特許第6126929号(P6126929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126929
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】微差圧発信器及び空調システム
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20170424BHJP
   G01L 13/00 20060101ALI20170424BHJP
   G05D 16/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G01L19/06 101
   G01L13/00 B
   G05D16/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-145728(P2013-145728)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-32186(P2014-32186A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-156933(P2012-156933)
(32)【優先日】2012年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593193468
【氏名又は名称】日本電技株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 修
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 実公平7−20725(JP,Y2)
【文献】 特開平7−306107(JP,A)
【文献】 特開平10−90099(JP,A)
【文献】 国際公開第99/30544(WO,A1)
【文献】 特開平11−68333(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第742020(GB,A)
【文献】 独国特許出願公開第10335305(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準とする圧力と測定対象の圧力との差分を検出する差圧検出部と、
前記基準とする圧力を前記差圧検出部に導入する第1導圧部と、
前記測定対象の圧力を前記差圧検出部に導入する第2導圧部と、
を備え、
前記第1導圧部は、
少なくとも基準とする圧力が導入される開口部と、
前記開口部を密封して覆う袋体と、
前記袋体を囲い、内部と外部とを連通する連通部を有する箱体と、
を備えること、
を特徴とする微差圧発信器。
【請求項2】
請求項1に記載の微差圧発信器において、
前記第1導圧部は、第1導圧配管を備え、
前記第1導圧配管の一方の端部は、前記差圧検出部に連通し、他方の端部は、前記開口部となること、
を特徴とする微差圧発信器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微差圧発信器において、
前記袋体は、蛇腹状であること、
を特徴とする微差圧発信器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の微差圧発信器において、
予め設定した気温の上限における前記袋体内の空気の量が前記袋体の容積より小さく、予め設定した気温の下限において前記袋体内に空気が残存すること、
を特徴とする微差圧発信器。
【請求項5】
基準とする圧力と測定対象の圧力との差分を検出する差圧検出部と、
前記基準とする圧力を前記差圧検出部に導入する第1導圧部と、
前記測定対象の圧力を前記差圧検出部に導入する第2導圧部と、
前記差圧検出部の検出結果に基づいて、送風の制御を行う送風制御部と、
を備え、
前記第1導圧部は、
少なくとも基準とする圧力が導入される開口部と、
前記開口部を密封して覆う袋体と、
前記袋体を囲い、内部と外部とを連通する連通部を有する箱体と、
を備えること、
を特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微差圧発信器及びそれを備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造ラインのクリーンルームや排気の管理が必要な実験室等においては、空調を管理するシステム(以下、「空調システム」と称する。)によって室環境が整えられている。このようなクリーンルームや実験室等においては、空調システムによって、温度や湿度、さらには室内の気圧が高精度で管理されている。
空調システムによって室内の気圧を管理する場合、クリーンルーム内の気圧をクリーンルームの外部の気圧(外気圧)と同一に管理するため、微差圧発信器によって、クリーンルーム内の気圧と基準圧とする外気圧との差を検出している。
微差圧発信器には、クリーンルーム内の気圧と外気圧とが導入され、それらの気圧差が電気信号として検出される。
