(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1Aは、本実施の形態に係る多孔質セラミック粒子を、一主面を下方に向けて配置した例を示す斜視図であり、
図1Bは、
図1Aに示す多孔質セラミック粒子を、上方から見て示す平面図であり、
図1Cは、
図1Aに示す多孔質セラミック粒子を、下方から見て示す底面図である。
【
図2】
図2Aは、変形例に係る多孔質セラミック粒子を、一主面を下方に向けて配置した例を示す斜視図であり、
図2Bは、
図2Aに示す多孔質セラミック粒子を、上方から見て示す平面図であり、
図2Cは、
図2Aに示す多孔質セラミック粒子を、下方から見て示す底面図である。
【
図3】
図3Aは、多孔質セラミック粒子の製造方法の1つの例を示すフローチャートであり、
図3Bは、多孔質セラミック粒子の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4Aは、複数の多孔質セラミック粒子と接着剤成分を含むスラリーとを図示しない型に流し込んだ状態を示す工程図であり、
図4Bは、スラリーを乾燥後、焼成、固化してバルク体とした状態を示す工程図であり、
図4Cは、バルク体を基材(バルク体が貼着される対象物)上に設置した状態を示す工程図である。
【
図5】
図5Aは、従来例において複数の粒子をスラリーに分散させた状態を一部省略して示す説明図であり、
図5Bは、スラリーを固化してバルク体とした状態を一部省略して示す説明図である。
【
図6】
図6Aは、複数の多孔質セラミック粒子(複数の粒子集合体)と接着剤成分を含むスラリーとを図示しない型に流し込んだ状態を示す工程図であり、
図6Bは、スラリーを乾燥後、焼成、固化してバルク体とした状態を示す工程図であり、
図6Cは、バルク体を対象物上に設置した状態を示す工程図である。
【
図7】
図7は、バルク体において複数の多孔質セラミック粒子を縦方向に整列させた例を一部省略して示す断面図である。
【
図8】
図8Aは、多孔質セラミック粒子に緻密層を配置した1つの例を一部省略して示す断面図であり、
図8Bは、多孔質セラミック粒子に緻密層を配置した他の例を一部省略して示す断面図である。
【
図9】
図9Aは、対象物上に接着剤を塗布した状態を示す工程図であり、
図9Bは、1つの面に複数の多孔質セラミック粒子を貼り付けたシートを使って、接着剤上に複数の多孔質セラミック粒子を転写した状態を示す工程図であり、
図9Cは、シートを剥がした状態を示す工程図である。
【
図10】
図10Aは、複数の多孔質セラミック粒子上に、接着剤を塗布してバルク体を構成した例を一部省略して示す断面図であり、
図10Bは、
図10Aの状態から上層の接着剤上に、さらに複数の多孔質セラミック粒子を転写して、バルク体を構成した例を一部省略して示す断面図であり、
図10Cは、
図10Bの状態から複数の多孔質セラミック粒子上に、接着剤を塗布してバルク体を構成した例を一部省略して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に多孔質セラミック粒子の実施の形態例を
図1A〜
図10Cを参照しながら説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0021】
本実施の形態に係る多孔質セラミック粒子10は、例えば
図1A〜
図1Cに示すように、一主面12aと、該一主面12aと向かい合った他主面12bと、複数の側面14(例えば4つの側面14)とを有する立体状であり、多角形状や円盤状等が挙げられる。
図1Aは、多孔質セラミック粒子10の外形形状を四角錐台状とした場合であって、一主面12aを下方に、他主面12bを上方に向けて配置した例を示す。一主面12aと他主面12bとは互いに正面同士に向き合ってもよいし、ある程度角度をもって向き合ってもよい。
【0022】
この場合、
図1Aに示すように、各側面14の傾斜角θがそれぞれ同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。もちろん、少なくとも1つの側面14の傾斜角θが他の側面14の傾斜角θと異なっていてもよい。ここで、側面14の傾斜角θとは、一主面12aに対する傾斜角をいう。
【0023】
外形形状としては、
図2Aに示す変形例に係る多孔質セラミック粒子10aのように、各側面14がそれぞれ傾斜角θa、θbの異なる複数の面14a及び14bで構成されてもよい。
【0024】
