特許第6126896号(P6126896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126896
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20170424BHJP
   F04D 29/32 20060101ALI20170424BHJP
   F24F 1/38 20110101ALI20170424BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20170424BHJP
   H02K 11/20 20160101ALI20170424BHJP
【FI】
   F04D27/00 H
   F04D29/32 F
   F24F1/38
   F25B49/02 570Z
   H02K11/20
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-90864(P2013-90864)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-214642(P2014-214642A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 建吾
(72)【発明者】
【氏名】笠原 励
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−046424(JP,A)
【文献】 特開2012−041878(JP,A)
【文献】 特開2001−016760(JP,A)
【文献】 特開2011−176922(JP,A)
【文献】 特開2008−029116(JP,A)
【文献】 特開2007−166695(JP,A)
【文献】 特開昭62−244292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
F04D 29/36
F04D 29/32
F24F 1/38
F25B 49/02
H02K 11/20
H02P 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と室内機とが冷媒配管により接続して構成され、
前記室外機は、
室外側熱交換器に送風するためのプロペラファンと、
前記プロペラファンを駆動するファンモータと、
前記ファンモータからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記ファンモータの磁極位置を検出する位相検出部と、
前記電流検出部により検出した出力電流と前記位相検出部により検出した機械角位相を用いてトルク脈動成分を抽出する脈動成分抽出部と、を備えた空気調和装置において、
前記室外機は、
前記プロペラファンの異常を検知する異常判定部を備え、
前記異常判定部は、前記脈動成分抽出部より抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を超えた場合に前記プロペラファンの異常を検知したとして前記ファンモータを停止することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記異常判定部は、前記脈動成分抽出部より抽出したトルク脈動成分が前記しきい値を所定時間内に所定回数を超えた場合に前記プロペラファンの異常を検出したとして前記ファンモータを停止することを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空気調和装置において、
前記異常判定部は、前記脈動成分抽出部より抽出したトルク脈動成分が前記しきい値を所定サンプリング回数の内に、所定回数を超えた場合に前記プロペラファンの異常を検出したとして前記ファンモータを停止することを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和装置についてプロペラファンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平11−248300号公報(特許文献1)がある。この公報には、「空気調和装置に発生する故障部位のうち、室外機の送風機の停止による異常を検知できるシステムを得て、効率的なサービスを行えるように図る。」と示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−248300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には「空気調和装置に発生する故障部位のうち、室外機の送風機の停止による異常を検知できるシステムを得て、効率的なサービスを行えるように図る。」と示されている。
【0005】
