(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126976
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
H02K3/18 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235381(P2013-235381)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-95996(P2015-95996A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠也
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−166648(JP,A)
【文献】
特開2009−207257(JP,A)
【文献】
米国特許第06707227(US,B1)
【文献】
国際公開第2008/029623(WO,A1)
【文献】
特開2013−226026(JP,A)
【文献】
特開平04−101641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一方側に設けられる第1コアベースと該第1コアベースの径方向端部から軸方向の他方側に延びる周方向に複数の第1爪状磁極とを有する第1ステータコアと、
軸方向の他方側に設けられる第2コアベースと該第2コアベースの径方向端部から軸方向の一方側に延びる周方向に複数の第2爪状磁極とを有し、前記第2コアベースが前記第1コアベースと対向し、前記第2爪状磁極が前記第1爪状磁極と周方向に隣り合う第2ステータコアと、
前記第1コアベースと前記第2コアベースとの間に配置され、通電に基づいて前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極とを互いに異なる磁極とするコイルと
を備えたステータであって、
前記コイルは、軸方向に山部と谷部を有し、部品単体の状態で、前記谷部の下面から前記山部の上面までの軸方向の長さが前記第1コアベースと前記第2コアベースとの軸方向の間隔よりも大きくなるように湾曲して形成されており、該コイルは、前記第1コアベースと前記第2コアベースとの間に配置された状態で、前記第1及び第2コアベースと押圧接触していることを特徴とするステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータにおいて、
前記コイルの湾曲している前記山部の数は、前記第1爪状磁極の数の約数又は倍数に設定されたことを特徴とするステータ。
【請求項3】
請求項2に記載のステータにおいて、
前記コイルの湾曲している前記山部の数は、前記第1爪状磁極の数と同数に設定されたことを特徴とするステータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステータを備えたことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及びモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転界磁型モータの一種類であるランデル型(クローポール型)構造のモータのロータ(回転子)では、周方向に複数の爪状磁極をそれぞれ備えた磁極板で永久磁石を挟み、各磁極板の異なる極性に励磁された爪状磁極を周方向に交互に位置させる構成としたものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、ロータの周囲に配設されるステータコイルに交流電流を供給すると、ステータに回転磁界が発生して、ロータが回転駆動される。
【0003】
また、
図5に示すように、回転軸1の軸方向に、それぞれ爪状磁極2a,2bを備えた3層のロータ部3u,3v,3wを積層してロータ4を構成し、その周囲にそれぞれ3層のステータ部5u,5v,5wを積層したステータ6を配設した回転界磁型モータも提案されている。
【0004】
各ロータ部3u,3v,3wは、それぞれ爪状磁極2a,2bを備えたロータコア7a,7b間に円環板状の主磁石8を挟んだ構成である。各ステータ部5u,5v,5wは、各ロータ部3u,3v,3wの爪状磁極2a,2bに対向する爪状磁極9a,9bをそれぞれ備えたステータコア10a,10bに巻線11u,11v,11wがそれぞれ配設されている。
【0005】
このように、ロータとステータの両方がランデル型(クローポール型)構造を持つ回転界磁型モータをマルチランデル型構造のモータと称し、巻線11u,11v,11wに3相交流電流を供給すると、ステータ6に回転磁界が発生してロータ4が回転駆動される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−43749号公報
