(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127070
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/00 20060101AFI20170424BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
F02B37/00 301F
F02B39/00 Z
F02B39/00 T
F02B39/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-560934(P2014-560934)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公表番号】特表2015-509572(P2015-509572A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013027066
(87)【国際公開番号】WO2013133979
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】102012004623.5
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】グイド・シュラーブ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・マース
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−509530(JP,A)
【文献】
実開平03−043533(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/139561(WO,A2)
【文献】
米国特許第8272834(US,B2)
【文献】
実開平03−102058(JP,U)
【文献】
国際公開第2010/135091(WO,A2)
【文献】
特開平08−312361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00−39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスターボチャージャ(1)であって、
タービン(2)を有し、
軸受ハウジング(4)を介して前記タービン(2)に接続され、かつコンプレッサハウジング(5)を有するコンプレッサ(3)を有し、前記コンプレッサハウジングが、弁座(11)が設けられたオーバーラン空気再循環弁用の弁フランジ(6)を有し、一方の端部(9A)でコンプレッサ入口(7)に開口する接続ダクト(9)を有し、
前記接続ダクト(9)の他方の端部(9B)が開口する弁フランジチャンバ(14)が、前記弁フランジ(6)の弁オリフィス(10)と前記弁座(11)の弁座オリフィス(13)との間に配置され、
前記弁フランジチャンバ(14)にバッファ容積(15)が設けられ、
前記弁フランジチャンバ(14)が、回転対称的に前記弁座オリフィス(13)を取り囲み、前記弁座オリフィス(13)よりも大きな内径を有し、
前記バッファ容積(15)が、局所的に集中した容積拡大部として前記弁フランジ(6)の円周(U)に配置される、
排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記バッファ容積(15)が、前記弁フランジ(6)に取り付けられる容器(16)に配置される請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記容器(16)が前記弁フランジ(6)に一体化される請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記容器(16)が前記弁フランジ(6)に溶接される請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記容器(16)が前記弁フランジ(6)に接着結合される請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
前記容器(16)が前記弁フランジ(6)にねじ留めされる請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記バッファ容積(15)が約10cm3〜20cm3のサイズを有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項8】
前記オーバーラン空気再循環弁が、空気圧式に作動されるか又は電気式に作動される弁である請求項1〜7のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用ターボチャージャを使用し得る過給式応用点火エンジン(supercharged applied−ignition engine)では、エンジン負荷を予め設定する役割を果たすスロットルフラップが、ターボチャージャのコンプレッサの下流側で空気マニホールドに装着される。アクセルペダルが解放されると、スロットルフラップが閉じ、ターボチャージャのコンプレッサは、その質量慣性のため、空気を事実上閉じられた容積に対して送り込む。この結果、コンプレッサは連続的に空気を供給できなくなり、逆流を形成するであろう。コンプレッサはサージするであろう。したがって、ターボチャージャの回転速度が突然低下するであろう。
【0003】
このことを防止するために、ターボチャージャに空気再循環弁(オーバーラン空気再循環弁とも称される)を設けることが可能であり、この弁は、一定の負圧を超えるとばね荷重の弁要素によって接続ダクトを開放し、この接続ダクトは空気をコンプレッサ入口に再循環させる。したがって、ターボチャージャの回転速度を高レベルに維持すること、及び引き続く加速過程の際にチャージ圧力を再び即座に利用できることが可能である。
【0004】
しかし、本発明との関連で実施された試験によれば、前記タイプのオーバーラン空気再循環弁が設けられるターボチャージャでは、空胴共振によって引き起こされる妨害する誘発ノイズのため、音響の問題が発生することが示されている。汎用ターボチャージャが設けられた車両の吸気領域に共鳴箱を設けることにより前記音響の問題を排除することが、部分的に、正当に試みられたが、このことは、構造に関する支出を増大させることが自明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、記載した空胴共振による妨害ノイズの発生を防止する、請求項1の前提部に規定されたタイプの排気ガスターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0007】
