特許第6126779号(P6126779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和 美千子の特許一覧

特許6126779放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法
<>
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000002
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000003
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000004
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000005
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000006
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000007
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000008
  • 特許6126779-放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126779
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20170424BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G21F9/36 541A
   G21F9/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-265837(P2011-265837)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-117479(P2013-117479A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】511276747
【氏名又は名称】大和 美千子
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】大和 美千子
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−021100(JP,A)
【文献】 特開平10−002997(JP,A)
【文献】 特開昭58−071498(JP,A)
【文献】 特開平07−252842(JP,A)
【文献】 特開2003−200144(JP,A)
【文献】 特開昭64−043387(JP,A)
【文献】 特開2003−248086(JP,A)
【文献】 特開昭63−128298(JP,A)
【文献】 特開平08−047679(JP,A)
【文献】 特開昭62−028700(JP,A)
【文献】 特開平11−221540(JP,A)
【文献】 特開平02−208999(JP,A)
【文献】 特開昭63−283933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/34
G21F 9/36
G21F 1/00−5/14
B09B 1/00−5/00
E02D 17/18
E02B 3/04−3/14
E21D 13/00
E02D 29/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、
閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、
前記不透水層の上に、複数のワイヤを敷き並べ、
該ワイヤの両端部は前記地下連続壁体の上部に連結し、
該ワイヤの上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、
複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成することを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項2】
平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間を掘削し、
前記不透水層は、掘削した領域の底部に設け、
前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックの全部又は一部を前記地下連続壁体の頂部より低い位置に配列することを特徴とする請求項1に記載の放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項3】
所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、
平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間を掘削し、
掘削した領域の底部に不透水層を設け、
前記不透水層の上に、複数のワイヤを敷き並べるとともに、前記地下連続壁体に沿って上方に曲げ上げて該地下連続壁体の上部に連結し、
該ワイヤの上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、
