(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モレキュラーシーブが、BEA、MFI、CHA、ERIおよびLEVからなる群から選択されるフレームワークを有するゼオライトであって、前記交換金属が、銅及び鉄から選択される、請求項1に記載の触媒物品。
【背景技術】
【0002】
B.)関連技術の説明:
米国の路上車両により生じる排ガスは、現在、国のスモッグ生成大気汚染の約三分の一を占める。スモッグを削減する取り組みとしては、ガソリンエンジンに比べてより燃費の良いエンジン、例えばディーゼルエンジン、および改善された排ガス処理システムの使用が挙げられる。
【0003】
大概の燃焼排ガスには、比較的良性の窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)、および二酸化炭素(CO
2)が最大部分として含まれるが、不完全燃焼による一酸化炭素(CO)、未燃燃料からの炭化水素(HC)、過剰の燃焼温度による窒素酸化物(NO
x)やパティキュレートマター(主にスート)などの、比較的少量の有害および/または有毒物質も排ガスに含まれる。車両排ガスの最も厄介な成分の一つはNO
xであり、それは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、および一酸化二窒素(N
2O)を含む。NO
xの生成は、ディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンにとっては、特に問題である。排ガス中のNO
xの環境影響を軽減するために、これらの望ましくない成分を、好ましくは他の有害または有毒物質を発生しないプロセスにより、除去することが望ましい。
【0004】
ディーゼルエンジンの排ガスは、ガソリンエンジンに比べて、スートを多く含む傾向がある。スート放出は、スート含有排ガスをパティキュレートフィルターに通過させることにより、改善することができる。しかし、フィルター上へのスート粒子の蓄積は、運転時に排気システム背圧の望ましくない上昇を引き起こし、それにより効率を低下させる可能性がある。フィルターを再生するために、蓄積した炭素系スートを、例えば不動態酸化または活性酸化によりスートを定期的に燃焼させることにより、フィルターから除去しなければならない。一つのそのような技法には、低温でのスートの触媒酸化が含まれる。例えば、米国特許第4902487号明細書は、オキシダントとしてのNO
2の使用を教示しており、それは回収したスートを低温で効果的に燃焼させるように働く。ウォールフロースートフィルター上の種々の酸化触媒を重ね合わせることにより(米国特許公開第2009/0137386号明細書)、または、種々の触媒濃度を使用して酸化触媒をゾーニングすることにより(欧州特許第1859864号明細書)、触媒スートフィルターの性能を改善することができることも示唆された。
【0005】
ディーゼル排ガスなどのリーンバーン排ガスについては、還元反応を実施するのは一般に困難である。しかし、ディーゼル排ガス中のNO
xをより良性な物質に変換するための一方法は、一般に選択式触媒還元(SCR)と呼ばれる。SCRプロセスには、触媒の存在下でおよび還元剤の助けにより、NO
xを元素の窒素(N
2)および水に変換することが含まれる。SCRプロセスでは、ガス状還元体、典型的には無水アンモニア、アンモニア水または尿素が、触媒に接触する前に排ガス流に添加される。還元体は、触媒に吸収され、ガスが触媒基材の中または上を通過するとNO
xの還元反応が生じる。無水アンモニアまたはアンモニア水のどちらかを使用するSCRプロセス用の化学量論反応の化学方程式は、以下の通りである。
4NO+4NH
3+3O
2→4N
2+6H
2O
2NO
2+4NH
3+3O
2→3N
2+6H
2O
NO+NO
2+2NH
3→2N
2+3H
2O
【0006】
既知のSCR触媒には、モノリス基材上またはモノリス基材中に配置されたゼオライトまたは他のモレキュラーシーブが含まれる。そのようなモレキュラーシーブの例には、チャバザイトフレームワーク(例えば、SSZ−13およびSAPO−34)、ベータフレームワーク、モルデナイトフレームワーク(例えば、ZSM−5)などを有する材料が含まれる。材料の触媒性能および水熱安定性を改善するために、SCR用途用のモレキュラーシーブには、モレキュラーシーブのフレームワークに弱く保持された交換金属イオンがしばしば含まれる。
【0007】
SCR触媒は、一般に不均一触媒(すなわち、気体および/または液体反応物質と接触している固体触媒)として働くので、触媒は、通常、基材に担持されている。自動車用途で使用するための好ましい基材には、両端が開放状態で、一般に基材の入口面から出口面に伸びる多重の隣接、平行チャンネルを含むいわゆるハニカム形状を有する流入モノリスが含まれる。各チャンネルは、通常、正方形、丸、六角形または三角形の断面を有する。触媒材料は、基材の壁上および/または壁中に取り入れることができるウォッシュコートまたは他のスラリーとして、通常、基材に適用される。
【0008】
多重成分、さらに多重SCR触媒を含有する排気システムが、知られている。例えば、米国特許第7,767,176号明細書は、2つの基材、好ましくは直列に配列している非ろ過流入ハニカムを有する排気システムを記載しており、ここで、各基材はSCR触媒を含む。SCR触媒、次いで酸化触媒を有する、ゾーニング非ろ過流入基材も、知られている(例えば、米国特許第5,516,497号明細書)。
【0009】
排気システムに求められるスペースの量を減らすために、1超の機能を実施する個々の排気成分を設計することが望まれる。例えば、流入基材の代わりに、ウォールフローフィルター基材にSCR触媒を適用することは、一つの基材に2つの機能、すなわち、SCR触媒によるNO
