特許第6126883号(P6126883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126883フィルタ装置およびこれを用いたロボットの給電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126883
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】フィルタ装置およびこれを用いたロボットの給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20170424BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-64018(P2013-64018)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-192943(P2014-192943A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】長谷生 康之
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 景介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 滋
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/034205(WO,A1)
【文献】 特開2013−046561(JP,A)
【文献】 特開2011−147271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転パルスを出力する第一電源、前記第一電源と異なる周波数の逆転パルスを出力する第二電源に接続されている送電コイルユニットと、
駆動力を発生するステッピングモータと、
前記ステッピングモータに接続され、前記送電コイルユニットと対向し前記送電コイルユニットから磁界共鳴を利用して非接触で電力を受け取る受電コイルユニットと、
前記送電コイルユニットと前記第一電源および前記第二電源との間、ならびに前記受電コイルユニットと前記ステッピングモータとの間にそれぞれ設けられているフィルタ装置とを備え、
前記フィルタ装置は、
電力の供給側に設けられている第一コイルセグメントと、
前記第一コイルセグメントと非接触で予め設定された距離だけ離れた位置に前記第一コイルセグメントに対向して電力を消費する前記ステッピングモータ側に設けられ、前記第一コイルセグメントとの間で磁界共鳴を生じる第二コイルセグメントと、を有し、
前記ステッピングモータを駆動するための前記正転パルスと前記逆転パルスとを分離するロボットの給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置およびこれを用いたロボットの給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などの幅広い設備において、ロボットをはじめとする機器が用いられている。このような機器は、各要素を駆動するための駆動用の電力と、各要素を制御するための制御用の信号とが必要となる。そのため、機器を用いる設備では、電力のための配線と、信号のための配線とが必要となる。一方、このような設備の立ち上げおよび保守の省力化を図るためには、これら配線は可能な限り低減することが求められる。そこで、電力や信号のための配線の無線化(特許文献1参照)、および電力と信号との重畳が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、電力や信号の無線化や重畳は、通信エラーやノイズの放射を招くという問題がある。このような通信エラーやノイズの放射は、機器の停止にともなう稼働率の低下を招く原因となる。そのため、重畳された複数のチャネルの電力や信号を精度よく分離するフィルタ装置が必要となる。一方、チャネル数の増加にともなって信号を分離するためのフィルタの数が増加し、各フィルタの特性をチャネルに応じて調整する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−244533号公報
【特許文献2】特開2007−235798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、フィルタ特性の変更が容易なフィルタ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、電力および信号を重畳し無線化した場合でも、電磁波の放射が無く、制御信号が安定して伝送されるロボットの給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、電力の供給側の第一コイルセグメントと負荷側の第二コイルセグメントとは非接触で対向している。そして、第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの間は、磁界共鳴が生じる。第一コイルセグメントに所定の高周波を印加すると、磁界共鳴によって第二コイルセグメントのインピーダンスが低下し、第一コイルセグメントから第二コイルセグメントへ非接触で高周波の電力が伝送される。