(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図4を参照して、状態判定方法及び状態判定装置の第1の実施形態について説明する。状態判定装置は、液状体としての潤滑油や作動油等の油を使用する機械に設けられ、油や油を必要とする機械の劣化状態を判定する。機械では、油を必要とする可動部品が故障していると、摩耗等によって油に不純物が混入する(コンタミネーション)。そのため、油の状態から機械の故障を判定できる。なお、油や機械が対象物に相当する。
【0028】
図1に示されるように、状態判定装置30は、光学センサ20と、対象物や油の劣化状態を判定する制御部31と、を備えている。制御部31は、光学センサ20が検出した検出値から算出値を算出する算出部31aと、算出部31aが算出した算出値に基づいて対象物の劣化状態を判定する判定部31bと、状態判定閾値等を記憶する記憶部31cとを備えている。
【0029】
なお、制御部31は、機械の可動部品に付随して単独で存在してもよく、可動部品が設けられた機械の制御装置と一体に存在してもよい。また、制御部31には、制御部31を操作する操作部32が接続されていることが好ましい。制御部31は、操作部32が操作されると、判定処理を行ったり、判定結果を出力したりする。また、制御部31には、判定結果や操作結果を表示する表示部33が接続されていることが好ましい。また、制御部31には、判定結果や状態判定閾値を有線又は無線によって通信する通信部34が接続されていることが好ましい。
【0030】
算出部31aは、油の明度を算出する。算出部31aが算出した明度を検出明度とする。判定部31bは、算出部31aが算出した検出明度が状態判定閾値に達しているか否かによって対象物の劣化状態を判定する。記憶部31cは、判定部31bが判定に使用する状態判定閾値である液状体劣化判定閾値としての油劣化判定閾値と故障判定閾値とを記憶している。
【0031】
図2を参照して、光学センサ20の構成について説明する。
光学センサ20は、金属又は樹脂製の円柱状のハウジング21を備えている。ハウジング21の上部には、収容部21aが設けられている。収容部21aは、有底円筒状のカバー29によって覆われている。
【0032】
収容部21aは、回路基板22を収容している。回路基板22は、ハウジング21に螺子21cによって固定されている。回路基板22には、電源線及び信号線が束ねられた通信線28が接続されている。
【0033】
回路基板22には、発光素子23、受光素子としてのカラーセンサ24、及び各種電子部品(図示略)が設置されている。発光素子23は、白色LEDなど、白色の検出光を出射する公知の素子である。カラーセンサ24は、本実施形態ではRGBセンサであって、検出光の光量に応じた色情報としてのR値、G値、B値を、通信線28を介して装置本体に出力する。
【0034】
ハウジング21は、検出光の光軸方向に延びる第1貫通孔21dを有している。第1貫通孔21dは、収容部21aの底面からハウジング21の底面まで貫通している。ハウジング21の底面であって、第1貫通孔21dの出口には、第1プリズム25が設けられている。第1プリズム25は、石英又はガラス等の透光性材料からなる直角プリズムである。第1プリズム25は、第1貫通孔21dを通過した検出光が入射する入射面25aと、入射面25aから入射した検出光が反射する反射面25bと、反射面25bによって反射した検出光が出射する出射面25cと、を有している。
【0035】
入射面25a及び出射面25cは、光学研磨されている。反射面25bは、金属蒸着膜及び保護膜から構成される。金属蒸着膜は、例えばアルミニウム等の薄膜であって、透光性材料の外側に成膜されている。保護膜は、例えば二酸化ケイ素薄膜、フッ化マクグネシウム薄膜であって、金属蒸着膜の外側に成膜されて、金属蒸着膜を保護している。入射面25aに対する反射面25bの角度は、反射面25bに入射した光の光路を、入射方向に対して90°の方向に反射するように調整されている。
【0036】
ハウジング21の底面には、第2プリズム26が設けられている。第2プリズム26は、第1プリズム25に対して間隙を介して設けられている。第2プリズム26は、第1プリズム25と同様の構成であって、入射面26aと、反射面26bと、出射面26cとを有している。第1プリズム25と第2プリズム26との間に設けられた間隙は、液状体としての油が入る油浸入間隙27であって、検査部として機能する。
【0037】
ハウジング21は、第1貫通孔21dと平行に延びる第2貫通孔21eを備えている。第2貫通孔21eは、収容部21aの底面からハウジング21の底面まで延びており、第2プリズム26とカラーセンサ24との間に設けられている。
【0038】
従って、発光素子23から出射された白色の検出光は、第1貫通孔21dを直進して第1プリズム25に入射する。その反射面25bによって検出光の光路が90°曲げられ、検出光は出射面25cから油浸入間隙27に入射する。さらに検出光は油浸入間隙27に入った油を透過し、第2プリズム26に入射する。第2プリズム26に入射した検出光の光路は、その反射面26bによって90°曲げられ、検出光は第2貫通孔21eを直進し、カラーセンサ24によって受光される。すなわち、発光素子23から出射された検出光の光路は、第1プリズム25及び第2プリズム26によって、180°反転される。油を透過した検出光は、油の色相に応じた波長域が吸収された光である。
【0039】