前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックの全部又は一部を前記地下連続壁体の頂部より低い位置に配列するものとし、
該汚染土成型ブロック又は該汚染土収容ブロックの重量の一部を、前記ワイヤを介して前記地下連続壁体に負荷し、
複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成することを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【請求項4】
所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、
閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、
その上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、
複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成するものとし、
前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックは、その外周面を放射線の遮蔽性を有する金属層を含む放射線遮蔽シートで被覆するものとし、
前記放射線遮蔽シートは、放射線の遮蔽性を有する金属を板状又はシート状にした遮蔽層と、柔軟なアスファルト系材料を前記遮蔽層の両面に積層した緩衝層と、を有するものを用い、
該放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックに押し付け、前記アスファルト系材料が有する粘着力によって前記放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックに貼り付けるものであることを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
-
【請求項5】
所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、
閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、
その上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、
複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成するものとし、
前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックは、積層するそれぞれの層内で水平方向に隣り合うブロック間に間隙を設けて配列し、
前記ブロック間の間隙に、周面が網状となった管体又は周面に多数の小孔が設けられた管体を鉛直方向に挿入し、上端部を該提体又は盛土の上面に露出させることを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥又は放射性物質を含むゴミ焼却灰の処分方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により放射性物質が大量に環境中に放出され、周辺地域における土壌を汚染している。また、放出された放射性物質は津波による被害を受けた地域にも降下して破壊された家屋、構造物等を汚染している。
一方、広い範囲に拡散された放射性物質は、雨水や下水に流されて下水処理場に集まり、下水処理後の汚泥から高濃度の放射性物質が検出される事態となっている。また、ゴミの焼却場でも多くのゴミを焼却した後に残る焼却灰は放射性物質が濃縮され、高い濃度の放射線を放出するものとなっている。
このような放射性物質を含む土壌や廃棄物の処理については、長期間にわたって放射線を放出することを考慮し、周辺環境に及ぼす影響が無いように処分される必要がある。
【0003】
このような放射性廃棄物の最終処分として、地中に深く埋め込むことが望ましいと考えられているが、埋め込む土地の確保が難しく、従来は特許文献1に記載されているように、仮処分として放射線を遮蔽する容器に収容するとともに、建屋を構築して上記容器をこの建屋内で管理することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59―43398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原子力発電所の事故によって生じた汚染土壌や汚泥・焼却灰等の放射性廃棄物の量は膨大となり、処分場とする土地の確保や処分のために必要となる膨大な費用の捻出がますます困難となっている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、多量に存在する放射性物質で汚染された土壌、放射性廃棄物を、放射線を遮蔽した状態にして処分するとともに、これを利用して社会資産を構築することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、 閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、 前記不透水層の上に、複数のワイヤを敷き並べ、 該ワイヤの両端部は前記地下連続壁体の上部に連結し、 該ワイヤの上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、 複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成することを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を提供する。