Xの触媒変換およびフィルターによるスートの除去を実施させることにより、排気処理システムの全体の大きさを縮小する働きがある。米国特許公開第2010/0180580号明細書は、SCR触媒が、ウォールフローフィルターの形態でハニカム基材に適用することができることを開示している。ウォールフローフィルターは、複数の隣接、平行チャンネルを含む点で流入ハニカム基材に似ている。しかし、流入ハニカム基材のチャンネルは、両端が開いているのに対し、ウォールフロー基材のチャンネルは、一端が閉じられていて、封止は、交互の様式で並ぶ隣接のチャンネルの反対側末端で行われている。チャンネルの交互の端が封止されているので、基材の入口面から入るガスがチャンネルをまっすぐ流れ、出ていくことが阻止される。代わりに、排ガスは、基材の前部に入り、チャンネルの約半分を移動し、ここで、チャンネルの第二の半分に入りかつ基材の背面から出る前に、チャンネル壁を強制的に通過させられる。
【0010】
SCR(SCR被覆フィルター)および酸化触媒を有し、SCR触媒が酸化触媒の上流に配置されているウォールフローフィルターが、英国特許出願第1003784.4号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。しかし、最小の背圧を有しながら、良好な触媒性能を有する改良型SCR被覆フィルターシステムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本出願人らは、基材を通るガスの全体の流れの方向に対してフィルター基材に連続的に配列する、2つ以上の触媒ゾーンを提供することにより、排気システムのSCR被覆フィルター成分の機能性を、改善することができることを驚くべきことに見出した。例えば、SCR触媒が軸方向に均一に装填されているフィルター基材と比べて、本明細書に記載されているゾーンフィルターは、基材を流れる排ガスにより生じる背圧を減らすことになる。そのようなゾーンは、高温で熱的に安定な第一のSCR触媒を(ガス流の全体の方向と比較して)フィルター基材の前部分に、また異なる性能を有するSCR触媒を後方部分に装填することにより形成することができ、または、フィルターの前半部分および後半部分に、同じ触媒成分を有するSCR触媒組成物を装填し、前部分に比較的高濃度の一つまたは複数の成分を装填することにより、形成することができる。背圧のこの減少は、ガスがフィルター触媒(複数可)と接触する方向(すなわち、フィルター壁を透過する方向)ではなく、フィルターの軸方向に沿って触媒の濃度または型が変化するときに起こるという点で、驚くべきことである。すなわち、ウォールフローフィルターでは、ガスは、フィルター入口面を経由して基材に流れ込み、フィルター出口面を経由して基材から流れ出て、このようにして、基材の主軸に平行なガス流の全体の方向を生じる。しかし、ガスは、基材の軸に直角な方向にあるフィルター壁を通過するときに、触媒成分と接触する。そのような軸方向で触媒濃度を変化させると、軸に沿って均一に分布する触媒濃度に比べて、背圧が減少することが見出された。
【0012】
したがって、本発明の一態様は、(a)入口面端および出口面ならびに前記入口面から前記出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリス、(b)第一のシーブ濃度のモレキュラーシーブ材料および第一の金属濃度の交換金属を含み、第一のゾーンに配置されている第一のSCR触媒組成物、ならびに(c)前記第一のシーブ濃度より少なくとも20%低い濃度の前記モレキュラーシーブ材料および前記第一の金属濃度の前記交換金属を含み、第二のゾーン配置されている第二のSCR触媒組成物を含み、前記第一のゾーンおよび第二のゾーンは、前記ウォールフローモノリスの一部分内で前記軸に沿って直列に配置されており、前記第一のゾーンは、前記入口面の近位に配置されており、前記第二のゾーンは、前記出口面の近位に配置されている、触媒物品を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、(a)入口面端および出口面ならびに前記入口面から前記出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリス、(b)第一のシーブ濃度のモレキュラーシーブ材料および第一の金属濃度の交換金属を含み、第一のゾーンに配置されている第一のSCR触媒組成物、ならびに(c)前記第一のシーブ濃度より少なくとも20%低い濃度の前記モレキュラーシーブ材料および前記第一の金属濃度より少なくとも20%低い濃度の前記交換金属を含み、第二のゾーンに配置されている第二のSCR触媒組成物を含み、前記第一のゾーンおよび第二のゾーンは、前記ウォールフローモノリスの一部分内で前記軸に沿って直列に配置されており、前記第一のゾーンは、前記入口面の近位に配置されており、前記第二のゾーンは、前記出口面の近位に配置されている、触媒物品が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、(a)入口面端および出口面ならびに前記入口面から前記出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリス、(b)第一のシーブ濃度でのモレキュラーシーブ材料および第一の金属濃度での交換金属を含み、第一のゾーンに配置されている第一のSCR触媒組成物、ならびに(c)前記第一のシーブ濃度の前記モレキュラーシーブ材料および前記第一の金属濃度より少なくとも20%低い濃度の前記交換金属を含み、第二のゾーンに配置されている第二のSCR触媒組成物を含み、前記第一のゾーンおよび第二のゾーンは、前記ウォールフローモノリスの一部分内で前記軸に沿って直列に配置されており、前記第一のゾーンは、前記入口面の近位に配置されており、前記第二のゾーンは、前記出口面の近位に配置されている、触媒物品が提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、(a)入口面端および出口面ならびに前記入口面から前記出口面へのガス流の軸を有するウォールフローモノリス、(b)モレキュラーシーブ材料および交換金属を含み、第一のゾーンに配置されている第一のSCR触媒組成物、ならびに(c)第二のモレキュラーシーブ材料および第二の交換金属を含み、第二のゾーンに配置されている第二のSCR触媒組成物を含み、前記第二のモレキュラーシーブに比べて、前記第一のモレキュラーシーブは、熱的により安定であり、前記第一のゾーンおよび第二のゾーンは、前記ウォールフローモノリスの一部分内で前記軸に沿って直列に配置されており、前記第一のゾーンは、前記入口面の近位に配置されており、前記第二のゾーンは、前記出口面の近位に配置されている、触媒物品が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、(a)NO
