(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るポンプ装置1を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係るポンプ装置1の構成を一部外観から示す断面図、
図2はポンプ装置1に用いられる軸封装置11の要部構成、特にメカニカルシール31の構成を示す断面図である。なお、
図1中、Bはボルトを、Fは水の流れを、Kは電源ケーブルを、Lはライナリングを、Mは潤滑油を、それぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、ポンプ装置1は、モータ10と、軸封装置11と、ポンプ12と、を備えている。ポンプ装置1は、例えば、汚水槽及び下水道等に設置され、異物(汚物等)を含む汚水を送水する所謂縦軸型の水中ポンプである。
【0016】
モータ10は、モータケーシング21と、固定子22と、回転子23と、回転軸24と、を備えている。またモータ10は、外部電源等に接続される電源ケーブルKを有している。モータケーシング21は、両端が閉塞する円筒形状に形成され、一方の端面が軸封装置11にボルト等の締結部材Bにより固定される。
【0017】
固定子22は、モータケーシング21の内面に固定されている。また固定子22は、電源ケーブルKを介して供給された電力により、回転子23を回転可能に形成されている。回転子23は、その回転に追従して回転軸24を回転可能に、回転軸24と固定されている。
【0018】
回転軸24は、モータケーシング21の一端側から突出し、且つ、モータケーシング21にベアリング等の軸受25を介して回転自在に軸支されている。なお、回転軸24は、モータケーシング21から重力方向(上下方向)に延設される。
【0019】
軸封装置11は、シールケーシング30と、メカニカルシール31と、を備えている。軸封装置11は、モータ10、ポンプ12及び回転軸24間を液密に仕切る。
【0020】
シールケーシング30は、内部にメカニカルシール31を収納可能に形成されている。具体的には、シールケーシング30は、両端が閉塞する円筒状に形成され、その両端面に設けられた回転軸24を挿通する挿通孔33と、その内部に形成されメカニカルシール31の収納及び潤滑油Mを貯留可能な油室34と、挿通孔33の周囲にそれぞれ設けられたシール溝35と、を備えている。なお、潤滑油Mは、油室34内に、膨張率を考慮した所定の量、例えば油室34の容積の80%程度が貯留される。
【0021】
メカニカルシール31は、シールケーシング30と回転軸24との間を密閉することで、ポンプ12からの汚水の浸入及びモータ10への潤滑油の浸入を防止可能に形成されている。具体的には、メカニカルシール31は、シール溝35にそれぞれ固定される固定環36と、回転軸24に固定されるとともに、固定環36とそれぞれ摺動する回転環37と、回転環37を固定環36に付勢する付勢部材38と、を備えている。
【0022】
固定環36は、回転環37と摺動する円環状の摺動面を形成する摺動部36aと、シール溝35及び摺動部36aをシールする静的シール部36bと、を備えている。回転環37は、その内周面が回転軸24をシールするとともに、その端面が固定環36と摺動可能に形成されている。また、回転環37は、その一部に、付勢部材38を支持する座部37aを有している。
【0023】
付勢部材38は、回転環37の座部37a間に設けられ、これら回転環37を固定環36に付勢可能に形成されたコイルバネである。付勢部材38は、回転環37の回転に追従して回転する際に、潤滑油Mを攪拌、飛散又は上方へと移送可能に形成され、上方の固定環36及び回転環37の摺動面に潤滑油Mを供給する供給手段である。
【0024】
具体的には、付勢部材38は、その断面がL字状に形成されている。さらに言えば、付勢部材38は、回転軸24の軸心方向に対して直交する方向に延設された平板部38aと、平板部38aの外径側の端部に回転軸24の軸心方向に沿って上方に延設された平板部38bと、を備えた断面L字状の鋼材を螺旋状に曲折(コイリング)することで成形される。
【0025】
このような軸封装置11は、潤滑油が貯留されたシールケーシング30内に固定環36及び回転環37を二つ有するメカニカルシール31を設けることで、モータ10への異物混入を防止する所謂二段構造が用いられる。
【0026】
また、軸封装置11は、潤滑油Mが油室34の容積の80%程度貯留された油室34内に収納されることから、メカニカルシール31の一部が潤滑油M内に浸漬されることとなる。換言すると、メカニカルシール31は、潤滑油Mが油室34内に油室34の容積の80%程度貯留されことから、その一部、具体的には上方の固定環36及び回転環37が潤滑油M内に浸漬しない。
