【実施例1】
【0014】
本実施例においては、上吹き出しタイプの室外機に本発明を適用した例を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施例の空気調和機の室外機の筺体内の構成を示す正面図であり、
図2は、本発明の実施例の空気調和機の室外機の筺体内の構成を示す右側面図である。
【0016】
空気調和機の室外機20の筐体2内の上部には、送風装置10が設けられている。送風装置10は、プロペラファン100、プロペラファン100を駆動するファンモータ101、及びこのファンモータ101を支持する支持板102などで構成されている。筐体2は、送風装置10の周囲に設けられている上面カバー201、室外機20の側面を覆う側面カバー202、室外機20の底面を成す底板203、底板203を支持する脚部204、正面側上部に設けられた正面カバー205、正面側下部に取り外し自在に設けられ筐体2内に設置されている機器類のメンテナンス等を可能にしたサービスカバー206、正面側を支持する正面ステー207などで構成されている。上面カバー201には上方に開口する吹出口200が形成されている。
【0017】
筐体2内の熱交換器(室外側熱交換器)301は、略コの字状に形成され、底板203上に配置されている。また、熱交換器301は、筐体2の背面において両側面の側面カバー202の部分(以下、吸込口199と称す)まで配置されている。送風装置10のプロペラファン100が回転することにより、熱交換器301の外側の吸込口199から外気が吸込まれ、熱交換器301で熱交換器の管内を通過する冷媒と熱交換された後、この吸い込まれた空気は筐体2上部の吹出口200から上方へ吹き出されるように構成されている。
【0018】
底板203上には、圧縮機300、アキュームレータ、レシーバなどの冷凍サイクル部品が設置されている。底板203の下面には、脚部204が固定され、更に脚部204の下面側には、筐体2を固定するための固定用のアンカ穴(図示せず)が形成されており、このアンカ穴を利用して、現地の基礎部や架台等に室外機20を固定することができるように構成されている。ユーザによっては、建物などへの振動伝播を防ぐために、防振架台などの上に室外機20を設置することも少なくない。
【0019】
筐体2の正面側に設けられているサービスカバー206の内側には、電気品等を収納する電気品箱302が設置されている。電気品箱302の内部には、送風装置10や圧縮機300等を制御するメイン制御装置500が収納されている。メイン制御装置500にはマイコン(マイクロプロセッサ)が設けられ、各部位に設けられた複数の温度センサや圧力センサ105、更には室内機(図示せず)からの情報をもとに、圧縮機300や送風装置10、四方弁や電磁弁(図示せず)等、室外機20内の様々な構成要素の制御を行う。温度センサとして、例えば吸込口199に外気温度センサ104が備えられている。電気品箱302の内部には更に、ファンモータ101への電力を制御するファンコントローラ106と、圧縮機300への電力を制御する圧縮機コントローラ108とが設けられている。メイン制御装置500、ファンコントローラ106、圧縮機コントローラ108には、商用電源502が供給されている。
【0020】
次に、送風装置10の詳細について説明する。
【0021】
図3は、送風装置10の構成を示す。送風装置10は、プロペラファン100、ファンモータ101、支持板102、ファンコントローラ106などで構成されている。ファンコントローラ106は、メイン制御装置500からの回転数指令に従い、ファンモータ101の回転数を回転数指令に合わせるように制御を行う。ファンコントローラ106は、過電流などの何らかの異常を検知した場合、異常を示す信号をメイン制御装置500に送信する。この場合、メイン制御装置500は圧縮機300や室内機を含め、空気調和機の冷凍サイクルのシステム全体を安全に停止させる。
【0022】
メイン制御装置500は、ファンコントローラ106や圧縮機コントローラ108などのコントローラに接続されており、それらのコントローラにより計測された状態を取得し、それらのコントローラを制御する。圧縮機コントローラ108は、圧縮機300の状態を計測してメイン制御装置500へ送り、メイン制御装置500からの指示に従い、圧縮機300を制御する。
【0023】
