特許第6126757号(P6126757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6126757
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス電極用バインダー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20170424BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20170424BHJP
   C08F 8/28 20060101ALI20170424BHJP
   C08F 16/38 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   C08F8/28
   C08F16/38
【請求項の数】10
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-560849(P2016-560849)
(86)(22)【出願日】2016年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2016077142
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-184205(P2015-184205)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-184207(P2015-184207)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 康晴
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−067707(JP,A)
【文献】 特開2013−121906(JP,A)
【文献】 特開2015−141883(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084997(WO,A1)
【文献】 特開平09−031124(JP,A)
【文献】 特開2002−208310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62、4/13
C08F 8/28、16/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーであって、前記バインダーはポリビニルアセタール系樹脂を含有し、前記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が10以上であり、水酸基量が30〜60モル%であることを特徴とする蓄電デバイス電極用バインダー。
【請求項2】
ポリビニルアセタール系樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有し、前記式(1)で表される構成単位の含有量が0.3モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【化1】
式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【請求項3】
ポリビニルアセタール系樹脂は、式(1)で表される構成単位の含有量が0.3〜5モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【請求項4】
ポリビニルアセタール系樹脂は、イオン性官能基を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【請求項5】
ポリビニルアセタール系樹脂は、下記式(2)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位、下記式(4)で表されるアセタール基を有する構成単位、及び、下記式(5)で表されるイオン性官能基を含むアセタール基を有する構成単位を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【化2】
式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、式(5)中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基又は芳香族環を表し、Xはイオン性官能基を表す。
【請求項6】
ポリビニルアセタール系樹脂と水性媒体とを含む分散体を含有し、前記ポリビニルアセタール系樹脂は微粒子形状であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【請求項7】
ポリビニルアセタール系樹脂は、体積平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とする請求項6記載の蓄電デバイス電極用バインダー。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の蓄電デバイス電極用バインダー、及び、活物質を含有する蓄電デバイス電極用組成物であって、
前記活物質100重量部に対して、ポリビニルアセタール系樹脂を0.1〜12重量部含有することを特徴とする蓄電デバイス電極用組成物。
【請求項9】
請求項8記載の蓄電デバイス電極用組成物を含有することを特徴とする蓄電デバイス電極。
【請求項10】
請求項9記載の蓄電デバイス電極を含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーとして使用した場合に、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギー安定性を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗が小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーに関する。また、活物質の分散性、接着性に優れ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーに関する。更に、該蓄電デバイス電極用バインダーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型ビデオカメラや携帯型パソコン等の携帯型電子機器の普及に伴い、移動用電源としての二次電池の需要が急増している。また、このような二次電池に対する小型化、軽量化、高エネルギー密度化の要求は非常に高い。
このように、繰り返し充放電が可能な二次電池としては、従来、鉛電池、ニッケル−カドミウム電池等が主流となっている。しかしながらこれらの電池は、充放電特性は優れているが、電池重量やエネルギー密度の点では、携帯型電子機器の移動用電源として充分満足できる特性を有しているとはいえない。
【0003】
そこで、二次電池として、リチウム又はリチウム合金を負極電極に用いたリチウム二次電池の研究開発が盛んに行われている。このリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、軽量であるという優れた特徴を有している。
リチウム二次電池の電極は、通常、活物質とバインダーを溶媒と共に混練し、活物質を分散させてスラリーとした後、このスラリーをドクターブレード法等によって集電体上に塗布し乾燥して薄膜化することにより形成されている。
【0004】
現在、特に、リチウム二次電池の電極(負極)用のバインダーとして最も広範に用いられているのが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表されるフッ素系樹脂である。
しかしながら、フッ素系樹脂は溶剤への溶解性が悪く、製造効率を著しく低下させてしまうという問題があった。
これに対して、フッ素系樹脂を溶解させるスラリー用の溶媒としてN−メチルピロリドンが用いられている。しかしながら、N−メチルピロリドンは沸点が高く、乾燥時に大量の熱エネルギーを必要とするため、乾燥時の加熱によりバインダー樹脂の一部が変質してしまい、長期サイクルにおいて電極界面で剥離が生じることにより、電池特性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
また、フッ素系樹脂をバインダーとして用いた場合、可撓性を有する負極薄膜を作製可能な一方で、集電体と負極活物質の結着性が劣るため、電池製造工程時に負極活物質の一部又は全部が集電体から剥離、脱落するおそれがあった。また、電解液によってバインダーが膨潤してしまうため、電池の充放電が行われる際、負極活物質内ではリチウムイオンの挿入、放出が繰り返され、それに伴い、集電体から負極活物質の剥離、脱落するという問題もあった。
このような問題を解決するため、バインダーを過剰に添加することも試みられているが、それに伴って、負極活物質の添加量が相対的に低下し、電池の容量が低下するという問題が生じていた。
【0006】
一方、水系バインダーとしてはカルボキシメチルセルロース等が用いられているが、カルボキシメチルセルロースを用いた場合には、樹脂の柔軟性が不充分となるため、活物質を結着させる効果が不充分となったり、集電体への接着力が著しく低下したりするという問題があった。
また、特許文献1では、負極活物質として黒鉛層間距離(d002)が0.345〜0.370nmの低結晶炭素と、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを用いることで良好な負極が得られ、出力特性に優れた電池を得られることが示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の負極を用いた電池は、出力特性及び入力特性、なかでも低温でのリチウムイオン受け入れ性が低下するという問題があった。
また、SBRをバインダーとして用いた場合も、結着性が劣るため、電池製造工程時に負極活物質の一部又は全部が集電体から剥離、脱落するおそれや、電解液によってバインダーが膨潤してしまうため、電池の充放電が行われる際、集電体から負極活物質の剥離、脱落が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−158099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーとして使用した場合に、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギー安定性を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗も小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することを目的とする。また、活物質の分散性、接着性に優れ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することを目的とする。更に、該蓄電デバイス電極用バインダーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーであって、前記バインダーはポリビニルアセタール系樹脂を含有し、前記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が10以上であり、水酸基量が30〜60モル%である蓄電デバイス電極用バインダーである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、蓄電デバイス電極用バインダーにおいて、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が所定の範囲であり、水酸基を所定量有するポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギーに対して安定な構造を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗が小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製できることを見出した。また、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が所定の範囲であり、水酸基を所定量有するポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、接着性に優れるとともに、電解液によって膨潤しにくいものとすることができ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーは、ポリビニルアセタール系樹脂を含有する。
本発明では、バインダー(結着剤)の樹脂成分としてポリビニルアセタール系樹脂を用いることで、ポリビニルアセタール系樹脂と活物質とに引力的相互作用が働き、少量のバインダー量で活物質を固定化することができる。
また、該ポリビニルアセタール系樹脂は導電助剤とも引力的相互作用を及ぼし、活物質、導電助剤間距離をある一定範囲にとどめることができる。このように活物質と導電助剤との距離を程よいものとすることで、活物質の分散性が大幅に改善される。
更に、PVDF等の樹脂を用いる場合と比較して、集電体との接着性を著しく向上させることができる。加えて、カルボキシメチルセルロースを用いる場合と比較して、活物質の分散性、接着性に優れ、バインダーの添加量が少ない場合でも充分な効果を発揮することができる。
なお、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーは、樹脂成分からなるものであってもよく、更に分散媒を含むものであってもよい。