xおよびスートを含み、約250〜550℃の温度を有し、かつ約20,000〜約120,000/時間の空間速度を有する排ガスの供給流を発生する条件下でディーゼルエンジンを運転すること、(b)前記供給流に還元体を注入して、中間流を形成すること、ならびに(c)前記中間流を、本明細書に記載されるSCR被覆フィルターによる触媒物品に通過させて、前記供給流に比べて低いスートおよびNO
x濃度を有する精製排ガス流を生成することを含み、前記精製排ガス流は、アンモニアを有しないか、または、SCR触媒がガス流全体の方向に対して均一に分布することを除いて本明細書に記載されているのと同様のSCR被覆フィルターを、中間流が通過する場合に存在することになるアンモニア量より低い濃度のアンモニアを有する、アンモニアスリップを減らすための方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、(a)NO
xおよびスートを含み、約250〜550℃の温度を有し、約20,000〜約120,000/時間の空間速度を有する排ガスの気流を発生する条件下でディーゼルエンジンを運転すること、(b)前記気流中に還元体を注入して、中間流を形成すること、ならびに(c)前記中間流を、本明細書に記載されるSCR被覆フィルターによる触媒物品に通過させて、前記供給流に比べて低いスートおよびNO
x濃度を有する精製排ガス流を生成することを含み、前記通過ステップは、本明細書に記載されるSCR被覆フィルターに類似しているがガス流全体の方向に対して均一に分布するSCR触媒を有する触媒物品を、中間流が通過する場合に生じることになるガス流抵抗の量より少ないガス流に対する抵抗を生じる、排気処理システムの背圧を減らすための方法が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
x化合物の濃度を減らすのに十分な時間および温度で、ガスを、本明細書に記載されるSCR被覆フィルターによる触媒物品と接触させることを含む、排ガス中のNO
xを減らすための方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の態様によれば、(a)本明細書に記載されるSCR被覆フィルターによる触媒物品、および(b)前記触媒物品の上流にあるアンモニアまたは尿素の発生源を含むエンジン排ガス処理システムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、リーンバーンエンジン(例えばディーゼルエンジン)などの排ガス気流からのNO
xおよび微粒子を効果的および経済的に除去する触媒ろ過装置を提供する。好ましい実施形態では、複数の触媒ゾーンを有するウォールフローフィルター基材が提供される。ゾーンは、基材壁の別々の部分に、異なるSCR触媒および/または異なる濃度の同じSCR触媒成分を取り入れることにより形成される。好ましくは、ゾーンは、フィルター基材を通る排ガス流の全体の方向に対し、直列に配列されている。
【0022】
図1aおよび1bは、車両排気システムで使用するための従来のウォールフローフィルター基材10の一部分の図を示す。ウォールフロー基材は、互いにほぼ平行であり、基材を通るガス流の軸17に沿って基材の入口面12から基材の出口面13に広がる(すなわち、排ガスが入り、精製ガスが出る方向)多重チャンネル11を有する。従来のディーゼルエンジン用ウォールフローフィルター基材は、通常、400〜800のチャンネルを含むが、簡単にするために2〜3個のチャンネルのみが、これらの図に示されている。チャンネルは、多孔性壁15により画定され、各チャンネルは、基材の入口面または出口面のどちらかにキャップ14を有する。多孔性壁も、壁を通って流れるガス流の方向に比べて上流側18および下流側19により画定される。これらのような車両排気システムで使用するためのウォールフローフィルター基材は、多様な供与源から市販されている。
【0023】
図2Aおよび2Bは、本発明の実施形態による触媒物品部分の断面図を示す。この場合、触媒物品は、ウォールフローフィルター基材10、入口面12の近位にある基材壁15の一部分に取り入れられる第一のSCR触媒ゾーン20、および出口面13の近位にある基材壁15の別の一部分に取り入れられる第二のSCR触媒ゾーン22を含む。したがって、第一のゾーンおよび第二のゾーンは、壁を通るガス流の方向に対して(すなわち、壁の上流側から下流側へ)必ずしも直列に配列していない。代わりに、第一のゾーンおよび第二のゾーンは、軸17に平行な矢印28により示されるように、基材を通る予想される排ガス流の全体の方向に対して直列に配列している。
【0024】
触媒フィルター26で処理されない排ガスは、基材チャンネルに流れ、そこで、基材壁15の上流側18と接触する。エンジンの運転時に、圧力差が、基材の入口面と出口面の間に存在し(出口面に比べて、入口面でより高圧)、したがって、圧力差は、基材壁15の上流側18と下流側19との間にも存在する。壁のガス透過性に加えて、この圧力差は、入口面が開放しているチャンネルに流れる排ガス26が、多孔性壁15の上流側18からその壁の下流側19に、次いで基材の出口側が開放している隣接チャンネルに通ることを可能にする。排ガスは、軸17、すなわち、基材10を通るガス流28の全体の方向に対し直角の方向に壁を通過する。
【0025】
