特許第6127029号(P6127029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127029
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイント
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   E04B1/68 100A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-168671(P2014-168671)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44448(P2016-44448A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】松葉 明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 純
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−227183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震構造体と周辺地盤との間に形成されたクリアランスを塞ぐように設けられたカバーと、
前記クリアランス内に配置され、前記カバー及び前記免震構造体の一方に取り付けられた接続部材を備え、
前記カバーには、前記周辺地盤に当接する部位に、前記カバーの下面から上面に向かうにつれて前記免震構造体から離れて前記周辺地盤側に近づくように傾斜した傾斜面が形成されており、
前記接続部材は、前記免震構造体から前記周辺地盤に向かう方向に直交する方向に延在する軸部材を一体又は別体として有し、
前記カバー及び前記免震構造体の他方は、前記軸部材よりも大きく形成されて前記軸部材に係合する係合穴を有し、
該係合穴は、少なくとも一部が前記傾斜面に沿う方向に形成された長穴であり、前記免震構造体に取り付けられて前記係合穴の上側が切り欠かれたもの、又は、前記カバーに取り付けられて前記係合穴の下側が切り欠かれたものから成る切欠き穴であることを特徴とするエキスパンションジョイント。
【請求項2】
前記免震構造体は、前記クリアランス側に突出する突出部を備え、
前記カバーの一部は、前記突出部によって下方から支持され、
前記免震構造体側にある前記接続部材は、前記突出部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項3】
前記係合穴は、前記カバーの上面における前記免震構造体に接する縁に垂直な面において、該縁を中心点とする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイント。
【請求項4】
前記カバー及び前記免震構造体の他方に設けられた前記係合穴における前記カバー及び前記免震構造体の一方側に、前記係合穴から前記カバーが外れることを防ぐ外れ止め部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のエキスパンションジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンションジョイントに係り、特に、免震構造体と周辺地盤との間に設けられるエキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、免震構造を有する免震構造体の周囲にクリアランスを設けて、周辺地盤と縁切りするようにして、免震構造体に作用する震動を抑制する措置が取れられている。この免震構造体と周辺地盤との間には、双方の間を人及び車両等が往来可能とするために、エキスパンションジョイントを構成するカバーが架け渡され、地震の際には、カバーが周辺地盤に乗り上がるように回動して自身の破損を防止する構成が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたエキスパンションジョイントのカバーの免震構造体に面する側面は、鉛直に形成されておらず、鉛直に対して周辺地盤側に傾斜して形成されている。このように形成されているのは、カバーの回動スペースを確保するためである。
