(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127123
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】採掘車両とそのエネルギー供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170424BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20170424BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20170424BHJP
E21B 44/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 A
B60L11/18 A
E21B44/00 Z
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-247325(P2015-247325)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-123263(P2016-123263A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】14199556.3
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515277780
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コウヴォ, ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】コウヒア, サムリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルホ, サムリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァタネン, ハッリ
【審査官】
古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−515889(JP,A)
【文献】
特開2000−004586(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/070141(WO,A1)
【文献】
特表2012−510014(JP,A)
【文献】
特開2014−239642(JP,A)
【文献】
特開平09−308299(JP,A)
【文献】
特開2008−190212(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02733007(EP,A1)
【文献】
国際公開第2014/083239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
E21B 1/00−49/10
G05F 1/12− 1/44
G05F 1/45− 7/00
H02J 3/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採掘車両のエネルギー供給を制御する方法であって、前記採掘車両が
少なくとも1つの採掘作業装置、
前記少なくとも1つの採掘作業装置に給電するための少なくとも1つのAC電気モータ、
補助エネルギー源、
前記補助エネルギー源を充電するためのパワーエレクトロニクス装置、及び
給電網から前記採掘車両へ給電するための給電ケーブルに接続可能な接続装置
を備え、
前記方法が
前記給電ケーブルの電流の最大値を決定することであって、
前記給電ケーブルの前記電流は、前記少なくとも1つの電気モータの実効電流と、前記少なくとも1つの電気モータの無効電流と、前記補助エネルギー源の充電に用いられる前記パワーエレクトロニクス装置の実効充電電流とを含み得る、決定すること、
無効電流の供給及び前記補助エネルギー源の充電もしくは放電に前記パワーエレクトロニクス装置を使用すること、
前記パワーエレクトロニクス装置の電流の最大値を決定することであって、前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流は、前記パワーエレクトロニクス装置によって供給される前記無効電流と、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための前記実効充電電流とを含み得、
これにより、前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値が、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための前記実効充電電流の最大値と前記パワーエレクトロニクス装置が供給可能な前記無効電流の最大値との和よりも小さい、決定すること、
