特許第6126712号(P6126712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6126712
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/042 20060101AFI20170424BHJP
   F15B 11/044 20060101ALI20170424BHJP
   F15B 11/04 20060101ALI20170424BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   F15B11/042
   F15B11/044
   F15B11/04 J
   F16K31/06 310C
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-28772(P2016-28772)
(22)【出願日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年2月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100197516
【弁理士】
【氏名又は名称】秋岡 範洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達夫
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−263302(JP,A)
【文献】 特開平3−28586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/042−11/044
F15B 11/04
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧アクチュエータの伸縮作動を制御する流体圧アクチュエータの制御装置であって、
前記流体圧アクチュエータの伸縮位置を検知する検知部と、
前記流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御するソレノイドバルブと、
前記ソレノイドバルブへの通電量を制御して前記ソレノイドバルブの作動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記検知部によって検知される前記流体圧アクチュエータの実位置と前記流体圧アクチュエータの目標位置との位置偏差を算出する偏差算出部と、
前記位置偏差に基づいて、前記ソレノイドバルブへの通電量を増加させるか又は減少させるかを判定する加減判定部と、
前記位置偏差に基づいて、前記ソレノイドバルブへ通電する指令電流値を出力する指令値出力部と、
前記加減判定部の判定結果に基づいて、前記ソレノイドバルブに通電するオフセット電流値を設定するオフセット電流出力部と、を有し、
前記ソレノイドバルブは、前記指令電流値と前記オフセット電流値とを加算した値に基づいて制御され、
前記オフセット電流出力部は、前記加減判定部が前記通電量を減少させると判定した場合には、第1電流値を前記オフセット電流値として設定し、前記加減判定部が前記通電量を増加させると判定した場合には、前記第1電流値よりも大きい第2電流値を前記オフセット電流値として設定することを特徴とする流体圧アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
前記ソレノイドバルブは、通電によって電磁力を発生するソレノイドと、前記ソレノイドの電磁力に抗する付勢力を発揮する付勢部材と、を有して、前記ソレノイドへの通電量の増加に伴い開弁し、
前記第1電流値は、前記付勢部材の付勢力によって前記ソレノイドバルブが閉弁する際に前記ソレノイドへ通電される通電量の総和である閉弁通電量以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体圧アクチュエータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体圧アクチュエータの制御装置として、油圧ポンプより吐出された作動油を左右のリフトシリンダに供給又はリフトシリンダから排出させ、リフトシリンダを作動させるリフトシリンダ用電磁比例弁を備えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−96997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流量をソレノイドバルブによって制御することで流体圧アクチュエータの伸縮作動を制御する場合には、ソレノイドバルブのヒステリシスの影響により伸縮作動の制御性が低下する。具体的には、ヒステリシスの影響によって、ソレノイドバルブを開弁させるために必要な通電量が、ソレノイドバルブが閉弁する際の通電量よりも大きくなる。