(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動源から後車輪に動力を伝達する巻き掛け伝動装置と、後車輪用のスイングアームを車体フレームに弾性的に支持するリヤサスペンション装置と、を備えている鞍乗型車輌において、
前記巻き掛け伝動装置は、前記駆動源の出力部に設けられた駆動車と、前記後車輪に設けられた従動車と、前記駆動車と前記従動車とに巻き掛けられた無端体と、を備え、
前記リヤサスペンション装置は、前記駆動源の下側に略前後方向に沿って配置されたショックアブソーバと、該ショックアブソーバの後端部と前記スイングアーム及び前記車体フレームとを連結するリンク機構とを、備え、
前記無端体は、前記車体フレームの車幅方向内側で、前記車体フレームと前記リンク機構との間を通過するように配設されており、
前記リンク機構は、前記車体フレームに回動自在に連結されるフレーム側連結部を有し、該フレーム側連結部は、前記車体フレームの左右のフレーム部材を連結する連結軸により、前記車体フレームに支持されており、
前記リンク機構は、前記無端体が配置される車幅方向一方側縁部が、前記フレーム側連結部から離れるにしたがい車幅方向他方に退避する形状に形成されている、ことを特徴とする鞍乗型車輌。
駆動源から後車輪に動力を伝達する巻き掛け伝動装置と、後車輪用のスイングアームを車体フレームに弾性的に支持するリヤサスペンション装置と、を備えている鞍乗型車輌において、
前記巻き掛け伝動装置は、前記駆動源の出力部に設けられた駆動車と、前記後車輪に設けられた従動車と、前記駆動車と前記従動車とに巻き掛けられた無端体と、を備え、
前記リヤサスペンション装置は、前記駆動源の下側に略前後方向に沿って配置されたショックアブソーバと、該ショックアブソーバの後端部と前記スイングアーム及び前記車体フレームとを連結するリンク機構とを、備え、
前記無端体は、前記車体フレームの車幅方向内側で、前記車体フレームと前記リンク機構との間を通過するように配設されており、
前記リンク機構は、前記スイングアームに回動自在に連結支持される第1リンク部材と、連結軸により前記車体フレームに回動自在に支持されるフレーム側連結部を有すると共に前記第1リンク部材の第2リンク側連結部に回動自在に連結される第1リンク側連結部を有する第2リンク部材とを備え、前記第1リンク部材のショック側連結部が、前記ショックアブソーバの前記後端部に回動自在に連結されており、
前記第2リンク部材の前記フレーム側連結部の車幅方向の幅は、前記スイングアームの車幅方向の幅よりも大きく形成され、前記第2リンク部材の前記第1リンク側連結部の車幅方向の幅は、前記スイングアームの車幅方向間隔よりも小さく形成されている、鞍乗型車輌。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至
図8に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。説明の都合上、車輌の進行方向を車輌及び各部品の「前方」とし、乗車したライダーから見た左右方向を、車輌及び各部品の「左右方向」として、説明する。なお、
図1及び
図3では、後述するクランクケース38の下方及び前方を覆う保護プレート49(
図2及び
図4参照)を取り外して示している。
【0022】
[車輌全体構成]
図1は自動二輪車全体の左側面図であり、車体フレーム1は、ヘッドパイプ2と、該ヘッドパイプ2から略後下方に延びる左右一対のメインフレーム3と、ヘッドパイプ2から略下方に延びる一本のダウンフレーム5と、該ダウンフレームの5下端二股部に接続された左右一対のロアフレーム6と、を有している。メインフレーム3の後端部は、スイングアームブラケット部3aとして、下方へ延びている。ロアフレーム6は、ダウンフレーム5の下端部から下向きに延びると共に後向きに湾曲し、略水平状態で後方へ延びており、ロアフレーム6の後端部が、スイングアームブラケット部3aの下端部に結合されている。ロアフレーム6は、スイングアームブラケット部3aの下端よりも、下方に位置している。
【0023】
メインフレーム3の前後方向の略中間部には、略後方に延びるシートレール10が接続され、スイングアー
ムブラケット部3aの上端部には、後上方に延びるリヤフレーム11が接続され、該リヤフレーム11の後端部はシートレール10の後端部に結合されている。
【0024】
ヘッドパイプ2には、操舵軸(図示せず)及び上下のブラケット13を介して左右一対のフロントフォーク15が支持されており、フロントフォーク15の下端部に、前車軸16を介して前車輪17が回転自在に支持されている。
【0025】
メインフレーム3及びシートレール10の上には、燃料タンク18及びシート19が設けられ、リヤフレーム11の下側には排気マフラー20が設けられ、
フロントフォーク15には前フェンダー21が設けられている。
【0026】
エンジン30は車体フレーム1内に搭載されており、ロアフレーム6に設けられた左右一対の下側取付部31と、メインフレーム3に設けられた左右一対の上側取付部32と、スイングアームブラケット部3aのピボット軸部33と、ダウンフレーム5の下端部に設けられた左右一対の前側取付部34と、により、車体フレーム1に支持されている。エンジン30は、左右一対の下側取付部31、上側取付部32及び前側取付部34において、車体フレーム1に支持されることで、車体フレーム1の左右のフレーム部分を、左右に連結する連結体としての機能も有している。ダウンフレーム5にはラジエータ35が取り付けられ、メインフレーム3の後部内には、吸気用エアクリーナボックス36が配置されている。
【0027】
後車輪支持用のスイングアーム40は、スイングアームブラケット部3aのピボット軸部33に回動自在に支持され、後方に延びており、スイングアーム40の後端部に、後車軸41を介して後車輪42が回転自在に支持されている。後車輪42に設けられた被駆動スプロケット43と、エンジン30のクランクケース38の左側面に配置された出力スプロケット44との間に、駆動チェーン45が巻き掛けられており、この駆動チェーン45を介して後車輪42を駆動する。前記出力スプロケット44と被駆動スプロケット43とは、メインフレーム3とリンク機構52との間の空間を、車幅方向に対して垂直な方向に延長した領域に33に配置されている。具体的には、出力スプロケット44と被駆動スプロケット43とは、前方又は後方から見て、左側のメインフレーム3とリンク機構52との間に配置されている。
【0028】