例えば、非特許文献1には、シリコンダイアフラムを用いた静電容量型の微差圧発信器が記載されている。
【0003】
非特許文献1に記載された微差圧発信器では、微差圧発信器から、気圧を測定すべきクリーンルーム内と外部とにそれぞれ導圧配管を配設し、その先端部を開放している。微差圧発信器側に集約された各導圧配管の端部間には、シリコンダイアフラムが設置されている。そして、クリーンルーム内の気圧とクリーンルーム外部の気圧(外気圧)との気圧差によって、シリコンダイアフラムに圧力が加わる。すると、シリコンダイアフラムは、気圧差によって歪みを生じ、歪み量に応じた電気信号を出力する。
上記した非特許文献1に記載されている微差圧発信器によれば、クリーンルームの内部と外部との気圧差を定量的に検出することができる。検出された気圧差を示す検出信号を、例えば送風機の制御信号に利用すれば、外部との気圧差に応じて、クリーンルーム内への送付量を調整することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社山武ビルシステムカンパニー、微差圧センサ、形PY8000D、仕様・取扱説明書、2011年1月改訂21版、[2012年6月18日検索]インターネット URL:http://www.azbil.com/jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した非特許文献1に記載の微差圧発信器を用いてクリーンルーム内の圧力を調整するには、クリーンルーム内の圧力を静的な外気の圧力と比較することが望ましいものの、クリーンルーム外部においては、風等の外乱によって外気圧が静的な圧力から変化することがある。このような外乱が発生した場合、微差圧発信器が正確な基準圧を検出できないことから、空調システムによる適切な気圧の制御を行うことが困難となる。
このように、従来の微差圧発信器においては、室圧を制御するための基準圧を適切に検出する上で改善の余地があった。
本発明の課題は、室圧を制御するための基準圧をより適切に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る微差圧発信器は、
基準とする圧力と測定対象の圧力との差分を検出する差圧検出部(110)と、前記基準とする圧力を前記差圧検出部に導入する第1導圧部と、前記測定対象の圧力を前記差圧検出部に導入する第2導圧部(101b)と、を備え、前記第1導圧部は、少なくとも基準とする圧力が導入される開口部(e,300a)と、前記開口部を密封して覆う袋体(103,303)と、前記袋体を囲い、内部と外部とを連通する連通部を有する箱体(102,302)と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る微差圧発信器は、
前記第1導圧部は、第1導圧配管(101a,301a)を備え、前記第1導圧配管の一方の端部は、前記差圧検出部に連通し、他方の端部(e)は、前記開口部となること、を特徴とする。
また、本発明の一態様に係る微差圧発信器は、
前記袋体(303)は、蛇腹状であること、を特徴とする。
また、本発明の一態様に係る微差圧発信器は、
予め設定した気温の上限における前記袋体内の空気の量が前記袋体の容積より小さく、予め設定した気温の下限において前記袋体内に空気が残存すること、を特徴とする。
本発明の一態様に係る空調システムは、
基準とする圧力と測定対象の圧力との差分を検出する差圧検出部(110)と、前記基準とする圧力を前記差圧検出部に導入する第1導圧部と、前記測定対象の圧力を前記差圧検出部に導入する第2導圧部(101b)と、前記差圧検出部の検出結果に基づいて、送風の制御を行う送風制御部(200)と、を備え、前記第1導圧部は、少なくとも基準とする圧力が導入される開口部(e,300a)と、前記開口部を密封して覆う袋体(102,302)と、前記袋体を囲い、内部と外部とを連通する連通部を有する箱体(103,303)と、を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、室圧を制御するための基準圧をより適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の空調システム1の全体構成を示す模式図である。
図2】基準圧アダプターAの構成を示す模式図である。
図3】差圧検出部110の機能構成を示すブロック図である。
図4】他の実施形態の微差圧発信器300及び基準圧アダプターA2を説明する図である。
図5】他の実施形態の微差圧発信器300及び基準圧アダプターA3を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
(空調システム1の全体構成)
図1は、本実施形態に係る空調システム1の全体構成を示す模式図である。
図1において、空調システム1は、微差圧発信器100と、送風機制御部200とを備えている。
なお、以下、本実施形態に係る空調システム1を、密閉された室環境を有するクリーンルームに適用した場合を例に挙げて説明する。
