(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本実施の形態の構成>
次に、本発明の実施の形態に係るシフト装置としてのシフトレバー装置10を
図1から
図10に基づいて説明する。なお、
図1から
図10では、矢印FRは本シフトレバー装置10の前方を示し、矢印LFは本シフトレバー装置10の左方を示し、矢印UPは本シフトレバー装置10の上方を示す。但し、シフトレバー装置10の前後方向、左右方向、上下方向は、本シフトレバー装置10が搭載される車両の前後方向、左右方向、上下方向とそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、シフトレバー装置10は、車両のフロアや、インスツルメントパネル等に設けられる。
【0020】
図1及び
図2に示されるように、シフトレバー装置10は、支持部材としてのシフトレバープレート12を備えている。シフトレバープレート12は、直方体の箱形状に形成されており、シフトレバープレート12の上端は開口している。シフトレバープレート12の左壁14は、下側が上側よりも厚肉に形成されており、左壁14の厚肉部分の右側の面は、左壁14の薄肉部分の右側の面よりもシフトレバープレート12の内側に位置している。左壁14には、円形の支持孔16が形成されており、支持孔16は、左壁14の厚肉部分と薄肉部分とを跨いだ状態で左壁14を貫通している。支持孔16において、左壁14の薄肉部分よりも右側の部分は、載置部18とされている。
【0021】
一方、シフトレバープレート12の右壁20は、下側が上側よりも厚肉に形成されており、右壁20の厚肉部分の左側の面は、右壁20の薄肉部分の左側の面よりもシフトレバープレート12の内側に位置している。
図4に示されるように、右壁20の厚肉部分の上端部には、凹部22が形成されている。凹部22は、周面が支持孔16と同軸に湾曲していると共に、右壁20の厚肉部分における左側の面で開口している。
【0022】
また、
図1及び
図2に示されるように、シフトレバープレート12の上端には、スライド手段としてのレバーガイドハウジング32が取付けられている。レバーガイドハウジング32は、ゲートプレート34を備えている。ゲートプレート34は、矩形の筒状又は枠状に形成されており、ゲートプレート34の内部は、上下方向に開口している。ゲートプレート34の内側には、クッション36が固定されている。クッション36には、シフト孔38が貫通形成されており、シフト孔38は上下方向に開口している。シフト孔38の開口形状は、後述するレバー本体74の操作パターン(
図6参照)に対応して鉤状に屈曲している。
【0023】
一方、
図1に示されるように、ゲートプレート34は、保持片42を備えており、
図3に示されるように、保持片42は、ゲートプレート34の左壁44の下端から下方へ延出されている。保持片42の下端部には、凹部46が形成されており、凹部46は、下方へ開口すると共に、周面が支持孔16に対して同軸に湾曲している。
【0024】
また、ゲートプレート34は、スライド部としての押圧片52を備えており、押圧片52は、ゲートプレート34の右壁54の下端から下方へ延出されている。
図4に示されるように、押圧片52は、保持部56を備えており、保持部56の下端部には、凹部58が形成されている。凹部58は、下方へ開口した湾曲面とされており、凹部58の曲率半径は、後述する軸部154の半径寸法よりも大きく設定されている。
【0025】
保持部56の下端部からは、制限部60が下方へ延出されている。制限部60は、保持部56よりも薄肉とされており、制限部60の左側の面は、保持部56の左側の面よりも右側に位置している。制限部60の下端部からは、押圧部62が下方へ延出されている。押圧部62は、下方へ向けて漸次薄肉となっており、押圧部62の左側の面は、下方へ向けて漸次右側へ変位する傾斜面とされている。
【0026】
一方、
図1及び
図2に示されるように、シフトレバー装置10は、操作部材としてのシフトレバーアッセンブリ72を備えている。シフトレバーアッセンブリ72は、レバー本体74を備えている。レバー本体74の前面及び後面の各々には、軸部76が同軸上に形成されている。但し、レバー本体74の前面に形成された軸部76については図示を省略する。また、レバー本体74の上端部には、シャフト78の下端側が挿込まれて固定されており、シャフト78の上端部には、ノブ80が固定されている。
【0027】
これに対して、
図2に示されるように、レバー本体74には、収容孔82が形成されている。収容孔82は、レバー本体74の下端部にて開口した有底の孔とされており、収容孔82の内側には、節度ピン84がスライド可能に収容されている。また、収容孔82の内側には、圧縮コイルばね86が設けられており、圧縮コイルばね86によって節度ピン84が下方へ付勢されている。また、レバー本体74の下方には、節度プレート88が設けられている。節度プレート88の上面には、適宜に斜面90が形成されており、節度ピン84が圧縮コイルばね86の付勢力によって斜面90に圧接している。
【0028】
