(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一膜形成樹脂が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの共重合体、およびアクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の平版印刷版の製造方法。
前記第二膜形成樹脂が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ユリア樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリ無水マレイン酸、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、および水溶性ポリウレタンよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項1または2に記載の平版印刷版の製造方法。
前記染料の粒径が5〜1000nmであり、且つ、前記染料が酸性染料、活性染料またはアルカリ性染料のいずれかの色の染料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版の製造方法。
前記色定着剤が、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アミン−ホルムアルデヒド樹脂系ジシアンジアミドホルムアルデヒド初期縮合物および活性染料色定着剤KSよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項5に記載の平版印刷版の製造方法。
前記消泡剤が、シリコーンエマルジョン、高級アルコール脂肪酸エステル複合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリットエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリセリルエーテル、およびポリジメチルシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項5または6に記載の平版印刷版の製造方法。
前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、茶ポリフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、tert−ブチルヒドロキノン、およびポリオールエステルよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項5〜7のいずれか一項に記載の平版印刷版の製造方法。
前記印刷製版インクにおける溶媒が、水、水と低級アルコールとの混合溶媒、または水とアルコールエーテルとの混合溶媒である請求項1〜8のいずれか一項に記載の平版印刷版の製造方法。
前記低級アルコールが、メタノール、無水エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、および2−メチル−2−プロパノールよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項9に記載の平版印刷版の製造方法。
前記アルコールエーテルが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも一つである請求項9または10に記載の平版印刷版の製造方法。
前記ナノミクロン構造が、電解砂目立て加工、または金属製基板の表面にナノ粒子を含むコーティングを塗布することにより形成される請求項12に記載の平版印刷版の製造方法。
前記金属接着促進剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アリールホスフェート、高リンポリエステルポリマー、アルキルホスフェート、ジルコアルミネート、およびジルコン酸塩よりなる群から選択される少なくとも一つである請求項1〜15のいずれか一項に記載の平版印刷版の製造方法。
前記疎水性下塗り液における溶剤が、酢酸エチル、アセトン、ブタノン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、シクロヘキサノン、クロロホルム、および四塩化炭素よりなる群から選択される少なくとも一つである請求項1〜16のいずれか一項に記載の平版印刷版の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の平版印刷に用いられる溶剤系インクの使用による環境汚染問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、水性インクで印刷できる平版印刷版の製造方法、およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得た本発明の平版印刷版の製造方法は、金属製基板と、前記金属製基板の表面に形成される疎水性下塗り層と、前記疎水性下塗り層の上に形成される親水性画像層と、を含む平版印刷版の製造方法であって、以下の工程を含むところに要旨を有する。
(1)前記金属製基板の表面に、下記組成の疎水性下塗り液を塗布して硬化することによって前記疎水性下塗り層を形成する工程:
前記疎水性下塗り液の合計量を基準にしたとき、0.01〜20質量%のポリオレフィン、0〜5質量%の金属接着促進剤、および残部:溶剤である;
(2)前記疎水性下塗り層の表面に、下記組成の印刷製版インクをインクジェットして硬化することによって前記親水性画像層を形成する工程:
前記印刷製版インクの合計量を基準にしたとき、0.5〜20質量%の第一膜形成樹脂、0〜15質量%の第二膜形成樹脂、0.01〜5質量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0〜5質量%の助剤、および残部:溶媒であり、前記第一膜形成樹脂は(メタ)アクリル酸のホモポリマー、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸C
1−4アルキルエステルとの共重合体である。
【0006】
上記第一膜形成樹脂は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの共重合体、およびアクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0007】
上記第二膜形成樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ユリア樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリ無水マレイン酸、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、および水溶性ポリウレタンよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0008】
