特許第6126960号(P6126960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6126960-粘着シート 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126960
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20170424BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170424BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170424BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20170424BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J109/00
   C09J133/00
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-201260(P2013-201260)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-67653(P2015-67653A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大畠 健二
(72)【発明者】
【氏名】川田 智史
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111534(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/015991(WO,A1)
【文献】 特開2012−167160(JP,A)
【文献】 特開2012−149183(JP,A)
【文献】 特表2011−500924(JP,A)
【文献】 特開2013−112788(JP,A)
【文献】 特表2008−527070(JP,A)
【文献】 特開2009−149644(JP,A)
【文献】 特開2006−328112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有する基材の少なくとも片面に、主剤樹脂(A)、ホスフィン酸塩系難燃剤(B)、及び25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤(C)を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤組成物中の(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、52〜150質量部であり、(C)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜50質量部である、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物中の(B)成分と(C)成分との含有量比〔(B)/(C)〕が、50/50〜95/5である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式(b1)又は(b2)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【化1】
〔上記式(b1)、(b2)中、Ra、Rb、Rc、Rdは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基を示し、RaとRb及びRcとRdは、互いの環を形成してもよく、当該環は置換基を有してもよい。Reは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。Mは、それぞれ独立して、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、又はアンモニウムイオンを示す。mはMの価数であり、式(b2)中のp、q、xは、mx=pqを満たす整数である。〕
【請求項4】
(C)成分が、下記一般式(c1)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート。
【化2】
〔上記式(c1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい環形成炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換基を有してもよい環形成炭素数6〜24のアリール基を示す。nは0〜3の整数であり、nが2以上の場合、複数あるOR4は各々同一でも異なっていてもよい。R1とR2、R2とR3、又はR1とR3は、互いに結合して環を形成していてもよく、nが1以上の場合、R1、R2、又はR3と1つのR4とは互いに結合して環を形成していてもよく、当該環は、置換基を有していてもよい。
Dは、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のオキシアルキレン基、又は−O−Y−O−で表される基(Yは2価の有機基)を示す。〕
【請求項5】
(C)成分の25℃における粘度が、1000〜50000mPa・sである、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の乾燥後塗布量が5〜50g/m2である、請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤組成物が、ハロゲン化合物及びアンチモン化合物を含まない、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
主剤樹脂(A)が、アクリル系共重合体及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。さらに詳しくは、優れた難燃性、粘着特性を有し、保存性及び取扱性が良好な難燃性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品関係や電子機器関連、航空機、原子力発電所等、様々な分野で難燃性が要求されている。これに対応すべく、それら分野で使用される部材には難燃性が付与され、同時にこれら部材を固定する粘着テープ又はシートにも、UL94規格におけるVTM−0レベルの高い難燃性が求められている。
【0003】
粘着テープ又はシートの難燃性を向上させるため、一般に、粘着剤組成物に対して、各種難燃剤を含有させる方法が採られている。かかる難燃剤としては、臭素や塩素等のハロゲン系化合物や、ハロゲン系化合物に酸化アンチモンを併用したもの等が一般的であった。
しかしながら、ハロゲン系化合物の難燃剤は、燃焼時にハロゲン系ガスが発生するため、人体や環境に有害であるという問題があった。
そこで、これらの問題を解決するべく、特許文献1には、ハロゲン系化合物以外の難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤と窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤を配合してなる粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4450419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の難燃性粘着テープに使用される粘着剤組成物は、特定の群から選ばれる窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤を必須成分としているが、これらの化合物は吸湿性が高いため、保存時及び使用時の水分や湿気に注意を払う必要があり、保存性及び取扱性が劣る。そのため、特許文献1記載の難燃性粘着テープは、連続的な生産には不向きである。
