(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127140
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】三層の毛髪調整組成物及び消費者製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20170424BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20170424BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20170424BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20170424BHJP
A61K 8/03 20060101ALI20170424BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/97
A61K8/34
A61K8/03
A61Q5/00
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-524396(P2015-524396)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2015-523394(P2015-523394A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】US2013051706
(87)【国際公開番号】WO2014018543
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】61/675,377
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100188271
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 優子
(72)【発明者】
【氏名】レシネ,ジェニファー マリー
(72)【発明者】
【氏名】サルト,ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンズ,ジェフリー
【審査官】
團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−144210(JP,A)
【文献】
特開平05−194190(JP,A)
【文献】
特開2003−040733(JP,A)
【文献】
特開2001−081014(JP,A)
【文献】
特開2012−046482(JP,A)
【文献】
特開平10−130125(JP,A)
【文献】
特開2010−138108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
DB名 Thomson Innovation
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の重量に基づき、10〜40%の液状最上層、20〜60%の液状中間層、及び10〜40%の液状最下層を含む化粧品組成物であって:
最上層は、最上層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状基油を含み;
中間層は、1種以上の液状直鎖状シリコーンを含み;
最下層は、最下層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状ポリオールを含み;及び最上層と中間層は界面によって分離され、中間層と最下層は界面によって分離され;
但し、組成物に含まれる塩及び鉱油の量のそれぞれは、組成物の重量に基づき1%以下であることを条件とする、化粧品組成物。
【請求項2】
界面が、厚さ0.5mm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
界面が、厚さ0.25mm未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
界面活性剤を含まず、乳化剤を含まず、かつ、脂肪酸を含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
最上層が、最上層の重量に基づき少なくとも50%のホホバ油を含み、最下層が、最下層の重量に基づき少なくとも50%のジオール及び/又はトリオールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
