特許第6126670号(P6126670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6126670-カム装置のグループ化方法 図000003
  • 特許6126670-カム装置のグループ化方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126670
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】カム装置のグループ化方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/08 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   B21D37/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-230736(P2015-230736)
(22)【出願日】2015年11月26日
(62)【分割の表示】特願2014-231269(P2014-231269)の分割
【原出願日】2010年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-41449(P2016-41449A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175582
【氏名又は名称】三協オイルレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】柴田 毅
(72)【発明者】
【氏名】森田 厚志
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸一
(72)【発明者】
【氏名】原田 康
(72)【発明者】
【氏名】加固 博敬
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−113326(JP,A)
【文献】 特開2005−272855(JP,A)
【文献】 特開2002−316223(JP,A)
【文献】 特開平04−138825(JP,A)
【文献】 特開2003−001341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/08
B21D 28/34
B30B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムホルダー摺接面を有するカムホルダーと、
前記カムホルダー摺接面に摺接するカムスライダー摺接面と、カムスライダーカム面と、を有し、加工工具用の工具取付面を有するカムスライダーと、
前記カムスライダーカム面に当接し、前記カムスライダーを所定の加工方向に駆動するカムドライバーカム面を有するカムドライバーと、を有するカム装置のグループ化方法であって、
相異なる加工力に段階的に設定された複数のカム装置を含み、前記複数のカム装置のカム幅を同一としたグループを構成する、ことを特徴とするカム装置のグループ化方法。
【請求項2】
前記グループを前記カム装置のカム幅ごとに複数のグループを構成する、ことを特徴とする請求項1に記載のカム装置のグループ化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに孔加工等するために固定金型と移動金型との間に装着される、コンパクトにユニット化されたカム装置のグループ化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス金型の設計においてはカム装置をはじめガイドポスト、ワーク検出装置、搬出搬送装置等の各種の機能ユニットを相互に干渉することなく配置することが必要である。このことを金型設計者が容易におこなえるように機能ユニットの専門メーカは、各種ユニットを規格化して、且つ、その外形形状と動きを負荷能力といった仕様に加えて、詳細にカタログに掲載していた。また、特にカム装置では、金型の完成稼働後に、金型に固定した際の取り付け誤差によるカム装置の滑り面の片当りによりカム装置が仕様通りの耐久力が発揮できずに短い間隔でカム装置の交換を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−135526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレス金型用のカム装置に必要な加工力はワーク(被加工物)の材質、板厚に加えてカム装置のカムスライダーへの加工工具の取り付け位置により変化し、加工工具の取り付け位置がカムの中心からずれるに従いカム装置として許容できる加工力は小さくなる。そこで、従来のカム装置では、金型設計の過程で生じるワーク(被加工物)の板厚、材質の変更および各種の機能ユニット相互の取り付け位置の変更が生じるたびにカム装置の大きさが変り、設計変更に対する設計者への負担を大きくしていた。また、金型の稼働後に生じるワーク(被加工物)の材質、板厚の変更および金型の製作および取り付け誤差によるカム装置の耐久寿命の低下には頻繁なカム装置全体の交換で対応していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カムホルダー摺接面を有するカムホルダーと、カムホルダー摺接面に摺接するカムスライダー摺接面と、カムスライダーカム面と、を有し、加工工具用の工具取付面を有するカムスライダーと、カムスライダーカム面に当接し、カムスライダーを所定の加工方向に駆動するカムドライバーカム面を有するカムドライバーと、を有するカム装置のグループ化方法であって、相異なる加工力に段階的に設定された複数のカム装置含み、複数のカム装置の外形サイズを同一としたグループを構成することを特徴とする。
【0006】