【0007】
上記方法では、汚染土壌や、汚泥・焼却灰等の放射性廃棄物がブロック状に成型された状態で、地下連続壁体で囲まれた範囲に埋め込まれる。これにより、汚染土壌や放射性廃棄物からの放射線は遮蔽され、周辺における地表面上での放射線量を少なくした状態で汚染土壌等を処分することができる。そして、上記ブロック状となった汚染土壌等を埋め込むことによって提体を形成することができ、防潮堤、河川の堤防、津波に対する緊急避難用高台、道路用の盛土等として利用することができる。
また、汚染土成型ブロック等を積み上げた範囲の地盤を地下連続壁体によって拘束し、土が水平方向へ大きく流動するのを抑制することができる。したがって、堤体又は盛土の沈下が抑制される。さらに、堤体や盛土のすべり破壊を拘束することができる。これらによって、堤体又は盛土を安定したものとすることができる。
一方、放射性物質が汚染土成型ブロック等から漏出するようなことがあっても、地下連続壁体によって広範囲に拡がるのを抑制することができるとともに、2つの地下連続壁体の間に不透水層が形成されていることにより、放射性物質が地下水へ流入するのを防止することができる。
【0008】
さらに、この処分方法で形成された堤体又は盛土では、2つの地下連続壁体間を連結するワイヤ上に提体又は盛土があり、2つの地下連続壁体と提体又は盛土との間の相対的な変位が抑制される。また、ワイヤによって提体又は盛土の両側にある提体の相互間の水平方向への変位が過大となるのが抑制される。これにより、地震時において堤体又は盛土は大きな変形が拘束された状態で揺動し、堤体又は盛土の破壊が抑制される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の処分方法において、 平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間を掘削し、 前記不透水層は、掘削した領域の底部に設け、 前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックの全部又は一部を前記地下連続壁体の頂部より低い位置に配列するものとする。
【0010】
上記処分方法では、地下連続壁体の間を掘削して汚染土壌等を埋め込むことにより、深く埋め込んで放射線をより有効に遮蔽することができる。また、掘削することによって大量の汚染土等を埋め込んで処分することができる。そして、掘削した土壌は埋め込んだ汚染土壌等のブロックを被覆するとともに、提体又は盛土となる。
【0011】
請求項3に係る発明は、 所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、 平面視が閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間を掘削し、 掘削した領域の底部に不透水層を設け、 前記不透水層の上に、複数のワイヤを敷き並べるとともに、前記地下連続壁体に沿って上方に曲げ上げて該地下連続壁体の上部に連結し、 該ワイヤの上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、 前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックの全部又は一部を前記地下連続壁体の頂部より低い位置に配列するものとし、 該汚染土成型ブロック又は該汚染土収容ブロックの重量の一部を、前記ワイヤを介して前記地下連続壁体に負荷し、 複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成することを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を提供するものである。
【0012】
この処分方法では、配列された複数のブロックの重量の一部が、地下連続壁体の頂部から吊るように支持されており、地震時において地盤が大きく揺れたときに、ブロック群に伝達される水平力が低減される。したがって、ブロック群と地盤及び地下連続壁体との間に相対的な変位が許容され、ブロック群の揺れが低減される。これにより提体は安定したものとなり、地震時における提体の破壊を抑えることが可能となる。
【0013】
請求項4に係る発明は、 所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、 閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、 その上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、 複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成するものとし、 前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックは、その外周面を放射線の遮蔽性を有する金属層を含む放射線遮蔽シートで被覆するものとし、 前記放射線遮蔽シートは、放射線の遮蔽性を有する金属を板状又はシート状にした遮蔽層と、柔軟なアスファルト系材料を前記遮蔽層の両面に積層した緩衝層と、を有するものを用い、 該放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックに押し付け、前記アスファルト系材料が有する粘着力によって前記放射線遮蔽シートを前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックに貼り付けるものであることを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を提供するものである。