【0006】
本発明は、連続的な生産が可能であり、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有し、優れた粘着特性を有する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤組成物において、ホスフィン酸塩系難燃剤と25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤とを所定の割合で配合した場合、上記課題が解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
〔1〕UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有する基材の少なくとも片面に、主剤樹脂(A)、ホスフィン酸塩系難燃剤(B)、及び25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤(C)を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤組成物中の(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、52〜150質量部であり、(C)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜50質量部である、粘着シート。
〔2〕前記粘着剤組成物中の(B)成分と(C)成分との含有量比〔(B)/(C)〕が、50/50〜95/5である、上記〔1〕に記載の粘着シート。
〔3〕(B)成分が、下記一般式(b1)又は(b2)で表される化合物である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の粘着シート。
【化1】
〔上記式(b1)、(b2)中、Ra、Rb、Rc、Rdは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基を示し、RaとRb及びRcとRdは、互いの環を形成してもよく、当該環は置換基を有してもよい。Reは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。Mは、それぞれ独立して、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、又はアンモニウムイオンを示す。mはMの価数であり、式(b2)中のp、q、xは、mx=pqを満たす整数である。〕
〔4〕(C)成分が、下記一般式(c1)で表される化合物である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の粘着シート。
【化2】
〔上記式(c1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい環形成炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換基を有してもよい環形成炭素数6〜24のアリール基を示す。nは0〜3の整数であり、nが2以上の場合、複数あるOR4は各々同一でも異なっていてもよい。R1とR2、R2とR3、又はR1とR3は、互いに結合して環を形成していてもよく、nが1以上の場合、R1、R2、又はR3と1つのR4とは互いに結合して環を形成していてもよく、当該環は、置換基を有していてもよい。
Dは、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のオキシアルキレン基、又は−O−Y−O−で表される基(Yは2価の有機基)を示す。〕
〔5〕(C)成分の25℃における粘度が、1000〜50000mPa・sである、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔6〕前記粘着剤層の乾燥後塗布量が5〜50g/m2である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔7〕前記粘着剤組成物が、ハロゲン化合物及びアンチモン化合物を含まない、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔8〕主剤樹脂(A)が、アクリル系共重合体及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着シートは、連続的な生産が可能であり、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有し、優れた粘着特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着シートの構成の一態様を示す、粘着シートの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載において、「UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合」とは、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の難燃性試験規格UL94の薄手材料垂直燃焼試験方法に準ずる試験において、VTMランクがVTM−0と判定されるものであることをいう。
また、例えば「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の双方を示す語であり、「(ポリ)アルキレングリコール」とは、「ポリアルキレングリコール」及び「アルキレングリコール」の双方を示す語として用いている。なお、他の類似用語についても同様である。
さらに、本発明において、質量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値である。
【0012】
本発明の粘着シートは、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有する基材の少なくとも片面に、主剤樹脂(A)、ホスフィン酸塩系難燃剤(B)、及び25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤(C)を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
【0013】
図1は、本発明の粘着シートの構成の一態様を示す、粘着シートの断面模式図である。
本発明の粘着シートの構成は、図1(a)のように、基材11の片面に粘着剤層12aを有する粘着シート1aに限らず、図1(b)のように、基材11の片面に形成された粘着剤層12aの上に、更に剥離シート13aが積層された粘着シート1bであってもよい。
また、本発明の粘着シートは、図1(c)のように、基材11の両面に粘着剤層12a、12bを有する粘着シート1cであってもよく、図1(d)のように、該粘着剤層12a、12bのそれぞれの上に、更に剥離シート13a、13bが積層された粘着シート1dとしてもよい。
以下、本発明の粘着シートを構成する基材及び粘着剤層について説明する。
【0014】
〔基材〕
本発明の粘着シートに用いられる基材は、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有するものであれば、用途に応じて適宜選択することができる。