基材壁は、それをガス透過性にさせる気孔率および細孔径を有するが、ガスが壁を通過すると、ガスからのスートなどの微粒子物質の大部分を止める。好ましいウォールフロー基材は、高効率のフィルターである。本発明で使用するためのウォールフローフィルターは、好ましくは最小の70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の効率を有する。ある実施形態では、効率は、約75〜約99%、約75〜約90%、約80〜約90%、または約85〜約95%となる。この場合、効率は、従来のディーゼル排ガス中に通常みられる、スートおよび他の類似サイズの粒子、ならびに微粒子濃度に関連している。例えば、ディーゼル排気中の微粒子は、0.05ミクロン〜2.5ミクロンのサイズで変動し得る。したがって、効率は、この範囲または下位の範囲、例えば、0.1〜0.25ミクロン、0.25〜1.25ミクロン、または1.25〜2.5ミクロンに基づく可能性がある。
【0026】
排気システムの通常の運転時には、スートおよび他の微粒子は、壁の上流側上に蓄積し、これは、背圧の上昇をもたらす。この背圧の上昇を軽減するために、酸化触媒の使用を含めた既知の技法による、蓄積したスートを燃焼することを含めた活性または不動態技法により、フィルター基材は、連続的にまたは周期的に再生される。
【0027】
多孔性基材壁を通過する排ガスも、壁に取り入れられたSCR触媒と接触し、それによって排ガスからNO
x成分の大部分が除去される。触媒性能、フィルター壁全体により均一に配置されている同じ量の類似のSCR触媒に比べて、同等かまたはより優れた触媒特性、特にNO
x還元性能を有する改良型背圧性能を、本発明のウォールフローフィルター基材上のSCR触媒のゾーニングが、提供することが意外にも見出された。触媒性能は、フィルターを通るガス流の方向(すなわち、本発明の触媒組成物と接触するガス流の方向)に依存しないが、代わりに、基材を通る排ガスの全体の流れに依存するので、このゾーンフィルターの改良された性能も、驚くべきことである。
【0028】
本発明のゾーンSCR被覆フィルター物品は、均一に装填したSCR被覆フィルター物品に比べて、改良されたアンモニア貯蔵性能も示す。より詳細には、以下でより詳細に記載される本発明のある実施形態によりSCR触媒をゾーニングすること(例えば、出口面の近位のゾーンに比べ、入口面の近位のゾーン中のモレキュラーシーブ濃度を増やすこと)は、特にSCR被覆フィルターが高い温度および高い空間速度を有する排ガスを処理している場合に、エンジン運転時に素早く加熱しやすいフィルター基材の部分中のアンモニア貯蔵能力を高め、一方、アンモニアスリップの可能性を減らすフィルター基材の出口面付近のアンモニア貯蔵能力も減らす。
【0029】
本発明で使用するための好ましいSCR触媒は、一つまたは複数の遷移金属を含有する一つまたは複数のモレキュラーシーブを含む。本発明での使用に適切なモレキュラーシーブの型は、特に限定されない。しかし、好ましいモレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)により定義される、BEA、MFI(例えば、ZSM−5)、またはCHA、ERI、LEVなどの小細孔モレキュラーシーブから選択されるフレームワーク型を有する。ある好ましい実施形態では、モレキュラーシーブは、8個の四面体原子の最大リングサイズを有する小細孔フレームワーク型を有する。特に好ましい小細孔フレームワーク型には、CHA、ERIおよびLEV、最も好ましくはCHAが含まれる。モレキュラーシーブのフレームワーク型コード(Framework Type Code)がCHAである場合は、CHAのイソタイプフレームワーク構造は、例えば、SAPO−34、SSZ−62、およびSSZ−13からなる群から選択することができる。ERIフレームワーク型を有するモレキュラーシーブは、例えば、エリオン沸石、ZSM−34またはリンデ型Tとすることができる。LEVフレームワーク型コードのイソタイプフレームワーク構造または型の材料は、例えば、レビナイト、Nu−3、LZ−132またはZK−20とすることができる。
【0030】
ある好ましい実施形態では、モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩またはシリコアルミノリン酸塩である。好ましいアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブは、約10超、より好ましくは約15〜約250、より好ましくは約20〜約50、より一層好ましくは約25〜約40のシリカとアルミナのモル比を有する。モレキュラーシーブのシリカとアルミナの比は、通常の分析により決定することができる。この比は、モレキュラーシーブ結晶の原子フレームワーク内のシリカとアルミナの比をできるだけ厳密に表すことを意味し、好ましくはバインダー中の、またはチャンネル内のカチオン性もしくは別の形態のアルミニウムを除外する。バインダー材料と組み合わせた後に、モレキュラーシーブのシリカとアルミナの比を直接測定することが非常に困難であり得ることが分かる。したがって、上記におけるシリカとアルミナの比は、親モレキュラーシーブ、すなわち、触媒を調製するために使用されるモレキュラーシーブのシリカとアルミナの比によって表わされたものであり、このモレキュラーシーブを他の触媒成分と組み合わせる前に測定される。
【0031】