【0014】
この処分方法では、汚染土成型ブロックから放出される放射線を放射線遮蔽シートで遮蔽して、周辺部への放射線の影響を低減することができる。
また、ブロック状となった汚染土成型ブロックを放射線遮蔽シートで容易に被覆することができ、簡単な作業で放出される放射線量を低減することができる。特に放射線遮蔽シートが有する緩衝層のアスファルト系材料が粘着力を有し、この粘着力を利用して汚染土成型ブロックに貼り付けることによって作業性が向上する。さらに、放射線遮蔽シートの遮蔽層は緩衝層によって被覆され、遮蔽層に鉛等の重金属が用いられていても溶出を防止することができる。また、鉛等の遮蔽層は柔軟な緩衝層によって保護され、土中に埋め込まれても傷つけられたり破れたりするのが抑制される。
【0015】
請求項5に係る発明は、 所定の範囲の土地を囲んで平面視が閉じた形状となるように地下連続壁体を形成し、又は所定の範囲の土地の両側で対向するように地下連続壁体を形成し、 閉じた形状となった前記地下連続壁体の内側又は対向する前記地下連続壁体の間に不透水層を形成し、 その上に、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に固化材を添加してブロック状に成形した汚染土成型ブロック、又は前記土壌、汚泥もしくは焼却灰をコンクリート函体に収容して密閉した汚染土収容ブロックを複数配列し、 複数層を積み上げた後に土砂を被せて転圧し、提体又は盛土を形成するものとし、 前記汚染土成型ブロック又は前記汚染土収容ブロックは、積層するそれぞれの層内で水平方向に隣り合うブロック間に間隙を設けて配列し、 前記ブロック間の間隙に、周面が網状となった管体又は周面に多数の小孔が設けられた管体を鉛直方向に挿入し、上端部を該提体又は盛土の上面に露出させることを特徴とする放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法を提供するものである。
【0016】
上記管体をブロック間の間隙に挿入しておくことにより、この管体内に放射線量の測定器を上端部から挿入し、積み上げたブロック間における放射線量を測定して監視することができる。また、放射線量が高いときには、この管体からコンクリート又はモルタルをブロック間に注入し、放射線が提体又は盛土の表面に及ぶのを遮蔽することもできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る放射性物質で汚染された土壌、汚泥又は焼却灰の処分方法では、大量の汚染土壌、汚泥、焼却灰等を放射線が遮蔽された状態で堤体又は盛土内に埋め込んで処分することができる。そして、形成された堤体又は盛土を社会の資産として有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の処分方法によって形成される堤体の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の処分方法における汚染土成型ブロック又は汚染土収容ブロックを形成する工程、及び放射線量を測定して提体又は盛土に埋め込む工程の概略を示すフロー図である。
図3】汚染土成型ブロックを放射線遮蔽シートで被覆した状態を示す概略斜視図である。
図4】汚染土成型ブロックの配筋及び吊金具の配置を示す概略斜視図である。
図5】汚染土成型ブロックを被覆する放射線遮蔽シートの概略断面図である。
図6】汚染土収容ブロックの概略断面図である。
図7】本発明の処分方法で形成される堤体の他の例を示す概略断面図である。
図8】本発明の処分方法で形成される堤体の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である処分方法によって形成される堤体の一例を示す概略断面図である。
この提体31は、防潮堤とするものであり、所定の間隔で構築された2つの地下連続壁体32a,32bの間に形成されるもので、それぞれの地下連続壁体32a,32bは海岸線に沿った方向に連続するように構築される。地下連続壁体32は、鋼矢板又は鋼管矢板を打ち込むことによって形成されるものであってもよいし、泥水等で壁面を安定させながら穴を掘削し、鉄筋又はH型鋼を配置して、これらを埋め込むようにコンクリートを打設して形成されるものであってもよい。
本実施の形態では、提体31の海側の地下連続壁体32a及び陸側の地下連続壁体32bのそれぞれが、鋼管矢板を2列に打ち込んで形成されており、提体を形成する領域を2重に囲むものとしている。
【0020】
上記2つの地下連続壁体32a,32bの間の地盤33は、所定の深さまでの範囲が地盤改良されており、これによって不透水層34が形成されている。地盤改良は土にセメント系の固化材を混合して固化したものであり、例えば、鉛直方向の回転中心を有する回転翼を鉛直下方に貫入し、土壌を攪拌しながら固化材を注入する深層混合工法によって構築することができる。また、地表面から掘削しながら固化材を混合する浅層混合工法で形成されたものであっても良い。
【0021】