本発明の粘着シートは、このような基材と、難燃性の優れた粘着剤層を有するため、L94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を実現することができる。
【0015】
このような基材としては、樹脂単体で難燃性を有する樹脂からなる基材、難燃剤を含有させた樹脂組成物からなる基材、難燃性を有する樹脂又は難燃剤を含有させた樹脂組成物がシート又はフィルムにコートされてなる基材等の樹脂基材、鉄、銅、銀、アルミニウム等の金属基材等が挙げられる。
【0016】
樹脂単体で難燃性を有する樹脂としては、ポリエーテルイミド樹脂やポリフェニレンエーテルイミド樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
【0017】
難燃剤を含有させた樹脂組成物からなる基材に用いられる樹脂としては、上記樹脂単体で難燃性を有する樹脂のほか、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、EVA樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂(ABS樹脂)、エポキシ樹脂、ポリスチレン−ポリカーボネートアロイ樹脂、ポリスチレン−ABSアロイ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
難燃剤としては、リン系難燃剤、シリコーン系化合物、メラミン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、グアニジン系化合物等の有機系難燃剤や、アンチモン系化合物、金属水酸化物等の無機系難燃剤が挙げられる。上記難燃剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
難燃性を有する樹脂又は難燃剤を含有させた樹脂組成物がシート又はフィルムにコートされてなる基材に用いられるシート又はフィルムとしては、難燃性を有するもので無くても使用できる。
このようなシート及びフィルムを構成する材料としては、上述の難燃性を有する樹脂の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース等の樹脂や、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、織布、不織布等が挙げられる。
【0019】
上記基材のうち、難燃性の観点から、ポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる基材、もしくは、ポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選ばれる難燃性を有する樹脂が、前記シート又はフィルムにコートされてなる基材を用いることが好ましい。
【0020】
また、上記基材のうち、環境対応の観点から、ハロゲン系化合物を実質的に含有しない基材が好ましく、いずれの難燃剤も実質的に含有しない基材を用いることがより好ましい。
なお、基材の全量に対するハロゲン系化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
また、基材の全量に対する難燃剤の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0021】
本発明の粘着シートに使用し得る基材の市販品としては、例えば、ルミラーZV10、ルミラーZV30、ルミラーZV70(商品名、ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリイミド樹脂をコートしたフィルム、東レ株式会社製)、トレリナ(商品名、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム、東レ株式会社製)、ミクトロン(商品名、ポリアラミド樹脂フィルム、東レ株式会社製)、カプトン(商品名、ポリイミド樹脂フィルム、東レ・デュポン株式会社製)、スペリオUT(商品名、ポリエーテルイミド系樹脂フィルム、三菱樹脂株式会社製)、ダイアラミー(商品名、難燃剤含有ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、三菱樹脂株式会社製)等が挙げられる。
また、LAXRONポリカSDB−3(商品名、難燃剤含有ポリカーボネート樹脂フィルム、トキワ電気株式会社製)、サンロイドバリア(商品名、ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルム、住友ベークライト株式会社製)、サンロイドエコシートポリカ(商品名、ノンハロゲン難燃剤含有ポリカーボネート樹脂フィルム、住友ベークライト株式会社製)、ウルテム(商品名、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、旭硝子株式会社製)、レキサン(商品名、ポリカーボネート系樹脂シート、旭硝子株式会社製)、バロックス(商品名、ポリブチレンテレフタレート系樹脂フィルム、旭硝子株式会社製)、セフティーフィルム(商品名、ポリエチレン系樹脂フィルム、大井田工業株式会社製)等が挙げられるが、これらの市販品に限定されるわけではない。
【0022】
基材の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜決定されるが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜85μm、更に好ましくは10〜70μm、より更に好ましくは15〜50μmである。
【0023】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着シートは、上記基材の少なくとも片面に、主剤樹脂(A)、ホスフィン酸塩系難燃剤(B)、及び25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤(C)を含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものである。
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚みは、粘着シートの難燃性及び粘着力の両立の観点から、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μm、より好ましくは15〜30μmである。
また、粘着剤層の乾燥後の塗布量は、粘着シートの難燃性及び粘着力の両立の観点から、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜40g/m2、更に好ましくは15〜30g/m2である。
なお、本発明において、「粘着剤層の厚み」又は「粘着剤層の乾燥後の塗布量」とは、基材の片面又は両面に設けられる粘着剤層のそれぞれの厚み(図1(a)〜(d)のZ1、Z2の各々)、もしくはそれぞれの乾燥後の塗布量を示す。
【0024】
本発明で用いられる粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、主剤樹脂(A)、ホスフィン酸塩系難燃剤(B)、及び25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤(C)を含むが、必要に応じて、架橋剤、その他の添加剤を含有してもよい。
以下、当該粘着剤組成物中に含まれる各成分について説明する。
【0025】
<(A)成分:主剤樹脂>
本発明で用いる主剤樹脂(A)としては、粘着性を有するものであればよく、例えば、アクリル系重合体、ゴム系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ジエンブロック共重合体系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、粘着シートの粘着力の観点から、アクリル系重合体及びゴム系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