また、特許文献2には、免震構造体上にカバーが設置された状態において、免震構造体とカバーの一端とに連続する円筒状のダボ穴が形成されており、ダボ穴内にダボピンが収容されて相互間に空間が形成されているエキスパンションジョイントが開示されている。このように構成されたエキスパンションジョイントにおいては、ダボピンを中心に、ダボピンを除く空間が形成された範囲内でカバーが回動することとなる。
【0004】
更に、特許文献2のエキスパンションジョイントは、特許文献1のエキスパンションジョイントと同様に、カバーにおける免震構造体に面する側面と免震構造体との間に隙間が形成されており、当該隙間によってカバーを回動可能にするスペースを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5081794号公報
【特許文献2】特開2014−37764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたエキスパンションジョイントには、カバーにおける免震構造体に面する側面と周辺地盤との間に隙間が形成されていることで、地震による揺れが繰り返し生じると、隙間部分に面するカバーの側面と免震構造体部分が繰り返し衝突することとなる。この衝突によって、カバーの側面の一部が欠けることが考えられた。
【0007】
また、隙間内に小石等が入り込むことがあり、この場合には、カバーの円滑な回動動作を阻害し、カバーが回動する際に入り込んだ小石等によって局所的な応力がかかることにより破損が生じることがある。
更に、例えば、重いトラックが通る場合には、カバーがトラック進行方向前後に振れて、位置ズレすることがあった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたエキスパンションジョイントは、ダボピンを用意する必要があり、その取り付けの作業性が悪かった。更に、カバーが回動する際にダボ穴の縁にダボピンが接してダボピンに局所的な荷重がかかってしまうことがあり、ダボピンが破損した場合には、ダボピンによる安定的なカバーの回動支持が維持できないことがあった。
【0009】
更に、特許文献2に記載されたエキスパンションジョイントは、特許文献1に記載されたエキスパンションジョイントと同様に、カバーにおける免震構造体に面する側面と免震構造体との間に隙間が形成されているため、カバーの回動の際に免震構造体にカバーの側面から衝撃力が加わり、その反力をカバーが受けることで、カバーの円滑な回動動作を困難にする場合があり、同様に位置ズレが生じることがあった。
【0010】
本願発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、カバーの円滑な回動を可能にできるエキスパンションジョイントを提供することを目的とする。
本願発明に係るその他の目的は、取付性の良好なエキスパンションジョイントを提供することにある。
また、破損しづらいエキスパンションジョイントを提供することにあり、更に、トラック等が通る際に位置ズレが生じることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明に係るエキスパンションジョイントによれば、免震構造体と周辺地盤との間に形成されたクリアランスを塞ぐように設けられたカバーと、前記クリアランス内に配置され、前記カバー及び前記免震構造体の一方に取り付けられた接続部材を備え、前記カバーには、前記周辺地盤に当接する部位に、前記カバーの下面から上面に向かうにつれて前記免震構造体から離れて前記周辺地盤側に近づくように傾斜した傾斜面が形成されており、前記接続部材は、前記免震構造体から前記周辺地盤に向かう方向に直交する方向に延在する軸部材を一体又は別体として有し、前記カバー及び前記免震構造体の他方は、前記軸部材よりも大きく形成されて前記軸部材に係合する係合穴を有し、該係合穴は、少なくとも一部が前記傾斜面に沿う方向に形成された長穴であり、前記免震構造体に取り付けられて前記係合穴の上側が切り欠かれたもの、又は、前記カバーに取り付けられて前記係合穴の下側が切り欠かれたものから成る切欠き穴であることにより解決される。
【0012】
上記構成によれば、接続部材がカバーの下方にあるクリアランス内に配置されており、免震構造体から周辺地盤に向かう方向に直交する方向に延在する軸部材の揺動を係合穴が許容することで、カバーの回動を可能とする。
更に、カバーの周辺地盤に当接する部位に傾斜面が形成されており、係合穴が傾斜面に沿う方向に形成された長穴であることで、地震によって構造体免震構造体と周辺地盤とが近づいたときや、トラック等が通るときに、カバーが周辺地盤に乗り上がるようにガイドし、また、係合穴内における軸部材の移動を許容し、カバーの円滑な回動動作を実現することができる。