前記給電網からの前記実効電流の量と、前記パワーエレクトロニクス装置によって供給される前記無効電流の量と、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための前記実効充電電流の量とを制御することであって、前記給電ケーブルの前記電流の最大値及び前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値が超過されないように制御すること、並びに
充電の必要性を決定することであって、充電の必要がある場合、必要とされる充電電流が前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値のオーバーシュートを引き起こすかどうかを決定し、引き起こすであろう場合、前記無効電流の補償を低減することが可能かどうかを決定し、可能である場合、前記無効電流の補償を低減させ、その後充電を行う、決定すること
を含み、
前記電気モータの温度が測定され、前記無効電流の補償を低減させる可能性が、前記電気モータの前記温度に基づいて決定される、
方法。
【請求項2】
充電の必要がない場合、可能な限り多くの及び/又は必要とされる量の無効電流を、前記パワーエレクトロニクス装置によって供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉱山の掘削計画を決定すること、及び前記掘削計画に基づいて充電をスケジューリングすることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パワーエレクトロニクス装置が前記補助エネルギー源の放電に用いられ、これにより前記採掘作業装置に更に給電する、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
採掘車両であって、
少なくとも1つの採掘作業装置、
前記少なくとも1つの採掘作業装置に給電するための少なくとも1つのAC電気モータ、
補助エネルギー源、
前記補助エネルギー源の充電もしくは放電及び無効電流の供給のためのパワーエレクトロニクス装置であって、前記パワーエレクトロニクス装置が、前記パワーエレクトロニクス装置の電流の最大値を有し、前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流は、前記パワーエレクトロニクス装置によって供給される前記無効電流と、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための実効充電電流とを含み得る、パワーエレクトロニクス装置、
給電網から前記採掘車両に給電するための給電ケーブルに接続可能な接続装置であって、前記給電ケーブルは前記給電ケーブルの電流の最大値を有し、前記給電ケーブルの前記電流は、前記少なくとも1つの電気モータの実効電流と、前記少なくとも1つの電気モータの無効電流と、前記補助エネルギー源の充電に用いられる前記パワーエレクトロニクス装置の前記実効充電電流とを含み得、
これにより、前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値が、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための前記実効充電電流の最大値と、前記パワーエレクトロニクス装置が供給可能な前記無効電流の最大値との和よりも小さい、接続装置、並びに
前記給電網からの前記実効電流の量と、前記パワーエレクトロニクス装置によって供給される前記無効電流の量と、前記補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための前記実効充電電流の量とを制御するように設定された制御ユニットであって、前記給電ケーブルの前記電流の最大値及び前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値が超過されないように制御され、これにより、前記制御ユニットは充電の必要性を決定し、充電の必要がある場合、必要とされる充電電流が前記パワーエレクトロニクス装置の前記電流の最大値のオーバーシュートを引き起こすかどうかを決定し、引き起こすであろう場合、前記無効電流の補償を低減することが可能かどうかを決定し、可能である場合、前記無効電流の補償を低減し、その後充電を行うように前記パワーエレクトロニクス装置を制御するように設定された、制御ユニット
を備え、
前記採掘車両が前記電気モータの温度を測定するための温度計を備え、前記制御ユニットは、前記電気モータの前記測定された温度に基づいて、前記無効電流の補償を低減させる可能性を決定するように設定されている、
採掘車両。
【請求項6】
前記制御ユニットが、充電の必要性を決定し、充電の必要がない場合、可能な限り多くの及び/又は必要とされる量の無効電流を供給するよう前記パワーエレクトロニクス装置を制御するように設定されている、請求項5に記載の採掘車両。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は採掘車両及び採掘車両のエネルギー供給方法に関する。