しかし、前記特許文献1においては、運転中にプロペラファンに異常が生じ停止した場合、これの検知は可能であるが、運転開始前、運転中にプロペラファンに破損が生じた状態で運転を続けた場合に、これを検知することは出来ない。すると、破損したプロペラファンは回転軸に対し重量のバランスが異なるため、重心が回転軸から大きくずれファンモータの固定部に応力がかかり、振動する。この状態で継続的に運転を行った場合、その他の部品と接触する可能性が考えられ、部品の破損を招き信頼性を損なう虞が生じる。
【0006】
そこで本発明は、運転開始前にプロペラファンの破損が生じた状態で運転を開始した場合に、これを異常として検知できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、
「室外機と室内機とが冷媒配管により接続して構成され、
前記室外機は、
室外側熱交換器に送風するためのプロペラファンと、
前記プロペラファンを駆動するファンモータと、
前記ファンモータからの出力電流を検出する電流検出部と、
前記ファンモータの磁極位置を検出する位相検出部と、
前記電流検出部により検出した出力電流と前記位相検出部により検出した機械角位相を用いてトルク脈動成分を抽出する脈動成分抽出部と、を備えた空気調和装置において、
前記室外機は、
前記プロペラファンの異常を検知する異常判定部を備え、
前記異常判定部は、前記脈動成分抽出部より抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を超えた場合に前記プロペラファンの異常を検知したとして前記ファンモータを停止すること」を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転開始前にプロペラファンの破損が生じた状態で運転を開始した場合に、これを異常として検知できる空気調和装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のプロペラファン異常検知を備えた室外機の構成図の例である。
図2】脈動成分抽出部のブロック図の例である。
図3】脈動成分波形の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、空気調和装置の室外機内のプロペラファンが運転開始前に破損していた場合に、これを異常として検知し、ファンモータを停止させ室外機全体の破損を回避する事に関する。以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
本実施例では、空気調和装置の室外機1について説明する。なお、図示はしていないが、本実施例の空気調和装置は室外機1と室内機とが冷媒配管により接続されて冷凍サイクルを構成し、空気調和を行うものである。
【0012】
図1は、本実施例の室外機1の構成図の例である。この室外機1は図示しない室外側熱交換器に送風するプロペラファン2と、プロペラファン2を回転駆動するファンモータ3と、を備え、さらにファンモータ3を所望の回転数となるように回転自在に駆動する制御部を備えている。制御部はさらにファンモータ3からの出力電流を検出する電流検出部4と、ファンモータ3の磁極位置を検出する位相検出部5と、電流検出部4により検出した出力電流と、位相検出部5により検出した機械角位相を用いてトルク脈動成分を抽出する脈動成分抽出部6と、プロペラファン2の異常を検知する異常判定部7を備える。
【0013】
上記した特許文献1には「空気調和装置に発生する故障部位のうち、室外機の送風機の停止による異常を検知できるシステムを得て、効率的なサービスを行えるように図る。」と示されている。しかし、特許文献1においては、運転中にプロペラファンに異常が生じ停止した場合、これの検知は可能であるが、運転開始前、運転中にプロペラファンに破損が生じた状態で運転を続けた場合に、これを検知することは出来ない。すると、破損したプロペラファンは回転軸に対し重量のバランスが異なるため、重心が回転軸から大きくずれファンモータの固定部に応力がかかり、振動する。これにより、その他の部品と接触する可能性が考えられ、部品の破損を招き信頼性を損なう虞が生じる。
【0014】
そこで、以下の実施例では、運転開始前にプロペラファンの破損が生じた状態で運転開始した場合に、これを異常として検知できる空気調和装置について説明する。
【0015】
本実施例の空気調和装置において異常判定部7は運転開始後に脈動成分抽出部6より抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を超えた場合にプロペラファン2の異常を検出したとしてファンモータ3を停止し、室外機1全体の破損を避ける。
【0016】
図2は、本実施例の脈動成分抽出部6の構成図の例である。
脈動成分抽出部6の入力値となる、q軸電流フィードバック値はファンモータからの三相の出力電流(Iu、Iv、Iw)を検出し、αβ変換、dq変換の順に変換した結果を1次遅れフィルタ処理することで算出することができる。αβ変換、dq変換は次式により算出できる。
【0017】