磁界共鳴は、一対の第一コイルセグメントおよび第二コイルセグメントの間において、共通した特定の周波数帯域、すなわち磁界共鳴で発生する二つの共振周波数の帯域幅で生じる。そのため、第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの間の磁界共鳴を利用することにより、特定の周波数帯のみの通過が許容される。すなわち、磁界共鳴を利用する第一コイルセグメントおよび第二コイルセグメントは、フィルタとして機能する。また、磁界共鳴を利用することにより、ノイズの原因となる電磁波は放射されない。さらに、第一コイルセグメントから第二コイルセグメントへ伝送される高周波のバンド幅は、対向する第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの距離、および第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの間の共振周波数によって変化する。そのため、これら第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの離間距離を変えるだけで位置が変更されるとともに、第一コイルセグメントおよび第二コイルセグメントの巻き数やコンデンサ容量を変えるだけで磁界共鳴の共振周波数が変更される。これにより、第一コイルセグメントから第二コイルセグメントへ伝送される信号の周波数のバンド幅は容易に変更される。したがって、電磁波の放射を招くことなく、フィルタの特性を容易に調整することができる。すなわち、請求項1記載の発明では、第一コイルセグメントおよび第二コイルセグメントを用いて磁界共鳴を利用している。このように磁界共鳴を利用する場合、各コイルセグメント間の距離、巻数およびコンデンサの容量などの変更は容易である。その結果、磁界共鳴を利用したフィルタは、これら各コイルセグメント間の距離、巻数およびコンデンサの容量などを変更することにより、通過が許容される周波数が容易に変更される。したがって、フィルタの特性を容易に調整することができる。
【0007】
ボットの給電装置は、送電コイルユニットから受電コイルユニットへ磁界共鳴を利用して電力を伝送する。そのため、送電コイルユニットと受電コイルユニットとの間では、ノイズの原因となる電磁波の放射が低減される。そして、この送電コイルユニットおよび受電コイルユニットは、各電力伝送経路に請求項1のフィルタ装置を備えている。そのため、受電コイルユニット側では、複数の周波数からなる高周波がフィルタ装置によって分離される。一方、送電コイルユニット側では、複数の周波数からなる高周波がフィルタ装置によって混信が低減される。したがって、送電コイルユニットと受電コイルユニットとの間を無線化した場合でも、電磁波の放射を低減することができるとともに、制御信号を安定して伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるフィルタ装置を適用した給電装置の電気的な回路を示す概略図
図2】一実施形態によるフィルタ装置を適用した給電装置の送電コイルユニットおよび受電コイルユニットを示す模式図
図3】一実施形態によるフィルタ装置を示す模式図
図4】一実施形態によるフィルタ装置の周波数と通過特性との関係を示す概略図
図5】一実施形態によるフィルタ装置の第一コイルセグメントと第二コイルセグメントとの間隔と、バンド幅との関係を示す概略図
図6】一実施形態によるフィルタ装置において、周波数ごとの特性を示す概略図
図7】一実施形態によるフィルタ装置を適用したロボットの給電装置の電気的な回路を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、フィルタ装置およびこれを用いたロボットの給電装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(フィルタ装置)
まず、図1に基づいてフィルタ装置の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態によるフィルタ装置を適用した給電装置10の電気的な回路図の例を示す。給電装置10は、電源側の送電ユニット11、および負荷側の受電ユニット12を備える。送電ユニット11は、周波数の異なる電源13および電源14に接続している。送電ユニット11は、これら電源13および電源14から電力の供給を受ける。本実施形態の場合、電源13は2MHzの高周波電源であり、電源14は5MHzの高周波電源である。送電ユニット11は、送電コイルユニット15を有している。送電コイルユニット15は、図2に示すように平板状の基板16に平面状のコイル17が設けられている。コイル17は、例えば銅線、銅板あるいは銅のプリント配線などによって平面状に形成されている。
【0011】
送電ユニット11は、図1に示すように電源13および電源14に対応してフィルタ装置18およびフィルタ装置19を有している。すなわち、フィルタ装置18は、電源13と送電コイルユニット15との間に接続されている。また、フィルタ装置19は、電源14と送電コイルユニット15との間に接続されている。送電コイルユニット15とフィルタ装置18およびフィルタ装置19との間には、コンデンサ21が挿入されている。これにより、送電コイルユニット15のコイル17とコンデンサ21とによって、共振回路が構成される。
