(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の気泡シールド工法用起泡材を発泡させて気泡を生成し、前記気泡を切羽或いはチャンバー内に注入しながら掘進することを特徴とする気泡シールド工法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、気泡シールド工法に用いられるシールドマシンの概略、及び起泡材の概略について説明する。
【0011】
図1に示すように、本工法に用いられるシールドマシン1は、スキンプレート2と、隔壁3と、カッター4と、カッターモーター5と、気泡注入管6と、スクリューコンベア7と、土圧センサ8を備えている。
【0012】
スキンプレート2は、シールドマシン1の外殻部となる鋼製の筒状部材である。隔壁3は、スキンプレート2に設けられており、スキンプレート2の前側部分にチャンバー9を区画する。カッター4は、回転によって地中を掘削する部分であり、スキンプレート2よりも前方に配設されている。カッターモーター5は、カッター4を回転させるための駆動源であり、隔壁3の後側に設けられている。カッターモーター5の駆動力は支持アーム10を介してカッター4に伝達される。
【0013】
気泡注入管6は、起泡材溶液が発泡装置(図示せず)で発泡されることで得られたシェービングクリーム状の微細気泡を案内する部材である。気泡注入管6の先端はカッター4の前方に位置しているため、案内された微細気泡は切羽に向けて注入される。カッター4で掘削された掘削土は、このカッター4の回転によって気泡と混合されることで流動性が高められ、チャンバー9に流入する。そして、チャンバー9では、気泡の存在によって壁面への掘削土の付着が抑制される。また、土粒子同士の間に気泡が入り込むので、止水性も高められる。なお、気泡注入管6によって、気泡をチャンバー9内の土砂に注入してもよい。
【0014】
スクリューコンベア7は、チャンバー9に流入した掘削土を後側に排出する装置である。土圧センサ8は、チャンバー9に流入した掘削土の圧力を測定する器具である。この土圧センサ8で測定された掘削土の圧力に応じて、シールドマシン1の推進力やスクリューコンベア7による掘削土の排出量が調整される。
【0015】
微細気泡の基となる起泡材は、例えば
図2に示すように、気泡剤を主成分として含有しており、添加剤が添加されている。気泡剤は、気泡の基となる成分であり、アニオン系界面活性剤が用いられる。本実施形態では、アルキル硫酸エステル塩(AS)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、及びアルファオレフィンスルホン酸(AOS)の一種または2種以上のアニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0016】
前記アルキル硫酸エステル塩は、一般式(1)のm=0で表され、アルキルエーテル硫酸エステル塩は、一般式(1)のm=1以上で表される。また、アルファオレフィンスルホン酸は、一般式(2)で表されるものを含有する。
【0017】
[R1−O−(AO)m−SO
3]
t X ・・・ (1)
[R2−CH=CH(CH
2)n−SO
3]
t X ・・・ (2)
【0018】
これらの一般式(1)、(2)において、R1は炭素数8〜20の炭化水素基が好ましく炭素数10〜16がさらに好ましい。R2は炭素数8〜30の炭化水素基が好ましく炭素数10〜18がさらに好ましい。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物が好ましく、炭素数2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)がさらに好ましい。Xは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましく、アルカリ金属がさらに好ましい。tはXの酸化数、mはAOの平均付加モル数であって0〜50が好ましく、0〜10がさらに好ましい。nは0〜5の数である。
【0019】
前述のアルキル硫酸エステル塩(AS)としては、例えば、一般式(1)のR1が炭素数10〜14のアルキル基、mが0、Xがナトリウムに相当する、ライオン株式会社製の商品名「サンノールLM−1130」が好適に用いられる。また、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)としては、例えば、一般式(1)のR1が炭素数12〜16のアルキル基、mが3、Xがナトリウムに相当する、ライオン株式会社製の商品名「サンノールLMT−1430」が好適に用いられる。さらに、アルファオレフィンスルホン酸(AOS)としては、例えばライオン株式会社製の商品名「リポランLB−440」が好適に用いられる。そして、本実施形態では、これらの製品を使用した。
【0020】
