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、エアロゾル形成基材が可燃性熱源の着火又は燃焼中に暴露される温度を好都合に制限するので、喫煙物品の使用中にエアロゾル形成基材の熱劣化又は燃焼を回避するのに役立つ。以下に詳細に説明するように、このことは、可燃性熱源が、可燃性熱源の着火を助ける1つ又はそれ以上の添加剤を含む場合に特に好都合である。
【0036】
喫煙物品の所望の特性及び性能に応じて、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、低い又は高い熱伝導率を有することができる。好ましい実施形態の1つの例では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、改良された非定常平面熱源(MTPS)法を用いて測定した場合に、23℃及び50%の相対湿度において約0.1ワットパーメートルケルビン(W/(m・K))から約200ワットパーメートルケルビン(W/(m・K))のバルク熱伝導率を有する材料から形成することができる。好ましい実施形態の別の例では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、改良された非定常平面熱源(MTPS)法を用いて測定した場合に、23℃及び50%の相対湿度において約0.05ワットパーメートルケルビン(W/(m・K))から約50ワットパーメートルケルビン(W/(m・K))のバルク熱伝導率を有する材料から形成することができる。
【0037】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングの厚さを適切に調節して、喫煙物品から有害な揮発性化合物の発生及び取り込みの一方又は両方を回避又は最小にしながら良好な喫煙性能を達成することができる。好ましい実施形態の1つの例では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、約10ミクロンから約500ミクロンの厚さを有することができる。
【0038】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、着火及び燃焼中に可燃性熱源から得られる温度において実質的に熱的に安定で不燃性の1つ又はそれ以上の好適な材料から形成することができる。好適な材料は、本技術分野では公知であり、限定されるものではないが、粘土(例えば、ベントナイト及びカオリナイトなど)、ガラス及び他の鉱物、セラミック材料、又はこれらの組み合わせを含む。
【0039】
不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを形成することができる好ましいコーティング材料は、粘土及びガラスを含む。より好ましくは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、アルミナ(Al23)、樹脂、及び鉱物グルーから形成することができる。本発明の1つの好ましい実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、ベントナイト及びカオリナイトの50/50混合物を含む粘土コーティングである。本発明の別の好ましい実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングはガラスコーティング、より好ましくは焼結ガラスコーティングである。
【0040】
好ましくは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、少なくとも約10ミクロンの厚さを有する。ガスに対する粘土のわずかな透過性により、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングが粘土コーティングである実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、より好ましくは少なくとも約50ミクロン、及び最も好ましくは約50ミクロンから約350ミクロンの厚さを有する。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングが、ガスに対してより不透過性の1つ又はそれ以上の材料から形成される実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、より薄くすることができ、一般に、好ましくは約100ミクロン未満、より好ましくは約20ミクロンの厚さを有することになる。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングが、ガラスコーティングである実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、好ましくは200ミクロンを下回る厚さを有する。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングの厚さは、顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)又は本技術分野で公知の任意の他の好適な測定方法を用いて測定することができる。
【0041】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを塗布して、限定されるものではないが、噴霧コーティング、蒸着、浸漬、物質移動(例えば、ブラッシング又はグルーイング)、静電蒸着、又は任意のこれらの組み合わせを含む本技術分野で公知の任意の好適な方法によって、実質的に可燃性熱源の後面全体をカバーしてこれらに接着することができる。
【0042】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、例えば、可燃性熱源の後面の適切なサイズ及び形状で障壁を予備形成し、そのコーティングを可燃性熱源の後面に塗布して、実質的に可燃性熱源の後面全体をカバーしてこれに接着することによって作ることができる。もしくは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、そのコーティングを可燃性熱源の後面に塗布した後に形成、穿孔、又は機械加工することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、1つ又はそれ以上の好適な材料の溶液又は懸濁液を可燃性熱源の後面に塗布することによって形成される。例えば、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液中に可燃性熱源の後面を浸漬することによって、或いは溶液又は懸濁液をブラッシング又は噴霧コーティングすることによって、或いは可燃性熱源の後面上に1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の粉体又は粉体混合物を静電的に蒸着することによって、実質的に可燃性熱源の後面全体に塗布することができる。静電蒸着前に、可燃性熱源の後面を水ガラスで事前に処理するのが好ましい。より好ましくは、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを噴霧コーティングによって塗布する。