【0012】
受電ユニット12は、異なる周波数で駆動する負荷23および負荷24に接続している。本実施形態の場合、負荷23は、2MHzの電源13に対応する2MHzで駆動する負荷である。また、負荷24は、5MHzの電源14に対応する5MHzで駆動する負荷である。受電ユニット12は、受電コイルユニット25を有している。受電コイルユニット25は、図2に示すように送電コイルユニット15と同様の平板状の基板26に平面状のコイル27が設けられている。送電ユニット11の送電コイルユニット15と受電ユニット12の受電コイルユニット25とは、互いに非接触で対向している。送電コイルユニット15において基板16に設けられているコイル17と、受電コイルユニット25において基板26に設けられているコイル27とは、正対している。送電ユニット11の電源13および電源14から供給された高周波の電力は、送電コイルユニット15と受電コイルユニット25との間の磁界共鳴によって非接触で受電ユニット12に接続された負荷23および負荷24へ伝送される。
【0013】
受電ユニット12は、図1に示すように負荷23および負荷24に対応してフィルタ装置28およびフィルタ装置29を有している。すなわち、フィルタ装置28は、受電コイルユニット25と負荷23との間に接続されている。また、フィルタ装置29は、受電コイルユニット25と負荷24との間に接続されている。受電コイルユニット25とフィルタ装置28およびフィルタ装置29との間には、コンデンサ31が挿入されている。これにより、受電コイルユニット25のコイル27とコンデンサ31によって、共振回路が構成される。
【0014】
上述のように送電ユニット11の送電コイルユニット15と受電ユニット12の受電コイルユニット25との間は、磁界共鳴によって非接触で電力が伝送される。送電コイルユニット15と受電コイルユニット25とは、図2に示すように数cmから十数cmの隙間を形成して対向している。これにより、送電コイルユニット15に高周波を印加すると、送電コイルユニット15と受電コイルユニット25との間に磁界共鳴が生じ、送電コイルユニット15から受電コイルユニット25へ電力が伝送される。
【0015】
次に、フィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29について説明する。フィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29は、概略的な構成が同一である。ここでは、フィルタ装置18を例に図3に基づいて説明する。フィルタ装置18は、第一コイルセグメント41および第二コイルセグメント42を有している。第一コイルセグメント41は、電力の供給側に接続される。一方、第二コイルセグメント42は、電力の消費側に接続される。
【0016】
第一コイルセグメント41は、平板状の基板43、および平板状のコイル44を有している。同様に、第二コイルセグメント42は、平板状の基板45、および平板状のコイル46を有している。これら第一コイルセグメント41のコイル44および第二コイルセグメント42のコイル46は、上述の送電コイルユニット15および受電コイルユニット25と同様に、銅線、銅板あるいは銅のプリント配線などによって平板状に形成されている。第一コイルセグメント41のコイル44は、図1に示すようにコンデンサ47を挟んで接地されている。これにより、第一コイルセグメント41のコイル44とコンデンサ47とは、共振回路を構成している。また、第二コイルセグメント42のコイル46は、コンデンサ48を挟んで接地されている。これにより、第二コイルセグメント42のコイル46とコンデンサ48とは、共振回路を構成している。
【0017】
第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42とは、図3に示すように数cmから十数cmの隙間を形成して対向している。第一コイルセグメント41において基板43に設けられているコイル44と、第二コイルセグメント42において基板45に設けられているコイル46とは、正対している。第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間には、スペーサ49が設けられている。このスペーサ49は、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の距離を規定する。
【0018】
第一コイルセグメント41には、電源13、14や受電コイルユニット25などの電力の供給側から数MHzから数十MHzの高周波が印加される。そのため、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間には、上述の送電コイルユニット15と受電コイルユニット25との間と同様に磁界共鳴が生じる。磁界共鳴は、第一コイルセグメント41および第二コイルセグメント42の共振特性によって、特定の周波数帯域でのみ生じる。すなわち、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の磁界共鳴を利用すると、フィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29では特定の周波数のみの通過が許容される。また、磁界共鳴を利用することにより、ノイズの原因となる電磁波は放射されない。