特許第6127142号(P6127142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6127142個別化治療及び診断のためのRFハイパーサーミアデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127142
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】個別化治療及び診断のためのRFハイパーサーミアデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   A61N1/40
【請求項の数】11
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-528993(P2015-528993)
(86)(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公表番号】特表2015-528337(P2015-528337A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2013067747
(87)【国際公開番号】WO2014033139
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】12181833.0
(32)【優先日】2012年8月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515054066
【氏名又は名称】クサックス ケーエフティー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サッス オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】サッス アンドラス
(72)【発明者】
【氏名】イルリィ ノラ
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065714(US,A1)
【文献】 特表2007−501089(JP,A)
【文献】 米国特許第04712559(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/40
A61B 5/05 − A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量結合を使用する、個別化治療、個別化予防、及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスであって、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、前記無線周波数源はソース信号(8)を生成し、前記ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して前記変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、前記変調済ソース信号(10)は、前記増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に向けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、前記検出器(3)は、前記標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される信号の位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、前記変調信号(12)は、前記フィードバック信号(5)を変調することによって前記フィードバック信号(5)から、前記変調信号入力/発生器(13)によって生成され、前記変調信号入力/発生器(13)は、定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される、無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項2】
前記検出器(3)は、時刻Tn+1で取得された位相情報を、時刻Tで前記検出器(3)によって検出された位相情報と比較するように構成及び/又は適合され、n>0である、請求項1に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項3】
前記フィードバック信号(5)を増幅するためのフィードバック増幅器(6)を更に備える、請求項1又は2に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項4】
前記変調信号入力/発生器(13)によって生成される変調を前記フィードバック信号(5)に適合させるための逓倍器(11)を更に備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項5】
前記変調信号入力/発生器(13)は、該変調信号入力/発生器(13)によって生成される変調をフィードバック信号(5)に適合させるための逓倍器(11)及び/又は前記フィードバック信号(5)を増幅するためのフィードバック増幅器(6)を含む、請求項1又は2に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項6】
前記検出器(3)は、前記増幅器(2)と前記標的領域(17)との間に位置する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項7】
前記検出器(3)は、前記標的領域(17)と前記フィードバック増幅器(6)との間に位置する、請求項3又は5のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項8】
前記無線周波数ハイパーサーミアデバイスはコンデンサ配置構成内で容量結合を使用し、前記標的領域(17)は誘電体材料である、請求項1〜のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項9】
前記変調器(9)は、前記測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報及び前記標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される信号の位相情報に基づいて、前記ソース信号(8)の振幅及び周波数スペクトルを変調するように構成及び/又は適合される、請求項1〜のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項10】
前記フィードバック信号(5)を提供するための以下のアルゴリズム、すなわち、
【数1】

が前記検出器(3)に格納され、
ここで、
φ(ω)は任意関数であり、
φは振幅の位相であり、
Aは振幅である、請求項1〜のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【請求項11】
腫瘍、癌、転移、癌腫、疼痛、片頭痛、及び中枢神経系の疾病についての、個別化された、治療、後治療、予防、再発の予防、及び診断のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の無線周波数ハイパーサーミアデバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、容量結合を使用し、かつ、ダイポールアンテナの無い、個別化治療及び診断のための無線周波数(RF)ハイパーサーミアデバイスに関し、該無線周波数(RF)ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源と、増幅器と、変調器と、検出器と、変調信号入力/発生器とを備え、無線周波数源はソース信号を生成し、ソース信号は、変調信号を使用して変調器によって変調されて、変調済ソース信号を生成し、変調済ソース信号は、増幅器によって増幅されて、標的領域に方向付けられ、検出器は、標的領域のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較してフィードバック信号を提供し、変調信号が、フィードバック信号を変調することによって変調信号入力/発生器により生成され、該変調信号入力/発生器は、測定されたホメオスタシス信号の位相情報を使用するように適合される。この無線周波数(RF)ハイパーサーミアデバイスは、患者或いは患者の悪性又は腫瘍部位等の標的の個別化治療及び診断のために設計される。
[発明の背景]
生命は、環境条件が生命を平衡状態として定める、エネルギー的には開放系に基づく。生命体の平衡状態がホメオスタシスである。実際のホメオスタシス状態は、そのエネルギー的に開放された状態にもかかわらず、明確に「一定」である。任意の生命体の通常の健康状態はホメオスタシスにあり、ホメオスタシスは、静的ではなく、時間的に動的に変化し、比較的安定した状態を形成する。この相対的な安定性は、種々の個体を、実際のところ何百万ものその細胞が消失し、何百万ものその細胞が再生されるという事実にもかかわらず、認識することを可能にする。ホメオスタシスは、多数の負のフィードバックループによって制御され、動的平衡状態に微視的構造と巨視的構造の両方を生成する。この「揺れる」平衡状態は、種々の時間スケールにおいて、正反対の効果を有する生理的フィードバック信号対によって制御される。これは、実際の状態を、そのエネルギー的に開放された状態にもかかわらず明確に「一定」に形成する(図1参照)。システム及びその制御は複雑であり、単にそれらの部分系の単純な総和ではない。
【0002】
本発明の目的は、ホメオスタシスから取得される位相情報に基づく、個別化治療及び診断のためのRFハイパーサーミアデバイスを提供することにある。
この目的は独立請求項の教示によって解決される。更なる有利な特徴及び実施形態は、説明、例、及び従属請求項から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】生得的健康状態が生理機能の負のフィードバックループ(矢印)によって安定化されることを示す図である。
図2】変動が、制御を適正に維持する一定範囲内になければならないことを示す図である。その結果、平均は常に、時間的に固定されなければならず、ランダム変動は、長期間にわたって帯域内に留まる。
図3】スケーリングによって帯域幅を狭めることを示す図である。
図4】血管新生による電位勾配の構築を示す図である。
図5】環境信号のホメオスタシス制御式パラメータを示す図である。
図6】疾病がホメオスタシスを壊し、生理機能が、その損傷を補い、補正しようと試みることを示す図である。
図7】古典的なハイパーサーミアが新たな強制された効果を導入することを示す図であり、新たな強制された効果は、更に多くの生理的フィードバックを誘発し、身体に「2戦線(double front)」闘争を強いる。
図8】変調が別様に働くことを示す図である。変調は、生得的補正のための生得的フィードバックループを助ける。
図9】所定の空間内でのヒルベルトフラクタルの構築を示す図である。
図10】「ポストモダン」ピアノラによる空間フラクタルからの音楽を示す図である。フラクタルをコード化するピアノラのペーパーシリンダは、それを音楽として再生することを可能にする。
図11】時間変換済のヒルベルトフラクタルの離散的位相関数を示す図である。
図12】本発明のRFハイパーサーミアデバイスのとり得る配置構成を示す図である。
図13】本発明のRFハイパーサーミアデバイスのとり得る別の配置構成を示す図である。
図14】組織の形態から始まるホメオスタシス信号を生成するための代替法として、フラクタル構造が対応する時間フラクタル構造にどのように変換され得るかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