【0027】
ポンプ12は、ケーシング41と、羽根車42と、を備えている。ケーシング41は、その内部に羽根車42を収納する渦巻ケーシングであり、その内部にポンプ室43を形成する。ケーシング41は、組み立てることでその内部にポンプ室43を形成する上部材44及び下部材45を有し、羽根車42を回転軸24に固定した状態で分解可能に形成されている。
【0028】
上部材44は、本実施の形態では、シールケーシング30の一部に一体に形成されている。上部材44は、上述した挿通孔33の下方に、羽根車42を回動可能に指示する第1支持部47を有している。
【0029】
下部材45は、ポンプ装置1を据付面に据付ける複数の脚部48を備えている。また、下部材45は、その底面であって、複数の脚部48間に設けられた吸込開口49と、その側面に設けられた吐出開口50と、を備えている。
【0030】
羽根車42は、例えば、ノンクロッグのクローズド羽根車であって、所定の粒径の異物を通過可能に形成されている。このような羽根車42は、軸封装置11側に配置される上シュラウド52と、吸込開口49側に配置される下シュラウド53と、これらシュラウド52,53間に設けられた羽根54と、を備えている。また、羽根車42は、下シュラウド53に設けられた流体を吸込む吸込口58と、上シュラウド52、下シュラウド53及び羽根54により形成され、吸込んだ流体を吐出する吐出口63を有している。
【0031】
上シュラウド52は、円板状に形成されている。上シュラウド52は、その中央側に、回転軸24が挿通可能であって、キー溝56aを有する挿通孔56が形成された第1被支持部57が形成されている。なお、上シュラウド52は、羽根車42が回転軸24に固定された際に、重力方向に対して下シュラウド53の上方に位置する。
【0032】
下シュラウド53は、円環状に形成されている。下シュラウド53は、その中央に吸込口58が形成されている。また、下シュラウド53は、その中央側が円環状に突起し、当該突起の外周側に第2被支持部59が形成されている。
【0033】
第1被支持部57は、ライナリングLを介して第1支持部47に回転及び摺動自在に支持される。第2被支持部59は、ライナリングLを介して第2支持部49aに回転及び摺動自在に支持される。
【0034】
羽根54は、上下シュラウド52,53間に1枚設けられる。羽根54は、その一方の端部が、シュラウド52,53の中心側に、その他方の端部がシュラウド52,53の外周縁に配置される。羽根54は、シュラウド52、53の中心(インペラ54の回転中心)からの径が各位置で異なる形状、例えば渦巻形状やインボリュート形状に形成されている。
【0035】
シュラウド52,53及び羽根54は、シュラウド53の吸込口58から吸い込まれた汚水をポンプ室43内へと移動させる吐出口63を形成する。この吐出口63は、吸込口58から吸込んだ汚水をポンプ室43へと吐出する開口である。
【0036】
このように構成されたポンプ装置1は、電源ケーブルKを介して電力が供給されることで、モータ10が駆動され、固定子22により回転子23が回転することで回転軸24が回転する。当該回転子23の回転により、羽根車42も回転する。
【0037】
図1の水の流れFに示すように、羽根車42の回転により、吸込口58から吸い込まれた汚水がケーシング41及び羽根車42で増圧されて、吐出口63から吐出される。これらのことにより、ポンプ装置1は、汚水をその二次側へ送水可能に構成される。
【0038】
また、回転軸24の回転時において、付勢部材38により固定環36に向かって付勢された回転環37も同時に回転する。これにより、回転環37の摺動面が固定環36の摺動部36aの摺動面と摺動し、当該摺動により、固定環36及び回転環37間がシールされる。また、固定環36は、静的シール部36bにより、シール溝35及び摺動部36aがシールされるとともに、回転環37は、その内周面により、回転軸24をシールする。これにより、軸封装置11により、回転軸24が軸封される。
【0039】
このように構成されたポンプ装置1によれば、回転環37の回転時において、回転環37の座部37a間に支持された付勢部材38も回転することとなる。この付勢部材38の回転により、油室34内の潤滑油Mは、螺旋状に上方に巻回された平板部38aにより上方に移送される。また、油室34の潤滑油Mは、軸心方向に沿った平板部38bにより、攪拌及び飛散されることとなる。これにより、潤滑油Mが固定環36及び回転環37に供給されることから、固定環36及び回転環37の摺動面が潤滑油Mにより潤滑されるとともに、固定環36及び回転環37が潤滑油Mにより冷却される。