このように、ヒステリシスによってソレノイドバルブの開弁時の応答性が悪化し、流体圧アクチュエータの制御装置の制御性が低下する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧アクチュエータの制御装置による制御性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、流体圧アクチュエータの伸縮作動を制御する流体圧アクチュエータの制御装置であって、流体圧アクチュエータの伸縮位置を検知する検知部と、流体圧アクチュエータに給排される作動流体の流れを制御するソレノイドバルブと、ソレノイドバルブへの通電量を制御してソレノイドバルブの作動を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、検知部によって検知される流体圧アクチュエータの実位置と流体圧アクチュエータの目標位置との位置偏差を算出する偏差算出部と、位置偏差に基づいて、ソレノイドバルブへの通電量を増加させるか又は減少させるかを判定する加減判定部と、位置偏差に基づいて、ソレノイドバルブへ通電する指令電流値を決定する指令値決定部と、加減判定部の判定結果に基づいて、ソレノイドバルブに通電するオフセット電流値を出力するオフセット電流出力部と、を有し、ソレノイドバルブは、指令電流値とオフセット電流値とを加算した値に基づいて制御され、オフセット電流出力部は、加減判定部が通電量を減少させると判定した場合には、第1電流値をオフセット電流値として出力し、加減判定部が通電量を増加させると判定した場合には、第1電流値よりも大きい第2電流値をオフセット電流値として出力することを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、オフセット電流出力部によって出力されるオフセット電流値は、通電量を減少させる閉弁時の第1電流値よりも、ソレノイドバルブへの通電量を増加させる開弁時の第2電流値の方が大きく設定される。このように、開弁時では、ソレノイドバルブへより多くのオフセット電流値が予め与えられるため、開弁に必要な指令電流値を小さくすることができ、ソレノイドバルブの応答性が向上する。
【0008】
第2の発明は、ソレノイドバルブが、通電によって電磁力を発生するソレノイドと、ソレノイドの電磁力に抗する付勢力を発揮する付勢部材と、を有して、ソレノイドへの通電量の増加に伴い開弁し、第1電流値は、付勢部材の付勢力によってソレノイドバルブが閉弁する際にソレノイドへ通電される通電量の総和である閉弁通電量以下であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1電流値が閉弁通電量以下であるため、指令電流値がゼロの状態において、ソレノイドバルブを確実に閉弁することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流体圧アクチュエータの制御装置の制御性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧アクチュータの制御装置及び流体圧アクチュエータユニットの構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る第1バルブのバルブ特性を示すグラフ図である。
図4】本発明の実施形態の第1変形例に係る第1バルブのバルブ特性を示すグラフ図である。
図5】本発明の実施形態の第2変形例に係る第1バルブのバルブ特性を示すグラフ図である。
図6】本発明の比較例に係る第1バルブのバルブ特性を示すグラフ図である。
図7】本発明の比較例に係る流体圧アクチュエータの制御装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧アクチュエータの制御装置100について説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、流体圧アクチュエータの制御装置100(以下、単に「制御装置100」と称する。)を備える流体圧アクチュエータユニット10の全体構成について説明する。
【0014】
流体圧アクチュエータユニット10は、例えば、フォークリフトに搭載され、作動流体の流体圧によってリフトシリンダを伸縮作動させて積荷(負荷1)を昇降するものである。
【0015】
以下では、作動流体として作動油が使用され、作業者による操作レバー(図示省略)の操作入力に応じて負荷1を鉛直上下方向に駆動する流体圧アクチュエータユニット10について説明する。
【0016】
流体圧アクチュエータユニット10は、図1に示すように、作動油の給排によって伸縮作動して負荷1を鉛直上下方向に駆動する流体圧アクチュエータとしての油圧シリンダ2と、油圧シリンダ2に作動油を供給するポンプ8と、油圧シリンダ2から排出される作動油が導かれるタンク9と、油圧シリンダ2へ給排される作動油の流量を制御して油圧シリンダ2の伸縮作動を制御する制御装置100と、を備える。
【0017】
油圧シリンダ2は、円筒状のシリンダチューブ3と、シリンダチューブ3内に挿入されるピストンロッド4と、ピストンロッド4の端部に設けられシリンダチューブ3の内周面に沿って摺動するピストン5と、を有する。
【0018】
シリンダチューブ3の内部は、ピストン5によって、ロッド側室6とボトム側室7とに仕切られる。油圧シリンダ2は、ロッド側室6が大気開放され、ボトム側室7には作動油が充填される単動型の油圧シリンダ2である。油圧シリンダ2は、ボトム側室7に供給される作動油の圧力によって伸長作動する。ボトム側室7の作動油圧が低下すると、負荷1の自重によってピストンロッド4及びピストン5が下方へと移動し、油圧シリンダ2が収縮作動する。
【0019】