さらに、第一コイルセグメント41から第二コイルセグメント42へ伝送される高周波のバンド幅および周波数は、対向する第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との距離、および第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の磁界共鳴における共振周波数などによって変化する。そのため、これら第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との距離、および第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の磁界共鳴における共振周波数を変更することにより、第一コイルセグメント41から第二コイルセグメント42へ伝送される信号の周波数、およびそのバンド幅は容易に変更される。第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の共振周波数は、例えば第一コイルセグメント41のコイル44または第二コイルセグメント42のコイル46の巻数、コンデンサ47またはコンデンサ48の容量などを変更することにより、容易に変化させることができる。
【0019】
図1に示す給電装置10の場合、フィルタ装置18の第一コイルセグメント41は電力の供給側である電源13に接続され、フィルタ装置19の第一コイルセグメント41は電源14に接続される。また、フィルタ装置18およびフィルタ装置19の場合、電力の消費側は、送電コイルユニット15のコイル17である。そのため、フィルタ装置18の第二コイルセグメント42およびフィルタ装置19の第二コイルセグメント42は、いずれも送電コイルユニット15のコイル17に接続される。
【0020】
一方、フィルタ装置28の第一コイルセグメント41およびフィルタ装置29の第一コイルセグメント41は、いずれも電力の供給側である受電コイルユニット25のコイル27に接続される。また、フィルタ装置28の第二コイルセグメント42は電力の消費側である負荷23に接続され、フィルタ装置29の第二コイルセグメント42は負荷24に接続される。
【0021】
次に、上記のフィルタ装置18、19、28、29の特性について説明する。
まず、5MHzの電源14に接続されているフィルタ装置19を例に説明する。対向する第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の距離を変更することにより、図4および図5に示すように磁界共鳴によって伝送される高周波の通過特性およびバンド幅は変化する。図4は、第一コイルセグメント1と第二コイルセグメント42との間の距離と通過特性との関係を示している。図5は、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の距離と、バンド幅との関係を示している。これらの図4および図5から、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の距離が小さくなるほど、磁界共鳴によって通過する高周波の周波数帯域は急峻になる傾向にあることが分かる。
【0022】
これらのフィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29を用いた場合、図1に示すように5MHzおよび2MHzの各周波数の電力が送電ユニット11から受電ユニット12へ伝送される。すなわち、フィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29を用いることにより、送電ユニット11と受電ユニット12の間では5MHzの高周波と2MHzの高周波とが重畳して伝送される。
【0023】
送電ユニット11の場合、電源13と送電コイルユニット15の間にフィルタ装置18、電源14と送電コイルユニット15との間にフィルタ装置19が挿入される。フィルタ装置18は、2MHzの高周波の通過を許容するものの、5MHzの高周波の通過を阻止する。そのため、電源14からの5MHzの高周波は、フィルタ装置18によって2MHzの電源13側への伝搬が阻止される。同様に、フィルタ装置19は、5MHzの高周波の通過を許容するものの、2MHzの高周波の通過を阻止する。そのため、電源13からの2MHzの高周波は、フィルタ装置19によって5MHzの電源14側への伝搬が阻止される。したがって、送電ユニット11側では、電源13および電源14から異なる周波数の高周波を重畳する場合でも、混信を回避することができる。
【0024】
一方、受電ユニット12の場合、受電コイルユニット25と負荷23との間にフィルタ装置28、受電コイルユニット25と負荷24との間にフィルタ装置29が挿入される。フィルタ装置28は、2MHzの高周波の通過を許容するものの、5MHzの高周波の通過を阻止する。そのため、受電コイルユニット25で受電した高周波に重畳して含まれる5MHzの高周波は、フィルタ装置28によって負荷23側への伝搬が阻止される。同様に、フィルタ装置29は、5MHzの高周波の通過を許容するものの、2MHzの高周波の通過を阻止する。そのため、受電コイルユニット25で受電した高周波に重畳して含まれる2MHzの高周波は、フィルタ装置29によって負荷24側への伝搬が阻止される。したがって、受電ユニット12側では、重畳された異なる周波数の高周波をフィルタ装置28およびフィルタ装置29によって分離することができる。