このように送風装置10を制御するためのファンコントローラ106を、メイン制御装置500とは独立させてモジュール化している理由は、ファンモータ101の駆動制御や異常判定処理を、製品固有のメイン制御装置500に組み込むことを避けるためである。これを具体的に説明する。メイン制御装置500による冷凍サイクルの制御は非常に複雑であり、しかも多種多様な製品毎に仕様が異なる。もし、メイン制御装置500の制御プログラムの中に送風装置10の制御プログラムや異常判定のプログラムを組み込んでしまうと、設計変更が生じた場合、全ての製品の制御プログラムを見直す必要がでてくる。これを回避するために、ファンコントローラ106を独立させて複数の製品に共通のモジュール構成とし、メイン制御装置500の制御プログラムには、異常を知らせる信号を受信した際の動作のみを記述する形態を採用している。
【0024】
次に、ファンコントローラ106について説明する。
【0025】
図4は、ファンコントローラ106の構成を示す。ファンコントローラ106は、電力変換部15、電流検出部4、位相検出部5、脈動成分抽出部6、異常判定部7を含む。電力変換部15は、メイン制御装置500からの回転数指令に従って、ファンモータ101への出力電流を制御する。電力変換部15は、例えばインバータである。電流検出部4は、電力変換部15からファンモータ101への出力電流を検出する。位相検出部5は、出力電流の位相を検出する。脈動成分抽出部6は、電流検出部4および位相検出部5による検出値に基づいて出力電流の脈動成分(トルク脈動成分)を抽出する。異常判定部7は、脈動成分抽出部6により抽出された脈動成分の大きさ(振幅)を示す脈動量を算出し、予め決められた閾値と比較することにより、プロペラファン100が異常か正常かの判定を行う。例えば、異常判定部7は運転開始後に、脈動量が予め設定した閾値を超えた場合、プロペラファン100の異常が発生したと判定して、ファンモータ3を停止させる。これにより、室外機20におけるプロペラファン100以外の部分の破損を防止することができる。
【0026】
ここで、プロペラファン100の異常判定に脈動量を用いる理由について補足する。プロペラファン100の一部が破損しただけでも過大なアンバランスが発生することは前述の通りである。しかし、プロペラファン100のブレードが大破しない限り、プロペラファン100の一部が破損しただけでは、風量自体は正常時とそれほど変わらない。従って、破損時のファンモータ101の仕事量(トルク)の大きさも正常時と殆ど変わらず、結果として出力電流の大きさも正常時と殆ど変わらない。むしろ、運転環境や負荷、熱交換器301の着霜状態など、送風装置10への流体的な負荷変化の方が破損時の負荷の変化よりも大きく、単純に電流値の大きさでは、破損したのか負荷が変化しただけなのか、判別することができない。
【0027】
しかし、アンバランス振動によって、ファンモータ101内の軸受等に作用する負荷(荷重)変動や、振れ回り振動による慣性力の変動などによって、発生トルクにわずかな変動が生じ、結果として電流値に脈動が発生する。この脈動は、アンバランス量が大きい程大きくなる傾向があり、かつプロペラファン100の回転周期と同期するため、例えば、脈動成分抽出部6は、プロペラファン100の回転周波数を通過させるバンドパスフィルタをかければ、アンバランスに起因する脈動成分のみを抽出できる。このようにして、ファンコントローラ106は、プロペラファン100の異常を検知することができる。
【0028】
電流検出部4は、ファンモータ101への三相の出力電流であるモータ電流(Iu、Iv、Iw)を検出し、αβ変換、dq変換の順に変換した結果を1次遅れフィルタ処理することで、脈動成分抽出部6の入力であるq軸電流フィードバック値Iqを算出する。αβ変換、dq変換は次式により算出できる。
【数1】
【0029】
なお、モータ電流(Iu、Iv、Iw)の検出方法には、モータ電流の出力部に抵抗値の小さい抵抗を接続し、その抵抗にかかる電圧からの検出や、電流センサによる検出等、様々な方法がある。本実施例の電流検出部4は、電力変換部15の出力電流をモータ電流として検出する。
【0030】
dq変換時のθdcはd軸位相であり、ファンモータ101の磁極位置を示す。位相検出部5は、脈動成分抽出部6のもう一つの入力である機械角位相θrをθdcから算出する。Δθdcは、θdcに基づく角速度を示す。位相検出部5は、次式のようにΔθdcからΔθを算出する。
