特許第6126690号(P6126690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126690研磨粒子、研磨材物品、並びにその製造及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126690
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】研磨粒子、研磨材物品、並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20170424BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20170424BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   B24D3/00 320A
   B24D3/00 330G
   B24D3/00 340
   C01F7/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-517262(P2015-517262)
(86)(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公表番号】特表2015-531000(P2015-531000A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】US2013041174
(87)【国際公開番号】WO2013188038
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】13/495,593
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】モンロー, ラリー ディー.
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−316543(JP,A)
【文献】 特開昭61−254685(JP,A)
【文献】 特開昭57−207672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24D 3/00
C01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子であって、
前記研磨粒子のそれぞれが、α−アルミナ結晶相と、前記α−アルミナ結晶相及びβ−アルミナ結晶相を合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相と、を含むものであり、
前記β−アルミナ結晶相が、実験式XQA1017[式中、XはSr及びBaからなる群から選択され、QはMg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択される。]により表され、前記研磨粒子が希土類酸化物を含まない、研磨粒子。
【請求項2】
研磨粒子を作製する方法であって、
アルミナ前駆体材料を含むディスパージョンを提供する工程であって、前記アルミナ前駆体材料が、アルミニウムイオンと、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1つの第1の二価カチオンと、Mg、Co、Ni及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの第2の二価カチオンと、を含むものである、工程と、
シード粒子を前記ディスパージョンと混合する工程であって、前記シード粒子が、前記アルミナ前駆体材料からα−アルミナへの変換を促進する成核剤又はその前駆体を含むものである、工程と、
前記ディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換する工程と、
前記研磨粒子を提供するために前記研磨材前駆体粒子を焼結する工程であって、前記研磨粒子のそれぞれは、α−アルミナ結晶相と、前記α−アルミナ結晶相とβ−アルミナ結晶相とを合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相とを含み、前記研磨粒子が希土類酸化物を含まないものである、工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本開示は、研磨粒子及びその製造方法に関する。これらの研磨粒子は、結合研磨材、被覆研磨材、不織布研磨材、及び研磨ブラシを含む多様な研磨材物品に組み込むことができる。
【0002】
[背景]
α−アルミナは、研磨材産業において研磨材料として広く使用されている。α−アルミナは、純粋な形態でも使用できるが、その研磨特性を向上する添加剤を含有する形態での使用がより好ましい。β−アルミナは、アルミニウム及び酸素以外の金属イオンが結晶格子に含まれているアルミナの形態である。β−アルミナは、概して、α−アルミナと比較して研磨材料として劣った特性を示す。
【0003】
商業的に重要な多くのα−アルミナ研磨粒子は、ゾル−ゲル前駆体に由来する。これらは、水と、例えばアルミナ一水和物(ベーマイト)のようなα−アルミナ前駆体と、任意で解膠促進剤(例えば、硝酸などの酸)とを含むディスパージョン(例えば、ゾル)を調製する工程と、次いで、そのディスパージョンをゲル化する工程と、ゲル化したディスパージョンを乾燥する工程と、乾燥したディスパージョンを粉砕して粒子にする工程と、揮発性物質を除去するために粒子を焼成する工程と、焼成された粒子をα−アルミナの融点より低い温度で焼結する工程と、によって製造される。多くの場合、ディスパージョンはまた、1種以上の酸化物変性剤(例えば、希土類酸化物(REO)、Cr、CoO、Fe、LiO、MgO、MnO、NaO、NiO、SiO、SnO、TiO、ZnO、及びZrO)、成核剤(例えば、α−Al、α−Cr、及びα−Fe)、及び/又はそれらの前駆体も含む。そのような添加は、通常、焼結した研磨粒子の物性及び/又は微小構造を変更するないしは何らかの方法で変性するために行われる。加えて、又は代替的に、そのような酸化物変性剤、成核剤、及び/又はこれらの前駆体は、乾燥又は焼成された材料(典型的には、焼成された粒子)に含浸させてもよい。特に有用な酸化物変性剤としてはREOが挙げられ、例えば、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ユーロピウム、酸化ハフニウム、酸化エルビウム、酸化サマリウム、酸化イッテルビウム、酸化ガドリニウム、及び酸化プラセオジミウムなどである。近年において、全産業にとってREOの可用性が主要な問題となっており、供給が制限され、コストが上昇している。
【0004】
ゾル−ゲル由来のα−アルミナ系焼結研磨粒子は、様々な研磨製品(例えば、結合研磨材、被覆研磨材、及び研磨ブラシ)、並びに、低圧及び高圧の両方の研削用途を含む研磨用途に使用されてきた。
【0005】
[概要]
一態様において、本開示は、研磨粒子を提供するものであって、研磨粒子のそれぞれは、α−アルミナ結晶相と、α−アルミナ結晶相及びβ−アルミナ結晶相を合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相とを含むものであり、β−アルミナ結晶相は、実験式(X)(Q)Al1017により表され、式中、
XはSr、Ca、及びBaからなる群から選択され、
QはMg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択される。
【0006】
別の態様において、本開示は、研磨粒子の製造方法を提供し、その方法は、
アルミナ前駆体材料を含むディスパージョンを提供する工程であって、アルミナ前駆体材料が、
アルミニウムイオンと、
Sr、Ca、及びBaからなる群から選択される少なくとも1つの第1の二価カチオンと、
Mg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの第2の二価カチオンと、を含むものである、工程と、
シード粒子を上記ディスパージョンと混合する工程であって、シード粒子が、(例えば、焼結工程中の)アルミナ前駆体材料からα−アルミナへの変換を促進する成核剤又はその前駆体を含むものである、工程と、
ディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換する工程と、
研磨粒子を提供するために研磨材前駆体粒子を焼結する工程であって、研磨粒子のそれぞれは、α−アルミナ結晶相と、α−アルミナ結晶相及びβ−アルミナ結晶相を合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相とを含むものである、工程と、を含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、本開示による研磨粒子を含む研磨材物品(例えば、被覆研磨材、結合研磨材、不織布研磨材、又は研磨ブラシ)を提供する。研磨材物品は、例えば、被加工物を研磨するために有用である。
【0008】
したがって、更に別の態様では、本開示は、被加工物の研磨方法を提供し、この方法は、
本開示による研磨粒子を被加工物の表面と摩擦接触させる工程と、
研磨粒子及び被加工物の表面のうちの少なくとも一方を他方に対して移動させて、被加工物の表面の少なくとも一部分を研磨する工程と、を含む。
【0009】
有利なことに、かつかなり意外なことに、本開示による研磨粒子は、概して、従来のα−アルミナ研磨粒子と比較してより優れた研磨性能を1つ以上示す。更にそれらは、例えばステンレス鋼の研削などに関して、最も性能の優れたアルミナ系の研磨材の1種として典型的に挙げられる高価で入手の困難な希土類酸化物を含有する市販のα−アルミナ研磨粒子と同等の、若しくは更により優れた研磨性能特性を1つ以上示す場合がある。
【0010】
本開示の特徴及び利点は、詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲を考慮することで更に深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示による研磨粒子を含む例示の被覆研磨粒子の概略的な断面図である。
図2】本開示による研磨粒子を含む別の例示の被覆研磨粒子の概略的な断面図である。
図3】本開示による研磨粒子を含む例示の結合される研磨粒子の概略的な断面図である。
図4】本開示による研磨粒子を含む不織布研磨材物品の拡大概略図である。
【0012】
上記の図面には本開示のいくつかの実施形態が記載されているが、例えば、考察の中で記述したように、その他の実施形態も考えられる。いかなる場合も、本開示は代表して提示されるものであって、限定するものではない。本開示の原理の範囲及び趣旨の範囲内に含まれる他の多くの改変例及び実施形態が当業者によって考案されうる点は理解されるはずである。図は、縮尺どおりに描かれていない場合もある。同様の参照番号が、同様の部分を示すために複数の図を通じて使用されている場合がある。
【0013】
[詳細な説明]
本開示による研磨粒子は、α−アルミナ結晶相とβ−アルミナ結晶相とを含んでいる。
【0014】
β−アルミナ結晶相は、実験式(X)(Q)Al1017を有する。Xは、ストロンチウム、カルシウム、及びバリウムからなる群から選択される。例えば、Xは、SrCaBaとして表すことができ、式中、a、b、及びcは、a+b+c=1となるような、ゼロ以上の数を表す。同様に、Qは、Mg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択され、MgCoNiZnとして表すことができ、p、q、r、及びsは、p+q+r+s=1となるような、ゼロ以上の数を表す。
