【文献】
MO JALIE,「Ophthalmic Lenses & Dispensing」,第1版,英国,Butterworth−Heinemann発行,1999年,153−154ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装用状態で物体側の屈折面となる外面と、装用状態で眼球側の屈折面となる内面とを有する累進屈折力レンズであって、前記外面及び前記内面のうち少なくとも一方の面は、装用状態でレンズの上方に設けられ、比較的遠方視に適した遠用部と、装用状態でレンズの下方に設けられ、比較的近方視に適した近用部と、前記遠用部と前記近用部の間に設けられ、前記遠用部から前記近用部までの面屈折力を累進的に変化させる累進部とを有する累進面形状に形成されている累進屈折力レンズにおいて、
レンズ面の幾何中心からレンズ装用状態における水平方向でx(mm)の位置にあり且つ前記幾何中心からレンズ装用状態における鉛直方向にy(mm)の位置にある累進屈折力面上の任意の点Q(x,y)を中心とし、レンズ面での瞳孔径の大きさに相当する平均算出幅D(mm)を
4として、レンズ装用状態における水平方向に平均算出幅Dをもつ線分領域の面非点隔差の平均を
【数1】
とし、
前記幾何中心からレンズ装用状態における鉛直方向の近用中心の位置をynとしたときに、|x|≦15を満足すると共に、
y=0、y=yn×0.25、y=yn×0.5、y=yn×0.75又はy=yn、
を満足する領域において、
△x
=1の間隔で前記面非点隔差の平均を求め、Q(x,y)における前記面非点隔差の平均のレンズ装用状態における水平方向の傾きを
【数2】
としたとき、
処方で指定された加入度をADDとすると、
【数3】
の条件を満足し、
前記幾何中心から近用中心と遠用中心とを通る主子午線曲線上の前記面非点隔差が、レンズの上方から下方に向かって大きくなり、
前記主子午線曲線上の前記面非点隔差が前記近用中心で0.5未満であり、
なお且つ、前記主子午線曲線上の前記面非点隔差が0.5となる点が前記近用中心よりも下方に1点のみ存在
し、
前記加入度ADD=2.00ディオプターであり、前記近用中心の位置ynは、前記主子午線曲線と面付加屈折力が2.0の等高線との交点の位置にある累進屈折力レンズ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を説明する。以下の記載において、屈折力の単位は、特に言及しない場合にはディオプター(D)によって表されるものとする。また、以下の説明において、累進屈折力レンズの「上方」、「下方」、「上部」、「下部」等と表記する場合は、当該累進屈折力レンズが眼鏡用に加工される場合において眼鏡を装用したときのレンズの位置関係に基づくものとする。以下の各図面においても、レンズの位置関係(上下左右)は、紙面に対する位置関係(上下左右)と一致するものとする。また、レンズを構成する2つの屈折面のうち、物体側の面を「外面」とし、眼球側の面を「内面」として表すものとする。
【0032】
図1は、対称に設計された累進屈折力レンズLS1の領域区分の概要を示す図である。
図1に示す累進屈折力レンズLS1は、装用時において上方に位置する遠用部Fと、下方の近用部Nと、双方の領域の間において連続的に屈折力が変化する中間部Pとを備えている。レンズ面の形状に関しては、レンズ面のほぼ中央を上方から下方にかけて鉛直に走る子午線に沿った断面と物体側(眼とは反対側)レンズ面との交線MM’がレンズの加入度などの仕様を表すための基準線として用いられ、レンズの設計においても重要な基準線として用いられている。このように対称に設計された累進屈折力レンズでは、遠用部Fの遠用中心OF、フィッティングポイントである遠用アイポイントE、レンズ面の幾何中心OGおよび近用中心ONは、基準となる中心線MM’上にある。
【0033】
図2は、レンズの装用状態において近用中心ONが鼻側に寄ることを考慮して、近用部Nを非対称に配置した累進屈折力レンズ(以下、「非対称型累進屈折力レンズ」と言う)LS2の領域区分の概要図である。
図2に示すような非対称型累進屈折力レンズLS2においても、遠用部Fの遠用中心OF、遠用アイポイントE、レンズ面の幾何中心OGおよび近用中心ONを通る断面と物体側レンズ面との交線からなる中心線MM’が基準線として用いられる。
【0034】