添加剤は、次の一般式(3)、(4)で表される化合物である。
R3−O−(AO)p−R4 ・・・ (3)
HO−(AO)q−H ・・・ (4)
【0021】
一般式(3)において、R3は、炭素数1〜4の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基が好ましく、ブチル基がさらに好ましい。R4は、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であり、水素原子が好ましい。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、オキシエチレン基が好ましい。pはAOの平均付加モル数であって1〜5であり、1〜3が好ましく、2がさらに好ましい。
【0022】
一般式(3)の化合物の具体的な例としては、メチルジグリコール、エチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、メチルプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルジプロピレングリコール、ジメチルグリコール、ジメチルプロピレングリコール、ジエチルグリコール、ジエチルジグリコール、ジエチルプロピルグリコールなどが挙げられ、これらの中でもメチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、ジエチルジグリコールが好ましい。
【0023】
一般式(4)において、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物であり、オキシエチレン基が好ましい。qはAOの平均付加モル数であって2〜40であり、5〜30が好ましく、10〜20がさらに好ましい。
【0024】
一般式(4)の化合物の具体的な例としては、AOがオキシエチレン基、qが2のジエチレングリコール(DEG)、AOがオキシプロピレン基、qが2ジプロピレングリコール(DPG)、AOがオキシエチレン基、qが3〜40のポリエチレングリコール(PEG)、AOがオキシプロピレン基、qが3〜40のポリプロピレングリコール(PPG)などが挙げられ、これらの中でもジエチレングリコール、AOがオキシエチレン基、qが2〜40のポリエチレングリコール(PEG)が好ましい。
【0025】
そして、起泡材には、気泡剤が0.01〜50質量%の割合で含まれ、添加剤が0.01〜50質量%の割合で含まれることが好ましく、気泡剤が5〜30質量%の割合で含まれ、添加剤が5〜30質量%の割合で含まれることがより好ましい。なお、各質量%は、気泡剤もしくは添加剤の純分換算濃度である。そして、気泡剤と添加剤の合計が100質量%に満たない場合、残余は水等の他成分になる。この起泡材は、適宜希釈して使用するとよい。また、起泡材を、不溶化剤、分散剤、流動化剤などと併用してもよい。さらに、起泡材は、
気泡剤/添加剤の質量比が85/15〜15/85が好ましく、70/30〜30/70がより好ましい。
気泡剤と添加剤の質量比を前記範囲とすることで起泡材の発泡性、起泡の持続性がより向上する。
【0026】
気泡混合土の流動性を確認するため、前述の薬剤と試料土を用いて
図3に示すサンプルNo1〜29を作製し、ミニスランプ試験を行った。以下、ミニスランプ試験について説明する。
【0027】
まず試料土について説明する。このミニスランプ試験では土丹(泥岩)を次の手順で調整し、試料土として用いた。はじめに土丹を粉砕し、ふるいを用いて2mm以上9.5mm以下の粒径のものを選別した。選別した土丹を適当量分取して、JIS A1203「土の含水比試験方法」に従って含水比を測定した後、適当量の水を加えて含水比40%に調整した。水の添加に際しては、土丹全体に対して一様に水分が行き渡るように、ホバートミキサーで土丹を攪拌しながら水を添加した。水が添加された土丹を厚手のビニール袋に入れて一晩静置し、試料土として用いた。
【0028】
次に、ミニスランプ試験について説明する。このミニスランプ試験では、最初に必要量の試料土を電子天秤によって量り取った。そして、量り取った試料土に対し、体積比で50%分の気泡を添加した。気泡の添加量は重さで管理した。具体的には、試料土1kgに対して気泡が33.8gとなるように添加した。また、一部のサンプル(No26〜29)では気泡が8.8gとなるように添加した。なお、気泡は、サンプル毎に調整された起泡材溶液(後述)を発泡させることで作製した。起泡材溶液の発泡にはハンドポンプ(ボディソープ用泡ポンプ)を用いた。
【0029】
気泡を添加したならば、ヘラを用いて気泡と試料土を全体が均等になるように混ぜ合わせ、気泡混合土を作製した。JIS A1171に規定されるミニスランプコーン(上端内径50±0.5mm,下端内径100±0.5mm,高さ150±0.5mm)をスランプ板の上に載置し、作成後15分間静置した気泡混合土をミニスランプコーンに投入した。そして、投入した気泡混合土を突き棒で適度に突いた。気泡混合土は3回に分けて投入し、全量を投入した後に開口面の気泡混合土を均した。その後、気泡混合土を詰めたミニスランプコーンを鉛直上方に引き抜いた。そして、スランプ値を1mm単位で読み取った。