一方、シフトレバーアッセンブリ72は、操作部としてのリテーナ102を備えており、リテーナ102は、上端及び下端が開口した矩形の筒形状に形成されて、内側をレバー本体74が貫通している。リテーナ102の前壁104及び後壁106には、それぞれ切欠108が形成されており、切欠108は、前壁104や後壁106の上端で開口している。
【0029】
切欠108の開口幅は、レバー本体74の軸部76の直径寸法以上に設定されており、切欠108の下端部は、軸部76の外周形状と同じ曲率で湾曲している。切欠108には、上端から軸部76が入込んでおり、切欠108の下端部に軸部76が当接している。
【0030】
また、前壁104及び後壁106の各々には、受片110が形成されている。但し、前壁104の受片110については図示を省略している。受片110は、切欠108の下端の側方に形成されており、受片110は、湾曲して上方へ開口している。受片110の内周面の曲率半径は、軸部76の半径寸法に等しく設定されており、受片110には、軸部76が置かれている。さらに、両軸部76の先端には、カラー112が装着されている。カラー112の内側には、受片110が入込んでおり、カラー112は、受片110に回動可能に支持されている。これによって、レバー本体74は、リテーナ102に対して軸部76周りに左右に回動できる。
【0031】
一方、リテーナ102の左壁114には、円柱形状の支持軸116が形成されている。
図2に示されるように、支持軸116は、シフトレバープレート12の載置部18上に置かれていると共に、外周部がレバーガイドハウジング32の保持片42の凹部46に隙間を介して対向している。
【0032】
さらに、支持軸116の先端側は、シフトレバープレート12の支持孔16に挿入されており、支持軸116は、支持孔16によって回動自在に支持されている。しかも、支持孔16と支持軸116とは、互いの寸法関係の精度が高くされており、支持軸116は、支持孔16に嵌合されることによって、径方向への変位が制限されている。これによって、リテーナ102は、支持軸116周りに前後に回動できる。したがって、レバー本体74は、リテーナ102と一体に支持軸116周りに前後に回動できると共に、軸部76周りに左右に回動できる。
【0033】
ここで、シフトレバー装置10では、レバー本体74が、
図6に示される操作パターンに沿って前後方向や左右方向に回動され、これによって、レバー本体74が、H位置122から離れてN位置124やR位置126、N位置128やD位置130に到達すると、後述のように、車両の自動変速機が操作される。ところで、レバー本体74に設けられた節度ピン84は、圧縮コイルばね86に付勢されて節度プレート88の斜面90に圧接している。したがって、節度ピン84は、節度プレート88の斜面90から押圧反力を受ける。ここで、レバー本体74は、H位置122から離れた状態で操作力が解除されると、節度ピン84が受ける斜面90からの反力によってレバー本体74がH位置122へ戻る。
【0034】
一方、
図1及び
図2に示されるように、支持軸116には、嵌込孔132が形成されている。嵌込孔132は、支持軸116に対して同軸に形成されており、嵌込孔132は少なくとも支持軸116の先端にて開口している。また、支持軸116の先端には、マグネット134が設けられており、マグネット134は、円板状又は円柱形状に形成されている。マグネット134の右側の端面には、突起136が形成されている。突起136は、マグネット134に対して同軸に形成されており、突起136は、嵌込孔132に嵌込まれている。これによって、マグネット134は、支持軸116に対して同軸に取付けられて一体回転可能にされている。
【0035】
マグネット134の左側には、検出手段としての回路基板138が設けられており、回路基板138は、シフトレバープレート12の左壁14に一体に取付けられている。回路基板138は、検出センサとしての磁気センサ140を備えている。磁気センサ140は、マグネット134に対向しており、マグネット134の回動位置が磁気センサ140によって検出される。磁気センサ140の検出信号は、制御手段としてのECUに入力されて、車両の自動変速機がECUによって操作される。これによって、自動変速機のシフトレンジがレバー本体74の前後方向の回動位置に対応したシフトレンジに変更される。
【0036】
一方、
図2に示されるように、リテーナ102の右壁152には、円柱形状の軸部154が形成されており、軸部154は、支持軸116に対して同軸に形成されている。軸部154の下側には、シフトレバープレート12の右壁20の凹部22が位置しており、軸部154の上側には、レバーハウジング32の押圧片52に形成された保持部56の凹部58が位置している。凹部22、58は、軸部154の外周部に隙間を介して対向している。
【0037】
このため、凹部22、58は軸部154を支持してはおらず、シフトレバーアッセンブリ72が通常操作される場合の支持軸112の径方向の荷重は、支持孔16の内周面によって受けられる。但し、シフトレバーアッセンブリ72が通常の操作時に付与される操作力よりも大きな力がシフトレバーアッセンブリ72に付与されて、軸部154が変位すると、凹部22や凹部58が軸部154の外周部に当接して軸部154の変位を制限する。これによって、リテーナ102の変位を制限できる。