ジオールが、ブチレングリコール、プロパンジオールを含み、トリオールが、グリセリンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
最下層が、ショ糖と、場合により塩化ナトリウムとをさらに含み、前記塩化ナトリウムの量は、組成物の重量に基づき1%以下である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
中間層が、100cps〜100,000cpsの粘度を有する1種以上の透明、無色、液状、直鎖状ジメチコーンを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
最上層が、パーム核油、エレイス・オレイフェラ(elaeis oleifera)果実油、ココナッツ油、スイカ種子油、キシメニア・アメリカナ(ximenia Americana)種子油、ククイ種子油、及びスクレロカリア・ビレア(sclerocarya birrea)種子油をさらに含み、かつ、鉱油を含まない、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
最下層における水の量が、全組成物の重量に基づき10%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
無水である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の0.001重量%〜20重量%の1種以上の日焼け防止剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
中間層の密度に対する最下層の密度における差の割合が、少なくとも3%であり、かつ、中間層の密度が、0.98g/cm3未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
以下:
3つの相が手動の振とうによって混合され、20秒以内に均一性を達成することができ;かつ、振とうを停止した後:
1〜10分間均一なままであり;及び
10分以内に3つの区別できる層を再形成すること
を特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
最下層が、組成物の重量に基づき、20〜40%の範囲で存在する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物の重量に基づき、10〜40%の液状最上層、20〜60%の液状中間層、及び10〜40%の液状最下層を含む、消費者のための化粧品組成物を製造する方法であって、以下のステップ:
最上層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状基油を含む最上層を調製するステップ;
1種以上の液状直鎖状シリコーンを含む中間層を調製するステップ;及び
最下層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状ポリオールを含む最下層を調製するステップ;
但し、組成物に含まれる塩及び鉱油の量のそれぞれは、組成物の重量に基づき1%以下であることを条件とし;
最上層、中間層及び最下層を一体に混合するステップ;
最上層と中間層の間、及び中間層と最下層の間に界面を生じさせるステップ
を含む、方法。
【請求項17】
界面を生じさせるステップの前に、混合された組成物を、販売可能な大きさの容器に充填するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
販売可能な大きさの容器が、透明である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
容器が、垂直方向に沿って一定の断面積を有する、無色のガラス瓶である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
容器が、底部と肩部を有し、底部と肩部の間において円筒形、長方形、又は正方形である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
容器を消費者に見えるようにする1つ以上の窓を有する外箱に、容器を包装するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
最下層が、組成物の重量に基づき、20〜40%の範囲で存在する、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2012年7月25日に出願された米国特許仮出願第61/675,377号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、3つの液体層を含むパーソナルケア組成物に関する。特に、このような組成物は、毛髪を処理するのに特に有用である。