【0040】
このため、油室34内に貯留された潤滑油Mに上方の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、回転軸24の回転時に、固定環36及び回転環37に潤滑油Mが供給される。これにより、固定環36及び回転環37の摩耗を防止するとともに、熱による劣化を極力防止することが可能となり、メカニカルシール31の寿命が向上し、ポンプ装置1の信頼性を向上することが可能となる。
【0041】
上述したように第1の実施形態に係る軸封装置11を用いたポンプ装置1によれば、付勢部材38により、油室34に貯留された潤滑油Mにメカニカルシール31の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、固定環36及び回転環37の潤滑及び冷却が可能となる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Aを、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Aの要部構成、特にメカニカルシール31Aの構成を示す断面図である。なお、第2の実施形態に係る軸封装置11Aのうち、上述した第1の実施形態に係る軸封装置11と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
ポンプ装置1は、モータ10と、軸封装置11Aと、ポンプ12と、を備えている。軸封装置11Aは、シールケーシング30と、メカニカルシール31Aと、を備えている。液密に仕切る。シールケーシング30は、挿通孔33と、内部にメカニカルシール31Aを収納可能、且つ、潤滑油Mを所定の量だけ貯留する油室34と、シール溝35と、を備えている。
【0044】
メカニカルシール31Aは、シールケーシング30と回転軸24との間を密閉することで、ポンプ12からの汚水の浸入及びモータ10への潤滑油の浸入を防止可能に形成されている。具体的には、メカニカルシール31Aは、固定環36と、回転環37と、回転環37を固定環36に付勢する付勢部材38Aと、を備えている。回転環37は、その一部に、付勢部材38Aを支持する座部37aを有している。
【0045】
付勢部材38Aは、回転環37の座部37a間に設けられ、これら回転環37を固定環36に付勢可能に形成された、コイルバネである。付勢部材38Aは、回転環37の回転に追従して回転する際に、潤滑油Mを攪拌、飛散又は上方へと移送可能に形成され、上方の固定環36及び回転環37の摺動面に潤滑油Mを供給する供給手段である。
【0046】
具体的には、付勢部材38Aは、その断面がカップ状に形成されている。さらに言えば、付勢部材38Aは、回転軸24の軸心方向に対して直交する方向に延設された平板部38aと、平板部38aの中央側及び外径側の端部に回転軸24の軸心方向に沿って延設された平板部38bと、を備えた断面F字状の鋼材を螺旋状に曲折(コイリング)することで成形される。
【0047】
このような軸封装置11Aは、潤滑油が貯留されたシールケーシング30内に固定環36及び回転環37を二つ有するメカニカルシール31Aを設けることで、モータ10への異物混入を防止する所謂二段構造が用いられる。
【0048】
また、軸封装置11Aは、潤滑油Mが油室34の容積の80%程度貯留された油室34内に収納されることから、メカニカルシール31Aの一部が潤滑油M内に浸漬されることとなる。
【0049】
このように構成された軸封装置11Aを用いたポンプ装置1によれば、回転環37の回転時に追従して付勢部材38Aが回転することで、油室34内の潤滑油Mは、螺旋状に上方に巻回された平板部38a及び平板部38bにより上方に移送される。また、油室34の潤滑油Mは、軸心方向に沿った平板部38bにより、攪拌及び飛散されることとなる。このため、軸封装置11Aは、上述した軸封装置11と同様に、潤滑油Mに上方の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、固定環36及び回転環37の摺動面が潤滑油Mにより潤滑されるとともに、固定環36及び回転環37が潤滑油Mにより冷却される。
【0050】
結果、軸封装置11Aは、固定環36及び回転環37の摩耗を防止するとともに、熱による劣化を極力防止することが可能となり、メカニカルシール31の寿命が向上し、ポンプ装置1の信頼性を向上することが可能となる。