【0026】
[ゴム系樹脂]
ゴム系樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリイソブチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、ポリブチル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等の合成ゴムや、天然ゴムが挙げられる。
【0027】
ゴム系樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、粘着剤組成物の凝集力を向上させ、被着体への汚染を防止する観点から、好ましくは2万以上、より好ましくは5万〜600万、更に好ましくは15万〜150万である。
【0028】
[アクリル系重合体]
アクリル系重合体としては、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1)」ともいう)由来の構成単位(a1)を有する重合体が好ましく、さらに官能基含有モノマー(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)由来の構成単位(a2)を含む共重合体がより好ましい。なお、当該アクリル系重合体は、モノマー(a1)、(a2)以外のその他のモノマー(a3)(以下、「モノマー(a3)」ともいう)由来の構成単位(a3)を含んでいてもよい。
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合形態については特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0029】
(モノマー(a1))
モノマー(a1)のアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更に好ましくは4〜6である。
モノマー(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらの中でも、粘着性能の観点から、炭素数4〜6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましく、ブチルアクリレートが更に好ましい。
なお、モノマー(a1)を2種以上併用する場合、少なくともブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
モノマー(a1)中のブチル(メタ)アクリレートの含有量としては、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
【0031】
モノマー(a1)由来の構成単位(a1)の含有量は、粘着シートの粘着力向上の観点から、アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは50〜99.9質量%、より好ましくは60〜99質量%、更に好ましくは70〜98質量%、より更に好ましくは80〜97質量%である。
【0032】
(モノマー(a2))
モノマー(a2)は、分子中に官能基を有する化合物であり、分子中に官能基を有し、且つ二重結合を1つ以上有する化合物であることが好ましい。モノマー(a2)が有する官能基は、架橋反応の架橋点となり、凝集力を向上させ、粘着シートの粘着力をより向上させることができる。
官能基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0033】
モノマー(a2)としては、例えば、カルボキシ基含有不飽和モノマー、ヒドロキシル基含有不飽和モノマー、エポキシ基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0034】
カルボキシ基含有不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
ヒドロキシル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
エポキシ基含有不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a2)は、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
これらの中でも、汎用性の観点から、カルボキシ基含有不飽和モノマーが好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましく、アクリル酸がより更に好ましい。
【0037】
モノマー(a2)由来の構成単位(a2)の含有量は、凝集力を向上させ、粘着シートの粘着力をより向上させる観点から、アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは2〜25質量%、より更に好ましくは3〜20質量%である。
【0038】
(モノマー(a3))
本発明で用いるアクリル系共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲において、モノマー(a1)及び(a2)以外のその他のモノマー(a3)由来の構成単位(a3)を有していてもよい。
モノマー(a3)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー:ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
モノマー(a3)由来の構成単位(a3)の含有量は、アクリル系重合体の全構成単位に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜1質量%である。
【0040】
アクリル系重合体の質量平均分子量(Mw)としては、得られる粘着シートの粘着力向上の観点から、好ましくは10万〜150万、より好ましくは12万〜100万、更に好ましくは15万〜70万である。
【0041】
アクリル系共重合体(A)は、上記モノマー成分からなるモノマー混合物に、必要に応じて、溶媒、重合開始剤を加えて、重合反応を進行させることで合成することができる。
用いる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン等を挙げられる。なお、溶媒の不存在下で重合反応を進行させることもできる。
添加する重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
重合開始剤の添加量としては、モノマー混合物100質量部に対し、好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部である。
重合条件については、特に限定されないが、窒素ガスで脱気後、50〜90℃の温度で、2〜30時間かけて重合を行うことが好ましい。
【0042】
<(B)成分:ホスフィン酸塩系難燃剤>
本発明で用いるホスフィン酸塩系難燃剤(B)としては、ホスフィン酸と、金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物等の金属成分との反応物が挙げられる。
ホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、イソブチルメチルホスフィン酸、オクチルメチルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等が挙げられる。