更に、軸部材と係合穴とによってカバーと免震構造体とが接続されていることで、カバー側面に局所的な荷重がかかることを防止でき、その破損を防ぐことができる。
更には、係合穴が傾斜面に沿う方向に形成されているため、従来と異なり、カバーと免震構造体との間に隙間を設けずとも、係合穴によりカバーの回動を案内することが可能となり、位置ズレが生じることを防止することができる。
また、軸部材を切欠きに通して係合穴内に係合させることができるため、取付作業性が良好となる。また、係合穴に軸部材を係合するためにクリアランス内に人が入り込む必要がなく、クリアランスが狭い場合に特に有用である。
【0013】
更に、前記免震構造体は、前記クリアランス側に突出する突出部を備え、前記カバーの一部は、前記突出部によって下方から支持され、前記免震構造体側にある前記接続部材は、前記突出部に固定されていると好ましい。
上記構成によれば、カバーが突出部に下方から支持されることにより、揺れの少ない通常状態で接続部材に荷重がかかることを回避することができ、接続状態を安定保持できる。
【0015】
また、前記係合穴は、前記カバーの上面における前記免震構造体に接する縁に垂直な面において、該縁を中心点とする円弧状に形成されていると好ましい。
上記構成によれば、カバー部材が周辺地盤に乗り上がるときに、カバー部材が前記免震構造体に接する縁を中心に円滑に回動させることができ、カバーが周辺に接触することによって局所的な応力が生じることを回避できるため長寿命となる。
【0016】
更に、前記カバー及び前記免震構造体の他方に設けられた前記係合穴における前記カバー及び前記免震構造体の一方側に、前記係合穴から前記カバーが外れることを防ぐ外れ止め部が形成されていると好ましい。
上記構成によれば、前記カバー及び前記免震構造体の他方に設けられた係合穴に外れ止め部が形成されていることで、カバーが係合穴から外れることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カバーが周辺地盤に乗り上がることを許容して係合穴内における軸部材の移動を許容し、カバーの円滑な回動動作を実現することができる。
更に、ダボピンを要さず、取付性の良好なエキスパンションジョイントを提供することができる。
更には、カバーと免震構造体との間に隙間を設ける必要がなく、トラック等が通る際にカバーに位置ズレが生じることを防止することができ、カバー側面に局所的な荷重がかかることを防止でき、その破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】免震構造体、周辺地盤、及び免震構造体と周辺地盤とに架け渡された本実施形態に係るエキスパンションジョイントを示す模式図である。
図2図1のII部を拡大して示す図であり、本実施形態に係るエキスパンションジョイントの動作前後の状態を示す断面図である。
図3】(A)は、エキスパンションジョイントを構成するカバーを示す図、(B)は、エキスパンションジョイントを構成する免震構造体側の支持台を示す図である。
図4図2のIV-IV断面を示す図であり、係合片と被係合片との接続状態を示す水平断面図である。
図5】第1の変形例に係る係合片と被係合片との接続状態を示す水平断面図である。
図6】(A)は、第2の変形例に係るカバーに取り付けられた被係合片を示す図、(B)は、第2の変形例に係る支持台に取り付けられた係合片を示す図である。
図7】第3の変形例に係る被係合片を備えるカバーを示す図である。
図8】(A)は、第4の変形例に係る被係合片を備えるカバーを示す図、(B)は、第4の変形例に係る被係合片に係合するスタッドボルトを備える係合片を示す斜視図である。
図9】第5の変形例に係る被係合片を備えるカバーを示す図である。
図10】(A)は、第6の変形例に係るスタッドボルトを有する係合片を備えるカバーを示す図、(B)は、第6の変形例に係る被係合片を示す図である。
図11】第7の変形例に係る被係合片を示す模式図である。
図12】第8の変形例に係る被係合片を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の実施形態に係るエキスパンションジョイント20について、図面を参照して説明する。
まず、エキスパンションジョイント20の全体構成、及びエキスパンションジョイント20の機能について図1図3を参照して説明する。