【特許文献2】特開2013−226026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなモータでは、コイルは、その端部が結線されることになるものの全体的に周方向(回転方向)に位置ずれが可能であり、駆動時の振動等による周方向の位置ずれが懸念される。このことは、例えば、ステータコアにコイルが擦れることに基づくコイルの皮膜の破れや絶縁不良の原因となる。
【0008】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、コイルの周方向の位置ずれを抑えることができるステータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するステータは、軸方向の一方側に設けられる第1コアベースと該第1コアベースの径方向端部から軸方向の他方側に延びる周方向に複数の第1爪状磁極とを有する第1ステータコアと、軸方向の他方側に設けられる第2コアベースと該第2コアベースの径方向端部から軸方向の一方側に延びる周方向に複数の第2爪状磁極とを有し、前記第2コアベースが前記第1コアベースと対向し、前記第2爪状磁極が前記第1爪状磁極と周方向に隣り合う第2ステータコアと、前記第1コアベースと前記第2コアベースとの間に配置され、通電に基づいて前記第1爪状磁極と前記第2爪状磁極とを互いに異なる磁極とするコイルとを備えたステータであって、前記コイルは、
軸方向に山部と谷部を有し、部品単体の状態で、前記谷部の下面から前記山部の上面までの軸方向の長さが前記第1コアベースと前記第2コアベースとの軸方向の間隔よりも大きくなるように湾曲して形成され
ており、該コイルは、前記第1コアベースと前記第2コアベースとの間に配置された状態で、前記第1及び第2コアベースと押圧接触している。
【0010】
同構成によれば、コイルは湾曲して形成されるため、湾曲していない単純な円環状のコイルに比べて、第1コアベースと第2コアベースとの間において周方向の位置ずれが抑えられる。これにより、例えば、コイルの皮膜の破れを抑えることができ、ひいては絶縁不良を抑えることができる。
【0011】
また、コイルは、第1及び第2コアベースと押圧接触するように湾曲して形成されるため、周方向の位置ずれがより抑えられる。
【0012】
上記ステータにおいて、前記コイルの湾曲している山部の数は、前記第1爪状磁極の数の約数又は倍数に設定されることが好ましい。
同構成によれば、コイルの湾曲している山部の数は、前記第1爪状磁極の数の約数又は倍数に設定されるため、例えば、第1及び第2爪状磁極の位置におけるコイルの湾曲状態に規則性を持たせることができ、バランス良く磁界を発生させることが可能となる。
【0013】
上記ステータにおいて、前記コイルの湾曲している山部の数は、前記第1爪状磁極の数と同数に設定されることが好ましい。
同構成によれば、コイルの湾曲している山部の数は、第1爪状磁極の数と同数に設定されるため、例えば、第1及び第2爪状磁極の位置におけるコイルの湾曲状態を一定にすることができ、よりバランス良く磁界を発生させることが可能となる。
【0014】
上記課題を解決するモータは、上記ステータを備える。
同構成によれば、モータにおいて、上記した効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステータ及びモータでは、コイルの周方向の位置ずれを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ブラシレスモータの一実施形態を
図1〜
図3に従って説明する。
図1に示すように、モータとしてのブラシレスモータMは、回転軸21に固定されたロータ22と、ロータ22の外側に配置されたステータ23とを備えている。回転軸21は、例えば図示しないモータハウジングに回転可能に支持されている。ステータ23は、例えば図示しないモータハウジングに固着されている。なお、ステータ23が図示しないヨークハウジングに収容され、そのヨークハウジングがモータハウジングに固定されていてもよい。
【0018】
また、このブラシレスモータMは、3つのモータ部を回転軸21の軸方向に配列した構造を有している。つまり、ブラシレスモータMは、U相モータ部Mu、V相モータ部Mv、W相モータ部Mwを有している。U相モータ部Muは、ロータ22uとステータ23uを含む。同様に、V相モータ部Mvはロータ(図示略)とステータ23vを含み、W相モータ部Mwはロータ(図示略)とステータ23wを含む。したがって、ロータ22は、各モータ部Mu,Mv,Mwに対応して、U相のロータ22uと、V相のロータ(図示略)と、W相のロータ(図示略)を有している。同様に、ステータ23は、各モータ部Mu,Mv,Mwに対応して、U相のステータ23uと、V相のステータ23vと、W相のステータ23wを有している。