【背景技術】
【0003】
二層又は多層の化粧品組成物は、魅力的な外観のため、長年にわたって人気になっている。このような組成物は、皮膚ケア及び毛髪ケアにおける適用のために開発されている。他分野における多層液体製品も公知である。一部の多層製品では、1つの液体層は、1つ以上の他の液体層と混合できない(incompatible)。「混合できない」とは、層が相互に不溶性であり、かつ、相互に非反応性であることを意味する。このため、より低密度の層は、より高密度の層の上に存在する傾向がある。層分離が定められた時間維持され得る場合、かつ、2つの層の間の界面が特定の厚さより厚くない場合、本出願人らは、このような製品を「安定である」と考える。分離された層は、組成物を振とうすることによって、使用前に互いに混合され得る。組成物に応じて、典型的な消費者製品は、層の均一な混合物を形成するために、数秒又は数分の振とうを要し得る。一部には、それは、層の粘度、並びに容器の大きさ及び形に依存する。振とう後、一時的に(すなわち消費者使用の間)混合状態を維持するために、いくつかの製品は界面活性剤を使用する。しかし、あまりに多くの界面活性剤が使用されると、層は、分離するのにあまりに長くかかる。
【発明の概要】
【0004】
他の多層製品は、使用しなければ混合し得る2つ以上の層の分離を維持することができる特定の物質を使用し得る。例えば、いくつかの既存の多層(2以上の層)の化粧品組成物は、安定な多層系を達成及び/又は維持するために、乳化剤及び/又は塩を使用する。しかし、乳化剤、界面活性剤、及び塩は、濃度が高すぎる場合、使用者にとって刺激性又は有害で有り得る。例えば、米国特許第7,988,981号は、多層化粧品組成物の必要な成分として、8〜18%の水溶性塩を教示する。これは、約1%以下の塩含有量、典型的にははるかにより低い塩含有量を有する本発明とは異なる。‘981は、このような低濃度の塩が、層分離を達成するのに不十分であろうことを暗示する(カラム2、57〜63行目を参照)。それにもかかわらず、本発明は、‘981の教示に反して、きれいな層分離を達成する。‘981特許はまた、鉱油を有する組成物に対して権利を主張する。しかし、一部の消費者は、化粧品中の鉱油に否定的な見方を示している。一方、本発明は、約1%以下の鉱油を含み得る。
【0005】
さらに、日常的使用の間、組成物を繰り返し混合することによって、一部の既存の多層系は、安定した分離状態に戻るのにだんだん長くかかるようになる可能性があり、製品は、時間とともに、魅力が低下する。これは本発明と異なる。
【0006】
天然油は、何世紀にもわたって、ヒトの毛髪を調整するために使用されているが、単独で使用すると、それは、使用者にとって望ましくなく魅力的でない粘性を与え得る。シリコーンは、やわらかで滑らかな感触を提供するために毛髪ケアにおいて使用されているが、不自然な光沢を残し得る。これらの問題を軽減するために、親水性成分が使用され得る。その場合、乳化剤は、油、シリコーン及び親水性材料を結び付けてエマルジョンにするために使用されていることが多い。しかし、エマルジョンは、うまく作られた多層組成物の魅力を有さない。したがって、相当量の界面活性剤及び乳化剤を含まず、天然油、シリコーン、及び親水性成分を含む安定な多層組成物に対するニーズがある。さらに、毛髪ケアに有益な成分、例えば特定の精油と様々な親水性成分の新規な組み合わせを多層組成物に組み込むことが望ましい。
【0007】
要約
本発明の組成物は、視覚的に、3つの別々の層である。1つの層は油相を含み、1つの層はポリオール相を含み、1つの層はシリコーン相を含む。組成物は、振とうによって均一に混合され、再び3つの区別できる層に分離する前に、消費者が製品を使用するのを可能にするのに十分な時間均一なままであることができる。本発明は、相当量の界面活性剤又は乳化剤を使用せず、1%以下の塩又は鉱油で、上述の問題に対処する。本発明は、様々な種類の化粧品、パーソナルケア又は医薬処方に示され得る。特に好適なのは、ケラチン繊維、特に毛髪の処理のための組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「含む」は、要素又は要素群が、明示的に記載されているものに限定されず、追加的な記載されていない要素を含み得ることを意味する。液体成分への言及は、成分が、通常の消費者使用の温度及び圧力で液体であることを意味する。
【0009】
詳細な説明
本発明の組成物は、3つの層、すなわち最上層、中間層及び最下層を含む。一般に、最上層は、3つの層のうち最も低密度であり、最下層は、最も高密度である。最上層と中間層は、界面によって分離され、中間層と最下層は、界面によって分離される。