【0031】
Δθr=Δθdc/極対数
【0032】
位相検出部5は、Δθrを積算してθrを算出する。
【0033】
図5は、脈動成分抽出部6の構成を示す。
【0034】
脈動成分抽出部6は、q軸電流フィードバック値Iqと機械角位相θrから脈動成分を抽出する。例えば、脈動成分抽出部6は、機械角位相θrのsin、cos演算8によりsinθr、cosθrをそれぞれ算出する。更に脈動成分抽出部6は、乗算器によりq軸電流フィードバック値をsinθr、cosθrのそれぞれと掛け合わせ、1次遅れフィルタ9を行うことで、高周波成分を除去する。ここで、1次遅れフィルタ9の時定数の設定値は、実機による試験を基に、脈動成分の周期を抽出出来る様にシミュレーションにより設定される。すなわち、脈動成分を抽出するためにこの時定数を脈動周期より大きくする必要があるため、トルク脈動が発生するプロペラファン100の回転周期に対しそれよりも大きい時定数を設定する。更に脈動成分抽出部6は、1次遅れフィルタ9の二つの出力に再度sinθr、cosθrをそれぞれ掛けて足し合わせ、調整ゲインKにより脈動成分の調整を行うことで、出力電流のうち、機械角位相θrの周期で脈動する成分のみを抽出する。ここで、例えば、サンプリング周期Tsは500μsであり、フィルタ時定数は500msである。なお、脈動成分抽出部6は、ファンモータ101の回転数に一致する周波数成分を通過させるバンドパスフィルタであっても良い。
【0035】
異常判定部7は、脈動成分抽出部6より抽出した脈動成分の大きさである脈動量が予め設定された閾値を超えた場合、プロペラファン100の異常を検知したとしてファンモータ3を停止する。この場合、瞬時停電によりモータ電流の波形が乱れる等の一時的な状態に対し、プロペラファン100の異常であると誤検知する虞がある。そこで本実施例では、実機による試験を基に、脈動する成分の振幅から閾値を決める。例えば、正常動作時の電流値の最大値および最小値の測定から脈動量を算出し、正常動作時の脈動量の最大値より十分に大きくプロペラファン100の破損時の脈動量の最大値より小さい値に設定することで誤検知を抑制しつつ、プロペラファン100の異常を検知することが可能となる。
【0036】
しかしながら、何らかの外乱により振動が発生し、ファンコントローラ106が異常と誤判定してしまうケースが考えられる。地震や突風といった過渡的な振動であれば、一定時間経過後に再診断するなどの冗長性により精度を確保できる。しかし、例えば、冬期の降雨・降雪時の暖房運転においては、プロペラファン100の近傍に積雪や氷結が発生しやすく、それらがプロペラファン100に僅かに接触するため、通常運転よりも大きな振動が発生することがある。また、このような運転環境は、熱交換器301にとっても霜が発生しやすい条件でもあり、これが流体的なアンバランスとなってファンモータ101のトルク脈動、ひいては電流値の脈動成分の増加を招く場合がある。このようなケースでは定常的な脈動が継続するため、過渡振動の場合のような対処ができない。
【0037】
そこで、ファンコントローラ106には更に、室外機20の運転情報などに基づいて異常判定部7の閾値を変更する閾値変更部12が設けられている。本実施例の閾値変更部12は、外気温度が所定の低温の温度範囲内である状態において、異常判定部7で異常判定するための閾値を、異常と判定しない方向に変更する。脈動量は脈動成分の大きさを示すことから、閾値変更部12が閾値を高く変更すると、脈動が異常と判定されにくくなる。ここで、温度範囲の上限を0℃より高くすることが望ましい。例えば、暖房時の熱交換器301による吹出温度の低下を考慮し、プロペラファン100において氷結が発生する外気温度として、温度範囲の上限が5℃に設定される。外気温度の取得には、通常、冷凍サイクルを制御するために用いられている外気温度センサ104の検出値を用いれば、新たに温度センサを設ける必要がないため、コストの増加を防ぐことができる。具体的には、外気温度センサ104で検出された外気温度は、メイン制御装置500により取得されるため、ファンコントローラ106は、メイン制御装置500を介して外気温度を取得することができる。もし、外気温度の情報を用いず、全ての温度で同じ閾値を設定しようとすると、氷結条件での誤判定を防止するために、閾値を大きく設定しなければならず、通常運転時(非氷結状態)の異常検知の感度が極端に悪くなってしまう。そこで、外気温度によって閾値を変更させる閾値変更部12を設けることで、通常運転時(非氷結状態)の異常検知の感度を落とすことなく、氷結時の誤判定も防止できる。