【0012】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率の下限が10である。上記アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が10以上であると、立体配置が主鎖に沿って互いに同じである安定なメソ型のアセタール環の割合を充分なものとして、幅広い温度範囲での安定性を向上させることができ、得られる蓄電池の特性を向上させることができる。上記メゾ/ラセモ比率の好ましい下限は12、より好ましい下限は15である。
上記メゾ/ラセモ比率の好ましい上限は50、より好ましい上限は40、更に好ましい上限は30、更により好ましい上限は27、特に好ましい上限は25である。上記メゾ/ラセモ比率が50以下であると、該メゾ/ラセモ比率を有する樹脂を得る際の生産効率を向上させることができる。
【0013】
なお、本発明において、「アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率」とは、アセタール環の立体構造において、シンジオタクティック構造を有する水酸基から形成されるアセタール環構造(ラセモアセタール環)を有するアセタール基の量に対する、アイソタクティック構造を有する水酸基から形成されるアセタール環構造(メゾアセタール環)を有するアセタール基の量の比率であり、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂をジメチルスルホキシド等の溶剤に溶解させ、測定温度150℃においてプロトンNMRを測定し、4.5ppm付近に現れるメゾアセタール環構造に由来するピークと、4.2ppm付近に現れるラセモアセタール環構造に由来するピークの積分値を比較することや、カーボンNMRを測定し、100ppm付近に現れるメゾアセタール環構造に由来するピークと、94ppm付近に現れるラセモアセタール環構造に由来するピークの積分値を比較することによって測定することができる。
【0014】
上記ポリビニルアセタール系樹脂におけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を上記範囲とするためには、アセタール化度を適宜調整することが必要であり、アセタール化度は低すぎても高すぎても良くなく、また、同様に水酸基量も低すぎても高すぎてもよくない。適正な範囲のメゾ/ラセモ比率とするためには、アセタール化度は40〜70モル%とすることが好ましく、水酸基量は30〜60モル%とすることが好ましい。またその時のポリビニルアセタール系樹脂のアセタール環全体におけるメゾ型アセタール環構造の割合としては90モル%以上であることが好ましい。
メゾ/ラセモ比率を調製するためには、ポリビニルアセタール樹脂を酸性条件下のアルコールに溶解させて加熱することでアセタール環の脱離と再結合を行いメゾ型アセタール環の比率を調整する方法が有効であり、具体的にはポリビニルアセタール系樹脂を酸性に調整したイソプロピルアルコールに溶解させた後、70〜80℃程度の高温条件で反応させる方法等が挙げられる。また、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のメゾ型アセタール環の比率を上記適性範囲となるように調整するためには、上記反応時間や酸濃度を調整することが好ましく、ポリビニルアセタール系樹脂中のメゾ型アセタール環の比率を高く設定する場合には、反応時間を長くすることが好ましく、また、酸濃度を高くすることが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中のメゾ型アセタール環の比率を低く設定する場合には、反応時間を短くすることが好ましく、また、酸濃度を低くすることが好ましい。好ましい反応時間は0.1〜10時間、好ましい酸濃度は、0.5mM〜0.3Mである。
【0015】
上記ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれのアセタール化を用いる場合でも、全アセタール化度で40〜70モル%の範囲が好ましい。全アセタール化度が40モル%以上であると、樹脂の柔軟性を向上させることができ、集電体への接着力を充分に発揮させることができる。上記アセタール化度が70モル%以下であると、電解液に対する耐性を向上させることができ、電極を電解液中に浸漬した際、樹脂成分が電解液中に溶出することを抑制することができる。より好ましくは45〜65モル%である。
【0016】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有することが好ましい。式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
下記式(1)で表される構成単位を有することで、接着性に優れるとともに、電解液に対する耐性を良好なものとして、電解液によって樹脂成分が膨潤したり、樹脂成分が電解液中に溶出したりすることを抑制することができる。その結果、得られる電極の電極密度を向上させることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
上記R中、炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
上記Rとしては、活物質同士及び活物質と集電体との結着性をより優れたものとすることができるとともに、電解液に対する耐膨潤性をより高いものとすることができるという観点からプロピル基が好ましい。
【0019】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量の好ましい下限は0.3モル%である。上記式(1)で表される構成単位の含有量が0.3モル%以上であると、電解液に対する耐性を向上させる効果を充分に発揮させることができる。また、樹脂の柔軟性が良好となり、クラックや割れの発生を抑制することができる。
上記式(1)で表される構成単位の含有量のより好ましい下限は0.4モル%、更に好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は5モル%、より好ましい上限は3モル%、更に好ましい上限は2モル%である。
【0020】
なお、上記式(1)で表される構成単位の含有量は、以下の方法により算出することができる。
具体的には、ポリビニルアセタール系樹脂を重水素化ジメチルスルホキシドに濃度が1重量%となるように溶解させ、測定温度150℃でプロトンNMRを測定し、4.8ppm付近に現れるピーク(A)と、4.2ppm付近に現れるピーク(B)と、1.0〜1.8ppm付近に現れるピーク(C)と、0.9ppm付近に現れるピーク(D)の積分値を用いて次式により算出することができる。
式(1)で表される構成単位の含有量(モル%)={(A−B/2)/[(C−4D/3)/2]}×100
【0021】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量は、上記ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が高い場合には、高く設定することが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が高い場合は、分子間の水素結合によってバインダー樹脂が硬くなりやすいことから、クラックや割れが発生しやすくなるが、上記式(1)で表される構成単位の含有量を増やすことによって樹脂の柔軟性が良好となり、クラックや割れの発生を抑制することができる。
一方、上記ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が低い場合には、ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量は、低く設定することが好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂の水酸基量が低い場合には、上記式(1)で表される構成単位の含有量が低い範囲においても樹脂の柔軟性は充分に発揮され、クラックや割れの発生を抑制することができるとともに、電解液に対する耐性も高いものとすることができる。
【0022】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中に、上記式(1)で表される構成単位を有するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては、例えば、上記式(1)で表される構成単位を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製する際に、ポリビニルアルコール原料の官能基に対して反応性を有する化合物を作用させて、式(1)で表される構成単位を分子内に保有させる方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する化合物を反応させて、式(1)で表される構成単位を分子内に保有させる方法等が挙げられる。なかでも、生産性と式(1)で表される構成単位の含有量を調整しやすいこと等の点から、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する化合物を反応させて、式(1)で表される構成単位を分子内に保有させる方法が好適である。
【0023】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する化合物を反応させる方法としては、ポリビニルアセタール系樹脂の1つの水酸基に対して、1つの炭素原子に2つの水酸基を有するジェミナルジオール化合物を脱水縮合させる方法、ポリビニルアセタール系樹脂の1つの水酸基に対して、アルデヒド化合物を付加させる方法等が挙げられる。なかでも生産性と式(1)で表される構成単位の含有量を調整しやすいことから、ポリビニルアセタール系樹脂の1つの水酸基に対して、アルデヒド化合物を付加させる方法が好適である。
【0024】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の1つの水酸基に対して、アルデヒド化合物を付加させる方法としては、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂を酸性に調整したイソプロピルアルコールに溶解させた後、70〜80℃程度の高温条件でアルデヒドを反応させる方法等が挙げられる。また、上記ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量を上記適正範囲となるように調整するためには、上記反応時間や酸濃度を調整することが好ましく、ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量を低く設定する場合には、反応時間を長くすることが好ましく、また、酸濃度を高くすることが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中の上記式(1)で表される構成単位の含有量を高く設定する場合には、反応時間を短くすることが好ましく、また、酸濃度を低くすることが好ましい。好ましい反応時間は0.1〜10時間、好ましい酸濃度は0.5mM〜0.3Mである。
【0025】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、水酸基量の下限が30モル%、上限が60モル%である。上記水酸基量が30モル%以上であると、電解液に対する耐性を向上させることができ、電極を電解液中に浸した際、樹脂成分が電解液中に溶出することを抑制することができる。上記水酸基量が60モル%以下であると、生産性を向上させることができるとともに、ポリビニルアセタール系樹脂を溶解させて作製したスラリーの溶液粘度が高くなりすぎることがなく、活物質を充分に分散させることができ、ポリビニルアセタール系樹脂を微粒子状で分散させて作製したスラリーの安定性が向上し、粒子同士の合着の発生を抑制して、活物質を充分に分散させることができる。
上記水酸基量のより好ましい下限は35モル%、より好ましい上限は55モル%である。
【0026】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセチル基量の好ましい下限が0.2モル%、好ましい上限が20モル%である。上記ポリビニルアセタール系樹脂のアセチル基量が0.2モル%以上であると、柔軟性を向上させることができ、アルミ箔への接着性を充分なものとすることができる。アセチル基量が20モル%以下であると、電解液に対する耐性を充分なものとして、電極を電解液中に浸漬した際、樹脂成分が電解液中に溶出することを抑制することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%である。
【0027】
特に、上記ポリビニルアセタール系樹脂の重合度の好ましい下限は250、好ましい上限は4000である。上記重合度が250以上であると、電解液への耐性を充分なものとして、電極の電解液への溶出を防ぐことができ、短絡の発生を抑制することができる。上記重合度が4000以下であると、活物質との接着力を向上させることができ、リチウム二次電池の放電容量を向上させることができる。上記重合度のより好ましい下限は280、より好ましい上限は3500である。