不透水層34の上には、放射線遮蔽シート35が敷設され、さらにその上にゴム系の材料で形成された防水シート36が敷設されている。この上に複数のワイヤ37を所定の間隔で敷き並べ、ワイヤ37の両端部は地下連続壁体32の頂部に連結されている。海側及び陸側の地下連続壁体32のそれぞれの頂部には、2列が形成された鋼管矢板32c,32dを連結するようにコンクリートの擁壁38が設けられており、ワイヤ37の端部はこの擁壁38内で一方の鋼管矢板32cの頂部に連結されている。そして、他方の鋼管矢板32dの頂部に設けられたサドル39の上に巻き回して、2つの地下連続壁体32の内側の地盤改良を行った層の表面まで垂れ下げられている。このように不透水層34の上側に敷きならべられたワイヤ37は、地下連続壁体32の面とほぼ平行となる方向に配置された連結ワイヤ40によって互いに連結され、ワイヤ37と連結ワイヤ40とでメッシュ状となっている。
【0022】
なお、地盤改良によって形成した不透水層34の上に敷設されている上記放射線遮蔽シート35は、シート状に引き延ばされた鉛の両面にゴム化アスファルトからなる緩衝層を形成し、さらに表面被覆層を設けたものを用いることができる。ゴム化アスファルトからなる緩衝層は、不織布を埋め込んだものが望ましい。このような緩衝層は、不織布にゴム化アスファルトを含浸させ、さらに両面をゴム化アスファルト層で被覆したものをシート状の鉛の両面に接着して形成することができる。そして、遮蔽層の両面に、合成樹脂からなるフィルムが表面被覆層として張り合わされている。
また、防水シート36はゴム系の材料で形成されたものを用いることができ、ゴミ処分場等において汚染水が地下に浸透するのを防ぐために用いられるシート等を採用することができる。
【0023】
上記のようにメッシュ状となったワイヤ37及び連結ワイヤ40が敷設された上に放射線遮蔽シート2で被覆された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24が配列され、複数層に積み上げられる。
上記汚染土成型ブロック1は、放射性物質で汚染された土壌、放射性物質を含む下水処理後の汚泥もしくは放射性物質を含むゴミ焼却灰に、セメント系の固化材を添加してブロック状に成形したものである。そして、この汚染土成型ブロックの表面は放線遮蔽シート2で被覆され、周辺に放出される放射線が遮蔽されている。また、上記汚染土収容ブロック24は前記土壌、汚泥又は焼却灰を鉄筋コンクリートの函体に収容し、鉄筋コンクリートで蓋をして密閉したものである。この汚染土収容ブロック24についても表面を放射線遮蔽シート2で被覆することもできる。
上記汚染土成型ブロック1、汚染土収容ブロック24及び放射線遮蔽シート2の詳細については後述する。
【0024】
上記汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の形状は直方体となっており、水平方向の一方の辺の長さが他方の辺より大きくなっている。これらのブロックが積層して配列されるときの最下層のブロックは、長辺を提体の幅方向つまり二つの地下連続壁体32a,32bを結ぶ方向にして配列される。そして、2層目は長辺の方向を地下連続壁体32a,32bの壁面に沿った方向つまり先に配列された層における長辺の方向とほぼ直角となる方向として配列されている。したがって、複数の層が積み上げられるときに、一辺の長さが大きくなっている汚染土成型ブロック1等が井桁状に組み上げられ、安定した状態で積層される。また、それぞれの汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、配列されるときに、隣り合うブロックと間隔を開けて配列するのが望ましい。間隔は、例えば3cm〜5cm程度とすることができる。
なお、複数層に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を積み上げるときに、一層毎に放射線遮蔽シートで層全体を被覆するのが望ましい。
【0025】
複数層に積み上げられた汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、上層ほど数を少なくし、提体31の形状と対応するように、2つの地下連続壁体32a,32b間の中央部付近では高く積み上げ、地下連続壁体32a,32bに近づくにしたがって低く積層される。
配列された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の間隙には、積層されたブロックの最下層から最上層に至り、先端が提体の表面に達する管部材が配置されており、この管部材内が点検孔41となっている。この管部材は、直径が100mm程度で周面がメッシュ状となったもの又は多数の小孔が設けられたものが用いられる。点検孔41は、提体1の完成後の長期間にわたって、放射線の濃度の観測を可能とするものである。また、ブロックを被覆している放射線遮蔽シート2の破損等によって放射線が漏洩した時には、この点検孔41を介してセメントグラウトを注入することもできる。
なお、点検孔41は複数を設けるのが望ましく、例えば50m2〜100m2に一ヶ所を設けるのがよい。
【0026】
積層された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、これらの全体がゴム系の材料からなる防水シートで覆われ、この上に放線性物質で汚染されていない土42が盛り上げられ、転圧して提体31とされている。提体31の法面の全部又は一部には、法面を保護するためのコンクリート層43が形成されていてもよい。また、上記保護コンクリート層が設けられていない法面には、植栽を施して保護するのが望ましい。一方、提体31の頂部は、舗装を施して道路として利用することもできる。