【0038】
また、ファンコントローラ106は、閾値を変更する条件として、暖房時と冷房時とで異なる温度範囲を設定することもできる。例えば、暖房時であれば、プロペラファン100の周囲、すなわち熱交換器301からの吹出温度は外気温度(吸込温度)よりも低くなるので、外気温度が零度以上であっても氷結してしまうため、温度範囲の上限を零度よりも少し高い温度に設定しておくことが望ましい。逆に、冷房時であれば、吹出温度が外気温度よりも少し高くなるため、温度範囲の下限を零度よりも少し低い温度に設定しておいても良い。このように設定することで、氷結時の誤判定を防止しつつ、通常運転、特に冷房運転時では広い温度範囲で、異常検出の感度を下げずに運転可能となる。
【0039】
また、ファンコントローラ106は、外気温度が零度付近の降雨の状態のみ、閾値を変更することができる。降雪時の雪は密度(比重)が低いため、送風装置10が運転中においては吹出風で吹き飛ばされる。また、積雪しても降雪直後であれば雪は柔らかいため、仮に雪がプロペラファン100と接触しても破損は生じない。従って、ファンコントローラ106が冬期の降雨条件についてのみ閾値を変更することで、広い温度範囲で異常検知の感度を下げずに運転可能となる。たとえば、降雨条件として温度範囲の下限を0℃より低くすることが望ましい。例えば、降雨条件において、雨から雪に変わる外気温度として、温度範囲の下限が−5℃に設定される。更に、降雨かつ吹出温度が零度以下となる外気温度の範囲として、暖房運転時の条件を−5℃〜5℃とし、冷房運転時の条件を−5℃〜0℃と設定することができる。
【0040】
冷媒が微燃性または可燃性を有する場合、プロペラファン100の異常により熱交換器や配管が破損して、冷媒が漏れると、発火する可能性がある。微燃性を有する冷媒は、例えばR32である。プロペラファン100が脱落する前に、プロペラファン100の異常を検出することにより、発火を防ぐことができる。
【実施例4】
【0046】
本実施例の閾値変更部12は、製品の設置状態に応じて、異常判定部7の閾値を補正する。異常検知に用いる脈動量は発生する振動量と相関があるが、空気調和機の多種多様な製品シリーズにおいては、同じアンバランス量でも発生する振動量は異なる。また、同一製品であっても、ユーザによっては室外機20を防振架台上に設置するなど設置形態も様々である。すなわち、共通の閾値を用いた場合、機種や設置状態によっては、振動が小さくなる場合は異常検知感度が低下してしまうし、振動が大きくなる場合は誤判定を招く可能性がある。そこで、本実施例の閾値変更部12は、設置現場毎に閾値を補正する閾値補正処理を行う。
【0047】
閾値変更部12は、通常の運転に入る前に、予め閾値を補正するための運転モードである閾値補正モードを実行し、室外機20の個体毎に閾値を自動補正する。閾値補正処理は何度も行う必要がないため、例えば製品設置後の試運転モードに閾値補正処理を組み入れたり、供給電源投入後の最初の初始動時のみに閾値補正処理を行ったりすれば良い。
【0048】
図7は、実施例4の閾値補正処理を示す。
【0049】
空気調和機の運転が開始されると、閾値変更部12は、現在の運転開始が試運転の初始動時であるか否かを判定する(S110)。
【0050】
試運転の初始動時であると判定された場合(S110:yes)、閾値変更部12は、閾値補正モードS120を実行する。閾値補正モードにおいて、閾値変更部12は、プロペラファン100を所定回転数で駆動し(S130)、脈動成分抽出部6から脈動量を取得する(S140)。その後、閾値変更部12は、予め設定されている脈動量の標準値と取得された脈動量との比や差などに基づいて、閾値の補正値を決定し(S150)、予め設定されている閾値と補正値に基づいて閾値を補正する(S160)。ここで閾値変更部12は、閾値に補正値を乗じても良いし、閾値に補正値を加えても良い。その後、閾値変更部12は、補正された閾値を用いて通常運転を行う通常運転モードS170を実行する。
【0051】
試運転の初始動時でないと判定された場合(S110:no)、閾値変更部12は、閾値変更部12に設定されている閾値を用いて通常運転を行う通常運転モードS170を実行する。