スイングアーム40はリヤサスペンション装置50により車体フレーム1に弾性的に支持されている。リヤサスペンション装置50は、エンジン30のクランクケース38の下側に配置されたショックアブソーバ51と、メインフレーム3のスイングアームブラケット部3aの後側に配置されたリンク機構52と、クランクケース38の前側に配置されたリザーブタンク53と、を備えている。
【0029】
[チェーンガイド機構]
図2は、リヤサスペンション装置50及びその周囲の左側面図であり、左側のスイングアームブラケット部3aの車幅方向内方面の後端部には、スイングアーム40の上面より上方位置に配置された歯付きの上側チェーンガイドローラ46と、スイングアーム40の下面よりも下方位置に配置された歯付きの下側チェーンガイドローラ47が、それぞれ回転自在に設けられている。さらに、スイングアーム40の左側のアーム部分の上面と下面には、駆動チェーン45をガイドするためのチェーンガイド板48a、48bがそれぞれ設けられている。
【0030】
図5に示すように、スイングアームブラケット部3aには、チェーンガイドローラ46の軸部を取り付けるための取付部46aが形成されている。取付部46aは、スイングアームブラケット3aの車幅方向の外側面から車幅方向内方に凹んでおり、この凹んだ部分に、チェーンガイドローラ46の軸部を固定するためのナット46b等が収納されている。これによって、チェーンガイドローラ用締結部材(ナット46b等)
の、メインフレーム3の車幅方向外方への突出量を抑制している。
【0031】
駆動チェーン45の張り側部分(上側部分)は、前方の出力スプロケット44の上端から、スイングアーム40の上側チェーンガイド板48aの上面に摺接しつつ後方に延びており、左側スイングアームブラケット部3aの車幅方向の内面と、上側チェーンガイド板48aと、リンク機構52の左側面と、上側チェーンガイドローラ46とで囲まれた空間内を、後方に通過している。
【0032】
駆動チェーン45の緩み側部分(下側部分)は、下側チェーンガイド板48bの下面と、左側スイングアームブラケット部3aの車幅方向の内面と、下側チェーンガイドローラ47と、ショックアブソーバ51との間を通り、下側チェーンガイド板48bの下面に沿って、後方に延び出している。
【0033】
[リヤサスペンション装置50]
図2において、エンジン30のクランクケース38は、後部下面が前後下面よりも上方に位置しており、具体的には、後方に向かって次第に高くなるように、後ろ上がりに傾斜している。詳しく説明すると、クランクケース38は、クランク軸を収納する前半のクランク室部38aと、ギヤ式トランスミッションを収納する後半のトランスミッション室部38bとを一体に有しており、トランスミッション室部38bの下面は、クランク室部38aの下面よりも上下方向の所定幅以上、高い位置に形成されている。具体的には、クランク室部38aの下端部は、ロアフレーム6の上面に形成された前述のエンジン用下側取付部31に取り付けられており、トランスミッション室部38bの下面は、クランク室部38aから後方にゆくに従い、高くなるように後上がり状に傾斜している。これにより、側面視で、少なくともロアフレーム6の下面とトランスミッション室部38bの下面との上下方向間に、ショックアブソーバ51を概ね水平姿勢で収納可能な空間が確保されている。
【0034】
(ショックアブソーバ51)
ショックアブソーバ51は、クランクケース38のトランスミッション室部38bの下側空間に、若干後上がりに傾斜した状態で、略前後方向に沿うように配置されており、ショックアブソーバ51の下端はロアフレーム6の下面より上方位置で、概ねロアフレーム6と平行に後方に延びている。別の表現で説明すると、車輌側面視において、ショックアブソーバ51の投影面のうち、前後方向に延びるショックアブソーバ51の下縁が、ロアフレーム6の投影面のうち、前後方向に延びるロアフレーム6の下縁よりも上方に位置している。
【0035】
ショックアブソーバ51は、前半のシリンダ部51aと、該シリンダ部51aから後方に伸縮自在に突出するロッド部51bと、前後端のばね受座間に縮設されたコイルばね51cと、を有するコイルオーバー型である。シリンダ部51aにはオイル及びガスが注入され、ロッド部51bは円筒状のカバー51dにより覆われている。ロッド部51bはカバー51dと共に、スイングアームブラケット部3aよりも後方に突出自在であり、カバー51dは、シリンダ部51aの外周面に軸方向に摺動可能に嵌合している。
【0036】
シリンダ部51aの前端部には、クレビス(被取付部)51eが形成されると共に、可撓性を有するガス流通用の連通管54が接続されている。連通管54は、左右のロアフレーム6間を前方に延びており、クレビス51eは、側面視で、前述のエンジン用下側取付部31の後方近傍位置に配置された支持部57に、左右方向に延びる支軸58を介して回動自在に支持されている。
【0037】
支軸58の軸芯及び下端は、ロアフレーム6の上面よりも上方に位置しており、また、ショックアブソーバ51の上半部は、ロアフレーム6の上面よりも上方に位置している。さらに、ショックアブソーバ51の下端は、前述のように、ロアフレーム6の下面よりも上方に位置している。該実施の形態では、スイングアーム40の後端部が上方に揺動する状態では、相対的にショックアブソーバ51及びその周囲が路面に近づくことになるが、このような場合でも、ロアフレーム6の下面よりもショックアブソーバ51が下方に突出しないように構成される。
【0038】
図3は、ショックアブソーバ51及びクランクケース38の底面図であり、ショックアブソーバ51のリザーブタンク53は、円筒状に形成されると共に、ダウンチューブ5の下端二股部間に沿って竪向きに配置されており、保持バンドによりクランクケース38に支持されている。また、ショックアブソーバ51は、その軸芯線C1が、車幅中心線に沿うように、車幅方向中央部に配置されている。
【0039】
リザーブタンク53の下端部は、ガス流通用の連通管54の前端部に接続されている。左右のロアフレーム6は、前後方向中間部でクロス部材62により結合されており、前記ガス流通用の連通管54は、クロス部材62の左端部の下面に形成された凹部62aを通過し、左側のロアフレーム6の車幅方向内面に沿って、前方に延びている。
【0040】
左右のロアフレーム6を連結するクロス部材62に形成された前記凹部62aは、上方に窪んで前後方向に延びており、一方、ショックアブソーバ51は、連通管54が接続される部分が下方に向いて配置されている。連通管54は、クロス部材62のうち、前述のように、クレビス51eの下方に位置するクロス部材62の左端部に形成された凹部62aを通過して前方に延びている。これによって連通管54は、左右一対のロアフレーム6の間で、クロス部材62の下方を前方に延び、その下面が左右一対のロアフレーム6の下面よりも上方に位置することができる。