【0051】
上述したように第2の実施形態に係る軸封装置11Aを用いたポンプ装置1によれば、付勢部材38Aにより、油室34に貯留された潤滑油Mに、メカニカルシール31の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、これら摺動面の潤滑及び冷却が可能となる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Bを、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Bの要部構成、特にメカニカルシール31Bの構成を示す断面図である。なお、第3の実施形態に係る軸封装置11Bのうち、上述した第1の実施形態に係る軸封装置11及び第2の実施形態に係る軸封装置11Aと同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
ポンプ装置1は、モータ10と、軸封装置11Bと、ポンプ12と、を備えている。軸封装置11Bは、シールケーシング30と、メカニカルシール31Bと、を備えている。液密に仕切る。シールケーシング30は、挿通孔33と、内部にメカニカルシール31Bを収納可能、且つ、潤滑油Mを所定の量だけ貯留する油室34と、シール溝35と、を備えている。
【0054】
メカニカルシール31Bは、シールケーシング30と回転軸24との間を密閉することで、ポンプ12からの汚水の浸入及びモータ10への潤滑油の浸入を防止可能に形成されている。具体的には、メカニカルシール31Bは、固定環36と、摺動する回転環37と、回転環37を固定環36に付勢する付勢部材38Bと、を備えている。回転環37は、その一部に、付勢部材38Bを支持する座部37aを有している。
【0055】
付勢部材38Bは、回転環37の座部37a間に設けられ、これら回転環37を固定環36に付勢可能に形成された、コイルバネである。付勢部材38Bは、回転環37の回転に追従して回転する際に、潤滑油Mを攪拌、飛散又は上方へと移送可能に形成され、上方の固定環36及び回転環37の摺動面に潤滑油Mを供給する供給手段である。
【0056】
具体的には、付勢部材38Bは、その断面が円形状の鋼材を螺旋状に曲折(コイリング)することで成形されたばね部38cと、ばね部38cの外周側に固定された羽根38dと、を備えている。羽根38dは、回転軸24の軸心方向に対して直交する方向に延設された平板部38aと、平板部38aの内径側及び外径側の端部に回転軸24の軸心方向に沿って延設された平板部38bと、を備え、ばね部38cに溶接等により固定されている。
【0057】
なお、羽根38dは、曲折(コイリング)後にばね部38cに固定される構成であってもよく、ばね部38cの曲折前に、ばね部38の鋼材に固定後、ばね部38cと同時に曲折される構成であってもよい。
【0058】
このような軸封装置11Bは、潤滑油が貯留されたシールケーシング30内に固定環36及び回転環37を二つ有するメカニカルシール31Bを設けることで、モータ10への異物混入を防止する所謂二段構造が用いられる。
【0059】
また、軸封装置11Bは、潤滑油Mが油室34の容積の80%程度貯留された油室34内に収納されることから、メカニカルシール31Bの一部が潤滑油M内に浸漬されることとなる。
【0060】
このように構成された軸封装置11Bを用いたポンプ装置1によれば、回転環37の回転時に追従して付勢部材38Bが回転することで、油室34内の潤滑油Mは、螺旋状に上方に巻回された平板部38aにより上方に移送される。また、油室34の潤滑油Mは、軸心方向に沿った平板部38bにより、攪拌及び飛散されることとなる。このため、軸封装置11Bは、上述した軸封装置11、11Aと同様に、潤滑油Mに上方の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、固定環36及び回転環37の摺動面が潤滑油Mにより潤滑されるとともに、固定環36及び回転環37が潤滑油Mにより冷却される。
【0061】
結果、軸封装置11Bは、固定環36及び回転環37の摩耗を防止するとともに、熱による劣化を極力防止することが可能となり、メカニカルシール31の寿命が向上し、ポンプ装置1の信頼性を向上することが可能となる。
【0062】