多孔質セラミック粒子10、10aを構成する多角形状としては、上面から見た形状が
図1A及び
図2Aに示すような矩形状でもよいし、その他、五角形状、六角形状、八角形状等の多角形状でもよいし、トラック形状、楕円状、円形状等であってもよい。なお、外形形状の各稜線部分が湾曲面(R面)になっていてもよい。
【0025】
さらに、多孔質セラミック粒子10、10aの少なくとも一主面12aが鏡面であることが好ましい。ここで、鏡面とは表面粗さRaが1μm以下の面を指す。鏡面である一主面12aは、対向する他主面12bよりも表面粗さRaが小さいことが好ましい。一主面12aが鏡面である場合、対向する他主面12bは表面粗さRaが大きいことが好ましい。もちろん、一主面12aと対向する他主面12bも鏡面であることが好ましい。一主面12aも他主面12bとも鏡面である場合は、一主面の表面粗さRaが他主面の表面粗さRaの90%未満であることがさらに好ましい。多孔質セラミック粒子10、10aの側面14は粗面であることが好ましい。ここで、粗面とは表面粗さRaが1μmを超えた面であるが、好ましくは表面粗さRaが5μm以上10μm以下の面を指す。また、多孔質セラミック粒子を膜化、すなわち、バルク体20(
図4B参照)にする場合には、一主面は膜化した際に表面側に配置され、他主面は基材(すなわち、バルク体20が貼着される対象物26)側に配置されるのが好ましい。
【0026】
また、多孔質セラミック粒子10、10aは、アスペクト比が3以上であることが好ましい。さらに好ましくは5以上、より好ましくは7以上である。この場合、アスペクト比は、例えば
図1A、
図1C、
図2A及び
図2Cに示すように、最大長La/最小長Lbをいう。ここで、最大長Laとは、
図1C及び
図2Cに示すように、多孔質セラミック粒子10、10aを構成する複数の面のうち、最も広い面(ここでは、一主面12a)における最大長をいう。広い面が正方形、長方形、台形、平行四辺形、多角形(五角形、六角形等)であれば、最も長い対角線の長さが該当し、円形であれば直径が該当し、楕円であれば、長軸の長さが該当する。一方、最小長Lbとは、
図1A及び
図2Aに示すように、多孔質セラミック粒子10、10aの厚みのうち、最も薄い部分の厚みをいう。
【0027】
最小長Lbは、50〜500μmが好ましく、さらに好ましくは55〜400μmであり、より好ましくは60〜300μmであり、特に好ましくは70〜200μmである。
【0028】
ここで、多孔質とは、緻密でも中空でもない状態をいい、複数の気孔又は粒子で構成された状態をいう。なお、緻密とは、複数の微粒子が隙間なく結合した状態であって、気孔を有しない。中空とは、内部が中空であって、外殻部分が緻密である状態をいう。
【0029】
多孔質セラミック粒子10、10aの気孔率は20〜99%であり、気孔とは、閉気孔、開気孔の少なくとも1つのことであり、両方を含んでもよい。また、気孔の形状、すなわち、開口の面形状としては、正方形、四角形、三角形、六角形、円形等、不定形のいずれの形状であってもよい。平均気孔径は500nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10〜500nmである。この寸法は、熱伝導の主因である格子振動(フォノン)の発生を阻害するのに有効である。
【0030】
多孔質セラミック粒子10、10aは、微粒子が三次元に繋がった構造を有する。微粒子の粒径は1nm〜5μmであることが好ましい。さらに好ましくは50nm〜1μmである。このような範囲の粒径の微粒子で構成された多孔質セラミック粒子10、10aは、熱伝導の主因である格子振動(フォノン)の発生が阻害されるため、低熱伝導率を図る上で有効となる。微粒子とは、一つの結晶粒からなる粒子(単結晶粒子)であってもよいし、多数の結晶粒からなる粒子(多結晶粒子)であってもよい。つまり、多孔質セラミック粒子10、10aがこの範囲の粒径の微粒子の集まりであることが好ましい。なお、微粒子の粒径は、多孔質セラミック粒子10、10aの骨格を構成する粒子群のうちの1つの微粒子の大きさ(球状であれば直径、そうでなければ最大径)を、電子顕微鏡観察の画像から計測したものである。
【0031】
多孔質セラミック粒子10、10aの熱伝導率は1W/mK以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.7W/mK以下、より好ましくは0.5W/mK以下、特に好ましくは0.3W/mK以下である。
【0032】