図3に示されるように、明度は、油を使用する機械の稼働時間の増加に伴って減少する。明度(ΔE)は、色成分値、すなわち、R値、G値、B値から式(1)によって求められる。機械の可動部品に対する負荷が大きいときの稼働時間に対する明度の変化を一点鎖線で示す。機械の可動部品に対する負荷が小さいときの稼働時間に対する明度の変化を実線で示す。なお、稼働時間が対象物の使用時間に相当する。
【0041】
判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の明度に基づいて油の劣化状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出明度と油劣化判定閾値との比較に基づいて油の状態を判定する。油劣化判定閾値は、油が劣化しているか否かを判定するための閾値である。判定部31bは、検出明度が油劣化判定閾値以下である場合に、油が劣化していると判定する。
【0042】
また、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の明度に基づいて機械の状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出明度と故障判定閾値との比較に基づいて機械の状態を判定する。故障判定閾値は、機械が故障しているか否かを判定するための閾値であって、油劣化判定閾値よりも小さい値である。判定部31bは、検出明度が故障判定閾値以下である場合に、機械を故障と判定する。機械の故障状態が劣化状態に相当する。
【0043】
次に、
図4を参照して、前述のように構成された状態判定装置30の状態判定方法について説明する。状態判定装置30は、可動部品を備えた装置の稼働時間が一定時間経過する毎に状態判定を行う。なお、状態判定を随時行ってもよく、ユーザの指示によって必要なときにのみ状態判定を行ってもよい。
【0044】
図4に示されるように、状態判定装置30の制御部31は、状態判定の実施が指示されると状態判定を開始する。制御部31は、光学センサ20から検出明度を算出する(ステップS11)。すなわち、算出部31aは、光学センサ20のカラーセンサ24が検出した検出値から検出明度を算出する。
【0045】
次に、制御部31は、検出明度が油劣化判定閾値以下であるか否かを判断する(ステップS12)。すなわち、判定部31bは、算出部31aが算出した検出明度が油劣化判定閾値より大きいと判断した場合(ステップS12:NO)には、油が劣化していないと判定して判定処理を終了する。
【0046】
一方、判定部31bは、算出部31aが算出した検出明度が油劣化判定閾値以下であると判断した場合(ステップS12:YES)には、検出明度が故障判定閾値以下であるか否かを判断する(ステップS13)。すなわち、判定部31bは、検出明度が故障判定閾値より大きいと判断した場合(ステップS13:NO)には、油を劣化と判定して(ステップS15)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出明度が故障判定閾値よりも大きく、油劣化判定閾値以下であるので、機械の故障ではなく、油が劣化していると判定する。
【0047】
一方、判定部31bは、検出明度が故障判定閾値以下であると判断した場合(ステップS13:YES)には、機械を故障と判定して(ステップS14)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出明度が故障判定閾値以下であるので、機械の故障によって油中に不純物が混入していると判断して、機械が故障していると判定する。
【0048】
さて、本実施形態では、光学センサ20の検出値から明度を算出して、油の劣化を油劣化判定閾値によって容易に判定でき、機械の故障を故障判定閾値によって容易に判定できる。
【0049】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)光学センサ20において検出された検出値から算出される算出値が状態判定閾値に達しているか否かによって対象物である油や機械の劣化状態を判定する。このため、算出値と状態判定閾値とを比較することで油や機械の状態を容易に判定できる。
【0050】
(2)算出した検出明度が故障判定閾値以下である場合に、機械が故障していると判定する。油が使用された機械から発生した不純物が混入する油においては明度が顕著に変化する。そのため、機械が故障状態になった際に容易に判定できる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、
図5及び
図6を参照して、状態判定方法の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の状態判定方法は、算出値として明度に代えて最大色差を用いる点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第2の実施形態の状態判定装置30は、
図1に示す第1の実施形態の状態判定装置30と同様の構成を備えている。算出部31aは、算出した検出最大色差を油が交換されるまで記憶部31cに記憶する。判定部31bは、検出最大色差が極値に到達したか否かを判断する。
【0052】
図5に示されるように、最大色差は、油を使用する機械の稼働時間の増加に伴って増加して極値を境に減少する。機械の可動部品に対する負荷が大きいときの稼働時間に対する最大色差の変化を一点鎖線で示す。機械の可動部品に対する負荷が小さいときの稼働時間に対する最大色差の変化を実線で示す。なお、稼働時間が対象物の使用時間に相当する。
