(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る梁構造について説明する。
【0015】
図1(f)の端面図に示すように、本発明の第1実施形態に係る梁構造10は、複数の梁構成部材12A、12Bと、接合手段としてのボルト14及びナット16とを有して、梁18を構成している。
【0016】
梁構成部材12Aと梁構成部材12Bとは、同じ部材であり、
図1(a)に示す第1集成材20A、20Bと、
図1(e)に示す第2集成材22A、22Bと、
図1(d)に示すモルタルバー24とをそれぞれ有して構成されている。なお、梁構成部材12Aと梁構成部材12Bとは、同じ部材でなくてもよい。
【0017】
第1集成材20A、20B、及び第2集成材22A、22Bは、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)を板状の単材26に製材し、この単材26を乾燥させた後に集成接着することによって形成されている。
【0018】
モルタルバー24は、板状に硬化させたモルタルによって形成されており、梁18の梁長方向にわたって第1集成材20A、20Bに形成された溝部28A、28B(
図1(a)を参照のこと)内と、梁18の梁長方向にわたって第2集成材22A、22Bに形成された溝部30A、30B(
図1(e)を参照のこと)内とに配置されている。
【0019】
梁構成部材12A、12Bは、ボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bが接合された
図1(f)の状態において、梁18の梁幅方向32中央に配置されて荷重を支持する木製の梁心材34A、34Bと、梁心材34A、34Bの外面に設けられた外面層36A、36Bとを備えている。また、外面層36A、36Bは、梁心材34A、34Bの外周を取り囲む燃え止まり層38A、38Bと、燃え止まり層38A、38Bの外周を取り囲む木製の燃え代層40A、40Bとを有して構成されている(
図2の端面図を参照のこと)。すなわち、梁心材34A、34B、及び燃え代層40A、40Bは、複数の単材26によって形成され、燃え止まり層38A、38Bは、交互に複数配置されたモルタルバー24と単材26とによって形成されている。
【0020】
梁18は、コンクリート製の床スラブ(不図示)を支持する梁であり、梁18上にコンクリート製の床スラブを設けることにより、梁18の上面が床スラブのコンクリート面で覆われて梁18上面の耐火性が確保される。よって、梁18の上部に外面層36A、36Bが形成されていない。
【0021】
梁18を製作する手順は、まず、
図1(a)に示すように、単材26を集成接着して第1集成20A、20Bを形成する。第1集成材20A、20Bは、荷重を支持する梁心材34A、34Bを主に構成するので、第1集成材20A、20B全体として高い強度が求められる。そのため、単材26を集成接着する際に、高い圧力で圧締する。すなわち、圧締装置(不図示)によって、接着剤を塗布し貼り合わせた単材26に高い圧力(例えば、100ton/m
2程度の圧力)を均等に加えて圧着し、単材26同士を密着させた状態で接着を完了させる。
【0022】
第1集成材20A、20Bの上部及び下部には、両端に雄ネジが形成されたボルト14が略水平に貫通する貫通孔42が形成されている。貫通孔42は、梁18の梁長方向に対し、間隔をあけて複数形成されている。また、貫通孔42の一方端部には、ボルト14の端部及びナット16が収容される切り欠き部44が形成されている。
【0023】
次に、
図1(b)に示すように、第1集成材20Aの内面46Aに形成された溝部28Aに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定し、このモルタルバー24の左半分を溝部28Aに配置する。さらに、第1集成材20A、20Bを梁幅方向32へ左右に配置し、第1集成材20A、20Bの内面46A、46B同士(梁心材34A、34Bの側面同士)を合わせた状態で、貫通孔42へボルト14を貫通させ、ボルト14の両端にナット16を締め付けて、
図1(c)に示すように、ボルト14及びナット16により第1集成材20A、20Bを一体に接合する。ボルト14及びナット16により第1集成材20A、20Bを接合した状態で、ボルト14の端部及びナット16は、切り欠き部44に収容され、また、モルタルバー24は、第1集成材20Bの内面46Bに形成された溝部28Bに右半分が配置される。
【0024】
次に、
図1(d)に示すように、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bと、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに形成された溝部28A、28Bとに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定する。溝部28Aには、モルタルバー24の右半分が配置され、溝部28Bには、モルタルバー24の左半分が配置される。
【0025】
次に、
図1(e)に示すように、単材26を集成接着して形成された第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付けることにより、
図1(f)に示すように、梁18が完成する。第1集成材20A、20Bへの第2集成材22A、22Bの取り付けは、第2集成材22A、22Bにおける溝部30A、30Bが形成されていない内面50A、50Bを、第1集成材20A、20Bにおけるモルタルバー24が固定されずに露出している外面48A、48Bに、接着剤により接着固定することによって行う。