即ち、本実施形態の空調システム1は、クリーンルーム内の室圧(測定圧)がクリーンルーム外部の気圧(基準圧=0[Pa])と等しくなるように、クリーンルームに設けられた図示しないファン(送風機)の出力を調整するシステムである。
【0010】
(微差圧発信器100の構成)
微差圧発信器100は、導圧配管101a,101bと差圧検出部110とを備えている。導圧配管101a,101bは、樹脂製のチューブや銅管等によって構成される。
導圧配管101aは、一端を微差圧発信器100内に設置され、他端をクリーンルーム外部の基準圧とする空間に設置されている。導圧配管101aのクリーンルーム外部側の端部には、後述する基準圧アダプターAが設置され、微差圧発信器100側の端部は、差圧検出部110の図示しないダイアフラム111における一方の圧力室に連通している。導圧配管101aの基準圧アダプターAが設置されている側の端部には、後述するように、基準圧アダプターAの構造によって、クリーンルーム外部の静的な気圧が導入されている。
【0011】
導圧配管101bは、一端を微差圧発信器100内に設置され、他端をクリーンルーム内に設置されている。導圧配管101bのクリーンルーム側の端部は開放され、微差圧発信器100側の端部は、差圧検出部110の図示しないダイアフラム111における他方の圧力室に連通している。導圧配管101bのクリーンルーム側の端部は開放されているため、導圧配管101b内部の圧力はクリーンルーム内の圧力と平衡状態となる。
なお、本実施形態では、微差圧発信器100が、クリーンルーム外部の気圧(基準圧)とクリーンルーム内の気圧(測定圧である室圧)との差分(差圧)を測定することから、適宜、外部を「基準側」、クリーンルーム内を「測定側」と称するものとする。
差圧検出部110は、基準圧と室圧との差分(差圧)に応じた電気信号である検出信号Sを送風機制御部200に送信する。送風機制御部200は、検出信号Sに基づいて図示しないファン(送風機)の出力を制御し、クリーンルーム内の室圧を制御する。
【0012】
(基準圧アダプターAの構成)
次に、導圧配管101aの基準側の端部に設置される基準圧アダプターAの構成について説明する。
図2は、基準圧アダプターAの構成を示す模式図である。
基準圧アダプターAは、導圧配管101aの基準側の端部(以下、「基準側端部e」と称する。)に設置されており、箱体102と、袋体103とを備えている。なお、図2においては、基準圧アダプターA内部の構成を説明するために、箱体102を破線で示し、透視した状態を表している。本実施形態では、導圧配管101aの基準側端部eが、基準とする圧力が導入される開口部である。
【0013】
箱体102は、風圧等の外力を遮る硬さの材料(例えば、プラスチック製等)からなる箱状部材であり、取付け用枠を介して壁等に固定されている。また、箱体102は、箱体102の内外を連通する連通孔102aを備えており、連通孔102aによって、箱体102内部の圧力は箱体102外部の圧力と一致した状態となる。なお、連通孔102aは、外部からの風等の影響が内部に及ばない小面積の開口部であり、本実施形態では、箱体102の対向する1対の側面における下端部分それぞれに、横長のスリットとして形成されている。
そして、箱体102は、後述するように基準側端部eを覆う袋体103を、容積に余裕を持たせて囲う構造となっている。即ち、箱体102と袋体103との間には、袋体103が最大に膨張した場合にも空間が形成され、袋体103内の圧力が箱体102の容積によって影響されない構造となっている。
【0014】
また、箱体102は風圧等の外力を遮る硬さの材料からなるため、箱体102内部の圧力は箱体102外部の圧力における動的な影響を受けることなく、箱体102外部の静的な圧力が内部に導入されている。
袋体103は、導圧配管101aの基準側端部eを密封して覆う袋状の部材であり、袋体103の内外の圧力が平衡するような柔軟性を有する材料(例えば、ビニル等)によって構成されている。この袋体103は、金属管からなるコネクタ103aを介して基準側端部eに取り付けられている。コネクタ103aは、袋体103が基準側端部eを密封した状態とするために、導圧配管101aとは溶接等によって連結され、袋体103とは接着等によって連結されている。
【0015】
また、袋体103には、予め一定量の空気が封入されており、温度変化によって導圧配管101a等の内部の空気が膨張あるいは収縮した場合にも、袋体103内に基準圧を検出可能な量の空気が維持されるようになっている。即ち、袋体103内に封入される空気の量については、設置環境として想定される気温の上限においても、導圧配管101aから膨出する空気の量が袋体103の容積より小さくなり、設置環境として想定される気温の下限においても、導圧配管101aに吸引された後に袋体103内に空気が残存する状態に設定される。袋体103が導圧配管101aの基準側端部eを密封して覆っていることによっても、基準側端部eに導入される基準圧をより安定した静的な圧力とすることができる。
【0016】
(差圧検出部110の構成)
次に、微差圧発信器100の差圧検出部110の構成について説明する。