【0028】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0029】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記ポリビニルアルコールは、ビニルエステルとα−オレフィンとを共重合した共重合体をケン化したものであってもよい。また、更にエチレン性不飽和単量体を共重合させ、エチレン性不飽和単量体に由来する成分を含有するポリビニルアルコールとしてもよい。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とα−オレフィンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端ポリビニルアルコールも用いることができる。上記α−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、へキシレン、シクロヘキシレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘキシルプロピレン等が挙げられる。
【0031】
また、上記ポリビニルアセタール系樹脂はイオン性官能基を有することが好ましい。上記イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩がより好ましく、スルホン酸基、その塩であることが特に好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂がイオン性官能基を有することにより、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂の分散性が向上し、また、活物質及び導電助剤の分散性を特に優れたものとすることができる。
なお、上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0032】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量は0.01〜1mmol/gであることが好ましい。上記イオン性官能基の含有量が0.01mmol/g以上であると、ポリビニルアセタール系樹脂のリチウム二次電池電極用組成物中での分散性、及び、電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を向上させることができる。1mmol/g以下であると、電池とした際のバインダーの耐久性を向上させることができ、リチウム二次電池の放電容量を向上させることができる。上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基のより好ましい含有量は0.02〜0.5mmol/gである。上記イオン性官能基の含有量は、NMRを用いることで測定することができる。
【0033】
上記イオン性官能基の存在形態については、ポリビニルアセタール系樹脂構造中に直接存在していてもよく、グラフト鎖を含むポリビニルアセタール系樹脂(以下、単にグラフト共重合体ともいう)のグラフト鎖に存在していてもよい。なかでも、電解液に対する耐性及び電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を優れたものとすることができることから、ポリビニルアセタール系樹脂構造中に直接存在していることが好ましい。
上記イオン性官能基がポリビニルアセタール系樹脂構造中に直接存在している場合は、ポリビニルアセタール系樹脂の主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造であるか、アセタール結合を介してイオン性官能基が結合した分子構造であることが好ましく、アセタール結合を介してイオン性官能基が結合した分子構造であることが特に好ましい。
イオン性官能基が上記の構造で存在することで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂の分散性が向上し、電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0034】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中に、上記イオン性官能基を直接有するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
【0035】
上記ポリビニルアセタール系樹脂が、アセタール結合を介してイオン性官能基を有している場合、アセタール結合とイオン性官能基が鎖状、環状のアルキル基や芳香族環により接続されていることが好ましく、なかでも、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数5以上の環状アルキレン基、炭素数6以上のアリール基等により接続されていることが好ましく、特に、炭素数1以上のアルキレン基、芳香族環により接続されていることが好ましい。
これにより、電解液に対する耐性及び電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を優れたものとすることができるとともに、電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
上記芳香族系置換基としては、ベンゼン環、ピリジン環等の芳香族環や、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合多環芳香族基等が挙げられる。
【0036】
上記ポリビニルアセタール系樹脂が、アセタール結合を介してイオン性官能基を有している場合、上記ポリビニルアセタール系樹脂は、下記式(2)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位、下記式(4)で表されるアセタール基を有する構成単位、及び、下記式(5)で表されるイオン性官能基を含むアセタール基を有する構成単位を有するものであることが好ましい。
これにより、ポリビニルアセタール系樹脂の分散性、活物質及び導電助剤の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、集電体に対する接着力及び電解液に対する耐性も特に優れたものとすることができることから、リチウム二次電池の放電容量の低下を特に抑制することができる。
【0037】
【化2】
【0038】
式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、式(5)中、Rは炭素数1〜20のアルキレン基又は芳香族環を表し、Xはイオン性官能基を表す。
【0039】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記適性範囲とするためには、例えば、1つのアセタール結合によって、1つのイオン性官能基が導入されている場合、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量を0.1〜10モル%程度とすることが好ましく、また、1つのアセタール結合によって、2つのイオン性官能基が導入されている場合には、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量を0.05〜5モル%程度とすることが好ましい。また、ポリビニルアセタール系樹脂の分散性と、樹脂の柔軟性及び集電体に対する接着力を共に高いものとするために、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は、全アセタール結合の0.5〜20モル%であることが好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性及び電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を優れたものとすることができ、さらに電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0040】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中にアセタール結合を介してイオン性官能基を有するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール原料に上記イオン性官能基を有するアルデヒドをあらかじめ反応させた後にアセタール化する方法、ポリビニルアルコールをアセタール化する際に、アルデヒド原料に上記イオン性官能基を有するアルデヒドを混合してアセタール化する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後に上記イオン性官能基を有するアルデヒドを反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
上記イオン性官能基を有するアルデヒドとしては、スルホン酸基を有するアルデヒド、アミノ基を有するアルデヒド、リン酸基を有するアルデヒド、カルボキシル基を有するアルデヒド等が挙げられる。具体的には例えば、4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム、4−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−ピリジンカルバルデヒド塩酸塩、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、ベタインアルデヒドクロリド、(2−ヒドロキシ−3−オキソプロポキシ)リン酸、5−リン酸ピリドキサール、テレフタルアルデヒド酸、イソフタルアルデヒド酸等が挙げられる。
【0042】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール結合を介してイオン性官能基を有しており、イオン性官能基はスルホン酸基又はその塩であり、アセタール結合とイオン性官能基がベンゼン環によって接続されていることが特に好ましい。上記ポリビニルアセタール系樹脂がこのような分子構造を有することで、リチウム二次電池電極用組成物中におけるポリビニルアセタール系樹脂の分散性、電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性、電池とした際のバインダーの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0043】
上記ポリビニルアセタール系樹脂が、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造である場合、下記一般式(6)に示す構造単位を有することが好ましい。上記ポリビニルアセタール系樹脂が下記一般式(6)に示す構造単位を有することで、リチウム二次電池電極用組成物中におけるポリビニルアセタール系樹脂の分散性、電池とした際のバインダーの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0044】
【化3】
【0045】
式(6)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
【0046】
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
【0047】
上記ポリビニルアセタール系樹脂構造中にイオン性官能基が直接存在するポリビニルアセタール系樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール系樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
【0048】
上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーと、下記一般式(7)に示す構造を有するモノマーとを共重合化させた後、得られた共重合樹脂のエステル部位をアルカリ又は酸によりケン化する方法が挙げられる。
【0049】
【化4】
【0050】
式(7)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
【0051】
上記一般式(7)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、アリルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、N,N−ジエチルアリルアミン等のアミノ基と重合性官能基を有するもの、及びこれらの塩等が挙げられる。
なかでも、アリルスルホン酸及びその塩を用いた場合、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性及び電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を優れたものとすることができ、さらに電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができるため好適である。特に、アリルスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
【0053】
上記ポリビニルアセタール系樹脂中の上記一般式(6)に示す構造単位の含有量は、上記ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記適性範囲とするためには、例えば、上記一般式(6)によって、1つのイオン性官能基が導入されている場合、上記一般式(6)に示す構造単位の含有量を0.05〜5モル%程度とすることが好ましく、また、上記一般式(6)によって、2つのイオン性官能基が導入されている場合、上記一般式(6)に示す構造単位の含有量を0.025〜2.5モル%程度とすることが好ましい。
