(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126893
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】シュレッダーダストの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
B02C 4/28 20060101AFI20170424BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20170424BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20170424BHJP
B07B 1/22 20060101ALI20170424BHJP
B07B 1/28 20060101ALI20170424BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20170424BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20170424BHJP
B03B 9/06 20060101ALI20170424BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
B02C4/28 AZAB
B09B3/00 Z
B09B5/00 Z
B07B1/22 Z
B07B1/28 Z
B03B5/28 Z
B03B7/00
B03B9/06
C10L5/48
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-82718(P2013-82718)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-205091(P2014-205091A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
【審査官】
小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−013698(JP,A)
【文献】
特表2002−537992(JP,A)
【文献】
特開2011−207681(JP,A)
【文献】
特開2012−153889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C
B09B
B27B 17/
C10L 5/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュレッダーダストからセメントキルンバーナ用燃料を製造する装置であって、水分含有率が15〜50重量%のシュレッダーダストを押出破砕する押出破砕手段を備えることを特徴とするシュレッダーダストの処理装置。
【請求項2】
前記押出破砕手段は、押出成形機であることを特徴とする請求項1に記載のシュレッダーダストの処理装置。
【請求項3】
前記押出成形機のダイスの厚みが、前記押出破砕で生じた押出破砕物がダイスを挿通する挿通孔の孔径に対して、1.5倍以上12倍以下であることを特徴とする請求項2に記載のシュレッダーダストの処理装置。
【請求項4】
前記押出破砕手段の上流側に、衝撃刃でシュレッダーダストを打撃破砕する打撃破砕手段と、
該打撃破砕されたシュレッダーダストを粒径により篩で篩分し、該篩を通過した所定の粒径以下のシュレッダーダストを前記押出破砕手段に供給する篩分手段とを備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のシュレッダーダストの処理装置。
【請求項5】
前記篩分手段と前記押出破砕手段との間に、前記所定の粒径以下のシュレッダーダストを比重により分離し、該分離により浮上したシュレッダーダストを前記押出破砕手段に供給する湿式分級手段を備えることを特徴とする請求項4に記載のシュレッダーダストの処理装置。
【請求項6】
前記押出破砕手段の下流側に、前記押出破砕手段から排出されたシュレッダーダストを解砕する解砕手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のシュレッダーダストの処理装置。
【請求項7】
シュレッダーダストを打撃破砕し、
該打撃破砕したシュレッダーダストを篩分し、
該篩分後のシュレッダーダストに水を添加して押出破砕し、
該押出破砕したシュレッダーダストを解砕し、
該解砕したシュレッダーダストをセメントキルンバーナ用燃料とすることを特徴とする
シュレッダーダストの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用シュレッダーで廃家電や廃自動車を破砕した際に発生するシュレッダーダスト(以下「SR」という。)をセメントキルンバーナ用燃料等に有効利用するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SRとは、工業用シュレッダーで廃家電や廃自動車を破砕し、金属等を回収した後に、産業廃棄物として捨てられる破片の混合物をいう。その組成はシュレッダー工程の技術・施設や廃棄物の事前選別の状況によって変わるため、必ずしも一定でないが、主構成相は樹脂、発泡ウレタン、繊維、ゴム等に若干の金属やガラスである。管理型処分場で処分する必要のあるSRにはリサイクル活用が求められ、主にサーマルとケミカルの両分野でリサイクル技術の開発が進められており、セメント産業においても燃料代替物としての活用が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、最大径100mm程度の大きな破砕片を含むSRは、セメントキルンバーナでの燃焼が困難であるため、セメントキルン窯尻部に直接投入するのが好適である旨が記載されている。