制御装置100は、ポンプ8から油圧シリンダ2に供給される作動油の流れを制御するソレノイドバルブとしての第1バルブ20と、油圧シリンダ2から排出される作動油の流れを制御するソレノイドバルブとしての第2バルブ25と、油圧シリンダ2の伸縮位置を検知する検知部としてのストロークセンサ30と、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を制御して第1バルブ20及び第2バルブ25の作動を制御するコントローラ40と、を備える。
【0020】
第1バルブ20及び第2バルブ25は、それぞれソレノイド21,26への通電によって生じる電磁力とスプリング22,27のばね力とが釣り合う位置にスプール(図示省略)が移動して、スプールの位置に応じた開口面積で開弁する比例ソレノイドバルブである。第1バルブ20及び第2バルブ25は、ソレノイド21,26への通電量に応じて開口面積が変化することにより、通過する作動油の流量を制御する。
【0021】
第1バルブ20には、ポンプ8に接続されてポンプ8から吐出される作動油が導かれる吐出通路11と、油圧シリンダ2のボトム側室7に連通する供給通路12と、が接続される。
【0022】
第1バルブ20は、吐出通路11と供給通路12との連通を遮断する閉ポジション20Aから、吐出通路11と供給通路12とを連通する開ポジション20Bへと、ソレノイド21への通電量に応じて連続的に切り換わる。第1バルブ20は、ソレノイド21への通電量がゼロ又は後述する第1バルブ20の開弁通電量Io(図3参照)以下である場合には、スプリング22のばね力によって閉ポジション20Aとなる。第1バルブ20は、ソレノイド21への通電量が増加することにより供給通路12に対する吐出通路11の開口面積(流路面積)が増加して、吐出通路11から供給通路12へと導かれる作動油の流量を制御する。
【0023】
供給通路12には、ポンプ8から油圧シリンダ2のボトム側室7への作動油の流れのみを許容するチェック弁16が設けられる。
【0024】
第2バルブ25には、タンク9に接続されるタンク通路13と、油圧シリンダ2のボトム側室7に連通する排出通路14と、が接続される。第2バルブ25は、タンク通路13から排出通路14への作動油の流れのみを許容するチェックポジション25Aから、排出通路14からタンク通路13への作動油の流れを許容する連通ポジション25Bへと、ソレノイド26への通電量に応じて連続的に切り換わる。第2バルブ25は、ソレノイド26への通電量がゼロ又は第2バルブ25の開弁通電量(図示省略)以下である場合には、スプリング27のばね力によってチェックポジション25Aとなる。つまり、第2バルブ25は、ソレノイド26への通電量を増加させることにより、排出通路14とタンク通路13とが連通する開口面積、言い換えれば排出通路14からタンク通路13への導かれる作動油の流路面積が増加して、排出通路14からタンク通路13へと導かれる作動油の流量を制御する。
【0025】
供給通路12と排出通路14とは、両者が合流する共通通路15を介して油圧シリンダ2のボトム側室7に連通する。これに代えて、供給通路12と排出通路14とは、互いに独立して油圧シリンダ2のボトム側室7に連通してもよい。
【0026】
また、制御装置100は、第1バルブ20の上流と下流との差圧が設定された圧力を超えた場合に、ポンプ8からの作動油をタンク9に戻すアンロード弁(図示省略)を備える。差圧によって作動するアンロード弁が設けられることにより、第1バルブ20の前後差圧が一定に保たれる。
【0027】
コントローラ40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。
【0028】
操作レバーを通じて油圧シリンダ2を伸長作動させる操作入力があると、コントローラ40は、第1バルブ20のソレノイド21へ電流を供給して第1バルブ20の作動を制御する一方、第2バルブ25のソレノイド26への電流の供給を遮断する。これにより、第1バルブ20は、閉ポジション20Aから通電量に応じた開度で開弁し、吐出通路11と供給通路12とを連通する。また、第2バルブ25は、チェックポジション25Aとなり、排出通路14からタンク通路13への作動油の流れを遮断する。よって、ポンプ8から吐出される作動油は、第1バルブ20の開口面積に応じた流量に制御され、ボトム側室7に導かれる。これにより、油圧シリンダ2は、ボトム側室7に供給される作動油によって伸長作動して負荷1を上昇させる。
【0029】
操作レバーを通じて油圧シリンダ2を収縮作動させる操作入力があると、コントローラ40は、第2バルブ25のソレノイド26へ電流を供給して第2バルブ25の作動を制御する一方、第1バルブ20のソレノイド21への電流の供給を遮断する。これにより、第2バルブ25は、チェックポジション25Aから通電量に応じた開度で開弁し、排出通路14とタンク通路13と連通する。第1バルブ20は、閉ポジション20Aとなり、作動油の通過を遮断する。また、供給通路12には、チェック弁16が設けられるため、ボトム側室7の作動油が供給通路12を通じて排出されることはない。よって、ボトム側室7の作動油は、第2バルブ25の開口面積に応じた流量に制御されてタンク9へ排出される。これにより、負荷1の自重によってボトム側室7から作動油が排出され、油圧シリンダ2は収縮作動して負荷1を下降させる。
【0030】
以下、図2を参照して、コントローラ40の具体的構成について説明する。
【0031】
コントローラ40は、作業者による操作レバーの操作量に基づいて定められる指令電流値と、操作量によらないオフセット電流値と、を加算した値に応じた電流量で第1バルブ20のソレノイド21及び第2バルブ25のソレノイド26に通電することにより、第1バルブ20及び第2バルブ25の作動を制御する。