[発明の説明]
制御の決定論的方法は、適切な処理速度を持った状態で十分に正確かつ安定であることができず、したがって、プロセスは非決定論的である。システムを制御するために不必要な精度を使用せずまたエネルギーを浪費しないように、制御を最適にするランダムプロセスの重要な役割が存在する。ホメオスタシスの目標は、細胞機能を保護し、これらの最小構成単位についての一定の生命条件を保証することである。環境パラメータは、許容可能な帯域内に維持されなければならず、実際の値の変動は、長時間にわたって一定の限界を超えてはならない。これらの閾値は、パラメータの平均を時間的に一定に維持するが、所与の帯域幅のせいで、偏差もまた固定されなければならない(図2参照)。生理的信号の制御は、その平均値の周りで変動する。フィードバック制御は、許容レベルを超え、かつ、耐容レベル未満であるときにアクティブである。変動は時間フラクタルであり、このことがホメオスタシスを特徴付ける。エントロピーを考慮して、フィードバック信号のノイズが時間フラクタルであるときに、変動が制御された範囲内に限定されることを示す。
【0005】
ホメオスタシス平衡状態を特徴付けるために、本明細書では特別なエントロピー定義が導入される。シャノン型エントロピーと整合する有限データ系列のエントロピーを計算する種々の提案が存在する。リッチマン−ムアマン−エントロピーでは、時系列の複雑さの測定が導入された。リッチマン−ムアマン−エントロピーは、新しいサンプル点が時系列に付加されたときの、ベクトルがr近傍のままである条件付き確率の負の対数である。生理的信号のマルチスケールエントロピーの解析に、リッチマン−ムアマン−エントロピーが適用された。生理的信号におけるガウス型ピンクノイズが、中心極限定理により良好な近似であると仮定する。多次元ガウス分布を特徴付けるために共分散行列が必要である。ガウスピンクノイズの場合、共分散行列は、パワースペクトル、また、これに基づいて同様にエントロピーから決定され得る。信号の定間隔におけるピンクノイズのスケール独立性を解析が証明した。マルチスケールエントロピー解析(MSE)は、種々の生理的信号を解析するために適用される。エントロピー対適用されるスケールファクタ(実際の平均化の要素の数)は、ピンクノイズ及びホワイトノイズを適用することによって異なる関数を有する。平滑化(高周波数をフィルタリングすること、削除すること)は、ピンクノイズの場合、重要ではない。オリジナルがピンクであるとき、エントロピーは、非常に広い範囲の限界内で全てのスケールに関して一定のままである。ホワイトノイズのエントロピーは、非常に低い相関の結果として、スケールファクタの増加によって減少するが、そのエントロピーは、短距離相関に起因して、4未満のスケールで高い。短い相関は弱いが、長い相関はピンクノイズについて強い。
【0006】
物理的観点から、離散的時系列のスケーリングは、フィルタリングプロセスであり、ノイズの一部の高周波数成分を排除する。ノイズの最大帯域幅はスケール1にある。より高いスケーリングに徐々にジャンプすると、高周波数成分の平均がより多くなり、帯域幅が減少する。信号内の最大周波数は、シャノンのサンプリング定理によって推定され得る。すなわち、ノイズ内に現れる最大周波数は、サンプリング周波数の半分である。その結果、スケールファクタ2の場合、該半分が、スケールファクタnの場合には最大周波数の1/nが、帯域幅を決定する。同じことが、帯域幅の最小周波数限界において有効である。
【0007】
データ系列の長さは、登録時間の関数である。ΔTがサンプリング時間であり、Nがデータ系列のサイズであるときに、登録する時間はΔTNである。この時間の逆数は、信号内の最小周波数であるため、それが帯域幅の下方境界である。スケーリングによるデータ系列の長さの減少に起因して、帯域幅の周波数下限は増加する(図3参照)。
【0008】
時系列のリッチマン−ムアマン−エントロピーは、ピンクノイズの「ホログラフィに似た」構造を示す。すなわち、ノイズの切捨てはそのエントロピーを変化させない。
リッチマン−ムアマン−エントロピーは、当然ながら、シャノン−エントロピーの場合と同じように物理的意味を有する(それらは整合的である)。リッチマン−ムアマン−エントロピーをボルツマン定数で乗算すると、登録される信号の物理的エントロピーが構築される。システムのエントロピーは、状態関数である。そのため、それは、状態変数の関数であり、状態変数の中で、エネルギーは最重要変数の1つである。本件においては、システムのエネルギーは、登録されたノイズのフーリエ成分のエネルギー値の総和である。その結果、ピンクノイズから形成される信号のエントロピーは、そのエネルギーの減少によって変化しない。この事例は、熱力学において見られる。すなわち、平衡熱力学におけるシステムのエントロピーは、エネルギーの関数において極値を有し、そのことは、熱力学的平衡を有する部分系が、システムのエントロピーを変化させることなく、変動によってエネルギーを交換し得ることを意味する。同様の状況が、ピンクノイズを発する確率系の場合に存在すると思われる。この類似性が有効である場合、部分系は、系のエントロピーを変化させることなく、かなりのエネルギーを交換し得る。温度のような関数の種類を導入することは、ここでのエントロピーが相加的でないため不可能である。その理由は、全てのピンクノイズ系のエントロピーが等しいからである。ここで、エントロピーは、系の説明における示量パラメータよりも示強性である。
【0009】
間充織は、有機体内でホメオスタシスを形成する重要な役割を有する。間充織は、未分化型の緩い結合組織である。エントロピーS=1.8を有するピンクノイズは、示強パラメータのようなホメオスタシスを特徴付ける。この示強性は、全ての生理的信号について、また、全ての器官について有効であり、S=1.8は、生命体についての普遍的な定数である。
【0010】
供給及びフィルタリングのような細胞機能は、毛細血管と細胞との間の伝達部としての役割を果たす間充織によって調整される。間充織は、細胞グリコカリックスの樹状突起によって、また細胞外基質によって網状にされた、高分子炭化水素類(highly polymerized hydro−carbonate)、グリコサミノグリカン、タンパク質に結合されたオリゴ糖鎖、プロテオグリカン、及び構造−糖タンパク質(structure−glycoprotein)のような結合種の網状構造の規則正しい集まりである。
【0011】
間充織は、3つのモードの機能、すなわち、細胞機能、体液機能、そして神経機能を有する。細胞機能は、細網内皮系細胞と共に結合組織の化学的平衡をもたらす。体液機能は、毛細血管及びリンパ網を介する輸送プロセスを制御する。この輸送メカニズムは、遠く離れた系への輸送路を保証する。神経機能は、有機体の全ての他の部分との機能的結合を担う。これら3つのレベルは、それらの効果が及ぶ範囲において異なる。すなわち、細胞機能は身体における局所的な相互作用であり、体液機能は身体におけるメゾスコピックな相互作用であり、神経機能は身体における全体的な(全身性の)相互作用である。輸送プロセスがゆっくりであるため、体液の効果はゆっくりであり、一方、神経の効果は速い。
【0012】
情報制御は、神経系の支援、細胞輸送(ホルモン、酵素、アポトーシス、「ソーシャル」信号)の支援、並びに血液及びリンパ輸送による体液の支援によって有効になる。細胞は、反応するのが最も速い。全ての制御メカニズムは、逆の信号の対、すなわち、実際のプロセスの上方調節及び下方調節によって働く。これは、全ての時間スケールにおいて有効であり、多数の対に生理的信号を形成させる。3つのレベルは、間充織によって互いに接続される。
【0013】
ホメオスタシスは、多数の逆の対の平衡状態によって決定される。例として、増殖に関するホメオスタシスについて説明する。老齢細胞、損傷を受けた細胞、又はストレスがかかりすぎる細胞を置換するメカニズムが存在する。このプロセスは前に述べたように逆に働く作用の力の平衡であるが、このプロセスが器官の最終的な大きさを安定化させる。逆のプロセスとは、消滅(プログラムされた細胞死によって引き起こされるアポトーシス)及び生成(成長因子によって引き起こされる細胞分裂)である。この2つの側面は、健康な状態では平衡状態にある。この平衡状態が消失すると、系はうまく働くことができず、すなわち病気になる。自己免疫疾患を生じさせ得るようにアポトーシスが優位になり始めると、生成がプロセスを決定するときに、腫瘍が結果としてもたらされる。系の複雑さ(逆の対の数によって特徴付けられる)は、適切な作用の基礎であり、系が、環境的難題に適切に対処することを可能にする。作用する信号対は、互いに接続及び結合されて、統合された複雑系を形成する。
【0014】
先に示した増殖に関するホメオスタシスは、細胞系の再生に関して働くが、1つの細胞は、消滅し、新しく生まれる細胞に場所をあけ、完全な機能を平衡状態(ホメオスタシス)に維持しなければならない。この複雑系の平衡状態は、フラクタル生理学及びバイオスケーリングによって説明され得る。この複雑さは、生命の全てのスケールにおいて有効である、生存状態の4次元記述において表される。
【0015】
逆の作用を有する調節用対の複雑なネットワークは、伝統的な中国医学(TCM)及び哲学(陰陽対)の基礎でもある。この複雑さは、系がその複数部分を単に付加的に集合させて構成することができず、該部分のみでは、完全な複雑系において該部分が有する機能を発揮しないことを意味する。制御用の対同士の間の結合及び相互作用は、単一の制御用対を調整する多機能的挙動を説明することができるため、均衡の1つの外的再調整の結果が、種々の結果をもたらし得る。
【0016】
我々は、増殖に関するホメオスタシスの実例のこの相互作用について再び提示する。間充織の機能のうちの1つは、栄養素の輸送による体液機能である。酸素供給がある器官内で不十分である場合(例えば、筋肉群の極度の使用による低酸素症の場合)、細胞の状態は低酸素状態になる。低酸素症によって破壊された細胞は、毛細血管内の内皮細胞結合を溶解し、該内皮細胞結合の接着性(細胞骨格)結合を破壊する化学物質を細胞外電解質内に放出する。これは、血管新生の第1のステップを誘発し、血管壁内の内皮細胞の構造が変化すると、血管緊張が減少し、血管壁の透過性が増加する。透過性が高くなると、組織に対して酸素及び栄養素がより良好に供給される。血管新生の第2の段階では、プロテコリス(protecolis)−酵素が発現し、細胞外電解質の粘性が小さくなるようにし、細胞がより高い運動性を持つ可能性を与える。血管内皮増殖因子(VEGF)の作用は、増殖因子の勾配によって、細胞分裂を誘発し、走化性により引き起こされる移動を助けることである。それは、血管の未発達な網を増大させ始める。
【0017】
血管新生の第4のステップは成熟化であり、細胞外基質が再構築されると、細胞結合が再構築され、血管壁がその安定した最終形態を構築する。このステップでは、アンジオポエチン分子は、生まれたばかりの原始的な毛細血管を既存の血管網に入れるように接続する役目を有する。新しい血管の適切な生理的機能(輸送)は、その機能を遂行するのに十分でない。つまり、栄養素及び酸素の供給が必要とされる場所に、輸送がなされなければならない。血管は、形態形成網によって作り上げられ、増殖因子の勾配によって、また電位勾配によって構築されるが、これは、成熟した細胞においてよりもより負電荷を帯びた娘細胞において起こる(図4参照)。
【0018】
電位勾配は増殖の方向を決定し、平衡状態は逆の作用対のネットワークの動的制御によって構築され、動的制御は良好に決定されたスケーリングによって構築され、新しく再生した複雑系の平衡状態の適切なエネルギー供給を保証する。
【0019】
ホメオスタシスプロセスによって制御される環境信号が種々のコンポーネントの平均であると考える(図5参照)。
【0020】
【数1】