【0015】
いくつかの実施形態では、研磨粒子は、0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相を含むが、他の量を使用してもよい。好ましくは、研磨粒子は、0.25〜8重量%、より好ましくは2〜4重量%のβ−アルミナ結晶相を含む。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、0.04〜2.60重量%(好ましくは0.1〜2.1重量%、より好ましくは0.1〜1重量%)の金属酸化物XOと、0.01〜4.5重量%(好ましくは0.1〜3.5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜2.5重量%)の金属酸化物QOと、を含む。
【0016】
理論による束縛を望むものではないが、β−アルミナ結晶格子中のイオン半径が最小から最大のイオンの範囲内(例えば、成分Xについては、カルシウムのイオン半径からバリウムのイオン半径までの範囲のイオン半径であり、成分Qについては、マグネシウムのイオン半径から亜鉛のイオン半径までの範囲のイオン半径)であるならば、上記の二価金属カチオンを他の二価金属カチオンで置換してもよいと考えられる。
【0017】
金属X及びQの供給源を、例えば、初期のディスパージョン及び/又は含浸組成物(以下に記述する)に含めることができる。有用な供給源としては、例えば、水溶性又は分散性の塩、錯体、及び分散性金属酸化物(例えば、粉砕された金属酸化物粉末)が挙げられる。例としては、硝酸塩(例えば、硝酸マグネシウム、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム)、カルボキシレート金属塩(例えば、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸マグネシウム、クエン酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、クエン酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ギ酸コバルト、ギ酸マグネシウム、及びギ酸ニッケルが挙げられる。
【0018】
特定の希土類酸化物及び二価金属カチオンはアルミナと反応して、式LnMAl1119により表される希土類アルミネートを形成し、式中、Lnは、La3+、Nd3+、Ce3+、Pr3+、Sm3+、Gd3+、Er3+、又はEu3+のような三価金属カチオンであり、Mは、Mg2+、Mn2+、Ni2+、Zn2+、Sr2+、Ca2+、又はCo2+のような二価金属カチオンである。典型的には小平板の形態であるそのようなアルミネートは、六方晶系の結晶構造を有し、当該技術分野において、マグネトプランバイトとして知られている。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示による研磨粒子は、有利なことに、希土類酸化物(REO)及びREOマグネトプランバイト結晶相ドメインを本質的に含まない。したがって、それらの研磨粒子は、マグネトプランバイト結晶相を有する材料を1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1重量%未満、若しくは更には0.005重量%未満、又はゼロ)含む。
【0020】
本開示による研磨粒子は、分散媒質に分散された1つ以上のアルミナ供給源(例えば、α−アルミナ及び/又はα−アルミナ前駆体物質)を含む初期ディスパージョンを用いて開始するプロセスにより作製することができる。本明細書で使用するとき、用語「ディスパージョン」は、分散媒質中の分散相からなる、例えばコロイド又はゾルのような系を指す。分散媒質は液体であり、典型的には水であるが、低級アルコール(典型的にはC〜Cのアルコール)、ヘキサン、又はヘプタンのような有機溶剤もまた媒液として有用であり得る。水は、例えば、水道水、蒸留水、又は脱イオン水であり得る。
【0021】
ディスパージョンは、1つ以上のアルミナ供給源、例えばベーマイトなどを含み得る。ベーマイトゾルは、例えば、DISPERAL(Sasol Limited(南アフリカJohannesburg))、DISPAL 23N480及びCATAPAL D(Sasol North America(テキサス州Houston)、並びに商品名HIQ(例えば、HIQ−10、HIQ−20、HIQ−30、及びHIQ−40(BASF触媒事業部(ニュージャージー州Iselin)で市販されている。これらのベーマイト又はアルミナ一水和物はα型であり、一水和物以外の水和相はほとんど含まないか、含むとしても比較的少ない)。
【0022】
ディスパージョンは、上述のアルミナ供給源と別の、又は上述のアルミナ供給源の1つ以上との組み合わせである、少なくとも1つのアルミナ供給源(例えば、α−アルミナ及び/又はアルミナ前駆体)を含む。その他のα−アルミナ供給源及び前駆体の例としては、α−アルミナ粉末、γ−アルミナ粉末、塩基性アルミニウムカルボキシレート(例えば、アルミニウムホルモアセテート、アルミニウムニトロホルモアセテート)、部分的に加水分解されたアルミニウムアルコキシド、水和アルミナ、アルミニウム錯体、及びアルミニウム塩(例えば、塩基性硝酸アルミニウム)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。塩基性アルミニウムカルボキシレートの場合、これらは一般式Al(OH)(カルボキシレート)3−yのものであり、式中、yは1〜2の間、いくつかの実施形態では1〜1.5の間であり、カルボキシレートの対イオンは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及びシュウ酸、又はこれらのカルボキシレートの組合せからなる群から選択される。これらの材料は、例えば、米国特許第3,957,598号(Merkl)に記載されているように、カルボン酸の溶液中にアルミニウム金属を消化することによって調製することができる。塩基性硝酸アルミニウムは、米国特許第3,340,205号(Hayesら)又は英国特許第1,193,258号に記載のように硝酸溶液中にアルミニウム金属を消化することによって、又は米国特許第2,127,504号(Derrら)に記載のような硝酸アルミニウムの熱分解によってもまた、調製することができる。これらの材料は、アルミニウム塩を塩基で部分的に中和することによってもまた調製することができる。塩基性硝酸アルミニウムは、一般式Al(OH)(NO3−zを有し、式中、zは約0.5〜2.5の間である。
【0023】
所望により、また典型的には、ディスパージョンを解膠促進剤で処理する。好適な解膠促進剤は、概して、可溶性のイオン化合物であり、それらの作用により、媒液(例えば水)中で粒子又はコロイドの表面が均一に帯電されると考えられる。いくつかの実施形態では、解膠促進剤は酸又は酸化合物である。典型的な酸の例としては、例えば、酢酸、塩酸、ギ酸、及び硝酸などの一塩基酸及び酸化合物が挙げられ、硝酸が好ましい。酸の使用量は、例えば、粒状アルミナ供給源の分散性、ディスパージョンの固形分、ディスパージョンの成分、ディスパージョンの成分の量又は相対量、ディスパージョンの成分の粒径、及び/又はディスパージョンの成分の粒径分布に依存する。ディスパージョンは、典型的には、ディスパージョン中のアルミナ供給源(例えば、ベーマイト及び/又はアルミナ前駆体)の重量に基づいて、少なくとも0.1〜20重量%、いくつかの実施形態では1〜10重量%、又は更には3〜8重量%の酸を含有する。
【0024】
好適な解膠促進剤は、概して、可溶性のイオン化合物であり、それらは、媒液(例えば水)中で粒子又はコロイドの表面が均一に帯電されるように作用すると考えられる。いくつかの実施形態では、解膠促進剤は酸又は酸化合物である。典型的な酸の例としては、例えば、酢酸、塩酸、ギ酸、及び硝酸などの一塩基酸及び酸化合物が含まれ、硝酸が好ましい。酸の使用量は、典型的には、例えば、粒状アルミナ供給源の分散性、ディスパージョンの固形分、ディスパージョンの成分、ディスパージョンの成分の量又は相対量、ディスパージョンの成分の粒径、及び/又はディスパージョンの成分の粒径分布に依存するであろう。ディスパージョンは、典型的には、ディスパージョン中のアルミナ供給源の重量に基づいて、少なくとも0.1〜20パーセント、いくつかの実施形態では1〜10重量%、又は更には3〜8重量%の酸を含有する。いくつかの実施形態では、水と混合される前にベーマイト粒子の表面に酸が適用される場合がある。酸による表面処理は、水中でのベーマイトの分散性の改善をもたらすことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、初期ディスパージョンは、適切な成核剤(例えば、α−アルミナシード粒子、酸化鉄(例えば、α−酸化鉄)及びその前駆体、クロミア及び前駆体、マンガン酸化物、並びにチタン酸塩)によってシード又は核形成される場合があり、更に、α−アルミナ結晶相のグレインの径を変更するのに役立つシード粒子を含む。使用される場合、シード粒子は好ましくは小さい径(例えば、5ミクロン未満、好ましくは1ミクロン未満)のものである。シード又は成核剤の添加は、焼結後、得られる研磨粒子中により小さいα−アルミナ晶子又はセルをもたらして、より耐久性のある研磨グレインを生成する。
【0026】
初期ディスパージョン(及び/又は、使用される場合は含浸組成物(以下に記載))は、β−アルミナ結晶相に含まれるストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、及び亜鉛以外の追加の金属酸化物前駆体/供給源(すなわち、適切な加熱条件により金属酸化物に変換され得る物質)を更に含むことができる。そのような物質は、本明細書では金属酸化物変性剤と呼ばれる。そのような金属酸化物変性剤は、得られる研磨粒子の物性及び/又は化学特性を変更し得る。初期ディスパージョン及び/又は(使用される場合は)含浸組成物に組み込まれるこれらの他の金属酸化物変性剤の量は、例えば、得られる焼結研磨粒子の所望の組成及び/又は特性、並びに、研磨粒子を作製するために使用されるプロセスにおいて添加剤が有し得る又は果たし得る効果若しくは作用に依存する場合がある。
【0027】
金属酸化物変性剤は、(例えば、コロイド懸濁液又はゾルとしての)金属酸化物であってもよく、及び/又は、金属酸化物前駆体(例えば、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属ギ酸塩、及び金属塩化物塩のような金属塩)であってもよい。金属酸化物の粒子に関して、金属酸化物粒子は、概して、5マイクロメートル未満、又は更には1マイクロメートル未満の粒径である。コロイド金属酸化物は、非晶質又は結晶質の金属酸化物の、微細に分かれている別個の粒子であり、典型的には、それらの粒子は、その寸法の1つ以上が約3ナノメートル〜約1マイクロメートルの範囲内である。コロイド金属酸化物ゾルは、典型的には安定な(すなわち、約2時間静置した際の目視検査で、ゾル又はディスパージョン中の金属酸化物固形物のゲル化、分離又は沈降が始まっていないように見える)コロイド粒子懸濁液である(いくつかの実施形態では、6.5未満のpHを有する媒液中において)。
【0028】
そのような他の金属酸化物変性剤の例としては、酸化クロム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化セリウム、及び/又はシリカが挙げられる。
【0029】