ポリビニルアセタール系樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、リチウム二次電池電極用組成物中においてポリビニルアセタール系樹脂の分散性が向上するとともに、電解液に対する耐性及び電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を優れたものとすることができ、さらに電池とした際のバインダーの劣化が抑制されることからリチウム二次電池の放電容量の低下を抑制することができる。
【0054】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は微粒子形状であることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール系樹脂が微粒子形状であることによって、活物質及び導電助剤の表面を全て覆うことなく、部分的に接着(点接触)することが可能となる。その結果、電解液と活物質との接触が良好となり、リチウム電池を使用した場合に大電流が付可されても、リチウムイオンの電導が充分に保たれ、電池容量の低下を抑制することができるという利点が得られる。
【0055】
上記微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂の体積平均粒子径は10〜500nmであることが好ましい。上記体積平均粒子径が500nm以下であると、電極とした際の活物質及び導電助剤の分散性を向上させることができ、リチウム二次電池の放電容量を向上させることができる。また、10nm以上であると、活物質及び導電助剤の表面をバインダーが全て覆うことがなく、電解液と活物質との接触性を向上させることができることから、リチウム電池を大電流で使用した際にリチウムイオンの伝導が充分なものとなり、電池容量を向上させることができる。微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂のより好ましい体積平均粒子径は15〜300nmであり、さらに好ましい体積平均粒子径は15〜200nmである。
なお、上記ポリビニルアセタール系樹脂の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置や透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
【0056】
上記微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂の体積平均粒子径は、CV値の上限が40%であることが好ましい。CV値が40%以下であると、粒子径の大きな微粒子が存在せず、大粒径粒子が沈降することによるリチウム二次電池電極用組成物の安定性の低下を抑制することができる。
上記CV値の好ましい上限は35%、より好ましい上限は32%、更に好ましい上限は30%である。なお、CV値は、標準偏差を体積平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
【0057】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーは、上記ポリビニルアセタール系樹脂と分散媒とを含む分散体を含有することが好ましい。
上記分散媒としては水性媒体が好ましく用いられる。
上記分散媒として水性媒体を用いることで、電極に残留する溶媒を限りなく減らすことができ、リチウム二次電池を作製することが可能となる。
なお、本発明の蓄電デバイス電極用バインダーでは、水性媒体は水のみであってもよく、上記水に加えて、水以外の溶媒を添加してもよい。
上記水以外の溶媒としては、水への溶解性を有しており、なおかつ揮発性の高いものがよく、例えば、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記水以外の溶媒添加量の好ましい上限は水100重量部に対して30重量部であり、より好ましい上限は20重量部である。
【0058】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダー中の上記ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は2重量%、好ましい上限は60重量%である。上記ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が2重量%以上であると、上記バインダーを活物質と混合して蓄電デバイス電極用組成物とした際の活物質に対するポリビニルアセタール系樹脂の量を充分なものとして、集電体への接着力を向上させることができ、60重量%以下であると、ポリビニルアセタール系樹脂の水性媒体中での安定性を向上させることができ、粒子同士の合着を抑制して、活物質の分散性を向上させて、リチウム二次電池等の蓄電デバイスの放電容量を向上させることができる。より好ましくは、5〜50重量%である。
【0059】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーは、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーである。
上記蓄電デバイスとしては、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。なかでも、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタに特に好適に使用することができる。
【0060】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーを製造する方法としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂を作製する工程を行った後、上記ポリビニルアセタール系樹脂をテトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のポリビニルアセタール系樹脂が溶解する有機溶剤に溶解させ、次いで、水等の貧溶媒を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去することによりポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製する方法、大量の水に上記ポリビニルアセタール系樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去し、ポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製する方法、ポリビニルアセタール系樹脂を該ポリビニルアセタール系樹脂のガラス転移温度以上で加熱してニーダー等で混練しながら、加熱加圧下で水を少量ずつ添加して混練する方法等が挙げられる。
なかでも、得られるポリビニルアセタール系樹脂の体積平均粒子径が小さく、粒子径分布が狭い微粒子を得ることができるため、上記ポリビニルアセタール系樹脂を有機溶剤に溶解した後にポリビニルアセタール系樹脂を析出させて微粒子を作製する方法が好ましい。なお、上記製造方法では、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂を作製し、乾燥した後に水性媒体に分散させてもよく、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂の作製時に使用した溶媒をそのまま水性媒体として使用してもよい。
【0061】
本発明の蓄電デバイス電極用バインダーに活物質を添加することで蓄電デバイス電極用組成物とすることができる。このような本発明の蓄電デバイス電極用バインダー、及び、活物質を含有する蓄電デバイス電極用組成物もまた本発明の1つである。
【0062】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物中の上記ポリビニルアセタール系樹脂の含有量は特に限定されないが、活物質100重量部に対して、好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は12重量部である。上記ポリビニルアセタール系樹脂の含有量が0.1重量部以上であると、集電体への接着力を向上させることができ、12重量部以下であると、リチウム二次電池の放電容量を向上させることができる。より好ましくは、0.3〜5重量部である。
【0063】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、活物質を含有する。
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、正極、負極のいずれの電極に使用してもよく、また、正極及び負極の両方に使用してもよい。従って、活物質としては、正極活物質、負極活物質がある。
【0064】
上記正極活物質としては、例えば、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物、マンガン酸リチウム(LiMn)、リン酸リチウム化合物(LiMPO(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2))等が挙げられる。また、電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記負極活物質としては、例えば、従来からリチウム二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、天然グラファイト(黒鉛)、人造グラファイト、 アモルファス炭素、カーボンブラック、シリコン、又は、これらの成分に異種元素を添加したもの等が挙げられる。なかでも、黒鉛、シリコンが好ましく、特に球状天然黒鉛、シリコンが好ましい。
【0066】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、導電助剤を含有することが好ましい。
上記導電助剤は、蓄電デバイスを高出力化するために用いられるものであり、正極に使用する場合、負極に使用する場合に応じて適当なものを使用することができる。
上記導電助剤としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、 カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が挙げられる。なかでも、アセチレンブラックが好ましい。
【0067】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物には、上述した活物質、導電助剤、ポリビニルアセタール系樹脂、水性媒体以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。なかでも、蓄電デバイス電極用組成物を集電体に塗工する際に、塗膜を均一なものとすることができることから、増粘剤を添加することが好ましい。
【0068】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記活物質、導電助剤、ポリビニルアセタール系樹脂、水性媒体及び必要に応じて添加する各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0069】
本発明の蓄電デバイス電極用組成物は、例えば、導電性基体上に塗布し、乾燥する工程を経ることで、蓄電デバイス電極が形成される。このような蓄電デバイス電極用組成物を含有することを特徴とする蓄電デバイス電極もまた本発明の1つである。
本発明の蓄電デバイス電極用組成物を導電性基体に塗布する際の塗布方法としては、例えば、押出しコーター、リバースローラー、ドクターブレード、アプリケーターなどをはじめ、各種の塗布方法を採用することができる。
また、蓄電デバイス電極を含有することを特徴とする蓄電デバイスもまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーとして使用した場合に、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギー安定性を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗が小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することができる。また、活物質の分散性、接着性に優れ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することができる。更に、該蓄電デバイス電極用バインダーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度64.4モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.8モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、76℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂1(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度63.6モル%、水酸基量32モル%、アセチル基量1.5モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は2.9モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、13であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、100nmであった。