上記染料の粒径は5〜1000nmであり、且つ、上記染料は酸性染料、活性染料またはアルカリ性染料のいずれかの色の染料であることが好ましい。
【0009】
上記助剤は、色定着剤、消泡剤、および抗酸化剤よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0010】
上記色定着剤は、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アミン−ホルムアルデヒド樹脂系ジシアンジアミドホルムアルデヒド初期縮合物および活性染料色定着剤KSよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0011】
上記消泡剤は、シリコーンエマルジョン、高級アルコール脂肪酸エステル複合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリットエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリセリルエーテル、およびポリジメチルシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0012】
上記抗酸化剤は、アスコルビン酸、茶ポリフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、tert−ブチルヒドロキノン、およびポリオールエステルよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0013】
上記印刷製版インクにおける溶媒は、水、水と低級アルコールとの混合溶媒、または水とアルコールエーテルとの混合溶媒であることが好ましい。
【0014】
上記低級アルコールは、メタノール、無水エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよび2−メチル−2−プロパノールよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0015】
上記アルコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0016】
上記金属製基板の表面は、ナノミクロン構造を有することが好ましい。
【0017】
上記ナノミクロン構造は、電解砂目立て加工、または金属製基板の表面にナノ粒子を含むコーティングを塗布することにより形成されることが好ましい。
【0018】
上記疎水性下塗り液におけるポリオレフィンは、下式(1)に示すポリマーを含むことが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
上記R
3は水素、フェニル、または塩素であることが好ましい。
【0021】
上記金属接着促進剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アリールホスフェート、高リンポリエステルポリマー、アルキルホスフェート、ジルコアルミネート、およびジルコン酸塩よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0022】
上記疎水性下塗り液における溶剤は、酢酸エチル、アセトン、ブタノン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、シクロヘキサノン、クロロホルムおよび四塩化炭素よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0023】
上記金属製基板は、アルミニウム基板、亜鉛基板、またはアルミニウム合金基板であることが好ましい。
【0024】
また、上記課題を解決し得た本発明に係る平版印刷版の用途は、前記平版印刷版を平版印刷に応用するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法により提供された平版印刷版によれば、水性インクを使って印刷できるため、従来の平版印刷における溶剤系インクの使用による環境汚染を防止することができる。また、疎水性下塗り液により形成される疎水性下塗り層と印刷製版インクにより形成される親水性画像層との相互作用によって、画像解像度の優れる印刷物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。
【0027】
上述したとおり、本発明に係る平版印刷版の製造方法は、金属製基板と、前記金属製基板の表面に形成される疎水性下塗り層と、前記疎水性下塗り層の上に形成される親水性画像層と、を含む平版印刷版の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)前記金属製基板の表面に、下記組成の疎水性下塗り液を塗布して硬化することによって前記疎水性下塗り層を形成する工程:
前記疎水性下塗り液の合計量を基準にしたとき、0.01〜20質量%のポリオレフィン、0〜5質量%の金属接着促進剤、および残部:溶剤である;
(2)前記疎水性下塗り層の表面に、下記組成の印刷製版インクをインクジェットして硬化することによって前記親水性画像層を形成する工程:
前記印刷製版インクの合計量を基準にしたとき、0.5〜20質量%の第一膜形成樹脂、0〜15質量%の第二膜形成樹脂、0.01〜5質量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0〜5質量%の助剤、および残部:溶媒であり、前記第一膜形成樹脂は(メタ)アクリル酸のホモポリマー、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸C
1−4アルキルエステルとの共重合体である。
【0028】
以下、本発明の製造方法を構成する要件(金属製基板、疎水性下塗り層、親水性画像層)を中心にして、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0029】
(i)金属製基板
本発明に用いられる金属製基板は、本発明の技術分野で平版印刷版に使用される公知の基板であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム基板、亜鉛基板、アルミニウム合金基板などが挙げられる。好ましくは、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板である。
【0030】
上記金属製基板の厚さは特に限定されず、通常用いられる範囲の厚さを有し得るが、例えば0.1〜0.5mmである。
【0031】
