【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
Z. ZHOU et al.,Normal incidence p-i-n heterojunction photodiodes on Si substrate grown by ultrahigh vacuum chemical vapor deposition,OPTICS COMMUNICATIONS,2010年 9月15日,Vol.283,No.18,pp.3404-3407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、小型化や量産性に有利な受光素子の開発に当たり、Si(シリコン)を細線導波路の材料として用いるSi細線導波路が注目を集めている。
【0003】
Si細線導波路では、実質的に光の伝送路となる導波層コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ(SiO
2)等を材料としたクラッドで、導波層コアの周囲を覆う。このような構成により、導波層コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、導波層コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、受光素子全体の小型化に有利である。
【0004】
また、Si細線導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
【0005】
ところで、Si細線導波路に集積される光電子デバイスとして、PIN構造のフォトダイオード(以下、PIN−PDとも称する。)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。PIN−PDは、例えば以下のようにSi細線導波路に集積される。先ず、Siのコアに対して、不純物添加することにより、P型又はN型の導電性を付与する。次に、Siのコア上に例えば、Ge(ゲルマニウム)を積層する。その後、Geの表面に不純物添加することにより、Siのコアと逆の導電性を付与する。すなわち、SiがP型の場合は、GeをN型とし、SiがN型の場合は、GeをP型とする。この結果、P型の領域とN型の領域の間にI型領域と呼ばれる真性半導体領域が存在するPIN−PDが得られる。
【0006】
一般にP型領域、I型領域及びN型領域が積層された構造の縦型のPIN−PDは、基板上に光吸収層をエピタキシャル成長させて形成される。このとき、光吸収層に残留する歪みによってPDの受光効率に偏波依存性が生じることが知られている。無歪み又は圧縮歪みを持つ光吸収層は、TEモードの受光効率が高く、引っ張り歪みを持つ光吸収層はTMモードの受光効率が高い(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このため、特許文献1に開示されている受光器では、InP基板上に光吸収層としてInGaAsをエピタキシャル成長させたPDに対して、無歪み又は圧縮歪み光吸収層を前段に配置し、引っ張り歪み光吸収層を後段に配置している。無歪み又は圧縮歪み光吸収層では、TEモード光が吸収され、TMモード光は透過し、引っ張り歪み光吸収層では、TMモード光が吸収されるので、受信感度が偏波無依存化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この特許文献1に開示されている技術は、3元又は4元の化合物半導体を用いたPDには適用可能であるが、Si基板上にGeをエピタキシャル成長させた光吸収層を有するPDには適用できない。この理由は以下の通りである。
【0011】
InP基板上にエピタキシャル成長させるInGaAs光吸収層のInとGaの組成(In
xGa
1−xAs)を制御することにより、格子定数をGaAs(x=0)の5.653ÅからInAs(x=1)の6.06Åまで変えることができる。x=0.53のIn
0.53Ga
0.47Asのとき、格子定数が5.8687ÅのInPと位相整合する。従って、xを0.53よりも小さくするとInPよりも格子定数が小さくなり、InGaAsに引っ張り歪みを入れることができる。また、xを0.53よりも大きくするとInPよりも格子定数が大きくなり、InGaAsに圧縮歪みを入れることができる。