【0073】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、78℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂2(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子2ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.1モル%、水酸基量48.9モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は3モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子2の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0074】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子3の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度70モル%、水酸基量28.2モル%、アセチル基量1.8モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸0.1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.14Mとして、72℃にて1時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂3(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子3ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子3の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度69.5モル%、水酸基量26.2モル%、アセチル基量1.5モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は2.8モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、8.9であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子3の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、110nmであった。
【0075】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子4の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度58.6モル%、水酸基量40モル%、アセチル基量1.4モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、80℃にて7時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂4(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子4ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子4の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度58.3モル%、水酸基量37.6モル%、アセチル基量1.2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は2.9モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、26.4であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子4の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、100nmであった。
【0076】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子5の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.3重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、78℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂5(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子5ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子5の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.4モル%、水酸基量50.8モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.06mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は0.8モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子5の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、620nmであった。
【0077】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子6の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.4重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、78℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂6(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子6ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子6の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.1モル%、水酸基量50.7モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.08mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は1.2モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子6の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、450nmであった。
【0078】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子7の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを6重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、80℃にて5時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂7(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子7ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子7の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.1モル%、水酸基量37.9モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は1.8mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は14モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子7の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、9nmであった。
【0079】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子8の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.6重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、78℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂8(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子8ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子8の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.1モル%、水酸基量50.1モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は1.8モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子8の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、240nmであった。
【0080】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子9の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度46モル%、水酸基量51.9モル%、アセチル基量2.1モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液にテレフタルアルデヒド酸を2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、79℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂9(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子9ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子9の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度45.2モル%、水酸基量42モル%、アセチル基量1.8モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は1mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがカルボキシル基)の含有量は11モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、15.2であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子9の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、450nmであった。
【0081】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子10の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度35.5モル%、水酸基量63.3モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、73℃にて1時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂10(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子10ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子10の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度34モル%、水酸基量62モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は3モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、9.1であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子10の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、100nmであった。