【0026】
第2集成材22A、22Bは、主に耐火性を発揮させるために設けられている部材であり、構造体としての強度が期待されている部材ではないので、第2集成材22A、22Bの形成や、第1集成材20A、20Bへの第2集成材22A、22Bの接着固定を行う際には、第1集成材20A、20Bを形成するときのように高い圧力で圧締しなくてもよい。なお、構造体としての強度が第2集成材22A、22Bに期待されている梁構造であっても、第2集成材22A、22Bの形成や、第1集成材20A、20Bへの第2集成材22A、22Bの接着固定を行う際に、第1集成材20A、20Bを形成するときのように高い圧力で圧締しなくてもよい梁構造の場合には、
図1(a)〜(f)の製作手順を適用することができる。
【0027】
第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付けた状態で、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに固定されたモルタルバー24は、溝部30A、30Bに配置され、溝部28Aに固定されたモルタルバー24の左半部は、溝部30Aに配置され、溝部28Bに固定されたモルタルバー24の右半部は、溝部30Bに配置される。
【0028】
このように、第1実施形態の梁構造10では、梁構成部材12A、12Bを梁幅方向32へ左右に配置し、梁心材34A、34Bの側面同士(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B同士)を合わせた状態で、接合手段としてのボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bを接合して、梁18を構成している。
【0029】
また、
図3の拡大図に示すように、ボルト14の端部及びナット16は、切り欠き部44内に収容されており、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに固定されるモルタルバー24や、第2集成材22A、22Bは、ボルト14及びナット16により第1集成材20A、20Bを接合した後に取り付けられるので、切り欠き部44は、燃え止まり層38A,38B、及び燃え代層40A、40Bによって覆われている。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態に係る梁構造の作用と効果について説明する。
【0031】
本発明の第1実施形態の梁構造10では、
図1(f)に示すように、梁構成部材12A、12Bを梁幅方向32へ複数配置し、接合手段としてのボルト14及びナット16により梁心材34A、34Bの側面(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B)を合わせて接合することで、梁幅の大きな梁を構築することができる。
【0032】
また、梁心材34A、34Bの接合面(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B)には、大きな引張力(梁構成部材12A、12B同士を梁幅方向32へ分離させようとする力)が発生しないので、梁心材34A、34Bの側面(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B)を合わせて接合する接合手段(ボルト14及びナット16)の接合力は小さくてよい。よって、製作設備の制約に大きく影響されずに、大きな構造断面の木製梁を製作することができる。
【0033】
例えば、梁断面の大きい梁を集成材によって製作する場合、圧締装置を用いて高い圧力(例えば、100ton/m
2程度の圧力)で、梁断面を大きくするために厚くした部材に対して圧締を行わなければならないが、ある程度の大きさ以上の大規模な圧締装置は、製作が困難であり、コストも高くなってしまう。すなわち、圧締可能な厚さには製作設備上の制限がある。
【0034】
これに対して、第1実施形態の梁構造10では、接合手段としてのボルト14及びナット16により梁心材34A、34Bの側面(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B)を合わせて接合するので、大規模の圧締装置を用いなくても、梁幅の大きな梁を構築することができる。
【0035】
第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付ける際に、第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに接着固定するが、第1集成材20A、20Bへ第2集成材22A、22Bを押し付ける力は小さくて(例えば、30ton/m
2程度)よいので、必ずしも圧締装置を用いる必要はなく。圧締装置を用いる場合でも、小さな圧力で圧締する軽微な圧締装置を用意すればよいので、製作はそれほど困難ではなく、コストも低くできる。すなわち、この作業においては、製作設備の制約に大きく影響されることはない。
【0036】
また、梁成を大きくして梁の構造断面を大きくする場合、梁の構造断面が細長い形状になって、梁が面外座屈し易くなる。これに対して、第1実施形態の梁構造10では、梁幅を大きくして梁の構造断面を大きくするので、面外座屈を生じ難くすることができる。
