特許第6127128号(P6127128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127128
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】pn構造ゲートを備える復調ピクセル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20170424BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20170424BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20170424BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H01L31/10 A
   H01L27/14 A
   H01L29/58 G
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-500994(P2015-500994)
(86)(22)【出願日】2013年3月20日
(65)【公表番号】特表2015-512562(P2015-512562A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】IB2013000422
(87)【国際公開番号】WO2013140227
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年1月25日
(31)【優先権主張番号】61/613,363
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516203368
【氏名又は名称】ヘプタゴン・マイクロ・オプティクス・ピーティーイー・エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】HEPTAGON MICRO OPTICS PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】ブエットゲン・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】リーマン・ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ファエッロ・ブルーノ
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0179232(US,A1)
【文献】 特開2008−078489(JP,A)
【文献】 特表2009−515147(JP,A)
【文献】 特開2005−235893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14−148
H01L 21/28−288
H01L 29/423
H01L 29/49
H04N 5/335−378
H01L 31/02−024
H01L 31/0248−0392
H01L 31/08−119
H01L 31/18−20
G01S 7/48−489
G01S 17/10
G01S 17/88−89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
復調ピクセルであって、
光電荷が生成される基板と、
前記基板上のゲート層であって、一連のpn接合を構成するP型ドープ領域およびn型ドープ領域を交互に複数備えたゲート層と、
を備え、
前記ゲート層の前記P型ドープ領域および前記n型ドープ領域が、フォトゲートと、当該フォトゲートの両側においてそれぞれ二重pn構成を有する各トグルゲートと、当該トグルゲートそれぞれに隣接する各積算ゲートと、当該積算ゲートそれぞれに隣接する各カップリングゲートとを形成する、復調ピクセル。
【請求項2】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、前記基板に堆積された層に形成されている、復調ピクセル。
【請求項3】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、前記基板がシリコンで、前記ゲート層がポリシリコンである、復調ピクセル。
【請求項4】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記ゲート層近傍のセンスノード、
を備える、復調ピクセル。
【請求項5】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、ドリフト・感光部を形成している、復調ピクセル。
【請求項6】
請求項5に記載の復調ピクセルにおいて、前記ドリフト・感光部が、光電荷を復調部に提供する、復調ピクセル。
【請求項7】
請求項6に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、前記復調部のためのトグルゲートおよび積算ゲートを形成するようにドープされている、復調ピクセル。