図3は、差圧検出部110の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、差圧検出部110は、ダイアフラム111と、増幅回路112と、出力回路113とを備えている。
ダイアフラム111は、例えば、単結晶シリコンウェハをエッチングして製造された拡散型の半導体歪ゲージを備えている。この半導体歪ゲージは、ホイートストンブリッジ回路を構成している。
【0017】
ダイアフラム111に差圧Pが加わると、半導体歪ゲージに歪みが生じる。ダイアフラム111は、半導体歪ゲージに生じた歪みをホイートストンブリッジ回路によって、ピエゾ抵抗効果の抵抗値変化として検出する。
増幅回路112は、ダイアフラムによって検出された抵抗値の変化を増幅する。
出力回路113は、増幅回路112によって増幅された抵抗値の変化を検出信号Sとして送風機制御部200に送信する。
すると、送風機制御部200は、検出信号Sに応じて、図示しないファン(送風機)の出力を制御する。このようにファン(送風機)の出力が制御されることにより、クリーンルーム内の気圧が基準圧と一致するように制御される。
【0018】
(動作)
次に、動作を説明する。
本実施形態に係る空調システム1は、導圧配管101aの基準側端部eに基準圧アダプターAを有しており、基準側端部eはクリーンルーム外部に設置されている。また、空調システム1は、導圧配管101bの測定側の端部をクリーンルーム内に設置されている。
そして、空調システム1においては、導圧配管101aの基準側端部eに導入される気圧が、差圧検出部110のダイアフラム111における一方の圧力室に基準圧として入力される。
【0019】
さらに、導圧配管101bの測定側の端部に導入される気圧が、差圧検出部110のダイアフラム111における他方の圧力室に測定圧として入力される。
このとき、基準側端部eには、基準圧アダプターAが設置されているため、箱体102によって、風等の外乱の影響を抑制できる。
また、袋体103によって、温度変化による空気の膨張あるいは収縮に対しても安定して静的な基準圧を得ることができる。
そして、空調システム1が稼動すると、差圧検出部110において、基準圧と測定圧との差圧Pが生じている場合、ダイアフラム111の半導体歪ゲージに歪みが生じ、ホイートストンブリッジ回路によって検出される歪みに応じた検出信号Sが出力される。この検出信号Sは、測定圧と基準圧との差圧Pの値を示している。
【0020】
微差圧発信器100は、検出信号Sを送風機制御部200に出力し、送風機制御部200は、検出信号Sに応じたファン(送風機)の制御を行う。
具体的には、送風機制御部200は、検出信号Sが基準圧よりも測定圧が高いことを示している場合、ファン(送風機)の出力を低下させる制御を行う。一方、送風機制御部200は、検出信号Sが基準圧よりも測定圧が低いことを示している場合、ファン(送風機)の出力を上昇させる制御を行う。
このような動作の結果、クリーンルーム内の室圧を基準圧と一致させる制御を行う際に、安定した静的な基準圧を用いることが可能となる。
【0021】
以上のように、本実施形態に係る空調システム1は、微差圧発信器100の基準側端部eに基準圧アダプターAを備えている。
基準圧アダプターAは、基準圧を導入する導圧配管101aの基準側端部eを袋体103が密封し、袋体103を箱体102が囲う構造を有している。
そのため、箱体102が風圧等の外力を遮るため、箱体102内部の圧力は箱体102外部の圧力における動的な影響(外乱)を受けることなく、箱体102外部の静的な圧力が基準圧として内部に導入される。さらに、袋体103が基準側端部eを密封して覆っているため、基準側端部eに導入される基準圧がより安定して静的な圧力となる。
したがって、本実施形態に係る空調システム1によれば、クリーンルーム等の室圧を制御するための基準圧をより適切に検出することが可能となる。
【0022】
また、袋体103には、予め一定量の空気が封入され、温度変化によって導圧配管101a等の内部の空気が膨張あるいは収縮した場合にも、袋体103内に基準圧を検出可能な量の空気が維持されるようになっている。
したがって、基準側の温度が変動した場合であっても、適切な基準圧を得ることが可能となる。
本実施形態に係る基準圧アダプターAにおける各種設定値や材料は、空調システム1の設置環境等を加味した実験あるいはシミュレーションによって具体的に決定することができる。
例えば、基準圧アダプターAは、箱体102の外形を1辺数センチメートル程度とすることで、設置スペースの観点から有利となる。
【0023】
なお、本実施形態の空調システム1及び微差圧発信器100は、以上説明した構成に限定されるものではない。
例えば、箱体102の材料としてプラスチックを例に挙げて説明したが、このような構成に限定されるものではない。即ち、箱体102は、風等の外乱の影響を抑制できるものであれば良い。
また、袋体103の材料としてビニルを例に挙げて説明したが、このような構成に限定されるものではない。即ち、袋体103は、袋体103外部の圧力が内部に伝わる材料であれば良い。
【0024】
次に、本発明の他の実施形態について、図面を用いて説明する。