本実施形態においては、これらの基準線を総称して「主子午線曲線」という。遠用部Fの中心および近用部Nの中心は、レンズ度数を測定する際に基準になる位置であり、遠用測定基準点を遠用中心OFと呼び、近用測定基準点を近用中心ONと呼ぶ。さらに、遠用中心OFにおける面平均屈折力をベースカーブとし、遠用中心OFを通る透過光線の平均球面度数を、遠用部における基準の平均球面度数(以下、「遠用度数」と言う)とする。通常、近用中心ONは、近用アイポイントに一致する。ただし、ここで言う遠用中心、近用中心とは、各領域における幾何的な中心ではなく、レンズの測定時及び装用時における機能的な中心を意味する。
【0035】
本実施形態において、面平均屈折力(以下、「面屈折力」と言う)および面非点隔差(以下、「非点隔差」と言う)は、累進屈折力面上の任意の点における最大主曲率をψmaxとし、最小主曲率をψminとし、レンズの屈折率をnとしたとき、次の式(a)および(b)でそれぞれ表される。
【0036】
面屈折力=(ψmax+ψmin)×(n−1)/2 (a)
非点隔差=(ψmax−ψmin)×(n−1) (b)
【0037】
さらに、本実施形態において、面付加平均屈折力(以下、「面付加屈折力」と言う)とは、累進屈折力面上の任意の点において面屈折力からベースカーブを減じた面屈折力である。
【0038】
なお、累進屈折力レンズでは、レンズのほぼ幾何中心を通る主子午線曲線MM’上で、遠用中心OFから近用中心ONに向かって連続的にプラスの面屈折力(または球面度数)が付加され、この付加面屈折力(または付加球面度数)がほぼ最大になる近用中心ONの面屈折力(または球面度数)から遠用中心OFの面屈折力(または球面度数)を引いた値を、累進屈折力レンズの加入度と呼ぶ。
【0039】
人間が眼でものを見るときは、瞳孔径相当の光束が眼球光学系によって網膜に結像されるため、レンズ面の1点を通る光線のみが見え方に影響するわけではない。そのため、面非点隔差や面付加平均屈折力の変動を考慮する際には、累進屈折力面の任意の点と隣接する点との、面非点隔差や面付加平均屈折力の変動量を見るよりも、測定しようとする点を含み、視線を移動させる方向に幅を持たせた線分領域での平均値の変動量を見るほうが効果があると考えられる。
【0040】
そこで本発明では視線の移動に対するレンズ面での任意の点における収差の変動を考慮するために、視線を移動させる方向に任意の点を中心とした平均算出幅Dの線分領域内での面非点隔差平均(下記[数10]で示す)や面付加平均屈折力平均(下記[数11]で示す)をとって、面非点隔差平均及び面付加平均屈折力平均の視線移動方向の傾きがどう変動するかに着目した。
【0043】
ここで、平均算出幅Dを大きくすれば広い範囲で平均を計算するので、結果として面非点隔差平均及び面付加平均屈折力平均が平滑化される。また平均算出幅Dを小さくすれば、面非点隔差平均及び面付加平均屈折力平均は微小変動の影響を受ける傾向にある。
【0044】
本実施形態では、より実際のレンズ使用に適した形態をとるために、レンズ面での瞳孔径相当の大きさと平均算出幅Dを一致させることが好ましい。瞳孔径は年齢や周囲の明るさによって異なるものの、2〜6mmの大きさになるといわれており、平常時は4mm程度であるといわれている。本実施形態では、平均算出幅Dの値は6mm以下であることが好ましく、さらに一般的な使用条件に合わせて4mmとすることが好ましい。
【0045】
一般的な累進屈折力レンズの遠用部領域では面非点隔差、面付加平均屈折力の値の変動量は抑えられている。このため、視線移動に対する収差の変動に伴う違和感は、それほど感じられないようになっていることが多い。一方、累進部領域や近用部領域においては累進屈折力レンズの性質上、面非点隔差、面付加平均屈折力ともに変動量が大きくなる傾向にあり、視線移動に対してゆれ・ゆがみといった不快感が発生してしまう場合がある。
【0046】
例えば、累進部領域においては面付加平均屈折力が累進的に変わる上に、面非点隔差も大きく変動してしまう場合がある。一般的な累進屈折力レンズでは累進部領域においても主子午線曲線上の面非点隔差は非常によく抑えられているが、累進部領域の主子午線曲線から水平方向に少し離れた領域で面非点隔差の変動が大きくなる領域があり、この領域が視線移動に大きく影響を与えていると考えられた。
【0047】