【0002】
鉱山においては、削岩リグ及びその他の採掘車両が用いられ、予め計画された作業現場において、採掘作業装置の作業サイクルに従い諸工程が実施される。作業サイクルにより必要なボーリング孔掘削などのタスクが実施された後、採掘車両は次の作業現場に移動されて新しい作業サイクルが開始される。特に地下鉱山で用いられる採掘車両において利用される、作業サイクルに従った諸工程のための駆動エネルギーは、鉱山の電気回路網からの電気である。対照的に、作業現場間の移動走行は燃焼機関(典型的にはディーゼルエンジン)を用いて得られた駆動エネルギーによって行われ、電気ケーブルなどが移動走行を制限しない。しかしながら、燃焼機関からの排ガス及び騒音が鉱山に問題を引き起こす。更に、燃焼機関は車両の車台に大きな空間を占め、定期的な保守を必要とする。燃焼機関は、高温となる表面を有し且つ車両内及び鉱山内で可燃性の燃料を保管・取扱いする必要があるので、鉱山の防火上の安全性にも悪影響を及ぼす。
【0003】
鉱山の電気回路網に継続的に接続された採掘車両も、鉱山で使用されている。これらの採掘車両は、典型的には一定の回転速度を有する電気モータを有している。作業段階によって要求される電力が油圧部品を用いて調節され、電気モータは、作業段階のエネルギー消費によって規定される電流及び負荷動力を鉱山の電気回路網から得る。更に、採掘車両の移動は典型的に、電気回路網又は少なくともこれに接続されたケーブルにより限定される。ケーブルは採掘車両又は固定電気回路網において巻きつけられている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、新しいタイプの採掘車両とそのエネルギー供給方法とを提供することである。
【0005】
本発明は、独立請求項の特徴部分によって特徴付けられる。本発明の実施形態は、従属請求項によって提示される。
【0006】
本発明の解決策においては、採掘車両が、少なくとも1つの採掘作業装置、少なくとも1つの採掘作業装置に給電するための少なくとも1つのAC電気モータ、及び補助エネルギー源を備える。本採掘車両は、補助エネルギー源を充電するためのパワーエレクトロニクス装置、及び、給電網から採掘車両へ給電するための給電ケーブルに接続可能な接続装置を更に備える。給電ケーブルの電流の最大値が決定される。給電ケーブルの電流は、少なくとも1つの電気モータの実効電流、少なくとも1つの電気モータの無効電流、及び、補助エネルギー源の充電に用いられるパワーエレクトロニクス装置の実効充電電流を含み得る。パワーエレクトロニクス装置は、無効電流の供給、及び補助エネルギー源の充電もしくは放電に用いられる。パワーエレクトロニクス装置の電流の最大値が決定される。パワーエレクトロニクス装置の電流は、パワーエレクトロニクス装置によって供給される無効電流、及び、補助エネルギー源を充電もしくは放電するための実効充電電流を含み得る。パワーエレクトロニクス装置の電流の最大値は、補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための実効充電電流の最大値とパワーエレクトロニクス装置が供給できる無効電流の最大値との和よりも小さい。パワーエレクトロニクス装置によって供給される無効電流の量と、補助エネルギー源を充電もしくは放電させるための実効充電電流の量とは、給電ケーブルの電流の最大値及びパワーエレクトロニクス装置の電流の最大値が超過されないように制御される。これにより、給電ケーブル及びパワーエレクトロニクス装置の寸法を大きくする必要がない。しかしながら、例えばフルパワー掘削を制限することなく補助エネルギー源が効率的に充電され得る。
【0007】
一実施形態によれば、充電の必要性が決定される。充電の必要性が存在しない場合、必要な及び/又は最大限の無効電流がパワーエレクトロニクス装置によって供給される。従って、無効電流が単純且つ費用対効果の高い方式で補償される。
【0008】
別の実施形態によれば、充電の必要性が決定される。充電の必要性が存在する場合、必要とされている充電電流がパワーエレクトロニクス装置の電流の最大値のオーバーシュートを引き起こし得るかどうかが決定される。オーバーシュートが引き起こされる場合、無効電流補償を低減することが可能かどうかが決定される。無効電流補償を低減することが可能である場合には無効電流が低減され、充電が実施される。従って、オーバーシュートを発生させずに充電が実施され、なお且つ補助エネルギー源の十分な充電を確保することができる。
【0009】
更なる実施形態によれば、電気モータの温度が測定される。温度が十分に低い場合、無効電流補償を低減させることができる。従って、例えば作業サイクルの開始時、オーバーシュートを発生させずに充電が実施され、且つ同時に、例えば給電網から採掘作業装置へ大量の電力が供給され得る。