【0037】
さらに、梁18の耐火性については、火災が発生したときに火炎が燃え代層40A、40Bに着火し、燃え代層40A、40Bが燃焼する。そして、燃焼した燃え代層40A、40Bは炭化する。これにより、燃焼した燃え代層40A、40Bの外部から梁心材34A、34Bへの熱伝達と酸素供給とを炭化した燃え代層40A、40Bが遮断し、燃え止まり層38A、38Bが吸熱するので、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後における梁心材34A、34Bの温度上昇を抑制することができる。よって、火災(加熱)時及び火災(加熱)終了後において、所定時間(例えば、1時間耐火の場合には、1時間)の間、梁心材34A、34Bを炭化・燃焼温度未満に抑え、梁心材34A、34Bを燃焼させずに燃え止まらせることができる。
【0038】
また、第1実施形態の梁構造10では、
図3に示すように、モルタルバー24や第2集成材22A、22Bによって切り欠き部44が覆われるので、切り欠き部44へ断熱材を充填する等の耐火処理を施さなくてよい。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る梁構造について説明する。
【0040】
第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図4(e)の端面図に示すように、本発明の第2実施形態に係る梁構造52は、第1実施形態の梁構造10と略等しい構成によって梁54を構成している。後に説明する
図4(b)に示すように、第2集成材22A、22Bに貫通孔58が形成され、モルタルバー24に貫通孔56が形成されている点が、梁構造10と異なっている。
【0041】
梁18を製作する手順は、まず、
図4(a)に示すように、単材26を集成接着して第1集成20A、20B、及び第2集成材22A、22Bを形成する。第1実施形態と同様に、第1集成20A、20Bは、単材26を集成接着する際に、高い圧力(例えば、100ton/m
2程度の圧力)で圧締する。
【0042】
次に、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bと、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに形成された溝部28A、28Bとに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定する。溝部28Aには、モルタルバー24の右半分が配置され、溝部28Bには、モルタルバー24の左半分が配置される。
【0043】
第2集成材22A、22Bの上部と下部とに位置し、燃え代層40A、40Bを形成する単材26には、後に説明する
図4(b)の手順においてボルト14及びナット16の挿入が可能な貫通孔58が形成されている。また、外面48A、48Bの上部と下部とに固定され、燃え止まり層38A、38Bを形成するモルタルバー24には、後に説明する
図4(b)の手順においてボルト14及びナット16の挿入が可能な貫通孔56が形成されている。なお、貫通孔56の位置や数は、適宜決めればよい。例えば、モルタルバー24の間に配置されて燃え止まり層38A、38Bを形成する単材26に貫通孔56を形成してもよい。
【0044】
次に、第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付けて、梁構成部材12A、12Bを形成する。第1集成材20A、20Bへの第2集成材22A、22Bの取り付けは、第2集成材22A、22Bにおける溝部30A、30Bが形成されていない内面50A、50Bを、第1集成材20A、20Bにおけるモルタルバー24が固定されずに露出している外面48A、48Bに、接着剤により接着固定することによって行う。
【0045】
第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付けた状態で、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに固定されたモルタルバー24は、溝部30A、30Bに配置され、溝部28Aに固定されたモルタルバー24の左半部は、溝部30Aに配置され、溝部28Bに固定されたモルタルバー24の右半部は、溝部30Bに配置される。
【0046】
次に、
図4(b)に示すように、第1集成材20Aの内面46Aに形成された溝部28Aに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定し、このモルタルバー24の左半分を溝部28Aに配置する。
【0047】
さらに、梁構成部材12A、12Bを梁幅方向32へ左右に配置し、梁構成部材12A、12Bの梁心材34A、34Bの側面同士を合わせた状態で、貫通孔42へボルト14を貫通させ、ボルト14の両端にナット16を締め付けて、
図4(c)に示すように、ボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bを一体に接合する。ボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bを接合した状態で、ボルト14の端部及びナット16は、切り欠き部44に収容され、また、モルタルバー24は、第1集成材20Bの内面46Bに形成された溝部28Bに右半分が配置される。
【0048】
次に、