【0053】
ここで、状態判定に使用する色成分値最大差(最大色差)について説明する。各色差(成分色差)は、R値、G値、B値のうちの二者の差分の絶対値、すなわち、|R−G|、|G−B|、|R−B|で表される。これらの成分色差のうち最大となる値が最大色差である。すなわち、最大色差は、最大色成分値と最小色成分値との差である。R値、G値、B値のうち最小値はB値であることが多く、最大値はR値であることが多いので、色差|R−B|のみを演算し、最大色差として用いてもよい。
【0054】
判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色差に基づいて油の劣化状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色差と油劣化判定閾値との比較に基づいて油の状態を判定する。油劣化判定閾値は、油が劣化しているか否かを判定する閾値である。判定部31bは、検出最大色差が油劣化判定閾値以下である場合に、油が劣化していると判定する。
【0055】
また、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色差に基づいて機械の状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色差と故障判定閾値との比較に基づいて機械の状態を判定する。故障判定閾値は、機械が故障しているか否かを判定する閾値であって、油劣化判定閾値よりも小さい値である。判定部31bは、検出最大色差が故障判定閾値以下である場合に、機械を故障と判定する。機械の故障状態が劣化状態に相当する。
【0056】
次に、
図6を参照して、前述のように構成された状態判定装置30の状態判定方法について説明する。状態判定装置30は、可動部品を備えた装置の稼働時間が一定時間経過する毎に状態判定を行う。なお、状態判定を随時行ってもよい。
【0057】
図6に示されるように、状態判定装置30の制御部31は、状態判定の実施が指示されると状態判定を開始する。制御部31は、光学センサ20から検出最大色差を算出する(ステップS21)。すなわち、算出部31aは、光学センサ20のカラーセンサ24が検出した検出値から検出最大色差を算出する。算出部31aは、算出した検出最大色差を油が交換されるまで記憶部31cに記憶する。
【0058】
次に、制御部31は、検出最大色差が極値に到達したか否かを判断する(ステップS22)。すなわち、判定部31bは、記憶部31cに記憶された検出最大色差の最大値が極値判定閾値より小さいと判断した場合(ステップS22:NO)には、検出最大色差が極値に到達していないと判定し、油は劣化していないと判定して、判定処理を終了する。
【0059】
一方、判定部31bは、記憶部31cに記憶された検出最大色差の最大値が極値判定閾値より大きいと判断した場合(ステップS22:YES)には、油が劣化していたり、機械が故障していたりする可能性があるので、判定処理を継続する。
【0060】
制御部31は、検出最大色差が油劣化判定閾値以下であるか否かを判断する(ステップS23)。すなわち、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色差が油劣化判定閾値より大きいと判断した場合(ステップS23:NO)には、油が劣化していないと判定して、判定処理を終了する。
【0061】
一方、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色差が油劣化判定閾値以下であると判断した場合(ステップS23:YES)には、検出最大色差が故障判定閾値以下であるか否かを判断する(ステップS24)。すなわち、判定部31bは、検出最大色差が故障判定閾値より大きいと判断した場合(ステップS24:NO)には、油を劣化と判定して(ステップS26)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色差が故障判定閾値よりも大きく、油劣化判定閾値以下であるので、機械の故障ではなく、油が劣化していると判定する。
【0062】
一方、判定部31bは、検出最大色差が故障判定閾値以下であると判断した場合(ステップS24:YES)には、機械を故障と判定して(ステップS25)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色差が故障判定閾値以下であるので、機械の故障によって油中に不純物が混入していると判断して、機械が故障していると判定する。
【0063】
さて、本実施形態では、光学センサ20の検出値から最大色差を算出して、油の劣化を油劣化判定閾値によって容易に判定でき、機械の故障を故障判定閾値によって容易に判定できる。
【0064】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に加え、以下の効果を奏することができる。
(3)算出した最大色差が極値に到達し、且つ油劣化判定閾値以下である場合に、油が劣化状態であると判定する。透明度が高く、酸化劣化等によって基油の色が変化し易い油においては最大色差が顕著に変化する。そのため、油が劣化状態になった際に容易に判定できる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、
図7及び