カムホルダー摺接面は、カムホルダーに着脱自在であること、また、カムドライバーカム面は、カムドライバーに着脱自在であることを含む。カムホルダー摺接面は、カムホルダーに着脱自在で、且つ、同一外形形状である同一系列(グループ)内において同一形状で互換性を有する摺動部材であること、;また、カムドライバーカム面は、カムドライバーに着脱自在で、且つ、同一外形形状である同一系列(グループ)内において同一形状で互換性を有するカム面部材であることを含む。
【0007】
更に、カムスライダー摺接面とカムホルダー摺接面との材料の組み合わせと、カムドライバーカム面とカムスライダーカム面との材料の組み合わせが同一の場合には、カムスライダー摺接面とカムホルダー摺接面の仕上げ加工後の面粗度を、カムドライバーカム面とカムスライダーカム面より粗くすること、あるいは、カムスライダー摺接面とカムホルダー摺接面の固体潤滑剤の充填密度を、カムドライバーカム面とカムスライダーカム面より大きく変更すること、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカム装置のグループ化方法によれば、カム装置全体の変更も容易に代替えが効く。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のカム装置1の分解斜視図である。
図2】本実施形態のカム装置1の、加工力とカム幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本実施形態のカム装置1は、摺接面2aを有するカムホルダー2と、カムホルダー2の摺接面2aに摺接する摺接面3aにより移動自在であると共にカム面3bで所定の加工方向に移動するカムスライダー3と、カムスライダー3のカム面3bに当接するカム面4aを有してカムスライダー3を所定の加工方向に移動させるカムドライバー4とで構成される。
【0011】
カムホルダー2の摺接面2aとカムスライダー3の摺接面3aとの摩耗特性は、摺動部の面圧が一定であれば、摺動部材2bおよびカムスライダー3の摺動部3cの材質、加工方法、熱処理、さらに固体潤滑剤の摺接面2a又は摺接面3aに対する充填量の各々の組合せにより決まる。
【0012】
同様にカムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bとの摩耗特性も、摺動部の面圧が一定であれば、カムドライバー4のカム面部材4bおよびカムスライダー3のカム面3cの材質、加工方法、熱処理、さらに固体潤滑剤のカム面4a又はカム面3bに対する充填密度の各々の組合せにより決まる。
【0013】
そこで、摺動部の材質、加工方法およびカム装置の基本寸法であるカム幅を目的に合わせて選定すれば、同一外形形状のカム装置において加工能力の大小、摩耗進行の遅速、さらに同一ランク内での最大の加工力が1ランク上位のカム装置の最低の加工力よりも大きく設定することができる。図2はその組み合わせの一例であり、この他の組合せも可能である。また、図2には記載していないが、摩耗進行の遅速の制御には加工方法を変えること、例えば加工面の面粗度を粗く加工することにより初期摩耗を大きくする、あるいは固体潤滑剤の充填密度を大きくし摩耗の進行は早いが、焼付き等の破壊的な損傷を引起さない安定的な摩耗特性を確保するといった材質の組合せ以外の方法も含まれる。
【0014】
そこで、部品交換による金型稼動後のカム装置の加工力改善に対しては、穴あけ用のピアスパンチ等の加工工具の取り付け精度の調整が必要なカムスライダーを交換する必要がないように、図1に示すように、摺動部2b用の本体側であるカムホルダー2とは別部材の摺動部材で形成され、且つ、本体側のカムホルダー2の取付面に、ボルト等で着脱自在に摺動部材が取付けられる。
【0015】
また、図1に示すようにカムスライダー3とカムドライバー4も同様に、カムドライバー基部4cにカム部材であるカム面部材4bが着脱自在であってボルトで容易に交換することができて、コストも嵩むことがない。
【0016】
カムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bの摩耗は、図1に示すように、カムスライダー3の工具取付面3eに加工工具(孔開け用のパンチや曲げ工具など)が取り付けられ、且つ、加工工具とワーク(被加工物)との相対位置精度は調整等により高い精度が要求されるため、小さいことが要求される。一方、カムスライダー3のV字溝状のカム面3bと嵌合・摺接するのはカムドライバー4の山型状のカム面4aとなる。
【0017】
カムスライダー3のカム面3bとカムドライバー4のカム面4aとは、V字溝によって位置固定され、ほぼ片当たり無く接触するのに対して、カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダー2の摺接面2aとは、カムの取り付け誤差および金型の加工誤差に相当する誤差により、カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダー2の摺接面2aとの平面同士にいわゆる片当たりが発生する。この片当たりの解消には初期摩耗期間でのなじみによる接触面積の拡大を進ませて、接触面圧の過大を防止することが必要である。
【0018】
そこで、カムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bの摩耗特性に比べて、カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダーの摺接面2aの摩耗特性は、同一の面圧×摺動速度に対して初期摩耗が大きくさらに摺動距離に対する摩耗量が大きい摩耗特性とする。これにより、摺接面2a、3aによる初期摩耗期間でのなじみによる接触面積の拡大(すなわち、片当たりの解消)が進んで、摺接面2a、3aの接触面圧の過大を防止できる。また、カム面3b、4aとの摩耗を小さくすることで、カムスライダー3の加工工具とワーク(被加工物)との相対位置精度を満足できる。