【0041】
図4は、
図3のIV-IV断面図(後面図)であり、左右のロアフレーム6を結合するクロス部材62は、左右両端部に断面L字状の取付面62bが形成されており、各取付面62bが各ロアフレーム6の上面及び車幅方向内面に当接され、溶接により各ロアフレーム6に固着されている。前述の左右一対のエンジン用下側取付部31と、左右一対のショックアブソーバ用の支持部57とは、同一のクロス部材62の上面に、クロス部材62と一体成形されている。エンジン用下側取付部31は、クロス部材62の左右両端部の上面から上方に突出しており、ロアフレーム6の上面よりも上方位置で、エンジン30の下端被取付部30aを支持している。ショックアブソーバ51の支持部57は、クロス部材62の車幅方向の略中央部に、左右に一定間隔を置いた状態で配置され、クロス部材62の上面から上方に突出しており、ロアフレーム6の上面よりも上方位置で、ショックアブソーバ51の前端クレビス51eを、支軸58により回動自在に支持している。
【0042】
ロアフレーム6の下面には、ショックアブソーバ51、連通管54及びクランクケース38を下方から覆う樹脂製の前記保護プレート49が取り付けられている。
【0043】
保護プレート49の前端部は、ロアフレーム6の前端湾曲部に沿って上方に湾曲しており、リザーブタンク53(
図1及び
図3)を前方から覆っている。保護プレート49には、軽量化及び空気流通のために、各種形状及び大きさの孔49bが形成されており、また、リザーブタンク53のガス注入口に対応する位置には、ガス注入具等を挿入するための挿入孔が形成されている。
【0044】
(リンク機構52)
図2において、リンク機構52は、ショックアブソーバ51の後端部とスイングアーム40とを連結する第1リンク部材71と、該第1リンク部材71とメインフレーム3とを連結する第2リンク部材72と、を有している。本実施例では、第2リンク部材72が第1リンク部材71よりも上方に配置されている。第1リンク部材71は、第1リンク部材71の一端部となる下端の第1の連結部(ショック側連結部)81と、上部前端の第2の連結部(アーム側連結部)82と、第1リンク部材71の他端部となる上端の第3の連結部(第2リンク側連結部)83と、を有している。第2リンク部材72は、第2リンク部材72の一端部となる下端の第4の連結部(第1リンク側連結部)90と、第2リンク部材72の他端となる上端の第5の連結部(フレーム側連結部)91とを有している。
【0045】
第1リンク部材71の第1の連結部81は、ショックアブソーバ51のロッド部51bの後端部に、回動自在に連結され、第2の連結部82は、スイングアーム40のピボット軸部33の後方近傍位置に、回動自在に連結され、第3の連結部83は、第2リンク部材72の第4の連結部90に、回動自在に連結されている。第2リンク部材72の第4の連結部90は、前述のように、第1リンク部材71の第3の連結部83に、回動自在に連結され、第5の連結部91は、スイングアームブラケット部3aの上端のリンク支持部3bに、回動自在に連結されている。なお、本実施例では、各連結部における連結構造は、ピンを介してそれぞれ連結されることで、連結対象同士で相対回動自在に構成されている。
【0046】
図5はリンク機構52の斜視図であり、第1の連結部81は、左右に分岐する二股状に形成されており、スイングアーム40の下面よりも下方位置において、前記二股状部分の間にショックアブソーバ51のロッド部51bの後端部が挿入されて、回動自在に連結されている。第1リンク部材71は、車幅方向に幅広く形成されており、第1の連結部81から前上方に延びている。第2の連結部82は、スイングアーム40の上端近傍に形成された支持部40aに、連結ピン86を介して回動自在に連結されている。該連結ピン86は、第2の連結部82を車幅方向に貫通し、スイングアーム40の左右のアーム部にナット86bにより固定されている。これにより、左右のアーム部のクロス部材としての役目を果たしている。また、スイングアーム40の左右のアーム部は、連結体88によっても連結されている。
【0047】
第1リンク部材71は、連結体88の前開きの凹部内を前上方に通過し、第3の連結部83は、スイングアーム40の上面よりも上方に位置しており、左右端の段部を介して幅狭く形成されている。すなわち、第3の連結部83は、左右両端部の段部の車幅方向の幅だけ、第1及び第2の連結部81、82と比べ、車幅方向の幅が狭く形成されている。
【0048】
第2リンク部材72の第5の連結部91は、上側のチェーンガイドローラ46よりも上方位置において、左右のスイングアームブラケット部3aの支持部3bに、連結軸89を介して回動自在に連結されている。この連結軸89は、ボス状の第5の連結部91内を車幅方向に貫通し、左右のスイングアームブラケット部3aに結合されることにより、車体フレーム1のクロス部材としての役目も果たしている。第5の連結部91を支持する連結軸89は、メインフレーム3の車幅方向の外方に突出するナット89aにより、メインフレーム3の取付部3bに着脱自在に締結されている。
【0049】
図6はリンク機構52の背面図であり、第2リンク部材72の第5の連結部91の車幅方向の幅は、左右のスイングアームブラケット部3aの車幅方向の内面間距離に概ね対応する寸法に形成されている。第2リンク部材72の第4及び第5の連結部90、91間の中間部は、後下方にゆくに従い、車幅方向の幅が狭くなるように、台形状に形成されている。また、この台形状部分は、軽量化のために薄い厚みで形成されている。第2リンク部材72の第4の連結部90は、左右二股状に形成されており、この二股状の第4の連結部90内に、第1リンク部材71の第3の連結部83が嵌め込まれている。
【0050】
上記のように、第2リンク部材72の上下方向の中間部を、後下方に向かって幅が狭くなる台形状に形成し、かつ、第3の連結部83の車幅方向の幅を狭くすることにより、左側のスイングアームブラケット部3aとリンク機構52との間に、余裕を持って駆動チェーン45を通過させることができる空間を確保している。
【0051】
また、
図6において、ショックアブソーバ51の軸芯線C1を含む垂直面を仮想対称面と仮定すると、リンク機構52の各連結部81、82、83(90)、91は、前記仮想対称面に対し、左右対称に、左右(車幅)方向に延びるように形成されている。さらに、各連結部81、82、83(90)、91は、車幅方向の両端部において、回転自在に連結支持されている。
【0052】
図7及び
図8は、ショックアブソーバ51が最伸張時及び最圧縮時のリヤサスペンション装置50の側面図であり、カバー51d及びスプリング51cは省略している。