好ましくは、触媒組成物は、材料の触媒性能および/または熱的安定性を改善するために、モレキュラーシーブおよび少なくとも一つのフレームワーク外金属を含む。本明細書では、「フレームワーク外金属」は、モレキュラーシーブ内に、および/またはモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部分上に存在するものであり、アルミニウムを含まず、モレキュラーシーブのフレームワークを構成する原子を含まない。フレームワーク外金属は、イオン交換、含浸、同形置換などの任意の既知技法によりモレキュラーシーブに添加することができる。フレームワーク外金属は、金属交換モレキュラーシーブを形成するために触媒業界で使用される、広く認められている触媒活性金属のいずれかであってもよい。一実施形態では、少なくとも一つのフレームワーク外金属は、触媒の性能を高めるために、モレキュラーシーブと共に使用される。好ましいフレームワーク外金属は、銅、ニッケル、亜鉛、鉄、スズ、タングステン、セリウム、モリブデン、コバルト、ビスマス、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、金、銀、インジウム、白金、イリジウム、レニウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましいフレームワーク外金属には、クロム、セリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるものが含まれる。好ましくは、フレームワーク外金属の少なくとも一つは銅である。他の好ましいフレームワーク外金属には、特に銅と組み合わせた鉄およびセリウムが含まれる。アルミノケイ酸塩がCHAフレームワークを有する実施形態にとって、好ましいフレームワーク外金属は銅である。
【0032】
一例では、金属交換モレキュラーシーブは、触媒活性金属の可溶性前駆体を含有する溶液にモレキュラーシーブを混合することにより形成される。モレキュラーシーブ構造の上または中に触媒活性カオチンの沈殿を誘発するように、溶液のpHを調整することができる。例えば、好ましい実施形態では、イオン交換による触媒活性銅カオチンのモレキュラーシーブ構造への取り込みを可能にするのに十分な時間の間、硝酸銅を含有する溶液にチャバザイトが浸される。未交換銅イオンは沈殿する。用途によっては、未交換イオンの一部は、遊離銅としてモレキュラーシーブ材料中に残存することができる。次いで、金属置換モレキュラーシーブを、洗浄、乾燥および仮焼することができる。鉄または銅が、金属カオチンとして使用される場合に、触媒材料の金属含有量(重量比)は、好ましくはモレキュラーシーブ材料の約0.1〜約15重量%、より好ましくは約1〜約10重量%、より一層好ましくは約1〜約5重量%を含む。
【0033】
一般に、モレキュラーシーブ中へのまたはモレキュラーシーブ上への触媒金属カチオンのイオン交換は、室温でまたは最大約80℃の温度で、約1〜24時間の期間にわたり、約7のpHで実施することができる。得られる触媒モレキュラーシーブ材料を、好ましくは約100〜120℃で一晩乾燥し、少なくとも約550℃の温度で仮焼する。
【0034】
好ましくは、モレキュラーシーブ触媒は、基材を通して流れる排ガス流に含有されるNO
xを減らすのに十分な量で基材に取り入れられる。ある実施形態では、排ガス流中のアンモニアを酸化する、またはCOのCO
2への変換などの他の機能を実施するために、基材の少なくとも一部は、白金族金属(例えば、白金)などの酸化触媒も含み得る。
【0035】
本発明で有用なウォールフロー基材は、排気システムでの使用に適した任意の形状を有することができる。ただし、基材は、入口面、出口面、および入口面と出口面との間の丈を有する。適切な形状の例には、円柱、楕円柱および角柱が含まれる。ある好ましい実施形態では、入口面および出口面は平行な面にある。しかし、他の実施形態では、入口面と出口面は、平行ではなく、基材の丈は湾曲している。
【0036】
基材は、好ましくは互いにほぼ平行である複数のチャンネルを含む。チャンネルは、好ましくは約0.002〜約0.1インチ、好ましくは約0.002および0.015インチの厚さを有する薄い多孔性壁により画定される。チャンネルの断面の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、円形、楕円形、長方形、三角形、六角形などとすることができる。好ましくは、基材は、平方インチ当たり約25〜約750のチャンネル、より好ましくは平方インチ当たり約100〜約400のチャンネルを含む。
【0037】
ウォールフロー基材は、好ましくは、主要な相として、セラミック、ガラスセラミック、ガラス、サーメット、金属、酸化物、およびそれらの組み合わせを含む一つまたは複数の材料から構成される。組み合わせは、物理的または化学的組み合わせ、例えば、混合物、化合物または複合体を意味する。本発明の実施に特に適したいくつかの材料には、コーディエライト、ムライト、粘土、タルク、ジルコン、ジルコニア、スピネル、アルミナ、シリカ、ホウ化物、リチウムアルミノケイ酸塩、アルミナシリカ、長石、チタニア、溶融石英、窒化物、ホウ化物、炭化物、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素またはこれらの混合物からなるものがあるが、本発明はそのようなものに限定されないと理解されたい。特に好ましい材料は、コーディエライトおよび炭化ケイ素である。
【0038】
好ましくは、基材は、少なくとも約50%、より好ましくは約50〜75%の気孔率、および少なくとも10ミクロンの平均細孔径を有する材料で構成されている。
【0039】
好ましくは、SCR触媒は、壁の細孔の少なくとも一部分に、より好ましくはフィルター壁の細孔の表面上に存在する。壁を通る排ガスの流れを過度に制限する可能性のある細孔のふさぎを起こさないように、細孔中の触媒が配置していることが、非常に好ましい。1超の触媒は、細孔中で互いの上に重なっていてもよい。触媒材料を、壁の上流側と下流側の間に一つまたは複数の濃度勾配を形成するように壁に配置することもできる。異なる触媒を、壁の上流側および対応する下流側に装填することができる。
【0040】
一実施形態では、SCR触媒は、
図2Aに示すようにゾーニングされている。この実施形態にとって、第一のゾーンのSCR触媒は、交換金属を装填したモレキュラーシーブ材料を含む。第一のゾーンのSCR触媒と比べて、第二のゾーンのSCR触媒は、同じ交換金属を装填した同じモレキュラーシーブ材料を含むが、第二のゾーンのSCR触媒中のモレキュラーシーブ濃度は、第一のゾーンのSCR触媒中のモレキュラーシーブ濃度より少なくとも20%(例えば、約20〜約80%、約25〜約75%、約25〜約50%、約30〜約40%、約20〜約30%、約30〜約40%、約50〜約75%、および約40〜約60%)低く、一方、第一のゾーンと第二のゾーンのSCR触媒中の交換金属濃度はほぼ同じである。本明細書では、「少なくとも20%低い」という用語は、0%を含まない。例えば、第一のゾーンでは、モレキュラーシーブ濃度は、好ましくは約0.5〜約2.5g/in