後に詳述する疎水性下塗り層の上記金属製基板表面への接着性を向上するため、金属製基板の表面は、ナノミクロン構造のような微細構造を有することが好ましい。
【0032】
このような微細構造は、例えば電解砂目立て加工、または上記金属製基板の表面にナノ粒子を含むコーティングを塗布することにより形成されることが好ましい。これらの詳細は以下のとおりである。
【0033】
まず、上記電解砂目立て加工は、電解処理と陽極酸化処理を含む。
【0034】
ここで、上記電解処理に用いられる電解液は、例えば塩酸またはリン酸の酸性水溶液である。上記酸性水溶液は、アルミニウム塩、安息香酸、サリチル酸、酢酸、酒石酸、ジヒドロキシ酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、アニリン、エチルアミン、アジリジン、エチレンジアミン、およびエタノールアミンよりなる群から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。上記酸性水溶液中にこれらの物質を含む場合、上記物質の好ましい濃度は0.1〜10g/Lである。
【0035】
上記電解処理の回数は、例えば一回、二回、または三回であり、電解処理を三回行うことが好ましい。電解処理を三回行う場合の好ましい条件は以下のとおりである。まず、一回目の電解に使用する電解液は塩酸水溶液であり、上記塩酸の濃度20〜30g/L、電解時間20〜80s、電解温度20〜50℃であることが好ましい。二回目の電解に使用する電解液は塩酸水溶液であり、上記塩酸の濃度10〜20g/L、電解時間20〜50s、電解温度20〜50℃であることが好ましい。三回目の電解に使用する電解液は塩酸水溶液であり、上記塩酸の濃度1〜10g/L、電解時間10〜40sで、電解温度20〜50℃であることが好ましい。
【0036】
また、上記陽極酸化処理に用いられる好ましい電解液は硫酸溶液であり、硫酸の好ましい濃度は150〜300g/Lである。上記電解液は改質剤を含んでも良く、電解液における改質剤の好ましい濃度は10〜50g/Lである。本発明に用いられる上記改質剤は、例えばポリエチレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、およびダイマー酸よりなる群から選択される少なくとも一つである。上記陽極酸化処理は、例えば20s以内に電圧を8〜30Vに調整して、電圧を上記範囲で安定に維持しながら、引き続き電流を上昇させて6〜100Aに調整して安定化させ、定電流で10〜80s酸化処理を行うことが好ましい。
【0037】
一方、金属製基板の表面にナノ粒子を含むコーティングを塗布する方法は、例えばスピンコーティングまたはロールコーティングである。上記ナノ粒子の平均粒径は、10〜1000nmであることが好ましい。
【0038】
本発明において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸のことを表す。同様に、(メタ)アクリル酸C
1-4アルキルエステルは、アクリル酸C
1-4アルキルエステルまたはメタクリル酸C
1-4アルキルエステルのことを表す。
【0039】
(ii)疎水性下塗り層
本発明における疎水性下塗り層は、上記金属製基板の表面に形成される。具体的には上記疎水性下塗り層は、上記金属製基板の表面に、下記組成の疎水性下塗り液を塗布して硬化することによって形成される。好ましくは、微細構造を有する上記金属製基板の表面に疎水性下塗り液を塗布して硬化することによって形成される。
【0040】
上記疎水性下塗り液は、前記疎水性下塗り液の総重量を基準にしたとき、0.01〜20質量%のポリオレフィン、0〜5質量%の金属接着促進剤、および残部:溶剤である。金属製基板と疎水性下塗り層との密着性を向上させると共に、画像解像度に一層優れた印刷物を得るためには、上記疎水性下塗り液は、1〜15質量%のポリオレフィン、0〜3質量%の金属接着促進剤、および残部:溶剤であることが好ましく;2〜10質量%のポリオレフィン、0.2〜2質量%の金属接着促進剤、および残部:溶剤であることがより好ましい。
【0041】
ここで、本発明に用いられるポリオレフィンは、後述する溶剤に溶解して疎水性下塗り層を形成できるものであれば特に限定されない。
【0042】
印刷物の画像解像度をより一層向上させるためには、上記ポリオレフィンは下式(1)に示すポリマーであることが好ましい。
【0043】
【化2】
式(1)中、
R
3は水素、炭素数1〜4のアルキル基、少なくとも一つのベンゼン環を含む芳香族基、またはハロゲンであり、
Pは5以上の整数である。
【0044】
上記R
3における「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状を有していても良く、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。
【0045】
また、上記R
3における「少なくとも一つのベンゼン環を含む芳香族基」の「ベンゼン基を含む芳香族基」とは、フェニル基のような単一芳香族基であっても良いし、ナフチル基などのように縮合環を有しても良いし、ビフェニル基などのように多環芳香族基を有していても良い。具体的には、アルキル基、アルケニル基などの置換基を有していても良いアリール基(例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など)が挙げられる。
【0046】
また、上記R
3における「ハロゲン」は、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0047】
上記R
3は、メチル、エチル、プロピル、フェニル、塩素、または臭素であることが好ましく、水素、フェニル、または塩素であることがより好ましい。
【0048】
上記Pは5以上の整数であり、5〜2000であることが好ましい。
【0049】
本発明に用いられるポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、リブテン、ポリプレニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどであり、単独で、または併用して用いることができる。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルよりなる群から選択される少なくとも一つである。
【0050】
金属製基板と疎水性下塗り層との接着性を向上するため、上記疎水性下塗り液は、金属接着促進剤を含むことが好ましい。上記金属接着促進剤の種類は特に限定されず、本発明の技術分野で一般的に用いられるものが挙げられる。上記金属接着促進剤は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アリールホスフェート、高リンポリエステルポリマー(hyperphosphate polyester polymer)、アルキルホスフェート、ジルコアルミネート、およびジルコン酸塩よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0051】