平均は基本信号であり、偏差形態は制御用誤差である。ランダムプロセスであるため、制御用誤差はホメオスタシス内のノイズである。
【0021】
その結果、ノイズは、次の通りに定義される。
【0022】
【数2】

ここで、<>は、時間による平均化を示す。ノイズの分散<z(t)>もまた時間依存性である。生体構造であるため、ノイズは自己相似性でなければならない。これは、ノイズの分散が時間依存性のべき関数を有することを意味する。
【0023】
【数3】

ここで、相似性(similarity)指数は常に正であり、0<H。H=1/2として以下の例を考えると、制御誤差分散は、時間の線形関数である。
【0024】
【数4】

ここで、cは定数である。この場合、誤差信号はブラウン運動である。スケーリング則は、(3)の結果としてもたらされる。
【0025】
【数5】

誤差信号は、スペクトルパワー密度関数によって特徴付けられ得る。
【0026】
【数6】

ここで、G(Δt)は、誤差信号の自己相関関数である。
【0027】
【数7】

先に導入した自己相似性ノイズについてのスペクトルパワー密度関数は、以下の通りである。
【0028】
【数8】

パワーβは、誤差信号の「色」であり、Hに依存する。
【0029】
【数9】

その結果、
【0030】
【数10】

である。
【0031】
したがって、誤差信号がピンクノイズ(β=1、1/fノイズ)である場合、
【0032】
【数11】

である。
【0033】
したがって、(3)により、ノイズが1/fである場合、その偏差は、うまく選択された間隔内で時間的に一定である。実際には、チェビシェフの不等式に基づいて間隔[数12](σは標準偏差である)内に存在する誤差信号の確率は、[数13]で表される。
【0034】
【数12】
【0035】
【数13】