ここで、図1は、免震構造体10、周辺地盤14a、及び免震構造体10と周辺地盤14aとに架け渡された本実施形態に係るエキスパンションジョイント20を示す模式図、図2は、図1のII部を拡大して示す図であり、本実施形態に係るエキスパンションジョイント20の動作前後の状態を示す断面図、図3(A)は、エキスパンションジョイント20を構成するカバー21を示す図、図3(B)は、エキスパンションジョイントを構成する免震構造体10側の支持台30を示す図である。
【0020】
エキスパンションジョイント20は、図1に示すように、免震構造体10と周辺地盤14aとに架け渡されて、その上を通る車両、人の往来を可能とするものである。
免震構造体10は、基礎構造体14の上側に設けられた免震装置16を介して配設されている。
基礎構造体14は、地盤GRに鉛直方向に埋め込まれた複数本の杭12によって、地盤GR上に構築されて、地中において免震構造体10を囲むように構成されている。基礎構造体14のうち、地表面において水平に延在する部位を、以下において周辺地盤14aと称呼する。
免震装置16は、免震構造体10と基礎構造体14との間のクリアランスC内に配設されており、積層ゴム等によって構成されている。地震等で、免震構造体10に水平方向の変位が発生した場合には、免震装置16が弾性変形することで、水平方向の揺れを緩和するようになっている。つまり、免震装置16は、免震構造体10の揺れの周期を大きくして、地震等によって基礎構造体14から免震構造体10に伝播しようとする振動を緩和するように構成されている。
【0021】
エキスパンションジョイント20は、免震構造体10の地表面の近傍において水平に突出する支持台30(本願発明に係る突出部に相当)の上部と、基礎構造体14の周辺地盤14aの上部とに架け渡されている。
エキスパンションジョイント20は、板状から成り、地表に沿って配置されるカバー21と、カバー21から下方に延在する係合片21aと、支持台30から水平方向に延在するように取り付けられた被係合片30aとから主に構成される。
【0022】
カバー21は、例えばコンクリート製であり、免震構造体10側の側面が鉛直向きに延在し、周辺地盤14a側の側面である傾斜面21eが鉛直向きに対して斜め下方に向いて延在するように配設されている。換言すると、傾斜面21eは、下面から上面に向かうにつれて免震構造体10から周辺地盤14a側に近づくように傾斜して形成されている。
また、カバー21の下面には、当該下面に対して垂直に係合片21aが取り付けられている。
【0023】
係合片21aは、本発明に係る接続部材に相当し、ステンレスプレート等から成り、カバー21の下面に対して垂直に配されて鉛直方向に延在する向きで、取付板21cを介して取付ネジ21dによってカバー21の下面に固定されている。係合片21aには、これに直交する係合ピン21bが固定され又は挿通されている。
【0024】
係合ピン21bは、本発明に係る軸部材に相当し、後述する被係合片30aの係合穴30bに係合して係合穴30bの範囲内に揺動を制限されることで、カバー21の回動範囲を制限するものである。
【0025】
また、周辺地盤14aには、地震の際にカバー21の傾斜面21eに当接する部分に、傾斜面21eと面合わせとなるように鉛直向きに対して斜め上方に向いて延在する傾斜面14eが形成されている。
【0026】
被係合片30aは、ステンレスプレート等から成り、図3(B)に示すように、支持台30の外側面に対して垂直に配されて水平方向に延在する向きで、取付板30cを介して取付ネジ30dによって支持台30の外側面に固定されている。被係合片30aには、厚さ方向に貫通する係合穴30bが形成されている。係合穴30bは、係合ピン21bの幅よりも大きな幅で形成されており、免震構造体10から離れて周辺地盤14a側に近づくにつれて斜め上方に形成された長穴である。
【0027】
上記のように構成されたエキスパンションジョイント20のカバー21は、図2に示すように、実線で示す通常位置から、地震が起きて地盤GR及び周辺地盤14aが免震構造体10側に近づいたときには、免震構造体10に接する辺を中心として上方に回動して二点鎖線で示す位置に移動する。
具体的には、周辺地盤14aが免震構造体10側に近づいたときには、周辺地盤14aの傾斜面14eが、傾斜面21eに当接して、カバー21に斜め上方向に押し出す力を付加する。更に、カバー21に固定された係合ピン21bを通す被係合片30aの係合穴30bが傾斜面21eに沿って斜めに形成されているため、被係合片30aは、カバー21の回動を妨げない。よって、カバー21は、二点鎖線で示す位置に移動することとなる。