【0012】
これに対し、Si基板上にGeをエピタキシャル成長させる場合は、Si基板の格子定数が5.44Åであるのに対し、Geの格子定数が5.65Åであるため、Geには圧縮歪みしか入れることができない。
【0013】
このように、特許文献1に開示されている、無歪み又は圧縮歪み光吸収層を前段に配置し、引っ張り歪み光吸収層を後段に配置することにより、受信感度を偏波無依存化する技術は、Si基板上にGeをエピタキシャル成長させるPDには適用できない。発明者らが行った受信感度の測定結果によれば、TEモード光では、受信感度が0.74A/Wであり、TMモード光では、受信感度が0.56A/Wであり、約1.2dBの偏波依存性が存在する。
【0014】
この出願に係る発明者は、鋭意検討の結果、Siの導波層の上面に勾配を形成し、その勾配が形成された導波層上にGe層を設けることにより、光吸収層であるGe層に引っ張り歪みを入れることができることを見出した。
【0015】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、TE偏波及びTM偏波に対する、受光効率の偏波依存性を小さくし、入射される光の偏波状態によらず一定の出力電流を得ることができる、半導体受光素子とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するために、この発明の導波路型の半導体受光素子は、下クラッド層と、導波層と、光吸収層とを備えて構成される
TMモード受光素子と、下クラッド層と、導波層と、光吸収層とを備えて構成されるTMモード受光素子とが光の伝播方向に直列に配置されて構成されている。
TMモード受光素子では、導波層は、下クラッド層上に設けられていて、上面に勾配が形成されている。光吸収層は、導波層の勾配が形成された上面上に設けられていて
導波層の格子定数よりも格子定数が大きい。なお、導波層の上面に勾配が形成されていることにより、導波層の見かけ上の格子定数が光吸収層の格子定数よりも大きく、その結果、光吸収層に引っ張り歪みが加えられている。
TEモード受光素子では、導波層は、下クラッド層上に設けられていて、上面に勾配が形成されていない。光吸収層は、導波層の勾配が形成されていない上面上に設けられていて、導波層の格子定数よりも格子定数が大きい。なお、導波層の上面に勾配が形成されていないため、光吸収層の格子定数が導波層の格子定数よりも大きく、その結果、光吸収層に圧縮歪みが加えられている。
【0017】
また、この発明の半導体受光素子の製造方法は、以下の工程を備えている。先ず、シリコン基板上に、酸化シリコン層及びシリコン層が順に設けられたSOI基板の、シリコン層の
TMモード受光素子形成領域の上面に、勾配を形成する。次に、シリコン層をパターニングして導波層を形成する。次に
、導波層上に、
導波層の格子定数よりも格子定数が大きい光吸収層を形成する。
ここで、TMモード受光素子領域では、導波層の見かけ上の格子定数を大きくすることにより、光吸収層に引っ張り歪みが加えられている。また、勾配が形成されていない、TEモード受光素子形成領域では、光吸収層に圧縮歪みが加えられている。
【発明の効果】
【0018】
この発明の導波路型の半導体受光素子とその製造方法によれば、光吸収層に引っ張り歪みが加えられている。
【0019】
従来、Si基板上にGeをエピタキシャル成長させる場合、GeにはTEモード光の受光効率が高い圧縮歪みしか入れることができなかったため、偏波依存性が存在してしまう。これに対し、この発明では、GeにTMモード光の受光効率の高い引っ張り歪みを加えることができるので、受信感度を偏波無依存化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0022】
(第1受光素子の構成)
図1及び
図2を参照して、第1実施形態の半導体受光素子(以下、第1受光素子とも称する。)の構成について説明する。
【0023】
図1は、第1受光素子の模式的な斜視図である。第1受光素子は、導波層と、導波層の周囲にクラッド等を備えて構成されるが、
図1では、クラッドなど他の構成要素の図示を一部省略している。
【0024】
図2(A)〜(C)は、第1受光素子の切断端面を示す図である。
図2(A)は、
図1のI−I線に沿って取った切断端面を示し、
図2(B)は、
図1のII−II線に沿って取った切断端面を示している。また、