ここで、上記アリールホスフェートにおけるアリール基は、置換または未置換であっても良く、フェニル、トリル、またはナフチルが好ましい。
【0052】
また、上記アルキルホスフェートにおけるアルキル基は、炭素原子1〜20のアルキルであることが好ましい。上記アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであっても良い。
【0053】
また、上記ジルコアルミネートは、ジルコニウムアルミネートカリウム(potassium zirconium aluminate)、またはジルコニウムアルミネートナトリウム(sodium zirconium aluminate)であることが好ましい。
【0054】
また、上記ジルコン酸塩は、M
2+ZrO
3で表されるメタジルコン酸塩(Mは二価金属である。)、M
3+Zr
2O
7で表されるピロジルコン酸塩(Mはランタン、セリウム、ネオジム、またはサマリウムである。)、M
43+Zr
3O
12(Mはスカンジウムまたはイッテルビウムである。)、Ti−ZrO
4、V
2ZrO
7、Nb
10ZrO
27、MO
2ZrO
4、またはW
2ZrO
8であることが好ましい。
【0055】
上記疎水性下塗り液における溶剤は、酢酸エチル、アセトン、ブタノン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、シクロヘキサノン、クロロホルム、および四塩化炭素よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0056】
本発明に用いられる疎水性下塗り液は、上記の各原材料を均一に混ぜることによって得られる。この疎水性下塗り液を、ロールコーティング、押出コーティング、またはスプレーなどの方法で前述した金属製基板の表面に塗布して硬化させることによって、上記疎水性下塗り層が得られる。上記硬化方法は、本発明の技術分野で一般的に使用される方法であれば特に限定されず、例えば、熱硬化方法が挙げられる。
【0057】
上記疎水性下塗り層の厚さは特に限定されず、通常用いられる範囲の厚さを有し得るが、例えば0.01〜10μmである。
【0058】
(iii)親水性画像層
本発明における親水性画像層は、上記疎水性下塗り層の上に形成される。具体的には上記親水性画像層は、上記疎水性下塗り層に印刷製版インクをインクジェットして硬化することによって形成される。
【0059】
上記印刷製版インクは、印刷製版インクの合計量を基準にして、0.5〜20質量%の第一膜形成樹脂、0〜15質量%の第二膜形成樹脂、0.01〜5質量量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0〜5重量%の助剤、および残部:溶媒である。画像解像度に一層優れた印刷物を得られるためには、上記印刷製版インクは、0.5〜15質量%の第一膜形成樹脂、0.1〜15質量%の第二膜形成樹脂、0.02〜2質量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0〜3質量%の助剤、および残部:溶剤であることが好ましく;1〜10質量%の第一膜形成樹脂、1〜10質量%の第二膜形成樹脂、0.05〜1質量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0.01〜2質量%の助剤、および残部:溶媒であることがより好ましい。
【0060】
上記第一膜形成樹脂は印刷製版インクの必須成分であり、(メタ)アクリル酸系樹脂である。具体的には、(メタ)アクリル酸のホモポリマー、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸C
1-4アルキルエステルとの共重合体である。上記第一膜形成樹脂を含む水性印刷インクと、前述したポリオレフィンを含む疎水性下塗り液とを組み合わせて使用することによって得られる平版印刷版を用いることによって、画像解像度に優れた印刷物が得られる。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、上記疎水性下塗り液は、2〜10質量%のポリオレフィン、0.2〜2質量%の金属接着促進剤、および残部:溶媒であり、上記印刷製版インクは、1〜10質量%の第一膜形成樹脂、1〜10質量%の第二膜形成樹脂、0.05〜1質量%のナノメートルまたはマイクロメートルの染料、0.01〜2質量%の助剤、および残部:溶媒である。上記疎水性下塗り液により形成される疎水性下塗り層と、上記印刷製版インクにより形成される親水性画像層とを組み合わせることによって、画像解像度に一層優れた印刷物が得られる。
【0062】
上述したように第一膜形成樹脂は(メタ)アクリル酸系樹脂であるが、上記(メタ)アクリル酸系樹脂の分子量は特に限定されず、膜構成樹脂として使用できる範囲の分子量を有していれば良い。ただし、画像解像度に一層優れた印刷物を得るためには、(メタ)アクリル酸のホモポリマー、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸C
1-4アルキルエステルとの共重合体の数平均分子量は、500〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましい。上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定することができる。
【0063】
また、上記第一膜形成樹脂が(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸C
1-4アルキルエステルとの共重合体である場合、各構成成分の割合は特に限定されず、膜構成樹脂として使用できる割合であれば良い。ただし、画像解像度に一層優れた印刷物を得るためには、(メタ)アクリル酸からの構成単位と前記(メタ)アクリル酸C
1-4アルキルエステルからの構成単位のモル比は1:10〜10:1であることが好ましい。
【0064】
ここで、上記(メタ)アクリル酸C
1-4ルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、または(メタ)アクリル酸ブチルであることが好ましく;(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチルであることがより好ましく;(メタ)アクリル酸メチルであることが更に好ましい。
【0065】