本発明に従って提供されるバッファ容積により、本発明による排気ガスターボチャージャの動作挙動における著しい音響的な改良が得られるが、この理由は、妨害するコンプレッサ及び誘発ノイズを完全に排除するか又は少なくとも著しく低減することができるからである。バッファ容積は、オーバーラン空気再循環弁の領域のコンプレッサハウジングの特別な容積拡大部を構成し、この容積拡大部は、バッファ容積がオーバーラン空気再循環弁の弁フランジの円周のどこかに配置されるので、非対称の容積拡大部として表すことができ、このことは、局所的に集中した容積の拡大部が円周にあることを意味する。
【0008】
前記措置は、空気圧式に作動されるコンプレッサハウジングのオーバーラン空気再循環弁、又は電気式に作動されるコンプレッサハウジングのオーバーラン空気再循環弁のために行われる。
【0009】
したがって、車両製造業者は、車両の吸気領域の上述の共鳴箱を排除することが可能である。全体として、対応する車両のNVH定格の改良が得られる。
【0010】
従属請求項は、本発明の有利な改良形態に関する。
【0011】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面に基づき例示的な実施形態の次の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による排気ガスターボチャージャの著しく単純化した概略図である。
【
図2】オーバーラン空気再循環弁用の弁フランジと共に、コンプレッサ吸入口の領域のコンプレッサハウジングの断面図である。
【
図3】コンプレッサ入口の図面のコンプレッサハウジングの平面図である。
【
図4】バッファ容積用の容器の代替構造を有するコンプレッサハウジングの部分図である。
【
図5】本発明による措置なしの公知のターボチャージャの音響効果を示すグラフである。
【
図6】本発明による措置なしの公知のターボチャージャの音響効果(
図5)と比較した、本発明による措置の音響効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による排気ガスターボチャージャ1の基本構造の著しく単純化した概略図である。前記排気ガスターボチャージャは、タービンハウジング17を有するタービン2を有し、かつコンプレッサハウジング5を有するコンプレッサ3を有する。ハウジング5と17は、シャフト18が取り付けられる軸受ハウジング4によって互いに接続され、シャフトは、一方の端部でコンプレッサホイール19を支承し、反対側端部でタービンホイール20を支承する。
【0014】
図2は、コンプレッサ入口7を有するコンプレッサハウジング5の断面図を示している。コンプレッサハウジング5には、オーバーラン空気再循環弁を配置するために設けられる弁フランジ6が一体形成されるが、本発明の原理を説明するために必要でないので、
図2に詳細に図示していない。
【0015】
弁フランジ6は、弁オリフィス10と、弁座オリフィス13を有する弁座11とを有する。
図2に示したように、弁オリフィス10と弁座オリフィス13との間に、弁フランジチャンバ14が配置され、その内径は、弁フランジチャンバ14が回転対称的に弁オリフィス13を取り囲むように、弁オリフィス13の内径よりも大きい。弁フランジチャンバ14は、接続ダクト9を介してコンプレッサハウジング5のコンプレッサ入口7に接続される。このために、接続ダクト9の一方の端部9Aは、コンプレッサ入口7内に開口し、接続ダクト9の他方の端部9Bは、弁フランジチャンバ14内に開口する。したがって、コンプレッサのサージを防止するために、弁座オリフィス13が開口しているときに、空気が接続ダクト9を介して、コンプレッサ入口7に流れて戻ることが可能である。
【0016】
冒頭に説明した音響の問題を回避するために、本発明に従って、弁フランジ6の円周Uのどこかに、集中した容積拡大部としてバッファ容積15が設けられる。前記構成は、本発明によれば、非対称の容積拡大部と称されるが、この理由は、弁フランジチャンバ14全体の連続的な拡大部と対照的に、非対称の容積拡大部が、弁フランジチャンバ14又は弁フランジ6の円周Uで選択可能な位置における集中した容積拡大部であるからである。
【0017】
図2に示した実施形態では、バッファ容積は容器16に配置され、弁フランジ6の壁部の接続凹部12により、バッファ容積15が弁フランジチャンバ14に接続される。
【0018】
容器16を弁フランジ6に配置するために様々な手段がある。
図3に示した実施形態では、容器16は弁フランジ6に溶接され、
図4に示した代替実施形態では、容器16は弁フランジ6にねじ留めされる。さらに、例えば鋳造法によって、容器16を弁フランジに一体化することも可能である。
【0019】
接着接続によって容器16を固定することも考えられる。
【0020】
バッファ容積15のサイズは、弁座11又は弁座オリフィス13の直径の大きさに応じて約10cm
3〜20cm
3である。
【0021】
図5及び
図6は、本発明による措置の効果を示している。ここで、
図5は、公知の排気ガスターボチャージャの圧力/周波数グラフを示しており、当該グラフは、長円輪郭によって強調表示されたピークSを示し、このピークは冒頭に説明した音響の問題をもたらす。
【0022】
対照的に、
図6は、本発明による排気ガスターボチャージャのグラフの同一のグラフを示しており、このグラフは、長円輪郭によって強調表示された領域のピークSをもはや示さない。曲線のこの平滑化は、上に説明したバッファ容積15を設けることにより得られる音響の改良を表している。
【0023】
本発明の上述の説明に加えて本開示を補完するために、ここに、
図1〜
図6が明示的に参照される。
【符号の説明】
【0024】
1 ターボチャージャ
2 タービン
3 コンプレッサ
4 軸受ハウジング
5 コンプレッサハウジング
6 弁フランジ
7 コンプレッサ入口
8 吸気接続ピース
9 接続ダクト
9A、9B 接続ダクト9の端部
10 弁オリフィス
11 弁座
12 接続凹部
13 弁座オリフィス
14 弁フランジチャンバ
15 バッファ容積
16 容器
17 タービンハウジング
18 シャフト
19 コンプレッサホイール
20 タービンホイール
L ターボチャージャの長手方向軸線
S 圧力ピーク