図2(C)は、
図1のIII−III線に沿って取った切断端面を示し、第1受光素子10では、TMモード受光素子10AとTEモード受光素子10Bが光の伝播方向(図中、+z方向)に沿って、直列に配置されている。
【0025】
先ず、TMモード受光素子10Aと、TEモード受光素子10Bに共通する構成について説明する。第1受光素子10は、支持基板12と、下クラッド層14と、導波層16と、光吸収層42と、上クラッド層18とを備えて構成される。
【0026】
支持基板12は、例えば、厚さ525μmのシリコン(Si)基板である。下クラッド層14は、支持基板12上に形成されている。下クラッド層14は、例えば厚さ3μmの酸化シリコン(SiO
2)層である。
【0027】
導波層16は、下クラッド層14上に形成されている。導波層16は、例えば、厚さ300nmのSi層である。導波層16には、低濃度の不純物が添加された低濃度p−Si領域32が形成されている。低濃度p−Si領域32に添加される不純物は、例えば、ホウ素(B)であり、その濃度は、例えば、1×10
19cm
−3である。
【0028】
光吸収層42は、導波層16の低濃度p−Si領域32上に形成されている。光吸収層42は、導波層16の勾配に直角方向の厚さが、例えば1μm程度であるゲルマニウム(Ge)層である。
【0029】
低濃度p−Si領域32の光吸収層42が形成されていない領域の一部には、低濃度p−Si領域32よりも高濃度の不純物が添加された高濃度p−Siコンタクト領域34が形成されている。高濃度p−Siコンタクト領域34に添加される不純物は、例えば、ホウ素(B)であり、その濃度は、例えば、1×10
20cm
−3である。
【0030】
また、光吸収層42の上側の領域に、高濃度n−Geコンタクト領域44が形成されている。高濃度n−Geコンタクト領域44に添加される不純物は、例えば、リン(P)であり、その濃度は、例えば、1×10
20cm
−3である。
【0031】
上クラッド層18は、下クラッド層14、導波層16及び光吸収層42上に形成されている。上クラッド層18は、例えば光吸収層42上の厚さ1μmのSiO
2層である。
【0032】
高濃度p−Siコンタクト領域34及び高濃度n−Geコンタクト領域44上には、それぞれコンタクト電極50が形成され、コンタクト電極50上にはパット電極52が形成されている。導波層16及び光吸収層42は、上クラッド層18で覆われているが、コンタクト電極50上のパット電極52は露出している。
【0033】
次に、TMモード受光素子10Aと、TEモード受光素子10Bの互いに相違する構成について説明する。
【0034】
TMモード受光素子10Aでは、導波層16の、光吸収層42が形成されている領域の上面32aに、勾配が形成されている。この勾配と下クラッド層14とのなす角θaは、少なくとも4度である。Siの導波層16の勾配が形成された上面上にGeの光吸収層42を選択成長させると、勾配が形成されている領域のSiの、見かけ上の格子定数が大きくなる。このため、Geの光吸収層42に引っ張り歪みを加えることができる。
【0035】
非特許文献2によると、Geの格子定数5.65Åに近い格子定数(5.653Å)のGaAsを、上面に2〜4度の勾配が形成されたSi上に成長させると、格子整合した、欠陥の無いGaAs膜を得られることが記載されている。
【0036】
Geについても同様に考えることができるので、Geを上面に2〜4度の勾配が形成されたSi上に成長させると、格子整合した、欠陥の無いGe層が得られることになる。そして、さらに勾配を大きくして、4度以上にすれば、Ge層に引っ張り歪みが加えられる。
【0037】
一方、TEモード受光素子10Bでは、導波層16の、光吸収層42が形成されている領域の上面32bに、勾配が形成されていない。すなわち、導波層16の上面と、下クラッド層14とのなす角θbは0度であり、互いに平行となっている。この場合、Siの導波層16の格子定数は5.43Åであり、Geの光吸収層42の格子定数5.65Åよりも小さいので、Ge層には圧縮歪みが加えられる。
【0038】
(第1受光素子の動作)
図3を参照して、第1受光素子の動作について説明する。
図3は、第1受光素子の動作について説明するための模式図である。
図3(A)は、TMモード受光素子を示す模式図であり、
図3(B)は、TEモード受光素子を示す模式図である。