【0044】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液の単一塗布により形成することができる。或いは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液の多重塗布により形成することができる。例えば、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液の1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、又は8回の連続塗布により形成することができる。
【0045】
好ましくは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液の1から10回の塗布により形成される。
【0046】
可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上のコーティング材料の溶液又は懸濁液の塗布後、可燃性熱源を乾燥させて、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを形成することができる。
【0047】
非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングが、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上の好適なコーティング材料の溶液又は懸濁液の多重塗布により形成される場合には、可燃性熱源は、溶液又は懸濁液の連続塗布の間に乾燥させる必要がある場合がある。
【0048】
乾燥の代わりに又はこれに加えて、可燃性熱源の後面への1つ又はそれ以上のコーティング材料の溶液又は懸濁液の塗布後、可燃性熱源上の1つ又はそれ以上のコーティング材料は、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを形成するために焼結することができる。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングの焼結は、特に障壁コーティングがガラス又はセラミックコーティングである場合に好ましい。
【0049】
好ましくは、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを約500℃〜約900℃、より好ましくは約700℃の温度で焼結する。
【0050】
好ましくは、可燃性熱源は炭素質熱源である。本明細書で用いる場合、用語「炭素質」は、炭素を含む熱源を説明するために使用される。
【0051】
好ましくは、可燃性熱源は、炭素系熱源である。本明細書で用いる場合、用語「炭素系」は、主として炭素を含む熱源、すなわち乾燥重量で少なくとも50パーセントの炭素含有量を有する熱源を説明するために使用される。好ましくは、本発明による可燃性炭素系熱源は、乾燥重量で少なくとも約60パーセント、より好ましくは乾燥重量で少なくとも約70パーセント、最も好ましくは乾燥重量で少なくとも約80パーセントの炭素含有量を有する。
【0052】
本発明による可燃性炭素質熱源は、1つ又はそれ以上の好適な炭素含有材料から形成することができる。
【0053】
必要に応じて、1つ又はそれ以上の結合剤を1つ又はそれ以上の炭素含有材料と組み合わせることができる。好ましくは、1つ又はそれ以上の結合剤は有機結合剤である。好適な公知の有機結合剤は、限定されるものではないが、ガム(例えば、グアーガム)、改質セルロース及びセルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)粉末、澱粉、糖、植物性油、及びこれらの組み合わせを含む。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態では、可燃性熱源は、炭素粉体、改質セルロース、粉末及び糖の混合物から形成される。
【0055】
1つ又はそれ以上の結合剤の代わりに又はこれに加えて、本発明による可燃性熱源は、可燃性炭素質熱源の特性を改善するために1つ又はそれ以上の添加剤を含むことができる。好適な添加剤は、限定されるものではないが、可燃性熱源の固化作用を促進する添加剤(例えば、焼結助剤)、可燃性熱源の着火を促進する添加剤(例えば、過塩素酸塩、塩素酸塩、硝酸塩、過酸化物、過マンガン酸塩、及び/又はジルコニウムなどの酸化剤)、可燃性熱源の燃焼を促進する添加剤(例えば、クエン酸カリウムのようなカリウム及びカリウム塩)及び可燃性熱源の燃焼によって生成する1つ又はそれ以上のガスの分解を促進する添加剤(例えば、CuO、Fe23及びAl23などの触媒)を含む。
【0056】
このような添加剤は、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングをその後面に塗布する前又は塗布した後に可燃性熱源に組み込むことができる。
【0057】
特に好ましい実施形態では、可燃性熱源は、炭素及び少なくとも1つの着火助剤を含み、上流端面及び反対側の下流端面を有する円筒形可燃性熱源であり、上流端面と下流端面との間の円筒形可燃性熱源の少なくとも一部は、耐燃焼性ラッパーに包まれ、円筒形可燃性熱源の上流端面が着火すると、円筒形可燃性熱源の下流端面の温度が第1の温度まで上昇し、その後の円筒形可燃性熱源の燃焼中に、円筒形可燃性熱源の下流端面は、第1の温度よりも低い第2の温度を維持する。本明細書で用いる場合、用語「着火助剤」は、可燃性熱源の着火中にエネルギ及び酸素の一方又は両方を放出する材料を示すために使用され、材料によるエネルギ及び酸素の一方又は両方の放出速度は、周囲の酸素拡散に制限されない。換言すれば、可燃性熱源の着火中の材料によるエネルギ及び酸素の一方又は両方の放出速度は、概して周囲の酸素が材料に達することができる速度とは無関係である。また、本明細書で用いる場合、用語「着火助剤」は、可燃性熱源の燃焼中にエネルギを放出する元素金属を説明するために使用され、元素金属の着火温度は約500℃を下回り、元素金属の燃焼熱は少なくとも約5kJ/gである。
【0058】
本明細書で用いる場合、用語「着火助剤」は、炭素燃焼を改善すると考えられるカルボン酸のアルカリ金属塩(アルカリ金属クエン酸塩、アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ金属コハク酸塩など)、アルカリ金属ハロゲン塩(アルカリ金属塩酸塩など)、アルカリ金属カルボン酸塩又はアルカリ金属リン酸塩を含まない。