【0004】
しかし、セメント産業におけるSRのリサイクル処理を推進するためには、特許文献1に記載のようにSRをセメントキルン窯尻部に直接投入するだけでなく、キルンバーナ用燃料としての活用を推進する必要がある。
【0005】
SRをキルンバーナ用燃料とするためには、前処理として破砕によるSRの小径化が必須となる。そこで、特許文献2では、トロンメル、1次破砕機、異物除去装置、2次破砕機等を用いてSRの破砕処理を多段階で行い、その最終破砕段階である2次破砕機による微破砕の前に、微破砕設備である2次破砕機の保守のために金属類等の異物を除去する工程が導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−242146号公報
【特許文献2】特開2012−153889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の可燃性廃棄物の燃料化方法において、金属類等の異物除去工程でも除去しきれない異物が残るため、微破砕設備の刃物の摩耗、摩滅、損傷が発生し、リサイクル処理を安定して行う上で課題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、微破砕設備の刃物の摩耗等を引き起こすことなく、低コストで安定してSRをセメントキルンバーナ用燃料として有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
SRからセメントキルンバーナ用燃料を製造する装置であって、水分含有率が15〜50重量%のSRを押出破砕する押出破砕手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、微破砕に押出破砕手段を用いるため、微破砕工程での破砕機の刃物のメンテナンスが不要になり、SRの前処理工程の効率化と、前処理設備に関するメンテナンス費用の削減が可能となる。また、水を加えることで、押出破砕手段で燃焼性の悪いペレットが形成されるのを防止することができる。
【0011】
前記押出破砕手段を押出成形機とすることができ、該押出成形機のダイスの厚みを前記押出破砕で生じた押出破砕物がダイスを挿通する挿通孔の孔径に対して、1.5倍以上12倍以下とすることができる。本発明での押出成形機の使用目的は微破砕であり、押出破砕物が燃焼性の悪いペレット状に成形されるのは好ましくないため、ダイスの厚みを薄くすることで、挿通孔を挿通するSRに圧力が加わる時間を短くし、ペレットの形成を防止することができる。
【0012】
また、前記押出破砕手段の上流側に、衝撃刃でSRを打撃破砕する打撃破砕手段と、該打撃破砕されたSRを粒径により篩で篩分し、該篩を通過した所定の粒径以下のSRを前記押出破砕手段に供給する篩分手段とを備えることができる。これにより、SRの解砕及びSR中の粗大物や硬質物の粗砕が可能となる。
【0013】
前記篩分手段と前記押出破砕手段との間に、前記所定の粒径以下のSRを比重により分離し、該分離により浮上したSRを前記押出破砕手段に供給する湿式分級手段を備えることができる。これにより、前記押出破砕手段に水を供給しなくてもSRが水分を含有することとなり、押出破砕手段でペレットが生じるのを防ぐことができる。
【0014】
前記押出破砕手段の下流側に、前記押出破砕手段から排出されたSRを解砕する解砕手段を備えることができる。これにより、前記押出破砕手段でペレットが形成されたとしても再度解砕してフラフ状とすることができる。
【0015】
また、本発明は、SRの処理方法であって、SRを打撃破砕し、該打撃破砕したSRを篩分し、該篩分後のSRに水を添加して押出破砕し、該押出破砕したSRを解砕し、該解砕したSRをセメントキルンバーナ用燃料とすることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、SRをセメントキルンバーナ用に燃料化するにあたり、微破砕に押出破砕手段を用いることで、微破砕工程での破砕機の刃物のメンテナンスが不要になり、SRの前処理工程の効率化と、前処理設備に関するメンテナンス費用の削減が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のSRの処理装置及び処理方法によれば、微破砕設備の刃物の摩耗等を引き起こすことなく、低コストで安定してSRをセメントキルンバーナ用燃料として有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るSRの処理装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るSRの処理装置の一実施の形態を示し、このSRの処理装置1は、SRを受け入れるホッパ等を含む受入装置2と、受入装置2から供給されたSRを破砕するインパクトクラッシャ3と、インパクトクラッシャ3による破砕物Cから粗大物を除去するトロンメル4と、トロンメル4の篩を通過した篩通過分Sを比重により湿式分級する水槽5と、水槽5における湿式分級で浮上した軽量物Lを押出破砕する押出成形機6と、押出成形機6から排出された破砕物Pを解砕するロールクラッシャ7と、ロールクラッシャ7から排出された解砕物Q中の異物としての金属Mを除去する磁選機8とを備える。
【0021】
インパクトクラッシャ3は、打撃破砕手段として用いられ、衝撃刃によって受入装置2で受け入れたSR中の粗大物や硬質物の粗砕を行うと共に、SRの解砕を行うために備えられる。この粗砕及び解砕は、異物を含まない燃焼性のよい燃料を得るために行われる。また、インパクトクラッシャ3は、トロンメル4から戻された粒径が100mm以上の篩上残分Rを再度粗砕及び解砕する。インパクトクラッシャ3に代えて、ハンマークラッシャ等を用いることもできる。
【0022】