図8に示すように、最圧縮時のショックアブソーバ51のロッド部51bは、側面視で、後端部を除いて略車体フレーム1内に収納されており、
図8の状態から伸張することにより、スイングアームブラケット部3aから後方に突出する。
【0053】
図8において、ショックアブソーバ51が最圧縮時には、第1リンク部材71の第2の連結部(アーム側連結部)82は、側面視で、スイングアームブラケット部3aと、車幅方向に重なっている。
【0054】
本実施の形態において、ピボット軸部33の軸芯O5と第1の連結部81の軸芯O1との間の距離が、ピボット軸部33の軸芯O5と第2の連結部82の軸芯O2との間の距離よりも大きく設定されている。さらに第2の連結部82の軸芯O2と第1の連結部81の軸芯O1との間の距離が、第2の連結部82の軸芯O2と第3の連結部83の軸芯O3との間の距離よりも大きく設定されている。これによってショックアブソーバ51の移動量を、スイングアーム40の移動量よりも大きくすることができ、ショック低減特性を好適に設定することができる。伸張時において、第1の連結部81が第2の連結部82よりも後方に配置され、第3の連結部83が第2の連結部82よりも上方に配置される。これによって圧縮時に第1の連結部81を前方に押し込む向きに力が働くことになり、第1の連結部81の上下方向の移動量を減らして、前後方向の移動量を増やすことができる。
【0055】
スイングアーム40の下面には、ショックアブソーバ51の最伸張時に第1リンク部材71の第1の連結部81の一部が嵌まる凹部40bが形成されている。これにより、第1の連結部81の端部に締結されるナット等が、ショックアブソーバ51の最伸張時に車幅方向の外方に露出することになる。
【0056】
リンク機構52の第2リンク部材72は、揺動範囲が極め小さく、かつ、第4の連結部90の軸芯O3と第5の連結部91の軸芯O4とを結ぶ軸芯線C4は、メインフレーム3の後部の長さ方向に略沿う方向に延びている。メインフレーム3の後部の車幅方向内面には、メインフレーム3の後部の長さ方向に沿って、互いに平行な一対のリブ93が形成されている。また、スイングアーム40の連結体88には、ショックアブソーバ51の最伸張時に、第1リンク部材71の後下部の移動空間を確保するために、傾斜状の逃げ面88aが形成されている。
【0057】
メインフレーム3は、車幅方向内面側が開口したU字状断面を有しており、一対のリブ93は、車体フレーム3の上下の壁と略同じ高さに形成されている。
【0058】
リンク機構52は、ショックアブソーバ51が、
図7に示す最伸張状態と
図8に示す最圧縮状態との間で伸縮する過程において、第1リンク部材71の第1の連結部81の連結軸芯O1が、下方に突出する円弧状軌跡B1(
図8)に沿って移動するようになっている。それに伴い、ショックアブソーバ51自体は、前端支軸58の軸芯O0を中心として、わずかに下方に揺動するようになっている。このように、本実施の形態では、ショックアブソーバ51は、最圧縮状態から最伸張状態に変位する場合に、ショックアブソーバ51の後端部は、下方に凸となる軌跡B1に沿って移動する。このことから、ショックアブソーバ51の軸芯線C1が、水平面に対して最も近づく状態で、ロアフレーム6の下面よりもショックアブソーバ51が下方に突出しないように形成される。また、ショックアブソーバ51が圧縮されると、コイルばね51cの直径が増加することになるが、このような場合でも、ロアフレーム6の下面よりのショックアブソーバ51が下方に突出しないように構成される。
【0059】
しかも、ショックアブソーバ51の最伸張時と最圧縮時時とで、車体フレーム1(ロアフレーム6)に対するショックアブソーバ51の軸芯線C1の相対的な位置(揺動位置)が、一致するように、すなわち同位置になるように、リンク機構52のレバー比及び各部品の取付位置等が設定されている。要するに、ショックアブソーバ51は、伸縮過程において、一旦、前端支軸58の軸芯O0回りに下方に揺動するが、最終的には元の揺動位置に戻ることになる。
【0060】
また、
図7において、左側のスイングアームブラケット部3aの後端には、ショックアブソーバ51の最伸張時に、第2の連結部82の締結用ナット86bが、左側のスイングアームブラケット部3aから車幅方向外方(左方)に露出するように、前方に凹む凹部3dが形成されている。これにより、第2の連結部82の着脱作業が、車輌側方又は後方から工具を挿入して、容易に行うことができる。なお、凹部3dの代わりに、工具が車輌側方からナット86bにアクセス可能な大きさの貫通孔をメインフレーム3に形成してもよい。
【0061】
上記第2の連結部82の場合と同様に、第1リンク部材71と第2リンク部材72との連結部、すなわち、第3及び第4の連結部83、90も、ショックアブソーバ51の最伸張時に、第3及び第4の連結部83、84の締結用ナット83bが、スイングアーム40及びスイングアームブラケット部3aから車幅方向外方(左方)に露出するように、構成されている。具体的には、スイングアーム40に対して上方位置、かつ、スイングアームブラケット部3aに対して後方位置で、車幅方向の左方に露出するように、設定されている。
【0062】
なお、スイングアームブラケット部3a及びスイングアーム40に、工具が車輌側方又は後方からナット83bにアクセス可能な大きさの貫通孔、又は前方あるいは下方に凹む凹部を形成しておいてもよい。これにより、第3及び第4の連結部83、90の着脱作業が、車輌側方から容易に行うことができる。
【0063】
[リンク機構52の各部品の取付位置及びレバー比等の設定]
最伸張時と最圧縮時とでショックアブソーバ51の軸芯線C1を一致させるには、幾何学計算を用いて求めることができる。たとえば、スイングアーム40の最上位置と最下位置、ショックアブソーバ51の最伸張時及び最圧縮時における水平面に対するショックアブソーバ51の軸芯線C1の角度、ショックアブソーバ51の前後両端部の連結位置、ショックアブソーバ51のストロークS1を予め設定する。これらの設定値に加えて、ショックアブソーバ51の最伸張時および最圧縮時における軸芯線C1の傾斜角度が一致するとの条件に拘束した上で、各リンク部材71、72の各連結部の軸芯の相対位置を適宜選択することで、最伸張時と最圧縮時とでショックアブソーバ51の軸芯線C1が一致するような、各連結部の軸芯の相対位置を求めることができる。
【0064】
[実施の形態の作用]
車輌が凹凸路面あるいは山野等を走行する際、路面等から伝わる振動は、フロントフォーク17の伸縮並びにスイングアーム40の揺動に伴うリヤサスペンション装置50のショックアブソーバ51の伸縮により、減衰される。