図4(d)に示すように、貫通孔56内に、モルタル、ロックウール等の断熱材Mを充填して耐火処理を施し、
図4(e)に示すように、貫通孔58に埋め木60を埋め込んで、梁54が完成する。
【0049】
このように、第2実施形態の梁構造52では、梁構成部材12A、12Bを梁幅方向32へ左右に配置し、梁心材34A、34Bの側面同士(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B同士)を合わせた状態で、接合手段としてのボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bを接合して、梁54を構成している。
【0050】
また、
図5の拡大図に示すように、貫通孔56内には、モルタル、ロックウール等の断熱材Mが充填されて耐火処理が施され、貫通孔58には、埋め木60が埋め込まれているので、切り欠き部44から梁心材34A、34Bへ熱が進入することを防いでいる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態に係る梁構造の作用と効果について説明する。
【0052】
本発明の第2実施形態の梁構造52では、第1実施形態の梁構造10と同様の効果を得ることができる。すなわち、
図4(e)に示すように、梁構成部材12A、12Bを接合手段としてのボルト14及びナット16により接合することで、梁幅の大きな梁を構築することができる。また、梁心材34A、34Bの接合面には、大きな引張力が発生しないので、接合手段(ボルト14及びナット16)の接合力は小さくてよい。よって、製作設備の制約に大きく影響されずに、大きな構造断面の木製梁を製作することができる。
【0053】
また、第2実施形態の梁構造52では、
図4(a)に示すように、接合手段としてのボルト14及びナット16により第1集成材20A、20B同士を接合する前に、第2集成材22A、22Bを第1集成材20A、20Bに取り付けるので、圧締装置により圧締して、第1集成材20A、20Bに第2集成材22A、22Bを接着固定する場合、梁54の梁幅半分の厚さの部材に対して圧締を行えばよいので、圧締装置を小規模のものにすることができる。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態に係る梁構造について説明する。
【0055】
第3実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
図6(e)の端面図に示すように、本発明の第3実施形態に係る梁構造62は、第1実施形態の梁構造10と略等しい構成によって梁64を構成している。貫通孔42の一方端部に形成されていた切り欠き部44が形成されておらず、後に説明する
図6(c)の手順においてボルト14の挿入が可能な貫通孔66がモルタルバー24に形成され、周囲に耐火部材72が設けられる(
図7を参照のこと)とともにボルト14の挿入が可能な貫通孔68が、第2集成材22A、22Bに形成され、ボルト14の端部及びナット16が収容され貫通孔68の一方端部と連通する切り欠き部70が、第2集成材22A、22Bに形成されている点が、梁構造10と異なっている。
【0056】
梁64を製作する手順は、まず、
図6(a)に示すように、単材26を集成接着して第1集成20A、20Bを形成する。第1実施形態と同様に、第1集成20A、20Bは、単材26を集成接着する際に、高い圧力(例えば、100ton/m
2程度の圧力)で圧締する。
【0057】
次に、
図6(b)に示すように、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bと、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに形成された溝部28A、28Bとに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定する。
【0058】
溝部28Aには、モルタルバー24の右半分が配置され、溝部28Bには、モルタルバー24の左半分が配置される。また、外面48A、48Bの上部と下部とに固定され、燃え止まり層38A、38Bを形成するモルタルバー24には、後に説明する
図6(c)の手順においてボルト14の挿入が可能な貫通孔66が形成されている。なお、貫通孔66の位置や数は、適宜決めればよい。例えば、モルタルバー24の間に配置されて燃え止まり層38A、38Bを形成する単材26に貫通孔66を形成してもよい。
【0059】
次に、
図6(c)に示すように、第1集成材20Aの内面46Aに形成された溝部28Aに、モルタルバー24を接着剤や釘等を用いて固定し、このモルタルバー24の左半分を溝部28Aに配置する。
【0060】
さらに、第2集成材22A、第1集成材20A、第1集成材20B、第2集成材22Bを、梁幅方向32の左側から右側へこの順に配置し、梁心材34A、34Bの側面同士(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B同士)を合わせた状態で、切り欠き部70、及び貫通孔42、66、68へボルト14を貫通させ、ボルト14の両端にナット16を締め付けて、
図6(d)に示すように、ボルト14及びナット16により第1集成材20A、20B、及び第2集成材22A、22Bを一体に接合する。
【0061】