なお、モータ電流(Iu、Iv、Iw)の検出方法には、モータ電流の出力部に抵抗値の小さい抵抗を接続し、その抵抗にかかる電圧からの検出や、電流センサによる検出等様々な方法がある。本実施例では電流検出部4は図1下図に示すようにインバータの直流部分に流れる電流をシャント抵抗の両端に発生する電圧から測定し、制御部内の図示しない電流演算部によって、モータ電流(Iu、Iv、Iw)を導出するものである。
dq変換時のθdcはd軸位相であり、ファンモータの磁極位置を示す。脈動成分抽出部6の二つ目の入力値である機械角位相θrはθdcをから算出する。次式に示す。

Δθr=Δθdc/極対数

θrはΔθrを積算し算出する。上記の2つの入力q軸電流フィードバック値、機械角位相θrから脈動成分を抽出する。機械角位相θrからsin、cos演算8によりsinθr、cosθrを算出し、q軸電流フィードバック値とかけ合わせ、1次遅れフィルタ処理9を行うことで、高周波成分を除去する。ここで、実施する1次遅れフィルタ処理の時定数の設定値の設定には、実機による試験を基に、トルク脈動の周期を抽出出来る様にシミュレーションにより設定する。すなわち、フィルタ時定数の設定には脈動成分を抽出するためにフィルタ時定数を脈動周期より大きくする必要があるため、トルク脈動が発生するプロペラファンの回転周期に対しそれよりも大きい時定数を設定する。1次遅れフィルタ処理9後、再度sinθr、cosθrをかけ、足し合わせ、調整ゲインKにより脈動成分の調整を行うことで、機械角位相θrの周期で脈動する成分のみを抽出することが出来る。サンプリング周期、フィルタ時定数の設定値の一例を図2に示す。
【0018】
ここで本実施例の異常判定部7は、脈動成分抽出部6より抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を超えた場合にプロペラファン2の異常を検知したとしてファンモータ3を停止するものである。この場合、瞬時停電によりモータ電流の波形が乱れる等の一時的な状態に対しプロペラファン2の異常であると誤検知する虞がある。そこで本実施例では、設定するしきい値は、実機による試験を基に、脈動する成分の振幅から設定値を決める。この設定値については、正常に動作している場合の電流値の最大値、最小値の測定からトルク脈動成分を算出し、正常動作時のトルク脈動成分の最大値より十分に大きくプロペラファン破損時トルク脈動成分の最大値より小さい値に設定することで誤検知を抑制しつつ、プロペラファン2の異常を検知することが可能となる。
【0019】
誤検知を避けるために、図3は脈動成分抽出部6にて抽出した成分波形を基に異常判定部7の検知条件の例を示す。横軸を時間、縦軸をトルク脈動の抽出成分とする。図3に示す異常判定10は、異常判定部7において脈動成分抽出部6により抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を所定時間内に所定回数を超えた場合にプロペラファン2の異常を検出したとしてファンモータ3を停止する。この場合、図3に示すように一定期間tn-1〜tnの間にトルク脈動の抽出成分がしきい値を所定回数超えた場合に、異常な状態が継続的に続いていると判定する。
【0020】
以上に説明した方法により、破損したプロペラファン2が回転軸に対し重量のバランスが異なる状態で運転することで重心が回転軸から大きくずれ、ファンモータ3の固定部に応力がかかって振動する場合でも他の部品に接触する虞を避けることができ、信頼性を向上することが可能となる。
【0021】
また、誤検知を避けるための別の方法として、異常判定11があり、この場合、異常判定部7において、脈動成分抽出部6より抽出したトルク脈動成分が予め設定したしきい値を所定サンプリング回数の内に、所定回数を超えた場合にプロペラファン2の異常を検出したとして前記ファンモータ3を停止する。この場合、サンプリング回数mに対し、所定回数を超えた場合に、異常な状態が継続的に続いていると判定する。
【0022】
なお、トルク脈動の周期は破損したプロペラファン2の回転周期となるため、トルク脈動の周期が定周期となり、その1周期で1サンプリングする。異常判定部7は、脈動成分抽出部6より抽出したトルク脈動成分が設定しきい値を所定のサンプリング回数mの内に、所定回数を超えた場合にプロペラファン2の異常を検出したとしてファンモータ3を停止する。
【0023】
また、ファンモータ3の出力電流以外に、ファンモータ3の軸誤差の脈動成分の抽出による異常検出も可能である。脈動成分抽出方法と異常判定条件はファンモータ3の出力電流による異常検出と同様となる。
【符号の説明】
【0024】
1 室外機
2 プロペラファン
3 ファンモータ
4 電流検出部
5 位相検出部
6 脈動成分抽出部
7 異常判定部
8 sin、cos演算
9 1次遅れフィルタ
10、11 異常判定
11 プロペラファン
12 ファンモータ
IqFb q軸電流フィードバック値
θr 機械角位相
s サンプリング周期
a フィルタ時定数
K ゲイン
m サンプリング回数
図1
図2
図3