【0028】
このように、カバー21は、通常の状態においては実線で示す位置にあり免震構造体10の外側面、及び周辺地盤14aの傾斜面14eに面接触していることで、トラック等の重い車両が通る場合においても、当該車両の進行方向位置に偏って持ち上がりづらく、位置ズレが生じづらい。一方、地震が生じることによって地盤GRが揺れ動く場合には、カバー21が回動して浮かび上がることで、カバー21に応力が生じることを抑制でき、その損傷を防ぐことができる。
【0029】
<カバー21の取り付けについて>
カバー21の係合片21aの被係合片30aへの取り付けについて、図4及び図5を参照して説明する。
ここで、図4は、図2のIV-IV断面を示す図であり、係合片21aと被係合片30aとの接続状態を示す水平断面図、図5は、第1の変形例に係る係合片21aと被係合片30aとの接続状態を示す水平断面図である。
【0030】
図4に示す形態においては、2個の被係合片30aの内側に、2個の係合片21aのそれぞれを配設した後に、係合穴30b及び図示せぬ係合片21aの穴に係合ピン21bを通すことによって両者を連結する形態である。この形態においては、係合ピン21bは、係合片21a及び被係合片30aと別体に構成されるものである。
このように構成される係合片21a及び被係合片30aの取付作業は、カバー21の上方から係合ピン21bを通すことは困難であるため、カバー21を支持台30及び周辺地盤14aの上に被せた後に、作業者がクリアランスC内に入り込んで行われることとなる。
【0031】
(第1の変形例)
これと異なる取付作業である、図5に示す第1の変形例に係る被係合片30a及び係合片21aの取付作業について説明する。
なお、以下において、特に言及しない限り、エキスパンションジョイント20を構成する各部のうち、同一の符号が付されたものは、上記の構成の各部と同一の構成を有するものとして、その説明を省略する。
図5に示す形態においては、2個の被係合片30aの奥側(図5上、上側)に2個の係合片21aのそれぞれが配設されるように、2個の被係合片30a同士と2個の係合片21a同士とが同じ間隔で形成されている。そして、係合片21aには、一体的に係合ピン21bが形成されている。
【0032】
このように構成される係合片21a及び被係合片30aの取付作業は、係合片21aからの係合ピン21bの突出量分、カバー21を係合ピン21bの突出方向であって被係合片30aの係合穴30bの貫通方向に動かせるスペースがあれば、作業者がクリアランスC内に入り込まなくとも行なうことが可能となる。
つまり、作業者は、カバー21を支持台30及び周辺地盤14aの上に被せた後に、係合ピン21bが係合穴30bに通るように、カバー21をスライドさせて取付作業を行なうことができ、作業が容易となる。
【0033】
(第2の変形例)
上記においては、免震構造体10の支持台30側に、係合穴30bを有する被係合片30aが取り付けられるものとして説明した。
しかしながら、本願発明は、このような構成に限定されない。他の例に係るエキスパンションジョイント20について図6を参照して説明する。ここで、図6(A)は、第2の変形例に係るカバー21に取り付けられた被係合片41aを示す図、図6(B)は、第2の変形例に係る支持台30に取り付けられた係合片50aを示す図である。
【0034】
第2の変形例に係る被係合片41aは、図6(A)に示すようにカバー21側に取り付けられている。
具体的には、被係合片41aは、カバー21の下面に対して垂直に配されて鉛直方向に延在する向きで、カバー21の下面に固定されている。被係合片41aには、厚さ方向に貫通する係合穴41bが形成されている。係合穴41bは、後述する係合ピン50bの幅よりも大きな幅で形成されており、免震構造体10から離れて周辺地盤14a側に近づくにつれて斜め上方に形成された長穴である。
一方、支持台30側には、図6(B)に示すように、本発明に係る接続部材に相当する係合片50aが取り付けられており、係合片50aには、これに直交する係合ピン50bが固定されている。係合ピン50bは、本願発明に係る軸部材の相当し、被係合片41aの係合穴41bに係合して係合穴41bの範囲内に揺動を制限されることで、カバー21の回動範囲を制限するものである。
このように、係合片50aと被係合片41aとが、カバー21と支持台30とに逆に取り付けられる構成であっても、同様に、カバー21の回動を円滑にすることができる。
【0035】