金属成分としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、又はアンモニウムイオン等を含む金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物等が挙げられる。
【0043】
このようなホスフィン酸塩系難燃剤(B)の中でも、難燃性と粘着力とを両立した粘着シートを得る観点から、下記一般式(b1)又は(b2)で表される化合物が好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
上記式(b1)、(b2)中、Ra、Rb、Rc、Rdは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基を示し、RaとRb及びRcとRdは、互いの環を形成してもよく、当該環は置換基を有してもよい。
eは、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。
なお、上記のアルキル基及びアルキレン基の炭素数には、これらの基が有してもよい置換基の炭素数は含まれない。
【0046】
上記式(b1)、(b2)中、Mは、それぞれ独立して、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、又はアンモニウムイオンを示し、アルミニウムイオン又は亜鉛イオンが好ましく、アルミニウムイオンがより好ましい。
mはMの価数であり、式(b2)中のp、q、xは、mx=pqを満たす整数である。
【0047】
上記のアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5、より更に好ましくは1〜3である。
上記の具体的なアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基メチル基等が挙げられる。これらは、直鎖又は分岐鎖のいずれのアルキル基であってもよい。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
【0048】
上記のアルキレン基の炭素数としては、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3である。
上記の具体的なアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基等の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。
【0049】
上記のアルキル基及びアルキレン基が有してもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エボキシ基;グリシドキシ基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環形成炭素数3〜18のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の環形成炭素数6〜18のアリール基;ピリジル基、フラニル基、カルバゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれか1つ以上を含む、環形成原子数5〜18の複素環基;等が挙げられる。なお、これらの置換基は、更に上述の置換基により置換されていてもよい。
【0050】
一般式(b1)で表される化合物としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
【0051】
一般式(b2)で表される化合物としては、例えば、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛等が挙げられる。
以上の(B)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
粘着剤組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、52〜150質量部であり、好ましくは52〜135質量部、より好ましくは52〜120質量部、より好ましくは52〜105質量部、更に好ましくは53〜95質量部、より更に好ましくは53〜75質量部である。
(B)成分の含有量が52質量部未満であると、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の難燃性が低下し、粘着シートの難燃性が劣る。一方、(B)成分の含有量が150質量部を超えると、粘着シートの粘着力が低下する。
【0053】
<(C)成分:25℃で液体のリン酸エステル系難燃剤>
本発明で用いるリン酸エステル系難燃剤(C)としては、25℃で液体の化合物であればよい。25℃で液体の化合物であれば、(A)成分とも相溶し、粘着剤層を形成したときに、粘着剤層中からの(C)成分の析出を抑制でき、難燃剤の析出による粘着性の低下を防止することができる。
また、(C)成分の25℃における粘度は、好ましくは1000〜50000mPa・s、より好ましくは3000〜40000mPa・s、更に好ましくは5000〜30000mPa・sである。
本発明において、(C)成分の25℃における粘度は、JIS Z 8803に基づいて測定した値である。
【0054】
具体的なリン酸エステル系難燃剤(C)としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0055】
リン酸エステル系難燃剤(C)の中でも、難燃性と粘着力とを両立した粘着シートを得る観点から、下記一般式(c1)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化4】
【0057】
上記式(c1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい環形成炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は置換基を有してもよい環形成炭素数6〜24のアリール基を示す。
nは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは1である。
nが2以上の場合、複数あるOR4は各々同一でも異なっていてもよい。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基の炭素数には、これらの基が有してもよい置換基の炭素数は含まれない。
【0058】
1とR2、R2とR3、又はR1とR3は、互いに結合して環を形成していてもよく、nが1以上の場合、R1、R2、又はR3と1つのR4とは互いに結合して環を形成していてもよく、当該環は、置換基を有していてもよい。また、当該環を形成する炭素数は、好ましくは3〜6である。
【0059】
1〜R4として選択し得るアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12、より好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜8である。
上記のアルキル基としては、前記一般式(b1)、(b2)中のRa〜Rdが選択し得るアルキル基と同じものが挙げられる。
【0060】
1〜R4として選択し得るシクロアルキル基の環形成炭素数は、好ましくは3〜12、より好ましくは5〜8、更に好ましくは5〜6である。
上記のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0061】
1〜R4として選択し得るアリール基の環形成炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、更に好ましくは6〜12である。