有用な金属酸化物前駆体の例としては、金属塩(例えば、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属ギ酸塩、及び金属塩化物塩)が挙げられる。金属硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、及び塩化物塩は、当該技術分野で公知の技術によって作製することができる、あるいは、Alfa Chemicals(マサチューセッツ州Ward Hill)及びMallinckrodt Chemicals(ケンタッキー州Paris)のような商業的供給源から入手することができる。硝酸塩の例としては、硝酸リチウム、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸ジスプロシウム、硝酸エルビウム、硝酸イッテルビウム、硝酸イットリウム、硝酸プラセオジミウム、硝酸ネオジム、硝酸ランタン、硝酸ユウロピウム、及び硝酸第二鉄が挙げられる。金属酢酸塩の例としては、酢酸リチウム、酢酸マンガン、酢酸クロム、酢酸ジスプロシウム、酢酸ランタン、酢酸ネオジム、酢酸プラセオジミウム、酢酸サマリウム、酢酸イッテルビウム、酢酸イットリウム、酢酸イッテルビウムが挙げられる。クエン酸塩の例としては、クエン酸リチウム及びクエン酸マンガンが挙げられる。ギ酸塩の例としては、ギ酸リチウム、ギ酸マンガンが挙げられる。
【0030】
有利なことに、本開示による研磨粒子は、上述のような関連する問題を有する希土類酸化物を含まずに、優れた研磨特性を示すことができる。したがって、それらの研磨粒子は、全体として、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1重量%未満、又は更には0.01重量%未満の希土類酸化物を含有し得る。
【0031】
代表的なジルコニア供給源は、ジルコニウム塩及びジルコニアゾルであるが、含浸組成物中のジルコニア供給源は、典型的には、媒液中の溶液を形成するジルコニウム塩である。ジルコニウム塩の例としては、酢酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、ジルコニウムヒドロキシニトレート、ギ酸ジルコニウム、及びジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアルコキシド(例えば、ブトキシド、エトキシド、プロポキシド、及びtert−ブトキシド)、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、アンモニウム錯体、アンモニウムジルコニウムカルボネート、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム八水和物が挙げられる。ジルコニアゾルは、非晶質又は結晶質のジルコニアの微細な粒子を含み、典型的には、それらの粒子は、その寸法の1つ以上が約3ナノメートル〜約250ナノメートルの範囲内である。コロイドジルコニア中のジルコニアの平均粒径は、典型的には、約150ナノメートル未満、約100ナノメートル未満、又は更には約50ナノメートル未満である。場合によっては、ジルコニア粒子は約3〜10ナノメートル程度であり得る。ほとんどの場合、コロイドジルコニアは、ジルコニア粒径の分布又は範囲を含む。ジルコニアゾルとしては、Nyacol Nano Technologies,Inc.からNYACOL ZrO(安定化されたアセテート)及びZR100/20として市販されているものが挙げられる。ジルコニアゾルのより詳細な情報については、例えば、米国特許第5,498,269号(Larmie)及び米国特許第5,551,963号(Larmie)を参照されたい。
【0032】
ベーマイトディスパージョンに金属酸化物(及び/又はその前駆体)を含めることに関する追加的な詳細については、例えば、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、米国特許第4,770,671号(Monroeら)、米国特許第4,881,951号(Woodら),米国特許第5,429,647号(Larmie),米国特許第5,498,269号(Larmie)、米国特許第5,551,963号(Larmie)を参照されたい。
【0033】
本開示の実施において使用されるディスパージョン(例えば、ベーマイト系のディスパージョン)は、典型的には、ディスパージョンの総重量に基づいて、固形物(又は代替的にベーマイト)を15重量%(概して、20超〜約80重量%、典型的には30超〜約80重量%)含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、ディスパージョンは、ディスパージョンの総重量に基づいて、固形物(又は代替的にベーマイト)を35重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、又は65重量%以上含む。約80重量%を超える固形物及びベーマイトもまた有用である場合があるが、本開示による方法によって提供される研磨粒子を作るために処理することがより困難になる傾向がある。
【0034】
α−アルミナ系の研磨粒子の一般的な作製手順は、例えば、米国特許第4,518,397号(Leitheiserら)、米国特許第4,770,671号(Monroe)、米国特許第4,744,802号(Schwabel)、米国特許第5,139,978号(Wood)、米国特許第5,219,006号(Wood)、及び米国特許第5,593,647号(Monroe)に開示されている。
【0035】
(初期)ディスパージョンは、典型的には、様々な成分を追加してから、均質な混合物を提供するためにそれらを一緒に混合することによって調製される。例えば、硝酸と混合した水にベーマイトを添加することができる。ベーマイトの添加前、添加中、又は添加後に他の成分を添加してもよい。
【0036】
典型的には、液体成分に不溶性の成分を混合又は攪拌しながら、該液体成分に不溶性の成分に液体成分を徐々に添加することにより、高固形物のディスパージョンを調製する。例えば、ベーマイト全体に液体がより容易に分配されるように、ベーマイトを混合しながら、水、硝酸、及び金属塩を含む液体をベーマイトに徐々に加えることができる。
【0037】
好適なミキサーとしては、バケツミキサー、シグマブレードミキサー、ボールミル、及び高剪断ミキサーが挙げられる。その他の好適なミキサーは、Eirich Machines,Inc.(イリノイ州Gurnee)、Hosokawa−Bepex Corp.(ミネソタ州Minneapolis)(SCHUGI FLEX−O−MIX、Model FX−160の商品名で市販されているミキサーを含む)、Littleford−Day,Inc.(ケンタッキー州Florence)から入手できる。
【0038】
α−アルミナ一水和物、他の粒子状物質の分散性を高めるため、及び/又は均質なディスパージョンを生成するために、ベーマイト系のディスパージョンを加熱することができる。温度は適宜変化させてよく、例えば、温度は、約20℃〜80℃の範囲、通常は25℃〜75℃の間であり得る。加えて、又は代替手段として、例えば、ディスパージョンを1.5〜130大気圧の範囲の圧力下で加熱してもよい。
【0039】
ベーマイト系のディスパージョンは、典型的には、乾燥工程前又は乾燥工程中にゲル化する。ほとんどの変性剤の添加は、ディスパージョンのより速いゲル化をもたらし得る。あるいは、酢酸アンモニウム、又は他のイオン種を添加して、ディスパージョンのゲル化を誘導してもよい。概して、ディスパージョンのpH及びゲル中のイオンの濃度が、ディスパージョンゲルのゲル化の速さを決定する。典型的には、ディスパージョンのpHは約1.5〜約5の範囲内である。
【0040】
ディスパージョンは、押し出し成形することができる。押し出し成形することが好ましい場合がある(典型的には、アルミナ含有量の少なくとも50重量%が粒子状物質(例えば、ベーマイト)によりもたらされるディスパージョンであり、この文脈においては、ゲル化したディスパージョン、又は更には、部分的に脱液したディスパージョンが含まれる。押し出されたディスパージョン(押し出し成形品と呼ばれる)を押し出して、細長い前駆体材料(例えば、ロッド(円筒形ロッド及び楕円形ロッドを含む))に成形することができる。焼き工程後、ロッドは1.5対10、いくつかの実施形態では2対6のアスペクト比を有し得る。あるいは、押し出し成形品は非常に薄いシートの形状であってもよい(例えば米国特許第4,848,041号(Kruschke)を参照)。好適な押し出し機の例としては、ラム押出機、単軸、二軸、及びセグメント化されたスクリュー押出機が挙げられる。
【0041】
ディスパージョンは、例えば押し出し前又は押し出し中に圧密することができる(押し出し工程には元来、ディスパージョンの圧密が伴う場合がある)。ディスパージョンの圧密では、ディスパージョンは例えばペレタイザー又はダイプレス(機械的、油圧式、空気圧、又はプレスを含む)若しくは押し出し機で与えられるような圧力又は力に曝される(すなわち、ディスパージョンの全て若しくは実質的に全てに特定の圧力が与えられる)と理解されたい。概して、ディスパージョンを圧密すると、ディスパージョンに捕捉された空気又は気体の量が減り、その結果、概して、より低い有孔率の微小構造がもたらされる。更に、圧密工程は、押し出し機に連続供給するためのより容易な方法をもたらすことができ、したがって、労働力を節約することができる。
【0042】
ディスパージョンは、研磨材前駆体粒子に変換される(すなわち、例えば、乾燥及び焼結により、その粒子を研磨粒子に変換することができる)。概して、ディスパージョンを乾燥する手法は当該技術分野で周知であり、媒液の蒸発を促進する加熱工程、又は単純な空気乾燥工程が含まれる。概して、乾燥工程はディスパージョンから媒液のかなりの部分を除去するが、少量(例えば、約10重量%以下)の媒液が、乾燥後のディスパージョン中になお残留している場合がある。典型的な乾燥条件としては、ほぼ室温から約200℃以上までの範囲の温度が含まれ、より典型的には50℃〜150℃であるが、これは要件ではない。時間は、約30分間から数日以上までの範囲であり得る。塩の移動ができるだけないように、ディスパージョンは低温で乾燥するのが好ましい場合がある。
【0043】
乾燥後、乾燥したディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換することができる。これらの研磨材前駆体粒子を生成する典型的な一つの手段は、破砕法である。ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ボールミル等、様々な破砕又は粉砕技術を用いることができる。比較的粗い粒子は、再び破砕して、より微細な粒子にすることができる。本開示による焼結したα−アルミナ系研磨粒子よりも乾燥したゲルを破砕するほうが通常は容易であるので、いくつかの実施形態では、乾燥したディスパージョンを破砕する。
【0044】
あるいは、例えば、混合物を研磨材前駆体粒子に変換してから乾燥してもよい。例えば、混合物を好ましい粒子形及び粒径分布に加工する場合にこれを行う場合がある。例えば、ディスパージョンを押し出してロッドを成形し、次いでそれを切断して好ましい長さにしてから乾燥することができる。あるいは、例えば、混合物を三角形の粒子に成形してから乾燥してもよい。三角形の粒子に関する追加の詳細は、米国特許第5,201,916号(Bergら)に見出すことができる。ゾル−ゲル成形プロセスにより形成される更に他の形状の研磨粒子は、例えば、米国特許第8,142,891 B2号(Cullerら)、同第8,034,137 B2号(Ericksonら)、同第8,142,532 B2号(Ericksonら)、同第8,142,531 B2号(Adefrisら)、同第8,123,828 A号(Cullerら)、及び米国特許出願公開第2010/0146867 A1号(Bodenら)、並びにPCT国際公開第WO 2011/109188 A2号(Givotら)に記載されている。