【請求項8】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記pn接合のp型領域とn型領域との間に位置する真性部分、
を備える、復調ピクセル。
【請求項9】
請求項1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記ゲート層に、p+/n+およびp−/n−の、マルチステップまたはグレイマスクのドーピング、
を備える、復調ピクセル。
【請求項10】
復調ピクセルを製造する方法であって、
光電荷が生成される基板上にゲート層を堆積する工程と、
前記ゲート層を、一連のpn接合を構成するP型ドープ領域およびn型ドープ領域を交互に複数備えるようにドープする工程と、
を含み、
前記ゲート層の前記P型ドープ領域および前記n型ドープ領域が、フォトゲートと、当該フォトゲートの両側においてそれぞれ二重pn構成を有する各トグルゲートと、当該トグルゲートそれぞれに隣接する各積算ゲートと、当該積算ゲートそれぞれに隣接する各カップリングゲートとを形成する、復調ピクセル製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の復調ピクセルの製造において、前記基板がシリコンで、前記ゲート層がポリシリコンである、復調ピクセル製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の復調ピクセル製造方法において、さらに、
前記ゲート層近傍のセンスノードを形成する工程、
を含む、復調ピクセル製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の復調ピクセル製造方法において、前記ゲート層が、ドリフト・感光部を形成する、復調ピクセル製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の復調ピクセル製造方法において、前記ドリフト・感光部が、光電荷を復調部に提供する、復調ピクセル製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の復調ピクセル製造方法において、さらに、
前記pn接合のp型領域とn型領域との間の真性部分を形成する工程、
を含む、復調ピクセル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2012年3月20日付出願の米国仮特許出願第61/613,363号について米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。この米国仮特許出願の全内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電荷ドメインの光検出には、従来から2種類のデバイスが使用されてきた。1つは埋込フォトダイオード(PPD)(例えば、非特許文献1等を参照されたい)であって、現在ほとんどの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プロセス技術で作製可能である。もう1つはMOSゲート構造を利用したタイプであって、CMOS技術でも、最適化された電荷結合素子(CCD)技術でも製造可能である。
【0003】
一般的な埋込フォトダイオードは、基板に2種類の埋込部を有する。これらの埋込部のドーピング濃度は、基板表面の極めて浅い非空乏化層と、その下方に位置する完全に空乏化された部分とを形成するように選択されている。図1を参照して、基板12がp型ドープされている場合を考える。この場合の埋め込み過程は、深いn−型埋込部14と、浅いp+型埋込部16との2回からなる。p+型埋込部16は、n−型層14よりも横方向に長く延びており、基板12に対する電気接続部を形成することができる。この構造体の一辺には、PPD領域14からセンスノード拡散部20への電荷の転送を可能にするポリシリコンゲート18が配置されている。通常、このいわゆる転送ゲート周辺の領域および当該転送ゲートは、電荷輸送プロセスに関して最適化されている。埋込領域14が、光子が電荷に変換される感光部分24を形成する。転送ゲート18が低電位に設定されている限り、光生成電荷はPPD領域14内に蓄積される。
【0004】
次に図2を参照して、MOSゲート構造の場合を考える。通常、MOSゲート構造には、少なくとも所望の波長、あるいは、少なくとも500ナノメートル(nm)を超える波長領域を一般的に透過させる、光透過性のポリシリコンゲート22が採用される。光子により、基板12のうちのゲート22下の部分24において電荷が生成される。隣接する転送ゲート18が別の蓄積ゲート領域、あるいは、図示のようなセンスノード20に対してチャネルを開放しない限り、生成された電荷がその部分24に蓄積される。CMOSプロセスを使用した場合、典型的にセンスノード20はピクセル毎に別々に組み込まれる。反対に、CCD技術を使用した場合、センスノードは1つだけで、それ以外に複数の蓄積部とシフトレジスタとが形成される。しかし、いずれの場合にも、感光要素の原理は同じである。
【0005】
