(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最下位階層に設けられた無線式の火災感知器と、直接あるいは無線信号を転送する中位階層に設けられたリピータを介して前記火災感知器と無線通信を行う中継器と、該中継器の情報を信号線を介して受信する蓄積動作を行う火災受信機とを備える火災報知設備において、
前記中継器または前記リピータは、通常時は間欠受信を行い、前記火災感知器から火災信号を受信したときには、所定の時間連続受信を行う蓄積確認受信を行うことを特徴とする火災報知設備。
前記火災感知器は、火災を検出すると同一の火災信号を所定回数の連続送信と送信休止とを交互に行い、火災信号の連続送信は、火災受信機の蓄積動作が許容される最大蓄積時間を超えるまで繰り返し行われることを特徴とする請求項1に記載の火災報知設備。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る火災報知設備の一例を示す概略構成図である。
本実施の形態においては、P型火災報知設備の一部を無線式にした場合について説明するが、R型火災報知設備であってもよい。
【0014】
火災報知設備1は、火災受信機10、感知器回線20、無線式火災感知器30(以下、火災感知器30)、リピータ40、中継器50、終端抵抗60で構成され、P型火災報知設備の一部を無線式にしたものである。
火災感知器30は、建物の各部屋や共用部などに設置され火災の検出を行う。火災感知器30が検出した火災は、無線通信により中継器50に通知され、中継器50がスイッチング動作によって感知器回線20の線間電圧を所定電圧に低下させ、感知器回線20に流れる電流を増加させることで火災受信機10に火災を通知するものである。リピータ40は、火災感知器30と中継器50の距離が遠い場合に両者の間に設置され、火災感知器30と中継器50の無線通信を転送している。終端抵抗60は、感知器回線20の末端に接続され、感知器回線20に監視電流を流している。
【0015】
ここで、
図1においては、リピータ40が1台であるが、さらにリピータ40を設けて複数段の転送を行うようにして、火災感知器30と中継器50の間の距離を伸ばすことができる。
また、火災受信機10から延設される一対の感知器回線20のみ図示しているが、複数の感知器回線20を火災受信機10から延設するようにしてもよい。
また、1台の火災感知器30のみ図示しているが、複数台の火災感知器30を設置してもよい。
また、感知器回線20に火災を検出するとオンして感知器回線20の電流を増加させて火災を通知する一般火災感知器61を接続してもよい。
【0016】
(火災受信機の構成)
火災受信機10は、回線電源部11、受信抵抗12、状態判定部13、蓄積部14、受信機制御部15および復旧部16を備える。
回線電源部11は、図示しない商用電源から供給された交流電圧を電源電圧として例えば直流24Vに変換して、復旧部16を介して感知器回線20に通電し、接続機器に電源を供給する。
【0017】
受信抵抗12は、感知器回線20に回線電源部11から供給され、コモン線21、中継器50および終端抵抗60、ライン線22を経由して流れる電流が流れ、両端に電圧(以下、受信電圧と呼ぶ)を発生させ、電流を電圧に変換する。
【0018】
状態判定部13は、感知器回線20の平常、火災、断線を判断するための火災閾値および断線閾値を有している。状態判定部13は、受信抵抗12で変換された受信電圧を各閾値と比較して、感知器回線20の状態を判定することで、感知器回線20の異常を検出し、また、中継器50からの火災検出の通知(火災信号)を受信する。各閾値は、断線閾値<火災閾値の関係となっている。
【0019】
蓄積部14は、湯気等の非火災の一過性の要因により火災受信機10が火災と誤報しないようにする。蓄積部14は、中継器50からの火災の通知が初回である場合には、蓄積を開始し、蓄積時間T1経過後に感知器回線20への電源電圧の通電を一旦オフ(遮断)し、オン(通電)し直すことで中継器50を再起動あるいは火災の通知を停止させる蓄積復旧の制御を行う。蓄積部14は、蓄積復旧の後の蓄積開始から蓄積時間として許容される最大蓄積時間T2内である再火災確認中に再び中継器50から火災の通知を受信したときに、火災を確定するいわゆる蓄積動作を行う。
【0020】
受信機制御部15は、火災が確定すると、図示しない表示灯およびブザーを制御し、
火災の発生を知らせる警報動作を行う。受信機制御部15は、火災の警報の他に異常や蓄積動作中を知らせる警報動作を行っても良い。