【0027】
上記のような提体31に、汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を埋め込んで汚染土壌等を処分する方法は、次のように行うことができる。
まず、提体31を形成する位置に、地下連続壁体32を形成し、所定範囲を囲むように形成された地下連続壁体32の内側又は対向するように形成された地下連続壁体32の間には地盤改良を施して不透水層34を形成する。また、地下連続壁体32の上部には擁壁38を構築するとともに、不透水層34の上に放射線遮蔽シート35及び防水シート36を敷設する。このようにして地下連続壁体32及び不透水層34等の形成が完了するまでに、汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を形成しておく。そして、汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を地下連続壁体32で囲まれた内側又は地下連続壁体32間に配列した後、その上に汚染されていない土砂を盛り上げて提体31を完成する。
【0028】
図2は、上記汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の形成及びこれらのブロックを提体31に埋め込む工程の概要を示すフロー図である。
上記汚染土成型ブロック1の形成は次のように行うことができる。
仮置場や中間処理施設において仮に貯蔵されている汚染土壌や汚泥・焼却灰等の放射性廃棄物(ST1)を加工場に搬入して粒度を調整する(ST2)。原子力発電所から放出された放射性物質で汚染された地表面付近の土壌や下水の処理汚泥、焼却灰等は、粒径がほぼ80mm以下となっており、これらはそのまま固化処理を行うことができる。この他、放射性廃棄物は、地震や津波で破壊された建物や構造物の残骸を含むものであり、木材等の可燃物、鉄骨等の再利用が可能なものを除いて、コンクリート片等をクラッシャー等で破砕し、粒径を80mm以下とする。
【0029】
上記のように粒度が調整された汚染土壌等をミキサーに投入し、セメント又はセメント系の固化材を加えて攪拌する(ST3)。そして、セメント又はセメント系固化材の水和反応に必要な水分を霧状にして供給し、土粒子をセメント又はセメント系固化材で被覆する。固化材が混合された汚染土壌等は金型に投入する。金型は、コンクリートを打設するときに組み立てられる型枠と同様に汚染土を成型するものであるが、後に説明するように、加圧するために型枠より強固に製作されたものである。
【0030】
この金型3内には、図4に示すように、予め鉄筋4を組み立てておき、成型されたブロックを吊り上げるための吊金具5も配置する(ST4)。このように鉄筋4及び吊金具5が組み立てられている金型3内にセメント又はセメント系固化材を混合した汚染土を投入し、振動を加えて締め固める。振動は金型3に固定した加振機の駆動によって発生させ、金型3を介して汚染土を振動させる。また、これとともに金型3内の汚染土に加圧部材を上方から押し付けて汚染土を加圧し、締め固めて容積を低減する(ST5)。加圧力は、例えば50N/cm2から100N/cm2程度とすることができる。このように締め固めた後、養生してセメント又はセメント系の固化材を硬化させ、汚染土成型ブロック1を形成する。
なお、上記汚染土成型ブロック1は、汚染土が硬化した時の強度が、例えば500N/cm2から1000N/cm2程度となるようにセメント又はセメント系の固化材を添加する。また、大きさは例えば1m×1m×6mとすることができる。
【0031】
硬化した汚染土成型ブロック1は、図3に示すように、放射線遮蔽シート2で被覆して放出される放射線を低減する(ST6)。放射線遮蔽シート2は、例えば図5に示すような断面構成を有するものを用いることができる。
この放射線遮蔽シート2は、鉛をシート状に形成した遮蔽層11と、この遮蔽層11の両面に積層される緩衝層12と、緩衝層12の一方を被覆する表面被覆層13と、緩衝層12の他方の表面に積層される剥離紙14とからなるものである。この放射線遮蔽シート2は、前述の放射線遮蔽シート35と次の点で異なるものである。前述の放射線遮蔽シート35では、シート状に加工された鉛の両面に接合されたゴム化アスファルト層の双方が表面被覆層で被覆されているのに対し、ここで用いられる放射線遮蔽シート2は、片方のゴム化アスファルト層つまり緩衝層には、表面被覆層に代えて剥離紙14が接着され、容易に剥離することができるものとなっている。
【0032】
上記遮蔽層11には、放射線の遮蔽性能が高く、安価であるとともに薄く形成することが容易である鉛を用いている。この鉛シートの厚さは、被覆する土壌等の汚染濃度に応じて適宜決定されるが、0.1mm以上で5mm以下であることが望ましい。
この他、遮蔽層としては、比重の大きい金属としてタングステン等を採用することもできる。また、要求される放射線の遮蔽性能によっては、アルミニウム 鋼等の金属を用いることもできる。
【0033】