【0052】
以上が閾値補正処理である。このような構成とすることで、多種多様な機種や設置形態の違いを吸収し、安定して異常検知可能な空気調和機の室外機を提供できる。尚、本実施例では、1種類の回転数で補正値を求めているが、閾値変更部12が、予め設定された複数の回転数を示す回転数テーブルを格納し、複数の回転数のそれぞれに対応する閾値を求めてもよい。この場合、閾値変更部12は、ファンモータ101の回転数に応じて閾値を変更する。これにより、異常検知の精度を向上させることができる。この場合、脈動成分抽出部6は、バンドパスフィルタの周波数帯域を回転数に追従させても良い。なお、閾値変更部12は、ファンモータ101の回転数と閾値の関係を示す関係情報を格納し、ファンモータ101の回転数と関係情報から閾値を算出しても良い。
【実施例5】
【0053】
本実施例の閾値変更部12は、室外機20が遠隔監視装置または集中管理装置(以下、遠隔監視システム25と称す)に接続されており、遠隔監視システム25に蓄積された正常運転時の運転情報をもとに、異常を検知するための閾値を定期的に補正する。
【0054】
図8は、実施例5の空気調和機の構成を示す。
【0055】
この空気調和機は、複数の室外機20と、複数の室内機21と、遠隔監視システム25とを含む。複数の室外機20と複数の室内機21との間は、冷媒を流すための配管22により接続されていると共に、情報を伝送するための通信線23により接続されている。遠隔監視システム25は、通信線24を介して複数の室外機20に接続されている。
【0056】
前述の通り、多種多様な機種や設置条件によって脈動量に違いが生じるが、同一機種、同一設置条件でも脈動量に変化が生じるケースがある。例えば、室外機20の熱交換器301の吸込口199の近傍に障害物(壁など)となるものが後から設置されたケースや、熱交換器301の劣化(腐食、ゴミ・油などの目詰まり)が発生したケースなどである。これにより、プロペラファン100の負荷が変化する。このようなケースに対応するためには、正常状態の運転時の脈動量を含む運転情報などを蓄積し、蓄積された情報に基づいて閾値を決定し、正常状態の平均的な脈動量から極端に逸脱した場合を異常と判定することが望ましい。蓄積される運転情報は、回転数を含んでも良いし、外気温度を含んでも良い。しかしながら、データの蓄積を個々の室外機20で行うためには高価な演算装置と記憶装置が必要になってしまう。そこで、遠隔監視システム25を用いてデータの蓄積を行うことで、個々の室外機20に高価な装置を備える必要がない。
【0057】
ファンモータ101や圧縮機300の電流値を遠隔監視システム25等に蓄積し、異常診断や予知に利用するために、電流の原波形をそのまま遠隔監視システム25へ送信すると、膨大な通信負荷がかかってしまい、現実的ではない。本実施例では、抽出した脈動量を一定間隔で通信するので、通信負荷はほとんど影響を与えない。更に、遠隔監視システム25には、長期間(数ヶ月〜数年間以上)の脈動量の時間変化を記録することができる。閾値変更部12は、遠隔監視システム25から正常状態の平均的な脈動量を受信し、受信された脈動量に基づいて閾値を変更する。これにより、プロペラファン100や、ファンモータ101、熱交換器301などの劣化といった、非常に緩やかに進行する変化を捉えることができるため、保守や予防保全などへも利用可能である。このような構成とすることで、多種多様な機種や設置形態の違いを吸収し、安定して異常検知可能な空気調和機の室外機を提供できる。遠隔監視システム25が、蓄積された情報に基づいて閾値を決定し閾値変更部12へ送信しても良いし、閾値変更部12が遠隔監視システム25から蓄積された情報に基づく情報を受信し、受信された情報に基づいて閾値を決定しても良い。
【0058】
以上の複数の実施例の幾つかが組み合わせられても良い。
【0059】
本発明の一態様の空気調和機における用語について説明する。検出部は、電流検出部4および位相検出部5などに対応する。判定部は、異常判定部7および閾値変更部12などに対応する。管理装置は、遠隔監視システム25などに対応する。
【0060】
本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、その趣旨から逸脱しない範囲で、他の様々な形に変更することができる。