【0021】
復旧部16は、感知器回線20への回線電源部11の電源電圧の通電をオン・オフするものであり、平常時はオンして感知器回線20に電源を通電し、図示しない復旧スイッチが操作されたとき、および蓄積復旧時に所定時間オフして感知器回線20の接続機器への電源を遮断する。
【0022】
(火災感知器の構成)
火災感知器30は、電池31、火災検出部32、感知器送信部33、および感知器受信部34を備える。電池31は、火災感知器30全体に電源を供給する。火災検出部32は、センサにより煙や熱の量に基づき火災を検出する。
感知器送信部33は、火災検出部32が火災を検出すると、上位の機器である中継器50あるいはリピータ40に火災信号を間欠的に無線送信する。
【0023】
ここで、送信される無線信号100のフォーマットを
図2に示す。
図2において、無線信号100は、ビット同期信号101、送信先AD102、送信元AD103、信号連番104、データ105およびエラーチェックコード106で構成される。ビット同期信号101は、無線信号の同期をとるための信号であり1と0が交互に並んだ符号である。送信先AD102には、送信先のアドレス番号が設定され、送信元AD103には送信元のアドレス番号が設定される。
信号連番104は、0〜255の範囲で順番に変化する値を格納し、受信側で無線信号の送信の順番を知ることができる。
データ105には、無線信号が火災信号である場合には火災情報が設定される。
エラーチェックコード106は、送信先AD102〜データ105までのデータが壊れていないことをチェックするためのコードであり、送信先AD102〜データ105に基づき特定の演算を行った結果がエラーチェックコード106と同じであればデータが正しいと判断できる。
【0024】
火災信号の送信は、信号連番を0から1つずつ増加させた同一の無線信号100を複数回連続して所定の送信時間にわたり送信する間欠送信動作を、休止期間B1を挟んで複数回繰り返し行われる。
【0025】
感知器受信部34は、通常時は間隔R1で間欠受信動作として、無線信号が送信されていないかの確認であるキャリアセンスを行う。感知器受信部34は、無線信号をとらえられない場合には、間欠受信動作を停止し、無線信号をとらえられた場合には、間欠受信動作を継続して無線信号を受信すると間欠受信動作を停止する。
また、感知器受信部34は、感知器送信部33が無線送信した場合には、送信確認受信の動作として無線送信終了後に期間R2にわたり連続して受信動作を行い、上位の機器からの受信確認信号を受信する。感知器受信部34は受信確認信号を受信すると感知器送信部33に通知を行う。
【0026】
(リピータの構成)
リピータ40は、電池41、リピータ受信部42、転送部43およびリピータ送信部44を備える。電池41は、リピータ40全体に電源を供給する。
リピータ受信部42は、通常時は間隔R1で間欠受信の動作として、無線信号が送信されていないかの確認であるキャリアセンスを行う。リピータ受信部42は、キャリアセンスにて無線信号をとらえられない場合には、間欠受信動作を停止し、無線信号をとらえられた場合には、間欠受信動作を継続して無線信号を受信すると間欠受信動作を停止する。
【0027】
また、リピータ受信部42は、リピータ送信部44が無線送信した場合には、送信確認受信の動作として無線送信終了後に期間R2にわたり連続して受信動作を行い、上位あるいは下位の転送先の機器からの受信確認信号を受信する。
また、リピータ受信部42は、間欠受信動作で受信した無線信号の内容が火災信号である場合には、蓄積確認受信の動作として最大蓄積時間(例えば20秒)を超える時間にわたる期間R3(例えば30秒)連続で受信を行い蓄積時間経過後に下位の火災感知器30あるいはリピータ40から送信される火災信号をすみやかに受信して、上位の中継器50またはリピータ40に転送できるようにする。
【0028】
転送部43は、リピータ受信部42が受信した信号の内容を判断する。転送部43は、受信信号の信号連番104の番号から連続送信の終了時刻を判別して転送送信開始時刻を算出したり、信号が火災信号かどうかなどを判別したりし、判断結果に基づきリピータ送信部44に信号の転送送信を行わせる。また、転送部43は、転送先からの受信確認信号を受信したかにより、リピータ送信部43への転送送信の指示を変化させることがある。