【0045】
あるいは、例えば、乾燥した混合物(例えば、ディスパージョン)を、揮発性成分を高い含有量で有する塊に成形して、次いでそれらの塊を、350℃を超える温度、通常は600℃〜900℃の間の温度で維持されている炉に直接に供給することにより爆発粉砕させることができる。
【0046】
また、金属酸化物変性剤供給源(典型的には金属酸化物前駆体)を乾燥及び/又は焼成した研磨材前駆体粒子に染み込ませることもまた、本開示の範囲内である。典型的には、金属酸化物前駆体は金属塩の形態である。代表的な有用な金属酸化物前駆体及び金属塩は、本明細書において、初期ディスパージョンに関して上述した。
【0047】
ゾル−ゲル由来の乾燥及び/又は焼成した粒子を含浸する方法は、例えば米国特許第5,164,348号(Wood)に概ね記載されている。概して、セラミック前駆体材料(すなわち、乾燥したアルミナ系混合物(若しくは乾燥したセラミック前駆体材料)、又は焼成したアルミナ系混合物(若しくは焼成したセラミック前駆体材料)は多孔質である。例えば、焼成したセラミック前駆体材料は、典型的には、その外面から内部に延びる直径約2〜15ナノメートルの孔を有する。そのような孔の存在は、媒液(通常、水)を含む混合物を含む含浸成分及び適切な金属前駆体がセラミック前駆体材料に入り込むのを可能にする。金属塩材料を液体に溶解し、得られた溶液を、多孔質のセラミック前駆体粒子材料と混合する。含浸プロセスは、毛管作用により生じると考えられる。
【0048】
含浸組成物に使用する液体は、例えば、水(脱イオン水を含む)、有機溶剤、及びその混合物であってよく、金属塩の含浸が好ましい場合は、媒液中の金属塩の濃度は、理論上の金属酸化物に基づいて、典型的には、溶解固形物が約5〜約40パーセントの範囲である。いくつかの実施形態では、100グラム(g)の多孔質の前駆体粒子状材料の含浸を達成するために少なくとも50ミリリットル(mL)の溶液が加えられ、例えば、いくつかの実施形態では、前駆体粒子状材料100gに少なくとも約60mLの溶液が加えられる。
【0049】
典型的には、研磨材前駆体粒子は焼結される前に焼成されるが、焼成工程は要件ではない。概して、本質的に全ての揮発性物質を除去し、ディスパージョンに存在する多様な成分を酸化物に変換するように研磨材前駆体粒子を焼成するための技術は、当該技術分野で周知である。そのような技術には、ロータリ式又はスタティック式の炉を用いて約400〜1000℃(典型的には約450〜800℃)の範囲の温度で、自由水及び通常は少なくとも約90重量%のあらゆる結合された揮発性物質が除去されるまで、乾燥した混合物を加熱する工程が含まれる。
【0050】
研磨材前駆体粒子を形成し、所望により焼成した後に、研磨材前駆体粒子を焼結して、α−アルミナ系の研磨粒子を提供する。概して、研磨材前駆体粒子の焼結技法は当該技術分野で周知であり、この技法は、転移アルミナをα−アルミナに変換するために有効な温度で加熱する工程と、全ての金属酸化物前駆体がアルミナと反応するか又は金属酸化物を形成するような作用を及ぼす工程と、セラミック材料の密度を増加する工程とを含む。研磨材前駆体粒子は、(例えば、電気抵抗、マイクロ波、プラズマ、レーザー、又はガス燃焼をバッチベースで又は連続ベースで用いて)加熱することにより焼結することができる。焼結温度は、通常、約1200℃〜約1650℃の範囲、典型的には約1200℃〜約1500℃であり、より典型的には1450℃未満である。研磨材前駆体粒子を焼結温度に曝す時間は、例えば、粒径、粒子の組成、及び焼結温度に依存する。典型的には、焼結時間は数秒から約60分間の範囲である(いくつかの実施形態では、約3〜30分以内である)。焼結は、典型的には、酸化性雰囲気中で行われるが、不活性又は還元性雰囲気もまた有用である場合がある。
【0051】
本開示による研磨粒子の最長寸法は、典型的には、少なくとも約1マイクロメートルであるが、それ未満でもよい。本明細書に記載の研磨粒子は、約50マイクロメートルを超える長さで容易に作製することができ、より大きい研磨粒子(例えば、約1ミリメートルを超える大きさ又は更には約5ミリメートルを超える大きさ)もまた容易に作製することができる。いくつかの実施形態では、研磨粒子は、約0.1〜約5ミリメートルの範囲の長さを有するが(典型的には約0.1〜約3ミリメートルの範囲)、他の寸法もまた有用であり、特定の用途ではより好ましい場合さえあり得る。別の態様では、本開示による研磨粒子は、典型的には少なくとも1.2:1、又は更には1.5:1、場合によっては少なくとも2:1、あるいは少なくとも2.5:1のアスペクト比を有する。
【0052】
本開示による方法の間に又はそれにより乾燥、焼成、及び/又は焼結された材料は、典型的には、当該技術分野で周知の技法を用いてスクリーニング及び等級付けされる。例えば、乾燥した粒子をスクリーニングして好ましい大きさを選択してから焼成することができる。焼結した研磨粒子は、典型的には、研磨用途に用いる前又は研磨材物品に組み込む前にスクリーニング及び等級付けされる。
【0053】
また、未使用の(典型的には、好ましい大きさの焼結研磨粒子を提供するには小さすぎる粒子である)脱液混合物(典型的にはディスパージョン)材料を、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)に概ね説明されているようにリサイクルすることも本開示の範囲内である。例えば、第1のディスパージョンを上述のように作製し、乾燥、破砕、及びスクリーニングし、次いで、例えば、媒液(例えば、水性)と、ベーマイトと、第1のディスパージョンから得た脱液した材料と、所望により金属酸化物及び/又は金属酸化物前駆体とを混合することにより、第2のディスパージョンを作製することができる。リサイクルした材料は、理論上の金属酸化物に基づいて、脱液され変換された(焼成工程及び焼結工程を含む)ディスパージョンを、理論上のAl含有量が例えば少なくとも10パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも50パーセント、又は更には最高100パーセントまで(100パーセントを含む)となるようにもたらして、焼結研磨粒子を提供することができる。
【0054】
また、例えば、米国特許第1,910,440号(Nicholson)、米国特許第3,041,156号(Rowse)、米国特許第5,009,675号(Kunzら)、米国特許第4,997,461号(Markhoff−Mathenyら)、及び米国特許第5,042,991号(Kunzら)、米国特許第5,011,508号(Waldら)、及び米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)に記載されているように研磨粒子を表面コーティングにより被覆することも、本開示の範囲内である。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示による焼結α−アルミナ系研磨粒子は、ジルコニアコーティングを更に含む。理論による拘束は望まないが、そのような被覆研磨粒子は、そのコーティングが研磨粒子の表面にテクスチャを追加することによりビトリファイドバインダーへの研磨粒子の機械的密着性を高めるので、ビトリファイドボンドを用いる結合研磨材に特に有用であると考えられる。更に、そのようなコーティングは、研磨粒子がビトリファイドバインダーと反応し、研磨粒子を弱めることがないように、研磨粒子を保護すると考えられる。
【0056】
そのようなジルコニアコーティングは、例えば、上記の含浸法により適用することができ、そのジルコニア供給源は、例えばジルコニウムオキシニトレート及び/又はジルコニウムヒドロキシニトレートである。
【0057】
典型的には、本開示による研磨粒子は、α−アルミナ結晶子の平均の大きさが0.05マイクロメートル〜20マイクロメートルの範囲、いくつかの実施形態では0.1マイクロメートル〜1.0マイクロメートルの範囲であるが、これは要件ではない。
【0058】
本開示にしたがって作製した研磨粒子は様々な密度を有する場合があり、典型的にはそれはプロセス条件(例えば、焼結条件)に依存する。有用な密度は、典型的には、意図される最終用途に依存するであろう。いくつかの実施形態では、本開示による研磨粒子は、少なくとも3.7、3.75、3.8、3.85、3.9、又は更には少なくとも3.95g/cmの密度(すなわち、真密度)を有するが、他の密度もまた使用することができる。
【0059】
本開示による研磨粒子は、優れた硬度を示し得る。したがって、いくつかの実施形態では、それらは、少なくとも19、20、又は更には21ギガパスカル(GPa)の平均硬度を有し得る。
【0060】
本開示の材料の平均硬度は次のように決定することができる。典型的には、直径約2.5cm、高さ約1.9cmの樹脂シリンダで、取り付け用樹脂(イリノイ州Lake BluffのBuehler Ltd.から商品名「TRASOPTIC POWDER」で入手した)に材料の切片を取り付ける。取り付け部分を、ポリッシャ(商品名「ECOMET 3」でイリノイ州Lake BluffのBuehler Ltd.から入手可能なものなど)を使用して、従来の研磨技法を用いて準備する。試料を70マイクロメートルのダイヤモンドホイールで約3分間磨き、続いてそれぞれ45、30、15、9、3、及び1マイクロメートルのスラリーで5分間の研磨を行う。微小硬度測定は、ビッカース圧子を取り付けた従来の微小硬度計(MITUTOYO MVK−VLの商品名でミツトヨ(株)(日本国東京)など)から入手できるものなど)を使用し、圧入荷重を500グラムとして行うことができる。微小硬度測定は、例えば、ASTM試験方法E384「Test Methods for Microhardness of Materials」(1991)に記載されるガイドラインに従って行う。
【0061】
本開示による研磨粒子は、例えば、破砕又は成形することが可能である。
【0062】
本発明による研磨粒子、特に破砕研磨粒子は、例えば、ANSI(米国規格協会)、FEPA(欧州研磨材製造業者連盟)、及びJIS(日本工業規格)などの業界で認識されている等級分けの基準を使用するなどの当該分野で周知の技術を使用して、スクリーニングし、等級分けすることができる。本開示による研磨粒子は、典型的には約0.1〜約5000マイクロメートル、より典型的には約1〜約2000マイクロメートル、好ましくは約5〜約1500マイクロメートル、より好ましくは約100〜約1500マイクロメートルである広範囲の粒径で使用することができる。
【0063】
ANSI等級表記の例としては、ANSI 4、ANSI 6、ANSI 8、ANSI 16、ANSI 24、ANSI 36、ANSI 40、ANSI 50、ANSI 60、ANSI 80、ANSI 100、ANSI 120、ANSI 150、ANSI 180、ANSI 220、ANSI 240、ANSI 280、ANSI 320、ANSI 360、ANSI 400、及びANSI 600が挙げられる。FEPA等級表記としては、P8、P12、P16、P24、P36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、P150、P180、P220、P320、P400、P500、P600、P800、P1000、及びP1200が挙げられる。JIS等級表記としては、JIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、及びJIS10,000が挙げられる。
