(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、塩素などの毒性ガスを移動するときに携行する保護具等として、「一般高圧ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第53号)」の別添「一般高圧ガス保安規則関係例示基準」によれば、「74.毒性ガスの移動時に携行する保護具並びに資材等」が示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
この基準によれば、毒性ガスがガスボンベから漏れた場合には、ガスボンベを横倒しにした上で、布類またはポリエチレンシートなどで覆い、そのシートの周囲に除害剤(例えば、消石灰など)を散布する応急処置を行うことになっている。
【0004】
しかしながら、例えば、液化毒性ガスの場合、漏洩時にガスボンベを横倒しにしてしまうと、液状のガスが噴出し、被害が拡大する恐れがある。
【0005】
また、ガスボンベを立てた状態で布類またはポリエチレンシートを用いて対処しようとすると、作業性が悪く、時間がかかるため、迅速に対処することができない。
【0006】
さらに、屋外における作業を考慮すれば、風によってポリエチレンシートがめくれあがり、あるいは飛ばされてしまうという事態も考慮しなければならない。
【0007】
一方、ガスボンベを汚れなどから保護するためのガスボンベカバーも市販されているが、通常、元栓を操作するために頂部に開口部が形成され、ガスバリア性の高い材質も用いられていない。したがって、毒ガスの漏れ対策としては利用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、ガスボンベからの毒ガスの漏洩に迅速に対処することができるガスボンベ用の防災カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
本発明にかかるガスボンベ用の防災カバーの一態様は、
合成樹脂製の袋体であって、
封止された頂部(2)と、
ガスボンベの高さよりも高い筒状の本体部(3)と、
前記ガスボンベの胴部の直径よりも広い開口部(42)を有する底部(4)と、
を有し、
前記本体部(3)の少なくとも一方の表面に静電気除去構造(35)を有することを特
徴とする。
【0012】
本発明にかかるガスボンベ用の防災カバーの一態様において、
前記本体部(3)は、開口部(42)に向かって拡径する拡径部(40)を有することができる。
【0013】
本発明にかかるガスボンベ用の防災カバーの一態様において、
前記本体部(3)は、前記本体部(3)を前記ガスボンベの胴部に対して締め付けて固定するベルト部(31)を有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるガスボンベ用の防災カバーによれば、ガスボンベの高さよりも高い袋体であるので、防災カバーの開口部を広げてガスボンベの頂部側からガスボンベを挿通すれば、容易にガスボンベの全体をすっぽりと覆うことができる。しかも、この防災カバーによれば、ガスボンベを立てたままで作業を行うことができ、ガスボンベを横倒しにする手間と時間を省くことができるので、防災カバーを迅速に作業することができる。また、この防災カバーによれば、静電気除去構造を有することによって、可燃性のガスが漏れた場合にも静電気による発火を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態に係るにかかるガスボンベ用の防災カバーは、合成樹脂製の袋体であって、封止された頂部2と、ガスボンベの高さよりも高い筒状の本体部3と、前記ガスボンベの胴部の直径よりも広い開口部42を有する底部4と、を有し、前記本体部3の少なくとも一方の表面に静電気除去構造35を有することを特徴とする。
【0018】
図1は、一実施の形態に係るガスボンベ用の防災カバー1の正面図である。
【0019】
防災カバー1は、ガスボンベからのガス漏れの際に、「一般高圧ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第53号)」の別添「一般高圧ガス保安規則関係例示基準」における「74.毒性ガスの移動時に携行する保護具並びに資材等」で定められているポリエチレンシート等よりも容易に作業を行うことができ、特に、ガスボンベを立てたままで迅速に作業を行うことができるという格別の効果を有するものである。なお、本実施の形態の説明においては、防災カバー1の使用形態を想定し、頂部側が上、底部側が下として説明する。