リピータ送信部43は、転送部43から転送先、同一信号の連続転送回数、転送送信開始時刻の指示に基づき受信した火災信号の転送送信を行う。この火災信号の転送送信は、信号の送信元も受信することができ、送信元への受信確認信号としての役割を兼用する。
【0029】
(中継器の構成)
中継器50は、中継器受信部51、監視部52、火災出力部53および中継器送信部54を備える。
中継器受信部51は、通常時は間隔R1で間欠受信の動作として、無線信号が送信されていないかの確認であるキャリアセンスを行う。中継器受信部51は、キャリアセンスにて無線信号をとらえられない場合には、間欠受信動作を停止し、無線信号をとらえられた場合には、間欠受信動作を継続して無線信号を受信すると間欠受信動作を停止する。
【0030】
中継器受信部51は、間欠受信動作で受信した無線信号の内容が火災信号である場合には、蓄積確認受信の動作として最大蓄積時間(例えば20秒)を超える時間にわたる期間R3(例えば30秒)連続で受信を行い蓄積時間経過後に下位の火災感知器30あるいはリピータ40から送信される火災信号をすみやかに受信できるようにする。
【0031】
監視部52は、中継器受信部51が受信した信号の内容を判断し、火災信号を検出すると火災出力部53および中継器送信部54に火災検出の通知を行う。
火災出力部53は、火災検出が通知されるとコモン線21とライン線22の間のインピーダンスを低下させて感知器回線20に火災電流を流して火災受信機10に火災を通知する。火災出力部53は、火災受信機10の復旧部16によって感知器回線20の接続機器への電源供給が所定時間オフされると復旧と判断して感知器回線20に火災電流を流すことを停止して、火災受信機10への火災の通知を停止する。
【0032】
中継器送信部54は、監視部52から火災検出の通知を受けると受信確認信号を下位の機器である火災感知器30またはリピータ40に送信する。
なお、中継器送信部54は、通常時には監視部52からの指示により、火災感知器30やリピータ40に向けて状態情報送信命令を送信し、下位の機器の状態情報を収集している。収集する状態情報としては、電池電圧低下、火災検出の異常、無線電波強度低下等であり、監視部52は、下位の機器の異常を検出すると不図示の表示部や音響警報部により異常発生を警報する。
【0033】
(火災時の動作)
火災時の動作について
図3に基づき説明する。
通常時、火災感知器30、リピータ40および中継器50は、上矢印で示される各々のタイミングでキャリアセンス(間欠受信)を行い、無線信号が送信されていないかを確認している(S01)。間欠受信の間隔R1は、RCR STD−30で許容されている送信時間3秒以下の信号をキャリアセンスでとらえられるように2.5秒間隔となっている。なお、間欠受信の間隔は、火災感知器30の連続する火災信号の送信時間より短ければよい。
【0034】
火災感知器30は、火災を検出すると上位の機器に火災信号を送信する(S02)。S02において火災初報送信として火災信号は、60msの信号長で信号連番104を0〜49とした50連続の無線信号100で送信され、送信時間が3秒となっている。無線信号100の信号長が30msであるならば100回連続で送信することで送信時間を3秒とすることができる。
【0035】
リピータ40は、キャリアセンスで火災感知器30からの送信信号をとらえると間欠受信を継続して火災信号を受信し、受信完了後に間欠受信を停止する(S03)。リピータ40は、受信した火災信号の信号連番104から火災感知器30が送信するS02の50連続の火災信号の送信終了時刻を算出してその時刻になると、中継器50に火災信号の転送送信を行う(S04)。転送送信される火災信号は、火災転送初報送信としてS02と同様に50連続の無線信号100によって送信される。
【0036】
火災感知器30は、S02の火災初報送信の送信が完了すると、送信休止期間B1に入りリピータ40から転送送信される火災信号を受信確認信号として受信するために期間R2にわたり連続で受信動作を行う(S05)。期間R2は、S04の受信確認信号(50連続の火災信号)の送信開始の遅れ見込みの時間と数回の火災信号の時間分の長さとすることで、ノイズ等によるS04の受信確認信号の受信失敗を防ぐことができる。また、送信休止期間B1は、RCR STD−30で許容されている2秒を超える3.2秒となっている。
【0037】