【0010】
最上層
組成物の総重量に基づき、最上層は、10%〜40%、より好ましくは10%〜30%又は20%〜40%、さらにより好ましくは20%〜30%の範囲で存在する。本発明の好ましい実施形態において、組成物の最上層は、液状油相を含む。液状油相は、1種以上の基油を含む。1種以上の基油は、最上層の重量に基づき、最上層の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%を構成する。油は、植物又は合成供給源から選択することができ、好ましくは、毛髪に対していくらかの恩恵を提供する(すなわち、光沢、持続性、保湿、キューティクルの修復等)。有用な基油のいくつかの例としては、ホホバ油、スイートアーモンド油、メドウフォーム種子油、オリーブ油、ククイ油、ヒマシ油、アボカド油、マカダミア油、エレイス・オレイフェラ(elaeis oleifera)(パーム)核油、及び杏仁油が挙げられる。好ましくは、組成物は、鉱油を有さない。鉱油が使用される場合、鉱油は、全組成物の1重量%以下であるべきである。本発明の好ましい実施形態において、基油は、ホホバ油である。本発明者らは、有用な油のうち、液状油相の50%を超えるホホバ油が、きれいな、薄い界面をともなった優れた層分離を与え、かつ、非常に透明な最上層を生じることを見出した。
【0011】
液状油相はまた、基油に加えて、1種以上の液状油を含んでもよい。また、好ましい実施形態において、液状油相は、1つ以上の毛髪ケア恩恵を有する1種以上の精油を含む。有用な油のいくつかの例としては、以下が挙げられる:パーム核油、エレイス・オレイフェラ果実油、ココナッツ油、スイカ種子油、キシメニア・アメリカナ(ximenia Americana)種子油、ククイ種子油、スクレロカリア・ビレア(sclerocarya birrea)種子油、ババス油、ホホバ油、コンミフォラ・ワイティ(commiphora wightii)油及びクチナシ花抽出物。本発明の好ましい実施形態において、液状油相は、毛髪に有益な少なくとも1種の精油を含むが、鉱油を含まない。より好ましい実施形態において、最上層の液状油相は、パーム核油、エレイス・オレイフェラ果実油、ココナッツ油、スイカ種子油、キシメニア・アメリカナ種子油、ククイ種子油、及びスクレロカリア・ビレア種子油を含むが、鉱油を含まない。
【0012】
中間層
組成物の総重量に基づき、中間層は、20%〜60%、より好ましくは30%〜50%の範囲で存在する。本発明の好ましい実施形態において、組成物の中間層は、液状シリコーン相を含む。液状シリコーン相は、1種以上の液状シリコーンを含み得る。シリコーンの選択は、組成物の安定性及び美観にとって重要である。例えば、シリコーン相は、それが中間層であり続けるために、ポリオール相より低密度であるが、油相より高密度でなければならない。また、シリコーン相の粘度が低すぎる場合、組成物は、振とう後にあまりにもすぐに分離するであろう。粘度が高すぎる場合、組成物の層は、分離しないか、又は非常にゆっくりと分離し得る。有用な液状シリコーンは、直鎖状であり、かつ、10cps〜300,000cps、好ましくは100cps〜100,000cpsの範囲の粘度を有する。いくつかの好ましい実施形態において、中間層の粘度は全体として、約10,000cps未満であるべきである。一般に、相当量の分岐状シリコーンは、あまりにも高い粘度をもたらすため、避けるべきである。
【0013】
好ましくは、中間層における全ての液状シリコーンは透明である。液状シリコーンの1種以上はまた、無色であり得る。好ましくは、中間層における全ての液状シリコーンは無色である。透明、無色の中間層は、最終組成物にきれいで新鮮な外観を与え、不透明な(shaded)最上層及び最下層と最大のコントラストを提供する。
【0014】
好ましくは、液状シリコーンの少なくとも1種は、毛髪に有益である。1種以上の直鎖状ジメチコーン(ポリジメチルシロキサン;約0.965g/cm
3)は、最も好ましい。
【0015】
最下層
組成物の総重量に基づき、最下層は、10%〜40%、より好ましくは10%〜30%又は20%〜40%、さらにより好ましくは20%〜30%の範囲で存在する。組成物の最下層は、液状ポリオール相を含む。液状ポリオール相は、1種以上の液状ポリオールを含み得る。いくつかの好ましい本発明の組成物において、1種以上の液状ポリオールは、最下層の少なくとも50重量%を構成する。好ましい液状ポリオールとしては、ジオール及びトリオール、例えばグリコール及びグリセリンが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態において、ブチレングリコール、プロパンジオール及びグリセリンは、消費者が製品を使用するのに十分長く3つの層を混合した均一な状態に保持するが、その後、製品を静置すると、特定の時間内に層を分離させるのに有用であることが見出されている。