【0032】
コントローラ40は、図2に示すように、ストロークセンサ30によって検知される油圧シリンダ2の実位置と油圧シリンダ2を伸縮作動させる目標位置との位置偏差を算出する偏差算出部41と、位置偏差に基づいて、油圧シリンダ2を伸長させるか収縮させるかを判定する伸縮判定部42と、位置偏差に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を増加させるか又は減少させるかを判定する加減判定部43と、位置偏差に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25へ供給する指令電流値を出力する指令値出力部としての第1比例ゲイン出力部44及び第2比例ゲイン出力部45と、加減判定部43の判定結果に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25に通電するオフセット電流値を出力するオフセット電流出力部46と、オフセット電流値と指令電流値とに応じた通電量で第1バルブ20及び第2バルブ25のソレノイド21,26に電流を供給する電流供給部47と、オフセット電流出力部46が出力するオフセット電流値を記憶する記憶部48と、を有する。
【0033】
制御装置100では、作業者の操作入力が油圧シリンダ2を伸長させるものであるか、収縮させるものであるかを伸縮判定部42によって判定して、第1バルブ20を制御するか、第2バルブ25を制御するかが判定される。第1バルブ20と第2バルブ25との制御は、供給するオフセット電流値が異なる点を除き、基本的に同様である。よって、以下では、主に第1バルブ20に関する構成を例に説明し、第2バルブ25に関する構成についての説明は適宜省略する。
【0034】
偏差算出部41は、ストロークセンサ30から入力される油圧シリンダ2の実位置、より具体的にはピストン5の実位置と、作業者による操作入力(操作量)に応じて算出される油圧シリンダ2のピストン5の目標位置と、から両者の差分である位置偏差を算出する。偏差算出部41が算出する位置偏差には、大きさ(絶対値)の情報に加え、目標位置と実位置との大小関係を表すものとして符号の正負も含まれる。
【0035】
伸縮判定部42は、位置偏差の符号の正負、言い換えれば目標位置と実位置との大小関係を判定することにより、油圧シリンダ2を伸長させるか収縮させるかを判定する。つまり、伸縮判定部42によって、第1バルブ20及び第2バルブ25のいずれを作動させるかが判定される。
【0036】
加減判定部43は、位置偏差の変化に基づき、第1バルブ20への通電量を増加させるか(開弁させるか)、減少させるか(閉弁させるか)を判定する。具体的には、所定の制御間隔で実行される後述のフィードバック制御の各制御ステップにおいて、算出した位置偏差が一つ前の制御ステップで算出された位置偏差から増加しているか、減少しているかを判定する。
【0037】
第1比例ゲイン出力部44は、第1バルブ20に供給される指令電流値を出力する。第1比例ゲイン出力部44は、偏差算出部41により算出された位置偏差に比例ゲインKpを乗算し指令電流値として出力する。なお、第2比例ゲイン出力部45は、第2バルブ25に供給される指令電流値を出力するものである。
【0038】
オフセット電流出力部46は、位置偏差によらない電流値としてオフセット電流値を出力する。オフセット電流出力部46は、伸縮判定部42及び加減判定部43の判定結果に基づいて第1バルブ20及び第2バルブ25のそれぞれに対応したオフセット電流値を出力する。具体的には、オフセット電流出力部46は、加減判定部43が通電量を減少させると判定した場合には、第1バルブ20及び第2バルブ25のそれぞれに対応した第1電流値I1をオフセット電流値として出力する。また、オフセット電流出力部46は、加減判定部43が通電量を増加させると判定した場合には、第1バルブ20及び第2バルブ25のそれぞれに対応した第2電流値I2をそれぞれオフセット電流値として出力する。オフセット電流値である第1電流値I1及び第2電流値I2については、後述する。
【0039】
電流供給部47は、指令電流値にオフセット電流値を加算した通電量で第1バルブ20のソレノイド21に電流を供給する。これにより、第1バルブ20が通電量に応じて作動して、通過する作動油の流量が制御される。
【0040】
次に、図3を参照して、オフセット電流値である第1電流値I1及び第2電流値I2について具体的に説明する。以下においても、第1バルブ20を制御するための第1電流値I1及び第2電流値I2について主に説明し、第2バルブ25を制御するための第1電流値I1及び第2電流値I2については、説明を適宜省略する。
【0041】
第1電流値I1及び第2電流値I2は、任意に設定される第1バルブ20の通電量と開度(流量)との関係を規定したバルブ特性(図3参照)に基づいて定められる。第2電流値I2は、第1電流値I1よりも大きな値として設定される。なお、第2バルブ25に対する第1電流値I1及び第2電流値I2は、第1バルブ20と同様に、第2バルブ25のバルブ特性(図示省略)に基づいて定められる。
【0042】
図3に示すように、第1バルブ20のバルブ特性には、通電量を増加させて第1バルブ20を閉ポジション20A(全閉)から開ポジション20B(全開)とする際(以下、「開弁過程」と称する。)の通電量と開度との関係を示す開弁特性と、通電量を減少させて第1バルブ20を開ポジション20Bから閉ポジション20Aとする際(以下、「閉弁過程」と称する。)の通電量と開度との関係を示す閉弁特性と、が含まれる。