また累進部領域から近用部領域を使って対象物を見るような状況を考えた場合、雑誌を閲覧するような場合が想定される。その場合、レンズの中心厚やベースカーブの曲率によって多少の差異があるものの、雑誌を30〜40cm程度離して見ると想定すると、累進屈折力面上の水平方向の幅は約30mmに相当する。
【0048】
本実施形態では、水平方向の視線移動に対する面非点隔差の変動を抑えるために、近用中心の前記幾何中心からレンズ装用状態における鉛直方向の位置をynとしたときにおいて、
|x|≦15を満足すると共に、
y=0、y=yn×0.25、y=yn×0.5、y=yn×0.75又はy=yn
を満足する線分領域において、次の[数12]を満足する。
【0050】
また、本実施形態では、水平方向の視線移動に対する面付加平均屈折力の変動を抑えるために、近用中心の前記幾何中心からレンズ装用状態における鉛直方向の位置をynとしたときに、
|x|≦15を満足すると共に、
y=0、y=yn×0.25、y=yn×0.5、y=yn×0.75又はy=yn、
を満足する線分領域において、次の[数13]を満足する。
【0052】
また、本実施形態では、鉛直方向の視線移動に対する面非点隔差の変動を抑えるために、近用中心の前記幾何中心からレンズ装用状態における鉛直方向の位置をynとしたときに、
yn≦y≦0を満足すると共に、
x=−15、x=−10、x=−5、x=5、x=10又はx=15、
を満足する線分領域において、次の[数14]を満足する。
【0054】
本実施形態において、装用状態における各方向の距離は、レンズの幾何中心を基準に、装用状態における鉛直方向の場合は、上方に正の符号を、下方に負の符号をとるものとする。また、装用状態における水平方向の場合は、耳側に正の符号を、鼻側に負の符号をとるものとする。
【0055】
図3は、本実施形態にかかる左眼用の累進屈折力レンズを示す図であって、レンズ装用状態における水平な平面と屈折面との交線で表される横断面線を説明する図である。本実施形態において、各累進屈折力レンズの面非点隔差平均の水平方向の傾きCXaの分布および面付加屈折力平均の水平方向の傾きPXaの分布は、この横断面線に沿って示している。
【0056】
図3において、H1は幾何中心OGを通る横断面線であり、H5は近用中心ONを通る横断面線である。また、近用中心ONの幾何中心OGからの鉛直方向の位置をyn(mm)としたとき、H2〜H4は、幾何中心OGからの鉛直方向の位置yが、yn×0.25、yn×0.5、yn×0.75における横断面線をそれぞれ示している。以下、本実施形態では、左眼用の累進屈折力レンズに着目して本発明を説明するが、右眼用の累進屈折力レンズについても同様である。
【0057】
本実施形態では、面非点隔差平均の水平方向の傾きCXaおよび面付加屈折力平均の水平方向の傾きPXaは、次のように求めた。
まず、横断面線H1〜H5に沿って△x=1mmの間隔で面非点隔差および面付加屈折力を測定し、その測定した任意の点(x, y)において、点を中心とした(x−2, y)、(x−1、y)、(x,y)、(x+1,y)、(x+2,y)の5点の面非点隔差および面付加屈折力の値から、点(x,y)における面非点隔差平均(下記[数15])および面付加屈折力平均(下記[数16])を算出した。
【0059】
【数16】
さらに、点(x,y)を中心とした(x−1、y)、(x,y)、(x+1,y)の三点のCx、Pxの回帰直線の傾きCXa(x,y)及びPXa(x,y)をそれぞれ算出した。ここで、CXa(x,y)については、下記[数17]で表され、PXa(x,y)については、下記[数18]で表される。
【0062】
本実施形態では、平均算出幅Dを4mmとしているが、この値に限定するものではなく、瞳孔径相当の大きさであれば同様の効果を得ることができる。また、本実施形態ではCXa、PXaの間隔△xを1mmとしているが、累進屈折力レンズの面非点隔差や面付加屈折力の分布を見る上で、変曲点があまり無い場合は細かくする必要は無く、本実施形態のように離散的にしても問題は無い。
【0063】
図4は、本発明の実施形態にかかる左眼用の累進屈折力レンズを示す図であって、レンズ装用状態における鉛直な平面と屈折面との交線で表される縦断面線を説明する図である。本実施形態において、各累進屈折力レンズの面非点隔差分布は、この縦断面線に沿って示している。