【0016】
最下層はまた、水、水溶性電解質、糖、又は電解質と糖の組み合わせを含有してもよい。水溶性電解質及び/又は糖の濃度は、相の完全性を維持するのに重要である。電解質又は糖の濃度が高すぎる場合、組成物は、毛髪に不快な残留物を残し得る。しかし、電解質又は糖の濃度が低すぎる場合、層は、互いの中へ「流れ出し(bleed)」、界面を容認し難いほど厚くし、製品の安定性及び魅力を低下させ得る。「高すぎる」又は「低すぎる」とは、試行錯誤によって決定され得る。
【0017】
層密度
上記のとおり、3つの層のそれぞれは、特定の相(油、シリコーン又はポリオール)を含む。本明細書で与えられる「含む」の定義によれば、各層は、関連する相の部分とみなされない要素を有してもよい。それにもかかわらず、各層内で、層の成分の全ては、容認できるほど薄く、きれいな界面によって、均一で識別可能な層を形成するように、一体にまとまっていなければならない。「まとまる」とは、1つの層から別の層へのいくらかの量の成分の望ましくない移動が存在しないべきであることを意味する。「容認できるほど薄い界面」とは、2つの層(最上層/中間層及び中間層/最下層)間の界面が、0.5mm未満、好ましくは0.25mm未満であることを意味する。
【0018】
液状ポリオール相は、組成物の最下層の大部分(50%超)を構成する。典型的には液状ポリオール相における使用が考えられる液状ジオール及びトリオールは、水の密度(1g/cm
3)より大きい密度を有する傾向がある。例えば、プロパンジオールは約1.036g/cm
3であり;ブチレングリコールは約1.0053g/cm
3であり;グリセリンは約1.251g/cm
3である。最下層の任意の他の成分は、最下層の全体的な密度を1g/cm
3未満、好ましくは約1.1g/cm
3未満に低下させるべきではない。例えば、糖、ショ糖は約1.587g/cm
3の密度を有し、電解質、塩化ナトリウムは約2.165g/cm
3の密度を有し、そのため、これらは最下層をより高密度にさせ、最下層と中間層のよりよい分離をもたらす傾向がある。しかし、組成物中の水の量は、組成物の完全性にとって重要である。水は、最下層における液状ポリオールより低密度であり、そのため、水を加えることは、最下層の密度を、他の2つの層の密度とより類似したものにさせる傾向がある。したがって、最下層にあまりに多くの水を加えることは、混合後に3つの層が分離する速度を低下させ、あまりに多くの水が使用される場合、層はまた、共に混ぜ合わさり始め、美的に魅力的でない界面を生じ得る。これを避けるため、最下層における水の量は、全組成物の重量に基づき10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは約2%未満であるべきである。好都合に、その量の水を使用して、最終組成物の性能を微調整することができる。無水組成物も本発明の範囲内である。いくらかの偶発的な量の水が化合物成分中に存在し得ることを考慮すると、「無水組成物」は、組成物の重量に基づき、0.001%以下の水を意味する。
【0019】
層界面
ここで、最下層と中間層の間の容認できるほど薄い界面(すなわち0.5mm未満)について、密度における差の割合は、中間層の密度が0.98g/cm
3未満であるべきであることを条件として、少なくとも3.0%、より好ましくは少なくとも5.0%である場合が好ましい。例えば、最下層が1.02g/cm
3の密度を有する場合、中間層の密度は、5%の差を想定すると、0.969g/cm
3以下であるべきであるが、最下層が約1.1g/cm
3の密度を有する場合、中間層の密度は、0.98g/cm
3以下であるべきである(5%の差について予想される1.045g/cm
3ではない)。液状ジメチコーンは、例えば、約0.965g/cm
3の密度を有する。
【0020】
実際、(液状ポリオール相を有する)最下層と(液状シリコーン相を有する)中間層の間の容認できる界面の達成は最初に行われる。その後、(液状油相を有する)最上層と中間層の間の容認できるほど薄い界面は、液状油相における基油の選択に大いに依存する。好適な基油は試行錯誤によって見出され得るが、本出願人らは、より有用な基油のいくつか、特にホホバ油を上に記載している。
【0021】
性能