【0064】
本開示による成形研磨粒子は、それらを成形するために用いられる方法により一般に付与される非ランダム形状を有する。例えば、成形研磨粒子は、ピラミッド、切頭ピラミッド、ロッド、又は円錐体の形状であり得る。成形研磨粒子は、ゾル−ゲル混合物の押し出し又はスクリーン印刷により作製することができる(例えば、米国特許第6,054,093号(Torre,Jr.ら)に記載されているように)、又は、製作工具(すなわち、鋳型)を使用するゾル−ゲル鋳型成形プロセスにより作製することができる(例えば米国特許出願公開第2010/0146867 A1号(Bodenら)、同第2010/0151195A1号(Cullerら)、同第2010/0151196 A1号(Adefrisら)、同第2009/0165394 A1号(Cullerら)、及び同第2010/0151201A1号(Ericksonら)に記載されているように)。これらの方法では、所望により粒子を鋳型から外すのを助けるために、初期ディスパージョンに鋳型剥離化合物を含めること、又は、鋳型剥離剤を鋳型表面にコーティングすることが望ましい場合がある。典型的な鋳型剥離剤としては、例えば、ピーナッツオイル又は鉱油、魚油のような油、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、及びグラファイトが挙げられる。
【0065】
別の態様では、本開示は研磨粒子粒塊を提供し、それぞれの粒塊は、バインダーにより一緒に結合された本開示による複数の研磨粒子を含む。
【0066】
別の態様において、本開示は、研磨材物品(例えば、被覆研磨材物品、結合研磨材物品(ビトリファイド砥石、レジノイド砥石、メタルボンド砥石、カットオフホイール、マウンテッドポイント、及びホーニング砥石)、不織研磨材物品、及び研磨ブラシなど)を提供し、それらの研磨材物品は、バインダーと、複数の研磨粒子とを含み、それらの研磨粒子の少なくとも一部は、本開示による研磨粒子(研磨粒子が凝集されているものを含む)である。そのような研磨材物品の作製方法及び研磨材物品の使用方法は、当業者に周知である。更に、本開示による研磨粒子は、研磨化合物(例えば、ポリッシング化合物)、ミリング媒体、ショットブラスト媒体、振動ミル媒体などのスラリーのような、研磨粒子を使用する研磨用途に使用することができる。
【0067】
被覆研磨材物品は、概して、裏材と、研磨粒子と、裏材上に研磨粒子を保持するための少なくとも1つのバインダーと、を含む。適切な裏材の材料の例としては、織布、ポリマーフィルム、バルカンファイバー、不織布、編布、紙、これらの組合せ、及びこれらの処理された形態が挙げられる。バインダーは、無機又は有機バインダー(熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂を含む)を含む任意の好適なバインダーでよい。研磨粒子は、被覆研磨材物品の一層又は二層中に存在し得る。
【0068】
本開示による被覆研磨材物品の代表的な実施形態を図1に示す。図1を参照すると、被覆研磨材物品100は、裏材120と研磨材層130とを有する。研磨材層130は、メイクコート150及びサイズコート160により裏材120(基材)の主面170に固定された、本開示による研磨粒子140を含む。所望により、例えば、サイズ層の上に重ねられる任意のスーパーサイズ層(図示せず)、又は裏材帯電防止処理層(図示せず)のような追加の層もまた含めることができる。
【0069】
本開示による別の代表的な被覆研磨材物品を図2に示す。図2を参照すると、代表的な被覆研磨材物品200は裏材220(基材)と構造化研磨層230とを有する。構造化研磨層230は、裏材220の主面270に固定されたバインダー材料250内に分散された本開示による研磨粒子240を含む複数の成形された研磨材複合体235を含む。
【0070】
本開示による被覆研磨材物品は、必要に応じて、例えば、研磨層上に重ねられた任意のスーパーサイズ層のような追加の層を含んでもよく、あるいは、裏材帯電防止処置層を含んでもよい。
【0071】
被覆研磨材物品に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,734,104号(Broberg)、同第4,737,163号(Larkey)、同第5,203,884号(Buchananら)、同第5,152,917号(Pieperら)、同第5,378,251号(Cullerら)、同第5,436,063号(Follettら)、同第5,496,386号(Brobergら)、同第5,609,706号(Benedictら)、同第5,520,711号(Helmin)、同第5,961,674号(Gagliardiら)、及び同第5,975,988号(Christianson)に見出すことができる。
【0072】
結合される研磨材物品は、典型的には、有機バインダー、金属バインダー、又はビトリファイドバインダーにより一緒に保持された研磨粒子の成形塊を含む。このような成形塊は、例えば、研削ホイール又はカットオフホイールなどのホイールの形態であり得る。ホイールの直径は、典型的には、約1cmから1メートル以上であり、カットオフホイールの直径は約1cmから80cm以上(より典型的には3cm〜約50cm)である。カットオフホイールの厚さは、典型的には約0.5mm〜約5cm、より典型的には約0.5mm〜約2cmである。成形塊は、例えば、ホーニング砥石、セグメント、マウンテッドポイント、円盤(例えば、ダブルディスク研削盤)、又は他の従来の結合研磨材の形状であってもよい。結合される研磨材物品は、典型的には、結合される研磨材物品の総体積に基づいて、約3〜50体積パーセントの結合材料、約30〜90体積パーセントの研磨粒子(又は研磨粒子ブレンド)、最高50体積パーセントまでの添加剤(研削助剤を含む)、及び最高70体積パーセントまでの孔で構成される。
【0073】
代表的な形態はホイールである。図3を参照すると、本開示によるホイール300は、バインダー材料330により保持され、ホイールとして成形され、ハブ320に取り付けられた、本開示による研磨粒子340を含む。
【0074】
結合される研磨材物品に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,543,107号(Rue)、米国特許第4,741,743号(Narayananら)、米国特許第4,800,685号(Haynesら)、米国特許第4,898,597号(Hayら)、同第4,997,461号(Markhoff−Mathenyら)、同第5,037,453号(Narayananら)、及び米国特許第5,863,308号(Qiら)に見出すことができる。
【0075】
不織研磨材物品は、典型的には、開孔質のかさ高のポリマーフィラメント構造物を含み、本開示による研磨粒子は該構造物全体に分配され、かつ有機バインダーにより構造物に粘着結合されているフィラメントの例としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維が挙げられる。図4には、本開示による代表的な不織研磨材物品400を約100倍拡大した概略図が提供されている。本開示によるこのような不織研磨材物品は、本開示の研磨粒子440がバインダー材料460によりその上に接着されている、かさ高の開孔不織布ウェブ450(基材)を含む。
【0076】
不織研磨材物品に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,958,593号(Hooverら)、同第4,227,350号(Fitzer)、同第4,991,362号(Heyerら)、同第5,712,210号(Windischら)、同第5,591,239号(Edblomら)、同第5,681,361号(Sanders)、同第5,858,140号(Bergerら)、同第5,928,070号(Lux)、及び米国特許第6,017,831号(Beardsleyら)に見出すことができる。
【0077】
有用な研磨ブラシとしては、裏材と一体化された複数の剛毛を有するものが挙げられる(米国特許第5,443,906号(Pihlら)、同第5,679,067号(Johnsonら)、及び同第5,903,951号(Iontaら)を参照)。好ましくは、そのようなブラシは、ポリマーと研磨粒子の混合物を射出成形することにより作製される。
【0078】
好適なバインダー材料は、例えば、熱硬化性有機ポリマーのような有機バインダーを含む。好適な熱硬化性有機ポリマーの例としては、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ペンダントα、β−不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、アクリル化ウレタン、アクリル化エポキシ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。バインダー及び/又は研磨材物品はまた、繊維、潤滑剤、湿潤剤、揺変性材料、界面活性剤、顔料、染料、帯電防止剤(例えば、カーボンブラック、酸化バナジウム、グラファイトなど)、カップリング剤(例えば、シラン、チタネート、ジルコアルミネートなど)、可塑剤、懸濁化剤などの添加剤を含むことができる。これらの任意の添加剤の量は、好ましい特性を提供するように選択する。カップリング剤は、研磨粒子及び/又はフィラーとの接着力を改善することができる。バインダーの化学的性質は、熱硬化、放射線硬化、又はそれらの組み合わせにより硬化させることができる。バインダーの化学的性質についての追加の詳細は、米国特許第4,588,419号(Caulら)、米国特許第4,751,138号(Tumeyら)、及び米国特許第5,436,063号(Follettら)に見出すことができる。
【0079】
ビトリファイド結合研磨材に関し、より具体的には、非晶質構造を示し、典型的には硬質である、ガラス質結合材料が当該技術分野で周知である。場合によっては、ガラス質結合材料は結晶相を含む。本開示による、結合されたビトリファイド研磨材物品は、ホイール(カットオフホイールを含む)、ホーニング砥石、マウンテッドポイント又は他の従来の結合研磨材の形状を有し得る。本開示による代表的なビトリファイド結合研磨材物品は、ホイールである。
【0080】
ガラス質結合材料を形成するために使用される金属酸化物の例としては、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、ソーダ、カルシア、ポタシア、チタニア、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化リチウム、マグネシア、ボリア、ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸ガラス、リチウムアルミニウムシリケート、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。典型的には、ガラス質結合材料は、10〜100パーセントのガラスフリットを含む組成物から形成され得、より典型的には20〜80パーセントのガラスフリット、又は30〜70パーセントのガラスフリットを含む組成物から形成され得る。ガラス質結合材料の残りの部分は、非フリット材料であり得る。あるいは、ガラス質の結合剤は、非フリット含有組成物に由来してもよい。ガラス質結合材料は、典型的には、約700℃〜約1500℃の範囲の温度で、通常は約800℃〜約1300℃の範囲、場合によっては約900℃〜約1200℃の範囲、又は更には約950℃〜約1100℃の範囲の温度で熟成される。結合が熟成する実際の温度は、例えば、その特定の結合化学に依存する。