どちらのタイプであっても、電荷ドメインの光検出デバイスには、電荷の取扱い面に関して共通する短所がある。所与の光検出要素から別の蓄積部又はセンス領域に電荷を転送したいとき、そのような輸送プロセスの効率は、当該プロセスを支援する電場に大きく依存する。しかし、極端な場合、特にピクセルサイズが大きい場合(例えば、1マイクロメートルを超える場合)には、光検出領域の横方向の電場が、センスノードへの電荷の輸送を効率良く支援できなくなる。この状況を、転送ゲートを高電位レベルに設定した図3で例示する。感光領域24内の電位分布が一様であると、センスノード20への各電荷の輸送は、熱運動プロセスにより行われることになる。熱運動プロセスは、電場による電荷の移動よりも数桁遅い。
【0006】
Seitzによる特許文献1に、電荷輸送を加速させる解決手段が開示されている。単一の高抵抗性ゲートに電流を流すことにより、横方向のドリフト電場を形成する。このアプローチの実用性は既に証明されている。しかし、ダイナミック動作モードで動作させると、恒久的な抵抗性損失に加えて容量性損失も生じるので、大型ピクセルのアレイともなると、消費電力量が膨大になる。
【0007】
Buettgenによる特許文献2には、電荷輸送を加速させる別の解決手段が開示されている。なお、この米国特許の全内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【0008】
この解決手段では、図4に示すように、感光部分全体にわたる単一のゲートの代わりに、複数の隣り合うゲート22−1〜22−nを用いて、感光部分24の上に、小型で狭幅な複数のゲートからなるゲート列(gate train)を形成する。ゲート22−1からゲート22−nにかけて、印加する電圧を漸増させることにより、図5に示すような電位分布が生成される。この方法の効率は既に実証されている。特許文献2の方法と異なり、恒久的な電力消費を防ぐことができる。
【0009】
半導体材料12内の電位分布は、図5に示すようになるのが理想的である。具体的には、2つのゲート間の電位が漸増するのが理想的である。しかし、これは、隣り合うゲート22間の電位ステップおよび2つのゲート22−x〜22−(x+1)間の間隔に依存する。ゲート同士が近ければ近いほど、2つのゲート間のポテンシャル隆起(potential bump)は生じ難くなる。CCDプロセスにおいてゲート構造体同士を重ね合わせてゲート−ゲート間距離を典型的にナノメートル範囲とする理由は、そのためである。
【0010】
PPD型ピクセルについても、電荷輸送を加速させるアプローチが幾つか研究されている。1つは、空間に対して埋込部の電圧が変調されるようにn−型埋込層の形状を工夫するアプローチである。これは、非特許文献2に記載されている。その他にも、n−型埋込部にドーピング勾配を適用することにより、空間に対する埋込部の電圧を変調させるアプローチがある。このアプローチは、例えば非特許文献3等に記載されている。
【0011】
しかし、いずれのPPDベースの方法にも、互いに共通する短所がある。埋込部の電圧はドーピング濃度で予め決まっており、外部から制御することができないので、前述したゲートベースのアプローチに比べると、ドリフト電圧の制御に関して全く融通が利かない。この短所は、数多くの用途に対してPPD型ピクセルの魅力を失わせる。速度向上の観点からみても、空間に対して埋込部の電圧を変調させるということは、感度を変調させるということを意味する。また、ポテンシャル隆起を抑えながら、理想的な電位分布関数を段差状に近似することが重要になるが、工場で、標準的なイメージングプロセスには通常はない、特殊なグレイマスクや複数の埋込過程を適用する必要がある。
【0012】
同じくゲートベースのアプローチの場合にも、加工技術に特殊な要件が課せられる。具体的には、電力消費を出来るだけ抑えるためにゲートの抵抗を極めて高く設定する必要や、隣り合うゲート間のポテンシャル隆起を防ぐためにゲート間の隙間を狭くしたり、さらには、ゲート同士を重ね合わせたりする必要がある。また、複数のゲートを用いると、電位の勾配が離散化して常にステップ関数のようになってしまい、理想的な一定の勾配を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8299504号明細書
【特許文献2】米国特許第8115158号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Nobukazu Teranishi et al, "No image lag photodiode structure in the interline CCD image sensor", IEEE, 1982
【非特許文献2】Cedric Tubert et al, "High Speed Dual Port Pinned-photodiode for Time-of-Flight Imaging", IISW, 2009
