【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、その一態様によれば、交流電圧を送出する配電網から電力を供給される電気回路の内部接地点と、大地との間に流れるコモンモード電流を低減させるための、次のようなステップを含んでいる方法を提供するものである。
− 配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に電圧が印加され、
− コモンモード電流の低減のために、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧と逆位相の付加電圧が、電気回路の内部接地と大地との間に配置された電子部品によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される。
【0015】
この方法において印加される付加電圧は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧に対して逆位相であり、したがって、大地との間に生じる寄生インピーダンスの端子間で観察される、配電網の中性点と大地との間の電圧は低下する。その結果、コモンモード電流は低減する。
【0016】
付加電圧は、電気回路の内部接地と大地との間に存在する寄生キャパシタに並列に印加される。
【0017】
付加電圧は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の符号と逆の符号を有している。付加電圧の絶対値は、配電網によって印加される電圧の値以下である場合がある。さらに、付加電圧の絶対値は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%と、次第に、より好ましくなる。
【0018】
付加電圧の絶対値が、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧の値に近いほど、コモンモード電流の値を、より低減させることができる。したがって、付加電圧の絶対値は、配電網によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される電圧に、できるだけ近いほうがよい。
【0019】
付加電圧は、電気回路が、配電網から電力を供給されているときに、電子部品が、電気回路の内部接地と大地との間に流れるコモンモード電流を入力信号として受けた際に、電子部品の出力に発生する場合がある。
【0020】
電子部品は、電界効果トランジスタを含んでいない場合がある。具体的には、電子部品は、例えばおよそ450Vのコレクタ−エミッタ間電圧に耐える性能を有するバイポーラトランジスタを含んでいる。
【0021】
電子部品は、導通状態から遮断状態への遷移を実行しない場合がある。
【0022】
電子部品の0dB帯域は、5Hz〜1.1kHzの範囲にわたっている場合がある。
【0023】
電子部品は、ジャイレータとして動作する場合がある。
【0024】
したがって、本発明は、コモンモード電流を、コモンモード電流に対してあらかじめ定められた値にするように動作することができる。この値は0であるか、または標準によって許容されている最大値未満の値にすることができる。この電子部品は、配電網の周波数(一般に50Hzまたは60Hzである)に等しい周波数を有するコモンモード電流を取り除くために用いられるから、「アクティブフィルタ」と呼ぶこともできる。
【0025】
電子部品は、配電網の周波数に等しい周波数を有するコモンモード電流だけを取り除くように構成されている場合がある。
【0026】
一変形例として、電子部品は、配電網の周波数に等しい周波数、およびこの周波数の、二次〜十次の高調波周波数を有するコモンモード電流だけを取り除くように構成されている場合がある。したがって、配電網が50Hzの電流を供給している場合には、電子部品は、50〜500Hzの範囲の周波数でコモンモード電流を取り除くことができる。
【0027】
電子部品への入力信号として用いられるコモンモード電流の値は、配電網から電気回路に送出される電流から得られる場合がある。例えば配電網が三相電流を送出する場合には、各相に流れる電流を測定し、各電流をベクトル的に加え合わせることによって、コモンモード電流の値を得ることができる。
【0028】
したがって、本発明により、コモンモード電流低減のために印加されるべき電圧の値を、動的に決定することができる。
【0029】
上述の電流測定は、ナノ結晶磁性材料から成る磁心を用いて行なうことができる。
【0030】
例えば本出願人による特許文献2に開示されているように、モータの巻線を用いて、ハイブリッド自動車または電気自動車の蓄電ユニットを再充電するために、本発明を実施するときに、モータの巻線において、電流測定を行うことができる。一変形例として、配電網に電気回路を接続するためのコネクタと、モータのステータ巻線との間で、電流測定を行うことができる。
【0031】