3であり、交換金属濃度は、約10〜約120g/ft
3であるが、第二のゾーンでは、交換金属濃度は、ほぼ同じであるが、モレキュラーシーブ濃度は、第一のゾーンのものより少なくとも20%低い。
【0041】
別の実施形態では、SCR触媒は、
図2Aに示されるようにゾーニングされている。この実施形態にとって、第一のゾーンのSCR触媒は、交換金属を装填したモレキュラーシーブ材料を含む。第一のゾーンのSCR触媒と比べて、第二のゾーン中のSCR触媒は、同じ交換金属を装填した同じモレキュラーシーブ材料を含むが、第二のゾーンのSCR触媒中のモレキュラーシーブ濃度および交換金属濃度は、それぞれ、第一のゾーンのSCR触媒中のモレキュラーシーブ濃度および交換金属濃度より少なくとも20%(例えば、約20〜約80%、約25〜約75%、約25〜約50%、約30〜約40%、約20〜約30%、約30〜約40%、約50〜約75%、および約40〜約60%)低い。例えば、第一のゾーンでは、モレキュラーシーブ濃度は、好ましくは約0.5〜約2.5g/in
3であり、交換金属濃度は、約10〜約120g/ft
3であるが、第二のゾーンでは、レキュラーシーブ濃度および交換金属濃度は、第一のゾーンのものより少なくとも20%低い。
【0042】
別の実施形態では、SCR触媒は、
図2Aに示すようにゾーニングされている。この実施形態では、第一のゾーンのSCR触媒は、交換金属を装填したモレキュラーシーブ材料を含む。第一のゾーンのSCR触媒に比べて、第二のゾーンのSCR触媒は、同じ交換金属を装填した同じモレキュラーシーブ材料を含むが、第二のゾーンのSCR触媒中の交換金属濃度は、第一のゾーンのSCR触媒中の交換金属濃度より少なくとも20%(例えば、約20〜約80%、約25〜約75%、約25〜約50%、約30〜約40%、約20〜約30%、約30〜約40%、約50〜約75%、および約40〜約60%)低く、一方、第一のゾーンと第二のゾーンのSCR触媒中のモレキュラーシーブ濃度は同じである。例えば、第一のゾーンでは、モレキュラーシーブ濃度は、好ましくは約0.5〜約2.5g/in
3であり、交換金属濃度は、約10〜約120g/ft
3であるが、第二のゾーンでは、モレキュラーシーブ濃度はほぼ同じであるが、交換金属濃度は、第一のゾーンのものより少なくとも20%低い。
【0043】
別の実施形態では、SCR触媒は、
図2Aに示されるようにゾーニングされている。この実施形態にとって、第一のゾーンのSCR触媒は、交換金属を装填したモレキュラーシーブ材料を含む。第一のゾーン中のSCR触媒に比べて、第二のゾーン中のSCR触媒は、異なるモレキュラーシーブおよび/または金属を含む。好ましくは、第一のゾーン中のSCR触媒は、第二のゾーン中のSCR触媒と比べて、熱的により安定である。例えば、第一のゾーン中のSCRは、CHAフレームワークを有する3%銅のモレキュラーシーブとすることができ、第二のゾーン中のSCRは、CHAフレームワークを有する1%鉄のモレキュラーシーブとすることができる。
【0044】
モレキュラーシーブおよび交換金属に加え、SCR触媒組成物は、バインダー(例えばアルミナ)および調節剤などの他の成分を含むことができる。ある実施形態では、第一のゾーン中のSCR触媒組成物の総濃度は、第二のゾーン中のSCR触媒組成物の総濃度とほぼ同じである。他の実施形態では、第一のゾーン中のSCR触媒組成物の総濃度は、第二のゾーン中のSCR触媒組成物の総濃度より大きい。
【0045】
ある実施形態では、第一のゾーンおよび第二のゾーンは、互いに隣接している。他の実施形態では、第一のゾーンは、第二のゾーンの一部分と、好ましくは25%未満まで、より好ましくは10%未満まで重なり合っている。他の実施形態では、第二のゾーンは、第一のゾーンの一部分と、好ましくは25%未満まで、より好ましくは10%未満まで重なり合っている。さらに他の実施形態では、第一と第二のゾーンは、被覆されていないかまたは不活性物質で被覆されている基材壁の比較的小さな部分により分離されている。好ましくは、小さな部分は、チャンネル長さの約10%未満(例えば、約1〜約10%)、より好ましくは約5%未満(例えば、約1〜約5%)である。
【0046】
図2Aおよび2Bに示される実施形態は、それぞれ取り入れられるチャンネル壁の長さの約半分に広がる第一の触媒ゾーンおよび第二の触媒ゾーンを含む。好ましくは、第一のゾーンは、それが取り入れられるチャンネルの長さの約10〜約90%、より好ましくは約25〜75%、より一層好ましくは約40〜60%を構成する。好ましくは、第二のゾーンは、それが取り入れられるチャンネルの長さの約10〜約90%、より好ましくは約25〜75%、より一層好ましくは約40〜60%を構成する。
【0047】
ある実施形態では、2つ以上の触媒ゾーンが、基材に取り入れられる。例えば、基材は、好ましくは基材を通るガス流全体の軸に対し直列に配列する3個、4個、5個、6個、7個または8個のゾーンを含むことができる。ゾーンの数は、特に限定されないが、その代わりに、基材を設計するための特定の用途に依存する。
図3は、基材を通るガス流35全体に対し直列に配列する4個のゾーン31、32、33および34を有する、ウォールフロー基材30を含む本発明の実施形態を示す。2超のゾーンが提供される場合、ゾーンは、好ましくは濃度勾配を形成するように配列しており、基材の入口面の近位が濃度最大で、基材の出口面の近位が濃度最低である。好ましくは、各ゾーンは、触媒および/または触媒成分の相対的濃度において少なくとも20%の差で、隣接するゾーンと区別される。
【0048】