多孔質セラミック粒子10、10aの構成材料としては、金属酸化物を含むことが好ましく、金属酸化物のみからなることがさらに好ましい。金属酸化物を含むと、金属の非酸化物(例えば、炭化物や窒化物)に比べて金属と酸素の間のイオン結合性が強いために熱伝導率が低くなりやすいためである。
【0033】
金属酸化物がZr、Y、Al、Si、Ti、Nb、Sr、La、Hf、Ce、Gd、Sm、Mn、Yb、Er、及びTaからなる群から選ばれる1の元素の酸化物あるいは2以上の元素の複合酸化物であることが好ましい。金属酸化物がこれらの元素の酸化物、複合酸化物であると、格子振動(フォノン)による熱伝導が起こりにくくなるためである。
【0034】
具体的な材料としては、ZrO
2−Y
2O
3にGd
2O
3、Yb
2O
3、Er
2O
3等を添加したものが挙げられる。さらに具体的には、ZrO
2−HfO
2−Y
2O
3、ZrO
2−Y
2O
3−La
2O
3、ZrO
2−HfO
2−Y
2O
3−La
2O
3、HfO
2−Y
2O
3、CeO
2−Y
2O
3、Gd
2Zr
2O
7、Sm
2Zr
2O
7、LaMnAl
11O
19、YTa
3O
9、Y
0.7La
0.3Ta
3O
9、Y
1.08Ta
2.76Zr
0.24O
9、Y
2Ti
2O
7、LaTa
3O
9、Yb
2Si
2O
7、Y
2Si
2O
7、Ti
3O
5等が挙げられる。
【0035】
ここで、多孔質セラミック粒子10、10aの製造方法について、
図3A、
図3Bを参照しながら説明する。
【0036】
先ず、
図3AのステップS1において、上述した多孔質セラミック粒子10、10aの構成材料の粉末に、造孔材、バインダー、可塑剤、溶剤を加えて混合し、成形用スラリーを調製する。
【0037】
その後、ステップS2において、スラリーに、真空脱泡処理を施すことにより、粘度を調整した後、例えばドクターブレード装置によって、焼成後の厚さが最小長となるように成形体(グリーンシート)を作製する。
【0038】
その後、ステップS3において、成形体(グリーンシート)を焼成してシート状の焼結体を得る。
【0039】
そして、ステップS4において、焼結体をレーザーで加工することで、本実施の形態に係る多孔質セラミック粒子10、10aを得る。このレーザー加工においては、焼結体に対してレーザー光を貫通させることで、焼結体を複数の多孔質セラミック粒子に分離してもよい。この場合、
図1A〜
図1Cに示すような多孔質セラミック粒子10が得られる。あるいは、焼結体に対してレーザー光をその厚み方向途中まで到達させた後、焼結体を折り曲げることで、焼結体を複数の多孔質セラミック粒子に分離してもよい。この場合、
図2A〜
図2Cに示すような変形例に係る多孔質セラミック粒子10aが得られる。
【0040】
その他の製造方法としては、例えば
図3Bに示すように、ステップS101及びS102において、
図3AのステップS1及びS2と同様に、成形用スラリーを調製した後、焼成後の厚さが最小長となるように成形体(グリーンシート)を作製する。
【0041】
その後、ステップS103において、成形体(グリーンシート)をレーザーで加工することで、複数の多孔質セラミック粒子の前駆体あるいは複数の凹凸を有する成形体(グリーンシート)を作製する。
【0042】
その後、ステップS104aにおいて、複数の多孔質セラミック粒子の前駆体を焼成することで、例えば
図1A〜
図1Cに示すような複数の多孔質セラミック粒子10を得る。
【0043】
あるいは、ステップS104bにおいて、複数の凹凸を有する成形体を焼成することで、複数の凹凸を有する焼結体を得る。この場合、次のステップS105において、複数の凹凸を有する焼結体を複数の多孔質セラミック粒子10aに分離する。
【0044】
次に、代表的に多孔質セラミック粒子10を用いて1つのバルク体20を構成する2つの方法について
図4A〜
図10Cを参照しながら説明する。
【0045】
先ず、第1の方法は、
図4Aに示すように、複数の多孔質セラミック粒子10と、接着剤成分を含むスラリー22とを図示しない型に流し込む。このとき、スラリー22に複数の多孔質セラミック粒子10を均一に分散させることができる。その後、
図4Bに示すように、スラリー22を乾燥後、焼成、固化してバルク体20を作製する。このバルク体20は、接着剤24中に複数の多孔質セラミック粒子10が均一に分散した状態となる。その後、
図4Cに示すように、対象物26上にバルク体20を粘着剤等を介して設置する。このとき、例えば各多孔質セラミック粒子10の他主面12bが対象物26に向かうようにバルク体20を設置する。