その結果、kが十分に大きい(時間が平均化のために選択されるに十分となるように大きい)ときに、確率は、実際には1であるため、信号は選択された帯域を出ない。これは、系が常にうまく制御されており、ホメオスタシスが一定であり、系が調節されていることを意味する。系のエントロピーは、この場合、全てのスケールに関して一定である(S=1.8)。すなわち、信号は、全てのスケールに関して制御されている(信号は、一定間隔に維持されている)。
【0036】
変動の構造は、この確率的プロセスにおいて必須である。時間フラクタルは、ホメオスタシスの確率的制御の信号である。誤差信号のパワースペクトルがピンクノイズから逸脱し、したがって、別の色(例えば、β>1)を有するときに、その自己相似性指数は正となるため、(3)によって、誤差信号の偏差は時間的に増大することになり、系のホメオスタシスが壊されることになる。これらの場合、系を安定させるために、特別の調節(内部信号又は外部信号(例えば、免疫反応、輸送の再構成等、又は、強制を伴う治療(constrain treatment)、療法等))が必要である。
【0037】
間充織は、ホメオスタシスを構築する作用ネットワークの結合媒体である。間充織は、種々のまた多数の作用についてのハブのように働くホメオスタシス作用の交差場である。ハブを修正すると、ホメオスタシス制御が変更され得る。3つの主要な効果が作用し得る。すなわち、
1.間充織のオーバー制御。この場合、信号が下方調節されなければならず、パージングがアクティブである。
【0038】
2.信号が低過ぎると、上方調節されなければならず、それは、トーナイゼーション(tonization)である。
3.信号は正しいが、その偏差が大き過ぎる場合、ホメオスタシスエントロピーが、ハブにおいて生成されなければならない。
【0039】
刺激によって誘発される実際の局所的プロセスは完全に定義付けられない。しかしながら、機械的因子及び電気的因子が外乱を作り、その外乱が、生得的補正システムがホメオスタシス平衡状態を再確立するよう促進すると考えられる。最も可能性が高いことには、損傷電流を作る微小創傷、血小板由来増殖因子(PDGF)を生じさせる微量出血、強制的細胞アポトーシス及び置き換えのための分裂等のような種々の局所的障害は、複雑に相互作用し、ホメオスタシス平衡状態の再確立をもたらす。その作用の実現方法にかかわらず、鍼療法は、局所的ハブの構造を再調整するのに十分な外乱を与えて、自己組織化的な方法によってホメオスタシス平衡状態を再度見出し得る。これは、機械的振動が、サクランボが入ったボールに与えられて、自己組織化によって、そのボール自身をより低いエネルギー状態に配置するときのプロセスと非常に類似する。刺激は、微小外乱が存在している間、アクティブである。バイオプロセスにおいて自己組織化プロセスを誘発する確率的外乱についての例が存在する。
【0040】
自己組織化法によって作用されるタンパク質の2次、3次、及び4次構造を改質することは、ストレス誘導性タンパク質(熱ショックタンパク質、HSP)の機能の1つである。HSPは、ストレスによる折畳み不全(stress−unfolded)部分に対してこうした外乱を提供しているため、分子は、自分の通常構造を形成するより低いエネルギー状態を再び見出し得る。
【0041】
動的変動は、系全体にわたって等しい偏差を保証するピンクノイズ分布を有する。ノイズは、疾病又は加齢によってその特性を変える。疾病は、集団性(collectivity)の部分的喪失であり(変動は、ホワイトノイズの方へ、すなわち障害の方にシフトされる)、一方、加齢は、ノイズを、逆にブラウン方向(固定ルート、適応性の低下、複雑な適応能力の喪失)にシフトさせる。
[加齢]
加齢は系の複雑さを減少させる。この喪失は、弁証法的決定を行う制御用の逆の対の数の低下を意味する。これらの変化は、作用時間を逸脱させる可能性があり、対は、異なる時間スケールに作用する。また、迅速な作用の対が最初に劣化すると推測することができる。これらは全て、加齢がMSEスケーリングであるが、高周波数の変動は徐々に消え、ノイズ信号のスケーリングの可能性は、通常の加齢の場合に特徴的であるままであるが、ブラウニアンノイズ(1/f)の方にシフトすることを意味する。これは、(3)におけるH=1/2に対応するため、分散は、(4)に従って時間によって線形に増大し、誤差信号はブラウン運動であり、加齢は複雑さを抑制し、自己相関は、(7)に従って時間によって徐々に減少する。スケーリングは、加齢の良好なシミュレーションである。すなわち、系は、より大きなスケールファクタを徐々に占める。生理的信号のノイズの色は、健康状態をチェックするために調査され得る。そのため、疾病は、信号ノイズがホワイトノイズに徐々にシフトし、相関長が減少するため、区別され得る。こうして、生得の加齢による複雑さの喪失は、ノイズを、疾病とは逆のブラウニアンノイズの方にシフトさせる。加齢は、競合する信号対の劣化であり、有機体の複雑さを減少させる。こうして、ノイズの色は、徐々にブラウンへと変化する。特別なスケーリングプロセスが加齢の間に起こる。すなわち、パワー密度関数の周波数依存性の指数は、このプロセスにおいて、1から2に増大するが、系のホメオスタシスは変化しない。
[疾病−癌]
疾病は、系の相対的な平衡状態を壊し、系の相対的な安定性をリスクにさらす。系は、負のフィードバック制御を増大させることによってホメオスタシスを再確立しようと試みる。生理的機能は、損傷を補償し補正しようと試みる。系は、負のフィードバック制御を強化し、正常化を実行する(図6参照)。
【0042】
癌は、細胞系の一部に対して集団的制御(collective control)を喪失する疾病であり、細胞は個々に自律的になる。この状態は、その代謝に関する優位性(metabolic dominance)によって、健康な状態とは明確に異なり、代謝に関する優位性は、オットー・ワールブルクにより観察され、オットー・ワールブルクはこれによりノーベル賞を授与された。ワールブルグの主要な考えによれば、癌の主要な原因は、非酸化的グルコース代謝である。酸化的代謝は、ミトコンドリアの役割である。そのため、酸化的代謝が失われているということは、ミトコンドリアの機能不全を意味する。ワールブルグによれば、ゲノムの突然変異は、発酵代謝の結果である。すなわち、低酸素症は、悪性形質転換を引き起こす。ワールブルグの考えは、修正されており、「癌の新理論において復帰し」、新たな仮説が、これに基づいて明確に説明されている。腫瘍代謝及びそのミトコンドリアとの関連性については、徹底的に研究されている。
【0043】
2つの代謝経路(酸化的及び発酵的)の決定の役割は、病因学アプローチを有し、他の定式化を使用する、セント・ジェルジによって研究された。彼の解釈は、細胞の状態を2つの異なる段階によって説明する。細胞のアルファ状態は発酵状態である。これは、生命の初期発生において分子状酸素が利用可能でなかったときに一般的であった。積極的に他に働きかける(aggressive)電子受容体は存在しなかった。この段階では、単純で原始的な生命形態だけが存在し得る。主要な役割は、無限増殖によって生命の存在を維持することであった。この状態は、単に複製指向的であったため、複雑な構造の発達及び複雑化した作業分担は可能でなかった。アルファ状態にある全ての生物は、自律的であり、互いに競合し、生物間に協調的な伝達は存在しない。分子状酸素が後に存在することによって、生命のベータ状態が生まれた。酸素は、より高値の電荷を交換することを可能にし、不飽和タンパク質は、より複雑な相互作用を可能にし、生命の多様性を始動させた。この状態の細胞は協調的であり、増殖のみからなる役割はより複雑になり、最適なエネルギー消費、生命に対する最適調整についての多様性を含んだ。これは、酸化的ATP産生のためにミトコンドリアを統合した段階であるため、高い効率でエネルギーを生成する。
【0044】
アルファ状態は生命の基本状態である。この状態では、利用可能な最大エントロピーは利用可能な最低自由エネルギーを伴う。全ての複雑な生体系は、不安定になると、容易にこの基本状態に変化され得る。その後、単純な物理的強制(低い自由エネルギー及び高いエントロピーを求める)によって、細胞は、アルファ状態を再び実現しようと(少なくとも部分的に)試みる。再び、系(又はその一部)は、高い自律性及び増殖率を有する細胞を含む。簡単な比較によって、セント・ジョルジの陳述及びワールブルクの代謝経路は一般的である。すなわち、アルファ状態及びベータ状態は、発酵的代謝及び酸化的代謝にそれぞれ対応する。換言すれば、アルファ状態は宿主細胞ATP産生(嫌気性)を好み、一方、完全なミトコンドリア機能が働くときはベータ状態である。これらの状態は混合され(細胞は両方の代謝活動において働く)、それらのカテゴリの量の問題だけである。通常のホメオスタシスでは、ベータ状態特性は約70%である。実際のバランスは実際の状態を決定する。バランスは、同時実施可能性(co−operability)(アルファ⇔ベータ)の細胞状態によって定式化され得るか、代謝方法(発酵⇔酸化)によって定式化され得るか、又は、代謝の作用部分(宿主細胞⇔ミトコンドリア)によって定式化され得る。全ての定式化の意味は同じである。すなわち、実際のエネルギー状態が記述される。エネルギーの流れと同時実施可能性との間の興味深い関係に留意されたい。高いエネルギーの流れは、細胞を協調的でなく、より原始的にさせ、一方、低いエネルギーの流れは、細胞を協調的にさせるだけでなく複雑化させ、エネルギー産生において、また環境適応においても、非常に効果的である。
【0045】
幾つかの最新のアプローチが、生体の複雑さ及びその説明に関して過去数十年間で開発されている。これらの基本カテゴリは、相互に結び付けられ、自己組織化、フラクタル生理学、及びバイオスケーリングとして集団性の記述を使用する。これらのモデル及び記述の全ては、制御されたエネルギー燃焼に結び付けられる。生命は、エネルギー使用の制御を有し、そうでなければ、化学物質が、系の持続的なエネルギー支援の代わりに、爆発に似たインパルスを作る突然かつ同時の反応を有することになる。エネルギー放出に関連する化学物質は、種々の方法で反応場所に輸送されるため、輸送特性が、エネルギーバランスを定める。代謝活動は、細胞内から有機体までの全ての範囲の生命体においてスケーリング挙動を有する。試薬の化学反応及び輸送は、全ての生きている細胞内でかなり統合された信号変換であるため、それらのスケールに関係ないネットワークは驚くにはあたらない。全ての反応は、表面制御式であるため、本発明者は、質量によるスケーリングについての指数を2/3と予想する。生物の質量は体積依存性があり(3によるスケーリング)、一方、表面は2によってスケーリングされるだけである。しかしながら、代謝の質量依存性スケーリングは、生命が4次元であるかのように、3/4に従う。バイオスケーリングは、系のエネルギー供給に依存するため、健康機能に関して必要とされる集団性をうまく記述する。