上記緩衝層12は、アスファルトに合成ゴムを混合したゴム化アスファルトを合成繊維からなる不織布に含浸させ、さらに両面にゴム化アスファルトを塗布して不織布をゴム化アスファルト内に埋め込んだものであり、厚さが0.5mm〜5mm程度となっている。この緩衝層12は表面に沿った方向及び厚さ方向に柔軟に変形するものであり、石片等が押し付けられたり、擦られたりしても、遮蔽層11が破損しないように保護するものとなっている。また、不織布によって引張力に対しても抵抗し得るように補強されている。
なお、上記緩衝層12は、適宜に厚さを変更して用いることができるとともに、不織布等を含まずにゴム化アスファルト層のみで使用することもできる。また、不織布に代えて、織布、金属メッシュ等をゴム化アスファルトに埋め込むように形成したものを用いることもできる。
【0034】
上記表面被覆層13は、放射線遮蔽シート2の表面を形成するものであり、約0.1μm〜1mmの厚さのフィルム状となった合成樹脂を、上記緩衝層12に積層したものである。合成樹脂としては、例えばポリエステル、ポリエチレン又はポリプロピレン等を用いることができる。
【0035】
上記剥離紙14は、クラフト紙等の破れにくい紙の片面にシリコーン樹脂又はシリコーンオイルのコーティングを施したもので、ゴム化アスファルトとの接着力を抑制することができるものが用いられている。したがって、ゴム化アスファルトからなる緩衝層12に積層して接着することができるものであるが、容易に引き剥がすことができるものとなっている。
このような放射線遮蔽シート2は、ロール状に巻き回して又は積層して貯蔵及び搬送することができ、使用する直前に剥離紙14をはがして、ゴム化アスファルトが備える接着力を利用することができる。
【0036】
上記汚染土成型ブロック1は、上記放射線遮蔽シート2を用いて次のように被覆することができる。
上記放射線遮蔽シート2は、汚染土成型ブロック1が形成された現場において対応する大きさに切断し、剥離紙14を剥がして汚染土成型ブロック1の表面に押し付ける。ゴム化アスファルトからなる緩衝層12は粘着力を備えており、放射線遮蔽シート2が汚染土成型ブロック1に接着される。貼り付ける放射線遮蔽シート2の端縁付近は隣り合うように貼り付けられる放射線遮蔽シート2と互いに重ねあわせる。このように放射線遮蔽シート2を汚染土成型ブロック1の表面の全てに隙間なく貼り付けることにより、汚染土成型ブロック1に含まれる放射性物質からの放射線を遮蔽することができる。
【0037】
一方、上記汚染土収容ブロック24は、高濃度の放射性物質で汚染されている土壌、汚泥又は焼却灰をコンクリートの函体に収容して処分するものである(ST11)。これは、図6(a)に示すように予め鉄筋コンクリートの函体21を形成しておき、この函体21の中に汚染土22等を収容する。そして、図6(b)に示すように汚染土22等を加圧して締め固めた後、図6(c)に示すように、その上に鉄筋コンクリートの蓋23を函体21と一体となるように形成して密閉するものである。この汚染土収容ブロック24の大きさは上記汚染土成型ブロック1とほぼ同じとするのが望ましい。
【0038】
上記汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、放出される放射線量の測定を行い、測定結果に対応して次のように埋め込む提体を選択して処分するのが望ましい。
図2に示すように、放射線を計測して(ST7)、その値が予め規定されている値以下の場合には、放出される放射線量が低いものとして、B集積所に一旦貯蔵する(ST10)。一方、測定された放射線量が規定値を超える場合には、さらに放射線遮蔽シート2で汚染土成型ブロック1を被覆する。また、汚染土収容ブロック24は、コンクリートの函体の外周面を放射線遮蔽シート2で被覆する。そして、再度放射線量を測定し(ST8)、規定されている値以下となったときにはB集積所に貯蔵する(ST10)。測定値が規定された値を超えるときには、放出される放射線量が高いものとして、A集積所に貯蔵する(ST9)。
なお、汚染濃度の高い土壌等を収容した上記汚染土収容ブロック24は、全てA集積所に搬入し、放射線量が高いものとして扱うものであってもよい。
【0039】
A集積所に搬入された放射線量が高い汚染土成型ブロック等は、居住者が近くにいない空港周辺部の防潮堤や、河川部の提体に埋め込む。一方、B集積所に搬入された放射線量が低い汚染土成型ブロック等は、近くに居住者がいる防潮堤、津波減衰堤、緊急避難用高台、道路用の盛土等に使用することができる(ST12)。
【0040】
次に、本発明の処分方法によって形成される提体の他の例を、図7に基づいて説明する。
この提体51は、図1に示す提体31と同様に、2列の地下連続壁体52a,52bが形成され、これらの間に構築されたものである。この提体51では、2つの地下連続壁体52a,52b間を掘削し、掘削した後の底部を地盤改良して不透水層53を形成したものとなっている。不透水層53の形成は、図1に示す提体31と同様に行うことができる。不透水層53の上には、放射線遮蔽シート54及びゴム系の防水シート55が敷設され、その上にワイヤ56a及び連結ワイヤ56bが敷き並べられてメッシュ状となっている。この地下連続壁体の壁面とほぼ直角に配置されたワイヤ56aは、地下連続壁体52と隣接する位置から連続して該地下連続壁体52の壁面に沿って上方へ引き上げられ、端部は地下連続壁体52上に支持される擁壁57に連結されている。ワイヤ56aの擁壁57への連結は、図1に示す提体と同様の構造とすることができる。連結ワイヤ56bも、同様に地下連続壁体52の壁面に沿った方向に配置され、ワイヤ56aと連結されたものである。
【0041】