【0043】
一般に、ソレノイドバルブにおいては、同じ通電量でソレノイドへ通電した場合であっても、スプール等の弁体が摺動する際の摩擦などに起因して、弁体の移動方向に応じてソレノイドバルブの開度が異なるヒステリシスが生じる。よって、図3に示すように、第1バルブ20のバルブ特性では、第1バルブ20が開弁する際の開弁通電量Ioが、第1バルブ20が閉弁する際の閉弁通電量Icよりも大きくなる。つまり、例えば開度O1とする場合において、開弁特性と閉弁特性との間には、必要な通電量に差分Idが生じる。なお、第1バルブ20のバルブ特性は、全開度にわたって均一の差分Idが生じるものである。
【0044】
第1電流値I1及び第2電流値I2は、以上のような第1バルブ20のバルブ特性に基づいて設定される。具体的には、第1電流値I1は、ソレノイド21への通電量を減少させスプリング22の付勢力によって第1バルブ20が閉弁する際にソレノイド21へ通電される通電量の総和である閉弁通電量Ic(図3参照)である。また、第2電流値I2は、閉弁通電量Icに差分Idを加算した値、つまり、ソレノイド21への通電量を増加させてソレノイド21の電磁力によって第1バルブ20が開弁する際の通電量の総和である開弁通電量Io(図3参照)である。このように、第2電流値I2は、ヒステリシスによる開弁特性と閉弁特性との差分Idだけ第1電流値I1よりも大きく設定される。また、オフセット電流出力部は、第1バルブ20の閉弁過程と開弁過程とで異なる電流値をオフセット電流値として出力する。記憶部48は、第1電流値I1である閉弁通電量Icと、第2電流値I2を設定するために閉弁通電量Icに加算する差分Idとを記憶する。なお、記憶部48は、第2バルブ25のバルブ特性に基づいて定められる第2バルブ25の閉弁通電量(図示省略)と開弁過程と閉弁過程との通電量の差分(図示省略)も記憶している。
【0045】
次に、コントローラ40による油圧シリンダ2のフィードバック制御及び第1バルブ20への通電量の制御方法について説明する。
【0046】
制御装置100では、コントローラ40によって、作業者の操作レバーの操作量に基づいて算出される目標位置と、ストロークセンサ30によって検知される油圧シリンダ2の実位置と、の位置偏差に基づいて所定の時間間隔(制御ステップ)ごとに位置フィードバック制御が行われる。より具体的には、コントローラは、位置偏差の絶対値、位置偏差の値の正負、及び位置偏差の変化の割合に応じて第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を制御することにより、油圧シリンダ2の伸縮作動を制御する。第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量は、位置偏差に応じて出力される指令電流値と、位置偏差によらないオフセット電流値と、に応じて定められる。以下、主に図2を参照して、コントローラによる制御について具体的に説明する。
【0047】
作業者によって操作レバーが操作されると、その操作量に応じて油圧シリンダ2の目標位置が算出される。算出された目標位置は、図2に示すように、偏差算出部41に入力される。操作レバーの操作量と油圧シリンダ2の目標位置との関係は、予め任意に設定される。
【0048】
偏差算出部41は、入力される目標位置からストロークセンサ30が検知した実位置を減算して、位置偏差を算出する。算出された位置偏差は、伸縮判定部42及び加減判定部43に入力される。
【0049】
伸縮判定部42に位置偏差が入力されると、伸縮判定部42は、位置偏差の符号が正であるか負であるかを判定する。伸縮判定部42は、目標位置が実位置よりも大きく、入力された位置偏差の符号が正である場合には、油圧シリンダ2を伸長させると判定する。この場合には、伸縮判定部42は、第1比例ゲイン出力部44に位置偏差を出力すると共に、電流供給部47に対して第1バルブ20へ通電するように通電指令を出力する。また、この場合には、伸縮判定部42は、オフセット電流出力部46に伸長信号を出力する。
【0050】
伸縮判定部42は、目標位置が実位置よりも小さく、位置偏差の符号が負である場合には、油圧シリンダ2を収縮させると判定する。この場合には、伸縮判定部42は、第2比例ゲイン出力部45に位置偏差を出力すると共に、電流供給部47に対して第2バルブ25へ通電するように通電指令を出力する。また、この場合には、伸縮判定部42は、オフセット電流出力部46に収縮信号を出力する。
【0051】
以下では、第1バルブ20の作動を制御して、油圧シリンダ2を伸長させる場合、言い換えれば位置偏差の符号が正であって第1比例ゲイン出力部44に位置偏差が入力される場合を例に説明し、第2バルブ25の作動を制御して油圧シリンダ2を収縮させる場合は説明を適宜省略する。
【0052】
位置偏差が入力されると、第1比例ゲイン出力部44は、位置偏差の大きさ(絶対値)に予め定められる比例ゲインKpを乗算し、乗算して得られる値を指令電流値として出力する。比例ゲインKpは、入力される位置偏差と出力する指令電流値との関係が第1バルブ20に所望の動作を実現させるものとなるように、予め適切に調整される。
【0053】