【0046】
スケーリング理論に基づいて、腫瘍形成性の増殖についての一般的なモデルが導入され論じられてきた。全ての健康な系は集団的に組織化されているが、これは、癌化プロセスによって破壊される。癌腫は、少なくともより大きなサイズでは、最適な栄養供給の中で決して起こらず、細胞は、利用可能なエネルギー源について激しく競合しており、個々に作用しており、自律的である。そのことは、代謝率が培養される質量に依存しない(スケーリングを全く持たない)場合の細胞培養実験から明らかである。そのことは以下をよく示している。すなわち、スケーリングは、協調的で集団的な構造の挙動であり、継代培養により栄養が事実上無限に利用可能である場合には現れない。これは、癌細胞に関する自律性の問題を提起する。おそらく、悪性化の始まりにおいては、状況は、「反乱」細胞に関する栄養の無限の利用可能性に相当する。しかしながら、「個々の細胞」の数の増大によって、栄養が制限され始める。この段階では、一部の協調的特徴が少なくとも消滅し、弱い又は内部のメンバの「コロニー」が現れる。(アリのコロニーの発達もまたこのタイプの組織化をサポートすることを研究されたい。)これは、分子線エピタキシ(MBE)との類似性によって説明される線形増加によって理論的かつ実験的に定式化された。増殖は、自由表面上で最も多く観測され、これらのサイズは、増殖活動を決定する。
[療法]
意外にも、ホメオスタシスから取得される位相情報が、ホメオスタシスを健康的な平衡状態に復帰させるために、患者又は患者の身体の一部等の標的についての個別化治療及び診断を設計するために使用され得ることが見出された。
【0047】
一般的なハイパーサーミアデバイスを使用する療法と本発明のRFハイパーサーミアデバイスを使用する療法との相違点は次の通りである。すなわち、
・一般的なハイパーサーミア療法では、標的を局所的に加熱するために、単純に熱を生成するアンテナ配置構成によって生成される放射結合を使用する。これは、通常は侵襲的条件下での、局所的な熱の投与であり、治療効果は、RF電流の生成熱によって得られるのみである。
・対照的に、本発明のRFハイパーサーミア療法では、コンデンサ配置構成における伝導性結合を使用し、低周波数を使用し、位相情報を取得する。すなわち、位相コードが、標的のホメオスタシスに関する情報を提供し、したがって、本発明のRFハイパーサーミアデバイスが、標的のホメオスタシスを健康的な平衡状態に復帰させるために変調済のRF信号を印加することを可能にする。そのため、標的のホメオスタシスの段階に応じて、本発明のRFハイパーサーミア療法は、患者、或いは、患者の器官、身体部分、又は身体部位等の患者の領域等、標的のホメオスタシスの位相情報に基づいて個別化治療を可能にする。
【0048】
用語「標的」とは、本明細書で使用される場合、本発明による無線周波数ハイパーサーミアデバイスによって治療される対象(すなわち、患者、人間又は動物)を指す。そのため、好ましい標的は哺乳類、更により好ましくはヒトである。
【0049】
用語「標的領域」又は「負荷」は、本明細書で使用される場合、無線周波数波に曝露される標的の身体部分を指す。本発明の無線周波数ハイパーサーミアデバイスを使用する無線周波数波の投与が侵襲的でないという利点を有するため、「標的領域」又は「負荷」は、電極間、又はより具体的には、コンデンサ配置構成の電極間に配置される標的の身体部分に対応する。この身体部分は標的領域を含む。すなわち、この身体部分は、悪性の又は疾病のある又は疼痛のある領域又は組織又は細胞を含むが、健康な組織及び健康な細胞も含む。しかしながら、健康な組織及び健康な細胞は、本発明のデバイスによって投与される無線周波数波によって影響を受けない。
【0050】
用語「標的組織」は、悪性の又は疾病のある又は疼痛のある組織又は細胞を指す。そのため、「標的領域」又は「負荷」は、電極間に配置され、無線周波数波に曝露される患者の身体部分である。
【0051】
有効な療法は、ホメオスタシス制御に適合しなければならず、複雑なフィードバックループにとって有益でなければならない。有効な療法は、身体の内部補正作用が健康な状態を再確立することを手助けしなければならない。疾病が認識されると、医療アプローチのほとんどは、状態(食事療法、薬剤、他の供給物)を変更することによって作用し、以前に有効に働いていた平衡状態に身体を強制的に戻そうと試みる。
【0052】
しかしながら、多くの場合、本発明により実際に適用される療法は、生得のホメオスタシスに抗して作用する強制を含む。生きている有機体は、疾病との闘いと共に、適用される強制とも闘い始める。例えば、古典的なハイパーサーミアでは、新たな強制された作用を導入し、加熱により生得のホメオスタシスから逸脱させる。この強制は、生理的フィードバックを誘発し、身体が「2つの戦線」で、すなわち、疾病に抗して、また熱の作用に抗して闘うことを強制する。
【0053】
疾病が認識されると、我々は、我々の医療知識に基づいて行動し、多くの場合、生得のホメオスタシスに抗するように働きかけ、その強制された作用が、新たなホメオスタシスの負のフィードバックを誘発する。身体は、疾病と共に、その強制に抗して闘い始める(図7参照)。この争っている状況は、古典的なハイパーサーミアを用いると起こり、そのとき、強制的な大きな温度変化は、生理的に下方調節される(又は、少なくとも生理的機能は、全身的[血流のような]反応及び局所的[HSP発現のような]反応によって温度変化に抗して働く)。
【0054】
本発明による治療(本明細書で「オンコサーミア」と呼ばれる)は、古いアプローチを放棄し、新しいパラダイムを導入する。すなわち、微小加熱を適用することで、作用に抗して働く生理的フィードバックをかなり少なくさせ、また、電界を印加することで、身体が生理的応答を全く持たない効果を使用する。この新しいパラダイムによって、オンコサーミアは、生得のフィードバックメカニズムが健康状態を再確立することを手助けする(図8参照)。
【0055】
細胞のアルファ状態及びベータ状態は、電気的観点から異なるため、適切に印加される電磁効果は、状態を変化させ、バランスを、一方の又は他方の動的状態に押しやる。実際の治療の有効性を改善するこのタイプは、光力学的プロセスにおいて認識されている。
【0056】
正常な健康状態では、身体はホメオスタシス状態にある。自然療法は、身体の内部補正作用が健康状態を再確立することを手助けしなければならない。この状態における全ての信号のエントロピーが同一かつ一定、すなわちS=1.8であることを本発明者は示した。ホメオスタシスの状態では、制御信号の変動は、健康な有機体における時間フラクタルなパターンを示す一定の帯域内に留まる。加齢又はストレスプロセスは、高周波数部分を削除し、フラクタル指数をより高い値に移動させる。
【0057】
全ての治療は、ホメオスタシス制御に関してアクティブでなければならず、その結果、所与の人の個々の挙動として個人のホメオスタシス平衡状態を使用することによって、個別化されなければならない。ホメオスタシス制御は、全ての組織化された有機体内に時間フラクタル変動を有し(時間フラクタルは、通常、そのパワー密度関数によって1/fピンクノイズである)、広い周波数範囲内で系全体にわたって変動の制御用限界を保証する。
【0058】
最も重要な時間フラクタル変動は、健康的な制御の特性であるピンク(1/f)ノイズである。全ての健康なホメオスタシスはこうした変動を有するが、全ての制御が同じであることを意味するわけではない。単純な例としては、音楽の全ての高調波要素の解析がピンクノイズをもたらすが、高調波要素はその実際の音が非常に異なることが挙げられる。音楽は単純な1/fノイズではない。音楽は、複雑化された(複雑な)時空間構造である。つまり、単純な記述は存在しない。しかしながら、音楽は、十分に認識可能な少数の主題(テンプレートのような構造)によって特徴付けられ得る。1/fスペクトルは、全ての楽曲のまさに特徴ではあるが、音のその後の並び(rank)はもちろん異なる。主題から構築されるテンプレートは、空間内のフラクタル構造に類似している。音楽の物理的な実現は、時間変動性圧力場である。音楽は、一定のリズム、変化する振幅、時間間隔、高調波、周波数及びそのグループの出現率及び頻出性によって変化する特性を有する。こうした構造のパワー密度スペクトルはピンク(1/f)である。
【0059】
職業作曲家は、必ずしも耳に伝わる感覚を「聞いている」必要はなく、簡単な想像力によって音楽を「聞く」ことができる。幾何学的フラクタルとしての楽譜は、同じフラクタル様音楽を聞くことと同等である、そのような脳プロセスを生成する。典型的な例では、耳が聞こえない作曲家(ベートーベンは晩年にそうであった)にとって、聴覚自体は、音楽を「イメージする」ために必要ではなかった。幾何学的フラクタルは、ピンクノイズ圧力変動が耳の膜組織において行うのと同じイメージを脳内で生成することができる。しかしながら、全てのピンクノイズが心地よい感覚を作り出すわけではない。種々の感覚(主に視覚)は、感覚という客観的コンテンツからはほど遠い幻覚を作り出し得る。こうしたものは、例えば、「フラッシュラグ」効果及び何らかの他の目の錯覚である。多数の幻覚が、ピンクノイズが非常に有効であるものについてノイズだけによって生成され得る。これらの1/f誘発型脳プロセスは、思考の知覚から来るものではない。人間は、思考、感覚、情緒が遮断されると、トランス状態に陥る可能性がある。この状態では、非常に混沌として心地よいイメージが、脈絡なく生成され得る。この状態は、おそらく、有機体全体にわたって自己組織化された状態を優位にする。自己組織化ノイズの増加は、知覚できない。その理由は、内部の全身性信号が、感じる可能性の範囲外にあるからである。この自己組織化ノイズは、通常の感覚の範囲外になければならず、そうでなければ、範囲外信号を、全体のノイズバックグラウンドからフィルタリングできないであろう。
【0060】
自己相似性に対する自明のエネルギー基準の付加がピンクノイズパワー密度スペクトルを与えることを本発明者は以下で証明する。自己相似性関数は、f(t)であり、
【0061】
【数14】