ある実施形態では、2つ以上の異なるSCR触媒を使用することができる。好ましくは、SCR触媒は、金属交換したモレキュラーシーブ材料を含む。異なる触媒は、異なるモレキュラーシーブ材料、異なる交換金属、または両方を有することができる。好ましくは異なるSCR触媒は、異なる熱的安定性を有し、好ましくは、異なるSCR触媒は、基材を通るガス流全体に対し直列に配列している。好ましくは、熱的に最も安定なSCR触媒は、入口面の近位に配置されており、熱的に最も不安定なSCR触媒は、出口面の近位に配置されている。
図4には、ウォールフロー基材40上に配置されている熱的により安定なSCR触媒41および熱的により不安定なSCR触媒42を有する本発明の実施形態が示されており、ここでは、熱的により安定なSCR触媒41は、基材の入口面の近位に配置されている。
【0049】
用途:
本明細書に記載される触媒モレキュラーシーブは、還元体、好ましくはアンモニアと、窒素酸化物との反応を促進して、酸素とアンモニアの競合反応に関して、元素の窒素(N
2)および水(H
2O)を選択的に形成することができる。一実施形態では、触媒は、アンモニア(すなわちSCR触媒)を用いた窒素酸化物の還元を促進するように調合することができる。別の実施形態では、触媒は、酸素を用いたアンモニアの酸化を促進するように調合することができる(すなわち、アンモニア酸化(AMOX)触媒)。さらに別の実施形態では、SCR触媒およびAMOX触媒は、直列に使用され、両方の触媒は、本明細書に記載されるモレキュラーシーブを含有する金属を含み、SCR触媒は、AMOX触媒の上流にある。ある実施形態では、AMOX触媒は、酸化下層上の最上層として配置されており、下層は、白金族金属(PGM)触媒または非PGM触媒を含む。
【0050】
SCRプロセス用の還元体(還元剤とも呼ばれる)は、排ガス中のNO
xの還元を促進する任意の化合物を広く意味する。本発明で有用な還元体の例には、アンモニア、ヒドラジン、または尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムやギ酸アンモニウムなどの任意の適切なアンモニア前駆体、およびディーゼル燃料などの炭化水素などが含まれる。特に好ましい還元体は、窒素系であり、アンモニアが特に好ましい。
【0051】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
x化合物の還元またはNH
3の酸化のための方法が提供され、その方法は、ガス中のNO
x化合物の濃度を下げるのに十分な時間の間、NO
x化合物の触媒還元のために、ガスを本明細書に記載される触媒組成物と接触させることを含む。一実施形態では、窒素酸化物は、少なくとも100℃の温度で還元剤を用いて還元される。別の実施形態では、窒素酸化物は、約150〜750℃の温度で還元剤を用いて還元される。特定の実施形態では、温度範囲は、175〜650℃である。別の実施形態では、温度範囲は、175〜550℃である。さらに別の実施形態では、温度範囲は、450〜750℃、好ましくは450〜700℃、より一層好ましくは450〜650℃である。
【0052】
別の実施形態では、窒素酸化物の還元は酸素の存在下で実施される。代替的な実施形態では、窒素酸化物の還元は、酸素の不在下で実施される。
【0053】
本方法は、燃焼プロセスから、例えば内燃機関(移動型または固定型)、ガスタービン、および石炭または石油火力発電所から生じるガスに対して実施することができる。本方法は、製錬、製油所のヒーターおよびボイラー、炉、化学処理工業、コークス炉、都市廃棄物処理場および焼却炉などの工業プロセスからのガスを処理するために使用することもできる。特定の実施形態では、本方法は、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、液体石油ガスまたは天然ガスを動力源とするエンジンなどの車両リーンバーン内燃機関からの排ガスを処理するために使用される。
【0054】
さらなる態様によれば、本発明は、車両リーンバーン内燃機関のための排気システムを提供し、そのシステムは、流れる排ガスを運ぶための導管、窒素還元体の発生源、および本明細書で記載されるモレキュラーシーブ触媒を含む。システムは、使用する場合、調量手段を制御するための手段を含むことができ、それにより、モレキュラーシーブ触媒が、100℃超で、150℃超で、または175℃超でなどの望ましい効率以上で、NO
x還元を触媒する能力があることが決定される場合のみ、流れる排ガス中に窒素還元体が調量される。制御手段による決定は、排ガス温度、触媒床温度、アクセル位置、システム中の排ガスの質量流量、吸気負圧、イグニッション・タイミング、エンジン速度、排ガスのラムダ値、エンジンに注入された燃料の量、排ガス再循環(EGR)バルブの位置およびそれによってEGRの量ならびにブーストプレッシャーからなる群から選択されるエンジンの条件を表す一つまたは複数の適切なセンサーインプットにより援助され得る。
【0055】
特定の実施形態では、調量は、(適切なNO
xセンサーを使用して)直接的に、または、エンジンの状況を表す任意の一つまたは複数の上述インプットと、予測される排ガスのNO
x含有量とを関連付ける、予め関連付けられた探索テーブルまたはマップ−−制御手段内に格納される−−を使用するなど、間接的に決定される排ガス中の窒素酸化物の量に応答して制御される。1:1 NH
3/NOおよび4:3 NH
3/NO
2にて算出されるSCR触媒に入る排ガス中に理論アンモニアの60%〜200%が存在するように、窒素還元体の調量を調整することができる。制御手段は、電子制御ユニット(ECU)などの予めプログラムされたプロセッサーを含むことができる。
【0056】
さらなる実施形態では、排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒は、窒素還元体を排ガス中へ調量する点の上流に置くことができる。一実施形態では、酸化触媒は、NOとNO