この状態で、ボルト14の端部及びナット16は、切り欠き部70に収容され、第1集成材20Aの内面46Aに形成された溝部28Aに固定されたモルタルバー24は、第1集成材20Bの内面46Bに形成された溝部28Bに右半分が配置される。また、第1集成材20A、20Bの外面48A、48Bに固定されたモルタルバー24は、溝部30A、30Bに配置され、溝部28Aに固定されたモルタルバー24の左半部は、溝部30Aに配置され、溝部28Bに固定されたモルタルバー24の右半部は、溝部30Bに配置される。
【0062】
次に、
図6(e)に示すように、切り欠き部70内に、ロックウール、モルタル等の断熱材Mを充填して耐火処理を施し、梁64が完成する。
【0063】
このように、第3実施形態の梁構造62では、梁構成部材12A、12Bを梁幅方向32へ左右に配置し、梁心材34A、34Bの側面同士(第1集成材20A、20Bの内面46A、46B同士)を合わせた状態で、接合手段としてのボルト14及びナット16により梁構成部材12A、12Bを接合して、梁64を構成している。
【0064】
図7の拡大図に示すように、貫通孔68の周囲には、モルタルにより形成された筒状の耐火部材72が単材26と一体に設けられているので、燃え代層40A、40Bが燃焼した場合においても、接合手段としてのボルト14及びナット16により第1集成材20A、20Bが接合された状態を維持することができる。
【0065】
次に、本発明の第3実施形態に係る梁構造の作用と効果について説明する。
【0066】
本発明の第3実施形態の梁構造62では、第1実施形態の梁構造10と同様の効果を得ることができる。すなわち、
図6(e)に示すように、梁構成部材12A、12Bを接合手段としてのボルト14及びナット16により接合することで、梁幅の大きな梁を構築することができる。また、梁心材34A、34Bの接合面には、大きな引張力が発生しないので、接合手段(ボルト14及びナット16)の接合力は小さくてよい。よって、製作設備の制約に大きく影響されずに、大きな構造断面の木製梁を製作することができる。
【0067】
また、第3実施形態の梁構造62では、
図6(c)に示すように、接合手段としてのボルト14及びナット16により、第1集成材20A、20B、及び第2集成材22A、22Bを接合するので、第1集成材20A、20Bに第2集成材22A、22Bを接着固定する必要がなくなる。
【0068】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明した。
【0069】
なお、第1〜第3実施形態では、
図1(f)、
図4(e)、及び
図6(e)に示すように、梁心材34A、34B、及び燃え代層40A、40Bを、一般木材を製材した単材26を集成接着した第1集成材20A、20Bと、第2集成材22A、22Bとによって形成した例を示したが、梁心材34A、34B、及び燃え代層40A、40Bは、木材によって形成されていればよい。例えば、第1集成材20A、20B、及び第2集成材22A、22Bと同じ形状に一般木材を加工したものによって、梁心材34A、34B、及び燃え代層40A、40Bを形成してもよい。
【0070】
また、第1〜第3実施形態で示した燃え止まり層38A、38Bは、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる層であればよい。例えば、燃え止まり層38A、38Bは、難燃性を有する層や熱の吸収が可能な層であればよい。
【0071】
難燃性を有する層としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入層が挙げられる。熱の吸収が可能な層は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい(第1〜第3実施形態では、一般木材よりも熱容量が大きな材料であるモルタルバー24と、一般木材により形成された単材26とを交互に配置することにより燃え止まり層38A、38Bを形成した例を示している)。また、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを組み合わせて(例えば、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを交互に配置して)燃え止まり層を形成してもよい。
【0072】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、けい酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0073】
さらに、第1〜第3実施形態では、
図1(f)、
図4(e)、及び
図6(e)に示すように、梁18、54、64が、梁心材34A、34B、燃え止まり層38A、38B、及び燃え代層40A、40Bを有して構成されている例を示したが、梁は、荷重を支持する木製の梁心材と、この梁心材の外面に設けられた外面層とを有していればよい。外面層は、例えば、燃え止まり層や燃え代層のみで構成してもよいし、燃え止まり層の周囲を燃え代層以外の層(例えば、薄い木製の仕上げ材)で取り囲むようにしてもよい。また、梁心材と、梁心材の外面に設けられた外面層とを有していれば、梁心材、燃え止まり層、燃え代層、外面層は、どのような材料によって形成してもよい。
【0074】
さらに、第1〜第3実施形態では、
図1(f)、
図4(e)、及び
図6(e)に示すように、梁18、54、64の上部に外面層が形成されていない例を示したが、梁の上面にも耐火性を確保させる必要があるときには、梁18、54、64の上部(梁心材34A、34Bの上面)に外面層を形成してもよい。