【0039】
半導体結晶に、圧縮歪み又は引っ張り歪みを導入すると、価電子帯における正孔のエネルギー準位の縮退が解ける。
【0040】
TMモード受光素子では、Geの光吸収層に引っ張り歪みが加えられている。このため、
図3(A)に示すように、TMモードの受光に寄与する軽い正孔と電子との間の遷移が、TEモードの受光に寄与する重い正孔と電子との間の遷移に比べて増大する。この結果、TMモード受光素子では、TMモードの受光が優位となる。
【0041】
一方、TEモード受光素子では、Geの光吸収層に圧縮歪みが加えられている。このため、
図3(B)に示すように、重い正孔と電子との間の遷移が、軽い正孔と電子との間の遷移に比べて増大する。この結果、TEモード受光素子では、TEモードの受光が優位となる。
【0042】
第1受光素子では、TMモードの受光が優位なTMモード受光素子と、TEモードの受光が優位なTEモード受光素子を光の伝播方向に直列に並べている。
【0043】
第1受光素子10では、TMモードの受光が優位となるTMモード受光素子10Aと、TEモードの受光が優位となるTEモード受光素子10Bを、光の伝播方向にそって直列に並べている。このため、TMモード受光素子10Aと、TEモード受光素子10Bのそれぞれにおいて、各偏光に対する受光効率が異なる場合であっても、第1受光素子10全体として、受信感度を偏波無依存化することができる。
【0044】
(第1受光素子の製造方法)
図4及び
図5を参照して、第1受光素子の製造方法について説明する。
図4及び
図5は、第1受光素子の製造方法を説明するための工程図である。
図4(A)、(C)、(E)及び(G)、並びに、
図5(A)、(C)、(E)及び(G)は、
図1のI−I線に沿って取った切断端面に対応する面を示している。
図4(B)、(D)、(F)及び(H)、並びに、
図5(B)、(D)、(F)及び(H)は、
図1のIII−III線に沿って取った切断端面に対応する面を示している。
【0045】
先ず、Si基板上にSiO
2層及びSi層116が積層されたSOI基板を用意する(
図4(A)及び(B)参照)。Si基板、SiO
2層及びSi層がそれぞれ支持基板12、下クラッド層14及び導波層として用いられる。
【0046】
次に、フォトリソグラフィにより、レジストパターン122を形成する(
図4(C)及び(D)参照)。レジストパターン122には、レジスト厚さに勾配を持つレジスト開口部123が形成されている。このレジスト厚さに勾配を持つレジスト開口部123は、グレートーンマスクやハーフトーンマスクを用いて形成される。ここで、グレートーンマスクは、露光機の解像度以下のスリットを作り、中間露光を実現するものである。また、ハーフトーンマスクは、半透過の膜を利用して、中間露光を実現するものである。
【0047】
次に、レジストパターン122を用いたドライエッチングにより、Si層116に勾配面を形成する。このとき、レジスト厚さに勾配を持つレジスト開口部123の下部のSi層116は、レジスト厚さの薄い部分が深くエッチングされ、レジスト厚さの厚い部分が浅くエッチングされる。この結果、Si層117に勾配面117aが形成される。この勾配面の傾きは少なくとも4度に形成される。なお、勾配面の傾きの上限には特に制限はなく、勾配面上にGe層が成長できる角度であれば良い。このため、この勾配面の角度は例えば4〜10度の範囲で形成される。その後、レジストパターン122を除去する(
図4(E)及び(F)参照)。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、Si層117をパターニングして、導波層(光導波路コアとも称する)16を形成する(
図4(G)及び(H)参照)。
【0049】
次に、下クラッド層14及び導波層16上に、フォトリソグラフィによりレジストパターン124を形成する。このレジストパターン124には、フォトダイオード形成領域の光導波路16の一部を露出する開口125が形成されている。この開口125の面積は、数μm×数十μm程度である。その後、この開口125から光導波路コア16に、p型の不純物として例えばホウ素(B)を不純物添加して、低濃度p−Si領域32を形成する。この低濃度p−Si領域32の不純物濃度は、例えば1×10
19cm
−3程度である(
図5(A)及び(B)参照)。
【0050】