【0065】
スイングアーム40は、ピボット軸部33の軸芯O5を通過する水平基準面Mを基準として、車体フレーム1に対して相対的に上下に揺動し、スイングアーム40が水平基準面Mから上昇する場合、すなわち、車輌の後部が沈み込む場合には、
図8のようにショックアブソーバ51が圧縮され、反対にスイングアーム40が前記水平基準面Mから下降する場合、すなわち、車輌の後部が浮き上がる場合には、
図7のようにショックアブソーバ51は伸張する。それと共に、リンク機構52も
図8の状態と
図7の状態の間で変化する。
【0066】
また、
図7において、ショックアブソーバ51の最伸張時、第1の連結部81の左端部の締結用のナット等は、スイングアーム40の下端の凹部40の下側位置、かつ、スイングアームブラケット部3aの後方位置で、車幅方向の左方に露出している。また、第2の連結部82の左端部の締結用ナット86bは、スイングアームブラケット部3aの後側の凹部3
d内で、車幅方向の左方に露出している。さらに、第3及び第4の連結部83,
90の左端部の締結用ナット
83bは、スイングアームブラケット部3aの後側位置で、車幅方向の左方に露出している。このように、第1乃至第4の連結部81、82、83、90は、ショックアブソーバ51の最伸張時に、車幅方向の外方に露出した状態となり、着脱用の工具を車輌側方又は後方からナット等にアクセスしやすくなる。
【0067】
[実施の形態の効果]
(1)駆動チェーン45は、車体フレーム1のメインフレーム3の車幅方向内側で、メインフレーム3とリンク機構52との間を通過するように配設されているので、メインフレーム3により駆動チェーン45を保護しながら、リンク機構52と駆動チェーン45との干渉を防ぐことができ、エンジン30の動力を後車輪42に伝達することができる。これによって、リヤサスペンション装置50のショックアブソーバ51をエンジン30の下方に配置しつつ、駆動チェーン45とリンク機構52との干渉を防いで、エンジン30からの動力を後車輪42に伝達して、車輌を自走させることができる。
【0068】
(2)スイングアーム40が、前端のピボッ
ト軸部33を中心に最も上方位置まで揺動した時(
図8)に、リンク機構52のうち、メインフレーム3に回動自在に連結される第5の連結91の軸芯O4が、駆動チェーン45よりも上方に位置するように、第5の連結部91を設けているので、メインフレーム3に、ブラケット等を用いずに、リンク機構52を直接連結していても、リンク機構52と駆動チェーン45との干渉を防ぐことができる。また、リンク機構支持用に特別のブラケット等が必要なくなることにより、軽量化及び組み付け作業の容易化を達成できる。さらに、第2リンク部材72にスイングアーム40から掛かる荷重を、直接的に、効率良くメインフレーム3に伝達できる。
【0069】
(3)リンク機構52の第5の連結部91を支持する連結軸89は、メインフレーム3の左右のフレーム部材を連結しているので、連結軸89が車体フレーム1のクロス部材の役目を果たすことになり、車体フレーム1の剛性維持及び車体フレーム用部品(クロス部材)の節約ができる。また、リンク機構52を構成する第2リンク部材72の剛性を高めることもできる。
【0070】
(4)第2リンク部材72の車幅方向両側縁は、下方に行くに従い車幅方向の幅が狭くなる台形状に形成されているので、駆動チェーン45とリンク機構52との干渉を防ぎつつ、リンク機構52の上端の第5の連結部91を幅広に形成でき、リンク機構52の支持剛性を高めることができる。
【0071】
(5)リンク機構52の上端の第5の連結部91を支持する連結軸89は、上側チェーンガイドローラ46より上方位置に配置されているので、駆動チェーン45と連結軸89との干渉を避けることができ、リンク機構52の組み付け作業及び支持機構を簡易化できる。
【0072】
(6)ショックアブソーバ51をエンジン30のクランクケース38の下側に配置しているので、エンジン30の後方に大きなスペースを確保でき、吸気ボックス36等の各種備品の配置自由度が増大する。
【0073】
(7)エンジン30の下側に略前後方向に沿ってショックアブソーバ51を配置しているので、車体の上下揺動時、ショックアブソーバ51の反力は車体に対し前向きに作用し、ライダーに対する突き上げ作用が防止でき、かつ、ブレーキング時のピッチング現象も抑制できる。
【0074】
(8)第2リンク部材72の上端の第5の連結部91の車幅方向の幅は、スイングアーム40の車幅方向の幅よりも大きく形成され、第2リンク部材72の下端の第4の連結部90の車幅方向の幅は、スイングアーム40の車幅方向間隔よりも小さく形成されているので、スイングアーム40とリンク機構52との干渉を防ぎ、第2リンク部材72の回動量を増やすことができる。
【0075】
(9)第1リンク部材71の上端の第3の連結部83の車幅方向の幅は、スイングアーム40に連結される第2の連結部82の車幅方向の幅よりも、小さく形成されているので、スイングアーム40に、第1及び第2リンク部材71,72の連結部83に干渉しないように逃げ用の凹部を形成する必要がなく、スイングアーム40の形状の複雑化を防ぎ、製造を容易化できる。さらに、スイングアーム40と前記連結部83との間に工具挿入用のスペースが確保でき、組み付け作業が容易になる。
【0076】
(10)チェーン伝動装置は、上側(張り側)の駆動チェーン45の上方に配置された上側チェーンガイドローラ46を備えており、リンク機構52の上端の第5の連結部91は、上側チェーンガイドローラ46よりも上方に配置されているので、リンク機構52と駆動チェーン45との干渉を、より効果的に防ぐことができる。
【0077】
(11)スイングアーム40の上面には、駆動チェーン45の張り側部分を、下側からガイドする上側チェーンガイド板48aが設けられているので、スイングアーム40の上下の揺動にかかわらず、駆動チェーン45を、がたつくことなく円滑に後方にガイドすることができる。
【0078】
(12)エンジン30のクランクケース38の下側に配置されるショックアブソーバ51を、車体フレーム1のロアフレーム6の下面よりも上方に配置しているので、ロアフレーム6により、ショックアブソーバ51が路面の障害物に接触するのを防ぐことができる。
【0079】
(13)エンジン30のクランクケース38の下側にショックアブソーバ51を配置しているので、エンジン30の後方に大きなスペースを確保でき、吸気ボックス36及びスロットルボディ32等の各種備品の配置自由度が増大する。
【0080】