【0059】
使用時、可燃性熱源の着火中に少なくとも1つの着火助剤によってエネルギ及び酸素の一方又は両方の放出は、可燃性熱源の温度の上昇をもたらす。これは、可燃性熱源の温度の上昇に反映される。これにより、本発明による喫煙物品の使用時に喫煙物品の可燃性熱源からエアロゾル形成基材への十分な熱伝達が好都合に保証されるので、早期吸煙中に満足できるエアロゾルの生成が容易になる。
【0060】
好適な酸化剤の例は、限定されるものではないが、例えば、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、硝酸リチウム、硝酸アルミニウム及び硝酸鉄などの硝酸塩、亜硝酸塩、他の有機及び無機ニトロ化合物、例えば、塩素酸ナトリウム及び塩素酸カリウムなどの塩素酸塩、例えば、過塩素酸ナトリウムのような過塩素酸塩、亜塩素酸塩、例えば、臭素酸ナトリウム及び臭素酸カリウムなどの臭素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、例えば、ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウムなどのホウ酸塩、例えば、鉄酸バリウムのような鉄酸塩、フェライト、例えば、マンガン酸カリウムのようなマンガン酸塩、例えば、過マンガン酸カリウムのような過マンガン酸塩、例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化アセトンのような有機化酸化物、例えば、過酸化水素、過酸化ストロンチウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過酸化亜鉛及び過酸化リチウムなどの無機過酸化物、例えば、超酸化カリウム及び超酸化ナトリウムなどの超酸化物、炭酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、他のスルホキソド、リン酸塩、ホスフィン酸塩(phospinate)、亜リン酸塩、及び亜ホスフィン酸塩(phosphanite)を含む。
【0061】
好都合には、可燃性熱源の着火及び燃焼特性を改善する一方で、着火及び燃焼添加剤を含有することで、喫煙物品の使用中に、望ましくない分解及び反応生成物が生じる可能性がある。例えば、着火を助けるために可燃性熱源に含まれる硝酸塩の分解は、窒素酸化物の形成をもたらす可能性がある。可燃性熱源の後面に設けられた非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、使用中にこのような分解及び反応生成物が喫煙物品を通じて吸引された空気に入るのを好都合に阻止又は抑制する。
【0062】
さらに、着火を助ける硝酸塩又は他の添加剤のような酸化剤を含有すると、可燃性熱源の着火中に、高温ガスの発生及び可燃性熱源の高温化につながる可能性がある。高温ガスに対するヒートシンク及び障壁として作用することによって、可燃性熱源の後面上に設けられた非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、好都合に、エアロゾル形成基材が受ける温度を制限するので、可燃性熱源の着火中にエアロゾル形成基材の熱劣化又は燃焼を回避するのに役立つ。
【0063】
本発明による可燃性炭素質熱源を形成するために、1つ又はそれ以上の炭素含有材料は、好ましくは、含有される1つ又はそれ以上の結合剤及び他の添加剤と混合され、所望の形状に予備形成される。1つ又はそれ以上の炭素含有材料、1つ又はそれ以上の結合剤及び他の添加剤の混合物は、例えば、鋳込み成形、押し出し成形、射出成形、及びダイ圧密などの任意の好適な公知のセラミック形成法を用いて所望の形状に予備形成することができる。好ましくは、混合物は、押し出し成形によって所望の形状に予備形成される。
【0064】
好ましくは、1つ又はそれ以上の炭素含有材料、1つ又はそれ以上の結合剤及び他の添加剤の混合物は、細長いロッドに予備形成される。しかしながら、1つ又はそれ以上の炭素含有材料、1つ又はそれ以上の結合剤及び他の添加剤の混合物は、他の所望の形状に予備形成することができることを理解されたい。
【0065】
形成後、細長いロッド又は他の所望の形状物は、好ましくは乾燥させてその水分含有量を低減して、次に、存在する場合には、1つ又はそれ以上の結合剤を炭化するのに十分な温度の非酸化性雰囲気で熱分解して、実質的に細長いロッド又は他の形状物の何らかの揮発性物質を排除する。好ましくは、約700℃〜約900℃の温度の窒素雰囲気において、細長いロッド又は他の所望の形状物を熱分解する。
【0066】
1つの実施形態では、少なくとも1つの金属硝酸塩は、1つ又はそれ以上の炭素含有材料、1つ又はそれ以上の結合剤及び他の添加剤の混合物中に少なくとも1つの金属硝酸塩前駆体を含むことによって可燃性熱源に組み込まれる。次に、少なくとも1つの金属硝酸塩前駆体は、硝酸水溶液で熱分解予備形成の円筒形ロッド又は他の形状物を処理することによって、その後少なくとも1つの金属硝酸塩に原位置で変換される。1つの実施形態では、可燃性熱源は、約600℃未満、より好ましくは約400℃未満の熱分解温度を有する少なくとも1つの金属硝酸塩を含む。好ましくは、少なくとも1つの金属硝酸塩は、約150℃から約600℃、より好ましくは約200℃から約400℃の分解温度を有する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、従来の黄炎ライター又は他の着火手段に対いて可燃性熱源を曝すことで、少なくとも1つの金属硝酸塩が分解して酸素及びエネルギを放出するはずである。この分解は、可燃性熱源の初期の温度上昇をもたらして可燃性熱源の着火を助ける。少なくとも1つの金属硝酸塩の分解に続いて、好ましくは、可燃性熱源はより低い温度で燃焼し続ける。
【0068】
好都合には、少なくとも1つの金属硝酸塩を含有することで、着火は可燃性熱源の表面のある点だけでなく内部で引き起こされる。好ましくは、少なくとも1つの金属硝酸塩は、実質的に可燃性熱源全体に均質に分配される。好ましくは、可燃性熱源の乾燥重量で約20パーセントから約50パーセントの量の可燃性熱源中に、少なくとも1つの金属硝酸塩が存在する。
【0069】
本発明の別の実施形態では、可燃性熱源は、約600℃未満の温度、より好ましくは約400℃未満の温度で能動的に酸素を発生する少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物を含む。
【0070】
好ましくは、少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物は、約150℃から約600℃の温度、より好ましくは約200℃から約400℃の温度、最も好ましくは約350℃の温度で能動的に酸素を発生する。
【0071】