(第3の変形例)
第3の変形例に係る被係合片61aについて、図7を参照して説明する。被係合片61aは、厚さ方向に貫通して円弧状に延在する係合穴61bを有する。具体的には、係合穴61bは、カバー21の上面における、免震構造体10に面する縁21fを中心点とした円弧状に形成されており、傾斜面21eに沿って斜め上方に延在している。
このように係合穴61bが円弧状に形成されていると、地震により、周辺地盤14aが免震構造体10側に近接した場合に、カバー21は、縁21fを中心としてスムーズに回動することができる。このため、係合穴61bの内縁面から係合ピン50bに加わる負荷を抑えることができる。
なお、この構成については、第2の変形例においても説明したものと同様に、支持台30側に、係合穴61bを有する図示せぬ被係合片を取り付け、カバー21側に、係合ピン50bを有する図示せぬ係合片を取り付けるようにしてもよい。
【0036】
(第4の変形例)
第4の変形例に係る被係合片71a及び係合片82aについて、図8を参照して説明する。ここで、図8(A)は、第4の変形例に係る被係合片71aを備えるカバー21を示す図、図8(B)は、第4の変形例に係る被係合片71aに係合するスタッドボルト82bを備える係合片82aを示す斜視図である。
【0037】
図8(A)に示すように、カバー21に取り付けられた被係合片71aには、免震構造体10側が開かれた断面V字状に形成された係合穴71bが形成されている。係合穴71bは、具体的には、カバー21が水平である状態で免震構造体10から周辺地盤14aに向けて斜め下方に延在する端側延在部71d(本願発明に係る外れ止め部に相当)と、端側延在部71dに連続し、カバー21が水平である状態で免震構造体10から周辺地盤14aに向けて傾斜面21eに沿って斜め上方に延在する中央側延在部71cと、から成る。
端側延在部71d及び中央側延在部71cは、後述するスタッドボルト82bにおける非ネジ部の径の幅と同じか若干大きく形成されている。
【0038】
係合片82aは、図8(B)に示すように、支持台30から水平方向に延在するように取り付けられている。スタッドボルト82bは、本発明に係る軸部材に相当し、一対の係合片82aに渡されており、一対の係合片82aの両外側からナット82cによって締結されることで係合片82aに固定されている。スタッドボルト82bにおける係合片82a間に非ネジ部が位置している。この非ネジ部に、カバー21の係合穴71bが係合することとなる。
【0039】
カバー21を係合片82aに係合するときには、スタッドボルト82bを、端側延在部71dに通して中央側延在部71c内に収容する。
係合穴71bにスタッドボルト82bが収容されると、地震等が生じた場合には、中央側延在部71cがスタッドボルト82bの移動を所定範囲で許容することで、カバー21の回動を許容する。そして、カバー21が所定以上回動した場合には、スタッドボルト82bの移動が中央側延在部71cから屈曲して延在する端側延在部71dに規制されることにより、カバー21が係合片82aから外れることが防止される。
【0040】
上記構成によれば、係合穴71bが免震構造体10側に開かれて形成されていることにより、図8(B)に示すスタッドボルト82bに係合穴71bを周辺地盤14a側から通すようにして、カバー21を支持台30上に取り付けることが可能となる。このため、クリアランスCに作業者が入り込む必要なく、カバー21を支持台30に上から取り付けるのみで、係合穴71bとスタッドボルト82bを係合させることが可能となり、作業が容易となる。
【0041】
(第5の変形例)
第5の変形例に係る被係合片72aを備えるカバー21について、図9を参照して説明する。
図9に示すように、カバー21に取り付けられた被係合片72aには、断面“く”の字状(図9に示す方向においては、左右反転した断面“く”の字状)に形成された係合穴72bが形成されている。係合穴72bは、具体的には、カバー21が水平である状態で下方から上方にかけて免震構造体10側に斜めに延在する端側延在部72d(本願発明に係る外れ止め部に相当)と、端側延在部72dに連続し、カバー21が水平である状態で免震構造体10から周辺地盤14aに向けて傾斜面21eに沿って斜め上方に延在する中央側延在部72cと、から成る。
端側延在部72d及び中央側延在部72cは、スタッドボルト82bにおける非ネジ部の径の幅と同じか若干大きく形成されている。
【0042】