【0081】
いくつかの実施形態において、ビトリファイド結合材料は、シリカ、アルミナ(好ましくは、少なくとも10重量%のアルミナ)、及びボリア(好ましくは、少なくとも10重量%のボリア)を含むビトリファイド結合材料を含む場合がある。ほとんどの場合、ビトリファイド結合材料は、更に、アルカリ金属酸化物(例えば、NaO及びKO)(場合によっては、少なくとも10重量%のアルカリ金属酸化物)を含む。
【0082】
バインダー材料は、典型的には粒子状物質の形態のフィラー又は研削助剤もまた含み得る。典型的には、粒子状物質は無機材料である。本開示に有用なフィラーとしては、金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム(例えば、チョーク、方解石、マール、トラバーチン、大理石、及び石灰石)、炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム)、シリカ(例えば、石英、ガラスビーズ、ガラスバブル、及びガラス繊維)ケイ酸塩(例えば、タルク、粘土(モンモリロナイト)長石、雲母、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム)、金属硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アルミニウム)、石膏、バーミキュライト、木粉、アルミニウム三水和物、カーボンブラック、金属酸化物(例えば、酸化カルシウム(石灰)、酸化アルミニウム、二酸化チタン)、及び金属亜硫酸塩(例えば、亜硫酸カルシウム)が挙げられる。
【0083】
一般に、研削助剤を添加すると、研磨材物品の耐用寿命が延びる。研磨助剤は、研磨の化学的及び物理的な工程に顕著な影響を有する材料であり、改善された性能をもたらす。研削助剤は、多種多様な材料を包含しており、無機系であっても有機系であってもよい。研磨助剤の薬品群の例としては、ワックス、有機ハロゲン化化合物、ハロゲン化物塩、並びに金属及びその合金が挙げられる。有機ハロゲン化化合物は、通常、研磨時に分解し、ハロゲン酸又はガス状ハロゲン化化合物を放出する。このような材料の例としては、テトラクロロナフタレン、ペンタクロロナフタレン、及びポリ塩化ビニルのような塩素化ワックスが挙げられる。ハロゲン化物塩の例としては、塩化ナトリウム、カリウムクリオライト、ナトリウムクリオライト、アンモニウムクリオライト、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、フッ化ケイ素、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムが挙げられる。金属の例としては、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、鉄、及びチタンが挙げられる。他の各種研削助剤としては、イオウ、有機イオウ化合物、グラファイト、及び金属硫化物が挙げられる。異なる研削助剤の組み合わせを使用してもよく、場合によっては、これは相乗効果をもたらし得る。
【0084】
研削助剤は、被覆研磨材物品及び結合研磨材物品に特に有用であり得る。被覆研磨材物品では、研削助剤は、典型的には、研磨粒子の表面上に適用されるスーパーサイズコートに使用される。しかし、場合によっては、研削助剤は、サイズコートに添加される。典型的には、被覆研磨材物品に組み込まれる研削助剤の量は、約50〜300g/m(好ましくは、約80〜160g/m)である。ビトリファイド結合研磨材物品において、研削助剤は、典型的には、物品の細孔に含浸される。
【0085】
研磨材物品は、本発明の開示による研磨粒子を100パーセント含有してもよく、あるいは、他の研磨粒子及び/又は希釈粒子とのそのような研磨粒子のブレンドを含有してもよい。しかしながら、研磨材物品中の研磨粒子の少なくとも約2重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは約30〜100重量%が、本開示による研磨粒子であるべきである。
【0086】
いくつかの例において、本開示による研磨粒子は、別の研磨粒子及び/又は希釈粒子と5対75重量%、約25対75重量%、約40対60重量%、又は約50対50重量%(すなわち、重量で同等量)の割合で配合することができる。
【0087】
適切な従来の研磨粒子の例としては、溶融酸化アルミニウム(白色溶融アルミナ、熱処理された酸化アルミニウム、及び褐色酸化アルミニウムを含む)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナ−ジルコニア、及びゾル−ゲル由来研磨粒子などが挙げられる。従来のゾル−ゲル由来研磨粒子は、シードされていてもよく、シードされていなくてもよい。同様に、それらはランダムな形状であってもよく、あるいは、ロッド又は三角形など、それらに関連付けられた形状を有していてもよい。いくつかの例では、研磨粒子のブレンドは、いずれかのタイプの研磨粒子を100%含んでなる研磨材物品と比較して改善された研削性能を示す研磨材物品をもたらすことができる。
【0088】
研磨粒子のブレンドが存在する場合、そのブレンドを形成する研磨粒子のタイプは、同じサイズのものであってもよい。あるいは、研磨粒子のタイプは、異なる粒径のものであってもよい。例えば、より大きい粒径の研磨粒子が本開示による研磨粒子であって、より小さい粒径の粒子が別の研磨粒子タイプであってもよい。逆に、例えば、より小さい粒径の研磨粒子が本発明による研磨粒子であって、より大きい粒径の粒子が別の研磨粒子タイプであってもよい。
【0089】
適切な希釈粒子の例としては、大理石、石膏、フリント、シリカ、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、ガラス(ガラスバブル及びガラスビーズを含む)、アルミナバブル、アルミナビーズ、及び希釈材凝集体が挙げられる。
【0090】
本開示による研磨粒子は、研磨粒塊と組み合わせてもよい。研磨粒塊の粒子は、典型的には、複数の研磨粒子と、バインダーと、任意の添加剤とを含む。バインダーは有機及び/又は無機であってよい。研磨粒塊は、ランダムに成形されるか、又はそれらの研磨粒塊に関連付けられた既定の形状を有し得る。その形状は、例えば、ブロック、円筒、ピラミッド、コイン、又は正方形であり得る。研磨粒塊の粒子は、約100〜約5000マイクロメートル、典型的には約250〜約2500マイクロメートルの範囲の粒径を有する。
【0091】
研磨粒子は、研磨材物品に均等に分配してもよく、あるいは、研磨材物品の選択された区域又は部分に集中していてもよい。例えば、被覆研磨材では、2層の研磨粒子が存在してもよい。第1の層は、本開示による研磨粒子ではない研磨粒子を含み、第2の層(最も外側の層)は、本開示による研磨粒子を含む。同様に、結合研磨材では、ホイールの2つの異なったセクションがあってもよい。最も外側のセクションは本開示による研磨粒子を含むことができ、一方、最も内側のセクションは本開示による研磨粒子を含まない。あるいは、本開示による研磨粒子が結合される研磨材物品全体に均等に分配されてもよい。
【0092】
本開示は、被加工物を研磨する方法を提供する。この方法は、本開示による研磨粒子を被加工物の表面と摩擦接触させる工程と、研磨粒子及び被加工物の表面の少なくとも一方を、他方に対して動かして、被加工物の表面の少なくとも一部分を研磨する工程と、を含む。本開示による研磨粒子で研磨する方法は、例えば、スナッギング(すなわち、高圧高ストック除去)から、ポリッシング(例えば、被覆研磨ベルトで医療用インプラントをポリッシングすること)までを含み、後者は、典型的には、より細かい等級(例えばANSI 220以上の細かさ)の研磨粒子で行われる。研磨粒子は、ビトリファイド結合砥石によるカムシャフトの研削のような精密研磨用途にもまた使用され得る。特定の研磨用途に使用する研磨粒子の大きさは、当業者には明らかであろう。
【0093】
研磨工程は乾燥又は湿潤状態で行うことができる。湿潤状態での研磨では、十分に浸すために軽い霧の形態で供給される液体を導入することができる。一般的に用いられる液体の例としては、水、水溶性油、有機潤滑剤、及び乳剤が挙げられる。液体は、研磨に伴う熱を下げる役割を果たすことができる、及び/又は潤滑剤として作用することができる。液体は、例えば殺菌剤、消泡剤などのような添加剤を少量含んでもよい。
【0094】
被加工物の例としては、アルミニウム金属、炭素鋼、軟鋼(例えば、1018軟鋼及び1045軟鋼)、工具鋼、ステンレス鋼、硬化鋼、チタン、ガラス、セラミクス、木材、木材様材料(例えば、合板及びパーティクルボード)、塗料、塗装面、有機被覆表面などが挙げられる。研磨中に付加される力は、典型的には、約1〜約100キログラム(kg)の範囲であるが、他の圧力もまた使用してよい。
【0095】
以下の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例に記載する特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0096】
本開示の選択された実施形態
実施形態1において、本開示は、研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子のそれぞれは、α−アルミナ結晶相と、α−アルミナ結晶相及びβ−アルミナ結晶相を合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相とを含むものであり、β−アルミナ結晶相は、実験式(X)(Q)Al1017により表され、式中、
XはSr、Ca、及びBaからなる群から選択され、
QはMg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択される。
【0097】
実施形態2において、本開示は、実施形態1による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子のそれぞれは、10重量%未満のマグネトプラムバイト結晶相を含む。
【0098】
実施形態3において、本開示は、実施形態1又は2による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、0.04〜2.60重量%のXO及び0.01〜4.5重量%のQOを含む。
【0099】
実施形態4において、本開示は、実施形態1〜3のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、α−アルミナ、鉄酸化物及びこれら前駆体、クロミア及びその前駆体からなる群から選択されるシード粒子を含む。
【0100】
実施形態5において、本開示は、実施形態1〜4のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、少なくとも3.7g/cmの密度、及び少なくとも19GPaの硬度を有する。
【0101】
実施形態6において、本開示は、実施形態1〜5のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、研磨粒子のそれぞれは、0.1重量%未満の希土類酸化物を含有する。
【0102】