【非特許文献3】A. Spickermann et al, "CMOS 3D image sensor based on pulse modulated time-of-flight principle and intrinsic lateral drift-field photodiode pixels", ESSCIRC, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明にかかる構造体は、前述したPPDベースのアプローチやゲートベースのアプローチの短所を解消しながら、ドリフト電場を生成することができる。例えば、場合に応じて、狭幅のゲートや、ゲート同士の重ね合いや、複数の埋め込み過程や、グレイマスクなどといった、プロセスに対する特殊な要件を回避しながら、所与の蓄積領域と別の蓄積領域との間のポテンシャル隆起を防ぎつつ、理想的な一定の電場分布への段差状の近似を良好に実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、復調ピクセルまたは飛行時間型ピクセルでのドリフト電場の生成に関する。CCDのようにゲート同士を重なり合わせたり、複数の狭幅なゲートを設けたりする場合(いずれの場合も、典型的なプロセスに変更を加える必要がある)のように、複数の別体のゲートを使用するのではなく、単一の大きなゲート(例えば、ポリシリコンゲートなど)をドープすることで、複数の疑似的に互いに分離された別個の部分を生成する。各ドーピング領域は、pn接合を介して互いに分離される。したがって、この手法をpn構造ゲートと称する。
【0017】
以下では、材料にポリシリコン系を使用したpn構造ゲートを説明しているが、それ以外の半導体材料の使用を排除するものではなく、そのような材料を使用することも可能である。
【0018】
概して述べると、本発明の一構成は、光電荷が生成される基板と、前記基板よりも上に位置する(前記基板に重なって位置する、つまり前記基板を覆うように位置する)ゲート層であって、少なくとも1つのpn接合を有するゲート層とを備える復調ピクセルに関する。
【0019】
実施形態において、前記ゲート層は、前記基板に設けられた分離層又は絶縁層の上に堆積した、ポリシリコン層のような1つの層に形成され得る。通常、前記ゲート層に隣り合うセンスノードが設けられ得る。この場合、トグルゲートおよび積算ゲートを用いることにより、光電荷を移動させることができる。これらトグルゲートおよび積算ゲートのドーピングタイプは、互いに反対である。
【0020】
一実施形態において、前記ゲート層は、ドリフト及び感光部を形成し得る。前記ドリフト及び感光部は、光電荷を復調部に供給する。
【0021】
概して述べると、本発明の他の構成は、光電荷が生成される基板に対してゲート層を堆積する工程と、前記ゲート層を、1つまたは複数のpn接合を有するようにドープする工程とを含む、復調ピクセルの製造方法に関する。
【0022】
新規な各構成の詳細および構成要素の組合せも含め、本発明の上述の特徴およびその他の特徴、ならびにその他の利点を、添付の図面を参照しながら具体的に説明し、特許請求の範囲で指摘する。本発明を具体化した後述の装置および方法は一例にすぎず、本発明を限定するものではない。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で様々な実施形態に用いることができる。
【0023】
添付の図面における同一の符号は、異なる図をとおして同一の構成要素または構成を指す。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の原理を表すことに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】センスノード埋込部を有する従来の埋込フォトダイオード(PPD)を示す概略断面図である。
図2】センスノード埋込部を有する従来のMOSゲート型ピクセルを示す概略断面図である。
図3】感光領域からセンスノードに電荷を転送するために転送ゲートを高電位レベルに設定した場合のPPDの電位分布およびMOSゲート構造を示す図である。
図4】センスノードに向かって電位が増加する電位分布を生成するためのゲート列ベースのアプローチを示す概略断面図である。
図5】ゲート列によって生成される、電荷の輸送を加速させるための電位が増加する電位分布を示す図である。
図6】pn構造ゲートを示す概略断面図である。
図7】反対方向に向いたダイオード同士の直列接続によるゲートのモデル化表現と、適切なダイオードバイアス印加によって所与の電位分布を生成した一例とを示す図である。
図8A】pn接合を逆バイアスした場合の電位分布を示す図である。
図8B】pn接合を順バイアスした場合の電位分布を示す図である。
図9】ドリフト電場の一様でない電位分布を示す図である。
図10】1つのn型PGMおよび複数のp型トグルゲートを具備する復調領域の概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図11】積算ゲートの電位を低下させることによってアウトゲートを超えてセンスノードに電荷を流すシフト動作時の復調領域の概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図12】PGMとTGとの間の電位ステップをより高くすることができる二重トグルゲートを具備する復調領域の概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図13】pn構造ゲートを備えるサイロ形ドリフト電場型ピクセルの概略平面図である。