図8を参照して、状態判定方法の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の状態判定方法は、算出値として明度に代えて最大色比を用いる点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第3の実施形態の状態判定装置30は、
図1に示す第1の実施形態の状態判定装置30と同様の構成を備えている。
【0066】
図7に示されるように、最大色比は、油を使用する機械の稼働時間の増加に伴って増加する。最大色比は、最小色成分値に対する最大色成分値の比(=最大色成分値/最小色成分値)である。機械の可動部品に対する負荷が大きいときの稼働時間に対する最大色比の変化を一点鎖線で示す。機械の可動部品に対する負荷が小さいときの稼働時間に対する最大色比の変化を実線で示す。なお、稼働時間が対象物の使用時間に相当する。
【0067】
判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色比に基づいて油の劣化状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色比と油劣化判定閾値との比較に基づいて油の状態を判定する。油劣化判定閾値は、油が劣化しているか否かを判定する閾値である。判定部31bは、検出最大色比が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化していると判定する。
【0068】
また、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色比に基づいて機械の状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色比と故障判定閾値との比較に基づいて機械の状態を判定する。故障判定閾値は、機械が故障しているか否かを判定する閾値であって、油劣化判定閾値よりも
大きい値である。判定部31bは、検出最大色比が故障判定閾値以上である場合に、機械を故障と判定する。機械の故障状態が劣化状態に相当する。
【0069】
次に、
図8を参照して、前述のように構成された状態判定装置30の状態判定方法について説明する。状態判定装置30は、可動部品を備えた装置の稼働時間が一定時間経過する毎に状態判定を行う。なお、状態判定を随時行ってもよく、ユーザの指示によって必要なときにのみ状態判定を行ってもよい。
【0070】
図8に示されるように、状態判定装置30の制御部31は、状態判定の実施が指示されると状態判定を開始する。制御部31は、光学センサ20から検出最大色比を算出する(ステップS31)。すなわち、算出部31aは、光学センサ20のカラーセンサ24が検出した検出値から検出最大色比を算出する。
【0071】
次に、制御部31は、検出最大色比が油劣化判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS32)。すなわち、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色比が油劣化判定閾値未満であると判断した場合(ステップS32:NO)には、油が劣化していないと判定して判定処理を終了する。
【0072】
一方、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色比が油劣化判定閾値以上であると判断した場合(ステップS32:YES)には、検出最大色比が故障判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS33)。すなわち、判定部31bは、検出最大色比が故障判定閾値未満であると判断した場合(ステップS33:NO)には、油を劣化と判定して(ステップS35)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色比が油劣化判定閾値以上であって、故障判定閾値以下未満であるので、機械の故障ではなく、油が劣化していると判定する。
【0073】
一方、判定部31bは、検出最大色比が故障判定閾値
以上であると判断した場合(ステップS33:YES)には、機械を故障と判定して(ステップS34)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色比が故障判定閾値
以上であるので、機械の故障によって油中に不純物が混入していると判断して、機械が故障していると判定する。
【0074】
さて、本実施形態では、光学センサ20の検出値から最大色比を算出して、油の劣化を油劣化判定閾値によって容易に判定でき、機械の故障を故障判定閾値によって容易に判定できる。
【0075】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)算出した最大色比が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化状態であると判定する。透明度が高く、酸化劣化等によって基油の色が変化し易い油においては最大色比が顕著に変化する。そのため、油が劣化状態になった際に容易に判定できる。
【0076】
(第4の実施形態)
以下、
図9及び
図10を参照して、状態判定方法の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態の状態判定方法は、算出値として明度に代えて最大色差の積分値を用いる点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第4の実施形態の状態判定装置30は、