【0019】
図1に示すように、U相のロータ22uは、爪状磁極31が形成された一対のロータコア32と、それらロータコア32の軸方向の間に配置され軸方向に磁化されることで爪状磁極31を周方向に交互に異なる磁極として機能させる界磁磁石33とを備えた所謂ランデル型構造のものである。また、図示しないV相のロータ及びW相のロータは、U相のロータ22と同様の構成であるため、それらの説明を省略する。
【0020】
各層のロータの配置の概略を説明する。V相のロータは、U相のロータ22uに対して反時計回り方向に電気角で60°位相をずらして積層され、W相のロータは、V相のロータに対して反時計回り方向に電気角で60°位相をずらして(つまり、U相のロータ22uに対して反時計回り方向に電気角で120°位相をずらして)積層されている。つまり、ロータ22の各相における位相のずれが、ステータ23の各相における位相のずれ(時計回り方向のずれ)に対して逆方向となるように構成されている。
【0021】
次に、ステータ23について説明する。なお、各層のステータ23u,23v,23wは互いに同じ構造であるため、U相のステータ23uについて説明し、V相のステータ23v及びW相のステータ23wの図面及び説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、ステータ23uは、第1ステータコア41、第2ステータコア42、コイル43を備えている。
図2及び
図3に示すように、第1ステータコア41は、円環板状の第1コアベース51を有している。第1コアベース51の外周端には、円筒状の第1コアバック52が軸方向において第2ステータコア42側に向って延出形成されている。第1コアベース51の内周端には、複数(本実施形態では4つ)の第1爪状磁極53が周方向等間隔(90°間隔)に形成されている。第1爪状磁極53は、第1コアベース51の内周端から径方向内側に延びる第1基部54と、その第1基部54の円弧状の内側端部から軸方向に延びる第1磁極部55とを有している。第1磁極部55は径方向から見て略台形の板状に形成されている。
【0023】
第2ステータコア42は、第1ステータコア41と同様に形成されている。即ち、第2ステータコア42は、円環板状の第2コアベース61を有している。第2コアベース61の外周端には、円筒状の第2コアバック62が軸方向において第1コアベース51側に向って延出形成されている。第2コアベース61の内周端には、複数(本実施形態では4つ)の第2爪状磁極63が周方向等間隔(90°間隔)に形成されている。第2爪状磁極63は、第2コアベース61の内周端から径方向内側に延びる第2基部64と、その第2基部64の円弧状の内側端部から軸方向に延びる第2磁極部65とを有している。第2磁極部65は径方向から見て略台形の板状に形成されている。
【0024】
第1ステータコア41と第2ステータコア42は、軸方向において第1コアベース51と第2コアベース61とが互いに対向し、周方向において第1爪状磁極53と第2爪状磁極63が互いに周方向に隣り合うように組み合わされる。そして、第1ステータコア41の第1コアバック52と第2ステータコア42の第2コアバック62が軸方向に互いに突合わされる。
【0025】
コイル43は、複数周回巻かれた導体(例えば銅線)であって、第1コアベース51と第2コアベース61との(軸方向の)間に配置される。
ここで、本実施形態のコイル43は、湾曲して形成されている。詳しくは、本実施形態のコイル43は、第1コアベース51と第2コアベース61との(軸方向の)間に配置された状態で、該第1及び第2コアベース51,61と押圧接触するように、湾曲して形成されている。即ち、コイル43は、軸方向に山部43aと谷部43bを有し、部品単体の状態で、その谷部43bの下面から山部43aの上面までの軸方向の長さが、第1コアベース51と第2コアベース61との軸方向の間隔よりも大きくなるように湾曲して形成され、組み付けられると押圧接触するように設定されている。又、本実施形態のコイル43の湾曲している山部43aの数(谷部43bの数)は、前記第1爪状磁極53の数(第2爪状磁極63の数)と同数(本実施形態では4つ)に設定されている。そして、コイル43は、前記山部43aが第1コアベース51及び前記第1基部54に当接され、前記谷部43bが第2コアベース61及び前記第2基部64に当接されるように配置されている。
【0026】
次に、上記のように構成されたブラシレスモータMの作用を説明する。
外部の電源装置からコイル43に交流電流が供給されると、その通電に基づいて第1爪状磁極53と第2爪状磁極63とが互いに異なる磁極とされ、ステータ23(U相のステータ23uとV相のステータ23vとW相のステータ23w)で回転磁界が発生されて、ロータ22が回転駆動される。このとき、振動等により、コイル43の周方向の位置ずれが懸念されるが、コイル43が湾曲していることでその位置ずれが抑えられることになる。