【0046】
従来は、
図5Aに示すように、スラリー22に添加する粒子28が小さいため、スラリー22に粒子28を均一に分散させることが困難である。そのため、
図5Bに示すように、スラリー22の固化による接着剤24中に複数の粒子28が均一に分散しないことから、粒子28よりも熱伝導率が高い接着剤24のみの領域30が多く存在することになり、バルク体20の低熱伝導率化が不十分となる。
【0047】
これに対して、本実施の形態では、アスペクト比が3以上であることから、
図4A〜
図4Cに示すように、複数の多孔質セラミック粒子10を層状に、且つ、均一に分散させることが可能となる。しかも、各多孔質セラミック粒子10の一主面12aが鏡面となっているため、例えば粒子集合体100上に介在するスラリー22に厚みムラがほとんどなくなる。粒子集合体100を構成する複数の多孔質セラミック粒子10も層状に、且つ、均一に分散させることが可能となる。
【0048】
また、
図6A〜
図6Cに示すように、層状に分散された複数の多孔質セラミック粒子10の集まり、すなわち、多孔質セラミック粒子集合体(以下、単に粒子集合体100と記す)を2層以上とした場合においても、以下のような作用を発揮する。すなわち、各多孔質セラミック粒子10の一主面12aが鏡面となっているため、例えば1層目の粒子集合体100上に介在するスラリー22に厚みムラがほとんどなくなる。そのため、1層目の粒子集合体100上に配置される2層目の粒子集合体100を構成する複数の多孔質セラミック粒子10も層状に、且つ、均一に分散させることが可能となる。これは、3層目以上の粒子集合体100についても同様である。
【0049】
さらに、各多孔質セラミック粒子10の側面14が粗面となっていることから、上層のスラリー22が多孔質セラミック粒子10の下層に回り込みにくくなり、同様に、下層のスラリー22が多孔質セラミック粒子10の上層に回り込みにくくなる。これにより、各粒子集合体100間の距離をほぼ一定にすることが可能となり、粒子集合体100を構成する各多孔質セラミック粒子10間の距離もほぼ一定にすることが可能となる。すなわち、多孔質セラミック粒子10間の距離(粒子間距離)を10μm以下に規制することが可能となる。その結果、例えば1層目の粒子集合体100の下層の接着剤24の厚みが極端に厚くなる等の現象を回避することができる。粒子間距離は7μm以下が好ましく、4μm以下がさらに好ましい。但し、粒子間距離が狭ければよいというわけではなく、0.1μm以上が必要である。0.1μm以上の粒子間距離があれば、その後の膜化によってバルク体20した後、バルク体20を対象物26に貼着して使用する場合に、以下の効果を奏する。すなわち、バルク体20の表面側が高温となり、対象物26側が低温となるような場合に、バルク体20自体に熱膨張が生じるが、0.1μm以上の粒子間距離(隙間)があることで、多孔質セラミック粒子10や接着剤24及び対象物26等に発生する熱応力を緩和し易くなる。
【0050】
このように、本実施の形態においては、スラリー22に複数の多孔質セラミック粒子10を均一に分散させることができることから、多孔質セラミック粒子10よりも熱伝導率が高い接着剤24のみの領域が狭くなり、バルク体20の熱伝導率を低く抑えることができる。しかも、バルク体20間での熱導電率の均一化も図ることができ、バルク体20を配置する箇所に応じてバルク体20を変更する必要がなく、配置工程の簡略化、工数の削減化を図ることができる。
【0051】
なお、
図6A〜
図6Cでは、複数の多孔質セラミック粒子10を千鳥配列にした例を示したが、
図7に示すように、複数の多孔質セラミック粒子10を縦方向に整列させてもよい。ただ、
図7の例は、接着剤24のみの領域が縦方向につながることから、千鳥配列の場合よりも熱伝導率を低く抑える効果が低減するおそれがある。
【0052】
また、
図8A及び
図8Bに示すように、多孔質セラミック粒子10の一主面12a上に緻密層32を配置してもよい。これにより、各多孔質セラミック粒子10の強度を向上させることができる。もちろん、緻密層32を多孔質セラミック粒子10の一主面12aのほか、一主面12aと対向する他主面12b(対象物26側の主面)に配置してもよい。また、多孔質セラミック粒子10の一主面12aと他主面12bの両方に緻密層32を配置してもよい。多孔質セラミック粒子10の他主面12bに緻密層32を配置すると、接着剤24が多孔質セラミック粒子10に染み込むのを抑制することができ、しかも、多孔質セラミック粒子10の強度を高くすることができる。多孔質セラミック粒子10への緻密層32の配置は、別体の緻密層32を多孔質セラミック粒子10に配置してもよいし、多孔質セラミック粒子10自体に変質層(緻密層)を形成してもよい。