図14】JFETのように機能する不完全にドープされた(semi-doped)ポリゲートを示す概略断面図である。
図15】不完全にドープされたゲートを具備するドリフト電場領域の概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図16】各種ゲート部分をp型領域によって互いに切り離すように不完全にドープされたゲートを具備する復調領域の概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図17】不完全にドープされたpn構造ゲートに基づいたサイロ形ドリフト電場型ピクセルの概略平面図である。
図18】2つの真性領域を有するpn構造ゲートの概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図19】1つの広い真性領域を有するpn構造ゲートの概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図20】作り付け電場(built-in field)を生成するようにドーピング濃度を段階的に変化させたpn構造ゲートの概略断面と、その電位分布とを示す図である。
図21】n+/n−/p−/p+のドーピングが施されたpn構造ゲートの概略断面と、その電位分布とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図6に、本発明の一具体例である任意の構成を示す。同図から、本発明の基本的思想が分かる。この具体例では、p型基板12を使用する。しかしながら、他の例ではn型基板も使用可能である。基板12に対してゲート22が堆積された後、当該基板12上にパターンが形成される。ゲート22は、絶縁層112によって基板12から電気的に分離(絶縁)されている。
【0026】
単一のゲート22が、n型ドープ領域及びp型ドープ領域110−1〜110−nを有するように構成され、当該部分110−1〜110−n間の距離はゼロから数マイクロメートルに設定され得る。n型ゲート領域および/p型ゲート領域110−1〜110−nに適切な電圧を印加することにより、電圧分布をCCDのように制御し、半導体のバルク材料12内の電荷をCCDのように輸送することができる。n型ドープ領域とp型ドープ領域間の全ての部分または一部の部分は、低n型ドープまたは低p型ドープされているか、あるいは、一部の例では真性部分とされる(図6において、そのような部分または境界の一部に符号115を付している)。
【0027】
この例では、n型ドープされたセンスノード20を使用する。センスノード20は、光生成電荷を受けるためだけでなく、リセットフェーズ時に感光領域24を空乏化するためにも利用される。
【0028】
他の実施形態では、さらに、埋込チャネルが設けられてもよい。これは、感光領域24のうちのゲート22の直下に、さらなるn型埋込部を設けることで実現される。
【0029】
pn構造ゲート22は、図7に示すように複数のダイオードを直列接続したものとしてモデル化することができる。図7には、さらに、任意の電圧分布116が示されている。このような電圧分布116は、ゲート22のダイオードを適切な電圧に設定することで生成される。いずれにせよ、電流経路内の少なくとも1つのpn接合を逆バイアス動作モードにするので、ゲート22内に電流は流れない。
【0030】
pnダイオード構造のポリシリコン層は知られている。ポリシリコン材料の粒径に応じてダイオード特性を測定し、光学的特性を利用した研究がある。例えば、2002年にwww.sciencedirect.com で閲覧可能であったSooraj V. Karnikによる“Lateral polysilicon p+-p-n+ and p+-n-n+ diodes”, Solid-state electronicsや、Ming-Dou Kerらによる“Design of Negative Charge Pump Circuit with Polysilicon Diodes in a 0.25-μm CMOS Process”や、S. Radovanovicらによる“High-speed lateral polysilicon photodiode in standard CMOS technology”などを参照されたい。しかし、既存のどの刊行物にも、ポリシリコンゲートにおいて複数のpnダイオードを互いに反対方向に配置することにより、当該ポリシリコンゲートの二次元pn構造を半導体材料内の電荷流の制御に特化させる技術は提案されていない。
【0031】
ゲート22を完全にドープした場合、当該ゲート22は図8Aのような構成になる。n型領域110−nおよびp型領域110−pの双方が外部から接触された場合、n型部分の電圧を、隣り合うp型部分の電圧に対して−0.3V未満としてはいけない(つまり、p型部分の電圧から0.3V減じた電圧よりも小さくなければならない)。−0.3V未満になると、大電流が流れ始める。これは順バイアスダイオードに相当する。