【0082】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子11の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度70.2モル%、水酸基量27.6モル%、アセチル基量2.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.3重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸0.3重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.14Mとして、72℃にて1時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂11(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子11ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子11の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度68.8モル%、水酸基量25モル%、アセチル基量2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は4.2モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、10.4であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子11の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0083】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子12の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度33.1モル%、水酸基量65.6モル%、アセチル基量1.3モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸0.6重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、73℃にて1時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂12(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子12ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子12の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度32.5モル%、水酸基量65モル%、アセチル基量0.8モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は1.7モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、11.6であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子12の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0084】
(ポリビニルアセタール系樹脂13の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、12Mの濃塩酸0.3重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.17Mとして、74℃にて3時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させてポリビニルアセタール系樹脂13を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.1モル%、水酸基量48.9モル%、アセチル基量1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は3モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、10.3であった。
【0085】
(ポリビニルアセタール系樹脂14の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1000、ブチラール化度48モル%、水酸基量50.7モル%、アセチル基量1.3モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に12Mの濃塩酸0.1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.14Mとして、73℃にて1時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させてポリビニルアセタール系樹脂14を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、ブチラール化度47.8モル%、水酸基量51モル%、アセチル基量1.2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量は0モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、9.4であった。
【0086】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子15の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度52モル%、水酸基量47.8モル%、アセチル基量0.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド0.2重量部と12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.15Mとして、82℃にて6時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂15(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子15ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子15の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量0.3モル%、ブチラール化度51.7モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量0.2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は2.8モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、12であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子15の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0087】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子16の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度45.6モル%、水酸基量52.1モル%、アセチル基量2.3モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.5重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド3重量部と12Mの濃塩酸0.05重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて0.3時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂16(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子16ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子16の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量5モル%、ブチラール化度46.4モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は1.6モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、16.7であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子16の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、300nmであった。
【0088】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子17の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度46.8モル%、水酸基量51.8モル%、アセチル基量1.4モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド1重量部と12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、75℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂17(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子17ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子17の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量2モル%、ブチラール化度47.4モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量1.1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.6mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は4.5モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、11.5であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子17の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、30nmであった。
【0089】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子18の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度800、ブチラール化度52モル%、水酸基量47.9モル%、アセチル基量0.1モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液にテレフタルアルデヒド酸を2重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド0.1重量部と12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、82℃にて7時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂18(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子18ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子18の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量0.2モル%、ブチラール化度51.7モル%、水酸基量36モル%、アセチル基量0.1モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は1mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがカルボキシル基)の含有量は12モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、9.4であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子18の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、450nmであった。