【0019】
カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダーの摺接面2aがカムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bと材料の組み合わせが同一の場合には、カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダーの摺接面2aの仕上げ加工後の面粗度を、カムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bより粗くする、あるいは、カムスライダー3の摺接面3aとカムホルダーの摺接面2aの固体潤滑剤の充填密度を、カムドライバー4のカム面4aとカムスライダー3のカム面3bより大きく変更することで対応する。勿論、摺動材料の組合せを変更することもこの目的には有効である。
【0020】
カム装置1は、表1に示すようにカムの幅毎(例えば、最小,小,中,やや大,大,最大)にその加工力(孔開けや曲げ加工等する部材の材質や板厚によって決まる、明細書中にて同じ)を摺動部の材料の組合せ(例えば、低面圧,普通面圧,やや高面圧,高面圧)により、軽,普通,やや重,重に選択できる。カム幅の選択により、隣接するカム幅において、あるカム幅のグループにおける最大の加工力(グループ内の「(d)重」に相当する最も大きな加工力をいう)がカム幅が1グループ大きな隣接するグループの最小の加工力(グループ内の「(e)軽」に相当する最も小さな加工力をいう)より大きく設定され、補うようにカバーしている。
【0021】
【表1】
【0022】
このように、隣接する幅のカム装置では、例えば幅小のカム装置において仕様が「重」のものの加工力は、この幅小の次の幅大のカム装置の仕様が「軽」の加工力より大きく設定されており、次の幅のカム装置との間で代替えが効く(図2参照)。
【0023】
図1に示す他の部材は、戻し用弾性部材5、延長ロッド5a、抜け防止用ストッパー6、スライドキーパ7、強制戻しフォロア8である。戻し用弾性部材5は例えばガス圧シリンダー、コイルスプリング、等である。図1ではガス圧シリンダーを使用しており、延長ロッド5aをカムホルダー2の前方向の壁に当接させ、戻し用弾性部材の弾発力によりカムスライダーを初期位置に復帰させる。
【0024】
ストッパー6は、首部をスライドキーパ7によって吊持されるカムスライダー3が後方に抜け出てしまうのを防止する壁である。スライドキーパ7は、カムホルダー2の両側壁に固定されて、その下部のL形係止部でカムスライダー3の首部を挟持して、カムスライダー3を前後方向に摺動自在にして且つ上下方向に吊持する。強制戻しフォロア8は、カムスライダー3の加工具がワークに引っかかって抜け出にくい時に、カムドライバー4側のガイド溝に係合して、カムスライダー3を強制的に初期位置に向けて移動させる。
【0025】
本実施形態のカム装置1によれば、カムホルダー2が金型の上型と共に上下方向に上死点から下死点へと往復移動し、それにより、カムスライダー3が前後方向に沿って加工方向へ往復移動される。それにより、カムスライダー3の工具取付面3eに設けられた加工工具が、加工方向へ移動して金型に設置されたワークに対して、例えば、孔開け加工や曲げ加工を行う。これにより、摺接面2aと摺接面3aにより構成される摺動部とカム面3bとカム面4aにより構成される摺動部においては摺動による摩耗が何らかの量として発生する。
【0026】
本実施形態においては、摺接面2aと摺接面3aにより構成される摺動部の摩耗が早期に進行し、金型の加工および組立誤差による摺接面2aと摺接面3aとの相互の摺動部の片当たりを金型稼働の初期段階で解消して、カム装置の仕様通りの加工能力を発揮させることが可能となる。
【0027】
さらに、加工工具のワーク(被加工物)に対する運動の相対位置関係を規定するカム面3bとカム面4aの摩耗量を摺接面2aと摺接面3aの摩耗量より小さく設定しているので、稼動初期の片当たりによる弊害を取り除き、加工工具の位置精度の変化を小さくすることができる。
【0028】
なお、金型の稼働後に金型設計当初の想定を越えた摺接面の摩耗が発生した場合は、摺動部材2bあるいはカム面部材4bをより摩耗の少ない組合せとなる様に設計当初の材質とは異なる同一形状の部品と交換して、想定を超えた摩耗に対応することができる。また、その交換作業もボルトで脱着できる様にされていて容易であって、カム装置1の加工精度が一定に確保される。また、カム装置の各幅毎に、隣接するカム装置の加工力がオーバラップするようにしてあるので、カム装置全体の変更も容易に代替えが効く。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本実施形態のカム装置1は、金型設計段階における設計時間の短縮と設計者の負担の軽減を達成し、金型稼働後に生じる、金型に不可避である金型の僅かな加工と、組付の誤差によるカム装置の性能低下による不具合を、加工精度を高精度に維持したままで防止して金型保全の工数を軽減する。更にその性能改善を部品交換により容易に実施可能とし、加工精度を高精度に維持することができて各種の加工具用に使用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 カム装置、
2 カムホルダー、 2a 摺接面、
2b 摺動部材、
3 カムスライダー、 3a 摺接面、
3b カム面、3c 摺動部、
3d カム面部、
4 カムドライバー、 4a カム面、
4b カム面部材、4c ドライバー基部、
5 戻し用弾性部材、 5a 延長ロッド、
6 抜け防止用ストッパー、
7 スライドキーパ、
8 強制戻しフォロア。
図1
図2