【0032】
逆バイアスモードのときには、n型領域とp型領域との電圧差が大きくなってもよい。このとき、n型領域の方が高電圧に設定される。その電圧が降伏電圧を下回らない限り、予想される電流は、漏れ電流だけである。この固有の電圧レベルは、ポリシリコン材料の粒径、ドーピング濃度、n型領域とp型領域との間の距離などといったダイオード特性に大きく依存する。
【0033】
図8Aに、逆バイアスされることでpn接合が大きな空乏化幅110−dを有する場合の電位分布を示す。図8Bに、空乏化幅が減少した順バイアス状態のダイオードを示す。
【0034】
CMOSプロセスにおけるn+/p+のドレイン/ソースのドーピングを採用すると、ツェナーダイオード特性により、逆バイアスで大電流が発生する場合がある。ダイオード設計時にはこの点を考慮して、n型領域とp型領域との間に所与の空間を挿入するようにしてもよい。この場合、n型ドープ領域とp型ドープ領域との間の層はドープされておらず、場合によっては真性シリコン材料なので、事実上、PINダイオードに相当する。一部の例として、さらに複数のドーピング過程を行ってもよい。
【0035】
図9に、pn構造ゲートによってドリフト電場を形成する際のコンセプトを示す。図9には、複数の同一寸法のn型ドープ領域(110−1,110−3,…)およびp型ドープ領域(110−2,110−4,…)を含むドリフトゲートが示されている。ダイオードが確実にVn>Vpとなるようにすることで、大電流の発生を回避できる。これは、各領域に接点を設けて、前述した条件に従って適切な電圧を印加することにより実現できる。変形例として、ゲート領域1つおきに接点を設けて、印加する電圧を漸増させることによっても実現可能である。
【0036】
図10に、本発明の一実施形態における、飛行時間型ピクセルの復調領域を示す。一般的に、このような復調領域は、高周波数(通常、メガヘルツ領域ないしギガヘルツ)で駆動される複数のゲートを具備する。これらのゲートは、トグルゲートTGと称される。典型的には、少なくとも2つのトグルゲートTGが設けられる。図示の例において、トグルゲートTGは、p型ドープされたポリシリコンで構成される。好ましくは、前記復調領域は、さらに、n型ドープされた中央のフォトゲートPGM、n型ドープされた積算ゲートINTG、およびp型ドープされたアウトゲートOUTGを具備する。積算ゲートINTGが蓄積要素として機能する一方、アウトゲートOUTGはその積算領域をセンスノードから切り離すのに利用される。
【0037】
この例示的な実施形態では、2つのトグルゲートTGが中央のフォトゲートPGMの片側に1つずつ設けられ、さらに、積算ゲートINTGおよびアウトゲートOUTGが設けられる。したがって、復調過程では2つの出力サンプルを提供する。
【0038】
図10には、ゲートのn型領域とp型領域との間に隙間を描いていないものの、本発明ではそのような隙間を設けてもよい。電荷流の復調は、サンプリング関数に従ってTGゲートを切り替えることにより、同図の電位分布プロットに示すように中央の3つのゲートPGM,TGの領域で行われる。電荷は2つの積算ゲートのうちの一方に流れ込んでそこに蓄積される。
【0039】
積算ゲートINTGは、積算時に最も高い電位(例えば、5V)に設定されるゲートである。図10において積算ゲートINTGがn型ポリシリコンとされている理由はこのためである。アウトゲートOUTGは、積算ゲートとセンスノードとの間に隔壁を構築するために、比較的低い電位(例えば、1V)に設定される。そのため、アウトゲートOUTGにはp型ポリシリコンが使用される。図10には、さらに、このような構成に基づいた積算・復調フェース時の電位分布も示されている。
【0040】
いわゆるシフトフェース時には、積算された電荷を読み出すために、これらの電荷がセンスノードに転送される。図11に、シフトモード時に設定される電位を示す。
【0041】
図12に、一部の用途では、より良好な復調性能を実現することができるゲート構造の代替例を示す。トグルゲートTG1,TG2は、二重pn構成とされる。復調領域を二重トグルゲートを具備したものとすることにより、PGMとTSとの間により大きな電位ステップを構築することが可能になる。
【0042】
特許文献2に開示されたドリフト電場型復調ピクセルは、図13に示すように、ドリフトおよび/または感光部24と、復調部120とを備える。三角形状のドリフトおよび/または感光部24を備えているため、このピクセルは、サイロ形ピクセルアーキテクチャと称されることがある。単一のpn構造ゲート110が、感光部24に形成されている。感光部24は、n型ドープされたポリシリコン124−1,124−3,124−5とp型ドープされたポリシリコン124−2,124−4,124−6の帯状体を交互に有する。このゲート110は、図6のように絶縁層によって基板から離間し且つ電気的に絶縁されている。
【0043】