付加電圧は、電気回路の内部接地と、電子部品の内部接地との間への、第1の電圧の印加、および大地と電子部品の内部接地との間への、第1の電圧の符号と逆の符号を有する第2の電圧の印加によって、電気回路の内部接地と大地との間に印加される場合がある。この場合、第1の電圧と第2の電圧との差は、付加電圧に等しい。したがって、付加電圧を生成するために、2つの増幅器段を用いることができる。このようにして、単独で付加電圧を発生させるための単一の増幅器の製造に必要な部品より安価な部品を用いて、各増幅器段を製造することができる。
【0032】
この場合には、電気回路の内部接地と電子部品の内部接地とは、互いに接続されない。これらの2つの内部接地は、同電位にないことに注意されたい。
【0033】
しかしながら、本発明は、付加電圧を発生させるために、単一の増幅器段しか用いない場合を排除するものではない。
【0034】
配電網は、50Hzまたは60Hzの周波数を有する交流電圧を送出する場合がある。配電網は、単相または多相(例えば三相)の電圧を送出する。
【0035】
電気回路は、配電網から送出される交流電圧を整流するための、正の出力端子と負の出力端子とを有する整流段を備えている場合があり、電気回路の内部接地は、それらの正の出力端子と負の出力端子とのうちの一方に接続されている場合がある。
【0036】
整流段は、その整流電圧値を、整流段より下流の部品に対して適合させるように構成されている場合もあるし、構成されていない場合もある。整流段は、例えばPFCの構成部品、特にブリッジを有しないPFC(ブリッジレスPFC)の構成部品である。
【0037】
本発明の一実施例によれば、蓄電ユニットが、整流段の正の出力端子と負の出力端子との間に接続されている場合がある。この場合には、本発明の方法を、配電網による、この蓄電ユニットの再充電中に実行することができる。
【0038】
蓄電ユニットは、例えば1つ以上のバッテリで構成されている。蓄電ユニットが、2つ以上のバッテリで構成されている場合には、それらのバッテリは、直列および/または並列に配置されていることがある。
【0039】
蓄電ユニットの端子間電圧は、充電されている状態で、150〜450Vの範囲にある場合がある。蓄電ユニットに吸収される電力は100W以上、例えば配電網が単相であるときには数kW程度、配電網が三相であるときには20kW以上である場合がある。
【0040】
電気回路およびフレームは、電気自動車またはハイブリッド自動車の一部を構成している場合があり、電気回路には、モータのステータ巻線によって構成されているインダクタンスが含まれている場合がある。
【0041】
フレームと、交流電流を送出する配電網から電力を供給される電気回路とを備える自動車の特定の用途にしたがって、本発明を実施することができる。この電気回路は、配電網から送出される電圧を整流するための整流段を備えており、整流段の下流には、電気回路の内部接地が接続されており、電気回路の内部接地の下流には、バッテリなどの蓄電ユニットが接続されている。電気回路の内部接地とフレームとの間に発生する電圧が、電気回路の内部接地とフレームとの間に流れるコモンモード電流の低減のために利用される。
【0042】
電気回路の内部接地と、その電気回路が接続されている配電網との間に、ガルバニック絶縁を設ける必要のないので有利である。
【0043】
寄生容量が、0〜350nF、特に70〜350nFの範囲にある場合には、電子部品のおかげで、電気回路は、大地に対するガルバニック絶縁を必要としない。
【0044】
本発明による方法においては、付加電圧は、電気回路とフレームとの間に存在しており、コモンモード電流の流れに関与する成分に直列に注入されることなく、それらの成分と並列に注入される。
【0045】
さらに、本発明の、別の一態様によれば、次のものを具備しているアセンブリが提供される。
− 交流電圧を整流するための、正の出力端子と負の出力端子とを有している整流段と、正の出力端子と負の出力端子とのうちの一方に接続されている内部接地とを備えている電気回路と、
− フレームと、
− 一方が電気回路の内部接地に、他方がフレームに電気的に接続されている電子部品であって、電気回路が配電網から電力を供給されているときに、電気回路の内部接地とフレームとの間に流れる電流を低減させるために、電気回路の内部接地とフレームとの間に電圧を印加するようになっている電子部品。
【0046】
このアセンブリは、自動車の一部を構成している場合があり、その場合には、フレームは、車両フレームである。
【0047】
しかしながら、フレームは、車両フレームではない場合もある。
【0048】
一変形例として、アセンブリは、他の装置、例えば同期モータ、または非同期モータの電源システムに組み込まれている場合がある。
【0049】
アセンブリは、ガルバニック絶縁が高価なものになってしまう任意のシステム、例えば100W以上の電力を吸収するバッテリ充電器に組み込まれている場合がある。
【0050】
さらに、本発明の方法に関する上述の各特性が、個々に、または2つ以上、上述のアセンブリと組み合わされている場合がある。