上述したように第3の実施形態に係る軸封装置11Bを用いたポンプ装置1によれば、付勢部材38Bにより、油室34に貯留された潤滑油Mに、メカニカルシール31の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、これら摺動面の潤滑及び冷却が可能となる。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Cを、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第4の実施形態に係るポンプ装置1に用いられる軸封装置11Cの要部構成、特にメカニカルシール31Cの構成を示す断面図である。なお、第4の実施形態に係る軸封装置11Cのうち、上述した第1の実施形態に係る軸封装置11、第2の実施形態に係る軸封装置11A及び第3の実施形態に係る軸封装置11Bと同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
ポンプ装置1は、モータ10と、軸封装置11Cと、ポンプ12と、を備えている。軸封装置11Cは、シールケーシング30と、メカニカルシール31Cと、を備えている。液密に仕切る。シールケーシング30は、挿通孔33と、内部にメカニカルシール31Cを収納可能、且つ、潤滑油Mを所定の量だけ貯留する油室34と、シール溝35と、を備えている。
【0065】
メカニカルシール31Cは、シールケーシング30と回転軸24との間を密閉することで、ポンプ12からの汚水の浸入及びモータ10への潤滑油の浸入を防止可能に形成されている。具体的には、メカニカルシール31Cは、固定環36と、摺動する回転環37と、回転環37を固定環36に付勢する付勢部材38Cと、を備えている。回転環37は、その一部に、付勢部材38Cを支持する座部37aを有している。
【0066】
付勢部材38Cは、回転環37の座部37a間に設けられ、これら回転環37を固定環36に付勢可能に形成された、コイルバネである。付勢部材38Cは、回転環37の回転に追従して回転する際に、潤滑油Mを攪拌、飛散又は上方へと移送可能に形成され、上方の固定環36及び回転環37の摺動面に潤滑油Mを供給する供給手段である。
【0067】
具体的には、付勢部材38Cは、その断面が円環状、即ち、中空の鋼材であって、その両端を連続する中空部38fを有するパイプ状の鋼材を螺旋状に曲折(コイリング)することで成形されている。また、付勢部材38Cは、その上端部の中空部38fの開口が、回転軸24の軸心方向に沿って上方に向かって配置される。また、付勢部材38Cは、その下端部の中空部38fの開口が、回転軸24の回転方向に向かって配置される。
【0068】
このような軸封装置11Cは、潤滑油が貯留されたシールケーシング30内に固定環36及び回転環37を二つ有するメカニカルシール31Cを設けることで、モータ10への異物混入を防止する所謂二段構造が用いられる。
【0069】
また、軸封装置11Cは、潤滑油Mが油室34の容積の80%程度貯留された油室34内に収納されることから、メカニカルシール31Cの一部が潤滑油M内に浸漬されることとなる。
【0070】
このように構成された軸封装置11Cを用いたポンプ装置1によれば、回転環37の回転時に追従して付勢部材38Cが回転することで、油室34内の潤滑油Mは、付勢部材38Cの中空部38fにより上方に移送される。即ち、回転する付勢部材38Cが、潤滑油M内を回転することで、回転による速度水頭分、潤滑油が中空部38f内を移動(上昇)する。中空部38f内を上昇した潤滑油は、固定環36及び回転環37の摺動面と対向する中空部38fの開口端から突出し、固定環36及び回転環37に供給される。このため、軸封装置11Cは、上述した軸封装置11、11A、11Bと同様に、潤滑油Mに上方の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、固定環36及び回転環37の摺動面が潤滑油Mにより潤滑されるとともに、固定環36及び回転環37が潤滑油Mにより冷却される。
【0071】
結果、軸封装置11Cは、固定環36及び回転環37の摩耗を防止するとともに、熱による劣化を極力防止することが可能となり、メカニカルシール31の寿命が向上し、ポンプ装置1の信頼性を向上することが可能となる。
【0072】
上述したように第4の実施形態に係る軸封装置11Cを用いたポンプ装置1によれば、付勢部材38Bにより、油室34に貯留された潤滑油Mに、メカニカルシール31の固定環36及び回転環37が浸漬しなくても、これら摺動面の潤滑及び冷却が可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、ノンクロッグのクローズド羽根車であって、上下シュラウド52,53間に1枚の羽根54を設ける構成を説明したがこれに限定されない。例えば、上下シュラウド52,53間に複数の羽根を設けた構成であってもよく、汚水用の羽根車でなくてもよい。即ち、ポンプ装置1は、汚水用に限定されることなく、流体を増圧する構成であればよい。