上記のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0062】
なお、R1〜R4として選択し得る基が有してもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エボキシ基;グリシドキシ基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環形成炭素数3〜18のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の環形成炭素数6〜18のアリール基;ピリジル基、フラニル基、カルバゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子のいずれか1つ以上を含む、環形成原子数5〜18の複素環基;等が挙げられる。
【0063】
1〜R4として選択し得る基としては、少なくとも1つ以上の基が置換基を有してもよい環形成炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、少なくとも1つ以上の基が置換基を有してもよいフェニル基であることがより好ましく、すべて置換基を有してもよいフェニル基であることが更に好ましい。
【0064】
上記式(c1)中、Dは、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のオキシアルキレン基、−O−Y−O−で表される基(Yは2価の有機基)を示す。
なお、Dとして選択し得る「アルキレン基」及び「オキシアルキレン基」が有してもよい置換基としては、R1〜R4として選択し得る基が有してもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0065】
Dとして選択し得るアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
上記のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基等の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。
【0066】
Dとして選択し得るオキシアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜3である。
上記のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0067】
Dが−O−Y−O−で表される基である場合、2価の有機基Yとしては、アルキレン基、アルキレン−O−アルキレン基、アルキレン−NR−アルキレン基(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)、アルキレン−S−アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アリーレン−アルキレン基、アリーレン−アルキレン−アリーレン基、アリーレン−O−アリーレン基、アリーレン−O−アルキレン基、アリーレン−NR−アリーレン基、アリーレン−NR−アルキレン基、アリーレン−S−アルキレン基、及びアリーレン−S−アリーレン基等が挙げられる。
なお、上記の「アリーレン」及び「アルキレン」には、置換基を有してもよく、当該置換基としては、R1〜R4の基が有してもよい置換基と同じものが挙げられる。
上記の「アルキレン」としては、上述の例示した基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基、より好ましくは炭素数1〜2のアルキレン基である。
上記の「アリーレン」としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、アセナフチレニル基、アントラニレン基、フェナントレニレン基等が挙げられ、好ましくは環形成炭素数6〜12のアリーレン基、より好ましくはフェニレン基である。
【0068】
Dが−O−Y−O−で表される基である場合、−O−Y−O−で表される基が下記式(c2)で表される基であることが好ましい。
【0069】
【化5】
【0070】
上記式(c2)中、Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又は炭素数1〜4のアルキレン基である。
炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピリデン基(=CHCH2CH3)、プロピレン基(−CH(CH3)CH2−)、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、イソプロピリデン基(=C(CH32)、テトラメチレン基(−CH2CH2CH2CH2−)等が挙げられ、イソプロピリデン基が好ましい。
なお、上記式(c2)中の2つのベンゼン環及び基Zは、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、R1〜R4の基が有してもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0071】
前記一般式(c1)で表される化合物の中でも、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、及びこれらの縮合リン酸エステルが好ましく、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェートがより好ましい。
【0072】
粘着剤組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜50質量部であり、好ましくは12〜48質量部、より好ましくは15〜45質量部、更に好ましくは18〜42質量部、より更に好ましくは20〜40質量部である。
(C)成分の含有量が10質量部未満であると、得られる粘着剤組成物から形成される粘着剤層の難燃性が低下し、粘着シートの難燃性が劣る。一方、(C)成分の含有量が50質量部を超えると、粘着シートの粘着力が低下する。
【0073】
また、粘着剤組成物中の(B)成分と(C)成分との含有量比〔(B)/(C)〕は、優れた難燃性及び粘着力を両立する粘着シートを得る観点から、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは55/45〜90/10、更に好ましくは60/40〜85/15、より更に好ましくは62/38〜78/22である。
【0074】
なお、本発明で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の(B)及び(C)成分以外の難燃剤を含有してもよいが、連続的な生産が可能な粘着シートとする観点から、リン酸塩化合物系難燃剤を含有しないことが好ましい。
粘着剤組成物中のリン酸塩化合物系難燃剤の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%未満、更に好ましくは0質量%(検出されない)である。
なお、粘着剤組成物中に含まれる難燃剤の全量に対する、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、更に好ましくは100質量%である。
【0075】
<架橋剤>
本発明で用いる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含有してもよく、特に、主剤樹脂(A)として、官能基含有モノマー(a2)由来の構成単位(a2)を含むアクリル系重合体を用いる場合には、架橋剤を含有することが好ましい。