使用時、従来の黄炎ライター又は他の着火手段に対して可燃性熱源を曝すと、少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物が分解して酸素を放出するはずである。これにより、可燃性熱源の初期の温度上昇をもたらして可燃性熱源の着火を助ける。少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物の分解に続いて、好ましくは、可燃性熱源はより低い温度で燃焼し続ける。
【0072】
好都合には、少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物を含有することで、着火は、可燃性熱源の表面のある点だけでなく内部で引き起こされる。好ましくは、少なくとも1つの過酸化物又は超酸化物は、実質的に可燃性熱源全体に均質に分配される。
【0073】
可燃性熱源は、好ましくは、約20パーセントから約80パーセント、より好ましくは約20パーセントから約60パーセントの気孔率を有する。可燃性熱源が少なくとも1つの金属硝酸塩を含有する場合、これにより、好都合には、酸素は、少なくとも1つの金属硝酸塩が分解して燃焼が進行する際に燃焼を持続するのに十分な速度で、可燃性熱源の質量体中に拡散できる。より一層好ましくは、可燃性熱源は、例えば、水銀ポロシメトリ又はヘリウムピクノメトリによって測定すると、約50パーセントから約70パーセント、より好ましくは約50パーセントから約60パーセントの気孔率を有する。従来の方法及び技術を用いて本発明による可燃性熱源の生成中に所望の気孔率を容易に達成することができる。
【0074】
好都合には、本発明による可燃性炭素質熱源は、約0.6g/cm3から約1g/cm3の見掛け密度を有する。
【0075】
好ましくは、可燃性熱源は、約300mgから約500mg、より好ましくは約400mgから約450mgの質量を有する。
【0076】
好ましくは、可燃性熱源は、約7mmから約17mm、より好ましくは約11mmから約15mmの、最も好ましくは約11mmの長さを有する。
【0077】
本明細書で用いる場合、用語「長さ」は、可燃性熱源の長手方向の寸法を示す。
【0078】
好ましくは、可燃性熱源は、約5mmから約9mm、より好ましくは約7mmから約8mmの直径を有する。
【0079】
好ましくは、可燃性熱源の直径は、実質的に均一である。しかしながら、別の方法として、可燃性熱源はテーパ付けすることができ、可燃性熱源の後方部分の直径は前方部分の直径よりも大きい。特に好ましくは、実質的に円筒形の可燃性熱源である。可燃性熱源は、例えば、実質的に円形断面の円筒体又はテーパ付けされた円筒体、或いは実質的に楕円形断面の円筒体又はテーパ付けされた円筒体とすることができる。
【0080】
可燃性熱源は、好ましくは、可燃性熱源の内側部分を貫通して可燃性熱源の全長に沿って延びる少なくとも1つの空気流チャネルを含む。代替的に又は追加的に、可燃性熱源は、可燃性熱源の外周に沿って延びる少なくとも1つの空気流チャネルを含むことができる。本発明の1つの好ましい実施形態による可燃性熱源は、1つ、2つ、又は3つの空気流チャネルを含む。最も好ましくは、単一の空気流チャネルは、本発明による可燃性熱源を貫通して設けられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可燃性熱源は、単一の実質的に中心の又は軸方向の空気流チャネルを含む。単一空気流チャネルの直径は、好ましくは約1.5mmから約3mmである。実質的に可燃性熱源の後面全体をカバーする非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、喫煙物品の上流端面から可燃性熱源の空気流チャネルの少なくとも1つを通じてガスを吸引することを可能にする。
【0081】
可燃性熱源の少なくとも1つの空気流チャネルの内面は、部分的に又は全体的に第2の障壁コーティングでコーティングすることができる。好ましくは、第2の障壁コーティングは、実質的に可燃性熱源の空気流チャネルの内面全体をカバーする。
【0082】
好ましくは、第2の障壁コーティングは、耐ガス性の固体粒子状物質の層を含む。より好ましくは、第2の障壁コーティングは、少なくとも実質的に空気に対して不透過性である。好都合には、耐ガス性の第2の障壁コーティングは、低熱伝導性である。
【0083】
第2の障壁コーティングは、着火及び燃焼中に可燃性熱源によって得られる温度において、実質的に熱的に安定で不燃性の1つ又はそれ以上の好適な材料から形成することができる。好適な材料は、本技術分野で公知であり、限定されるものではないが、例えば、粘土、酸化鉄、アルミナ、チタン、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア及びセリアなどの金属酸化物、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、及び他のセラミック材料、又はこれらの組み合わせを含む。第2の障壁コーティングを形成することができる好ましいコーティング材料は、粘土、ガラス、アルミニウム、酸化鉄、及びこれらの組み合わせを含む。必要に応じて、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を促進する成分のような触媒成分は、第2の障壁コーティングに組み込むことができる。好適な触媒成分は、限定されるものではないが、例えば、プラチナ、パラジウム、遷移金属、及びこれらの酸化物を含む。
【0084】
第2の障壁コーティングは、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングと同じ又は異なる1つの材料又は複数の材料から形成することができる。
【0085】
好ましくは、第2の障壁コーティングは、約30ミクロンから約200ミクロン、より好ましくは約30ミクロンから約100ミクロンの厚さを有する。
【0086】
米国特許第5,040,551号で説明した方法のような任意の好適な方法によって、可燃性熱源の少なくとも1つの空気流チャネルの内面に、第2の障壁コーティングを塗布することができる。例えば、各空気流チャネルの内面には、第2の障壁コーティングの溶液又は懸濁液を噴霧、湿潤、又は塗ることができる。もしくは、1つ又はそれ以上の空気流チャネルの中にライナの挿入によって、第2の障壁コーティングを設けることができる。例えば、各空気流チャネルの中に耐ガス性中空管を挿入することができる。
【0087】
好ましい実施形態では、国際公開特許第2009/074870号で説明する工程によって、可燃性熱源の押し出し成形時に第2の障壁コーティングを可燃性熱源の少なくとも1つの空気流チャネルの内面に塗布する。
【0088】
随意的に、可燃性熱源は、可燃性熱源の周囲の一部又は全てに沿って延びる、1つ又はそれ以上、好ましくは最大6つの長手方向溝を含むことができる。必要に応じて、可燃性熱源は、少なくとも1つの空気流チャネル及び1つ又はそれ以上の長手方向溝を含むことができる。