【0020】
ガスボンベ用の防災カバー1は、底部3の開口部42が開口し、頂部2が封止された筒状の本体部3を有する合成樹脂製の袋体である。合成樹脂製の袋体は、例えば、
図1に示すような防災カバー1の同じ輪郭を有する2枚のシートを、開口部42に相当する部分を除いて、周縁部36で溶着して製造することができる。溶着の方法としては、合成樹脂の
種類に合わせて公知の方法を適宜選択することができる。
【0021】
防災カバー1は、2枚の合成樹脂製のシートを2枚重ね合わせて製造するので、未使用状態、すなわち開口部42を開口しない状態においては、
図1に示すように、薄いシートのような状態である。したがって、防災カバー1を折り畳んでコンパクトにすれば、ガスボンベを運搬する車両に積載することも容易である。
【0022】
筒状の本体部3は、防災カバー1を適用するガスボンベの高さよりも高い全長Hを有する。本体部3は、ヘッド部10と、肩部20と、胴部30と、を有する。
図1では、図の前後に2枚のシートを重ね合わせた状態で示しているので、防災カバー1の厚さはシート2枚分の厚さである。
【0023】
ヘッド部10は、胴部30の第2の幅W2よりも狭い第1の幅W1を有する。ヘッド部10は、ガスボンベの元栓が取り付けられた口部またはその口部に被せた防災キャップを収容することができる。
【0024】
肩部20は、ヘッド部の下端から胴部30の上端へ向けて徐々に拡幅して、ヘッド部10と胴部30とを接続する。肩部20は、ガスボンベの肩部に接触してガスボンベに対して防災カバー1が下方へ移動することを制限することができる。
【0025】
胴部30は、上端が肩部20に接続し、下端に底部4と接続する拡径部40を有することができる。胴部30は、肩部20の下端から拡径部40の上端まで第2の幅W2で形成され、筒状に広げることによって、ガスボンベの胴部の直径よりも大きな直径を有する。
【0026】
拡径部40は、第2の幅W2から開口部42の第3の幅W3へと拡幅して形成され、胴部30を筒状に広げると胴部30から底部4へ向かって例えば円錐台状に拡径する。拡径部40は、その高さ方向に延びて切れ込んだ1以上のスリット44を有することができる。拡径部40がスリット44を有することで、ガスボンベが置かれた場所の床面の形状に合わせて防災カバー1を接地させることができる。スリット44は、床面が平たんな場所での使用を前提とするのであればあらかじめ形成しなくてもよい。
【0027】
本体部3は、本体部3をガスボンベの胴部に対して締め付けて固定する第1のベルト部31を有することができる。第1のベルト部31は、胴部30に一端が固定され、他端が胴部30に設けられた第1接合部33に接合可能な自由端を有する。第1のベルト部31と第1接合部33はいわゆる面ファスナーであって、一方がフック上に起毛され他方がループ状に起毛され、重ね合わせることで結合する。さらに、本体部3は、第1のベルト部31の下方に第2のベルト部32及び第2の接合部34を有することができる。また、第1、第2のベルト部31及び1、第2接合部33は、面ファスナーに限らず、公知の他の締結具を用いることができる。
【0028】
本体部3は、少なくとも一方の表面に静電気除去構造35を有する。静電気除去構造35は、本体部3の例えば内側の表面の全体に、網目状に導電部37が形成され、底部4において接地して本体部3の静電気を除去することができる。導電部37は、少なくとも頂部2から底部4までの本体部3の表面に連続して形成されていることができる。導電部37は、例えば本体部3を構成する合成樹脂製のシートの少なくとも一方の表面全体に導電性塗料を網目状にプリントして製造することができる。
【0029】
したがって、防災カバー1の製造方法としては、導電性塗料がプリントされた2枚のシートを
図1のような形状に切り出し、その切り出した2枚のシートを導電性塗料がプリントされている面同士を重ね合わせた状態で底部4を除く周縁部36を溶着することで得ら
れる。導電性塗料がプリントされたシートとしては、例えば、市販されているオカモト社製の「帯電防止R」を採用することができる。1枚のシートの厚さとしては、0.1mm〜1mmのものを採用することができ、好ましくは0.1mm〜0.3mmのものを採用することができる。シートの材質としては、柔軟性に優れ、かつ、比較的ガスバリア性の高い合成樹脂製のシートを採用することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどを採用することができる。
【0030】