本発明による三層組成物の恩恵の一つは、手動の振とうによって均一に混合され、3つの区別できる層が再形成し始める前に、消費者が製品を使用するのを可能にするのに十分な時間均一なままであり得ることである。均一な混合物は、手動の振とうによって20秒以内、好ましくは10秒以内、より好ましくは約5秒以内に達成される。振とう後、製品は、1分〜10分間、好ましくは1分〜5分間、より好ましくは約2分〜約5分間均一な(すなわち、肉眼で区別できる層が見られない)ままである。振とう後、3つの区別できる層は、10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは2分以内に肉眼で見ることができる。
【0022】
補助成分
組成物のいずれの層も、組成物又は使用者に恩恵を提供する追加的な成分を含んでよい。追加的な成分は、それらが分配(disburse)される層の安定性を乱すべきでなく、製品の三相構造の安定性を乱すべきではない。使用され得る成分としては、限定されないが、香料、保存料、色素、軟化剤、緩衝剤、毛髪ケア活性成分、皮膚ケア活性成分、増粘剤、懸濁化剤、及び様々な種類の化粧品若しくはパーソナルケア成分が挙げられる。
【0023】
本明細書に記載するように機能する、相当な大きさの三層を形成する必要性を考慮すると、本発明の組成物における全補助成分の総濃度は、組成物の約20重量%、好ましくは組成物の約15重量%以下、より好ましくは組成物の約10重量%以下に限定される。
【0024】
パーソナルケアの観点から特に興味深いのは日焼け防止剤である。1種以上の日焼け防止剤は、それらが分配される層に混合可能であるべきである。最上層に分散され得る好適な油溶性日焼け防止剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン-3、ビス-エチルヘキシロキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイル-メタン、ジエチルアミノヒドロキシ-ベンゾイルヘキシルベンゾエート、ドロメトリゾールトリシロキサン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクリレン、ホモサラート、ポリシリコーン-15、並びにそれらの誘導体及び混合物が挙げられる。最下層に分散され得る好適な水溶性日焼け防止剤の非限定的な例としては、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSA)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、(Mexoryl(商標)SX)、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンジリデンカンフルスルホン酸、ケイヒ酸アミドプロピルトリモニウムクロリド、メトキシシンナミド-プロピルエチルジモニウムクロリドエーテル(methoxycinnamido-propyl ethyldimonium chloride ether)、ビスエチルフェニルトリアミノトリアジンスチルベンジスルホン酸二ナトリウム(disodium bisethylphenyl triaminotriazine stilbenedisulfonate)、ジスチリルビフェニルジスルホン酸二ナトリウム(disodium distyrylbiphenyl disulfonate)、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(disodium phenyl dibenzimidazole tetrasulfonate)、メトキシシンナミド-プロピルヒドロキシスルタイン(methoxycinnamido-propyl hydroxysultaine)、メトキシシンナミド?プロピルラウジモニウムトシラート(methoxycinnamido-propyl laurdimonium tosylate)、PEG-25 PABA(p-アミノ安息香酸)、ポリクオタニウム(polyquarternium)-59、サリチル酸TEA、それらの誘導体及び混合物が挙げられる。特定の実施形態において、1種以上の日焼け防止剤は、組成物の約0.001重量%〜約20重量%、好ましくは組成物の約0.001〜約10重量%、より好ましくは組成物の約0.01〜約5重量%を構成し得る。正確な量は、選択した日焼け防止剤及び望ましい日焼け防止指数(SPF)に応じて変わる。
【0025】
加えて、処方は、毛髪ケア以外の目的に使用してもよく、したがって、組成物は、適切に有用な活性成分を同様に含み得る。
【0026】