【0089】
反対側にある前面及び後面を備え、実質的に後面全体に設けられた非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する本発明による可燃性熱源は、国際公開特許第2009/022232号に開示される種類の喫煙物品で用いるのに特に好適である。しかしながら、本発明による可燃性熱源は、異なる構造及び構成を有する喫煙物品で用いることができることも理解されたい。
【0090】
好ましくは、可燃性熱源及びエアロゾル形成基材は相互に当接する。
【0091】
好ましくは、本発明による喫煙物品は、可燃性熱源の後方部分及び隣接するエアロゾル形成基材の前方部分の周りで接触状態にある熱伝導素子をさらに含む。熱伝導素子は、好ましくは耐燃焼性であり酸素を制限する。
【0092】
本発明で用いるのに好適な熱伝導素子は、限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔ラッパー、鋼ラッパー、鉄箔ラッパー及び銅箔ラッパー並びに金属合金箔ラッパーなどの金属箔ラッパーを含む。
【0093】
好ましくは、熱伝導素子によって取り囲まれた可燃性熱源の後方部分は、長さが約2mmから約8mm、より好ましくは長さが約3mm〜約5mmである。
【0094】
好ましくは、熱伝導素子によって取り囲まれていない可燃性熱源の前方部分は、長さが約5mmから約15mm、より好ましくは長さが約6mmから約8mmである。
【0095】
好ましくは、エアロゾル形成基材は、熱伝導素子の下流側に少なくとも約3mm延びる。
【0096】
好ましくは、エアロゾル形成基材は、約5mmから約20mm、より好ましくは約8mmから約12mmの長さを有する。好ましくは、熱伝導素子によって取り囲まれたエアロゾル形成基材の前方部分は、長さが約2mmから約10mm、より好ましくは長さが約3mmから約8mm、最も好ましくは長さが約4mmから約6mmである。好ましくは、熱伝導素子によって取り囲まれていないエアロゾル形成基材の後方部分は、長さが約3mmから約10mmである。換言すれば、エアロゾル形成基材は、好ましくは、熱伝導素子の下流側に約3mmから約10mm延びる。より好ましくは、エアロゾル形成基材は、熱伝導素子の下流側に少なくとも約4mm延びる。
【0097】
好ましくは、本発明による喫煙物品のエアロゾル形成基材は、少なくとも1つのエアロゾル形成剤と、加熱に反応して揮発性化合物を放出することができる材料とを備える。本発明による喫煙物品のエアロゾル形成基材から生成されるエアロゾルは、目に見える場合又は目に見えない場合があり、蒸気(例えば、通常は室温で液体又は固体である、気体状態にある物質の微粒子)並びに凝縮蒸気の気体及び液滴を含むことができる。
【0098】
使用時、少なくとも1つのエアロゾル形成剤は、高濃度で安定したエアロゾルの形成を容易にし、喫煙物品の動作温度で熱劣化に対して実質的に抵抗性がある任意の好適な公知の化合物又は化合物の混合物とすることができる。好適なエアロゾル形成剤は本技術分野では公知であり、例えば、多価アルコール、グリセロールモノ−、ジ−又はトリアセテートのような多価アルコールのエステル、並びにジメチルドデカンジオアート及びジメチルテトラデカンジオアートなどのモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の脂肪族エステルを含む。本発明による喫煙物品で用いるのに好ましいエアロゾル形成剤は、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、最も好ましくはグリセリンなどの多価アルコール又はこれらの混合物である。
【0099】
好ましくは、加熱に反応して揮発性化合物を放出することができる材料は、植物由来の材料チャージ、より好ましくは均質化植物由来の材料チャージである。例えば、エアロゾル形成基材は、限定されるものではないが、タバコ、例えば緑茶のような茶、ペパーミント、月桂樹、ユーカリ、バジル、セージ、バーベナ、及びタラゴンを含む植物から導出された1つ又はそれ以上の材料を含むことができる。植物由来の材料は、限定されるものではないが、保湿剤、香味料、結合剤、及びこれらの混合物を含む添加剤を含むことができる。好ましくは、植物由来の材料は、本質的にタバコ材料、最も好ましくは均質化タバコ材料で構成される。
【0100】
本発明による喫煙物品は、好ましくは、エアロゾル形成基材の下流に膨張チャンバをさらに含む。好都合には、膨張チャンバを含むことで、可燃性熱源からエアロゾル形成基材への熱伝達によって生成されるエアロゾルのさらなる冷却が可能になる。好都合には、膨張チャンバにより、本発明による喫煙物品の全長を所望の値、例えば、膨張チャンバの長さの適切な選択により従来のシガレットの長さに類似する長さに調節できる。好ましくは、膨張チャンバは、細長い中空管である。
【0101】
また、本発明による喫煙物品は、エアロゾル形成基材の下流に、膨張チャンバが存在する場合にはその下流に吸口を含むことができる。吸口は、例えば、酢酸セルロース、紙、又は他の好適な公知の濾過材で作られたフィルタを含むことができる。好ましくは、吸口は、低濾過効率、より好ましくは非常に低濾過効率のものである。代替的に又は追加的に、吸口は、吸収剤、吸着剤、香味料、及び他のエアロゾル修飾剤及び従来のシガレットに対してフィルタで用いる添加剤、又はこれらの組み合わせを含む1つ又はそれ以上のセグメントを含むことができる。
【0102】
本発明による喫煙物品は、公知の方法及び機械を用いて組み立てることができる。
【0103】
本発明は、添付図面を参照して以下に例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】本発明の好ましい実施形態による、喫煙物品の概略長手方向断面を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態による、可燃性熱源の燃焼中の喫煙物品のエアロゾル形成基材の温度のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
図1に示す喫煙物品2は、本発明による当接した状態で同軸上に整列した可燃性炭素質熱源4、エアロゾル形成基材6、細長い膨張チャンバ8、及び吸口10を備える。可燃性炭素質熱源4、エアロゾル形成基材6、細長い膨張チャンバ8、及び吸口10は、空気透過性の低いシガレット紙12の外側ラッパーで包装される。
【0106】
図1に示すように、可燃性炭素質熱源4の実質的に後面全体の上に、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティング14が設けられている。
【0107】