【0053】
次に、第2の方法について
図9A〜
図10Cを参照しながら説明する。この第2の方法は、先ず、
図9Aに示すように、対象物26上に接着剤24を塗布する。
図9Bに示すように、例えば1つの面に複数の多孔質セラミック粒子10を貼り付けたシート34を使って、対象物26の接着剤24上に複数の多孔質セラミック粒子10を転写する。シート34に貼り付けられた複数の多孔質セラミック粒子10の粒子間距離は10μm以下に設定されている。粒子間距離は7μm以下が好ましく、4μm以下がさらに好ましい。シート34は、粘着力があるシートもしくはフィルムであり、熱、電気等の外的要因で剥離することが可能なものが好ましい。
【0054】
図9Cに示すように、シート34を加熱して、シート34を剥がすことで、対象物26上に複数の多孔質セラミック粒子10と接着剤24によるバルク体20が設置されることになる。すなわち、1層の粒子集合体100と接着剤24によるバルク体20が設置される。
【0055】
さらに、
図10Aに示すように、複数の多孔質セラミック粒子10上に、接着剤24を塗布してバルク体20を構成してもよい。この場合、多孔質セラミック粒子10の外表面が接着剤24で覆われるため強度的に強固になるが、
図9Cの例よりも熱伝導率が高くなるおそれがある。
【0056】
また、
図10Bに示すように、
図10Aの状態から上層の接着剤24上に、さらに複数の多孔質セラミック粒子10を転写して、バルク体20を構成してもよい。すなわち、2層の粒子集合体100と接着剤24によるバルク体20が構成される。また、
図10Cに示すように、
図10Bの状態から複数の多孔質セラミック粒子10上に、接着剤24を塗布してバルク体20を構成してもよい。
【0057】
もちろん、
図9Cの状態を起点として、複数の多孔質セラミック粒子10上への接着剤24の塗布→接着剤24上への複数の多孔質セラミック粒子10の転写を繰り返して、3層以上の粒子集合体100と接着剤24によるバルク体20を構成してもよい。あるいは、
図10Aの状態を起点として、接着剤24上への複数の多孔質セラミック粒子10の転写→複数の多孔質セラミック粒子10上への接着剤24の塗布を繰り返して、3層以上の粒子集合体100と接着剤24によるバルク体20を構成してもよい。
【0058】
この第2の方法においては、第1の方法と同様に、接着剤24に複数の多孔質セラミック粒子10を均一に分散させることができる。しかも、多孔質セラミック粒子10よりも熱伝導率が高い接着剤24のみの領域が狭くなることから、バルク体20の熱伝導率を低く抑えることができる。特に、第2の方法では、第1の方法と異なり、予めバルク体20とせずに、対象物26上に接着剤24を介して複数の多孔質セラミック粒子10を並べ、その上に接着剤24を塗布するようにしているため、対象物26上に複数の多孔質セラミック粒子10を均一に並べることができる。しかも、対象物26の一部の領域にバルク体20を設置したり、複雑な形状に沿ってバルク体20を設置することも容易になり、設計の自由度を向上させることができる。また、1つの面に複数の多孔質セラミック粒子10を貼り付けたシート34を使用するようにしたので、接着剤24上に、複数の多孔質セラミック粒子10を並べる作業が簡単になり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0059】
シート34の粘着力(JIS Z0237)は1.0N/10mm以上、引張伸度(JIS K7127)は0.5%以上、厚みは5mm以下であることが好ましい。これにより、以下の効果を奏することができる。
(a) 粘着力が高いほど多孔質セラミック粒子10を強固に固定することができる。
(b) 引張伸度が高いほど曲面に追従させることができる。
(c) 厚みが薄いほど曲面に追従させやすい。
【0060】
シート34の粘着力は、より詳しくは、以下の通りである。すなわち、多孔質セラミック粒子10の保持時の粘着力は1.0N/10mm以上、多孔質セラミック粒子10の剥離時の粘着力は0.1N/10mm以下である。
【0061】
シート34の粘着力の評価方法は、粘着テープの粘着力の評価方法と同じであり、ステンレス板にシート34を貼り付け、シート34を180°又は90°に引っ張り、シート34がステンレス板から剥がれるときの力を粘着力とする。