上記構成のように、係合穴72bの端側延在部72dが、係合穴72bの端側延在部72dが、中央側延在部72cと異なる方向に延在するものであれば、図8(A)に示す端側延在部71dと異なる方向に延在するものであっても同様の効果を奏する。具体的には、地震等が生じてカバー21が所定以上回動した場合に、スタッドボルト82bの移動が、中央側延在部72cから屈曲して延在する端側延在部72dに規制されることにより、カバー21が係合片82aから外れることが防止される。
【0043】
更に、上記構成のように、係合穴72bが下方に開かれて形成されていることにより、図8(B)に示すスタッドボルト82bに係合穴72bを上方から通すようにして、カバー21を支持台30上に取り付けることが可能となる。このため、クリアランスCに作業者が入り込む必要なく、カバー21を支持台30に上から取り付けるのみで、係合穴72bとスタッドボルト82bを係合させることが可能となり、作業が容易となる。
【0044】
(第6の変形例)
上記の第4又は第5の変形例に係る構成は、カバー21と支持台30とで、スタッドボルト82bと係合穴71b又は係合穴72bとが逆に設けられる構成であってもよい。この一構成例としての第6の変形例に係る係合片83a及び被係合片73aについて、図10を参照して説明する。ここで、図10(A)は、第6の変形例に係るスタッドボルト82bを有する係合片83aを備えるカバー21を示す斜視図、図10(B)は、第6の変形例に係る被係合片73aを示す図である。
【0045】
図10(B)に示すように、支持台30に取り付けられた被係合片73aには、上方が開かれた断面“く”の字状に形成された係合穴73bが形成されている。係合穴73bは、具体的には、上方から下方にかけて周辺地盤14a側に斜めに延在する端側延在部73d(本願発明に係る外れ止め部に相当)と、端側延在部73dに連続し、周辺地盤14aから免震構造体10に向けて傾斜面21eに沿って斜め下方に延在する中央側延在部73cと、から成る。
端側延在部73d及び中央側延在部73cは、スタッドボルト82bにおける非ネジ部の径の幅と同じか若干大きく形成されている。
【0046】
係合片83aは、図10(A)に示すように、カバー21から鉛直下方向に延在するように取り付けられている。スタッドボルト82bは、一対の係合片83aに渡されており、一対の係合片83aの両外側からナット82cによって締結されることで係合片83aに固定されている。スタッドボルト82bにおける係合片83a間に非ネジ部が位置している。この非ネジ部に、被係合片73aの係合穴73bが係合することとなる。
【0047】
カバー21を被係合片73aに係合するときには、スタッドボルト82bを、端側延在部71dに通して中央側延在部73c内に収容する。
係合穴73bにスタッドボルト82bが収容されると、地震等が生じた場合には、中央側延在部73cがスタッドボルト82bの移動を所定範囲で許容することで、カバー21の回動を許容する。そして、カバー21が所定以上回動した場合には、スタッドボルト82bの移動が中央側延在部73cから屈曲して延在する端側延在部73dに規制されることにより、カバー21が被係合片73aから外れることが防止される。
【0048】
上記構成によれば、係合穴73bが斜め上方に開かれていることにより、図10(A)に示すスタッドボルト82bを斜め上方から係合穴73bに通すようにして、カバー21を支持台30上に取り付けることが可能となる。このため、クリアランスCに作業者が入り込む必要なく、カバー21を支持台30に上から取り付けるのみで、係合穴81bとスタッドボルト82bを係合させることが可能となり、作業が容易となる。
【0049】
(第7の変形例)
第7の変形例に係る被係合片91aについて、図11を参照して説明する。被係合片91aは、支持台30に取り付けられており、厚さ方向に貫通して円弧状に延在する係合穴91bを有する。具体的には、係合穴91bは、カバー21の上面における、免震構造体10に面する縁21fを中心点とした円弧状に延在しており、上側が開放されて形成されている。
【0050】
また、被係合片91aには、係合穴91bよりも周辺地盤14a側であって、係合穴91b側に突出する外れ止め突起91cが形成されている。この外れ止め突起91cは、被係合片91a上にカバー21が取り付けられた状態において、カバー21が回動する際のスタッドボルト82bの軌跡上に突出している。このようにして外れ止め突起91cは、カバー21の回動を制限することで、カバー21が係合穴91bから外れることを防止できる。
【0051】