【0090】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子19の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1700、ブチラール化度37モル%、水酸基量55モル%、アセチル基量8モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド3.5重量部と12Mの濃塩酸0.05重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて0.3時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂19(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子19ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子19の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量7モル%、ブチラール化度38モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量7モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は3モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、17であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子19の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0091】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子20の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1700、ブチラール化度66.6モル%、水酸基量31モル%、アセチル基量2.4モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド0.9重量部と12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、75℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂20(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子20ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子20の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量2モル%、ブチラール化度66.8モル%、水酸基量25モル%、アセチル基量2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.3mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)は4.2モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、10.2であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子20の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0092】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子21の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1700、ブチラール化度30.3モル%、水酸基量68.7モル%、アセチル基量1モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド1.5重量部と12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、75℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂21(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子21ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子21の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量2モル%、ブチラール化度30.5モル%、水酸基量65モル%、アセチル基量0.8モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は1.7モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、12.4であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子21の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、90nmであった。
【0093】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子22の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1700、ブチラール化度37.2モル%、水酸基量61モル%、アセチル基量1.8モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを6重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド1重量部と12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、75℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂22(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子22ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子22の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量2モル%、ブチラール化度37.5モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量1.5モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は1.8mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は14モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、10.2であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子22の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、9nmであった。
【0094】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子23の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度800、ブチラール化度50.5モル%、水酸基量47.7モル%、アセチル基量1.8モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.25重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド1重量部と12Mの濃塩酸0.5重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.21Mとして、75℃にて4時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状であるポリビニルアセタール系樹脂23(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子23ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子23の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量2モル%、ブチラール化度50.8モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量1.5モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.05mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は0.7モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、16.1であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子23の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、700nmであった。
【0095】
(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子24の分散体の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度50.1モル%、水酸基量47.6モル%、アセチル基量2.3モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.6重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド1重量部と12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.29Mとして、86℃にて7時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させて樹脂を回収した。次に、得られた樹脂を再度イソプロパノール80重量部に溶解させ、水200重量部を滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでイソプロパノール及び水を揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、微粒子形状のポリビニルアセタール系樹脂24(以下、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子24ともいう)が分散した分散体(ポリビニルアセタール系樹脂微粒子24の含有量:20重量%)を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量0.2モル%、ブチラール化度48.6モル%、水酸基量47.1モル%、アセチル基量2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.17mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)の含有量は2.1モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、15.3であった。更に、得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子23の体積平均粒子径を透過型電子顕微鏡により測定したところ、200nmであった。
【0096】
(ポリビニルアセタール系樹脂25の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール系樹脂(重合度1100、ブチラール化度52モル%、水酸基量47.8モル%、アセチル基量0.2モル%)20重量部をイソプロパノール80重量部に溶解させ、溶解液に2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.05重量部加え反応系内の酸濃度を0.12Mとして、70℃にて4時間反応させた。次いで、ブチルアルデヒド0.2重量部と12Mの濃塩酸1重量部を添加し反応系内の酸濃度を0.15Mとして、82℃にて6時間反応を行った後、反応液を冷却し、再沈法にて樹脂の精製を行い、最後に乾燥させてポリビニルアセタール系樹脂25を作製した。
なお、得られたポリビニルアセタール系樹脂をNMRにより測定したところ、式(1)で表される構成単位(式(1)中、Rがプロピル基)の含有量0.3モル%、ブチラール化度51.7モル%、水酸基量45モル%、アセチル基量0.2モル%、ポリビニルアセタール系樹脂に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/g、イオン性官能基を有するアセタール結合の含有量(式(5)中、Rがベンゼン環、Xがスルホン酸ナトリウム)は2.8モル%であった。また、得られたポリビニルアセタールにおけるアセタール環構造のメゾ/ラセモ比率を測定したところ、11.6であった。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例1)
(リチウム二次電池正極用組成物の調製)
バインダーとして得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散体10重量部に、水90重量部を加えて、2重量%のポリビニルアセタール系樹脂溶液を調製した。この溶液100重量部に対して、正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、品名:セルシードC−5)50重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を1重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(アルドリッチ社製)を1重量部加えて混合し、リチウム二次電池正極用組成物を得た。