【0030】
次に、各サンプルについて説明する。
図3に示すように、このミニスランプ試験では、No1〜29からなる29種類のサンプルを作製した。まず、各サンプルについて説明する。
【0031】
図3の気泡剤に関し、記号ASは、一般式(1)においてR1=炭素数10〜14のアルキル基、m=0のアルキル硫酸エステル塩(ライオン株式会社製の商品名「サンノールLM−1130」)である。また、記号AESは、一般式(1)においてR1=炭素数12〜16のアルキル基、m=3のアルキルエーテル硫酸エステル塩(ライオン株式会社製の商品名「サンノールLMT−1430」)であり、記号AOSは、一般式(2)で表されるアルファオレフィンスルホン酸(ライオン株式会社製の商品名「リポランLB−440」)である。
【0032】
添加剤に関し、記号C1E2、記号C2E2C2、及び記号C4E2は、何れも一般式(3)に属する化合物である。また、記号C6E2、及び記号C8E2は比較例の化合物である。まず、最も使用頻度の高い記号C4E2について説明すると、この記号C4E2は、R3が炭素数4のブチル基、AOが炭素数2のオキシエチレン基(EO)、AOの平均付加モル数pが2、R4が水素原子(H)である化合物(ブチルジグリコール)を表している。
【0033】
記号C1E2は、R3が炭素数1のメチル基、AOが炭素数2のオキシエチレン基、AOの平均付加モル数pが2、R4が水素原子(H)である化合物(メチルジグリコール)である。要するに、C4E2におけるR3をメチル基に変えた化合物を表している。同様に、記号C6E2は、R3を炭素数6のヘキシル基に変えた化合物(ヘキシルジグリコール)であり、記号C8E2は、R3を炭素数8のオクチル基に変えた化合物(オクチルジグリコール)を表している。さらに、記号C2E2C2は、R3が炭素数2のエチル基、AOが炭素数2のオキシエチレン基、R4が炭素数2のエチル基である化合物(ジエチルジグリコール)を表している。
【0034】
同じく添加剤に関し、記号PEG、記号DEG、及び記号EGは、何れもエチレングリコール系の化合物である。すなわち、記号PEGはポリエチレングリコールであり、数字部分が分子量を示している。例えば、PEG600とは分子量600のポリエチレングリコールを表し、PEG6000とは分子量6000のポリエチレングリコールを表している。そして、PEG600は、AOが炭素数2のオキシエチレン基、AOの平均付加モル数qが約13となる。同様に、PEG2000は、AOがオキシエチレン基、AOの平均付加モル数qが約45となる。また、記号DEGはジエチレングリコール(AO:オキシエチレン基,q:2)であり、記号EGはエチレングリコール(AO:オキシエチレン基,q:1)である。エチレングリコール系化合物の中で、DEGやPEG600、及びPEG1540は、一般式(4)に属する化合物である。また、EG、PEG2000、PEG4000K、及びPEG6000は比較例の化合物である。
【0035】
サンプルNo1〜15は、気泡剤と添加剤を含有する起泡材で作製されたサンプルである。一方、サンプルNo16〜29は、有害物質(ヒ素,鉛等)の不溶化を目的として水溶性の塩を含む不溶化剤を添加したものである。具体的には、FeSO
4水溶液を、全鉄量がサンプルの6.35質量%となるように添加している。なお、以下の説明において、気泡剤や添加剤の濃度(質量%)は純分換算の濃度を示している。
【0036】
サンプルNo1,2は、一般式(2)の気泡剤を水に添加し、添加剤を不添加とした起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo1は、気泡剤である濃度0.30%のAOS水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。同様に、サンプルNo2は、濃度0.15質量%のAOS水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。
【0037】
サンプルNo3〜6は、一般式(2)の気泡剤と一般式(3)或いは比較例の添加剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo3は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてC4E2を用い、それぞれの濃度を0.30質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプルNo4は、サンプルNo3のAOS濃度を0.15質量%に変更した混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。サンプルNo5は、サンプルNo4のC4E2濃度を0.015質量%に変更した混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。サンプルNo6は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてC8E2を用い、それぞれの濃度を0.30質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。