有限二乗積分を仮定すると、複素関数も可能にする、
【0062】
【数15】

である。これは、物理的に、探索内の自己相似対を意味する。この基準は、とにかく、信号のエネルギーが有限であり、それが、全ての物理的信号についての単純で現実的な仮定であることを意味する。こうした信号の自己相似指数は、k=−1/2であり、
【0063】
【数16】

ここで、置換t=τzが適用された。この指数は、自己相似関数のフーリエ積分が自己相似であるため、
【0064】
【数17】

であり、また、ウィーナー・ヒンチン(Wiener−Khinchinとしても知られる)の定理、
【0065】
【数18】

によって1/fパワースペクトルを特徴付ける。
【0066】
無制限の長さの定常信号の場合、有限エネルギーを保証することができない。これらの場合、平均パワーは単に有限である。
【0067】
【数19】

信号が定常的でかつエルゴード的であるとき、相関関数は、有限の平均パワーが存在するため限界を有する表現から形成され得る。
【0068】
【数20】

T時間長による表現の場合、f(t)は、
【0069】
【数21】

である。
【0070】
[数22]であることが妥当である。
【0071】
【数22】

T長表現のフーリエ変換は、
【0072】
【数23】

である。
【0073】
T長表現のΦ(ω)平均パワー密度は、自己相関関数のフーリエ変換を求める。
【0074】
【数24】

その逆も同様であり、平均パワー密度の逆フーリエ変換は自己相関関数である。
【0075】
【数25】

その結果、平均パワーは、確率的信号に関してウィーナー・ヒンチン定理である。
【0076】
【数26】
【0077】
【数27】

[数27]を(24)に代入すると、
【0078】
【数28】

が得られる。
【0079】
その結果、α=−1である。
1/fノイズのパワースペクトルがΦ(ω)であるとき、
【0080】
【数29】

である。
【0081】
したがって、パワー密度スペクトルは、信号とその共役との積であり、確率的信号の時間表現は、
【0082】
【数30】

である。ここで、φ(ω)は、任意関数であり、決定的又は確率的(ランダム)の両方であり得る。後者の場合、関数は、その分布関数によって特徴付けられ得るであろう。関数によって表される確率的プロセスがエルゴード的であるとき、関数は、その相関関数によって、又は、そのパワー密度スペクトルのフーリエ変換によって特徴付けられ得る。これは、おそらくはφ(ω)のパワースペクトルが1/fであることを仮定した、その後の置換可能性等である。ランダム変数は、単に振幅のφ位相であり得る。この意味で、1/f信号は、実際の分布を識別するそのφ位相において異なる。位相φが情報のキャリアであることから、その分布は生物学的効果の重要な特性であり、よって、位相の分布は治療の個別化が基にするパラメータである。
[個別化]
ホメオスタシス平衡状態は、複雑系において、作用対を用いる複数のフィードバックプロセスによって設定される。健康な場合の制御は、一定の変動帯域内に留まる。この変動のパワー密度関数は、理想的なシステムにおいて1/fスペクトルを示す。しかしながら、情報は、パワー振幅の位相内に「隠される」。位相コード化分布は、個別化され、十分に区別可能であるが、それらのパワー密度関数は、全ての場合に同じ1/fスペクトルを示す。その状況は、音楽の場合と同じである。すなわち、全ての楽曲のパワー密度関数は1/fピンクノイズであるが、当然、全ての楽曲は、特有の特性を有し、互いに明確に異なる。
【0083】
この技術的教示は、実際の治療を個別化する可能性を与える。また、この位相コードの変化の観察は、実際の個体に対して予測的制御を行う可能性を与える。この位相情報は本本発明の核心である。
【0084】
治療は、種々のキャリア(任意の電磁的信号、機械的信号、又は他の信号であり得る)に対する変調として適用される、個別化された(位相コード化された)1/fノイズとなる。
【0085】
個体は、統合された(個別化された)位相コードを有する。その理由は、その完全な有機体が、微視的プロセスから巨視的プロセスまで、このコードによって制御されるからである。この生理的制御は、実際の随意神経制御から独立しており、実際の複雑系のホメオスタシスによってコード化されなければならない。
【0086】
実際の位相コードは、種々のホメオスタシス変動の相互相関関数によって計算され得る。実際の個体の位相コードは、その有機体に特徴的であり、健康な若者において採取される信号は、実際のホメオスタシス状態の発生の基準であり得る。
【0087】
種々のキャリア波によって治療され得る疾病の場合、位相コード化されたフラクタル変調は、ホメオスタシス制御を再確立する助けとなるであろう。最もよく研究されておりかつ十分に説明される1/f変動の1つは、心拍動R−R間隔(ECGにおけるR波−R波間隔)である。この個人に関する変動の変調は、治療情報についての最も容易な個別化の1つであり得る。13.56MHzキャリア周波数が個別化ノイズによって振幅変調される本発明のハイパーサーミアデバイスにおいて特に適用される変調は、本発明の主要な態様である。この個別化は、血流が有機体の全ての部分に全てのエネルギー成分を送出するため、エネルギー源の変動に結び付けられる。
【0088】
他の信号もまた可能である。十分に研究されている複数の信号は、1/fノイズ変動を有し、身体からのEEG又は他の電気信号でさえも使用され得る。しかしながら、最良の変動は、随意的状態から独立している変動である。REM睡眠におけるECG又はEEGのような電気信号によって測定され得る、器官の制御の生得の変動は、選択すべき良好なパターンであり得る。
【0089】
幾つかのより高度な方法が、個別化のために選択され得る。癌治療の場合、ホメオスタシス情報は、腫瘍組織の健康な対応物から採取され得る。組織の2D又は3Dパターンは、細胞間の特徴的な(平均的な)距離を有する擬似周期的パターンと考えられる可能性があり、この値の周りで、特有の変動が観察され得る。そのため、健康組織の病理学的構造は、癌を有する同じ器官の組織についての基準と考えられ得る。したがって、健康組織のフラクタル構造は、時間フラクタル構造に変換され得る。その変換は、ジャカード織機又は古いバレルオルガンに類似しており、構造の種々のポイント(穿孔を有する帯状体又はバレル)が、種々の構造ユニットの対応する音によって他の構造又は音に変換される。例えば、図14Aに表示されるようなパターン構造は、図14Bに表示されるような、グリッドの種々の色(及び影)が異なる音(周波数)に対応するグリッドをパターン構造の上に置くことによって、また、フラクタルノイズ内で連続的に行ごとにイメージを読み出すことによって、変換され得る。この特有のフラクタルノイズは、パターン構造に特徴的であるが、時間に変換されることになる。任意の構造が、こうした方法で作られ、非常に個別化された変調用の所与の組織のホメオスタシス信号として使用され得る。
【0090】
そのため、幾何学的(空間的)変動は、時間スケールに変換されると、位相パターンである。この時間変換は、特徴的な空間距離について周波数を固定するときの最も簡単な方法であり、距離変動は、線形又は対数(生理的投影)スケールによって、変換済の周波数範囲において測定される。
【0091】
本発明者は、時間フラクタル構築のための特殊な人工テンプレートを構築することもできる。これらのテンプレートは、同様に、空間フラクタルとして構築され、その結果は、常に1/fであるが、異なる位相コーディングを有する。
【0092】
組織の形態から始まる信号の生成と同様に、EMG及び膜イオンチャネルの信号もまた、測定され、ホメオスタシス信号として使用され得る。
この方法は、変動が変形されて制御のホメオスタシス限界を失うときを認識する診断にも使用され得る。
【0093】
パワースペクトル自体はノイズを特徴付けない。すなわち、時間関数の多くは同じパワースペクトルをもたらし得る。しかしながら、これらのノイズは、いずれにしても等しい振幅を有するそれらのフーリエ成分の位相において異なり得る。決定論的時間関数t−1/2の特別な場合、ノイズの位相は、同期され、1/fスペクトルを有する。ここで、フーリエ成分の振幅の位相は、厳密に同じであり、位相は「同期している」。これらのノイズの他の特定の部類では、位相が決定論的であるときに、例えば、それらを一定周波数の組によって生成する。最も広い部類は、位相がランダム変数であるときである。
【0094】
1/fノイズの位相関数が分かっている場合、よく知られているフラクタル音楽でも使用される1/fを作ることができる。例えば、空間内でコッホ又はヒルベルトフラクタルを構築する(図9)。少数の反復ステップの後に、サブフラクタル部分を有する(図10)。
【0095】
離散的位相関数は、容易に構築され得る(図11)。フラクタルの出発点及びスケールは任意であるため、時間フラクタルもまた任意であり得る。
[RFハイパーサーミアデバイス]
本発明は、容量結合を使用する、個別化治療、個別化予防、及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに関し、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される。
【0096】
用語「個別化される」が不明確であると考えられる場合、本発明者は、本発明が、容量結合を使用する、治療、予防、及び診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに関すると述べることができ、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される。
【0097】
したがって、本発明によれば、信号の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される変調信号入力/発生器のみが使用され得る。従来の無線周波数ハイパーサーミアデバイスはいずれも、信号の位相情報、又はより厳密には、標的(17)のホメオスタシス平衡状態の変動のパワー密度関数のパワー振幅の位相の位相コードを使用できる構成要素を備えていない。
【0098】
「予め取得された位相情報」という文脈における用語「予め」とは、位相情報を比較する前の定義された時間間隔において検出器(3)によって検出される位相情報、又は、位相情報を比較する前の異なる指定された時間間隔で検出される幾つかの位相情報の平均、又は、位相情報を比較する前の本発明の無線周波数ハイパーサーミアデバイスによる進行中の治療において検出されるすべての位相情報の平均を指す。そのため、「予め」という用語は、「予め取得された」位相情報が比較されるべき位相情報、すなわち現在の位相情報の前に取得又は測定された、1つの位相情報、又は複数の単一位相情報、又は2つ以上の又は複数の単一位相情報もしくは全ての位相情報の平均位相情報を指す。
【0099】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、ダイポールアンテナが無い。フィードバック信号(5)が増幅される必要がある場合、フィードバック信号(5)を増幅するためのフィードバック増幅器(6)を、本発明のデバイスにおいて使用することができる。
【0100】
フィードバック増幅器(6)が存在する場合、本発明は、容量結合を使用する(そしてダイポールアンテナが無い)、個別化治療及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに関し、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、フィードバック増幅器(6)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0101】
更に、本発明による無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、変調信号入力/発生器(13)によって生成される変調をフィードバック信号(5)に適合させるための逓倍器(11)を備えていてもよい。逓倍器(11)は、好ましくは、フィードバック増幅器(6)と変調信号入力/発生器(13)との間に配置される。電子制御の幾つかの要素は共に組み合わされてもよく、あるいは一体化されてもよい。
【0102】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスの2つ以上の要素の機能を組み合わせることも可能である。例えば、変調信号入力/発生器(13)及びフィードバック増幅器(6)は、増幅及び変調がデバイスの1つの要素によって実施されるように組み合わされ得る。このような場合、変調信号入力/発生器(13)は、フィードバック信号(5)の増幅も行うことができ、変調信号(12)を生成するためにフィードバック信号(5)の変調も行うことができる。
【0103】
フィードバック信号(5)の増幅、信号(5)の変調、及び、変調信号入力/発生器(13)によって生成される変調のフィードバック信号(5)への適合がデバイスの1つの要素によって実施されるように、変調信号入力/発生器(13)、逓倍器(11)、及び増幅器(6)が1つの要素内で組み合わされることも可能である。
【0104】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、電極間の容量結合、及び、患者の標的又は標的組織を通って同様に流れるRF電流を使用し、その一方で、電極間の患者の身体部分は、不完全な誘電体材料として作用し、標的組織は、標的組織を通る電流の熱への変換並びに電界の効果のために使用される電位差によって生成されるジュール熱(Q=IR)によって加熱される。健康な組織内でなく、主に標的組織又は疾病のある組織内において熱が生成される選択性は、疾病のある又は標的の組織に対する健康な組織の導電率の差を使用することによって達成される。更に、ホメオスタシスの状態の位相情報は、疾病のある又は標的の組織に対する健康な組織の導電率の差を使用することによって取得され得る。悪性腫瘍組織等の標的組織は、健康な組織に比べて、高い複雑さ又は高い全体的な導電率を有し、その結果、健康又は正常組織と比較して、通過する電流の吸収率がより高いため、ジュール熱は、電流が標的組織を通過するときに大部分が生成される。
【0105】
従来のハイパーサーミアデバイスと比較した場合の本発明のRFハイパーサーミアデバイスの相違点を概説するために、以下の概要が準備された。従来のハイパーサーミアデバイスは、例えば米国特許出願公開第2004/0230263A1号明細書に記載される。しかしながら、該デバイスは、以下の特徴において本発明と異なる。米国特許出願公開第2004/0230263A1号明細書のデバイスでは、ダイポールアンテナ(放射結合)が使用される。放射RFは、吸収されるRF放射を使用することによって、患者を通して、又はより正確には標的組織を通して印加される。放射による解決策では、標的は回路から独立しており、進行パワーと比較して反射パワーを測定する定在波比(SWR)のみによってフィードバックが行われる。本発明のデバイスは、ダイポールアンテナを使用しない。すなわち、本発明のデバイスは、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対電極との間の患者の身体が誘電体材料であるコンデンサ配置構成を使用し、該誘電体材料は導電性回路の一部をなす。これは、回路の一部として標的の直接制御を可能にし、プロセスを制御するためのより的確かつ正確なフィードバックを生成する。本発明は、それぞれの身体断面を通してRF電流を印可するためのコンデンサ電極(容量結合)を使用する。標的内での最大吸収パワーは、特殊な調整プロセスによって最適化される。この従来のデバイスは、アンテナ間の位相シフト干渉及びその定在波放射の干渉を誘発して、所望のエリアにフォーカスを調整する。本発明は、それぞれの組織の導電率の差を使用し(例えば、悪性腫瘍組織は、健康な組織より高い導電率を有する)、したがって、フォーカスの自動的な選択をもたらし、ホメオスタシスに関する位相情報の取得につながる。これは、肺又は心臓等の拡張可能な器官に関して、又は、1時間を超える場合がある治療セッション中に患者が動く場合に、即座に結果をもたらす。従来のデバイスのフォーカスは、腫瘍の実際の位置に関係なく、以前にフォーカスされたスポットのままであるが、本発明では、RF電流が自動的に正しい方向に流れるため、標的の任意の移動に追従する。この従来のデバイスでは、標的は、放射エネルギーを吸収する、電気的に影響されない対象のように取り扱われる。本発明は、標的を、電気回路の一部として、共振回路内のコンデンサの誘電体材料として使用する。その結果、加熱プロセスは、異なる方式で実施され、制御される。この従来のデバイスは、有益な効果を達成するための唯一の加熱メカニズムとしてSAR(比吸収率)吸収エネルギーを使用する。本発明は、電流を熱に変換することによってジュール熱(Q=IR)を使用すると共に、電界の効果に関する電位差を使用する。従来のデバイスは、130MHzを超える周波数、通常は130MHzと2400MHzとの間の周波数を使用し、これに対し、本発明は、10kHzと50MHzとの間の、より好ましくは130kHzと42MHzとの間の、最も好ましくは値135.6kHz±5%、339kHz±5%、678kHz±5%、1.356MHz±5%、3.39MHz±5%、6.78MHz±5%、13.56MHz±5%、27.12MHz±5%、及び40.68MHz±5%の周波数を使用する。