(14)ショックアブソーバ51が、エンジン30の下側に略前後方向に沿って配置されているので、車体の上下揺動時に、ショックアブソーバ51の反力は車体に対し前向きに作用し、ライダーに対する突き上げ作用が防止でき、かつ、ブレーキング時のピッチング現象も抑制できる。
【0081】
(15)ショックアブソーバ51の前端部は、ロアフレーム6の上面より上方に突出する支持部57により、上下方向揺動可能に支持されているので、ショックアブソーバ51の取付作業が車体側方から容易に行える。
【0082】
(16)エンジン30のクランクケース38は、クランク室部38aの後側にトランスミッション室部38bを有しており、クランクケース38の下端面は、トランスミッション室部38bの下端がクランク室部38aの下端よりも高くなるように形成されているので、トランスミッション室部38bの下方空間に、上下に揺動するショックアブソーバ51の後部の揺動空間を確保でき、ショックアブソーバ51を、側方から見て、車体フレーム1内にコンパクトに配置できる。
【0083】
(17)ショックアブソーバ51は、コイルオーバー型であり、シリンダ部51aと、シリンダ部51aから後方に突出するロッド部51bと、シリンダ部51aの後半部分及びロッド部の外周側に配置されたコイルばね51cとを、備え、ショックアブソーバ51は、最圧縮時(
図10の時)に、側方から見て、略全体が車体フレーム1内に収まるように構成されているので、ショックアブソーバ51が、より的確に保護される。また、ショックアブソーバ51は、オイルが収納されて重量の大きいシリンダ部51aが、前側(揺動軸側)に配置され、軽いロッド部51bが後側(自由端側)に配置されるので、ショックアブソーバ51全体の上下方向の揺動動作が軽快に行える。
【0084】
(18)ショックアブソーバ51のシリンダ部51aに連通管54を介して接続されるリザーブタンク53が、ショックアブソーバ51の前方で、ダウンフレーム5の下端二股部内に、竪向きに配置されているので、バンク角を小さくすることなく、ショックアブソーバ51の前方の空間を利用して、リザーブタンク53をコンパクトに配置できる。
【0085】
(19)ロアアーム6のクロス部材62には、ショックアブソーバ51用の連通管54を前後方向に通過させる凹部62aが形成されているので、連通管54を上方又は下方に張り出させることなく、コンパクトに配管できる。
【0086】
(20)ショックアブソーバ51の下側を覆う保護プレート49を備えているので、走行中、下から跳ね上げられる小石や礫からも、ショックアブソーバ51を保護することができる。
【0087】
(21)ロアフレーム6には、ショックアブソーバ51の前端部を支持する支持部57より前方位置に、下側エンジン取付部31が設けられているので、エンジン30のクランクケース38自体が、ロアフレーム6のクロス部材として利用でき、車体フレーム1の剛性を増やすことができる。
【0088】
(22)ショックアブソーバ51は、軸芯線C1が後ろ上がりとなるように配置されており、ショックアブソーバ51の後端(O1)が最圧縮位置と最伸張位置との間で移動する間、下方に凸の円弧状軌跡B1に沿って移動するので、ショックアブソーバ51を、エンジン30のクランクケース38の下面に近付けて配置することができ、コンパクト化を達成できる。
【0089】
(23)ショックアブソーバ51の後端部を、第1及び第2リンク部材71,72により車体フレーム1に連結しているので、エンジン30のクランクケース38の後方スペースを利用して、リンク機構52をコンパクトに配置できる。
【0090】
(24)ショックアブソーバ51の最伸張時に、ショックアブソーバ51の後端部(ロッド部51の後端部)が、車輌側方から見て、スイングアーム40の下部と車幅方向に重なる位置に配置されているので、スイングアーム40にショックアブソーバ51を近づける構成とすることができ、ショックアブソーバ51の後部を、可及的に上方に位置させることができる。
【0091】
(25)ショックアブソーバ51の最圧縮時に、第2リンク部材72の第1リンク側連結部90の一部が、車輌側方から見て、前記スイングアーム40の上部と車幅方向に重なる位置に配置されているので、スイングアーム40と第2リンク部材72との干渉を防ぎ、第2リンク部材72の揺動範囲を小さくできる。
【0093】
(27)スイングアーム40の後端が車体フレーム1に対して上方に揺動した場合に、ショックアブソーバ51が圧縮することにより、ショックアブソーバ51が路面に近づく状態で、車体フレーム1内にショックアブソーバ51が収まる量が増加することができ、これによっても、ショックアブソーバ51を保護しやすくなる。
【0094】
(28)スイングアーム40の上昇及び下降(車輌後部の沈み込み及び浮き上がり)に伴い、ショックアブソーバ51は圧縮及び伸張するが、最伸張時と最圧縮時の間の伸縮過程において、ショックアブソーバ51は、前端支軸58の軸芯O0回りに、わずかに下方に揺動するだけであり、かつ、最圧縮時と最伸張時とでは、揺動位置が一致している。したがって、スイングアーム40に掛かる荷重を、ショックアブソーバ51により、効率良く吸収できる。
【0095】
(29)車体フレーム1(ロアフレーム6)に対するショックアブソーバ51の上下方向の揺動範囲を小さくできるので、ショックアブソーバ51の周囲の空間を、他の部品や備品を配置するために有効に利用できる。また、地上高を高くできることにより、凹凸面走行時におけるショックアブソーバ51と地面との接触を防ぐ。
【0096】
(30)ショックアブソーバ51の後端部に連結される第1リンク部材71の第1の連結部81の連結軸芯O1は、ショックアブソーバ51の最伸張時と最圧縮時との間で、下方に張り出す円弧状軌跡B1に沿って移動するように構成されているので、ショックアブソーバ51とエンジン30の下面との干渉を避けつつ、ショックアブソーバ51をエンジン下面に近づけて配置できる。
【0097】
(31)ショックアブソーバ51の前後端部の軸芯O0、O1を結ぶ軸芯線C1は、最圧縮時(及び最伸張時)に、後方に向かって上方に傾斜しているので、第1の連結部81(ショックアブソーバ51の後端部)の連結軸芯O1が、円弧状軌跡B1に沿って移動する場合に、ショックアブソーバ51の後端部と路面との接触を防ぎやすくなる。
【0098】
(32)ショックアブソーバ51の後端部を、第1及び第2リンク部材71、72により車体フレーム1に連結しているので、エンジン30のクランクケース38の後方スペースを利用して、リンク機構52をコンパクトに配置できる。
【0099】