【0038】
サンプルNo7は、気泡剤を不添加とし、一般式(3)の添加剤を起泡材として作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo7は、添加剤である濃度0.45質量%のC4E2水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。
【0039】
サンプルNo8〜10は、一般式(2)の気泡剤と一般式(4)或いは比較例の添加剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo8は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてPEG600を用い、それぞれの濃度を0.30質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプルNo9は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてPEG6000を用い、それぞれの濃度を0.15質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。サンプルNo10は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてPEG20000を用い、それぞれの濃度を0.15質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。
【0040】
サンプルNo11,12は、一般式(2)の気泡剤及び一般式(3),(4)の添加剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo11は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてC4E2及びPEG600を用い、それぞれの濃度を0.30質量%,0.15質量%,0.15質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプルNo12は、サンプルNo11のAOS濃度を0.15質量%に変更した混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。
【0041】
サンプルNo13は、一般式(1)の気泡剤を水に添加し、添加剤を不添加とした起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo13は、気泡剤としてAS及びAESを用い、それぞれの濃度を0.21質量%,0.09質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。
【0042】
サンプルNo14,15は、一般式(1)の気泡剤及び一般式(3),(4)の添加剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo14は、気泡剤としてAS及びAESを、添加剤としてC4E2及びPEG600を用い、それぞれの濃度を0.21質量%,0.09質量%,0.30質量%,0.30質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプル15は、サンプル14のC4E2濃度及びPEG600濃度を、それぞれ0.15質量%に変更した混合水溶液を起泡材として発泡及び混合したものである。
【0043】
サンプルNo16は、一般式(2)の気泡剤、及び有害物質の不溶化剤を水に添加し、添加剤を不添加とした起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo16は、気泡剤としてAOSを、不溶化剤としてFeSO
4を用い、AOSの濃度を1.80質量%、FeSO
4を規定濃度(全鉄量がサンプルの6.35質量%となる濃度)とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。
【0044】
サンプルNo17〜20は、一般式(2)の気泡剤、一般式(3)或いは比較例の添加剤、及び有害物質の不溶化剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo17は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてC1E2を、不溶化剤としてFeSO