【0027】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)コイル43は湾曲して形成されるため、湾曲していない単純な円環状のコイルに比べて、第1コアベース51と第2コアベース61との間において周方向の位置ずれが抑えられる。これにより、例えば、コイル43の皮膜の破れを抑えることができ、ひいては絶縁不良を抑えることができる。又、例えば、コイル43をその湾曲している山部43aと谷部43bでのみ当接する第1及び第2コアベース51,61に接着することで、全周に渡って接着する場合に比べて、使用する接着剤の量を減らすことができる。
【0028】
(2)コイル43は、第1及び第2コアベース51,61と押圧接触するように湾曲して形成されるため、周方向の位置ずれがより抑えられる。
(3)コイル43の湾曲している山部43aの数(谷部43bの数)は、第1爪状磁極53の数(第2爪状磁極63の数)と同数に設定されるため、例えば、第1及び第2爪状磁極53,63の位置におけるコイル43の湾曲状態を一定にすることができ、よりバランス良く磁界を発生させることが可能となる。
【0029】
(4)コイル43の湾曲している山部43aが第1コアベース51及び第1基部54に当接され、コイル43の湾曲している谷部43bが第2コアベース61及び第2基部64に当接されるため、第1基部54や第2基部64に当接されない構成のものに比べて、接触面積が広くなり、コイル43の周方向の位置ずれがより抑えられる。
【0030】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、コイル43の湾曲している山部43aの数(谷部43bの数)は、第1爪状磁極53の数(第2爪状磁極63の数)と同数に設定されるとしたが、これに限定されず、1つでも山部を有すれば、変更してもよい。変更する場合、山部の数は、第1爪状磁極53の数の約数又は倍数に設定することが好ましい。
【0031】
例えば、
図4に示すように、山部71a(谷部71b)の数が2つのコイル71に変更してもよい。この場合では、山部71a(谷部71b)の数は、第1爪状磁極53の数(4つ)の約数となる。このように山部の数を第1爪状磁極53の数の約数又は倍数に設定しても、例えば、第1及び第2爪状磁極53,63の位置におけるコイル71の湾曲状態に規則性を持たせることができ、バランス良く磁界を発生させることが可能となる。
【0032】
・上記実施形態では、コイル43は、第1及び第2コアベース51,61と押圧接触するように湾曲して形成されるとしたが、これに限定されず、第1及び第2コアベース51,61と押圧接触しない形状で湾曲して形成してもよい。例えば、部品単体の状態で、その谷部43bの下面から山部43aの上面までの軸方向の長さが、第1コアベース51と第2コアベース61との軸方向の間隔と同じとなるように設定してもよい。
【0033】
・上記実施形態では、コイル43の湾曲している山部43aが第1コアベース51及び第1基部54に当接され、コイル43の湾曲している谷部43bが第2コアベース61及び第2基部64に当接されるとしたが、これに限定されず、第1基部54や第2基部64に当接されない構成に変更してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、第1爪状磁極53の数(第2爪状磁極63の数)を4つとしたが、これに限定されず、他の数に変更してもよい。
上記実施の形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
【0035】
(イ
)前記第1爪状磁極は、前記第1コアベースの内周端から径方向内側に延びる第1基部と、その第1基部の内側端部から軸方向に延びる第1磁極部とを有するものであり、前記第2爪状磁極は、前記第2コアベースの内周端から径方向内側に延びる第2基部と、その第2基部の内側端部から軸方向に延びる第2磁極部とを有するものであって、前記コイルの湾曲している山部を前記第1コアベース及び前記第1基部に当接させ、前記コイルの湾曲している谷部を前記第2コアベース及び前記第2基部に当接させたことを特徴とす
る。
【0036】
同構成によれば、コイルの湾曲している山部が第1コアベース及び第1基部に当接され、コイルの湾曲している谷部が第2コアベース及び第2基部に当接されるため、第1基部や第2基部に当接されない構成のものに比べて、接触面積が広くなり、コイルの周方向の位置ずれがより抑えられる。
【符号の説明】
【0037】
23(23u,23v,23w)…ステータ、41…第1ステータコア、42…第2ステータコア、43,71…コイル、43a,71a…山部、51…第1コアベース、53…第1爪状磁極、61…第2コアベース、63…第2爪状磁極。