【0106】
この従来のデバイスは、療法を再現し標準化するためのツールとしてのみ温度を制御する。対照的に、本発明は、療法条件の厳しい制御のために、吸収エネルギー(J/kg)及び患者の導電率(S=1/R)を使用する。この従来のデバイスは、療法の成功が、達成される温度に関連する熱の効果に依存するのみであることを暗黙的に前提とする。こうした方法によって、主に壊死が標的組織内に生じる。しかしながら、本発明は、電界の効果によって低い温度でアポトーシスを引き起こすため、壊死が起こる高い温度を達成することを必要としない。そのため、本発明のデバイスは、アポトーシスを誘発する、かつ/又は、引き起こすことによって、腫瘍性又は悪性の組織、癌、腫瘍、及び特に充実性腫瘍を治療し、その一方で、放射結合を使用する一般的なデバイスは壊死を誘発する。本発明のデバイスは、放射結合を使用せず、電極間の患者、特に患者の組織を使用し、該組織は、電気回路の一部としての誘電体材料又は誘電体(dielectricum)として、標的組織とも呼ばれる疾病のある組織を含む。
【0107】
しかしながら、知られている全てのハイパーサーミアデバイスにとって最も重要な相違点は、標的領域のホメオスタシスによって生成され得る標的内のホメオスタシスの位相情報、及び測定済のホメオスタシス信号の位相情報を使用することである。そのため、本発明は、容量結合を使用する、治療、予防、及び診断のための、又は、個別化治療、個別化予防、及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに言及し、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的領域(17)のホメオスタシス平衡状態の変動のパワー密度関数のパワー振幅の位相の位相コードの変化を検出し、この位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供するように適合され、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0108】
換言すれば、本発明は、容量結合を使用する、治療、予防、及び診断のための、又は、個別化治療、個別化予防、及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに関し、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的領域(17)のホメオスタシス平衡状態の変動のパワー密度関数のパワー振幅の位相の位相コードにおける差を使用するように適合され、この位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0109】
しかしながら、本発明のデバイスが、フィードバック増幅器(6)無しで又は変調信号入力/発生器(13)無しで動作することも可能である。これは、混合式スペクトル変調をもたらすことになり、混合式スペクトル変調は、疼痛管理、中枢神経系の疾患、及び、細胞と身体部分との生物学的情報の交換が不完全である他の障害等、腫瘍治療以外の用途のために使用されることができ、また使用される。熱による鎮痛は、古代の医師によって既に観察されており、ハイパーサーミア適用及び電界(TENS効果)によっても達成され得る。腫瘍を有するすべての患者は、本発明のデバイスを使用した治療についての鎮痛を経験しており、それらの患者は、リラックスした好都合な治療時間を報告しており、ほとんどの場合、患者は、1時間の治療プロセス中に眠りに落ちる。
【0110】
対照的に、従来のデバイスでは変調が全く導入されない。従来のハイパーサーミアの目標は、使用できる最高温度に到達することであり、また、ソースキャリア周波数が十分になることのためである。
【0111】
変調信号(12)によるソース信号周波数(8)の変調は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0112】
フィードバック信号(5)及び測定済のホメオスタシス信号(19)から獲得される付加的情報は、単純な非選択的出力治療と比較して情報の増加を可能にする。この情報は、実際のエネルギー分布を選択して最適化し、標的組織に送出される実際のエネルギーをより効率的にすることを可能にする。その結果、本発明のハイパーサーミアデバイスは、腫瘍性組織、癌性組織、悪性組織、炎症を起こしている組織、あるいは、正常又は健康組織とは識別可能な組織であり得る標的組織を選択的に加熱することができる。本発明のデバイスは、区別することなく標的組織と正常又は健康組織の両方を含む身体領域を非選択的に加熱しない。その結果、本発明内で使用される変調は、標的組織の特異性、そして結果として標的組織内での熱の選択的な生成を増加させ、その一方で、周囲の正常な又は健康な組織の加熱又は不必要な加熱が回避されるか、又は著しく減少され得る。
【0113】
従来のデバイスを使用する腫瘍組織のハイパーサーミア治療の場合、電力のみで健康組織と腫瘍組織の両方を非選択的に加熱し、所与の周波数、電力、そしてもちろん標的材料についての電磁波の吸収法則に従ってすべての組織を加熱する。そのため、古典的なハイパーサーミアでは、組織全部が加熱され、成功は、熱に対する健康組織及び腫瘍組織の異なる感度に依存し、その一方で、腫瘍組織の周りの健康組織を加熱することは、血流が増加する結果として疾病のある組織に対する栄養素の供給増加に起因して、腫瘍の成長及び癌細胞の増殖を支援する。それゆえ、疾病のある、特に腫瘍性又は癌性の組織近傍の健康組織を加熱することは所望されない。
【0114】
そのため、本発明は、重要な相違点を示す。すなわち、入力エネルギーは、情報を搬送し、少なくとも標的となる細胞構造の選択的因子との協働において選択的である。したがって、本発明のデバイスを使用すると、標的組織にエネルギーをフォーカスすることは、古典的なハイパーサーミアの場合ほど重要ではない。その理由は、本発明のデバイスが、自己選択、すなわちある形態のオートフォーカスを可能にするからである。
【0115】
その結果、本発明はまた、変調フィードバック回路を対象とし、該変調フィードバック回路は、フィードバック信号(5)を増幅するためのフィードバック増幅器(6)と、好ましくはしかし任意選択で、変調器(9)に更なる変調済信号(12)を提供する逓倍器(11)と、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較するように適合される検出器(3)と、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される変調信号入力/発生器(13)と、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成された変調信号(12)を受信するための変調器(9)とを備える。そのため、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成される。
【0116】
この変調フィードバック回路は、腫瘍、癌性疼痛、偏頭痛、及び中枢神経系の疾病の治療及び後治療のために、並びに、疼痛、偏頭痛、癌形成、腫瘍形成、及び中枢神経系の疾病の発症の予防のために有用な本発明のRFハイパーサーミアデバイスの製造のために使用される。
【0117】
本発明はまた、導電性電極間にRF電流を強制的に流す、導電性電極による容量結合を使用し、また、ダイポールアンテナが無い、(個別化)治療、(個別化)予防、及び(個別化)診断のためのRFハイパーサーミアデバイスに関し、該RFハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、変調器(9)と、検出器(3)と、任意選択でフィードバック増幅器(6)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、存在する場合にはフィードバック増幅器(6)にフィードバック信号(5)を提供し、フィードバック信号(5)は、増幅済のフィードバック信号(7)を生成するために増幅が必要である場合、フィードバック増幅器(6)によって増幅され、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)又は増幅済のフィードバック信号(7)を変調することによってフィードバック信号(5)又は増幅済のフィードバック信号(7)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0118】
そのため、本発明の必須の要素は、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、変調器(9)と、検出器(3)と、変調信号入力/発生器(13)である。更に、フィードバック増幅器(6)の存在もまた好ましいが、これは必須の要素ではない。全ての更なる要素は、任意選択的に設けられるものであり、必ずしも要求されないが、好ましい特定の実施形態について必要とされる。
【0119】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、図12及び13を参照して説明される。図12及び13の本発明のRFハイパーサーミアデバイスの要素の符号は、次の通りである。
(1):固定式の安定した水晶発振器により選択された周波数(好ましくは13.56MHz)を提供する信号発生器(発振器−無線周波数源)、
(2):伝導加熱のために必要なエネルギー供給を提供する増幅器(RF)であって、チューナが個々の患者についての伝導を最適化する、増幅器(RF)、
(3):ソースの進行パワー及び標的の反射パワーを制御するフィードバック検出器(電流/電力)信号サンプリングユニット(RF電流検出器)、
(4):x(t)−標的組織における治療に関与する増幅済かつ変調済の信号(増幅された、標的用に修正された信号)、
(5):複素形式で実際の治療の情報を搬送し、その制御に寄与するフィードバック信号、
(6):更なる使用のために所望のレベルまでフィードバック信号を増幅するフィードバック増幅器、
(7):増幅済のフィードバック信号、
(8):F(t)−変調器(9)によって変調される振幅に対応する(好ましくは、13.56MHzの)パワーRF信号であるキャリア信号、
(9):振幅の変化に影響を及ぼす変調器、
(10):変調済のソース信号(標的用に修正された信号)、
(11):それぞれのフィードバックに変調を適合させる逓倍器(変調に対するフィードバック補正)、
(12):(好ましくは、13.56MHzの)キャリア波によって搬送される「情報」を表す変調信号、
(13):測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合され、変調信号を提供する信号又は変調信号発生器の入力、
(14):任意選択で設けられる、制御のために信号振幅を検知する信号チェックユニット(パワー/電流検出器)、
(15):任意選択で設けられる、基準信号(P(t))に対する比較器であって、基準との比較によって信号を制御する比較器、
(16):任意選択で使用される、信号レベルを固定するための安定した信号としての基準信号(P(t))、
(17):負荷又は標的領域は、一般に、無線周波数波に曝露される標的の身体部分である。
(18):RFグラウンド、グラウンドレベルは必ずしも一般的なグラウンド(アースグラウンド)と同一ではない。このグラウンドは、RF信号のそれぞれの電位分布によって、その波長の関数として修正される。
(19):(ECG、EEG、EMG、膜イオンチャネルの信号、又は組織の形態を発端に生成される信号等のような)測定済のホメオスタシス信号。測定済のホメオスタシス信号(19)は、例えばECG又はEEGが測定されるときに標的の全身的ホメオスタシス信号の位相情報を提供するか、あるいは、組織(健康組織又は癌性組織)の形態を発端に信号(19)が生成されるときに標的の局所的なホメオスタシス信号の位相情報を提供する。好ましくは、信号(19)は、本発明による無線周波数ハイパーサーミアデバイスによる治療の前に好ましくは測定されるか、あるいは、信号(19)が全身的ホメオスタシス信号である場合、信号(19)は治療の前にまた治療中に測定され得る。
【0120】
本発明のデバイスの動作の以下の説明は、図12及び13に提供されるデバイスの動作のブロック図に基づく。図12及び13は、従来のハイパーサーミア治療を含む任意のRFハイパーサーミア治療について必要とされる主(パワー)回路と本発明のデバイスによって必要とされる付加的な変調回路の両方を示す。
【0121】
本発明はまた、コンデンサ配置構成において容量結合を使用する、個別化治療、個別化予防、及び個別化診断のための無線周波数ハイパーサーミアデバイスに関し、該無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備え、無線周波数源はソース信号(8)を生成し、ソース信号(8)は、変調信号(12)を使用して変調器(9)によって変調されて、変調済ソース信号(10)を生成し、変調済ソース信号(10)は、増幅器(2)によって増幅されて、標的領域(17)に方向付けられる増幅済かつ変調済の信号(4)を生成し、検出器(3)は、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供し、変調信号(12)は、フィードバック信号(5)を変調することによってフィードバック信号(5)から、変調信号入力/発生器(13)によって生成され、変調信号入力/発生器(13)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように適合される。
【0122】
この無線周波数(RF)ハイパーサーミアデバイスは、ホメオスタシスの変動を標的が健康状態にあったときの標的の或る範囲内にもたらすように、ホメオスタシスに影響を及ぼすために設計される。
【0123】
本発明の好ましい実施形態では、検出器(3)は、n>0の場合に、時刻Tn+1において取得された位相情報を、時刻Tにおいて検出器(3)によって検出される位相情報と比較するように構成及び/又は適合される。本明細書で使用されるときに、Tは、位相情報が検出器(3)によって検出される時点Tを指し、Tは、定義された時間間隔だけ時点Tn+1と異なる。例えば、時間間隔が1分として定義されると、nが4である場合、Tは4分であり、Tn+1は5分である。これは、Tが、定義された間隔に従って検出器(3)による位相情報のn番目の検出が起こる時点であることを意味する。
【0124】
好ましくは、検出器(3)は、増幅器(2)と標的領域(17)との間、又は、標的領域(17)とフィードバック増幅器(6)との間に位置する。
本発明による更に好ましい実施形態では、時刻Tn+1において取得される位相情報を、時刻Tにおいて検出器(3)によって検出される位相情報と比較するように、又は換言すれば、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出し、該位相情報を予め取得済の位相情報と比較して、フィードバック信号(5)を提供するように構成及び/又は適合される検出器(3)は、以下のアルゴリズム、すなわち、
【0125】
【数31】