【0062】
また、シート34は基材(支持体)に接着剤が塗布されて構成されている。この場合、基材の種類としては、以下のように選択することが好ましい。
【0063】
すなわち、平面形状の対象物26上に多孔質セラミック粒子10を転写する場合は、基材としてフィルム、金属箔、紙等を用いることが好ましい。シート34の基材が硬めなので、平面形状の対象物26に対してシート34を皺なく成膜することが可能となる。
【0064】
曲面(凸面、凹面、凹凸面)形状の対象物26上に多孔質セラミック粒子10を転写する場合は、基材として布、ゴムシート、発泡体等を用いることが好ましい。シート34の基材が柔らかく伸縮性があるので、シート34を曲面形状に追従して成膜することが可能となる。
【0065】
また、このシート34は、熱や水、溶剤、光(紫外光)、マイクロ波を作用させることで、粘着力が弱くなり、容易に剥がすことが可能である。このとき、シート34の粘着力は、対象物26と多孔質セラミック粒子10間に用いた接着剤24よりも弱いことが好ましい。
【実施例】
【0066】
実施例1〜6に係る多孔質セラミック粒子、並びに比較例1及び2に係る多孔質セラミック粒子を使用してそれぞれバルク体20を構成した場合の各バルク体20の熱伝導率を確認した。なお、この実施例では、
図1A〜
図1Cに示す多孔質セラミック粒子10を使用した。
【0067】
(実施例1)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が50μm、アスペクト比が10の多孔質セラミック粒子を使用し、上述した第1の方法に準じて実施例1に係るバルク体20を作製した。すなわち、多孔質セラミック粒子、水及び接着剤成分(熱伝導率2W/mK)を含むスラリーを調製した後、直径20mmの型に流し込み、乾燥後、焼成、固化して実施例1に係るバルク体20を作製した。
【0068】
<多孔質セラミック粒子の作製>
実施例1において、多孔質セラミック粒子10を以下のようにして作製した。すなわち、先ず、イットリア部分安定化ジルコニア粉末に、造孔材(ラテックス粒子あるいはメラミン樹脂粒子)、バインダーとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)、可塑剤としてのDOP(フタル酸ジオクチル)、溶剤としてのキシレン及び1−ブタノールを加え、ボールミルにて30時間混合し、グリーンシート成形用スラリーを調製した。このスラリーに、真空脱泡処理を施すことにより、粘度を4000cpsに調整した後、ドクターブレード装置によって焼成後の厚さが最小長となるように成形体(グリーンシート)を作製した。その後、この成形体を1100℃、1時間にて焼成、レーザーで加工することで、多孔質セラミック粒子10を得た。また、多孔質セラミック粒子10の一主面12aを鏡面加工し、表面粗さRaを1.0μmとした。
【0069】
(実施例2)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が100μm、アスペクト比が8の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るバルク体20を作製した。
【0070】
(実施例3)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が400μm、アスペクト比が3の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るバルク体20を作製した。
【0071】
(実施例4)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が30%、最小長が400μm、アスペクト比が3の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例1と同様にして実施例4に係るバルク体20を作製した。
【0072】