2の比約4:1〜約1:3(体積比)を有するSCRモレキュラーシーブ触媒に入るガス流を、例えば酸化触媒入口の排ガス温度が250〜450℃で生ずるように構成されている。酸化触媒は、流入モノリス基材上に被覆された、白金、パラジウムまたはロジウムなどの、少なくとも一つの白金族金属(またはこれらのいくつかの組み合わせ)を含むことができる。一実施形態では、少なくとも一つの白金族金属は、白金、パラジウム、または白金とパラジウム両方の組み合わせである。白金族金属は、アルミナ、アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブなどのモレキュラーシーブ、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、またはセリアとジルコニア両方を含む混合酸化物もしくは複合酸化物などの、高表面積ウォッシュコート成分上に担持することができる。
【0057】
さらなる態様では、本発明による排気システムを含む車両リーンバーンエンジンが提供される。車両リーンバーン内燃機関は、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、または、液化石油ガスもしくは天然ガスを動力源とするエンジンとすることができる。
【0058】
以下の非限定例は、本発明のいくつかの態様をさらに例示するために提示される。
【実施例1】
【0059】
均一およびゾーン被覆SCR−フィルター調製
断面4.02インチ×7.81インチ(10.2cm×19.8cm)および軸長6.85インチ(17.4cm)で、セル密度平方インチ当たり300セル、チャンネル壁厚さ0.305mm、気孔率52%および平均細孔径23μmを有する、2つの市販の炭化ケイ素ウォールフローフィルター(NGK Insulators Ltd)を、ゾーン被覆SCR被覆フィルターと均一被覆SCR被覆フィルターの特性を調査するために使用した。両方のウォールフローフィルターを、銅ゼオライト(2.5重量%銅)の分散液ならびにアルミナおよびジルコニアのバインダー材料(総ウォッシュコート固形物の18%)を含むウォッシュコートを用い、0.9g/in
3の総装填量で被覆した。
【0060】
SCR触媒を、(1)出口方向から基材の全軸長に沿って基材のチャンネルを被覆するのに十分な深さで、15重量%固形物スラリーを適用することにより、均一に被覆した。(2)次いで過剰のスラリーを減圧除去し、(3)次いでフィルターを100℃の空気流中で乾燥した。(1)〜(3)のプロセスステップは、ウォールフローフィルターの反対側の末端に対し繰り返し行い、SCR被覆フィルターを、500℃で1時間焼成した。最終のSCR触媒装填は、0.9g/in
3の均一分布であった。
【0061】
ゾーン被覆SCR被覆フィルターを、(1)入口方向から基材の軸長の40%に沿って基材のチャンネルを被覆するのに十分な深さで34重量%固形物のスラリーを適用することにより、調製した。(2)次いで、真空を適用して、過剰のウォッシュコートを除去し、(3)100℃の空気流でフィルターを乾燥した。(4)次いで、出口方向から基材の軸長の60%に沿って基材のチャンネルを被覆するのに十分な深さで、17%固形物スラリーを適用した。(5)真空を適用して過剰のウォッシュコートを除去し、次いで、(6)フィルターを100℃の空気流で乾燥し、500℃で1時間焼成した。このプロセスで、軸長の前40%を1.4g/in
3の装填量で被覆し、軸長の後60%を0.56g/in
3の装填量で被覆したゾーン−被覆SCR被覆フィルターを得た。
【実施例2】
【0062】
性能試験
微粒子物質を含有するディーゼル排ガスを使用する実施例1の各々のフィルターについて、スート装填に対する背圧増加の速度を、欧州特許第1850068Al号明細書に開示されCambustion Ltdにより製造されるディーゼル微粒子発生器(DPG)および試験セルを使用して試験した。すなわち、液体炭素含有燃料を燃焼することから生じる微粒子物質を発生させ回収する装置であり、装置は、ノズルを含む燃料バーナーを含み、ノズルは容器に収納されており、容器は、ガス入口およびガス出口を含み、前記ガス出口は、ガス出口から大気へガスを輸送するための導管と連結しており、装置はまた、ガス入口を通して流れるガスの速度を検出する手段、ならびに容器、ガス出口および大気への導管を経由してガス入口から酸化性ガスを強制的に流す手段、導管を通して流れるガスからの微粒子物質を回収するためのステーション、ならびにガス入口で検出されるガス流速に応答してガス流強制手段を制御するための手段を含み、それによって、ガス入口でのガスの流速が、容器内での準化学量論的燃料燃焼を提供するために望ましい速度に維持されて微粒子物質の形成を促進する。
【0063】
微粒子含有排ガスを最初に受けるために配置されている膜層を用いて、サプライヤーにより予め被覆されている入口チャンネルを有するステーションに、それぞれ順番にフィルターを備え付けた。最大50ppmの硫黄を含む標準フォアコート(forecourt)ポンプディーゼル燃料を用い、装置を運転した。約240℃に保持したインライン微粒子炭化ケイ素フィルターを用いて、ガス質量流速250kg/時間、微粒子発生速度10g/時間で、DPGユニットを運転した。各フィルターに微粒子物質を装填する間に、背圧を、差圧検出器で決定し、10秒毎にコンピュータに記録した。
【0064】
実施例1のフィルターを用いるDOCおよびSCR被覆フィルターシステムを、2Lの4気筒エンジンおよび過渡(transient)動力計を使用する模擬MVEGサイクルで評価した。
【0065】
1.25L Pt Pdオーブンエージド(aged)DOCを、エンジンエージド(aged)SCR被覆フィルター触媒で被覆した2.5L高気孔率SiCフィルターの上流に備え付けた。市販の尿素注入システムを使用して、尿素の注入でSCR被覆フィルターの上流25cm長の混合が可能になった。最低の注入温度は180℃であった。MVEGサイクルを繰り返した。
【0066】
図5および6のデータからわかるように、本発明によるゾーンSCR被覆フィルターは、同等の非ゾーンSCR被覆フィルターと比べて実質的に低い背圧を示す。さらに、ゾーンSCR被覆フィルターは、大きく改善したNO
x還元性能を提供する。