【0075】
また、第1及び第2実施形態では、
図3及び
図5に示すように、接合手段としてのボルト14及びナット16により、梁構成部材12A、12Bを接合した例を示したが、梁心材34A、34B(切り欠き部44の底面)とナット16との間にプレートを介在させてもよい。このようにすれば、ナット16を締め付けるときに、このナット16が梁心材34A、34Bにめり込むのを防ぐことができる。
【0076】
さらに、第1〜第3実施形態では、ボルト14及びナット16を接合手段とした例を示したが、ボルト14及びナット16の位置や数は、適宜決めればよい。また、ボルト14の張力を大きくして、第1集成材20A、20B、モルタルバー24、及び第2集成材22A、22Bへ圧縮力を付与し、これらの部材同士の一体化を高めるようにしてもよい。このようにすれば、横力やねじれに対する梁の強度を向上させることができる。
【0077】
また、このように、接合手段(ボルト14及びナット16)により構成部材(梁構成部材12A、12B)同士を圧縮した状態で接合すれば、横力やねじれに対する強度の高い部材(梁18、54、64)を構築できるので、この考え方を柱に適用してもよい。すなわち、柱心材、及び柱心材の外面に設けられた外面層を備えた柱構成部材同士を、接合手段(ボルト14及びナット16)により圧縮した状態で接合し、第1〜第3実施形態で示した梁18、54、64の横断面と略同様の構成の水平断面を有する柱を形成してもよい。
【0078】
さらに、第1〜第3実施形態では、ボルト14及びナット16を接合手段とした例を示したが、梁幅方向に複数配置された梁構成部材の梁心材の側面を合わせて接合することができるものであればよく、例えば、
図8(a)〜(d)に示す方法で、梁構成部材同士を接合してもよい。
【0079】
図8(a)に示す梁74は、梁心材34A、34Bに埋設して接着固定した板状の接合金具78を接合手段とした梁構造76により形成されたものであり、
図8(b)に示す梁80は、梁心材34A、34Bに埋設して接着固定したコの字状の接合金具84を接合手段とした梁構造82により形成されたものであり、
図8(c)に示す梁86は、梁構成部材12A、12Bの側面(梁心材34A、34Bの内面)に形成したコッター90を接合手段とした梁構造88により形成されたものであり、
図8(d)の梁92は、梁構成部材12A、12Bの側面(梁心材34A、34Bの内面)同士を接着固定する接着剤96を接合手段とした梁構造94により形成されたものである。
【0080】
梁心材34A、34Bの接合面(内面)には、大きな引張力(梁構成部材12A、12B同士を梁幅方向32へ分離させようとする力)が発生しないので、梁心材34A、34Bの側面(内面)を合わせて接合する接合手段の接合力は小さくてよい。よって、
図8(a)〜(d)に示す梁74、80、86、92においても、製作設備の制約に大きく影響されずに、大きな構造断面の木製梁を製作することができる。例えば、
図8(d)の接着剤96は、接着力の小さいものでもよいし、また、接合面に部分的に塗布するようにしてもよい。
【0081】
また、第1〜第3実施形態では、2つの梁構成部材12A、12Bを接合して梁18、54、64を形成した例を示したが、
図9(a)〜(f)に示すように、3つ以上の梁構成部材12A、12B、12Cを接続して梁を形成してもよい。
図9(a)に示すように、梁構成部材12Cは、梁心材34Cと、梁心材34Cの下面に形成された燃え止まり層38Cと、燃え止まり層38Cの下面に形成された燃え代層40Cとを有して構成されているものであり、梁心材34C、燃え止まり層38C、及び燃え代層40Cと、梁心材34A、燃え止まり層38A、及び燃え代層40Aとは、同じ材料によって形成されている。
【0082】
図9(a)は、第1実施形態の梁構造10を用いて5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁98を形成したものである。さらに、
図9(b)は、第1実施形態の梁構造10を応用して5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁100を形成したものである。梁100では、接合手段としてのボルト14、頭付きボルト102、及びナット16によって、隣り合う梁構成部材12A、12B、12C同士のみを接合している。梁100のような構成にすれば、任意の数の梁構成部材を、同じ接合手段を用いて接合することができる。すなわち、接合手段に汎用性を持たせることができ、標準化を図ることができる。
【0083】
また、
図9(c)は、
図8(a)に示す梁構造76を用いて5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁104を形成したものであり、
図9(d)は、
図8(b)に示す梁構造82を用いて5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁106を形成したものであり、
図9(e)は、
図8(c)に示す梁構造88を用いて5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁108を形成したものであり、
図9(f)は、
図8(d)に示す梁構造94を用いて5つの梁構成部材12A、12B、12Cを接合し、梁110を形成したものである。
【0084】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。