上記のように、係合穴91bが円弧状に形成されていると、地震により、周辺地盤14aが免震構造体10側に近接した場合に、カバー21は、縁21fを中心としてスムーズに回動することができる。このため、係合穴91bの内縁面からスタッドボルト82bに加わる負荷を抑えることができる。
更に、係合穴91bが上側に開放されているため、図10(A)に示すスタッドボルト82bを上方から係合穴91bに載せるようにして、カバー21を支持台30上に取り付けることが可能となる。このため、クリアランスCに作業者が入り込む必要なく、カバー21を支持台30に上から取り付けるのみで、係合穴91bとスタッドボルト82bを係合させることが可能となり、作業が容易となる。
【0052】
(第8の変形例)
上記の第7の変形例に係る構成は、カバー21と支持台30とで、スタッドボルト82bと係合穴91bとが逆に設けられる構成であってもよい。この構成についての第8の変形例に係る被係合片95aについて、図12を参照して説明する。
【0053】
被係合片95aは、図12に示すように、カバー21から鉛直下方向に延在するように取り付けられている。被係合片95aには、カバー21の上面における免震構造体10に面する縁21fを中心点とした円弧状の面を有して下方に開放された係合穴95bが形成されている。このように、係合穴95bが下方に開かれていることにより、図9(B)に示すスタッドボルト82bに上方から係合穴95bを通すようにして、カバー21を支持台30上に取り付けることが可能となる。
【0054】
また、被係合片95aには、係合穴95bよりも免震構造体10側であって、下方及び係合穴95b側に突出する外れ止め突起95cが形成されている。この外れ止め突起95cは、被係合片95a上にカバー21が取り付けられた状態において、カバー21が回動する際のスタッドボルト82bの軌跡上に突出している。このようにして外れ止め突起95cは、カバー21の回動を制限することで、カバー21が係合穴95bから外れることを防止できる。
【0055】
上記の実施形態は、本願発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本願発明を限定するものではない。本願発明は、その趣旨を逸脱することなく、例えば実施形態の変形例に係る各構成を置き換え、又は組み合わせる等によって変更、改良され得るとともに、本願発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0056】
例えば、本発明に係る軸部材は、支持台30又は係合片21a等に固定できればよく、スタッドボルト、ピンの他、割ピン等を採用するようにしてもよい。
【0057】
また例えば、図9に示す第5の変形例に係る係合穴の中央側延在部を、図7に示すような第3の変形例に係る係合穴のように円弧状にするようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、係合穴は、貫通孔であるものとして説明したが、遊底穴であってもよい。
【0059】
更には、カバーを載置する支持台が免震構造体側に設けられ、カバーの傾斜面に当接する傾斜面が基礎構造体側に形成されている構成について説明したが、カバーが回動できる構成であればよく、これらは逆に形成されてカバーを逆向きで取り付ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 免震構造体
12 杭
14 基礎構造体
14a 周辺地盤
14e 傾斜面
16 免震装置
20 エキスパンションジョイント
21 カバー
21a 係合片(接続部材)
21b 係合ピン(軸部材)
21c 取付板
21d 取付ネジ
21e 傾斜面
21f 縁
30 支持台(突出部)
30a 被係合片
30b 係合穴
30c 取付板
30d 取付ネジ
41a 被係合片
41b 係合穴
50a 係合片(接続部材)
50b 係合ピン(軸部材)
61a 被係合片
61b 係合穴
71a,72a,73a 被係合片
71b,72b,73b 係合穴
71c,72c,73c 中央側延在部
71d,72d,73d 端側延在部(外れ止め部)
82a,83a 係合片
82b スタッドボルト(軸部材)
82c ナット
91a 被係合片
91b 係合穴
91c 外れ止め突起(外れ止め部)
95a 被係合片
95b 係合穴
95c 外れ止め突起(外れ止め部)
C クリアランス
GR 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12