ドリフト部24のこのような構造により、基板内で形成された光生成電荷キャリアが、中央のフォトゲートPGMおよび(左右の)2つのトグルゲートTGを具備する復調部120に送出される。そして、その光生成電荷キャリアは、左側の積算ゲートINTGおよび右側の積算ゲートINTGで交互に蓄積される。サンプルの生成が完了すると、左側の積算ゲートINTGまたは右側の積算ゲートINTGで積算された光生成電荷が、対応する左側のアウトゲートOUTGまたは右側のアウトゲートOUTGを介して、左側のセンスノード130−Lまたは右側のセンスノード130−Rに送出される。
【0044】
さらに、復調周期に先立って光生成電荷を排出するためのダンプノード136が設けられる。
【0045】
半導体チップ工場が提供する数多くの標準的なプロセスでは、ベースドーピング濃度を最初から付加するので、真性ポリシリコンの堆積を行えないプロセスもある。しかし、ソース/ドレイン拡散過程を利用することで、n型領域およびp型領域を形成してもよい。
【0046】
埋め込み過程での注入エネルギー量(energy dose)およびゲートの厚さ次第では、1つのドーピングタイプが、ゲートの深さ全体に行き渡らない場合がある。この場合、不完全にドープされた(semi-doped)ゲートが形成される。
【0047】
一例として、図14に、n型ベースドーピングを施したゲート150および少しp型ドープされた領域152を示す。ただし、これはあくまでも一例に過ぎず、本発明におけるベースドーピングはn型に限定されないものとし、反対のp型をベースドーピングとしてもよい。
【0048】
この例では、左側のn型部分150−Lの電位を例えば3Vに設定し、右側のn型部分150−Rの電位を例えば2Vに設定することで、左側のn型部分150−Lを右側のn型部分150−Rよりも高電位に設定している。p型領域152は、さらに低い電位(例えば、1V)に設定される。機能原理は、JFETデバイスと似ている。具体的には、p型部分の電圧に依存して、その下に位置するチャネルがある程度の抵抗性を有する。結果として、図14に示すように、基板下面に線形的な電位分布が構成される。
【0049】
p型ポリシリコン152の電位は、基板内の電位に直接影響を及ぼすのではなく、当該p型ポリシリコン152と隣り合う2つのn型の島部分(island)間の抵抗を調節する。これにより、n型部分間に、極めて高オーミック性の接続部が形成される。このような高抵抗性ゲートを用いることにより、ドリフト電場を実現することができる。
【0050】
電位差が大き過ぎない場合にのみ、「チャネル」は抵抗性となる。反対に、電位差が大きすぎると、デバイスが飽和することで、電位分布の線形性が失われる可能性がある。
【0051】
他の例として、図15では、2段階のp型ドーピング152−L,152−Rを用いて3つの島部分150−L,150−C,150−Lを形成することで、ドリフト領域を作製している。
【0052】
図16に示すように、ピクセルの復調領域では、p型ドープ領域152により、各種ゲート部分が効率良く互いに切り離される。具体的には、p型ドープ領域152により、アウトゲートOUTGが積算ゲートINTGから切り離され、積算ゲートINTGがトグルゲートTGから切り離され、トグルゲートTGが中央のゲートPGMから切り離される。p型ドープ領域152には極めて低い電位が印加される。また、p型領域152は出来るだけ小さい(狭幅であること)のが望ましい。
【0053】
図17に、サイロ形ドリフト電場型ピクセルの一例として、既述の実施形態に基づいたドリフト電場と、不完全にドープされたpn構造ゲートに基づいた復調領域とを組み合わせたサイロ形ドリフト電場型ピクセルを示す。
【0054】
感光部24には、p型ドープ領域152を有する単一のpn構造ゲート110が形成されている。このゲート110は、図6のように絶縁層によって基板から離間し且つ電気的に絶縁されている。
【0055】
ドリフト部24のこのような構造により、基板内で形成された光生成電荷キャリアが、中央のフォトゲートPGMおよび(左右の)2つのトグルゲートTGを具備する復調部120に送出される。そして、その光生成電荷キャリアは、左側の積算ゲートINTGおよび右側の積算ゲートINTGで交互に蓄積される。サンプルの生成が完了すると、左側の積算ゲートINTGまたは右側の積算ゲートINTGで積算された光生成電荷が、対応する左側のアウトゲートOUTGまたは右側のアウトゲートOUTGを介して、左側のセンスノード130−Lまたは右側のセンスノード130−Rに送出される。
【0056】
以下では、本発明のさらなる例示的な実施形態について説明する。
【0057】
[P/真性/N構造により生成される理想的な一定のドリフト電場]
【0058】
完全にドープされたゲートに基づいて理想的な一定のドリフト電場を生成できる構成が、さらに存在する。n型ドープ領域とp型ドープ領域とを引き離して、その間に低ドープされたポリシリコンゲート領域または全くドープされていない真性ポリシリコンゲート領域を作製することにより、いわゆるPINダイオード構造を実現することができる。真性領域は完全に空乏化し得るので、これにより、広い長さ(範囲)にわたって理想的な一定のドリフト電場を形成することができる。真性領域の長さ(範囲)の上限は、電圧レベル、n型ドープ領域およびp型ドープ領域のドーピング濃度、ポリシリコン材料の粒径などに依存する。いずれにせよ、現実的な長さ(範囲)は数マイクロメートルである。