【0038】
また、
図7に示されるように、軸部154の先端から支持軸116の先端までの長さLsは、シフトレバープレート12の左壁14の薄肉部分と右壁20の薄肉部分との間隔L1よりも短く、左壁14の厚肉部分と右壁20の厚肉部分との間隔L2よりも長く設定されている。このため、リテーナ102は、シフトレバープレート12の上側からシフトレバープレート12の内側へ入込むことによって、支持軸116を左壁14の載置部18上に載置できる。
【0039】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本シフトレバー装置10の組立工程の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0040】
本シフトレバー装置10では、予め、シフトレバーアッセンブリ72のレバー本体74に圧縮コイルばね86や節度ピン84、シャフト78等が組付けられる。さらに、レバー本体74がリテーナ102に組付けられる。このリテーナ102は、
図7に示されるように、シフトレバープレート12の上端からシフトレバープレート12の内側に設けられる。これにより、
図8に示されるように、リテーナ102の支持軸116が上方から左壁14の載置部18上に載置される。
【0041】
ここで、載置部18は、支持孔16に対して同軸の湾曲面で、曲率半径が支持孔16の半径寸法に等しい。このため、支持軸116が載置部18上に載置されると、支持軸116は支持孔16に対して同軸に配置される。また、この状態では、シフトレバープレート12の右壁20の薄肉部分と、リテーナ102の軸部154との間に、レバーガイドハウジング32の押圧片52における押圧部62の先端の厚さ寸法以上の隙間が形成される。
【0042】
次いで、
図8に示されるように、レバーガイドハウジング32のゲートプレート34が、シフトレバープレート12の上端部に取付けられる。この過程で、押圧片52の押圧部62が、右壁20の薄肉部分と軸部154との間に入込む。この状態でゲートプレート34が更に下降すると、
図9に示されるように、軸部154は、押圧片52の傾斜面に押圧される。これによって、リテーナ102が左方へスライドし、
図9に示されるように、支持軸116の先端が支持孔16に入込む。
【0043】
ゲートプレート34がシフトレバープレート12の組付位置まで下降すると、
図10に示されるように、押圧片52の制限部60が、軸部154と右壁20の薄肉部分との間に入込んで、リテーナ102の左壁114が、シフトレバープレート12の左壁14の厚肉部分に接近する。これによって、リテーナ102は、左右方向への移動が制限される。
【0044】
次いで、
図10に示されるように、マグネット134の突起136が支持軸116の嵌込孔132に挿入される。これによって、マグネット134が支持軸116に対して同軸に組付けられる。さらに、シフトレバープレート12の左壁14に回路基板138が一体に組付けられる。このような工程を経てシフトレバー装置10が組立てられる。
【0045】
ここで、リテーナ102に支持軸116が形成されると共に、シフトレバープレート12の左壁14に支持孔16が形成された構成でも、リテーナ102がシフトレバープレート12に対して支持軸116の軸方向にスライドされることによって、支持孔16に支持軸116を挿入できて、シフトレバープレート12がリテーナ102を回動可能に支持できる。このため、リテーナ102に対する支持軸116の位置精度と、シフトレバープレート12に対する支持孔16の位置精度とを高くできる。これによって、リテーナ102の回動中心の位置精度を向上できる。
【0046】
したがって、支持軸116に同軸に組付けられてリテーナ102と共に回動するマグネット134の回動中心は位置精度が高くなる。このため、シフトレバーアッセンブリ72の前後方向の回動位置を精度よく検出でき、シフトレバーアッセンブリ72の回動による車両の自動変速機の操作精度を高くできる。
【0047】
また、本シフトレバー装置10において、支持軸116は左壁14の載置部18上に置かれると、支持孔16に対して同軸に配置される。このため、リテーナ102を左方へスライドさせるだけで支持軸116を支持孔16に簡単に挿入できる。しかも、リテーナ102は、軸部154がレバーガイドハウジング32の押圧片52の押圧部62に押圧されることによって左方へスライドされる。このため、押圧部62がレバーガイドハウジング32に設けられた簡単な構成で、支持軸116を更に簡単に支持孔16に挿入できる。
【0048】
また、レバーガイドハウジング32の保持片42の凹部46は、リテーナ102の支持軸116の外周部から離れている。しかしながら、シフトレバーアッセンブリ72に、通常の操作時に付与される操作力よりも大きな力が付与されて、支持軸116が径方向に変位すると、凹部46が支持軸116の外周部に当接して、支持軸116の変位を制限する。これによって、リテーナ102の変位を制限できる。
【0049】