(33)第2の連結部(アーム側連結部)82は、スイングアーム40の上下方向幅の中心線よりも、上方位置でスイングアーム40に連結されているので、第2の連結部82の軸芯O2と第1の連結部(ショック側連結部)81の軸芯O1との距離(第1のレバー長L1)を大きくすることができ、これにより、最圧縮位置と最伸張位置との間の円弧状軌跡B1の半径を大きくでき、最伸張位置と最圧縮位置との間のショックアブソーバ51の上下方向の揺動を抑制できる。
【0100】
(34)ショックアブソーバ51の最圧縮時に、第1リンク部材71の第2の連結部(アーム側連結部)82は、車輌側方から見て、スイングアームブラケット部3aと車幅方向に重なる位置に配置されているので、前記第2の連結部82は、スイングアーム40のピボット軸部33に近い位置に配置されることになり、これにより、スイングアーム40の上下揺動による第2の連結部82の上下方向の移動量を小さくできる。
【0101】
(35)ショックアブソーバ51の最伸張時に、ショックアブソーバ51の後端部(ロッド部51の後端部)が、車輌側方から見て、スイングアーム40の下部と車幅方向に重なる位置に配置されているので、スイングアーム40にショックアブソーバ51を近づける構成とすることができ、ショックアブソーバ51の後部を、可及的に上方に位置させることができる。
【0102】
(36)ショックアブソーバ51の最圧縮時に、第2リンク部材72の第4の連結部90の一部が、車輌側方から見て、前記スイングアーム40の上部と車幅方向に重なる位置に配置されているので、スイングアーム40と第2リンク部材72との干渉を防ぎ、第2リンク部材72の揺動範囲を小さくできる。
【0103】
(37)ショックアブソーバ51は、コイルオーバー型であり、径の大きいコイルスプリング53をショックアブソーバ51の後部に配置し、重量の大きいシリンダ部51aを前部に配置しているので、上下に揺動するショックアブソーバ51を上下方向にコンパクトに配置でき、かつ、揺動時の慣性力を小さく押さえることができ、衝撃吸収性能が良い。
【0104】
(38)ショックアブソーバ51のシリンダ部51aに連通管54で接続されるリザーブタンク53を、前記ショックアブソーバ51の前側に竪向きに配置しているので、ショックアブソーバ51の前側の空きスペースを、リザーブタンク53用に有効に利用できる。
【0105】
(39)エンジン30の下側に略前後方向に沿ってショックアブソーバ51を配置しているので、車体の上下揺動時、ショックアブソーバ51の反力は車体に対し前向きに作用し、ライダーに対する突き上げ作用が防止でき、かつ、ブレーキング時のピッチング現象も抑制できる。
【0106】
(40)スイングアーム40が上昇するとき、ショックアブソーバ51が圧縮するようにリンク機構52を構成しているので、車体が下方に沈み込むスイングアーム上昇時に、ショックアブソーバ51の軸芯線C1が後方位進むにつれて上方に傾斜するように傾斜することで、ショックアブソーバ51と路面障害物との接触を防ぎやすくすることができる。
【0107】
(41)車輌側面視において、ショックアブソーバ51が最伸張時に、ショックアブソーバ51の後端部がスイングアーム40の一対のアーム部分に重なるように構成されている。言い換えると、スイングアーム40には、ショックアブソーバ51の最伸張時にショックアブソーバ51の後端部が収納される下方開口を有する凹部40bが形成されている。これによって、最伸張時のショックアブソーバ51の後端部をなるべく上方に位置させることができ、ショックアブソーバ51の軸芯軸C1を後上がりに形成しやすくできる。
【0108】
(42)ショックアブソーバ51の前端部を支持する支軸58の下端が、ロアフレームの上面よりも上方に位置しているので、ショックアブソーバ51の下端を、ロアフレーム6の下面よりも上方に配置しやすい。
【0109】
(43)ショックアブソーバ51の前端部の支軸58を支持する支持部57は、左右方向に延びるクロスメンバー62と一体に形成されており、このクロス部材62が左右のロアフレーム6を連結している。これによってショックアブソーバ51から伝えられる衝撃を、左右のロアフレーム6にそれぞれ分散して伝えることができる。さらに支持部57よりも前方にエンジン用下側取付部31が配置されているので、ショックアブソーバ51からの衝撃は、左右のロアフレーム6からクランクケース38等のエンジンケースに伝わる。これによって、クランクケース38で衝撃を受けることができ、フレーム剛性を抑えて衝撃に対する剛性を高めることができる。また、クランクケース38等のエンジンケースは、左右一対の上側取付部32および前側取付部34にそれぞれ分散して衝撃を伝えることができる。
【0110】
(44)ショックアブソーバ51の前端部の支持部57とエンジン30の下側取付部31とが、クロス部材62に一体成形され、該クロス部材62は、左右一対のロアフレーム6に溶接され、又は締結されている。したがって、クロス部材62は、前後方向に延びて支持部57と下側取付部31とを前後に接続する接続部分の役目も果たす。これによってショックアブソーバ51に伝わる衝撃が、クロス部材62を伝わって支持部57から前側取付部31へ伝わり、円滑に上記衝撃を伝達することができる。
【0111】
(45)ロアフレーム6の下面に保護プレート49が設けられているので、ショックアブソーバ51の連通管54は、保護プレート49によって変位が規制され、これにより、ロアフレーム6の下方への連通管54の突出が防がれる。連通管54は、左右一対のロアフレーム6および保護プレート49で保護することができるので、ショックアブソーバ51が上下に揺動したとしても、連通管54が他備品や路面と干渉することを防ぐことができる。
【0112】
(46)ショックアブソーバ51のリザーブタンク53は、その軸芯線C1が、ダウンチューブ5の下端の二股部分と略平行になるように配置されているので、ダウンチューブ5の前記二股部分間にコンパクトに配置することができ、ダウンチューブ5の下端部分のスペースを有効利用することができる。
【0113】
(47)リザーブタンク53及び連通管54の前方領域は、保護プレート49で覆われているので、連通管54およびリザーブタンク53を、前方から保護することができる。
【0114】
(48)チェーンローラ46に車幅方向に対向するリンク機構52は、チェーンローラ46に対して車幅方向に間隔をおいて配置されているので、チェーンローラ46とリンク機構52との干渉が避けられる。
【0115】
(49)リンク機構52の上端の第5の連結部91を支持する連結軸89は、メインフレーム3の車幅方向の外方に突出するナット89aにより、メインフレーム3に着脱自在に締結されているので、たとえば、支持部材を介してリンク機構を車体フレームに支持する構造と比べ、連結軸89の着脱作業が容易である。
【0116】