【0059】
図18に、2つの真性領域を有するpn構造ゲートの一例を示す。
【0060】
図19に、1つの広い真性領域を用いたpn構造ゲートの他の例を示す。
【0061】
上記の構成は、完全に空乏化させるのに真性領域が大き過ぎない場合にのみ成立する。
【0062】
複数の埋め込み過程が可能なプロセスであれば、HL接合を利用することにより、作り付けドリフト電場を実現することができる。図20に、その一例を示す。さらなる改良形態として、埋込領域同士を少し引き離してその間に真性領域を作製することにより、所与の埋込領域と次の埋込領域との間の電位低下を引き延ばすことも可能である。グレイマスクを使用すれば、複数の埋め込み過程を立て続けに行わずとも、所与の空間にわたってドーピング濃度を異ならせることができる。
【0063】
p+型ドープされたゲート領域とn+型ドープされたゲート領域との間に真性領域を作製して空乏化幅を引き延ばす構成の変形例として、二次的な弱いp−型領域の埋込部および二次的な弱いn−型領域の埋込部を使用することが考えられる。図21にこれを示す。
【0064】
本発明は、異なる実施形態同士の組合せを排除しない。例えば、ドリフト領域のゲート構造を、HL接合とPINダイオードの両方を含むものとしてもよい。
【0065】
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
復調ピクセルであって、
光電荷が生成される基板と、
前記基板上のゲート層であって、少なくとも1つのpn接合を有するゲート層と、
を備える、復調ピクセル。
〔態様2〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、前記基板に堆積された層に形成されている、復調ピクセル。
〔態様3〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記基板がシリコンで、前記ゲート層がポリシリコンである、復調ピクセル。
〔態様4〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記ゲート層近傍のセンスノード、
を備える、復調ピクセル。
〔態様5〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、トグルゲートおよび積算ゲートを形成するようにドープされている、復調ピクセル。
〔態様6〕
態様5に記載の復調ピクセルにおいて、隣接するゲート同士のドーピングタイプが、互いに反対である、復調ピクセル。
〔態様7〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、ドリフト・感光部を形成している、復調ピクセル。
〔態様8〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ドリフト・感光部が、光電荷を復調部に提供する、復調ピクセル。
〔態様9〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、前記ゲート層が、前記復調部のためのトグルゲートおよび積算ゲートを形成するようにドープされている、復調ピクセル。
〔態様10〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記pn接合のp型領域とn型領域との間に位置する真性部分、
を備える、復調ピクセル。
〔態様11〕
態様1に記載の復調ピクセルにおいて、さらに、
前記ゲート層に、p+/n+およびp−/n−の、マルチステップまたはグレイマスクのドーピング、
を備える、復調ピクセル。
〔態様12〕
復調ピクセルを製造する方法であって、
光電荷が生成される基板上にゲート層を堆積する工程と、
前記ゲート層を、少なくとも1つのpn接合を有するようにドープする工程と、
を含む、復調ピクセル製造方法。
〔態様13〕
態様12に記載の復調ピクセルの製造において、前記基板がシリコンで、前記ゲート層がポリシリコンである、復調ピクセル製造方法。
〔態様14〕
態様12に記載の復調ピクセル製造方法において、さらに、
前記ゲート層近傍のセンスノードを形成する工程、
を含む、復調ピクセル製造方法。
〔態様15〕
態様12に記載の復調ピクセル製造方法において、さらに、
前記ゲート層を、トグルゲートおよび積算ゲートを形成するようにドープする工程、
を含む、復調ピクセル製造方法。
〔態様16〕
態様15に記載の復調ピクセル製造方法において、隣接するゲート同士のドーピングタイプが、互いに反対である、復調ピクセル製造方法。
〔態様17〕
態様12に記載の復調ピクセル製造方法において、前記ゲート層が、ドリフト・感光部を形成する、復調ピクセル製造方法。
〔態様18〕
態様12に記載の復調ピクセル製造方法において、前記ドリフト・感光部が、光電荷を復調部に提供する、復調ピクセル製造方法。
〔態様19〕
態様12に記載の復調ピクセル製造方法において、さらに、
前記pn接合のp型領域とn型領域との間の真性部分を形成する工程、
を含む、復調ピクセル製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21