以下に説明する本発明の他の実施形態の空調システム2は、基準圧アダプターA2及び導圧配管301aの形態等が前述の一実施形態の基準圧アダプターA及び導圧配管101aとは異なる以外は、前述の一実施形態の空調システム1と同様である。
従って、前述の一実施形態の空調システム1と同様の機能を果たす部分には、共通する符号又は末尾に共通する符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0025】
図4は、他の実施形態の微差圧発信器300及び基準圧アダプターA2を説明する図である。図4(a)は、微差圧発信器300及び基準圧アダプターA2を示し、図4(b)は、基準圧アダプターA2を示している。
微差圧発信器300は、導圧配管301a,101bと差圧検出部110とを備えている。
導圧配管301aは、ポリエチレンやナイロン、フッ素樹脂等の樹脂製のチューブ状の部材である。この導圧配管301aの一端は、汎用のワンタッチ式ユニオン等の継手部材304により、微差圧発信器300の端部に設けられた開口孔300aに接続されている。また、導圧配管301aの他端には、後述する基準圧アダプターA2が配置されている。前述の一実施形態と同様に、導圧配管301aは、開口孔300aを介して、差圧検出部110のダイアフラム111(図3参照)における一方の圧力室に連通している。
導圧配管301aの基準圧アダプターA2が設置されている側の端部には、基準圧アダプターA2の構造によって、クリーンルーム外部の静的な気圧が導入されている。
【0026】
この導圧配管301aは、前述の一実施形態の導圧配管101aに比べてその長さが短く、後述する基準圧アダプターA2が、導圧配管301aを介して微差圧発信器300から吊り下げられた形態となっている。
この導圧配管301aとしては、例えば、外径8mm(内径6mm)の樹脂製チューブを用いることができるが、この限りではない。また、導圧配管301aは、銅管等の金属製を用いてもよい。
【0027】
基準圧アダプターA2は、導圧配管301aの他端、即ち、基準側の端部(以下、「基準側端部e」と称する)に設置されており、箱体302と、袋体303と、コネクタ303a等とを備えている。この基準圧アダプターA2は、クリーンルーム外部の基準圧とする空間に位置している。本実施形態では、導圧配管301aの基準側端部eが、基準とする圧力が導入される開口部である。
なお、基準圧アダプターA2内部の構成を説明するために、図4(a)では、箱体302の内部を透視した状態で示し、図4(b)では、箱体302を破線で示し、内部を透視した状態を表している。
【0028】
箱体302は、風圧等の外力を遮る硬さの材料(プラスチック等)からなる箱状部材である。本実施形態では、円筒形状である例を挙げて説明するが、この限りではない。
また、箱体302は、箱体302の内外を連通する連通孔302aを備えており、連通孔302aによって、箱体302内部の圧力は箱体302外部の圧力と一致した状態となる。なお、連通孔302aは、外部からの風等の影響が内部に及ばない小面積の開口部であり、本実施形態では、箱体302の長手方向の上端部と下端部に、対向するようにスリット状に形成されている。
【0029】
さらに、箱体302は、後述する袋体303を、容積に余裕を持たせて囲う構造となっている。即ち、箱体302と袋体303との間には、袋体303が最大に膨張した場合にも空間が形成され、袋体303内の圧力が箱体302の容積によって影響されない構造となっている。
さらにまた、箱体302は、前述のように、風圧等の外力を遮る硬さの材料からなるため、箱体302内部の圧力は箱体302外部の圧力における動的な影響を受けることなく、箱体302外部の静的な圧力が内部に導入されている。
【0030】
袋体303は、導圧配管301aの基準側端部eを密封して覆う袋状の部材であり、図4(b)に示すように、略円筒形状であり、その周面部分が蛇腹状となっている。この袋体303は、内部に予め一定量の空気が封入されており、内部の空気の膨張や収縮に応じて、図4(b)に示す矢印方向(即ち、円筒形状の長手方向)に伸縮自在となっている。
この袋体303は、その内外の圧力が平衡するような柔軟性を有する材料(ビニル等)によって構成されている。
この袋体303は、金属管からなるコネクタ303aを介して基準側端部eに取り付けられている。コネクタ303aは、袋体303が基準側端部eを密封した状態とするために、導圧配管301aとは溶接等によって連結され、袋体303とは接着等によって連結されている。なお、導圧配管301aと袋体303とは、タケノコ接続等により、接続してもよい。
【0031】
袋体303は、温度変化によって導圧配管301a等の内部の空気が膨張あるいは収縮した場合にも、袋体303内に基準圧を検出可能な量の空気が維持されるようになっている。即ち、袋体303内に封入される空気の量については、設置環境として想定される気温の上限においても、導圧配管301aから膨出する空気の量が袋体303の容積より小さくなり、設置環境として想定される気温の下限においても、導圧配管301aに吸引された後に袋体303内に空気が残存する状態に設定される。