実施形態7において、本開示は、実施形態1〜6のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、成形研磨粒子を含む。
【0103】
実施形態8において、本開示は、実施形態1〜6のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、精密に成形された研磨粒子を含む。
【0104】
実施形態9において、本開示は、実施形態1〜6のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、破砕された研磨粒子を含む。
【0105】
実施形態10において、本開示は、実施形態1〜9のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を提供するものであって、その研磨粒子は、研磨材産業規格公称等級に準拠している。
【0106】
実施形態11において、本開示は、実施形態10による研磨粒子を提供するものであって、研磨材産業規格公称等級は、ANSI 4、ANSI 6、ANSI 8、ANSI 16、ANSI 24、ANSI 36、ANSI 40、ANSI 50、ANSI 60、ANSI 80、ANSI 100、ANSI 120、ANSI 150、ANSI 180、ANSI 220、ANSI 240、ANSI 280、ANSI 320、ANSI 360、ANSI 400、及びANSI 600からなる群から選択される。
【0107】
実施形態12において、本開示は、実施形態10による研磨粒子を提供するものであって、研磨材産業規格公称等級は、P8、P12、P16、P24、P36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、P150、P180、P220、P320、P400、P500、P600、P800、P1000、及びP1200からなる群から選択される。
【0108】
実施形態13において、本開示は、実施形態10による研磨粒子を提供するものであって、研磨材産業規格公称等級は、JIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、及びJIS10,000からなる群から選択される。
【0109】
実施形態14において、本開示は、被加工物を研磨する方法を提供し、本方法は、
実施形態1〜13のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を被加工物の表面と摩擦接触させる工程と、
研磨粒子及び被加工物の表面のうちの少なくとも一方を他方に対して移動させて、被加工物の表面の少なくとも一部分を研磨する工程と、を含む。
【0110】
実施形態15において、本開示は、実施形態14にしたがって被加工物を研磨する方法を提供し、被加工物は、ステンレス鋼を含む。
【0111】
実施形態16において、本開示は、バインダー材料に保持されている、実施形態1〜13のいずれか1つの実施形態による研磨粒子を含む研磨材物品を提供する。
【0112】
実施形態17において、本開示は、実施形態16による研磨材物品を提供し、そのバインダー材料は基材の上に配置される。
【0113】
実施形態18において、本開示は、実施形態16又は17による研磨材物品を提供し、その研磨材物品は、研磨粒子と、裏材の主面に固定されたバインダー材料とを含む研磨層を備えており、研磨層は、メイクコートとサイズコートとを含む。
【0114】
実施形態19において、本開示は、実施形態16又は17による研磨材物品を提供し、その研磨材物品は、研磨粒子と、裏材の主面に固定されたバインダー材料とを含む研磨層を備えており、研磨層は、複数の成形された研磨材複合体を含む。
【0115】
実施形態20において、本開示は、実施形態17による研磨材物品を提供し、その基材は、かさ高の開孔不織繊維ウェブを含む。
【0116】
実施形態21において、本開示は、実施形態16による研磨材物品を提供し、その研磨材物品は、結合される研磨材物品を含む。
【0117】
実施形態22において、本開示は、研磨粒子の製造方法を提供し、その方法は、
アルミナ前駆体材料を含むディスパージョンを提供する工程であって、アルミナ前駆体材料が、
アルミニウムイオンと、
Sr、Ca、及びBaからなる群から選択される少なくとも1つの第1の二価カチオンと、
Mg、Co、Ni、及びZnからなる群から選択される少なくとも1つの第2の二価カチオンと、を含むものである、工程と、
シード粒子をディスパージョンと混合する工程であって、シード粒子が、アルミナ前駆体材料からα−アルミナへの変換を促進する成核剤又はその前駆体を含むものである、工程と、
ディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換する工程と、
研磨粒子を提供するために研磨材前駆体粒子を焼結する工程であって、研磨粒子のそれぞれは、α−アルミナ結晶相と、α−アルミナ結晶相及びβ−アルミナ結晶相を合わせた総重量に基づいて0.25〜20重量%のβ−アルミナ結晶相とを含むものである、工程と、を含む。
【0118】
実施形態23において、本開示は、実施形態22による方法を提供するものであって、その研磨粒子のそれぞれは、10重量%未満のマグネトプラムバイト結晶相を含む。
【0119】
実施形態24において、本開示は、実施形態22又は23による方法を提供し、そのβ−アルミナ結晶相は、実験式(X)(Q)Al1017により表され、式中、
Xは第1の二価カチオンを表し、Sr、Ca、Baからなる群から選択され、
Qは第2の二価カチオンを表し、Mg、Co、Ni、Zn、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0120】
実施形態25において、本開示は、実施形態22〜24のいずれか1つの実施形態による方法を提供し、前記ディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換する工程は乾燥工程を含む。
【0121】
実施形態26において、本開示は、実施形態22〜24のいずれか1つの実施形態による方法を提供し、前記ディスパージョンを研磨材前駆体粒子に変換する工程は、乾燥工程と、それにつづく焼成工程とを含む。
【0122】
実施形態27において、本開示は、実施形態22〜26のいずれか1つの実施形態による方法を提供し、そのシード粒子は、α−アルミナ、α−Fe、α−Cr、又はこれらの前駆体のうちの少なくとも1つを含む。
【実施例】
【0123】
特に断らないかぎり、実施例及び本明細書の残りの部分におけるすべての部、比率(%)及び比等は、重量基準である。下表において、「nm」は、「測定せず」を意味する。なお、以下の実施例のうち、実施例34,62〜64は参考例である。
【0124】
実施例を調製するために使用した様々な原材料を表1(下記)にまとめた。
【0125】
【表1】
【0126】
研磨ディスクの調製方法
厚さ0.83mm(33ミル)のバルカンファイバー裏材を有する、直径7インチ(17.8cm)、心棒穴直径8分の7インチ(2.2cm)のディスク(DYNOS GmbH(ドイツ、Troisdorf)から入手したDYNOS VULCANIZED FIBRE)に、49.15重量部のレゾールフェノール樹脂、40.56重量部のフィラー、0.1重量部の界面活性剤1、及び10.19重量部の水からなるメイクコート組成物を、3.5グラム/ディスク(g/disc)でコーティングした。次いで、15.0g/discの研磨粒子、次いで、29.42重量部のレゾールフェノール樹脂、50.65重量部の研削助剤1、1.81重量部の界面活性剤1、及び18.12重量部の水からなる13.0g/discのサイズコート組成物で、ディスクを静電コーティングした。次いで、90℃で90分間ディスクを加熱した。次いで、部分的に硬化したディスクを、30.96重量部のエポキシ樹脂、56.34重量部の研削助剤2、0.78重量部の界面活性剤2、0.36重量部の硬化剤、0.04重量部の消泡剤、及び11.52重量部の水からなるスーパーサイズコート10グラムで更にコーティングした。102℃で10時間硬化した後、得られた研磨ディスクを曲げた。
【0127】
研削試験
以下の手順を用いて研磨ディスクを試験した。評価用の直径7インチ(17.8cm)の研磨ディスクを、7インチ(17.8cm)のリブ付きディスクパッド平面皿(3M Company(ミネソタ州St.Paul)から入手した「80514 Extra Hard Red」)が装備された回転研削盤に取り付けた。次に、研削盤を稼動させ、0.75×0.75インチ(1.9×1.9cm)の予め計量した304ステンレス鋼棒の末端面を、12ポンド(5.5kg)の荷重下で押し付けた。この荷重下でのこの被加工物に対する研削盤の結果的な回転速度は5000rpmであった。この被加工物を、これらの条件下で合計25回、12秒の研削インターバル(パス)で研磨した。それぞれの12秒インターバルの後、被加工物を室温まで冷却させ、計量して、研磨動作による切削量を測定した。試験結果は、切削量の合計(少なくとも3つの研磨ディスクの平均)及び対照ディスク(後述)のパーセントとして表される切削量として報告した。対照ディスクは、理想的には実施例1の研磨粒子と同じように作製された研磨粒子を使用したこと、それらの研磨粒子がMgO 1.2%、La 2.4%、及びY 1.2%のゾル−ゲル変性剤を含んでいたことを除いて、上記の手順により調製した。
【0128】
硬度試験
研磨グレインのビッカース微小硬度は、ダイヤモンド圧子を用いる従来の微小硬度試験装置(MINILOAD 2 MICROHARDNESS TESTER、E.Leitz GmbH、ドイツ、Wetzlar)を用いて測定した。圧子(面角136度の先端がよく磨かれた四角錐形ダイヤモンド)を被測定試料に徐々に、滑らかに接触させた。所定荷重は500グラムとした。各実施例につき10回の測定値の平均を報告した。
【0129】
焼成(calcining)後の焼き(firing)/焼結(sintering)条件
焼成した研磨グレイン前駆体をロータリー焼結炉に供した。焼結炉は、水平に対して傾斜した1.22メートルの長さの内径7.6cmのシリコンカーバイドチューブで構成されており、35cmのホットゾーンを有した。SiC電気加熱素子により外部から熱を与えた。種々の実施例の焼きは、5.8度の傾斜で7.0rpm(表2では「FF」と記されている)か、2.9度の傾斜で3.0rpm(表2では「SF」と記されている)のいずれかで稼動するロータリー焼結炉により、表2に示す条件で行った。
【0130】
生成物を炉から室温の空気中に出し、そこで金属容器に収集し、室温に冷ました。
【0131】
実施例1〜3