図4において、V1〜V7は、幾何中心OGからの位置xが−15(mm)、−10(mm)、−5(mm)、0(mm)、5(mm)、10(mm)、15(mm)における縦断面線をそれぞれ示している。
【0064】
本実施形態では、面非点隔差平均の鉛直方向の傾きCYaは、次のように求めた。
まず、縦断面線V1〜V5に沿って△y=1mmの間隔で面非点隔差および面付加屈折力を測定し、その測定した任意の点(x,y)において、点を中心とした(x,y−2)、(x、y−1)、(x,y)、(x,y+1)、(x,y+2)の5点の面非点隔差の値から、点(x,y)における面非点隔差平均(下記[数19]で示す)を算出した。
【0066】
さらに、点(x,y)を中心とした、(x、y−1)、(x,y)、(x,y+1)の三点のCyの回帰直線の傾きを面非点隔差平均の水平方向の傾きCYa(x、y)とした。ここで、面非点隔差平均の水平方向の傾きCYa(x、y)は、下記[数20]のように示される。
【0068】
本実施形態では、平均算出幅Dは4mmとしているが、この値に限定するものではなく、瞳孔径相当の大きさであれば同様の効果を得ることができる。また、本実施形態ではCYaの間隔△yを1mmとしているが、累進屈折力レンズの面非点隔差や面付加屈折力の分布を見る上で、変曲点があまり無い場合は細かくする必要は無く、本実施形態のように離散的にしても問題は無い。
【0069】
図5は、本実施形態に対する比較例としての横断面線H1〜H5に沿った面非点隔差平均の傾きおよび面付加屈折力平均の傾きの分布図である。
図5において、横軸は装用状態における幾何中心からの水平方向の位置x(mm)を示している。水平方向の位置xは、耳側に正の符号を有し、鼻側に負の符号を有する。また、面非点隔差平均の傾きは実線で、面付加屈折力平均の傾きは破線で示されており、面非点隔差平均の傾きおよび面付加屈折力平均の傾きは、D(ディオプター)/mmで示されている。後述するように、従来技術にしたがう比較例に係る累進屈折力レンズでは、遠用部における面屈折力をベースカーブとほぼ等しく設計している。
【0070】
また、
図6は、本実施形態に対する比較例としての縦断面線V1〜V7に沿った面非点隔差平均の傾きの分布図である。
図6において、横軸は装用状態における幾何中心OGからの鉛直方向の位置y(mm)を示している。鉛直方向の位置yは、上側に正の符号を有し、下側に負の符号を有する。また、面非点隔差平均の傾きは、D(ディオプター)/mmで示されている。
【0071】
図5及び
図6に示す累進屈折力レンズでは、外径φ=60mmであり、ベースカーブBC=4.00ディオプターであり、加入度ADD=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.67であり、近用中心ONの位置はレンズの幾何中心OGの13.5mm下方に位置している。
【0072】
図5に示す累進屈折力レンズでは、面非点隔差平均の傾きおよび面付加屈折力平均の傾きの変動が大きくなっており、また横断面線ごとにその傾向が異なっていることがわかる。つまり、このレンズを使用する上では、累進部において水平方向に視線移動すると不快に感じてしまう領域が存在する。
【0073】
また、
図6に示す累進屈折力レンズでは、面非点隔差平均の傾きの変動が大きくなっており、また縦断面線ごとにその傾向が異なっていることがわかる。つまり、このレンズを使用する上では、鉛直方向に視線移動すると不快に感じてしまう存在する。
【0074】
図7は、比較例にかかる累進屈折力レンズの累進屈折面の面非点隔差の分布図である。
図7に示す累進屈折力レンズでは、面非点隔差の最大となる領域が累進部の側方にあり、中心領域で等高線間隔が狭いために、水平方向および鉛直方向の面非点隔差の傾きが大きいことがわかる。
【0075】
図8は、比較例にかかる累進屈折力レンズの累進屈折面の面付加屈折力の分布図である。
図8に示す累進屈折力レンズでは、面付加屈折力1.0の領域の水平方向の幅が狭いために、水平方向の面付加屈折力の傾きが大きいことがわかる。
【0076】
図9は、本実施形態に係る累進屈折力レンズの横断面線H1〜H5に沿った面非点隔差平均の傾きおよび面付加屈折力平均の傾きの分布図である。