図1に示す第1の実施形態の状態判定装置30と同様の構成を備えている。算出部31aは、光学センサ20の検出値から検出明度と検出最大色差とを算出し、稼働時間に対する最大色差の積分値を算出する。なお、明度は機械の稼働時間の増加に伴って減少し、最大色差は機械の稼働時間の増加に伴って増加して極値を境に減少する。算出部31aは、算出した検出最大色差の積分値を油が交換されるまで記憶部31cに記憶する。なお、稼働時間が対象物の使用時間に相当する。
【0077】
図9に示されるように、最大色差の積分値は、稼働時間の増加に伴って増加する。最大色差の積分値は、稼働時間の経過に伴って明度が変化する度に最大色差を加算した値である。機械の可動部品に対する負荷が大きいときの明度に対する最大色差の積分値の変化を一点鎖線で示す。機械の可動部品に対する負荷が小さいときの明度に対する最大色差の積分値の変化を実線で示す。
【0078】
判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色差の積分値に基づいて油の劣化状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色差の積分値と油劣化判定閾値との比較に基づいて油の状態を判定する。油劣化判定閾値は、油が劣化しているか否かを判定する閾値である。判定部31bは、検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化していると判定する。
【0079】
また、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色差の積分値に基づいて機械の状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色差の積分値と故障判定閾値との比較に基づいて機械の状態を判定する。故障判定閾値は、機械が故障しているか否かを判定する閾値であって、油劣化判定閾値よりも
大きい値である。判定部31bは、検出最大色差の積分値が故障判定閾値以上である場合に、機械を故障と判定する。機械の故障状態が劣化状態に相当する。
【0080】
次に、
図10を参照して、前述のように構成された状態判定装置30の状態判定方法について説明する。状態判定装置30は、可動部品を備えた装置の稼働時間が一定時間経過する毎に状態判定を行う。なお、状態判定を随時行ってもよい。
【0081】
図10に示されるように、状態判定装置30の制御部31は、状態判定の実施が指示されると状態判定を開始する。制御部31は、光学センサ20から検出最大色差の積分値を算出する(ステップS41)。すなわち、算出部31aは、光学センサ20のカラーセンサ24が検出した検出値から検出明度と検出最大色差とを算出し、明度に対する最大色差の積分値を算出する。このとき、算出部31aは、過去の明度に対する最大色差の積分値を記憶部31cから取得する。
【0082】
次に、制御部31は、検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS42)。すなわち、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値未満であると判断した場合(ステップS42:NO)には、油が劣化していないと判定する。算出部31aは、算出した検出最大色差の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS45)、判定処理を終了する。
【0083】
一方、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上であると判断した場合(ステップS42:YES)には、検出最大色差の積分値が故障判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS43)。すなわち、判定部31bは、検出最大色差の積分値が故障判定閾値未満であると判断した場合(ステップS43:NO)には、油を劣化と判定する(ステップS46)。算出部31aは、算出した検出最大色差の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS45)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上であって、故障判定閾値以下未満であるので、機械の故障ではなく、油が劣化していると判定する。
【0084】
一方、判定部31bは、検出最大色差の積分値が故障判定閾値
以上であると判断した場合(ステップS43:YES)には、機械を故障と判定する(ステップS44)。算出部31aは、算出した検出最大色差の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS45)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色差の積分値が故障判定閾値
以上であるので、機械の故障によって油中に不純物が混入していると判断して、機械が故障していると判定する。
【0085】
さて、本実施形態では、光学センサ20の検出値から稼働時間に対する最大色差の積分値を算出して、油の劣化を油劣化判定閾値によって容易に判定でき、機械の故障を故障判定閾値によって容易に判定できる。