実施例1は、シードを入れずにアルミナのゾル−ゲルから調製した成形研磨粒子であった。実施例1の成形研磨粒子は、次のレシピを用いてベーマイトのゾル−ゲルを調製することにより作製した。DISPERAL酸化アルミニウム一水和物粉末(1600重量部(Sasol North Americaより入手))は、水(2400重量部)と70%の硝酸水溶液(72重量部)とを含有する溶液を11分間、高せん断混合することにより分散させた。得られたゾル−ゲルは、コーティング前に少なくとも1時間エージングした。ゾル−ゲルは、28ミル(0.71mm)の深さ及び各辺110ミル(2.78mm)の三角形の成形鋳型キャビティを有する生産用金型に押し入れた。成形鋳型の側壁と底部との間の抜き勾配角は98度であった。金型は、成形鋳型のキャビティの50%が、三角形の一辺と90度の角度で交差するキャビティの底面から出る8つの平行の隆起部を有し、残りのキャビティが平滑な成形鋳型底面を有するように製造された。平行な隆線は0.277mmごとに離隔され、隆線の断面は、高さ0.0127mmで、先端におけるそれぞれの隆線の辺の間の角度が45度の三角形であった。メタノール中1%のピーナッツオイルの離型剤を使用して生産金型をコーティングし、約0.5mg/インチ(mg/in)のピーナッツオイルを金型に適用した。過剰なメタノールは、生産工具のシートを空気対流炉内に45℃で5分間配置することにより除去した。ゾル−ゲルは、生産用金型の開口部が完全に充填されるように、パテナイフを使用してキャビティに押し入れた。ゾル−ゲルで被覆された生産用金型は45℃の空気対流炉に少なくとも45分間配置して乾燥させた。超音波ホーン上を通過させることにより、前駆成形研磨粒子を生産用金型から取り出した。前駆成形研磨粒子を約650℃で焼成した後、表2の濃度(酸化物として報告)にするように、硝酸溶液で飽和した。飽和した前駆成形研磨粒子を乾燥させ、その後、この粒子は再び650℃で焼成され、約1400℃で焼結された。焼成及び焼結の両方は、ロータリーチューブ炉を用いて行われた。得られた焼結した研磨粒子を炉から室温の空気中に出し、金属容器に収集し、室温に冷ました。
【0132】
焼き、焼結した研磨粒子の密度は、Micromeritics(ジョージア州Norcross)ACCUPYC 1330ヘリウムピクノメーターを用いて測定した。結果を表3に報告する。
【0133】
実施例2及び3、並びに比較例Aは、表2に示すように変性剤組成物を変更したことを除き、実施例1と同じように調製した。実施例3の粒子の試験は、硬度試験にしたがって行った。試験結果を表3に示す。実施例3の焼結した成形研磨粒子の一部を、従来の被覆研磨材の作製手順を用いて被覆研磨ディスクに取り込み、研削試験にしたがって試験した。
【0134】
実施例4〜9
実施例4〜9は、表2に示すように変性剤組成物を変更し、Feシードを加え、焼き条件を変更したことを除き、実施例1と同じように調製した。β−アルミナを含有するこれらの実施例は全てシードされており、はるかに高い密度及び高度を実現した。表3に報告するように、研削性能は、全ての例において、シードされていない実施例3を超えており、2例においては、対照のディスクと同等又はそれ以上であった。
【0135】
実施例10〜15
実施例10〜15は、様々なレベルのFeシードを有する未成形(破砕)粒子として、表2に示す焼き条件で調製した。実施例15は、Alでシードした。これらの実施例は、次のレシピを用いてベーマイトのゾル−ゲルを調製することにより作製した。DISPERALとして入手可能な酸化アルミニウム一水和物粉末(800重量部)(Sasol North America)の分散は、水(1800重量部)と70%の硝酸水溶液(44重量部)とを含有する溶液を1分間、高せん断混合することにより行った。ゾルを22cm×33cm×5cmのPYREXトレーに注ぎ入れ、100℃の強制空気炉で約24時間乾燥した。鋼板の間に1.1mmの隙間を有するBraun型UD微粉砕機を用い、得られた乾燥した材料を破砕し、粒子を形成した。粒子をスクリーニングし、0.125〜1mmの大きさの粒子を提供した。
【0136】
前駆成形研磨粒子を約650℃で焼成し、次いで以下の濃度(酸化物として報告した)、すなわちZnO3.0%、SrO1.5%の、硝酸混合液で含浸した。飽和した成形研磨粒子の前駆体を乾燥させ、その後、粒子は再び650℃で焼成され、約1400℃(SF条件)で焼結された。
【0137】
表3の結果から、シードレベルを上げると密度及び高度が増加し、0.3%のレベルで19GPaの硬度が達成されたことがわかる。実施例15のアルミナシードの添加もまた、21.2GPaという高い硬度を達成した。
【0138】
実施例16〜19
実施例16〜19は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。実施例16〜19は、SF条件下で焼いた。結果を表3に示す。SF条件でのより長い焼き時間は、より低い温度でのグレインの稠密化を可能にし、1340℃という低温で3.90g/cmの密度を達成した。
【0139】
実施例20〜34及び比較例B〜F
実施例20〜34は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。概して、SrOの量が低くZnOの量が高いものが最良の研削性能をもたらし、FF条件はSF条件より優れた研削をもたらすことが示された。
【0140】
比較例B〜Fは、表2に示すようにスピネルフォーマーの欠如も含めて、変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて実施例1と同じように調製し、したがって、マグネトプラムバイト相(SrAl1219又はCaAl1219)を生成した。表3に示すように、マグネトプラムバイト相を伴う実施例もまた、FF条件下でより良い研削をもたらしたが、β−アルミナの実施例よりは劣っていた。
【0141】
比較例Fは、Feシードのみを変性剤としたことを除き、実施例1と同じように調製した。これは、変性剤を用いずにシードされる実施例である。表3に示すように、その物性は良好であるが、研削は、β−アルミナを含有する実施例の多くより劣っている。
【0142】
実施例35〜39
実施例35〜39は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。
【0143】
これらの実施例は実施例20〜24と同様であるが、ZnOの代わりに同等のモル%のMgOを使用する。実施例35〜39と実施例20〜24を比較することにより、MgOを含有するグレインの方がより良い研削をすることが表3からわかる。
【0144】
実施例40〜43
実施例40〜43は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。これらの実施例は、様々な量のSrO及びMgOの使用を実証しており、表3に報告したような良好な性能を示した。
【0145】
実施例44〜49
実施例44〜49は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。実施例44〜48は、実施例35〜39のSFバージョンである。表3からわかるように、研削性能は非常に類似している。
【0146】
実施例49は、1410℃での実施例48のFFバージョンであり、より典型的な1390℃との比較である。表3からわかるように、物性は類似している。
【0147】
実施例50〜52
実施例50〜52は、表2に示すように、変性剤組成物の変更、AlがFeの代わりにシードとして存在すること、及び焼き条件を変更したことを除いて、実施例10〜15と同じように調製した。表3からわかるように、FF条件は、顕著に低い密度を有する粒子を生成するときでさえも高い硬度を維持する。
【0148】
実施例53〜56
実施例53〜56は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。ZnO及びMgOは、β−アルミナ相に対応できるAlを有する最も一般的で最も安価なスピネルフォーマーである。表3は、実施例53〜56が他のスピネルフォーマー、例えば、CoO及びNiOもまた使用できることを示している。
【0149】
実施例57〜61
実施例57〜61は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更、並びに生産用金型のキャビティの側面の寸法を54ミル(1.37mm)に下げたことを除いて、実施例1と同じように調製した。
【0150】
これらの実施例は、存在するFeシード粒子の量が研削性能に与える効果を示している。表3からわかるように、性能は、シード粒子のレベルが低いほど概して良好であり、高いレベルで急速に低下する。
【0151】
実施例62〜64
実施例62〜64は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。これらの実施例はβ−アルミナフォーマーとしてCaOを利用した。研削は、対照ディスクと同等であった。
【0152】
実施例65〜67及び比較例G
実施例65〜67及び比較例Gは、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。表3からわかるように、比較的少量のSrOが研削性能に影響を与えており、0.05%のレベルでさえもわずかな向上が見られることがわかる。研削性能は、SrO含有量の増加とともに急速に向上する。
【0153】
実施例68〜72及び比較例H
実施例68〜72及び比較例Hは、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更、並びに生産用金型のキャビティの側面の寸法を54ミル(1.37mm)に下げたことを除いて、実施例1と同じように調製した。これらは、Alがシードされた実施例である。表3からわかるように、0.3% SrO及び2.0% MgOを用いた実施例70は比較例Hより優れている。
【0154】
実施例73
実施例73は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更、並びに生産用金型のキャビティの側面の寸法を54ミル(1.37mm)に下げたことを除いて、実施例1と同じように調製した。実施例73は、BaOを用いてβ−アルミナフォーマー(BaMgAl1017)として作製した。それは、よく焼け、仕上がり密度は3.888g/cmであった。
【0155】
実施例74
実施例74は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更、並びに実施例10で説明するように粒子を成形する代わりに破砕したことを除いて、実施例10と同じように調製した。表3に報告した試験結果を比較例Iと比較すべきである。
【0156】
比較例I
この比較例は、3M Companyから入手可能なCUBITRON 321、等級36の破砕研磨グレイン(希土類酸化物含有α−アルミナ)である。
【0157】
実施例75〜78
実施例75〜78は、表2に示す変性剤組成物の変更及び焼き条件の変更を除いて、実施例1と同じように調製した。ZrOは、表2に示すレベルで実施例76〜78に添加した。表3からわかるように、実施例75〜78は、研削試験において対照ディスクより良好な性能であった。
【0158】
表2は、上記の実施例の組成物及び焼き条件を示している。
【0159】
研磨ディスクは、研磨ディスク調製方法にしたがって上記の研磨粒子を用いて作製した。表3は、これらの研磨ディスクの物性及び研削試験の結果を示す。
【0160】
【表2-1】
【0161】
【表2-2】
【0162】
【表2-3】
【0163】
【表3-1】
【0164】
【表3-2】
【0165】
当業者であれば、本開示の、より詳細には付属の「特許請求の範囲」に記載の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示に対して他の改変及び変更を行うことが可能である。異なる実施形態の態様を異なる実施形態の他の態様と部分的若しくは全体的に互換すること又は組み合わせることが可能である点は理解されるであろう。特許証のための上記の出願において引用された参考文献、特許、又は特許出願はいずれも一貫性を有するようにそれらの全容を本明細書に援用する。これらの援用文献の一部と本明細書との間に不一致又は矛盾がある場合、上記の説明文における情報が優先するものとする。特許請求される開示内容を当業者が実行することを可能ならしめるために示される上記の説明文は、「特許請求の範囲」及びそのすべての均等物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4