【0076】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属錯体系架橋剤、アミン系架橋剤、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘着シートの粘着力向上の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0077】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、及びこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
これらの中でも、粘着剤としての物性の観点から、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート及びこれらの変性体から選ばれる1種以上が好ましく、2,4−トリレンジイソシアネートの変性体がより好ましい。
【0078】
粘着剤組成物中に架橋剤が含有する場合、架橋剤の含有量は、主剤樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0079】
<粘着付与剤>
また、本発明で用いる粘着剤組成物は、必要に応じて粘着付与剤を含有してもよく、特に、主剤樹脂(A)として、ゴム系樹脂を用いる場合には、粘着付与剤を含有することが好ましい。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂の水素化石油樹脂;等が挙げられる。
【0080】
<その他の添加剤>
本発明で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調整剤等が挙げられる。
【0081】
なお、本発明で用いる粘着剤組成物は、環境面の観点から、ハロゲン化合物及びアンチモン化合物を含まないことが好ましい。
ただし、これらの化合物が、当該粘着剤組成物に用いる原料中の不純物として含まれてしまう場合も考えられる。そのような場合でも、粘着剤組成物中のハロゲン化合物及びアンチモン化合物のそれぞれの含有量は、好ましくは0.001質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満、更に好ましくは0質量%(検出されない)である。
【0082】
〔剥離シート〕
本発明の粘着シートは、例えば図1(b)、(d)に示すように、粘着剤層の上に剥離シートが積層されたものであってもよい。
本発明の粘着シートに用いられる剥離シートとしては、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、シート基材上に剥離剤を塗布した剥離シートが好ましい。剥離シートは、シート基材の両面に剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよく、シート基材の片面のみに剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよい。
【0083】
剥離シートに用いられるシート基材としては、適宜選択し得、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0084】
剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0085】
剥離シートの厚さは、特に制限はないが、通常20〜200μm、好ましくは25〜150μmである。
剥離シートにおける剥離剤からなる層の乾燥後の厚さとしては、特に限定されないが、剥離剤を溶液状態で塗布する場合は、好ましくは0.01〜2.0μm、より好ましくは0.03〜1.0μmである。剥離シートのシート基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、該プラスチックフィルムの厚さは、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜40μmである。
【0086】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法は、特に限定されない。
図1(a)に示された粘着シート1aの製造方法としては、基材11上に、本発明の粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて粘着剤層12aを形成して製造する方法や、剥離シート上に、本発明の粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて粘着剤層12aとし、当該粘着剤層12aと基材11とを貼り合わせて、一旦、粘着シート1bを得た後、剥離シートを除去して製造する方法等が挙げられる。
【0087】
また、図1(b)に示された粘着シート1bの製造方法としては、上記粘着シート1aを製造した後、粘着剤層12a上に剥離シート13aを積層して製造する方法や、剥離シート上に、本発明の粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて粘着剤層12aとし、当該粘着剤層12aと基材11とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【0088】
図1(c)に示された粘着シート1cの製造方法としては、基材11の片面上に、本発明の粘着剤組成物を塗布及び乾燥させて粘着剤層12aを形成した後、基材11の他方の面上に、同様にして、粘着剤層12bを形成して製造する方法や、剥離シート上に粘着剤層を設けたシートを2枚用意し、基材の両面に、当該シートの粘着剤層をそれぞれ貼り合わせ、2枚の剥離シートを除去して製造する方法等が挙げられる。
【0089】
図1(d)に示された粘着シート1dの製造方法としては、剥離シート上に粘着剤層を設けたシートを2枚用意し、基材の両面に、当該シートの粘着剤層をそれぞれ貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【0090】
粘着剤組成物を塗布する際は、基材上に厚みの薄い粘着剤層を形成しやすくするために、該粘着剤組成物を有機溶媒で希釈して、適当な固形分濃度のコーティング液を調製し、これを塗布することが好ましい。
用いる有機溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられ、ハロゲン原子を含まない有機溶媒が好ましい。
【0091】
基材上又は剥離シート上に粘着剤層を形成する方法は、特に制限はなく、例えば、上記の有機溶媒を配合したコーティング液を公知の塗布方法により形成する方法が挙げられる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法が挙げられる。
また、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐと共に、架橋剤が配合されている場合には架橋(反応)を進行させるために、基材や剥離シートに塗布した後、加熱処理をすることが好ましい。
【0092】
〔粘着シートの物性〕
本発明の粘着シート(当該粘着シートが剥離シートを有している場合は、剥離シートを除去した後の粘着シート)は、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有する。
また、本発明の粘着シートは、優れた粘着力を有する。
本発明の粘着シートの23℃、50%RH(相対湿度)環境下での粘着力は、好ましくは5.0N/25mm以上、より好ましくは5.5N/25mm以上、更に好ましくは7.0N/25mm以上、より更に好ましくは9.0N/25mm以上である。