【0010】
本採掘車両は、削岩機械、ボルト締結機械、ショットクリート装置、スケーリング装置、注入装置、発破孔装薬機(blasthole charger)、装填機、ダンプカー、測定装置、又は少量装薬(small−charge)掘削に用いられる掘削・封止・推進剤フィード装置といった採掘作業装置のうちの一又は複数を備え得る。削岩機械は、表面掘削装置、又は生産坑井掘削に用いられる装置(扇形状に掘削孔を掘削する長孔掘削装置)であってもよい。採掘作業装置は、切り離されていない岩のハンドリングに用いられ、且つ所与の作業サイクルに従い幾つかの連続的な工程を実施し得る作動機であり得る。典型的には、1つの作業現場で採掘作業装置を用いて幾つかの同様の工程が実施される。これらの工程は、掘削計画、充電計画、又は対応する採掘計画などの採鉱計画において規定され得る。採掘作業装置は通常、作業サイクル中の装置の移動に用いられるブームに配置される。一方、採掘作業装置が、作業サイクル中に装置を支持する、採掘車両中の対応する支持体又は支持構造上に配置されてもよい。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態を添付図面でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】採掘車両(この場合は削岩リグ)の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面において、本発明の幾つかの実施形態を明示のために単純化して示す。各図面における同様の部分は、同じ参照番号で表してある。
【0014】
図1は、一又は複数の採掘作業装置2を装備した採掘車両1の一実施例である削岩リグを示す。削岩リグは、駆動機器4を用いて移動させ得る台車3を備える。駆動機器4は、一又は複数の駆動モータ5と、一もしくは複数の車輪7に駆動動力を伝達するための一又は複数の動力伝達手段6とを備える。動力伝達機は機械式ギアシステムと機械式動力伝達部材とを備えるか、代替的に、動力伝達機が油圧式又は電気式であってもよい。台車3に配置された一又は複数のブーム8が存在し得、ブームは採掘作業装置2を装備している。
図1に示す実施形態で、第1のブーム8aは掘削ブームであり、このブームの最も外側の端部に送りビーム10を備えた削岩ユニット9が存在し、フィード装置12を用いて、この送りビーム10に沿って削岩機械11が動かされ得る。削岩機械11は、ツールに対する衝撃波を生成するための衝撃装置13、及び、ツール14を長手方向軸周囲で回転させるための回転装置15を備え得る。削岩リグ中に、これらの掘削ブーム8aが幾つか存在し得る。例示として、ボルト締結装置16を備えた第2のブーム8bが示されており、ボルト締結装置16を用いて、予め掘削されたボーリング孔内に、掘削された岩石空洞を支持するためのロックボルトを配置することができる。
図1の実施形態で、第3のブーム8cは、掘削されたボーリング孔を測定するための測定装置17を装備している。その他の代替的な採掘作業装置2は、岩中への封止材料の供給に用いられる注入装置、ショットクリート処理装置、スケーリング装置、少量装薬掘削に用いられる装置、及び爆薬を供給するための装置を含む。
【0015】
採掘車両1は、鉱山18の掘削計画又はそれに相当する予め計画されたプランに従って作業現場19へと走行されている。採掘作業装置2は作業現場19で、比較的長期間を要する作業サイクルに従って工程を実施する。例えば、削岩機械の作業サイクルは、作業現場19での掘削計画で規定された幾つかのボーリング孔の掘削を含み得る。更に、各ボーリング孔の掘削は、カラー設置、実際の掘削、延長ロッド及びドリルビットの交換、並びに掘削後の延長ロッド機器の解体などに幾つかの作業段階で構成されるのが典型的である。作業現場19における掘削作業サイクルの実施には数時間かかることがあり、全ワークシフトを要することもある。これに対応し、充電、ボルト締結、測定、及び注入がかなり時間のかかる工程となることが多い。一般的に、採掘作業装置2の使用は、ボーリング孔の掘削又は仕上げ孔の更なる処理に関連する。このことは、切り離されていない岩のハンドリングを意味する。
【0016】
図1は、鉱山18が、固定的に建設されているか或いは改変可能なネットワークからなる電気回路網又は給電網20を有することを更に示している。典型的には、給電網20は三相交流給電網である。採掘車両1が作業現場19にあるとき、採掘作業装置2、油圧システム、及び任意の必要な補助システムは主に、給電網20から得られる電気エネルギーによって駆動される。採掘車両1は、一又は複数の給電ケーブル21を用いて給電網20に接続され得る。給電ケーブル21はリール22に配置されており、且つ、電気回路網20の供給端子に接続され得る適切なコネクタ23を備え得る。代替的に、リール22及びケーブル21が鉱山18中に配置されており、給電ケーブル21が採掘車両1に接続されていてもよい。採掘車両1は、接続装置24を介して給電網20に接続された電気モータ26を備える。採掘車両1で、油圧ポンプ27によって油圧が生成される。油圧ポンプは電気モータによって回転される。