袋体303が導圧配管301aの基準側端部eを密封して覆っていることによっても、基準側端部eに導入される基準圧をより安定した静的な圧力とすることができる。
【0032】
このような形態とした場合には、前述の一実施形態の奏する効果に加えて、さらに、以下のような効果を奏することができる。
本実施形態によれば、前述の一実施形態に比べて、基準圧アダプターA2の配置スペースを小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、箱体102を取付け用枠を介して壁等に固定する等の作業も不要であり、基準圧アダプターA2の設置作業が短時間で容易に行える。さらに、箱体302を固定しなくとも、基準圧アダプターA2自体を安定して配置できる。
さらにまた、基準圧アダプターA2は、蛇腹状の袋体303を備えることにより、前述の一実施形態の袋体103及び箱体102を用いた場合に比べて、小型化することができる。加えて、袋体303は、蛇腹形状により、その長手方向にのみ伸縮するので、箱体302の設計等が容易である。
【0033】
図5は、他の実施形態の微差圧発信器300及び基準圧アダプターA3を説明する図である。
以下に説明する本発明の他の基準圧アダプターA3は、微差圧発信器300との接続形態が、前述の基準圧アダプターA2等と異なる以外は、前述の他の実施形態の基準圧アダプターA2と同様である。
従って、前述の一実施形態の空調システム1や他の実施形態の空調システム2と同様の機能を果たす部分には、共通する符号又は末尾に共通する符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0034】
この基準圧アダプターA3は、接続部材305により、微差圧発信器300の開口孔300aに取り付けられている。本実施形態では、開口孔300aが基準側端部eに相当し、基準とする圧力が導入される開口部である。
本実施形態では、接続部材305は、例えば、その外周面にねじ山が切られており、一方の端部は、開口孔300aの内周面に形成された雌ネジと螺合する形態となっている。従って、本実施形態は、基準圧アダプターA3が直接開口孔300aに取り付けられた形態に等しい。この接続部材305は、例えば、金属製である。
接続部材305の一方の端部は、前述のように、開口孔300aに接続されている。また、接続部材305の他方の端部(基準側端部e側)は、袋体303とは樹脂により溶接されており、基準側端部eを袋体303で密封した形態となっている。なお、接続部材305の他方の端部に、袋体303を接着して配置してもよい。
【0035】
このような形態とした場合には、前述の一実施形態の奏する効果に加えて、さらに、以下のような効果を奏することができます。
本実施形態によれば、前述の一実施形態の基準圧アダプターAや他の実施形態の基準圧アダプターA2に比べて、さらに基準圧アダプターA3の配置スペースを小さくし、省スペース化することができる。
また、本実施形態によれば、取付け用枠を介して箱体102を壁等に固定する等の作業も不要であり、基準圧アダプターA3の設置作業が短時間で容易に行える。さらに、箱体302を固定しなくとも、基準圧アダプターA3自体を安定して配置できる。
さらにまた、基準圧アダプターA3は、蛇腹状の袋体303を備えることにより、前述の一実施形態の袋体103及び箱体102を用いた場合に比べて、小型化することができる。加えて、袋体303は、蛇腹形状により、その長手方向にのみ伸縮するので、箱体302の設計が容易である。
【0036】
なお、上述の他の実施形態の空調システム2及び微差圧発信器300は、以上説明した構成に限定されるものではない。
例えば、箱体302の材料としてプラスチックを例に挙げて説明したが、このような構成に限定されるものではない。即ち、箱体302は、風等の外乱の影響を抑制できる材料であれば良く、また、円筒形状に限らず、例えば、角柱形状等としてもよい。
また、袋体303の材料としてビニルを例に挙げて説明したが、このような構成に限定されるものではない。即ち、袋体303は、シリコン樹脂等、袋体303の外部の圧力がその内部に伝わる程度に柔軟な材料であればよい。
さらに、袋体303は、その周面部分が蛇腹状である例を示したが、これに限らず、内部の空気の容積に合わせて伸縮自在であれば、他の形状としてもよい。
【0037】
なお、上述の各実施形態等は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態等によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0038】
1,2:空調システム、100,300:微差圧発信器、101a,301a,101b:導圧配管、e:基準側端部、102,302:箱体、102a,302a:連通孔、103,303:袋体、103a,303a:コネクタ、110:差圧検出部、111:ダイアフラム、112:増幅回路、113:出力回路、A,A2,A3:基準圧アダプター、200:送風機制御部
図1
図2
図3
図4
図5