ワイヤ56a及び連結ワイヤ56bが敷設された上には、掘削土58が敷き均され、その上に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24が配列されている。そして、一層毎に配列した複数のブロックを覆うように放射線遮蔽シート(図示しない)が敷設され、その上にさらに汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24が配列されている。これらのブロックは、隣り合うブロック間に隙間を設けて配列されるともに、長辺の方向が先に配列した層における長辺の方向とほぼ直角となるように、各層は交互にほぼ90°方向を変更して順次に積層されている。
また、配列された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24の間隙には、積層されたブロックの最下層から最上層に至り、先端が提体の表面に達する管部材が点検孔59として配置されている。
【0042】
上記のように配列される汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロックは、地下連続壁体52の壁面との間に所定の間隔を設けて配列され、この間隔内には掘削土58が埋め戻され、締め固められる。そして、地下連続壁体52の壁面に沿って鉛直方向に配置されたワイヤ56aは、この埋め戻した掘削土58の中に埋め込まれる。
【0043】
汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24は、地下連続壁体52の上に設けられた擁壁57の頂部より低い位置まで積層され、その上には掘削土58を埋め戻して締め固められ、上面が擁壁57の頂部とほぼ同じ高さとなっている。この上には鉄筋を配置して天端コンクリート60が打設され、2つの地下連続壁体52間に埋め込んだ汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24が封じ込められている。
このような提体51では、放射性物質で汚染された土壌、汚泥、焼却灰等を含む汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を、地下連続壁体52と、底部の地盤改良によって形成された不透水層53と、天端コンクリート60とで囲まれた内側に収容して放射線を遮蔽することができる。また、この提体51では、積層されたブロック群の重量の一部がワイヤ56aによって地下連続壁体52の頂部で支持されており、地震等の大きな水平力が作用したときに、積層されたブロック群が両側に形成されている地下連続壁体52間で揺動することが許容される。したがって、提体に作用する水平力が緩和され、地震時においても安定した強固な提体51となる。そして、このような提体は、河川部の堤防、防潮堤等として長く利用することが可能となる。
【0044】
放射線遮蔽シートで被覆された汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を埋め込む提体は、図1又は図7に示すように2つの地下連続壁体の頂部間にワイヤを配設するものに限定されるものではなく、提体を形成する地域の地盤の状態、土地利用の状態等に応じて、他の形態としてブロックを埋め込むこともできる。
例えば、図8に示すように、対向して形成された2つの地下連続壁体71又は所定の範囲を囲むように形成された地下連続壁体の内側を掘削し、掘削した範囲内に汚染土成型ブロック1又は汚染土収容ブロック24を配列する。そして、これらのブロックを掘削土72で埋め込んで提体73を形成するものであってもよい。
なお、図8中に示す符号74は不透水層を、符号75は地下連続壁体71上に支持される擁壁を示すものである。
【0045】
この他、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において様々な形態で実施することができる。
例えば、2つの地下連続壁体間に設ける不透水層は、地盤改良によって形成されるものに限定されず、コンクリートの打設によって形成されるもの、アスファルト層の敷設によって形成されるもの、防水シートによって遮水するもの等を採用することもできる。
また、ワイヤ37,56を擁壁38,57に連結する構造も、ワイヤの引張力が擁壁に伝達されるように連結されるものであれば、上記以外の構造を適宜に採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:汚染土成型ブロック, 2:放射線遮蔽シート, 3:金型, 4:鉄筋, 5:吊金具, 11:遮蔽層, 12:緩衝層, 13:表面被覆層, 14:剥離紙,
21:コンクリートの函体, 22:汚染土, 23:コンクリートの蓋, 24:汚染
土収容ブロック, 31:提体, 32:地下連続壁体, 33:地下連続壁体間の地盤, 34:不透水層, 35:放射線遮蔽シート, 36:防水シート, 37:ワイヤ, 38:擁壁, 39:サドル, 40:連結ワイヤ, 41:点検孔, 42:放射性物質で汚染されていない土, 43:法面を保護するコンクリート層,
51:提体, 52:地下連続壁体, 53:不透水層, 54:放射線遮蔽シート,55:防水シート, 56a:ワイヤ, 56b:連結ワイヤ, 57:擁壁, 58:掘削土, 59:点検孔, 60:天端コンクリート, 71:地下連続壁体, 72:掘削土, 73:提体, 74:不透水層, 75:擁壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8