可燃性炭素質熱源4は、可燃性炭素質熱源4及び非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティング14を長手方向に貫通して延びる中心空気流チャネル16を含む。中心空気流チャネル16の内面上には、耐ガス性、耐熱性の第2の障壁コーティング(図示せず)設けられている。
【0108】
エアロゾル形成基材6は、可燃性炭素質熱源4の直下流に位置し、エアロゾル形成剤としてグリセリンを含み、フィルタプラグラップ20によって囲まれたタバコ材料18の円筒形プラグを含む。
【0109】
アルミニウム箔の管体で構成される熱伝導素子22は、可燃性炭素質熱源4の後方部分4b及び当接するエアロゾル形成基材6の前方部分6aを取り囲み、これらと接触状態にある。図1に示すように、エアロゾル形成基材6の後方部分は、熱伝導素子22によって取り囲まれていない。
【0110】
細長い膨張チャンバ8は、エアロゾル形成基材6の下流に位置し、ボール紙24の円筒形開口管を備える。喫煙物品2の吸口10は、膨張チャンバ8の下流に位置し、フィルタプラグラップ28によって囲まれた濾過効率が非常に低い酢酸セルローストウ26の円筒形プラグを備える。吸口10は、チップペーパー(図示せず)によって囲むことができる。
【0111】
使用時、消費者は、可燃性炭素質熱源4に着火し、次に中心空気流チャネル16を通じて吸口10に向かって下流側に空気を吸引する。エアロゾル形成基材6の前方部分6aは、当接する可燃性炭素質熱源4の非燃焼後方部分4b及び熱伝導素子22を介して主として熱伝導によって加熱される。吸引された空気は、可燃性炭素質熱源4の中心空気流チャネル16を通過する際に加熱され、その後、対流によってエアロゾル形成基材6を加熱する。エアロゾル形成基材6の加熱により、エアロゾル形成基材18は揮発性及び半揮発性化合物及びグリセリンを放出し、これらはエアロゾル形成基材18を通過する際に加熱された吸引空気に取り込まれる。加熱された空気及び取り込まれた化合物は、膨張チャンバ8の下流を通過し、冷却されて凝縮して、吸口10を通過して消費者の口に入る(およそ周囲温度で)エアロゾルを形成する。
【0112】
喫煙物品2を組み立てるために、矩形の熱伝導素子22をシガレット紙12に接着する。可燃性炭素質熱源4、エアロゾル形成基材6のプラグ、及び膨張チャンバ8は、適切に整列されて、付着された熱伝導素子22と一緒にシガレット紙12上に位置決めされる。付着された熱伝導素子22を有するシガレット紙12は、可燃性炭素質熱源4の後方部分4b、エアロゾル形成基材6、及び膨張チャンバ8に巻き付けて接着する。吸口10は、公知のフィルタ組み合わせ技術を用いて膨張チャンバの開放端に取り付けられる。
【0113】
表1に示す寸法を有する図1に示す本発明の好ましい実施形態による喫煙物品は、以下の実施例1から6に従って生成された可燃性炭素質熱源を用いて組み立てた。
【実施例1】
【0114】
可燃性熱源の前処理
本発明による可燃性の円筒形炭素質熱源は、国際公開特許第2009/074870号又は当業者に公知の任意の他の先行技術で説明されるように前処理することができる。国際公開特許第2009/074870号で説明するような水性スラリは、好ましくは、円形断面の中心ダイオリフィスを有するダイを通じて押し出されて、可燃性熱源を作るようになっている。好ましくは、ダイオリフィスは、好ましくは約20cmから約22cmの長さ及び約9.1cmから約9.2mmの直径を有する円筒形ロッドを形成するように8.7mmの直径を有する。単一の長手方向空気流チャネルは、ダイオリフィスの中心に装着されたマンドレルによって円筒形ロッド内に形成することができる。マンドレルは、好ましくは、約2mm又は約3.5mmの外径の円形断面を有する。もしくは、3つの空気流チャネルは、ダイオリフィス内に直角で取り付けられた外径約2mmの円形断面の3つのマンドレルを用いて円筒形ロッド内に形成することができる。円筒形ロッドの押し出し時に、1つのマンドレル又は複数のマンドレルの中心を貫通して延びる供給通路を通して粘土系コーティングスラリ(自然緑色粘土のような粘土を用いて作る)を圧送して、1つの空気流チャネル又は複数のチャネルの内面上に約150ミクロンから約300ミクロンの薄い第2の障壁コーティングを形成することができる。約12時間から約72時間の間、約40%から約50%の相対湿度で約20℃から約25℃の温度で、円筒形ロッドを乾燥させて、次に、約240分の間、約750℃の窒素雰囲気内で熱分解することができる。熱分解後、研磨装置を用いて円筒形ロッドを所定の直径に切断及び成形して、個々の可燃性炭素質熱源を形成することができる。切断及び成形後のロッドは、好ましくは、約11mmの長さ、約7.8mmの直径、及び約400mgの乾燥質量を有する。その後、個々の可燃性炭素質熱源は、約1時間の間、約130℃で乾燥させる。
【0115】
表1
【実施例2】
【0116】
ベントナイト/カオリナイトを有する可燃性熱源のコーティング
浸漬、ブラッシング、又は噴霧コーティングによって実施例1で説明したように前処理した可燃性炭素質熱源の後面上に、ベントナイト/カオリナイトの非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けることができる。浸漬は、濃縮されたベントナイト/カオリナイト溶液の中への可燃性炭素質熱源の後面の挿入を含む。好ましくは、浸漬のためのベントナイト/カオリナイト溶液は、3.8%のベントナイト、12.5%のカオリナイト、及び83.7%のH2O[m/m]を含有する。可燃性炭素質熱源の後面は、約1秒間ベントナイト/カオリナイト溶液に浸漬するのが好ましく、メニスカスは可燃性炭素質熱源の後面の表面での炭素細孔の中への溶液の浸透の結果として消える。ブラッシングは、ブラシを濃縮されたベントナイト/カオリナイト溶液中へ浸漬すること、及びブラシ上の濃縮されたベントナイト/カオリナイト溶液を可燃性炭素質熱源の後面の表面が覆われるまで塗布することを含む。ブラッシングのためのベントナイト/カオリナイト溶液は、好ましくは3.8%のベントナイト、12.5%のカオリナイト、及び83.7%のH2O[m/m]を含有する。
【0117】
浸漬又はブラッシングによる非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングの塗布後、可燃性炭素質熱源は約30分間約130℃のオーブン内で乾燥させて、1晩約5%相対湿度の下で一晩乾燥器内に置いておく。
【0118】