4を用い、AOSの濃度を1.80質量%、C1E2の濃度を1.80質量%、FeSO
4を規定濃度とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプルNo18は、サンプルNo17の添加剤をC2E2C2(濃度1.80質量%)に変更した混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。同様に、サンプルNo19ではサンプルNo17の添加剤をC6E2(濃度を1.80質量%)に変更し、サンプルNo20ではサンプルNo17の添加剤をC8E2(濃度1.80質量%)に変更した混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。
【0045】
サンプルNo21〜25は、一般式(2)の気泡剤、一般式(4)或いは比較例の添加剤、及び有害物質の不溶化剤を水に添加した起泡材で作製されたサンプルである。すなわち、サンプルNo21は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてDEGを、不溶化剤としてFeSO
4を用い、AOSの濃度を1.80質量%、DEGの濃度を1.80質量%、FeSO
4を規定濃度とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。サンプルNo22は、サンプルNo21の添加剤をPEG1540(濃度1.80質量%)に変更し、サンプルNo23は、サンプルNo21の添加剤をEG(濃度1.80質量%)に変更した混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。同様に、サンプルNo24は、サンプルNo21の添加剤をPEG2000(濃度1.80質量%)に変更し、サンプルNo25は、サンプルNo21の添加剤をPEG4000K(濃度1.80質量%)に変更した混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土に混合したものである。
【0046】
サンプルNo26〜29は、一般式(2)の気泡剤、一般式(3)または(4)の添加剤を水に添加した起泡材で作製され、有害物質の不溶化剤を、気泡と試料土の混合時に或いは気泡と試料土の混合後に添加したサンプルである。すなわち、サンプルNo26は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてC4E2を用い、AOSの濃度を1.80質量%、C4E2の濃度を1.80質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土1kgに対して気泡が8.8gとなるように添加した。その際、不溶化剤としてのFeSO
4水溶液を、全鉄量がサンプルの6.35質量%となるように添加した。その後、気泡及び不溶化剤を試料土に対して均一に混合した。サンプルNo27は、不溶化剤の添加方法がサンプルNo26と相違している。すなわち、サンプルNo27では、気泡を試料土に混合した気泡混合土に対し、不溶化剤を添加した。
【0047】
サンプルNo28は、気泡剤としてAOSを、添加剤としてPEG600を用い、AOSの濃度を1.80質量%、PEG600の濃度を1.80質量%とした混合水溶液を起泡材として発泡させ、試料土1kgに対して気泡が8.8gとなるように添加した。その際、不溶化剤としてのFeSO
4水溶液を、全鉄量がサンプルの6.35質量%となるように添加した。その後、気泡及び不溶化剤を試料土に対して均一に混合した。サンプルNo29は、不溶化剤の添加方法がサンプルNo28と相違している。すなわち、サンプルNo28では、気泡を試料土に混合した気泡混合土に対し、不溶化剤を添加した。
【0048】
以下、試験結果について説明する。ミニスランプ試験では、スランプ値を小数点以下1桁まで読み取り、スランプ値で3.0cm以上のサンプルを合格とした。これは、混合から15分経過時点でのスランプ値が3.0cm以上であれば、掘削土砂についてチャンバー9の通過期間に亘って十分な流動性が確保できるとの知見による。
【0049】
まず、気泡剤や添加剤を単体で用いた場合の結果について検討する。サンプルNo1,2,7,13,16の結果を参照すると、サンプルNo1のスランプ値は0.0cm、サンプルNo2のスランプ値は2.0cm、サンプルNo7のスランプ値は不発泡により評価不能、サンプルNo13のスランプ値は2.5cm、サンプルNo16のスランプ値は2.1cmであった。
【0050】