(50)リンク機構52の上端の第5の連結部91を支持する連結軸89は、チェーンローラ46よりも前方、かつ、上方に配置されているので、駆動チェーン45が上方に揺れたとしても、連結軸89と駆動チェーン45との干渉を、より確実に防ぐことができる。
【0117】
(51)第1リンク部材71の駆動チェーン配置側の側面、すなわち、左側面は、スイングアーム40及びメインフレーム3よりも、車幅方向に間隔を置いて右方に配置されており、第1リンク部材71のうち、第2リンク部材72と連結される第3の連結部83は、前記左側面よりも車幅方向の内方(右方)に退避した位置に形成されているので、第1リンク部材71と第2リンク部材72との連結部(第3及び第4の連結部83、90)は、第1リンク部材71の前記左側面よりも、車幅方向の内方に位置する。これによって、前記両リンク部材71、72の締結部(第3及び4の連結部83、90)の車幅方向の一方端面(左端面)が、チェーンラインよりも、車幅方向の内方に位置させ易くなる。
【0118】
[その他の実施の形態]
(1)前記実施の形態では、リンク機構52の第5の連結部(フレーム側連結部)91を、メインフレーム3に直接回動自在に支持しているが、たとえば、左側のフレーム部材に対して右方に間隔をおいて支持部材(ブラケット)を配置し、この支持部材にリンク機構52の第5の連結部91を支持することができる。これにより、リンク機構52とメインフレーム3との間に、無端体が通過可能な車幅方向の空間を形成することができる。このように空間を形成することにより、リンク機構52の上端部(第5の連結部91)の設計自由度を高めつつ、リンク機構52と無端体(駆動チェーン45)との干渉を避けることができる。
【0119】
(2)本発明は、巻き掛け伝動装置として、チェーン及びスプロケット(ギヤ)を利用したチェーン式伝動装置の他に、ベルト及びプーリを利用したベルト式伝動装置を備えた鞍乗型車輌にも適用可能である。
【0120】
(3)前記実施の形態では、無端体の上方移動を規制する部材として、回転可能なチェーンガイドローラ46を設けているが、回転式でなくとも、無端体の上方への移動を規制可能であれば、たとえば、樹脂製のガイド体を備えてもよい。さらに、リンク機構52の第5の連結部91を支持する連結軸89の一部に、ローラ又はガイド体を設ける構造とすることも可能である。
【0121】
(4)前記実施の形態では、最伸張時と最圧縮時とでショックアブソーバ51の軸芯線C1(
図8)が一致すると説明したが、ショックアブソーバ51の揺動量が小さい範囲で軸芯線C1がずれる場合も本発明に含まれる。たとえば最伸張時から最圧縮時に移動する間に、ショックアブソーバの軸芯線が、最伸張時のショックアブソーバの軸芯線に対して離反した後で、最伸張時のショックアブソーバの軸芯線に近接するように設定されることで、スイングアームの揺動量に対してショックアブソーバの揺動量を小さくすることができ、このような構成も本発明に含まれる。
【0122】
(5)ショックアブソーバ51のリザーブタンク53は、左右のフレームの間に配置されるように、その長手方向が左右方向に垂直な方向に延びることが好ましいが、エンジンに沿って傾斜配置されてもよく、ロアフレーム間で前後方向に配置されてもよい。
【0123】
(6)リンク機構は、前記実施の形態の形状には限定されず、他の形態を採用することもできる。たとえば、リンク機構を構成する第1リンク部材は、ベルクランク型には限定されず、直線状リンク部材とすることも可能である。また、第2リンク部材を有しないリンク機構とすることもできる。
【0124】
(7)ショックアブソーバとしては、コイルを有しない単筒型のショックアブソーバを備えることも可能である。
【0125】
(8)クランクケースの底面形状は、前記実施の形態の形状には限定されず、たとえば、階段状に後上がりに形成される形状とすることもできる。
【0126】
(9)前記実施形態において、第1リンク部材には3つの連結部が設けられているが、各連結軸芯(O1、O2、03)の位置は、互いに異なる位置に設定されていればよく、また、必ずしも端部に設定する必要はない。さらに、上下位置が異なってもよい。たとえば中間部に第1の連結部又は第3の連結部が配置されてもよい。さらに、たとえばピボット軸部よりも前方または下方に第2の連結部が配置されてもよい。
【0127】
(10)本発明が適用される自動二輪車は、不整地を走行する車輌、たとえばモトクロス車輌に特に好適に用いることができる。具体的には、スイングアームの揺動量が比較的大きかったり、凹凸の大きい路面を走行したりして、サスペンションを介して車体に後車輪上下動による大きい衝撃が加わる車輌に適用されるのが好ましい。またこれに限らず、整地走行用の車輌であっても本発明を適用できる。
【0128】
(11)本発明は、ロアフレームの下面よりも上方にショックアブソーバが配置されておれば良く、車体フレームについては、前記実施の形態とは異なる構成の車体フレームにも適用可能である。たとえば、メインフレームとして、ヘッドパイプから車幅方向の中央を延びた後、左右に分岐する構造を備えていても良く、また、ダウンフレームとしては、ヘッドパイプの直後から左右に分岐する構造を備えていてもよい。
【0129】
(12)本発明は、上下に揺動するスイングアームのいかなる揺動位置においても、ロアフレームの下面よりも上方にショックアブソーバが位置することが好ましいが、少なくとも、スイングアームの後端部が車体フレームに対して最も上昇した状態、すなわち、車体が最も沈み込んだ状態で、エンジン等の駆動源が最も低い位置まで下がった時において、ロアフレームの下面よりもショックアブソーバが上方にあれば足りる。したがって、たとえばスイングアームの後端部が車体フレームに対して相対的に下降して、エンジン等の駆動源が比較的高い位置に上昇している時に、ショックアブソーバの下端がロアフレームの下面よりも下方に位置する構成も含まれるものである。
【0130】
(13)前記実施の形態では、
図8に示すように、ショックアブソーバ51の最圧縮時に、ショックアブソーバ51の後端部を除いて、ショックアブソーバ51の略全体が、車輌側方から見て、車体フレーム1内に収まる構造となっているが、本発明は、ショックアブソーバ51の最圧縮時でも、ショックアブソーバ51のロッド部の大部分が、車体フレーム1から後方に突出する構造とすることもできる。この場合は、保護プレート49を、車体フレーム1の後方まで伸ばし、ショックアブソーバ51の後端部を保護することが好ましい。
【0131】
(14)前記実施の形態では、駆動源としてエンジン(内燃機関)を搭載しているが、電動モータ等、他の駆動源を搭載した車輌にも適用可能である。