【0017】
採掘車両1は接続装置24を備え、これを通じて、給電網20から供給される電気が採掘車両1の種々の装置へと接続される。採掘車両1は、少なくとも1つの補助エネルギー源25も備える。補助エネルギー源25は例えば、バッテリ、スーパーキャパシタ、もしくはこれらの組み合わせであるか、又は充電可能な任意の他の適切なエネルギー源であり得る。
【0018】
図2は、採掘車両の幾つかの部分をごく概略的に示す。
【0019】
電気モータ26が給電網20に接続されている。電気モータ26は油圧ポンプ27を回転させる。
【0020】
電気モータ26はシャフト28も備える。給電網20から電気モータ26へ電気エネルギーが供給されると、電気モータのロータが回転する。シャフト28は電気モータ26のロータに接続されており、これにより、給電網20からの電気エネルギーがシャフト28を回転させる。
【0021】
シャフト28は油圧ポンプ27を回転させるように接続されている。油圧ポンプ27は、回転すると、採掘車両の油圧システムに対して油圧を生み出す。採掘車両の油圧システムは、参照番号29で示されている。
【0022】
油圧システム29中の油圧は、例えば、採掘作業装置2への動力供給に用いられる。油圧はまた、例えば操舵及びブレーキなど駆動機器の油圧システムの駆動にも用いられ得る。
【0023】
エネルギー源25は、インバータ30を介して給電網20に接続されている。インバータ30は、補助エネルギー源25の充電に用いられるパワーエレクトロニクス装置である。インバータ30は、補助エネルギー源25の放電にも用いられ得る。補助エネルギー源の放電は、補助エネルギー源25からのエネルギーがインバータ30を介して、採掘車両における更なる利用のために、或いは給電網へも供給されることを意味する。
【0024】
補助エネルギー源25は、インバータ30を介して駆動モータ5に接続される。従って、補助エネルギー源25からのエネルギーは、例えば、採掘車両1の移動走行に用いられ得る。
【0025】
フルパワーでの掘削中に、例えば補助エネルギー源25から採掘作業装置2へのエネルギー供給も可能であり、これによりブーストモードが達成される。ブーストモードで、エネルギーは、給電網20から及びエネルギー源25から採掘作業装置に供給される。従って、ブーストモード中、給電網20に対する電気モータ26の負荷が低減し得ると同時に、エネルギー源25から採掘作業装置へエネルギーが供給される。
【0026】
採掘作業装置2へエネルギー源25のみからエネルギー供給することも可能である。従って、例えば、給電網20がエネルギーを供給できない場合でも、いわゆる低出力掘削が達成され得る。
【0027】
インバータ30はバスバー31に接続されている。電気モータ26もまたバスバー31に接続されている。水ポンプ及びコンプレッサなどの他の電気モータがバスバー31に接続されていてもよい。
【0028】
インバータ30と補助エネルギー源25との間にDCバスバー32が設けられ得る。キャビンヒータなどの他の部品がDCバスバー32に接続されていてもよい。
【0029】
採掘車両は、補償装置33も備え得る。補償装置33はバスバー31に接続されている。補償装置33は固定的な補償コンデンサ又は制御可能な補償装置であり得る。
【0030】
車両は、力率計34も備え得る。力率計34もまたバスバー31に接続され得る。
【0031】
車両は制御ユニット35を備える。測定結果は制御ユニット35に案内され、制御ユニット35は車両の諸装置を制御する。
【0032】
AC電気モータ26は、無効電流である磁化電流を要するかご型誘導モータである。この無効電流がモータにおいて補償されない場合、無効電流はモータと給電網との間で動揺し、従って給電ケーブル21に負荷をかける。給電ケーブル21を介して供給される無効電流は、供給電圧を低減させる。低い供給電圧により、電気モータのオーバーヒート、始動時の問題、及び短絡保護の観点から危険な状態が発生する。無効電流の補償により供給電圧が上昇することによって電気モータの電流が低下し、モータの温度上昇が最小限に抑えられる。
【0033】
力率計34は、無効電流の相殺にどのくらいの補償が必要であるかを測定する。制御ユニット35は、無効電流を供給するために補償装置33を制御し得る。
【0034】
インバータ30は、補助エネルギー源25の充電又は放電に加えて、無効電流の供給が可能であるように構成されている。補償装置33が十分な無効電流を供給できない場合、制御ユニット35は、無効電流を供給するためにインバータ30を制御し得る。インバータ30による無効電流の供給は、補助エネルギー源25のエネルギーを実質的に消費しない。消費される唯一のエネルギーは、インバータの損失によって生じる。従って、例えばインバータ30が補助エネルギー源25の充電又は放電に利用されていない間又はいかなるときでも、可能な限り多くの無効電流及び/又は必要な無効電流をインバータ30によって供給することは、有利である。当然ながら、無効電流の必要性が無効電流の最大値未満である場合、インバータは必要な量のみを供給する。一方、無効電流に対する需要が無効電流の最大値以上である場合、インバータは最大限の無効電流を供給する。