さらに、本発明の組成物は、1%未満の鉱油、1%未満の塩、並びに相当量でない界面活性剤及び乳化剤を含む。組成物が、相を乳化し、それらが分離する又はあまりにもゆっくり分離するのを妨げ得る相当量の脂肪酸を含まないことも重要である。界面活性剤、乳化剤、又は脂肪酸の「相当」量は、全組成物に、上述の性能パラメーター、特に、振とう時間、均一状態のままである時間、区別できる層が再出現する時間、及び界面の厚みに関するパラメーターにおいて失敗を引き起こす量である。偶発的な界面活性剤、乳化剤又は脂肪酸のいくらかの量を許容することは、製品の失敗を引き起こさないかもしれず、当業者であれば、これらの種類の成分の許容可能なレベルを決定することができる。いくつかの最も好ましい組成物は、鉱油を含まず、塩を含まず、界面活性剤を含まず、乳化剤を含まず、かつ、脂肪酸を含まない。
【0027】
以下は、手動の振とうによって均一にすることができ、振とう後少なくとも1分間均一性を維持し、振とう後10分以内に3つの区別できる層を形成する、容認できるほど薄い界面及び透明、無色の中間層を有する、安定な三層組成物の非限定的な例である。
【0029】
各層は、別々に調製され、その後、一体に混合されるべきである。混合後、組成物の取り扱いは、界面を、最上層と中間層の間、及び中間層と最下層の間に生じさせるようなものであるべきである。好ましくは、3つの層を一体に混合した後、組成物は、界面が自然に形成し得るように静置される。消費者市場のため、最終組成物は、販売可能な大きさの容器(すなわち15mL〜1000mL)に充填され得る。これは、組成物が、依然として混合された均一な状態にある間に行われなければならず、その後、容器の適切な取扱いによって、界面を、最上層と中間層の間、及び中間層と最下層の間に生じさせる。あるいは、各層の特定の量を、別々に容器に注ぐことができる。その後、容器の適切な取扱いによって、界面を生じさせる。もちろん、この代替方法は、有利でない、3回の充填操作を要する。
【0030】
各層の色素又は他の着色剤の選択によって、消費者に特別な印象を与えるように、最終組成物の外観を操作することができる。例えば、例示した組成物では、赤色色素が最下層に添加された。中間層は透明かつ無色であり、最上層は油の混合によって自然に生じる明るい黄色を有する。驚くべき外観のため、消費者市場のための販売可能な容器は、透明な、好ましくは無色のガラス瓶であるべきである。こうして、美的に好ましく、洗練された外観は、消費者によって高く評価され得る。
【0031】
消費者使用
使用において、消費者は全三層を均一な混合に混ざり合わせるのに十分激しく組成物の密閉容器を振る。本発明の組成物において、層の粘度は、約20秒未満の手動の振とうにおいて均一な混合物が達成可能であるようなものである。組成物が混合された、均一な状態にある間、消費者は、容器を開け(すなわち、栓をはずし)、混合された組成物のいくらかを取り出す(すなわち、消費者は、組成物のいくらかを手に注ぐ、又は組成物に塗布器を浸す)。その後、消費者は、組成物を毛髪に塗布する。組成物は均一であるため、3つの層は、容器に存在したのと同じ体積比で分配される。使用後、容器は、通常の静止位置に戻される。10分以内に、3つの区別できる層が、容器に残る組成物において見えるようになる。
【0032】
意図される使用では、製品が均一状態にあるとき(すなわち、振とう後)、製品が容器から分配される。分配される製品における3つの層の体積の比は、元の容器中と同じであり、容器中の3つの層の体積の比は、製品の寿命にわたって変わらない。したがって、消費者は、常に同じ塗布を得る。
【0033】
包装の検討
本発明によって可能とされる視覚上の美的効果は、容器中の製品が使い尽くされるにつれて、変化し得る。これは、容器中に残る製品が減少するにつれて、各層の高さが変化するためである。一般に、それらは同様に変化しないかもしれず、それは、組成物が配置される容器の形に依存する。容器が、垂直方向に沿ってほぼ一定の断面積を有する場合、3つの層の高さの比は変化せず、製品は、容器の寿命の大部分にわたって、同様の外観を維持する。
【0034】
あるいは、容器が、垂直方向に沿って一定の断面積を有さない場合、3つの層の高さの比は変化する。この場合、容器中の製品は、容器の寿命にわたって、同様の外観を維持しない。対称性をほとんど有さない又は全く有さない容器では、外観における変化は予測不可能で有り得る。消費者製品の外観におけるこの変化は、望ましいかもしれないし、又は望ましくないかもしれない。
【0035】
特に好ましい効果は、製品の寿命にわたって、3つ全ての層に、同じ高さ比を維持させることである。これは、容器が、本体のかなりの部分にわたって、垂直方向に沿って一定の断面積(又はほぼ一定の断面積)を有する場合に、最も容易に達成される。例えば、容器は、底部と肩部の間において、ほぼ円筒形、長方形、又は正方形であり得る。
【0036】