加減判定部43に位置偏差が入力されると、加減判定部43は、入力された位置偏差と、ひとつ前の制御ステップで入力された前回の位置偏差との変化(増減)を算出する。加減判定部43は、位置偏差が前回の制御ステップで入力された位置偏差から増加している場合には、第1バルブ20への通電量を増加させ開度を大きくすると判定する。つまり、加減判定部43は、操作レバーを通じた操作入力が、油圧シリンダ2に給排される作動油の流量を大きくして、油圧シリンダ2の伸縮速度を速くするものであると判定する。この場合には、加減判定部43は、オフセット電流出力部46に加速信号を出力する。
【0054】
加減判定部43は、位置偏差が減少している場合又は同じ場合には、第1バルブ20への通電量を減少させて開度を小さくすると判定する。つまり、加減判定部43は、操作レバーを通じた操作入力が、油圧シリンダ2に給排される作動油の流量を小さくして、油圧シリンダ2の伸縮速度を遅くするものであると判定する。加減判定部43の判定結果は、オフセット電流出力部46に入力される。この場合には、加減判定部43は、オフセット電流出力部46に減速信号を出力する。
【0055】
オフセット電流出力部46は、第1バルブ20への通電量を増加させる加速信号が加減判定部43から入力される場合には、閉弁通電量Ic及び差分Idを記憶部48から取得し、これらを加算した値(閉弁通電量Ic+差分Id=開弁通電量Iо)を第2電流値I2として出力する。また、オフセット電流出力部46は、第1バルブ20への通電量を減少させる減速信号が加減判定部43から入力される場合には、閉弁通電量Icを記憶部48から取得し第1電流値I1として出力する。オフセット電流出力部46によって出力されたオフセット電流値は、第1比例ゲイン出力部44から出力された指令電流値と加算されて電流供給部47へ入力される。
【0056】
電流供給部47は、伸縮判定部42から入力される通電指令に応じて、第1バルブ20に対して、指令電流値とオフセット電流値とを加算した値の通電量で電流を供給する。
【0057】
ここで、本発明の理解を容易にするために、図6及び図7を参照して、比較例に係る制御装置200について説明する。図6は、制御装置200における第1バルブ20のバルブ特性とオフセット電流を示すグラフ図であり、横軸がソレノイド21への通電量、縦軸がバルブの開度を示す。図7は、制御装置200の構成を示すブロック図である。
【0058】
一般に、比例ソレノイドバルブでは、電流が遮断された状態で確実に閉弁させるために、スプリングのばね力等を調整して開弁するまでに所定の通電量を必要とする不感帯(図6参照)が設けられる。不感帯が設けられることにより、電流が遮断された状態で、比例ソレノイドバルブを確実に閉弁させることができる。
【0059】
しかしながら、比例ソレノイドバルブでは、不感帯が設けられることにより、閉弁作動が安定する一方で、作業者が操作レバーを操作しても、スプリングのばね力の影響等によりすぐには開弁しない作動遅れが生じる。よって、制御装置200において、操作レバーの操作量がわずかであってコントローラ40からの指令電流値が小さい場合には、ソレノイド21への通電量が不足して第1バルブ20が開弁しないおそれがある。このように、不感帯が設けられることにより、第1バルブ20を開弁させるために必要な通電量が増加するため、第1バルブ20の応答性は低下してしまう。
【0060】
そこで、制御装置200では、図6及び図7に示すように、不感帯による作動遅れを抑制するために、操作レバーの操作量(位置偏差)に関わらず、所定のオフセット電流値I3が第1バルブ20に予め与えられる。制御装置200では、位置偏差に応じて出力される指令電流値と、位置偏差によらないオフセット電流値I3と、を加算した値に応じた電流が第1バルブ20に供給される。つまり、オフセット電流値I3が供給されない場合と比較して、同一の操作量であっても、第1バルブ20にオフセット電流値I3だけ多くの電流が第1バルブ20に供給されることになる。これにより、操作レバーの操作量が小さく、指令電流値が比較的小さい場合であっても、開弁通電量Ioを上回る電流量がソレノイド21に通電されて第1バルブ20が開弁する。このように、操作量(位置偏差)によらないオフセット電流値I3を第1バルブ20に供給することにより、不感帯の影響を受けずに第1バルブ20を開弁させることができるため、電流の遮断時に確実に閉弁しつつ、第1バルブ20の応答性が向上する。
【0061】
しかしながら、制御装置200では、図7に示すように、コントローラ140が加減判定部43を備えておらず、開弁過程と閉弁過程とにおいて、オフセット電流値I3が同じ値として設定される。オフセット電流値I3は、図6に示すように、第1バルブ20を確実に閉弁するために、閉弁通電量Ic以下の値に設定される。このため、制御装置200では、図6に示すように、ヒステリシスの影響により、オフセット電流値I3と開弁電流値Ioとの差分Idzに相当する指令電流値を与えなければ、第1バルブ20が開弁しない。つまり、制御装置200では、ヒステリシスの影響により、第1バルブ20の開弁までに所定の通電量として差分Idzを必要とする作動遅れが生じる。
【0062】
よって、制御装置200では、開弁過程と閉弁過程とにおいて同一の目標開度に制御しようとしても、ヒステリシスによる作動遅れに起因して、油圧シリンダ2の実位置に差が生じてしまう。言い換えれば、制御装置200では、同一の位置偏差が生じた場合であっても、開弁過程では閉弁過程よりも差分Idzだけ大きな電流を供給しなければならない。このように、制御装置200では、不感帯による作動遅れを抑制することはできるが、第1バルブ20のヒステリシスの影響による作動遅れを抑制することはできず、第1バルブ20の制御性を充分に向上させることはできない。