【0086】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)算出した最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化していると判定し、算出した最大色差の積分値が故障判定閾値以上である場合に、機械が故障していると判定する。このため、明度と最大色差との関係から油や機械の劣化状態を判定する場合、すなわち、明度と最大色差との二値を必要とする場合に比べ、最大色差の積分値の一値のみでよいので容易に判定できる。
【0087】
(第5の実施形態)
以下、
図11及び
図12を参照して、状態判定方法の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態の状態判定方法は、算出値として明度に代えて最大色比の積分値を用いる点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第5の実施形態の状態判定装置30は、
図1に示す第1の実施形態の状態判定装置30と同様の構成を備えている。算出部31aは、光学センサ20の検出値から検出明度と検出最大色比とを算出し、稼働時間に対する最大色比の積分値を算出する。なお、明度は機械の稼働時間の増加に伴って減少し、最大色比は機械の稼働時間の増加に伴って増加する。算出部31aは、算出した検出最大色比の積分値を油が交換されるまで記憶部31cに記憶する。なお、稼働時間が対象物の使用時間に相当する。
【0088】
図11に示されるように、最大色比の積分値は、稼働時間の増加に伴って増加する。最大色比の積分値は、稼働時間の経過に伴って明度が変化する度に最大色比を加算した値である。機械の可動部品に対する負荷が大きいときの明度に対する最大色比の積分値の変化を一点鎖線で示す。機械の可動部品に対する負荷が小さいときの明度に対する最大色比の積分値の変化を実線で示す。
【0089】
判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色比の積分値に基づいて油の劣化状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色比の積分値と油劣化判定閾値との比較に基づいて油の状態を判定する。油劣化判定閾値は、油が劣化しているか否かを判定する閾値である。判定部31bは、検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化していると判定する。
【0090】
また、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の最大色比の積分値に基づいて機械の状態を判定する。すなわち、判定部31bは、光学センサ20の検出値から演算される油の検出最大色比の積分値と故障判定閾値との比較に基づいて機械の状態を判定する。故障判定閾値は、機械が故障しているか否かを判定する閾値であって、油劣化判定閾値よりも
大きい値である。判定部31bは、検出最大色比の積分値が故障判定閾値以上である場合に、機械を故障と判定する。機械の故障状態が劣化状態に相当する。
【0091】
次に、
図12を参照して、前述のように構成された状態判定装置30の状態判定方法について説明する。状態判定装置30は、可動部品を備えた装置の稼働時間が一定時間経過する毎に状態判定を行う。なお、状態判定を随時行ってもよい。
【0092】
図12に示されるように、状態判定装置30の制御部31は、状態判定の実施が指示されると状態判定を開始する。制御部31は、光学センサ20から検出最大色比の積分値を算出する(ステップS51)。すなわち、算出部31aは、光学センサ20のカラーセンサ24が検出した検出値から検出明度と検出最大色比とを算出し、明度に対する最大色比の積分値を算出する。このとき、算出部31aは、過去の明度に対する最大色比の積分値を記憶部31cから取得する。
【0093】
次に、制御部31は、検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS52)。すなわち、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値未満であると判断した場合(ステップS52:NO)には、油が劣化していないと判定する。算出部31aは、算出した検出最大色比の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS55)、判定処理を終了する。
【0094】
一方、判定部31bは、算出部31aが算出した検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上であると判断した場合(ステップS52:YES)には、検出最大色比の積分値が故障判定閾値以上であるか否かを判断する(ステップS53)。すなわち、判定部31bは、検出最大色比の積分値が故障判定閾値未満であると判断した場合(ステップS53:NO)には、油を劣化と判定する(ステップS56)。算出部31aは、算出した検出最大色比の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS55)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上であって、故障判定閾値以下未満であるので、機械の故障ではなく、油が劣化していると判定する。
【0095】
一方、判定部31bは、検出最大色比の積分値が故障判定閾値
以上であると判断した場合(ステップS53:YES)には、機械を故障と判定する(ステップS54)。算出部31aは、算出した検出最大色比の積分値を記憶部31cに記憶して(ステップS55)、判定処理を終了する。すなわち、判定部31bは、検出最大色比の積分値が故障判定閾値