スランプ値が3.0cm以上のサンプルがなかったことから、気泡剤としてAOSを用いても、ASとAESの混合物を用いても15分後のスランプ値が小さく、気泡シールド工法に必要な流動性を得ることは難しいことが確認された。また、サンプルNo16の結果より、不溶化剤(鉄塩)を含む場合には、気泡剤を高濃度にしても気泡シールド工法に必要な流動性を得ることは難しいことが確認された。さらに、サンプルNo7の起泡材が不発泡であったことから、添加剤そのものを起泡材として用いることは困難であることが確認された。
【0051】
次に、添加剤として一般式(3)、すなわちR3−O−(AO)p−R4で表される化合物を用いた結果について検討する。ここでは、サンプルNo3〜6,No17〜20,No26〜27の結果を参照する。サンプルNo3のスランプ値は8.9cm、サンプルNo4のスランプ値は3.5cm、サンプルNo5のスランプ値は3.0cm、サンプルNo6のスランプ値は0.0cmであった。そして、サンプルNo17のスランプ値は5.8cm、サンプルNo18のスランプ値は5.3cm、サンプルNo19及びNo20のスランプ値は不発泡により評価不能であった。また、サンプルNo26のスランプ値は3.0cm、サンプルNo27のスランプ値は3.4cmであった。
【0052】
添加剤としてC4E2、C1E2、及びC2E2C2を用いたサンプルNo3〜5,No17〜18,No26〜27については、スランプ値が3.0cm以上であった。これらの結果から、一般式:R3−O−(AO)p−R4において、R3については炭素数1(C1E2)〜4(C4E2)までの化合物が使用できると考えられた。AOについては、少なくとも炭素数2(EO)の化合物が使用できると考えられた。pについては、少なくとも2の化合物が使用できると考えられた。R4については、水素原子(C4E2,C1E2)〜炭素数2(C2E2C2)までの化合物が使用できると考えられた。
【0053】
サンプルNo17〜18,No26〜27の結果より、気泡剤や添加剤の濃度を高めることで、不溶化剤(鉄塩)の存在下でも十分な流動性を確保できると考えられた。また、サンプルNo3〜5の結果より、気泡剤や添加剤の濃度を変えることで気泡混合土の流動性を調整できることも確認された。
【0054】
一方、比較例の添加剤であるC6E2及びC8E2を用いたサンプルNo6,No19〜20において、スランプの値が0.0cmであったり、起泡材が不発泡であったりしたことから、R3の炭素数を6以上にしてしまうと、気泡シールド工法に必要な流動性を得難いことが確認された。
【0055】
次に、添加剤として一般式(4)、すなわちHO−(AO)q−Hで表される化合物を用いた結果について検討する。ここでは、サンプルNo8〜10,No21〜25,No28〜29の結果を参照する。サンプルNo8のスランプ値は8.5cm、サンプルNo9及びNo10のスランプ値はともに0.0cmであった。サンプルNo21のスランプ値は3.0cm、サンプルNo22のスランプ値は4.2cmであった。サンプルNo23〜25のスランプ値は、不発泡や高分子凝集による影響で評価不能であった。サンプルNo28のスランプ値は3.2cm、サンプルNo29のスランプ値は3.0cmであった。
【0056】
添加剤としてDEG、PEG600、及びPEG1540を用いたサンプルNo8,No21〜22,No28〜29については、スランプ値が3.0cm以上であった。これらの結果から、一般式:HO−(AO)q−Hにおいて、AOについては、少なくとも炭素数2の化合物が使用できると考えられた。qについては、2(DEG)〜35(PEG1540)の化合物が使用できると考えられた。そして、サンプルNo21〜22,No28〜29の結果より、気泡剤や添加剤の濃度を高めることで、不溶化剤(鉄塩)の存在下でも十分な流動性を確保できると考えられた。
【0057】
一方、比較例の添加剤であるEG、PEG2000〜PEG20000を用いたサンプルNo9〜10,No23〜25については、何れもスランプの値が0.0cmであったり、評価不能であったりしたことから、qについては、1(EG)または45(PEG2000)以上になると、気泡シールド工法に必要な流動性を得難いことが確認された。
【0058】
次に、複数種類の気泡剤や複数種類の添加剤を混合して用いた結果について説明する。ここでは、サンプルNo11〜12,No14〜15の結果を参照する。サンプルNo11のスランプ値は4.6cm、サンプルNo12のスランプ値は3.5cm、サンプルNo14のスランプ値は4.8cm、サンプルNo15のスランプ値は4.2cmであり、何れも3.0cm以上であった。
【0059】
これらの結果から、気泡剤としてASやAESを混合して使用してもよく、添加剤として一般式(3)と(4)で表される化合物同士を混合して使用してもよいことが確認された。さらに、不溶化剤(鉄塩)が存在する場合、気泡剤や添加剤の濃度を高めることで必要な流動性が得られることも確認された。
【0060】
なお、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。