中継器50は、キャリアセンスでリピータ40から転送送信された火災信号をとらえると間欠受信を継続して火災信号を受信し、受信完了後に間欠受信を停止する(S06)。中継器50は、受信した火災信号の信号連番104からリピータ40が送信するS04の50連続の火災信号の送信終了時刻を算出して、その時刻になるとリピータ40に受信確認信号を送信し(S07)、期間R3にわたる蓄積確認受信動作を行う(S08)。リピータ40もS04の火災信号の送信完了後に期間R3にわたる蓄積確認受信動作を行う(S09)。蓄積確認受信動作の期間R3は、最大蓄積時間T2を超える時間とすることで火災受信機10の蓄積動作中に、リピータ40および中継器50が火災信号をいつでも受信できる。
【0038】
中継器50は、火災信号を受信すると火災受信機10に火災を通知する。通知を受けた火災受信機10は蓄積動作を開始して(S10)、蓄積時間T1を経過すると蓄積復旧を行う(S11)。中継器50は蓄積復旧を検知すると火災の通知を停止する。
火災受信機10は、蓄積復旧後に中継器50から再度火災の通知があるか再火災確認動作を行う(S12)。再火災確認動作は、蓄積開始から最大蓄積時間T2を超える時間継続する。
【0039】
火災感知器30は、火災を検出し続けている場合には、送信休止期間B1経過後に火災信号を送信し(S13−1)、送信完了後にS05と同様に受信確認信号の受信動作を行う(S05−1)。このとき、火災感知器30はS05でリピータ40の受信確認信号を受信できている場合には、火災後続送信として火災信号の送信を火災初報送信よりも少ない回数である3連続の無線信号100を送信する。これは、火災信号の送信回数が少なくても、S09の蓄積確認受信動作により連続受信を行っているのでリピータ40が火災信号を受信できるからである。なお、火災感知器30は、S05で受信確認信号を受信できていない場合には、再度火災初報送信を行い、50連続の火災信号を送信する。
【0040】
リピータ40は、火災感知器30からの送信信号を受信すると、火災転送後続送信としてS13−1と同様に3連続の無線信号により火災信号を中継器50に転送する(S14−1)。火災感知器30は、S14−1の火災転送後続送信を受信し、リピータ40に火災信号が伝わったことを確認する。中継器50は、S14−1の火災転送後続送信を受信するとリピータ40に受信確認信号を送信する(S15−1)。
【0041】
以後、火災感知器30が火災を検出し続けている場合には、S13〜S15の動作が送信休止期間B1経過毎に繰り返し行われる。そして、火災受信機10が再火災確認動作中に、リピータ40によって転送された火災信号S14−mを受信した中継器50が火災を通知すると、火災受信機10は火災が一過性のものではないとして火災発生の警報を行う。
なお、S13〜S15の動作の繰り返しは、最大蓄積時間T2が過ぎるまで繰り返せば十分であるため、S13−n〜S15−nのnはそれを満たす回数とすることができ、無線送信による消費電流の増加を低減することができる。
【0042】
以上のように、リピータ40および中継器50が火災信号を受信すると、間欠受信動作を蓄積確認受信として連続受信に切り換えるため、間欠受信による無線通信の遅延が低減される。さらに、火災感知器30または下位のリピータ40の連続送信回数を低減したため、連続送信完了後に行われるリピータ40の転送送信の待ち時間による遅延が低減される。
【0043】
なお、上記説明においては、火災感知器30から火災受信機10への再火災信号の無線通信の遅延を最小とする方法について説明したが、S13およびS14の動作において、火災信号の連続回数を減らさずS02およびS04と同じ連続回数としても間欠受信による遅延の虞がないため再火災信号の無線通信の遅延が低減される。
また、リピータ40が複数段である場合に、S13がS02と同じ連続回数の送信を行っていたとしてもS14において転送の際に火災信号の連続回数を減らせば、上位のリピータ40への転送送信の待ち時間だけ無線通信の遅延が低減される。
【0044】
また、火災後続送信または火災転送後続送信に対する受信確認信号が受信できない場合には、リピータ40および中継器50が連続受信を行っていない可能性があるため、次回の送信タイミングで連続送信回数を元の回数に戻して火災初報送信または火災転送初報送信とするようにしてもよい。
また、最大蓄積時間T2経過後に所定の期間開けて、再度火災信号を送るようにしてもよい。
また、間欠受信間隔R1は、火災感知器30、リピータ40、中継器50のそれぞれで異なる間隔としてもよく、その場合、火災感知器30、リピータ40は送信先の機器の間欠受信間隔よりも長い時間である火災初報送信、火災転送初報送信を行う。