【0035】
しかしながら、インバータ30の電流の最大値が決定される。インバータ30の電流は、インバータによって供給される無効電流、及び、補助エネルギー源25を充電又は放電するための実効充電電流を含み得る。従って、インバータの電流は、インバータによって供給される無効電流、及び、補助エネルギー源を充電又は放電する実効充電電流のうちの一又は複数を含む。大きすぎない寸法とされたインバータ30の場合、インバータ30の電流の最大値は、インバータ30が供給できる、補助エネルギー源を充電もしくは放電するための実効充電電流の最大値と無効電流の最大値との和よりも、小さい。給電ケーブル21の電流の最大値も決定される。給電ケーブルの電流は、電気モータ26の実効電流、電気モータ26の無効電流、及び、補助エネルギー源の充電に用いられるインバータ30の実効充電電流を含み得る。従って、給電ケーブルの電流は、電気モータの実効電流、電気モータの無効電流、及び、補助エネルギー源の充電に用いられるインバータの実効充電電流のうちの一又は複数を含み得る。
【0036】
インバータ30は、無効電流の供給、及び、補助エネルギー源25の充電もしくは放電に使用されるが、給電ケーブル21の電流の最大値が超過されないように構成される。従って、例えばフルパワー掘削中に、インバータ30が補助エネルギー源25の充電に用いられない。しかしながら、インバータ30は、最大限の及び/又は必要とされる無効電流の供給に用いられる。更に、インバータ30は、インバータ30の電流の最大値が超過されないよう制御される。従って、充電に先立ち、必要とされる充電電流がインバータの電流の最大値のオーバーシュートを引き起こすかどうかが決定され、引き起こすであろう場合、充電は実施されない。しかしながら、さほど多くの無効電流をインバータ30が供給しないよう無効電流補償を低減することが可能である場合、無効電流補償が低減される。これにより、インバータ30の電流の最大値のオーバーシュートを発生させずに充電が実施される。例えばフルパワー掘削が同時に実施されない場合、無効電流補償が低減され得る。そのような状況下で、当然ながら、給電ケーブル21の電流の最大値が超過されない場合、給電網20は給電ケーブル21を介して無効電流を供給する。
【0037】
鉱山の掘削計画は、充電のスケジューリングにも用いられ得る。従って充電は、例えばフルパワー掘削の複数のシーケンスの間にスケジューリングされる。
【0038】
例えば温度計36によって、電気モータ26の温度も測定される。掘削シーケンスの開始時、電気モータ26は低温である。電気モータ26が低温であるとき、無効電流補償に対する必要性は低い。従って、電気モータの温度に基づいて、無効電流補償の低減の可能性が決定され得る。従って、インバータ30が、インバータ30の電流の最大値のオーバーシュートを引き起こし得る無効電流の供給を行う必要がないので、インバータ30は充電に用いられ得る。
【0039】
インバータ30に代わり、パワーエレクトロニクス装置が例えばモータ駆動機構又は充電装置を用いてもよい。
【0040】
別個の駆動モータ5は必ずしも必要ないが、電気モータ26は必要とされる駆動動力を生み出し得る。その場合、動力伝達手段6は電気モータ26のシャフト28に接続される。
【0041】
採掘車両1は一又は複数の電気モータ26を備え得る。採掘車両1は一又は複数の油圧ポンプ27も備え得る。電気モータ26が一又は複数の油圧ポンプ27を回転させ得るか、或いは各油圧モータ27が自身の電気モータを備えてもよい。
【0042】
本明細書で鉱山とは、地下鉱山及び露天掘鉱山をさすことに留意されたい。更に、本方法及び本採掘車両は、例えば種々の岩盤施設(rock facilities)を掘削する際に請負作業現場において用いられ得る。従って、請負作業現場もまた一種の鉱山とすることができる。請負作業現場においては、外付けの電気回路網が、例えば可動式の台車上の集合体(aggregate)のように改変可能であってもよい。
【0043】
幾つかの場合、その他の特徴にかかわらず、本明細書に記載の特徴がそのように用いられ得る。一方、本明細書に記載の特徴が必要に応じて組み合わされ、様々な変更形態が提供され得る。
【0044】
図面及びこれに関連する記載は、本発明の概念を示すことのみを意図している。本発明は、特許請求の範囲内で、詳細部分において変化し得る。
【0045】
技術の進歩につれて、本発明の概念が様々な方式で実施可能となることが当業者には明らかである。本発明及びこれらの実施形態は、上述の実施例に限定されず、特許請求の範囲内で変化し得る。