(実施例5)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が50μm、アスペクト比が10の多孔質セラミック粒子を使用し、上述した第2の方法に準じて実施例5に係るバルク体20を作製した。すなわち、複数の多孔質セラミック粒子10が1つの面に貼り付けられたシート34を使用した。そして、対象物26に接着剤24(熱伝導率2W/mK)を塗布した後、上記シート34を使って、対象物26の接着剤24上に複数の多孔質セラミック粒子10を転写し、熱をかけることでシート34を剥がした。その上から接着剤24を塗布した後、接着剤24を固化した。その後、シート34による多孔質セラミック粒子10の転写、接着剤24の塗布及び固化を繰り返して、バルク体20となる部分を厚くした後に、対象物26から剥がすことでバルク体20を作製した。ここで、対象物26からバルク体20を剥がしたのは、バルク体20の熱伝導率を測定、評価するためである。
【0073】
(実施例6)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が100μm、アスペクト比が8の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例5と同様にして実施例6に係るバルク体20を作製した。
【0074】
(比較例1)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が70%、最小長が0.2μm、アスペクト比が2の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例1に係るバルク体20を作製した。
【0075】
(比較例2)
多孔質セラミック粒子10として、気孔率が60%、最小長が10μm、アスペクト比が5の多孔質セラミック粒子を使用した点以外は、実施例1と同様にして比較例2に係るバルク体20を作製した。
【0076】
<気孔率の計測>
多孔質セラミック粒子10を無作為に10個選んで樹脂に埋込み、電子顕微鏡にて複合粒子を観察することができる観察箇所まで研磨して、樹脂埋め研磨面とした。そして、この樹脂埋め研磨面に対して電子顕微鏡観察(画像解析)を行った。画像解析より、10個の多孔質セラミック粒子10の気孔率を算出し、10個分の多孔質セラミック粒子10の平均値を気孔率とした。
【0077】
<平均気孔径の計測>
多孔質セラミック粒子10の平均気孔径を、株式会社島津製作所の自動ポロシメータ(商品名「オートポア9200」)を使用して計測した。
【0078】
<バルク体の熱伝導率測定方法及び評価基準>
先ず、水銀ポロシメータでバルク体の密度を測定した。次に、DSC(Differential Scanning Calorimeter)法でバルク体20の比熱を測定した。次に、レーザーフラッシュ法でバルク体20の熱拡散率を測定した。その後、熱拡散率×比熱×密度=熱伝導率の関係式から、バルク体20の熱伝導率を算出し、以下の評価基準に基づいて、実施例1〜6、比較例1及び2を評価した。
A:0.9W/mK以下
B:1.0W/mK以上1.4W/mK以下
C:1.5W/mK以上
【0079】
<評価結果>
実施例1〜6、比較例1及び2の内訳及び評価結果を下記表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から、比較例1及び2は、熱伝導率が1.8W/mK及び1.6W/mKと高かった。これは、比較例1及び2に係るバルク体20は、接着剤24のみの領域が多く存在したことから、熱伝導率が高くなったものと考えられる。
【0082】
一方、実施例1〜6のうち、実施例4以外は、バルク体20の熱伝導率が0.9W/mK以下で、評価がAであった。実施例4についても、評価はBではあるが、熱伝導率が1.0W/mKであり、限りなくAに近い評価であった。実施例1及び5は、共に同じアスペクト比10であるが、第2の方法による実施例5の方が熱伝導率が低かった。これは、実施例2及び6についても同様であった。
【0083】
実施例1〜6は、比較例1及び2と比して、接着剤24に複数の多孔質セラミック粒子10が均一に分散し、熱伝導率が高い接着剤24のみの領域30が狭くなったため、バルク体20の熱伝導率を低く抑えることができたものと考えられる。特に、第2の方法を採用した実施例5及び6においてその効果が顕著であった。
【0084】
なお、本発明に係る多孔質セラミック粒子は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本発明は多孔質セラミック粒子に関する。多孔質セラミック粒子(10)は、気孔率が20〜99%である多孔質セラミック粒子であって、一主面(12a)が鏡面であり、アスペクト比が3以上である。これにより、低熱伝導率化を図ることができると共に、対象物等に直接接着剤等を用いて設置することができ、バルク体の設置を容易にすることができる。