【0025】
以上説明した給電装置10の一実施形態では、電力の供給側の第一コイルセグメント41と電力の消費側の第二コイルセグメント42とは非接触で対向している。そして、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間は、磁界共鳴が生じる。第一コイルセグメント41に所定の高周波を印加すると、磁界共鳴によって第二コイルセグメント42のインピーダンスが低下し、第一コイルセグメント41から第二コイルセグメント42へ非接触で高周波の電力が伝送される。磁界共鳴は、一対の第一コイルセグメント41および第二コイルセグメント42の間において特定の周波数で生じる。すなわち、本実施形態の場合、フィルタ装置18およびフィルタ装置28では2MHzで磁界共鳴が生じ、フィルタ装置19およびフィルタ装置29では5MHzで磁界共鳴が生じる。そのため、第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42は、相互間の磁界共鳴を利用することにより、特定の周波数のみの通過を許容するフィルタとして機能する。また、磁界共鳴を利用することにより、ノイズの原因となる電磁波は放射されない。さらに、第一コイルセグメント41から第二コイルセグメント42へ伝送される高周波の周波数やバンド幅は、対向する第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との距離、および第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の共振周波数によって変化する。そのため、これら第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との距離、および第一コイルセグメント41と第二コイルセグメント42との間の磁界共鳴における共振周波数を変更することにより、第一コイルセグメント41から第二コイルセグメント42へ伝送される信号の周波数およびそのバンド幅は容易に変更される。したがって、電磁波の放射を招くことなく、フィルタの特性を容易に調整することができる。
【0026】
(ロボットの給電装置への応用例)
次に、上述の給電装置10をロボット50へ適用する例について図7に基づいて説明する。
本実施形態の場合、ロボット50は、負荷としてステッピングモータ51を備える。給電装置10は、このステッピングモータ51の制御信号としての正転パルスおよび逆転パルスの変調に用いられる。2MHzの電源13からは、正転のための正転パルスが変調されて出力される。また、5MHzの電源14からは、逆転のための逆転パルスが変調されて出力される。ステッピングモータ51は、負荷23および負荷24に相当する。
【0027】
ロボット50へ適用する場合でも、給電装置10の電気的な構成は、図1と実質的に同一である。受電ユニット12では、フィルタ装置28およびフィルタ装置29のステッピングモータ51側にそれぞれ整流回路52および整流回路53を設けてもよい。このような給電装置10を用いたロボット50の場合、受電ユニット12のフィルタ装置28側から正転パルスが取り出される。また、受電ユニット12のフィルタ装置29側から逆転パルスが取り出される。
【0028】
このようにロボット50の給電装置10に適用する場合、上述のようなフィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29を備えている。ロボット50の給電装置10は、送電ユニット11から受電ユニット12へ磁界共鳴を利用して電力を伝送する。そのため、送電ユニット11と受電ユニット12との間では、ノイズの原因となる電磁波の放射が低減される。そして、この送電ユニット11および受電ユニット12は、各電力伝送経路にそれぞれフィルタ装置18、フィルタ装置19、フィルタ装置28およびフィルタ装置29を備えている。そのため、受電ユニット12側では、複数の周波数からなる制御信号がフィルタ装置28およびフィルタ装置29によって分離される。一方、送電ユニット11側では、複数の周波数からなる制御信号はフィルタ装置18およびフィルタ装置19によって混信が低減される。したがって、送電ユニット11と受電ユニット12との間を無線化し、かつ周波数の異なる信号を重畳した場合でも、電磁波の放射を低減することができるとともに、制御信号を安定して伝送することができる。
【0029】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
例えば、ロボット50は、例えばレール状の固定された送電ユニット11に沿って受電ユニット12を備える可動部が移動する直動ロボットとして構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
図面中、10は給電装置、13、14は電源、15は送電コイルユニット、18、19、28、29はフィルタ装置、23、24は負荷、25は受電コイルユニット、41は第一コイルセグメント、42は第二コイルセグメントを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7