【0063】
これに対し、制御装置100では、加減判定部43の判定結果に基づいて、開弁過程と閉弁過程とで異なるオフセット電流値が出力される。具体的には、閉弁過程では閉弁通電量Ic(図3参照)をオフセット電流値(第1電流値I1)として出力し、開弁過程では閉弁通電量Icに差分Id(図3参照)を加算した値をオフセット電流値(第2電流値I2)として出力する。つまり、開弁過程において出力されるオフセット電流値(第2電流値I2)は、閉弁過程において出力されるオフセット電流値(第1電流値I1)よりも開弁特性と閉弁特性との差分Idだけ大きい。
【0064】
このように、制御装置100では、ヒステリシスによって生じる開弁過程と閉弁過程との電流値の差分Idが、オフセット電流値(第2電流値I2)によって補われる。このため、同一の位置偏差が生じた場合であっても、第1バルブ20への通電量は、開弁過程の方が閉弁過程よりも差分Idだけ大きくなり、開弁過程と閉弁過程において、同一の位置偏差により同一の指令電流値が出力されても、油圧シリンダ2の実位置には差が生じなくなる。したがって、制御装置100では、第1バルブ20を確実に閉弁させつつ、開弁過程の作動遅れが抑制されて、第1バルブ20の応答性を向上させることができる。言い換えれば、開弁過程におけるオフセット電流値(第2電流値I2)を閉弁過程におけるオフセット電流値(第1電流値I1)である閉弁通電量Icよりも差分Idだけ大きくすることで、第1バルブ20における開弁過程と閉弁過程とのヒステリシスを見掛け上なくすことができ、制御装置100の制御性を向上させることができる。
【0065】
ここで、閉弁通電量Icよりも大きな値を第1電流値I1とすると、閉弁過程において指令電流値がゼロの状態になっても、閉弁通電量Icを上回る通電量が第1バルブ20に通電されることになる。よって、この場合には、第1バルブ20が完全に閉弁しないおそれがある。
【0066】
これに対し、制御装置100では、第1電流値I1は、閉弁通電量Ic以下に設定される。第1電流値I1を閉弁通電量Ic以下とすることにより、指令電流値がゼロの状態では、第1バルブ20に供給される通電量は、閉弁通電量Icよりも小さい第1電流値I1となる。したがって、指令電流値がゼロの状態において、第1バルブ20を確実に閉弁させることができる。
【0067】
次に、図4を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
【0068】
上記実施形態では、第1バルブ20の開弁特性と閉弁特性とは、全開度域にわたって均一の差分Idが生じるものである。このため、閉弁通電量Icを第1電流値I1とし、閉弁通電量Icに差分Idを加算した値、つまり、開弁通電量Ioを第2電流値I2としている。これに対し、例えば、図4図5に示すように、第1バルブ20の開弁特性と閉弁特性との差分Id1が全開度域にわたって均一ではない場合には、差分Idの最小値である最少差分値Idmを第1電流値I1に加算した値を第2電流値I2とすればよい。第2電流値I2を第1電流値I1よりも最少差分値Idmだけ大きくすることで、第1電流値I1を閉弁通電量Icとしても、制御領域の全域で指令電流値を正とすることができるため、制御性を向上させることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、閉弁過程におけるオフセット電流値である第1電流値I1は、閉弁通電量Icであり、開弁過程におけるオフセット電流値である第2電流値I2は、開弁通電量Ioである。第2電流値I2は、第1電流値I1よりも大きく、開弁通電量Ioを超えないものであれば任意の値に設定することができる。また、第2電流値I2は、必ずしも最少差分値Idmだけ第1電流値I1よりも大きく設定されなくてもよく、最少差分値Idmよりも小さい値だけ第1電流値I1より大きく設定されてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、流体圧アクチュエータは、ピストン5によってシリンダチューブ3の内部がロッド側室6及びボトム側室7に仕切られて、負荷1を鉛直方向に移動させる単動型の油圧シリンダ2である。これに代えて、流体圧アクチュエータは、ラム式の単動型油圧シリンダであってもよい。また、流体圧アクチュエータは、ロッド側室6及びボトム側室7の両方に作動油が充填され、両者の作動油圧の差圧によって伸縮作動する複動型の油圧シリンダであってもよい。また、流体圧アクチュエータは、ロッド側室6が大気開放されるものではなくタンク9に接続され、ボトム側室7に供給される作動油によって伸長作動し、負荷荷重またはスプリングなどの付勢力によって収縮する単動型の油圧シリンダであってもよい。また、流体圧アクチュエータの伸縮方向は、鉛直方向に限らず、任意の方向としてよい。
【0071】
また、上記実施形態では、電流供給部47は、伸縮判定部42からの通電指令を受けて、第1バルブ20及び第2バルブ25のいずれかに電流を供給する。これに対し、制御装置100は、2つの電流供給部を備え、第1バルブ20への電流の供給と第2バルブ25への電流の供給とを別々に行ってもよい。
【0072】
以上の実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0073】