【0074】
また、上述した例では、軸封装置11,11A,11B,11Cにおいて、付勢部材38,38A,38B,38Cの各構成を説明したがこれに限定されない。例えば、付勢部材は、中空部38fを有する断面方形状の鋼材を曲折することで形成してもよい。
【0075】
また、付勢部材38Bに設けられた羽根38dは、コイリングを行うことで、螺旋状に上方に巻回された平板部38aを有する構成を説明したがこれに限定されない。即ち、連続しない羽根を、ばね部38cに複数固定する構成であってもよい。このような構成とすることで、平板部38aにより上方に潤滑油Mが移送されなくなるが、羽根に回転方向に直交する側面が形成されることから、回転に伴って潤滑油をより飛散させることとなり、固定環36及び回転環37に潤滑油Mを供給することが可能となる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 潤滑油が貯留されたシールケーシング内を上下方向に挿通する回転軸と前記シールケーシングとの間を軸封する軸封装置において、
前記シールケーシングの、挿通された前記回転軸の上方の周囲に固定される固定環と、
前記回転軸に固定され、前記固定環と摺動する回転環と、
前記回転環を前記固定環に付勢するとともに、前記潤滑油を前記固定環及び前記回転環に供給する付勢部材と、
を備えることを特徴とする軸封装置。
[2] 前記付勢部材は、その断面が前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その外径側の端部が前記軸心方向に沿って上方に延設されたコイルばねであることを特徴とする[1]に記載の軸封装置。
[3] 前記付勢部材は、その断面が、前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その内径側及び外径側の端部がそれぞれ軸心方向に沿って上方に延設されたコイルばねであることを特徴とする[1]に記載の軸封装置。
[4] 前記付勢部材は、断面が円状のばね部と、前記ばね部の外周側に固定され、前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その外径側の端部が前記軸心方向に沿って上方に延設された羽根と、を具備するコイルばねであることを特徴とする[1]に記載の軸封装置。
[5] 前記付勢部材は、その両端を連続する中空部を有するコイルばねであって、その上方の端部が、前記固定環及び前記回転環に対向して配置されることを特徴とする[1]に記載の軸封装置。
[6] モータと、
前記モータに接続され、上下方向に延設された回転軸と、
前記回転軸に固定された羽根車、前記羽根車を収納するポンプケーシング、及び、前記ポンプケーシングに設けられ、前期回転軸を挿通させる挿通孔が設けられたポンプと、
潤滑油が貯留されるとともに、前記回転軸がその内部を上下方向に挿通されるシールケーシング、前記シールケーシングの、挿通された前記回転軸の上方の周囲に固定される固定環、前記回転軸に固定され、前記固定環と摺動する回転環、及び、前記回転環を前記固定環に付勢するとともに、前記潤滑油を前記固定環及び前記回転環に供給する付勢部材を具備する軸封装置と、
を備えることを特徴とするポンプ装置。
[7] 前記付勢部材は、その断面が前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その外径側の端部が前記軸心方向に沿って上方に延設されたコイルばねであることを特徴とする[6]に記載のポンプ装置。
[8] 前記付勢部材は、その断面が、前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その内径側及び外径側の端部がそれぞれ軸心方向に沿って上方に延設されたコイルばねであることを特徴とする[6]に記載のポンプ装置。
[9] 前記付勢部材は、断面が円状のばね部と、前記ばね部の外周側に固定され、前記回転軸の軸心方向に直交する方向に延設されるとともに、その外径側の端部が前記軸心方向に沿って上方に延設された羽根と、を具備するコイルばねであることを特徴とする[6]に記載のポンプ装置。
[10] 前記付勢部材は、その両端を連続する中空部を有するコイルばねであって、その上方の端部が、前記固定環及び前記回転環に対向して配置されることを特徴とする[6]に記載のポンプ装置。