次に、レジストパターン124を除去した後、下クラッド層14及び光導波路コア16上に、フォトリソグラフィによりレジストパターン126を形成する。このレジストパターン126には、光導波路コア16の低濃度p−Si領域32の一部を露出する矩形状の開口127が、設けられている。その後、この開口127から光導波路の低濃度p−Si領域32に、p型の不純物として例えばホウ素(B)を不純物添加して、高濃度p−Siコンタクト領域34を形成する。この高濃度p−Siコンタクト領域34の不純物濃度は、例えば1×10
20cm
−3程度である(
図5(C)及び(D)参照)。
【0051】
次に、レジストパターン126を除去した後、TMモード受光素子形成領域110A及びTEモード受光素子形成領域110Bの低濃度p−Si領域32上に、厚さ1μm程度の光吸収層であるGe層42を選択成長させる。このとき、TMモード受光素子形成領域110Aでは、光導波路コア16の上面に少なくとも4度の勾配32aが形成されている。このため、Ge層42には引っ張り歪みが加えられる。一方、TEモード受光素子形成領域110Bでは、光導波路コア16の上面に勾配が形成されていないので、Ge層42には圧縮歪みが加えられる(
図5(E)及び(F)参照)。
【0052】
次に、下クラッド層14、光導波路コア16及びGe層42上に、フォトリソグラフィによりレジストパターン128を形成する。このレジストパターン128には、Ge層42の一部領域を露出する開口129が形成されている。その後、この開口129からGe層42に、n型の不純物として例えばリン(P)を不純物添加して、高濃度n−Geコンタクト領域44を形成する。この高濃度n−Geコンタクト領域44の不純物濃度は、例えば1×10
20cm
−3程度である(
図5(G)及び(H)参照)。
【0053】
次に、レジストパターン128を除去した後、下クラッド層14上に、光導波路コア16及びGe層42を覆うSiO
2膜を形成する。このSiO
2膜が上クラッド層18となる。その後、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、上クラッド層18にコンタクトホールを形成する。次に、電極材料として例えばアルミニウム(Al)を真空蒸着してコンタクトホールを埋め込むことにより、コンタクト電極50を形成する。最後に、上クラッド層18上に、電極材料として例えばアルミニウム(Al)を真空蒸着した後、フォトリソグラフィ及びドライエッチングによりAl膜をパターニングして、コンタクト電極50上にパッド電極52を形成し、
図1及び
図2を参照して説明した第1受光素子を得る。
【0054】
(第2受光素子)
図6を参照して、第2実施形態の半導体受光素子(以下、第2受光素子とも称する。)について説明する。
図6は、第2受光素子の切断端面を示す図である。
図6は、
図1のI−I線に沿って取った切断端面に対応する面を示している。なお、第1受光素子と重複する説明を省略する場合がある。
【0055】
第2受光素子は、低濃度p-Si領域33の上面の勾配33aの向きが複数存在する点が、第1受光素子と異なる。それ以外の構成は、第1受光素子と同様である。
【0056】
第2受光素子では、勾配33aの向きが複数存在しているが、勾配33aの大きさが少なくとも4度であれば、Ge層42に引っ張り歪みが加えられるのは、第1受光素子と同様である。
【0057】
(第2受光素子の製造方法)
図7を参照して、第2受光素子の製造方法について説明する。なお、第1受光素子の製造方法と重複する説明を省略する場合がある。
図7は、第2受光素子の製造方法を説明するための工程図である。
図7(A)及び(C)は、
図1のI−I線に沿って取った切断端面に対応する面を示している。
図7(B)及び(D)は、
図1のIII−III線に沿って取った切断端面に対応する面を示している。
【0058】
先ず、Si基板上にSiO
2層及びSi層116が積層されたSOI基板を用意する。Si基板、SiO
2層がそれぞれ支持基板12及び下クラッド層14として用いられる。Si層116上に、Siをエピタキシャル成長させてエピSi層201を形成する。Si層116の上面が(100)面の場合、エピSi層の表面には(911)面と(311)面が現れる(