制御装置100では、開弁過程と閉弁過程との両方において、開弁電流値Io及び閉弁通電量Icとオフセット電流値との差がそれぞれ低減され、不感帯を減少させることができる。よって、第1バルブ20及び第2バルブ25を確実に閉弁させつつ、開弁させるための指令電流値を小さくすることができ、応答性を向上させることができる。したがって、第1バルブ20及び第2バルブ25の開弁過程と閉弁過程とにおいて、同一の開度とするために必要な指令電流値を略同一とすることができ、制御装置100による制御性を向上させることができる。
【0074】
また、制御装置100では、第1電流値I1は、閉弁通電量Ic以下に設定される。このため、指令電流値がゼロの状態において、第1バルブ20及び第2バルブ25を確実に閉弁することができる。
【0075】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0076】
作動油の給排によって伸縮作動する油圧シリンダ2の伸縮作動を制御する制御装置100は、油圧シリンダ2の伸縮位置を検知するストロークセンサ30と、油圧シリンダ2に給排される作動油の流れを制御する第1バルブ20及び第2バルブ25と、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を制御して第1バルブ20及び第2バルブ25の作動を制御するコントローラ40と、を備え、コントローラ40は、ストロークセンサ30によって検知される油圧シリンダ2の実位置と油圧シリンダ2の目標位置との位置偏差を算出する偏差算出部41と、位置偏差に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を増加させるか又は減少させるかを判定する加減判定部43と、位置偏差に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25へ通電する指令電流値を決定する第1,第2比例ゲイン出力部44,45と、加減判定部43の判定結果に基づいて、第1バルブ20及び第2バルブ25に通電するオフセット電流値を設定するオフセット電流出力部46と、を有し、第1バルブ20及び第2バルブ25は、指令電流値とオフセット電流値とを加算した値に基づいて制御され、オフセット電流出力部46は、加減判定部43が通電量を減少させると判定した場合には、第1電流値I1をオフセット電流値として設定し、加減判定部43が通電量を増加させると判定した場合には、第1電流値I1よりも大きい第2電流値I2をオフセット電流値として設定する。
【0077】
この構成では、オフセット電流出力部46によって設定されるオフセット電流値は、通電量を減少させる閉弁時の第1電流値I1よりも、通電量を増加させる開弁時の第2電流値I2の方が大きく設定される。このように、開弁時では、第1バルブ20及び第2バルブ25により多くのオフセット電流値が予め与えられるため、開弁に必要な指令電流値を小さくすることができ、第1バルブ20及び第2バルブ25の応答性が向上する。したがって、制御装置100の制御性が向上する。
【0078】
また、制御装置100では、第1バルブ20及び第2バルブ25の通電量と開度との関係を示すバルブ特性には、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を増加させて全閉状態から全開状態とする際の通電量と開度との関係を示す開弁特性と、通電量を減少させて全開状態から全閉状態とする際の通電量と開度との関係を示す閉弁特性と、が含まれ、第1電流値I1は、第1バルブ20及び第2バルブ25への通電量を減少させて第1バルブ20及び第2バルブ25が全閉となる際の閉弁通電量Ic以下であることを特徴とする。
【0079】
この構成では、第1電流値I1が閉弁通電量Ic以下であるため、指令電流値がゼロの状態において、第1バルブ20及び第2バルブ25を確実に閉弁することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0081】
2…油圧シリンダ(流体圧アクチュエータ)、20…第1バルブ(ソレノイドバルブ)、25…第2バルブ(ソレノイドバルブ)、21,26…ソレノイド、22,27…スプリング(付勢部材)、30…ストロークセンサ(検知部)、41…偏差算出部、43…加減判定部、44…第1比例ゲイン出力部(指令値出力部)、45…第2比例ゲイン出力部(指令値出力部)、46…オフセット電流出力部、100…制御装置(流体圧アクチュエータの制御装置)
【要約】
【課題】流体圧アクチュエータ制御装置の制御性を向上する。
【解決手段】流体圧アクチュエータの制御装置100は、油圧シリンダ2に給排される作動油の流れを制御する第1バルブ20と、油圧シリンダ2の実位置と目標位置との位置偏差に基づいて、第1バルブ20への通電量を増加させるか又は減少させるかを判定する加減判定部43と、位置偏差に基づいて、第1バルブ20へ通電する指令電流値を決定する第1比例ゲイン出力部44と、加減判定部43の判定結果に基づいて、第1バルブ20に通電するオフセット電流値を設定するオフセット電流出力部46と、を有し、オフセット電流出力部46は、閉弁過程では第1電流値I1をオフセット電流値として設定し、開弁過程では、第1電流値I1よりも大きな第2電流値I2をオフセット電流値として設定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7