なお、当該粘着シートの粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定した値を意味する。
【実施例】
【0093】
本発明について、以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
また、以下の実施例及び比較例で使用した成分の質量平均分子量(Mw)については、ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/分
・検出器:示差屈折計
【0094】
また、実施例及び比較例で作製した粘着シートの粘着力、及び難燃性の評価は、以下に示す方法により行った。
(1)粘着シートの粘着力
実施例及び比較例で作製した粘着シートを、23℃、50%RH環境下で、25mm×300mmの大きさに裁断し、剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層を、被着体であるSUS304鋼板に貼付し、試験用サンプルを作製した。
そして、JIS Z0237に基づき、貼付後24時間経過した試験用サンプルを用いて、引張り速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、粘着シートを被着体から剥離した際に測定された値(単位:N/25mm)を、粘着シートの粘着力とした。
【0095】
(2)難燃性評価
実施例及び比較例で作製した粘着シートの剥離シートを剥離し、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の難燃性試験規格UL94の薄手材料垂直燃焼試験方法に準ずる試験を行い、VTMランクを判定した。評価に用いた粘着シートのサンプルサイズは50mm×200mmであり、粘着剤層を外側にして試験を行った。
なお、VTMランクの判定基準は下記の通りである。
・VTM−0;サンプルの燃焼時間が10秒以内であり、且つ燃焼物又は落下物による脱脂綿の着火が起こらず、更に標線(サンプル下端より125mmの位置)までの燃焼が認められない。
・VTM−1;サンプルの燃焼時間が30秒以内であり、且つ燃焼物又は落下物による脱脂綿の着火が起こらず、更に標線までの燃焼が認められない。
・VTM−2;サンプルの燃焼時間が30秒以内であり、且つ標線までの燃焼が認められない。
VTM−0に適合したものを合格、それ以外を不合格とした。
本難燃性評価においては、5回試験を行い、最も条件が厳しいVTM−0を合格した回数をカウントした。例えば、表1中の難燃性の評価項目において、「3/5」という表記は、5回試験を行ったうち、VTM−0を合格した回数が3回であることを示す。
【0096】
製造例1
(アクリル系共重合体(A−1)の溶液の調製)
単量体成分として、n−ブチルアクリレート(BA)90質量部、及びアクリル酸(AAc)10質量部、溶剤として、酢酸エチル200質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行い、質量平均分子量(Mw)が65万のアクリル系共重合体(A−1)を含む酢酸エチル溶液(固形分濃度33質量%)を得た。
【0097】
実施例1〜4、比較例1〜3
(粘着シートの作製)
製造例1で得たアクリル系共重合体(A−1)の有効成分(固形分)100質量部に対して、表1に示す種類及び配合量(有効成分比)の各成分を添加し、酢酸エチルで希釈し、固形分濃度10質量%の粘着剤組成物の溶液を調製した。なお、ここで「有効成分」とは、対象物中に含まれる水及び有機溶媒以外の成分を意味する。
この粘着剤組成物の溶液を、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET381031」、厚さ38μm、表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の剥離処理面上に、乾燥後の粘着剤層の塗布量が20g/m2(乾燥後の粘着剤層の厚さ:18μm)となるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を形成した。
そして、基材である、両面にポリイミド樹脂がコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラーZV30#40」、厚み:47μm、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合)と粘着剤層とを貼り合わせ、粘着シートを作製した。
なお、粘着シートの各層の厚みならびに総厚みは、株式会社テクロック製の定圧厚さ測定機PG−02Jを用いて測定した。
【0098】
実施例及び比較例の粘着シートの粘着剤層を構成する、表1に示された粘着剤組成物の成分の詳細は、以下のとおりである。
(主剤樹脂(A))
・「A−1」:製造例1で合成したアクリル系共重合体(BA/AAc=90/10(質量%)、Mw=65万)。
(ホスフィン酸塩系難燃剤(B))
・「トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム」:前記式(b1)において、Ra、Rb=エチル基、M=アルミニウムイオン、m=3の化合物。25℃で粉体(固体)、クラリアンドジャパン株式会社製、商品名「EXOLIT OP 935」、25℃での吸湿性なし。
(リン酸エステル系難燃剤(C))
・「BDP」:ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、下記式で表される化合物(前記一般式(c1)中、R1〜R4がフェニル基、nが1、Dが前記式(c2)で表される基であって、式(c2)中のZがイソプロピリデン基である化合物)。25℃で液体(25℃での粘度:24000mPa・s)、大八化学工業株式会社製、商品名「CR−741」、25℃での吸湿性なし。
【化6】
(架橋剤)
・「コロネートL」:商品名、日本ポリウレタン株式会社製、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートの酢酸エチル溶液(固形分75質量%))
【0099】
作製した粘着シートの粘着力及び難燃性を、上記の方法により、測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1より、実施例1〜4の粘着シートは、優れた粘着力を有し、5回行った難燃性試験において、VTM−0に適合する回数が5回中5回と、優れた難燃性を有している結果となった。また、実施例1〜4で使用した各成分は、吸湿性を有しないものであり、粘着シートの作製過程において、保存性及び取扱性の点で特に問題は生じなかった。そのため、実施例の粘着シートは、連続的な生産も可能である。
一方、比較例1、2の粘着シートは、粘着剤層を構成する粘着剤組成物中の(B)成分の含有量が少ないため、実施例の粘着シートに比べて、難燃性が劣る結果となった。
また、比較例3の粘着シートは、粘着剤層を構成する粘着剤組成物中の(B)成分の含有量が多すぎるため、実施例の粘着シートに比べて、粘着力が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の粘着シートは、連続的な生産が可能であり、UL94規格に準ずる試験においてVTM−0に適合する難燃性を有し、優れた粘着特性を有する。
そのため、本発明の粘着シートは、高い難燃性や粘着特性が要求される、例えば、電子部品、電子機器、OA機器、家電、航空機、船舶、車両、原子力発電所等で用いられる構成部位の用途として使用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1a、1b、1c、1d 粘着シート
11 基材
12a、12b 粘着剤層
13a、13b 剥離シート
図1