図9において、横軸は装用状態における幾何中心からの水平方向の位置x(mm)を示している。水平方向の位置xは、耳側に正の符号を有し、鼻側に負の符号を有する。また、面非点隔差平均の傾きは実線で、面付加屈折力平均の傾きは破線で示されており、面非点隔差平均の傾きおよび面付加屈折力平均の傾きは、D(ディオプター)/mmで示されている。
【0077】
図10は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズの縦断面線V1〜V7に沿った面非点隔差平均の傾きの分布図である。
図10において、横軸は装用状態における幾何中心からの鉛直方向の位置y(mm)を示している。鉛直方向の位置yは、上側に正の符号を有し、下側に負の符号を有する。また、面非点隔差平均の傾きは、D(ディオプター)/mmで示されている。
【0078】
本実施形態にかかる累進屈折力レンズでは、比較例と同様に、外径φ=60mmであり、ベースカーブBC=4.00ディオプターであり、加入度ADD=2.00ディオプターであり、レンズの屈折率ne=1.67であり、近用中心ONはレンズの幾何中心OGの13.5mm下方に位置している。
【0079】
図9を参照すると、本実施例にかかる累進屈折力レンズでは、0≦y≦ynを満足する領域において、次の[数21]及び[数22]を満足していることがわかる。
【0082】
図10を参照すると、本実施例にかかる累進屈折力レンズでは、|x|≦15を満足する領域において、次の[数23]を満足していることがわかる。
【0084】
図11は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズの累進屈折面の面非点隔差の分布図である。
図11を参照すると、本実施形態にかかる累進屈折力レンズでは、累進部の側方の面非点格差が抑えられており、面非点隔差の水平方向および鉛直方向の増加が緩慢になっていることがわかる。
【0085】
図12は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズの累進屈折面の面付加屈折力の分布図である。
図12を参照すると、面付加屈折力が1.0の等高線の水平方向の幅が広がっており、水平方向の変化量が抑えられていることがわかる。
【0086】
上記[数21]について、下記[表1]を参照して具体例を説明する。[表1]は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズにおける[数21]の値を示している。なお、[表1]では、縦方向に横断面線H1〜H5を示し、横方向に水平方向の位置x(mm)を示している。
【0088】
[表1]に示すように、本実施形態にかかる累進屈折力レンズでは、0≦y≦ynを満足する領域において、上記[数21]を満足していることがわかる。
【0089】
また、上記[数22]について、下記[表2]を参照して具体例を説明する。[表2]は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズにおける[数22]の値を示している。なお、[表2]では、縦方向に横断面線H1〜H5を示し、横方向に水平方向の位置x(mm)を示している。
【0091】
[表2]に示すように、本実施形態にかかる累進屈折力レンズでは、0≦y≦ynを満足する領域において、上記[数22]を満足していることがわかる。
【0092】
また、上記[数23]について、下記[表3]を参照して具体例を説明する。[表3]は、本実施形態にかかる累進屈折力レンズにおける[数23]の値を示している。なお、[表3]では、縦方向に鉛直方向の位置y(mm)を示し、横方向に縦断面線V1〜V7を示している。
【0094】
[表3]に示すように、本実施形態にかかる累進屈折力レンズでは、|x|≦15を満足する領域において、上記[数23]を満足していることがわかる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、面の面非点隔差や面付加平均屈折力の変動量を考慮して光学性能の最適化を行うことにより、当該面非点隔差や面付加屈折力の変動量を抑制することができ、視線を水平方向、あるいは鉛直方向に動かしても違和感のない見え方が可能な累進屈折力レンズを得ることができる。
【0096】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。