を格納する。
ここで、
φ(ω)は任意関数であり、
φは振幅の位相であり、
Aは振幅である。
【0126】
このアルゴリズムは、フィードバック信号(5)を提供するために検出器(3)に格納される。
また、この実施形態では、フィードバック増幅器(6)の存在が好ましいが、フィードバック信号が十分に強く、増幅される必要がない場合、フィードバック増幅器(6)は必ずしも必要とされない。
【0127】
変調済のソース信号(10)並びに増幅済かつ変調済のソース信号(4)は、放射結合又は放射性結合によってではなく、容量結合によって標的に印加される。容量結合は、少なくとも2つの導電性電極間で、すなわち、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対電極との間で行われ、電極間にRF電流を強制的に流す。そのことは、RF電流が少なくとも2つの導電性電極間に流れることを意味する。そのため、本発明のデバイスは、対向する電極対間の伝導を使用し、アンテナを形成する電極間の放射を使用しない。したがって、無線周波数ハイパーサーミアデバイスは、標的領域(7)が誘電体材料であるコンデンサ配置構成において容量結合を使用する。
【0128】
そのため、本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、標的が誘電体であるコンデンサ配置構成において容量結合、交流(AC)及び無線周波数(RF)波を使用する。
対照的に、従来のRFハイパーサーミアデバイスは、アンテナ配置構成において放射性結合を使用し、熱を局所的に印加して、焼くことで組織を破壊し、したがって、著しい壊死を引起す。
【0129】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、現在のホメオスタシスに関する位相情報を取得し、疾病の兆候である任意の不平衡又は調整不良を検出し、標的のホメオスタシスを、標的が健康状態にあったときのホメオスタシスの段階にもたらすことによって疾病を治療するために、RF場を使用する。
【0130】
更に、本発明は、変調信号入力/発生器(13)を備えるRFハイパーサーミアデバイスに関し、変調信号入力/発生器(13)は、フィードバック信号(5)又は増幅済のフィードバック信号(7)を変調することによって変調信号(12)を生成し、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される。更に、変調を実施するために、かつ/又は、変調信号(12)を提供するために、式(16)、(17)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、及び(27)のうち少なくとも1つが変調信号入力/発生器(13)内に格納されることが好ましい。更に、フィードバック信号(5)を提供するために、アルゴリズム(27)の代わりに、又は、アルゴリズム(27)に加えて、式(16)、(17)、(22)、(23)、(24)、(25)、及び(26)のうち少なくとも1つが検出器(3)内に格納されることも好ましい。
【0131】
そのため、本発明はまた、変調信号入力/発生器(13)の使用に関し、変調信号入力/発生器(13)は、腫瘍、癌性疼痛、及び中枢神経系の疾病の治療及び後治療のためのRFハイパーサーミアデバイスの製造のために、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用するように構成及び/又は適合される。
【0132】
好ましくは、本発明による変調器(9)は、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報及び標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報に基づいてソース信号(8)の振幅及び周波数スペクトルを変調するように構成及び/又は適合され、ソース信号(8)は、周囲の健康組織ではなく標的組織が選択的に温められるか又は加熱されるように、標的組織についての選択性が高められるように変調される。そのため、変調器(9)は、変調器(9)が変調信号(12)によってソース信号(8)の振幅及び周波数スペクトルを変調することができるように製造されなければならない。変調信号(12)は、好ましい実施形態では、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を含む。
【0133】
本発明で使用するための好ましい周波数は、通常、キャリア周波数の10分の1までキャリア周波数を変調できるすべての周波数範囲にある。生物系の共振効果が可聴範囲内に存在するため、5〜20,000Hzの可聴範囲が最も好ましい。
【0134】
本発明で使用するための好ましい電力は、30〜1500Wの範囲にある。60〜250Wの範囲が最も好ましい。この範囲は、特に安全であり、病変部を加熱するために十分な出力を提供する。腫瘍サイズ(大きな腫瘍の場合)は、体積が1リットルを超えないものである。腫瘍を身体温度から40〜45℃まで(1時間当たり10℃未満の勾配で)加熱するために、250Wでさえ大き過ぎることになる。これは、著しい血液冷却効果をもたらす場合がある腫瘍内の高い血管新生の場合の備えに過ぎない。
【0135】
本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、腫瘍、癌、癌の転移、及び癌腫、並びに、中枢神経系の疼痛及び疾病の治療及び後治療において特に有用である。
本発明のハイパーサーミアデバイスは、局在的な標的領域を選択的に治療するために使用されることができ、局在的な標的領域は、腫瘍性の組織及び筋肉組織、又は、例えば肝臓、肺、心臓、腎臓、脾臓、脳、卵巣、子宮、前立腺、膵臓、喉頭、消化管、及び女性生殖器管等の器官から選択される。
【0136】
腫瘍組織は、腺癌、脈絡膜悪性黒色腫、急性白血病、聴神経腫、膨大部癌、肛門癌、星状細胞腫、基底細胞癌、膵臓癌、類腱腫、膀胱癌、気管支癌、非小細胞性肺癌(NSCLC)、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮体癌、CUP症候群(原発不明癌)、大腸癌、小腸癌、小腸腫瘍、卵巣癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌型、ユーイング腫瘍、消化管腫瘍、胃癌、胆嚢癌、胆嚢癌腫、子宮癌、子宮頚部癌、子宮頚部腫瘍、神経膠芽腫、婦人生殖器腫瘍、耳、鼻、及び喉の腫瘍、血液学的腫瘍、ヘアリーセル白血病、尿道癌、皮膚癌、陰嚢癌(skin testis cancer)、脳腫瘍(神経膠腫)、脳転移、精巣癌、脳下垂体腫瘍、癌様体、カポジ肉腫、喉頭癌、胚細胞腫瘍、骨癌、結腸直腸癌腫、頭頚部腫瘍(耳、鼻、及び喉領域の腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口腔癌(口領域内及び口唇上の癌)、中枢神経系の癌、肝臓癌、肝臓転移、白血病、眼瞼腫瘍、肺癌、リンパ節癌(ホジキン/非ホジキン)、リンパ腫、胃癌、悪性黒色腫、悪性新生物、悪性腫瘍消化管、乳癌腫、直腸癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻腔癌、神経鞘腫、神経芽細胞腫、腎臓癌、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌腫、溶骨性癌腫、骨形成性癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌腫、陰茎癌、形質細胞腫、頭頚部扁平上皮癌(SCCHN)、前立腺癌、咽頭癌、直腸癌腫、網膜芽細胞腫、膣癌、甲状腺癌、シュネーベルク病、食道癌、棘細胞腫、T細胞リンパ腫(菌状息肉腫)、胸腺腫、管癌腫、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、いぼの出現、軟部組織腫瘍、軟部組織肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌腫、及び舌癌から選択され得る。治療に特に適しているのは、例えば、星状細胞腫、神経膠芽腫、膵臓癌、気管支癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌、胃癌、喉頭癌、悪性黒色腫、食道癌、子宮頚部癌、肝臓癌、膀胱癌、及び腎細胞癌である。
【0137】
本発明のハイパーサーミアデバイスは、細胞増殖抑制薬及び/又は細胞毒性薬を用いる化学療法と組み合わせて使用してもよい。幾つかの細胞増殖抑制薬及び/又は細胞毒性薬の例は、アクチノマイシンD、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリン塩基及びピリミジン塩基の拮抗薬、アントラサイクリン、アロマターゼ阻害薬、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン薬、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブセレリン(buselerin)、ブスルファン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、アルキル化細胞増殖抑制薬、ダカルバジン(dacarbacin)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソーマルドキソルビシン(doxorubicin lipo)、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸拮抗薬、ホルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン(goselerin)、ホルモン及びホルモン拮抗薬、ハイカムチン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、リュープロレリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、ミトシス、有糸分裂阻害薬、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン(procarbacin)、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼ阻害薬、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、細胞毒性を有する抗生物質である。遺伝子治療を含む現在のまた将来の全ての細胞増殖抑制薬又は他の薬剤が適用され得る。
【0138】
疼痛又は医療適用疼痛の治療、後治療、及び/又は予防には、癌によって引き起こされる疼痛、腫瘍関連の疼痛、慢性疼痛及び慢性疼痛疾患、頭痛、片頭痛、偏頭痛、神経痛、三叉神経痛、治療後神経痛、神経因性疼痛、持続性筋骨格痛、及び持続性内臓痛を含む。
【0139】
持続性筋骨格痛及び持続性内臓痛の兆候は、持続性背部痛、持続性頚部痛、持続性肩部痛、持続性関節痛、及び線維筋痛症を更に含む。
本発明のデバイスによって治療され得る疼痛は、癌、腫瘍、月経前症候群、乳房痛、過敏性大腸症候群に関連する胃痛、及びカルチノイド症候群に関連する疼痛によって引き起こされ、かつ/又は、それらに関連する可能性がある。
【0140】
疼痛事象は、3〜6か月より長く続く場合、慢性疼痛と呼ばれる。その原因は、悪性腫瘍やリウマチ性疾病等の治癒不能な疾病であり得る。しかしながら、疼痛と、その疼痛を最初に引き起こした障害又は疾病それぞれとの結び付きがもはや識別可能でないことが多く、あるいは、元の障害をもはや治すことができなくなっている可能性がある。更に、ストレスや天候の変化のような種々の環境的影響が、疼痛を引き起こすか又は増大させ得る。疼痛の慢性兆候は、異なる形態の疼痛を含むことが多い。
【0141】
背部痛(とりわけ、椎間板ヘルニア、神経根圧迫症候群の結果としての)、頭痛(とりわけ、片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛)、リューマチ痛(とりわけ、関節炎、線維筋痛症)、神経痛(とりわけ、三叉神経痛、帯状疱疹誘発痛)、腫瘍関連疼痛(とりわけ、脳腫瘍、骨転移)、変性疾患に起因する疼痛(とりわけ、骨粗しょう症、関節症)、及び幻肢痛(とりわけ、切断手術後、叢病変)が、最も頻出する形態の慢性疼痛として述べられる。
【0142】
慢性疼痛は、数年又は数十年の間続くことが多い。しばしば、慢性疼痛に悩む患者は、情緒的な問題を発症する。多くの疼痛患者は、不活発及び倦怠感に悩まされる。すなわち、疼痛患者は、絶望的でかつ自暴自棄な気分になり、不安感及び憂うつ感を訴え、自己評価が低くなる。こうした精神的徴候は、腸に関連する問題(下痢又は各種便秘)、膀胱刺激症状、めまい、呼吸困難、動悸、又は、胸部の圧迫感等の一般的で非特異的な身体的愁訴と同じように、慢性化の警告信号である。
【0143】
抹消神経系及び中枢神経系における異なるメカニズムが、慢性疼痛の原因作用に関係する。疼痛線維の鋭敏化及びそれらの局所的過剰興奮性は、実質的な病理学的メカニズムであり、その病理学的メカニズムは、慢性疼痛状態の原因作用の過程における抹消痛覚に関する限り関係がある。他の病理メカニズムには、痛覚のより大きな空間的拡張をもたらす、疼痛信号の長く続く増大及び脊髄領域内の通常は無症状の神経線維の漸増を含む。最後に、脳内で、数を増して末梢から到来する疼痛電位は、痛覚の増大及び疼痛処理の長期的変化の点で信号伝達の変化をもたらす。
【0144】
数分の間だけ続くときでも、激しい疼痛刺激は、疼痛刺激の伝達及び処理を増大させる持続的な構造的変化及び機能的変化をもたらし得る。これらの手順は、すべてのより複雑なニューロン学習プロセスにおいて観測され得るような細胞活動に類似している。その結果、それは、類似して疼痛記憶と呼ばれる。前記文脈で、疼痛記憶という用語は、全疼痛処理システムを通じて、起こった疼痛刺激の記憶痕跡を生成する神経系の能力を含む。
【0145】
そのため、本発明の別の態様は、疼痛管理のためのハイパーサーミア治療の改善された方法を提供するための本発明のハイパーサーミアデバイスの使用である。これらの場合、治療は、正常体温で、又は、少なくとも標的組織における温度上昇が無視できるほどであるように実施され得る。
【0146】
炎症性疾患の治療のために使用される場合、本発明のRFハイパーサーミアデバイスは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アルクロフェナク(alcofenac)、アセクロフェナク、スリンダク、トルメチン、エトドラク、フェノプレフェン(fenopren)、チアプロフェン酸(thiaprofenic acid)、メクロフェナム酸、メロキシカム、テノキシカム、ロルノキシカム、ナブメトン、アセトアミノフェン、フェナセチン、エテンザミド、スルピリン、メフェナム酸(mefanamic acid)、フルフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、プラノプロフェン、フロクタフェニン、ピロキシカム、エピリゾール、塩酸チアラミド、ザルトプロフェン、メシル酸ガベキサート、メシル酸カモスタット、ウリナスタチン、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン、ベンズブロマロン、アロプリノール、サリチル酸、アトロピン、スコポラミン、レボルファノール、ケトロラック、テブフェロン、テニダップ、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレナゾン(prexazone)、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコペン(cinchopen)、クロニキシン、ヂトラゾール(ditrazol)、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、グラフェニン、インドプロフェン、ニフルム酸、及びスプロフェン、又は、ステロイド系抗炎症薬、例えば、デキサメタゾン、ヘキセストロール、メチマゾール、ベタメタゾン、トリアムシノロン、フルオシノニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、ベクロメタゾンジプロピオネート、エストリオール、クロベタゾール、ジフロラゾン酢酸エステル、ハロベタゾールプロピオン酸エステル(halbetosal propionate)、アムシノニド(amicinonide)、デスオキシメタゾン、ハルシノニド、フランカルボン酸モメタゾン、フルチカゾンプロピオン酸エステル、フルランドレノロン、クロコルトロン(clocortalone)、プレドニカルベート(predincarbate)、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(aclometasone dipropionate)、及びデゾニド、等の抗炎症薬を用いた治療と組み合わせて使用され得る。
【0147】
本発明の別の態様は、上気道疾病のためのハイパーサーミア治療の改善された方法を提供するための本発明のRFハイパーサーミアデバイスの使用である。上気道感染は、最適成長及び深部体温よりも低い生存温度を有するウィルス及び細菌によって引き起こされる。したがって、これらの感染も、ハイパーサーミア療法を使用して治療され得る。例えば、呼吸器系の上側部分の細菌感染(例えば、感冒)では、熱を印加することによる好ましい効果がよく知られている。粘膜は伝導性が高い。腫瘍組織の場合と同様に、熱の効果もまた、(喘息治療の場合と同様に)集中される。その結果、本発明の方法は、他の加熱技法に比べて感冒について選択性が高い。そのため、本発明のハイパーサーミアデバイスは、鼻炎及び他の上気道感染の治療についても有用である。上気道感染を引き起こすウィルスの例は、ライノウィルス、コロナウィルス、アデノウィルス、ミクソウィルス、コクサッキーウィルス、エコーウィルス、パラインフルエンザウィルス、RSウィルス、及びインフルエンザウィルスである。上気道感染を引き起こす細菌の例は、マイコプラズマ肺炎菌、クラジミア肺炎菌、肺炎連鎖球菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、及びインフルエンザ菌である。
【0148】
本発明の更に別の態様は、ソース信号(8)を提供する無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、フィードバック増幅器(6)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備える無線周波数デバイスの信号を変調する方法であり、該方法は、変調済ソース信号(10)を生成するために、変調信号(12)を使用して変調器(9)によってソース信号(8)を変調するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を生成するために、増幅器(2)によって変調済ソース信号(10)を増幅するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を標的領域(17)に方向付けるステップと、標的領域(17)のホメオスタシスによって生成される位相情報を検出して、フィードバック信号(5)を提供するために、前記位相情報を予め取得済の位相情報と比較するステップと、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用して、変調信号入力/発生器(13)によってフィードバック信号(5)を変調するステップとを含む。
【0149】
換言すれば、本発明は、ソース信号(8)を提供する無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、フィードバック増幅器(6)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備える無線周波数デバイスの信号を変調する方法に関し、該方法は、変調済ソース信号(10)を生成するために、変調信号(12)を使用して変調器(9)によってソース信号(8)を変調するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を生成するために、増幅器(2)によって変調済ソース信号(10)を増幅するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を標的領域(17)に方向付けるステップと、標的領域(17)のホメオスタシス平衡状態の変動のパワー密度関数のパワー振幅の位相の位相コードの差を使用するステップと、フィードバック信号(5)を提供するために、位相情報を予め取得済の位相情報と比較するステップと、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用して、変調信号入力/発生器(13)によってフィードバック信号(5)を変調するステップとを含む。
【0150】
そのため、本発明は、ソース信号(8)を提供する無線周波数源(1)と、増幅器(2)と、検出器(3)と、フィードバック増幅器(6)と、変調器(9)と、変調信号入力/発生器(13)とを備える無線周波数デバイスの信号を変調する方法を提供し、該方法は、変調済ソース信号(10)を生成するために、変調信号(12)を使用して変調器(9)によってソース信号(8)を変調するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を生成するために増幅器(2)によって変調済ソース信号(10)を増幅するステップと、増幅済かつ変調済の信号(4)を標的領域(17)に方向付けるステップと、標的領域(17)のホメオスタシス平衡状態の変動のパワー密度関数のパワー振幅の位相の位相コードの変化を検出し、フィードバック信号(5)を提供するために、位相情報を予め取得済の位相情報と比較するステップと、測定済のホメオスタシス信号(19)の位相情報を使用して、変調信号入力/発生器(13)によってフィードバック信号(5)を変調するステップとを含む。
【0151】
これらの方法は、本発明のRFハイパーサーミアデバイスを使用することによって実施され実行されるため、これらの方法も個別化された方法について話すことができるように個別化される。
図1
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