篩分手段であるトロンメル4は、100mmのスクリーンを備え、SRを粒径が100mm以下の篩通過分Sと篩上残分Rに分離するために備えられる。この篩分は、異物を含まない燃焼性のよい燃料を得るために行われる。トロンメルの代わりに傾斜振動式セパレータ等を用いることもできる。
【0023】
湿式分級手段である水槽5は水ひを行い、トロンメル4から供給された篩通過分Sを比重により重量物Hと軽量物Lに分離するために備えられる。
【0024】
押出破砕手段である押出成形機6は、水槽5から分離された軽量物Lを押出破砕するために備えられる。押出成形機はフラットダイス方式、リングダイス方式、スクリュー方式等の、RDF等の成形に用いられる一般的な装置を使用でき、その中でも石臼方式による材料の破砕機能を有するフラットダイス方式が好ましい。
【0025】
ここで、本発明では押出成形機の使用目的は微破砕であり、後工程において燃料代替物Fがペレット状に成形されるのは好ましくないため、ダイスの厚みを薄くしたり、ダイス裏面に座ぐり加工又はテーパ加工をすることにより軽量物Lに圧力が加わる時間を短くし、ペレットが形成されないようにする。
【0026】
ダイスの好ましい厚みは、軽量物Lがダイスを挿通する挿通孔の孔径に対して、1.5倍〜12倍であり、好ましくは3.5倍〜7倍である。また、押出時の摩擦熱による温度上昇を避けるため、ダイスを冷却する機構、例えば空冷機構を付加することができる。軽量物Lを押出成形機6の挿通孔に圧入し、その際の圧壊や引きちぎり作用によって軽量物Lを破砕する。この破砕によって、セメントキルンバーナ用燃料として最適な大きさとなるように、押出成形機の挿通孔の孔径は10〜40mm、より好ましくは15〜30mmとする。従って、ダイスの厚さは、15〜480mm、より好ましくは52.5〜280mmである。ローラ及びダイスは、耐摩耗性の高い鋼材で形成するのが好ましい。具体的にはマルテンサイトやベーナイト等が好ましく、耐摩耗性の観点からは焼入れしたものがより好ましい。
【0027】
解砕手段であるロールクラッシャ7は、押出成形機6から排出された破砕物Pを解砕するために備えられる。押出成形機6では低強度のペレットが若干生成するため、それを破砕してフラフ状にする必要がある。押出成形機6によって、燃料代替物Fはフラフ又は低強度のペレットとなっている。ペレット状のものが存在する場合には、ロールクラッシャ7で破砕物Pの全量をフラフ状にする。解砕機として、ロールクラッシャの他に、ハードクラッシャ、インパクトクラッシャ等を用いることもできる。
【0028】
磁選機8は、ロールクラッシャ7から排出された解砕物Q中の金属Mを取り除くために備えられる。
【0029】
次に、上記構成を有するSRの処理装置1の動作について、
図1を参照しながら説明する。
【0030】
SRを受入装置2に受け入れた後、インパクトクラッシャ3に供給する。インパクトクラッシャ3において、SR中の粗大物や硬質物の粗砕を行うと共にSRの解砕を行う。
【0031】
インパクトクラッシャ3から排出された破砕物Cは、トロンメル4に供給され、破砕物Cの粒径によって篩上残分Rと篩通過分Sに分離される。篩上残分Rはセメントキルンの窯尻に投入されセメント製造用燃料として用いられるか、又は、インパクトクラッシャ3に戻され、再度粗砕及び解砕される。篩通過分Sは水槽5に供給される。
【0032】
トロンメル4で分離された篩通過分Sは、水槽5に供給され、水ひによって重量物Hと軽量物Lとに分離される。重量物Hは、主に樹脂類、金属、土砂類、ガラス類であり、軽量物Lはプラスチック等である。水槽5で沈降する重量物Hは、セメントキルンの窯尻に投入される。水槽5で浮上する軽量物Lは、押出成形機6に投入される。尚、軽量物Lの水分含有率は、10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。
【0033】
押出成形機6に投入された軽量物Lは押出破砕される。押出成形機6における軽量物Lの温度は、軽量物L間の融着を避けるために150℃以下にする。また、水槽5による湿式分級を行わなかった場合や、湿式分級後に乾燥等で軽量物Lの水分含有率が減少した場合には、押出成形機6での押出時の摩擦熱による温度上昇を避けるため押出成形機6への搬送途中又は押出成形機6において水Wを添加して加水処理を行う。加水処理はミスト噴霧が好ましい。押出成形機6から排出される破砕物Pは、水分が搾り取られ水分含有率が10%以下となる。押出成形機6に供給した軽量物Lから搾り取った水分は水槽5に戻される。
【0034】
押出成形機6から排出された破砕物Pは、ロールクラッシャ7へ供給され、低強度のペレット状となっている破砕物Pをフラフ状にする。また、ロールクラッシャ7において、押出成形機6から供給された破砕物Pの水分含有率をセメントキルンバーナによる吹き込みに適した5%程度に調整する。
【0035】
ロールクラッシャ7から排出された解砕物Qには金属Mが含まれている場合があるため、必要に応じて磁選機8で金属Mを除去する。金属Mが除去された燃料代替物Fは、セメントキルン窯前のセメントキルンバーナに0.4〜3.0Nm
3/kgの空気量で吹き込む。尚、金属Mと燃料代替物Fの分離が生じていれば、ロールクラッシャ7から排出された解砕物Qを直接セメントキルンバーナ用燃料とすることも可能である。
【0036】
以上のように本実施の形態では、微破砕には押出破砕手段を用いるため、微破砕工程での破砕機の刃物のメンテナンスが不要になり、SRの前処理工程の効率化と、前処理設備に関するメンテナンス費用の削減が可能となる。
1 SRの処理装置
2 受入装置
3 インパクトクラッシャ
4 トロンメル
5 水槽
6 押出成形機
7 ロールクラッシャ
8 磁選機
C 破砕物
F 燃料代替物
H 重量物
L 軽量物
M 金属
P 破砕物
Q 解砕物
R 篩上残分
S 篩通過分
W 水