噴霧コーティングは、好ましくは3.6%のベントナイト、18.0%のカオリナイト、及び78.4%のH2O[m/m]を含有し、レオメータ(Physica MCR 300の同軸円筒体構成)で測定した場合に約100s-1の剪断速度で約50mPa・sの粘度を有する懸濁溶液を含む。約10mm/s〜約100m/sの速度でSMC E−MY2B線形アクチュエータ上で0.5mm、0.8mm、又は1mmの噴霧ノズルを用いてSata MiniJet 3000噴霧ガンで、噴霧コーティングを行なうことができる。以下の噴霧パラメータ:距離サンプルピストル15cm、サンプル粘度10mm/s、噴霧ノズル0.5mm、噴霧ジェットフラット及び噴霧圧2.5バールを使用することができる。単一の噴霧コーティングの場合には、約11ミクロンのコーティング厚さが一般に得られる。噴霧は、3回繰り返すことが好ましい。各噴霧コーティングの間に、可燃性炭素質熱源を約10分間室温で乾燥させる。非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングの塗布後、約1時間の間、約700℃で可燃性炭素質熱源を熱分解することが好ましい。
【実施例3】
【0119】
焼結ガラスによる可燃性熱源のコーティング
実施例1で説明したように噴霧コーティングによって前処理した可燃性炭素質熱源の後面上に、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けることができる。微粒子を用いた粉末ガラスの懸濁液で、ガラスによる噴霧コーティングを行なうことができる。例えば、37.5%のガラス粉体(3μm)、2.5%メチルセルロース、及び120mPa・sの粘度を有する60%の水、又は37.5%のガラス粉体(3μm)、3.0%ベントナイト粉体、及び60〜100mPa・sの粘度を有する59.5%の水のどちらかを含有する噴霧コーティング懸濁液を使用することができる。表2のガラス1、2、3及び4に対応する組成及び物理的特性を有するガラス粉体を使用することができる。
【0120】
約10mm/sから約100mm/sの速度でSMC E−MY2B線形アクチュエータ上の0.5mm、0.8mm、又は1mmの噴霧ノズルを用いてSata MiniJet 3000噴霧ガンで、噴霧コーティングを行なうことができる。噴霧は、数回繰り返すのが好ましい。噴霧を終了した後、約1時間の間、約700℃で可燃性炭素質熱源を熱分解することが好ましい。
【0121】
表2
重量パーセントのガラスの組成、遷移温度Tg、熱膨張の係数A20~300及び組成から計算したKI値
【実施例4】
【0122】
煙化合物を測定するための方法
喫煙するための条件
喫煙するための条件及び喫煙機械の規格は、ISO Standard 3308(ISO 3308:2000)に提示されている。調整及び試験するための雰囲気は、ISO Standard 3402に提示されている。ケンブリッジフィルタパッドを用いて、フェノールを閉じ込める。ホルムアルデヒド、アクロレイン、アセトアルデヒド、及びプロピオンアルデヒドを含むエアロゾル中のカルボニルの定量的決定は、UPLC−MSMSによって行なわれる。LC蛍光分析によって、カテーテル、ヒドロキノン、及びフェノールなどのフェノール樹脂の定量的測定を行なう。ISO Standard 8454(ISO 8454:2007)に提示されるように、煙中の一酸化炭素を、ガスサンプリングバッグを用いて閉じ込め非分散型赤外分析器を用いて測定する。
【0123】
喫煙様式
カナダ保健省喫煙レジメの下で試験したシガレットを、55mlの吸煙容積、2秒の吸煙持続時間、及び30秒の吸煙間隔によって12パフだけ喫煙する。強い喫煙様式の下で試験したシガレットを、80mlの吸煙容積、3.5秒の吸煙持続時間、及び23秒の吸煙間隔によって20パフだけ喫煙する。
【実施例5】
【0124】
高温保護及びバックコーティングによる一酸化炭素の還元
全長70mmの図1に示す本発明の好ましい実施形態による喫煙物品を手作りした。喫煙物品は、本質的に国際公開特許第2009/074870号及び実施例1で説明したように作られた、1.85mmの外径を有する単一の長手方向空気流チャネルを有する可燃性の円筒形炭素質熱源と、粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングとを備える。喫煙物品のエアロゾル形成基材は、長さが約10mmであり、黄色種タバコを約60重量%、オリエント種タバコを約10重量%、日干乾燥タバコを約20重量%含んでいた。喫煙物品の熱伝導素子は、長さが9mmであり、そのうちの4mmが可燃性熱源の後方部分を覆い、5mmが隣接するエアロゾル形成基材の前方部分を覆った。前述の説明で言及した以外はこの実施例において、喫煙物品の特性は、前記の表1に記載した特性と合致した。また、同じ構成であるが非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない喫煙物品を比較のために手作りした。
【0125】
粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品、及び非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない可燃性熱源を含む喫煙物品の可燃性熱源の着火時に、エアロゾル形成基材の温度を測定した。温度を測定するために、国際公開特許第2009/022232号で開示されるように、熱電対を喫煙物品のエアロゾル形成基材の中に挿入した。結果は表2に要約され、可燃性熱源の着火の最初の数秒中に、エアロゾル形成基材中の温度は、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない可燃性熱源を含む喫煙物品(図2に実線で示す)と比較すると、粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品(図2に点線で示す)では相当低かった。また、カナダ保健省喫煙レジメの下で、喫煙物品の全一酸化炭素送出を測定した。粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない可燃性熱源を含む喫煙物品に関する測定された全一酸化炭素送達は、1.47μgであった。粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品に関する測定された全一酸化炭素送達は、僅か0.97μgであった。従って、可燃性熱源の後面に粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けると、全一酸化炭素送達の約35%の減少がもたらされた。
【実施例6】
【0126】
着火助剤を有する可燃性熱源の前処理