【0099】
(実施例2〜8、10〜19、比較例1〜4、6〜8)
表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂微粒子の分散体を用いて、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子の量又は種類を変更したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池正極用組成物を得た。
【0100】
(実施例9、20、比較例5)
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散液に代えて、表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂2重量部にN−メチルピロリドン98重量部を加えて調整した溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池正極用組成物を得た。
【0101】
(実施例21)
(リチウム二次電池負極用組成物の調製)
バインダーとして得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散体10重量部に、水90重量部を加えて、2重量%のポリビニルアセタール系樹脂溶液を調製した。この溶液100重量部に対して、負極活物質として球状天然黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGB−20)50重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を1重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(アルドリッチ社製)を1重量部加えて混合し、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0102】
(実施例22〜28、30〜39、比較例9〜12、14〜16)
表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂微粒子の分散体を用いて、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子の量又は種類を変更したこと以外は実施例21と同様にして、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0103】
(実施例29、40、比較例13)
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散液に代えて、表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂を2重量部にN−メチルピロリドン98重量部を加えて調整した溶液を用いたこと以外は実施例21と同様にして、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0104】
(実施例41)
(リチウム二次電池負極用組成物の調製)
バインダーとして得られたポリビニルアセタール系樹脂微粒子1の分散体10重量部に、水90重量部を加えて、2重量%のポリビニルアセタール系樹脂溶液を調製した。この溶液100重量部に対して、負極活物質として球状天然黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGB−20)45重量部及びシリコン(SiO、大阪チタニウムテクノロジーズ社製)5重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を1重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(アルドリッチ社製)を1重量部加えて混合し、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0105】
(実施例42〜48、50〜59、比較例17〜20、22〜24)
表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂微粒子の分散体を用いて、ポリビニルアセタール系樹脂微粒子の量又は種類を変更したこと以外は実施例41と同様にして、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0106】
(実施例49、60、比較例21)
ポリビニルアセタール系樹脂からなる微粒子の分散液に代えて、表2〜5に示すポリビニルアセタール系樹脂を2重量部にN−メチルピロリドン98重量部を加えて調整した溶液を用いたこと以外は実施例41と同様にして、リチウム二次電池負極用組成物を得た。
【0107】
<評価>
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池電極用組成物(正極用、負極用)について以下の評価を行った。結果を表2〜5に示した。
【0108】
(1)接着性
実施例1〜20、比較例1〜8で得られたリチウム二次電池正極用組成物については、アルミ箔に対する接着性を評価し、実施例21〜60、比較例9〜24で得られたリチウム二次電池負極用組成物については、銅箔に対する接着性を評価した。
【0109】
(1−1)アルミ箔に対する接着性
アルミ箔(厚み15μm)の上に、乾燥後の膜厚が40μmとなるようにリチウム二次電池電極用組成物を塗工、乾燥し、アルミ箔上に電極がシート状に形成された試験片を得た。
このサンプルを縦10cm、横5cmに切り出し、アルミ箔側を厚み2mmのアクリル板に両面テープで貼り付けた。試験片の電極表面に幅18mmのテープ(商品名:セロテープ(登録商標)No.252(積水化学工業社製)(JIS Z1522規定))を貼り付け、90°方向に300mm/minの速度でテープを剥離したときの剥離力(N)をAUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS−J」)を用いて計測した。
【0110】
(1−2)銅箔に対する接着性
上記「(1−1)アルミ箔に対する接着性」において、アルミ箔を銅箔(厚み15μm)に変更した以外は全く同じ方法にて剥離力を計測した。
【0111】
(2)分散性
得られたリチウム二次電池電極用組成物10重量部と水90重量部とを混合、希釈した後、超音波分散機(エスエヌディ社製、「US−303」)にて10分間撹拌した。その後レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、平均分散径を測定した。
【0112】
(3)耐電解液性
(バインダー樹脂シートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように実施例及び比較例で用いられたポリビニルアセタール系樹脂分散体又は樹脂溶液を塗工、乾燥してバインダー樹脂シートを作製した。
得られたバインダー樹脂シートを30×50mmに切り出し、試験片を作製した。
【0113】
得られた試験片を110℃で2時間乾燥させて得られたフィルムの重量を計量することにより、フィルムの重量(a)を計測した。
次に、電解液としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶液(体積比1:1)を用い、得られたフィルムを電解液に25℃で3日間浸漬させた。その後、フィルムを取り出し、直ちに表面の電解液をふき取って除去した後、計量することにより、重量(b)を計測した。
その後、該フィルムを純水500gに2日間浸漬させてフィルム内部の電解液を完全に除去し、110℃で2時間乾燥させた後、計量することにより、重量(c)を計測した。
各重量から、バインダーの溶解率及び膨潤率を次式により算出した。
溶解率(%)=[(a−c)/a]×100
膨潤率(%)=(b/c)×100
なお、溶解率の値が高いほど電解液に樹脂が溶解しやすいことを意味し、膨潤率が高いほど樹脂が電解液によって膨潤しやすいことを意味する。
【0114】
(4)柔軟性
実施例1〜20、比較例1〜8で得られたリチウム二次電池正極用組成物については、アルミ箔を用いて作製した電極の柔軟性を評価し、実施例21〜60、比較例9〜24で得られたリチウム二次電池負極用組成物については、銅箔を用いて作製した電極の柔軟性を評価した。
【0115】
(4−1)アルミ箔を用いた柔軟性
アルミ箔(厚み15μm)の上に、乾燥後の膜厚が40μmとなるようにリチウム二次電池電極用組成物を塗工、乾燥し、アルミ箔上に電極がシート状に形成された試験片を得た。
このサンプルを縦50cm、横2cmに切り出し、直径2mmのガラス棒に巻き付けて1日放置した後、サンプルの巻き付けを解いて電極のクラックや割れの発生を以下の基準で評価した。
◎:クラックや割れは全く確認されなかった
○:クラックや割れが僅かに確認されたが、活物質の剥がれは全く確認されなかった
△:クラックや割れが確認され、部分的な活物質の剥がれも確認された
×:全面的にクラックや割れが確認され、大部分の活物質の剥がれも確認された
【0116】
(4−2)銅箔を用いた柔軟性
上記「(4−1)アルミ箔を用いた柔軟性」において、アルミ箔を銅箔(厚み15μm)に変更した以外は全く同じ方法にて柔軟性を評価した。
【0117】
(5)電池性能評価
(5−1)実施例1〜20、比較例1〜8
(a)二次電池の作製
実施例1〜20、比較例1〜8で得られたリチウム二次電池正極用組成物を厚さ15μmのアルミ箔に均一に塗布、乾燥し、これをφ16mmに打ち抜いて正極を得た。
電解液としてLiPF(1M)を含有するエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1)を用いた。
2極式コインセル(商品名:HSフラットセル(宝泉社製))に、正極を、電極層面が上向きになるように入れた。次いで、直径24mmに打ち抜いた厚さ25μmの多孔質ポリプロピレン製セパレータを置いた後、空気が入らないように電解液を注入した。その後、対極となるリチウム金属板を更に置き、上部蓋をネジで閉めて密閉することにより二次電池を得た。
【0118】
(b)放電容量評価、及び、充放電サイクル評価
得られた二次電池について、東洋システム社製、評価用充放電試験装置TOSCAT−3100を用いて放電容量評価、及び、充放電サイクル評価を行った。
この放電容量評価、充放電サイクル評価は電圧範囲2.7〜4.2V、放電容量評価温度は25℃、充放電サイクル評価温度は25℃、−5℃、50℃で行った。なお、充放電サイクル評価は、初回の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の割合より算出した。
【0119】
(5−2)実施例21〜60、比較例9〜24
実施例21〜60、比較例9〜24で得られたリチウム二次電池負極用組成物を厚さ15μmの銅箔に均一に塗布、乾燥し、これをφ16mmに打ち抜いて負極を得た。
得られた負極を用いた以外は、(1)と同じ方法にて密閉型の二次電池を得た後、放電容量評価、及び、充放電サイクル評価を行った。なお、この放電容量評価、充放電サイクル評価は電圧範囲0.03〜1.5V、放電容量評価温度は25℃、充放電サイクル評価温度は25℃、−5℃、50℃で行った。充放電サイクル評価は、初回の放電容量に対する30サイクル目の放電容量の割合より算出した。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明によれば、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーとして使用した場合に、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギー安定性を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗が小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することができる。また、活物質の分散性、接着性に優れ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することができる。更に、該蓄電デバイス電極用バインダーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することができる。
【要約】
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーとして使用した場合に、高温環境から低温環境までの幅広い熱エネルギー安定性を有し、得られる蓄電池の不可逆容量が小さく、かつ、抵抗も小さく、出力特性に優れた高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することを目的とする。また、活物質の分散性、接着性に優れ、得られる電極の柔軟性を向上させることが可能であり、電解液に対する耐久性が高く、バインダーの添加量が少ない場合でも高容量の蓄電池を作製することが可能な蓄電デバイス電極用バインダーを提供することを目的とする。更に、該蓄電デバイス電極用バインダーを用いた蓄電デバイス電極用組成物、蓄電デバイス電極、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明は、蓄電デバイスの電極に用いられるバインダーであって、前記バインダーはポリビニルアセタール系樹脂を含有し、前記ポリビニルアセタール系樹脂は、アセタール環構造のメゾ/ラセモ比率が10以上であり、水酸基量が30〜60モル%である蓄電デバイス電極用バインダーである。