この防災カバー1によれば、静電気除去構造35を有することによって、内部に発生した静電気を静電気除去構造35によって地表Gにアースでき、ガスボンベから可燃性のガスが漏れた場合にも静電気による発火を防止することができる。
【0031】
底部4は、本体部3の下端にあって開口部42を有する。底部4は、第3の幅W3を有する。第3の幅W3は、胴部30の第2の幅W2よりも広く、開口部42を広げて防災カバーを円筒状の袋体に広げた際に、ガスボンベの胴部の直径D1(
図2参照)よりも大きな直径となる幅に形成されている。
【0032】
図2は、一実施の形態に係るガスボンベ用の防災カバー1の使用状態を示す模式図である。
図3は、一実施の形態に係るガスボンベ用の防災カバー1の使用状態を示す模式図である。
図4は、
図2におけるガスボンベ用の防災カバー1の接地状態を示す一部拡大断面図である。なお、
図2及び
図3においては、ガスボンベ6の状態を説明するため、静電気除去構造35を省略して示している。
図2及び
図3において、ガスボンベ6は、もっとも一般的な7m
3(7000L、47L型)のガスボンベ6を例に説明している。防災カバー1は、移送するガスボンベのサイズに合わせて準備することが望ましい。
【0033】
図2に示すように、防災カバー1は、ガスボンベ6を内部に収容している。作業者は、まず、防災カバー1の開口部42を開いて袋状にする。
【0034】
次に、防災カバー1の開口部42を、立てたままのガスボンベ6の防災キャップ60側から挿通し、防災カバー1の肩部20がガスボンベ6の肩部62に接触するまで押し下げる。このとき、防災カバー1の底部4は、拡径部40が外方に広がるようにして地表Gに接し、本体部3の内側面に形成されたここでは図示しない静電気除去構造35の端部を接地させることができる。
【0035】
そして、作業者は、底部4の周囲に、除害剤7として例えば消石灰を散布することができる。
【0036】
防災カバー1の拡径部40は、その外表面が末広がりになって地表Gに接しているので、その全周が隙間なく地表Gに対して確実に接することができると共に、除害剤7を拡径部40の末端に乗せるようにしながら外側から散布することができるので散布しやすい。
【0037】
防災カバー1の全高Hは、ガスボンベ6の全高H1よりも高く形成されている。底部4を地表Gに確実に接触させるためである。
【0038】
また、一般に、ガスボンベ6は、底部64から肩部62までの高さH2がほぼ同じ高さに製造されている。したがって、防災カバー1の底部4から肩部20までの高さH3を高さH4に合わせて製造しておけば、ガスボンベ6に防災カバー1を被せた際に、防災カバー1の肩部20がガスボンベ6の肩部62に接触することで、防災カバー1はガスボンベ6の全体を確実に覆うことができる。この場合、防災カバー1の高さが足りずに設置しないようなことがないように、所定量例えば50mm〜100mm程度の余裕をもって高さH2を設定することが望ましい。なお、ガスボンベ6の防災キャップ60の高さはさまざ
まであるので、ヘッド部10の高さH4は、市場に流通している防災キャップ60の最も高いものを収容しても頂部2が防災キャップ60の頂部に接触しない高さを確保することが好ましい。
【0039】
図3に示すように、第1のベルト部31を第1接合部33に接合して、防災カバー1の本体部3をガスボンベ6の胴部63に対して締め付けて固定することができる。第1のベルト部31を第1接合部33が面ファスナーで形成されていうことによって、緊急時においても迅速に作業を行うことができる。このようにすることで、防災カバー1がガスボンベ6に対して移動することを制限できる。例えば、屋外で使用する際には、防災カバー1が風で浮き上がったり、飛ばされたりすることを防止することができる。また、第1のベルト部31を第1接合部33に接合することによって、防災キャップ60側から漏洩したガスが底部4側へ移動するのを制限することもできる。第2のベルト部32と第2接合部34も同様の効果を有する。
【0040】
図4は、
図2における丸IVを拡大して示している断面図である。防災カバーの拡径部40の下端は地表Gに接し、拡径部40の内側に形成された導電部37が接地して本体部2内の静電気をアースする。拡径部40の外側には、除害剤7が散布される。拡径部40の下端すなわち底部4と地表Gとの間には実質的に隙間がなく、防災カバー内のガスを外部に漏洩することを防止することができる。
【0041】
本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。