図7(A)及び(B)参照)。すなわち、エピSi層201の上面は、下クラッド層14に対して勾配を有する。なお、エピSi層201の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いたSEM写真から求めた、勾配の大きさは、8.0〜8.5度程度である。
【0059】
その後、
図4(G)及び(H)並びに、
図5(A)〜(D)を参照して説明した第1受光素子の製造方法と同様の工程を行った後、導波層上にGeを成長させる。なお、
図7(C)及び(D)では、低濃度p−Si領域及び高濃度p−Siコンタクト領域の図示を省略している。Ge層42は、エピSi層201の(911)面上に形成するが、勾配の大きさが25度程度の(311)面上には形成しない(
図7(C)及び(D)参照)。
【0060】
その後、
図5(G)及び(H)を参照して説明した第1受光素子の製造方法と同様の工程を行うと、
図6に示す第2受光素子が得られる。
【0061】
(他の構成例)
上述した第1受光素子では、光電子デバイスとしてPIN構造が縦型のPDを用いる例について説明したが、これに限定されない。PIN構造が横型のPDを用いても良い。また、第1受光素子では、Si導波路からGe層への光の結合はエバネッセント結合であるが、バットカップリング結合でもよい。また、PIN−PDではなくアバランシェフォトダイオードを光電子デバイスとして用いても良い。
【0062】
また、
図1,2及び6などでは、TMモード受光素子及びTEモード受光素子が、いずれも電極数が3のPDとして示されているが、電極数はこれに限らない。
【0063】
さらに、電極材料についても、アルミニウム(Al)に限られず、銅(Cu)などの、SiやGeとオーミック接触を形成できる金属材料であれば良い。
【0064】
また、上クラッド層の材料もSiO
2に限定されず、SiO
x(0<x<2)、SiON、SiN、GeO
2など、Si及びGeよりも低屈折率である誘電体材料であれば良い。
【0065】
ここでは、光導波路をSiで構成する例を説明したが、光導波路は、クラッドを形成する材料よりも高い屈折率を持つ材料で構成しても良い。例えば、クラッドにSiO
2を用いた場合、光導波路を形成する材料として、SiO
x(0<x<2)や、SiON、SiNを用いても良い。また、光導波路をSiで構成した場合は、クラッドを形成する材料として、SiO
x(0<x<2)や、SiON、SiNを用いても良い。
【0066】
また、第1受光素子及び第2受光素子では、Si層上に直接Ge層が存在する例を示しているが、Si層とGe層の間に、SiGe層などのバッファ層を介在させても良い。同様に、Ge層上にSiなどの保護層を設けても良い。
【0067】
第2受光素子の製造方法では、エピSi層の形成により勾配面を形成する例を示したが、第1受光素子と同様に、グレートーンマスクやハーフトーンマスクを用いたフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより勾配を形成しても良い。また、勾配面は平面でなくても良く、曲面であっても良い。
【0068】
また、ここでは、Si層上にGe層を選択成長する場合を説明したが、材料の組合せはこれに限らない。Si層上へのSiGe混晶層を選択成長させるなど、導波層を構成する下地材料の格子定数が選択成長材料の格子定数よりも大きく、かつ、導波層の上面に勾配を形成することにより、導波層の見た目の格子定数が選択成長材料の格子定数よりも小さくなる組合せであれば良い。
【0069】
また、第1及び第2受光素子では、導波層の、勾配が形成された上面上に、Geの光吸収層を成長させることにより、Geの光吸収層に引っ張り歪みを加えて、TMモード受光素子10Aとし、勾配が形成されていない上面上に、Geの光吸収層を成長させることにより、Geの光吸収層に圧縮歪みを加えてTEモード受光素子10Bとしている。
【0070】
勾配が形成された上面上に、Ge層を成長させると、導波層の上面近傍は引っ張り歪みが加わるが、導波層から離れると次第に格子整合して、すなわち歪みが緩和されて無歪みとなる。この光吸収層の上面近傍の無歪みの部分は、TEモードの受光が優位となる。
【0071】
従って、
図2(A)を示して説明したようなTMモード受光素子単独で用いても、例えば、光吸収層を厚く形成すると、導波層の上面近傍はTMモードの受光が優位なTMモード受光領域となり、導波層から遠い部分はTEモードが優位なTEモード受光領域となるので、受信感度を偏波無依存化することができる。