さらに、組成物が透明な容器に充填される場合、かつ、各容器が小売業環境のために外箱にさらに包装される場合、好ましくは、外箱は、容器が見られることを可能にする。例えば、外箱は、1つ以上の窓を有していてもよい。一実施形態において、容器は長方形であり、外箱は長方形である。箱の2つの向かい合う面は、容器の前後を見えるようにする窓を有し、消費者が、透明な三層製品を通して見ることを可能にする。視覚上の効果は重要である。
(付記)
(付記1)
組成物の重量に基づき、10〜40%の液状最上層、20〜60%の液状中間層、及び10〜40%の液状最下層を含む化粧品組成物であって:
最上層は、最上層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状基油を含み;
中間層は、1種以上の液状直鎖状シリコーンを含み;
最下層は、最下層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状ポリオールを含み;及び最上層と中間層は界面によって分離され、中間層と最下層は界面によって分離され;
但し、組成物は、組成物の重量に基づき1%以下の塩及び1%以下の鉱油を含むことを条件とする、化粧品組成物。
(付記2)
界面が、厚さ0.5mm未満である、付記1に記載の組成物。
(付記3)
界面が、厚さ0.25mm未満である、付記2に記載の組成物。
(付記4)
界面活性剤を含まず、乳化剤を含まず、かつ、脂肪酸を含まない、付記2に記載の組成物。
(付記5)
最上層が、最上層の重量に基づき少なくとも50%のホホバ油を含み、最下層が、最下層の重量に基づき少なくとも50%のジオール及び/又はトリオールを含む、付記2に記載の組成物。
(付記6)
ジオールが、ブチレングリコール、プロパンジオールを含み、トリオールが、グリセリンを含む、付記5に記載の組成物。
(付記7)
最下層が、ショ糖と、組成物の重量に基づき1%以下の塩化ナトリウムとをさらに含む、付記6に記載の組成物。
(付記8)
中間層が、100cps〜100,000cpsの粘度を有する1種以上の透明、無色、液状、直鎖状ジメチコーンを含む、付記5に記載の組成物。
(付記9)
最上層が、パーム核油、エレイス・オレイフェラ(elaeis oleifera)果実油、ココナッツ油、スイカ種子油、キシメニア・アメリカナ(ximenia Americana)種子油、ククイ種子油、及びスクレロカリア・ビレア(sclerocarya birrea)種子油をさらに含み、かつ、鉱油を含まない、付記5に記載の組成物。
(付記10)
最下層における水の量が、全組成物の重量に基づき10%未満である、付記1に記載の組成物。
(付記11)
無水である、付記1に記載の組成物。
(付記12)
組成物の約0.001重量%〜約20重量%の1種以上の日焼け防止剤をさらに含む、付記1に記載の組成物。
(付記13)
中間層の密度に対する最下層の密度における差の割合が、少なくとも3%であり、かつ、中間層の密度が、0.98g/cm3未満である、付記2に記載の組成物。
(付記14)
以下:
3つの相が手動の振とうによって混合され、20秒以内に均一性を達成することができ;かつ、振とうを停止した後:
1〜10分間均一なままであり;及び
約10分以内に3つの区別できる層を再形成すること
を特徴とする、付記1に記載の組成物。
(付記15)
組成物の重量に基づき、10〜40%の液状最上層、20〜60%の液状中間層、及び10〜40%の液状最下層を含む、消費者のための化粧品組成物を製造する方法であって、以下のステップ:
最上層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状基油を含む最上層を調製するステップ;
1種以上の液状直鎖状シリコーンを含む中間層を調製するステップ;及び
最下層の重量に基づき少なくとも50%の1種以上の液状ポリオールを含む最下層を調製するステップ;
但し、組成物は、組成物の重量に基づき1%以下の塩及び1%以下の鉱油を含むことを条件とし;
最上層、中間層及び最下層を一体に混合するステップ;
最上層と中間層の間、及び中間層と最下層の間に界面を生じさせるステップ
を含む、方法。
(付記16)
界面を生じさせるステップの前に、混合された組成物を、販売可能な大きさの容器に充填するステップをさらに含む、付記15に記載の方法。
(付記17)
販売可能な大きさの容器が、透明である、付記16に記載の方法。
(付記18)
容器が、垂直方向に沿って一定の断面積を有する、無色のガラス瓶である、付記17に記載の方法。
(付記19)
容器が、底部と肩部を有し、底部と肩部の間において円筒形、長方形、又は正方形である、付記18に記載の方法。
(付記20)
容器を消費者に見えるようにする1つ以上の窓を有する外箱に、容器を包装するステップをさらに含む、付記17に記載の方法。