さらに、シフトレバーアッセンブリ72に、通常の操作時に付与される操作力よりも大きな力が付与されて、リテーナ102の軸部154が変位すると、右壁20の凹部22や押圧片52の凹部58が、軸部154の外周部に当接して、軸部154の変位を制限する。これによって、リテーナ102の変位を制限できる。
【0050】
なお、本実施の形態では、上記のように、支持軸116は、軸部154が押圧片52の押圧部62に押圧されることによって左方へスライドし、支持孔16に挿入される構成であった。しかしながら、支持軸116を支持孔16に挿入するための構成が、このような態様に限定されるものではない。
【0051】
例えば、押圧片52がゲートプレート34とは別体で構成されてもよい。また、上述したように、節度ピン84は、圧縮コイルばね86によって付勢されて、節度プレート88の斜面90からの反力を受ける。上述したような本シフトレバー装置10の組立てに際し、節度ピン84が節度プレート88の斜面90から受ける反力によってリテーナ102が左方へスライドされ、支持軸116が支持孔16に挿入される構成としてもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態では、支持軸116は、軸部154が押圧片52の押圧部62に押圧されることによって支持孔16に挿入される構成であった。しかしながら、支持軸116が載置部18上に載置された状態で、作業者が、リテーナ102やレバー本体74を左方へ押圧することによって支持軸116を支持孔16に挿入してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、リテーナ102が支持軸116の軸方向へスライドされることによって支持軸116が支持孔16に挿入される構成であった。しかしながら、例えば、シフトレバープレート12が支持孔16の軸方向にスライドされることによって支持軸116が支持孔16に挿入される構成であってもよい。
【0054】
さらに、本実施の形態は、リテーナ102に支持軸116を形成した構成であった。しかしながら、支持軸116はリテーナ102に一体に設けられればよく、例えば、インサート成形によって支持軸116をリテーナ102に一体に設けてもよい。
【0055】
また、本実施の形態は、支持軸116がリテーナ102に形成されて、支持孔16がシフトレバープレート12に形成される構成であった。しかしながら、支持軸116がシフトレバープレート12に形成されて、支持孔16がリテーナ102に形成される構成であってもよい。
【0056】
さらに、本実施の形態では、載置部18の周面は湾曲した構成であった。しかしながら、載置部18は、支持軸116を含んで構成されるリテーナ102が載置されることによって、支持軸116が支持孔16に対して同軸上に配置される構成であればよい。したがって、載置部18の形状は、断面矩形の凹形状であってもよいし、周面が断面V字形状であってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、レバー本体74の操作パターンが、
図6に示されるような鉤形状であった。しかしながら、レバー本体74の操作パターンが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、レバー本体74の操作パターンがH字形状等の他の形状であってもよい。
【0058】
さらに、本実施の形態は、レバー本体74が前後左右に回動可能な構成であったが、シフトレバーが前後方向又は左右方向にのみ回動するシフトレバー装置に本発明を適用してもよい。
【0059】
また、本実施の形態は、レバーガイドハウジング32のゲートプレート34の保持片42に形成された凹部46が、支持軸116の外周部に隙間を介して対向している構成であった。しかしながら、凹部46が支持軸116の外周部に当接していてもよい。
【0060】
さらに、本実施の形態は、シフトレバープレート12の右壁20に形成された凹部22や、レバーガイドハウジング32の押圧片52の保持部56に形成された凹部58が、軸部154の外周部に隙間を介して対向した構成であった。しかしながら、凹部22や凹部58が、軸部154の外周部に当接していてもよい。
【0061】
また、本実施の形態は、シフトレバープレート12にリテーナ102を回動可能に組付ける構造に本発明を適用した構成であった。しかしながら、例えば、リテーナ102にレバー本体74を回動可能に組付ける構造に本発明を適用してもよい。
【0062】
さらに、本実施の形態は、マグネット134の回転位置が、回路基板138に設けられた磁気センサ140によって検出されることによってレバー本体74の前後方向の回動位置が検出される構成であった。しかしながら、検出手段や検出センサの構成が、このような構成に限定されるものではなく、例えば、検出センサに光センサ等の他のセンサを用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態は、レバー本体74がH位置122から離れた状態で操作力が解除されると、節度ピン84が受ける斜面90からの反力によってレバー本体74がH位置122へ戻るモーメンタリ型のシフト装置に本発明を適用した。しかしながら、レバー本体74が操作された位置で留まるステーショナリ型のシフト装置に本発明を適用してもよい。