本質的に国際公開特許第2009/074870号に開示するように、炭素粉体の525g、炭酸カルシウム(CaCO3)の225g、クエン酸カリウムの51.75g、改質セルロースの84g、粉末の276g、糖の141.75g、及び水性スラリを形成する脱イオン水の579gを有するトウモロコシ油の21gを混合することによって、着火助剤を含む炭素質可燃性熱源を前処理することができる。次に、約8.7mmの直径を有する円形断面の中心ダイオリフィスを有するダイを通して水性スラリを押し出すことで、約20cmから約22cmの長さ及び約9.1mmから約9.2mmの直径を有する円筒形ロッドを形成することができる。単一の長手方向空気流チャネルは、ダイオリフィスの中心に装着されたマンドレルによって円筒形ロッド中に形成することができる。マンドレルは、好ましくは、約2mm又は約3.5mmの外径を有する円形断面を有する。もしくは、3つの空気流チャネルは、ダイオリフィスに直角に取り付けられた約2mmの外径を有する円形断面の3つのマンドレルを用いて円筒形ロッド中に形成することができる。円筒形ロッドの押し出し時に、マンドレルの中心を通って延びる供給通路を通して緑色粘土系コーティングスラリを圧送して、単一の長手方向空気流チャネルの内面上に約150ミクロンから約300ミクロンの厚さを有する薄い第2の障壁コーティングを形成することができる。約12時間から約72時間の間、約40%から約50%の相対湿度、約20℃から約25℃で円筒形ロッドを乾燥させることが好ましく、次に、約240分の間、約750℃の窒素雰囲気内で熱分解させる。熱分解後、研磨機を用いて円筒形ロッドを所定の直径に切断及び成形して、約11mmの長さ、約7.8mmの直径、及び約400mgの乾燥質量を有する個々の可燃性炭素質熱源を形成することができる。個々の可燃性炭素質熱源は、次に、約1時間の間、約130℃で乾燥させ、次に38重量パーセントの濃度を有する硝酸の水溶液中に置き、硝酸カリウム(KNO3)で飽和することができる。約5分後、個々の可燃性炭素質熱源は、溶液から取り除き、約1時間の間約130℃で乾燥させることが好ましい。乾燥後、個々の可燃性炭素質熱源は、同様に38重量パーセントの濃度の硝酸の水溶液中に置き、硝酸カリウム(KNO3)で飽和することができる。約5分後、個々の可燃性炭素質熱源は、溶液から取り除き、約1時間の間、約130℃で乾燥させることができ、続いて約1時間の間約160℃で乾燥し、最後に約1時間の間約200℃で乾燥する。
【実施例7】
【0127】
粘土又はガラスの不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する可燃性熱源を有する喫煙物品からの煙化合物
実施例6で説明したように前処理された着火助剤を含み、1.85mmの直径でベントナイト/カオリナイトの第2の障壁コーティングを有する単一の長手方向空気流チャネルを備える可燃性の円筒形炭素質熱源には、実施例2で説明したような粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けた。さらに、実施例6で説明したように前処理された着火助剤を含み、1.85mmの直径でガラスの第2の障壁コーティングを有する単一の長手方向空気流チャネルを備える可燃性の円筒形炭素質熱源には、実施例3で説明したような焼結ガラスの非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けた。いずれの場合にも、可燃性の円筒形炭素質熱源の長さは、11mmであった。粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、好ましくは約50ミクロン又は約100ミクロンの間の厚さを有し、ガラスの非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングは、好ましくは、約20ミクロン、約50ミクロン又は約100ミクロンの厚さを有する。前述の可燃性の円筒形炭素質熱源を含む70mmの全長を有する、図1に示す本発明の好ましい実施形態による喫煙物品を手で組み立てた。喫煙物品のエアロゾル形成基材は、長さが10mmであり、黄色種タバコを約60重量%、オリエント種タバコを約10重量%、日干乾燥タバコを約20重量%含んでいた。喫煙物品の熱伝導素子は、長さが9mmであり、そのうちの4mmが可燃性熱源の後方部分を覆い、5mmが隣接するエアロゾル形成基材の前方部分を覆っていた。前述の説明で言及した以外はこの実施例において、喫煙物品の特性は、前記の表1に記載した特性と合致した。また、同じ構成であるが非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない喫煙物品を比較のために手作りした。
【0128】
カナダ保健省喫煙レジメの下での実施例5で説明したように、結果として得られる喫煙物品を喫煙した。喫煙する前に、通常の黄炎ライターを用いて喫煙物品の可燃性熱源に着火した。喫煙物品の主流エアロゾル中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、及びプロピオンアルデヒドは、実施例5で説明したように測定した。結果は、以下の表3に要約され、アセトアルデヒド及び特にホルムアルデヒドのようなカルボニルが、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まない可燃性熱源を含む喫煙物品の主流エアロゾルと比較して、非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有する可燃性熱源を含む喫煙物品の主流エアロゾルでは著しく低下する。
【0129】
前記の実施例5は、本発明の1つの実施形態による一酸化炭素の還元を明示する。実施例7から分かるように、実質的に本発明による可燃性熱源の後面全体の上に非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを設けることで、驚くほど主流エアロゾル内にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びフェノール樹脂などのカルボニル化合物の形成が著しい低下する。前記の各実施例は、例示的であり本発明を限定するものではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施形態も可能であり、本明細書で説明する具体的な実施例及び実施形態は限定的ではないことを理解されたい。
【0130】
表3
可燃性炭素質熱源を含む喫煙物品に対するカナダ保健省喫煙レジメの下で、主流煙において測定したカルボニルの量(1サンプル当たりのマイクログラム)である。(a)非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを含まないもの、(b)粘土の非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有するもの、(c)焼結ガラスの非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティングを有するものである。
【符号の説明】
【0131】
2 喫煙物品
4 可燃性炭素質熱源
4b 後方部分
6 エアロゾル形成基材
6a 前方部分
8 膨張チャンバ
10 吸口
12 シガレット紙
14 非金属、不燃性、耐ガス性の第1の障壁コーティング
16 中心空気流チャネル
18 タバコ材料、エアロゾル形成基材
20、28 フィルタプラグラップ
22 熱伝導素子
24 ボール紙
26 酢酸セルローストウ
図1
図2