以上であるので、機械の故障によって油中に不純物が混入していると判断して、機械が故障していると判定する。
【0096】
さて、本実施形態では、光学センサ20の検出値から稼働時間に対する最大色比の積分値を算出して、油の劣化を油劣化判定閾値によって容易に判定でき、機械の故障を故障判定閾値によって容易に判定できる。
【0097】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(6)算出した最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上である場合に、油が劣化していると判定し、算出した最大色比の積分値が故障判定閾値以上である場合に、機械が故障していると判定する。このため、明度と最大色比との関係から油や機械の劣化状態を判定する場合、すなわち、明度と最大色比との二値を必要とする場合に比べ、最大色比の積分値の一値のみでよいので容易に判定できる。
【0098】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第2の実施形態では、検出最大色差が極値を超えた後に、検出最大色差を油劣化判定閾値、故障判定閾値によって判定した。しかしながら、最大色差が極値に達する前に油劣化判定閾値、故障判定閾値によって判定してもよい。
【0099】
・第1〜第5の実施形態では、対象物を油及び機械として、油の状態を油劣化判定閾値で判定し、機械の状態を故障判定閾値で判定した。しかしながら、対象物を油のみとして、油の状態を油劣化判定閾値で判定してもよい。すなわち、第1の実施形態では、ステップS13及びステップS14を省略して、判定部31bは検出明度が油劣化判定閾値以下である場合(ステップS12:YES)に、油が劣化していると判定する(ステップS15)。第2の実施形態では、ステップS24及びステップS25を省略して、判定部31bは検出最大色差が極値に到達して(ステップS22:YES)、且つ油劣化判定閾値以下である場合(ステップS23:YES)に、油が劣化していると判定する(ステップS26)。第3の実施形態では、ステップS33及びステップS34を省略して、判定部31bは検出最大色比が油劣化判定閾値以上である場合(ステップS32:YES)に、油が劣化していると判定する(ステップS35)。第4の実施形態では、ステップS43及びステップS44を省略して、判定部31bは検出最大色差の積分値が油劣化判定閾値以上である場合(ステップS42:YES)に、油が劣化していると判定する(ステップS46)。第5の実施形態では、ステップS53及びステップS54を省略して、判定部31bは検出最大色比の積分値が油劣化判定閾値以上である場合(ステップS52:YES)に、油が劣化していると判定する(ステップS56)。
【0100】
・第1〜第5の実施形態では、対象物を油及び機械として、油の状態を油劣化判定閾値で判定し、機械の状態を故障判定閾値で判定した。しかしながら、対象物を機械のみとして、機械の状態を故障判定閾値で判定してもよい。すなわち、第1の実施形態では、ステップS12及びステップS15を省略して、判定部31bは検出明度が故障判定閾値以下である場合(ステップS13:YES)に、機械が故障していると判定する(ステップS14)。第2の実施形態では、ステップS23及びステップS26を省略して、判定部31bは検出最大色差が極値に到達して(ステップS22:YES)、且つ故障判定閾値以下である場合(ステップS24:YES)に、機械が故障していると判定する(ステップS25)。第3の実施形態では、ステップS32及びステップS35を省略して、判定部31bは検出最大色比が故障判定閾値以上である場合(ステップS33:YES)に、機械が故障していると判定する(ステップS34)。第4の実施形態では、ステップS42及びステップS46を省略して、判定部31bは検出最大色差の積分値が故障判定閾値以上である場合(ステップS43)に、機械が故障していると判定する(ステップS44)。第5の実施形態では、ステップS52及びステップS56を省略して、判定部31bは検出最大色比の積分値が故障判定閾値以上である場合(ステップS53:YES)に、機械が故障していると判定する(ステップS54)。
【0101】
・第1〜第5の実施形態では、プリズムによる反射タイプの光学センサ20を採用したが、発光素子と受光素子とを対向配置したタイプ等の他の光学センサを採用してもよい。
・第1〜第5の実施形態において、機械が油を必要として可動する軸受やピストン等を備えた機械であり、風力発電機、建設機械、航空機、鉄道車両、真空ポンプに設けられる可動部品に状態判定装置30を適用してもよい。補足すると、風力発電機では、例えば風力発電機用増速器やその軸受、ピッチ駆動用油圧シリンダや減速機、YAW駆動用油圧モータである。建設機械では、例えば油圧モータ、油圧シリンダ、油圧用バルブ(ロードセンシングバルブ等)や走行モータ、旋回モータ、ジョイント等である。航空機では、例えばスポイラー、エルロン、エレベーター、ラダー、フラップ、スラット、ブレーキ、ステアリング等を駆動するフライトコントロールアクチュエータ、油圧モータ等である。鉄道車両では、例えば鉄道車両用空気圧縮装置である。商用車、乗用車では、例えばブレーキアクチュエータ、エンジンオイルの循環ポンプ、燃料の供給ポンプ等である。船舶では、例えばエンジンオイルの循環ポンプ、燃料の供給ポンプ、油圧駆動装置及び機器等である。