本発明に用いられる第一膜形成樹脂の具体的な例としては、例えばポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸プロピルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルとの共重合体などが挙げられる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、上記第一膜形成樹脂はポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの共重合体、およびアクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体よりなる群から選択される少なくとも一つである。
【0067】
本発明における第二膜形成樹脂は、本発明の技術分野において一般的に使用される各種類の膜構成可能な樹脂であれば特に限定されない。画像解像度に一層優れた印刷物を得るためには、上記第二膜形成樹脂は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ユリア樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリ無水マレイン酸、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、および水溶性ポリウレタンよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく;ユリア樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性ポリウレタン、およびポリビニルアルコールよりなる群から選択される少なくとも一つであることがより好ましい。
【0068】
ここで、上記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール10000、ポリエチレングリコール6000、およびポリエチレングリコール2000よりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0069】
また、上記染料は、本発明の技術分野において一般的に使用される各種類の染料であれば特に限定されない。上記染料の好ましい粒径は5〜1000nmである。上記染料は、酸性染料、活性染料、またはアルカリ性染料のいずれかの色の染料であることが好ましい。
【0070】
これらのうち、上記酸性染料は、染料アシッドブルー9、染料アシッドブルー9 SF、および染料アシッドイエロー23 SFであることが好ましい。また、上記活性染料は、黒色染料SPシリーズ、およびアクティブブラックより選択される少なくとも一つであることが好ましい。また、上記アルカリ性染料は、アルカリブルーまたはビクトリアブルーである青色染料であることが好ましい。
【0071】
本発明に用いられる上記印刷製版インクは、印刷製版インクにおいて一般的に使用される様々な助剤を更に含んでも良い。上記助剤は、例えば、色定着剤、消泡剤、および抗酸化剤よりなる群から選択される少なくとも一つである。
【0072】
ここで、上記色定着剤は、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、アミン−ホルムアルデヒド樹脂系ジシアンジアミドホルムアルデヒド初期縮合物(amine−aldehyde resin type dicyandiamide formaldehyde precondensate)(色定着剤Y、M)、および活性染料色定着剤KSよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0073】
また、上記消泡剤は、シリコーンエマルジョン、高級アルコール脂肪酸エステル複合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリットエーテル(Polyoxyethylene Polyoxypropylene Pentaerythritol Ether)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル(Polyoxyethylene Polyoxypropylene Ether)、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(Polyoxypropylene Glycerol Ether)、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリセリルエーテル、およびポリジメチルシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0074】
また、上記抗酸化剤は、アスコルビン酸、茶ポリフェノール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、tert−ブチルヒドロキノン、およびポリオールエステルよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0075】
上記印刷製版インクにおける溶媒は、水、水と低級アルコールとの混合溶媒、または水とアルコールエーテルとの混合溶媒であることが好ましい。
【0076】
ここで、上記低級アルコールは、メタノール、無水エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、および2−メチル−2−プロパノールよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0077】
また、上記アルコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートよりなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0078】
本発明において上記印刷製版インクは、上述した各原材料を均一に混合することによって得られる。具体的には、均一に混合した印刷製版インクを真空ろ過の方法でろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にすることが好ましい。
【0079】
本発明における上記親水性画像層は、前述した疎水性下塗り層に上記印刷製版インクをインクジェット印刷の方式でインクジェットして硬化させることによって形成される。
【0080】
ここで、上記硬化方法は、本発明の技術分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されず、例えば、熱硬化方法が挙げられる。
【0081】
上記親水性画像層の厚さは特に限定されず、通常用いられる範囲の厚さを有し得るが、例えば100〜1000nmである。
【0082】
本発明には、上記平版印刷版を平版印刷に応用する用途も含まれる。
【0083】
本願は、2015年6月2日に出願された中国特許出願201510295794.3号に基づく優先権の利益を主張するものである。2015年6月2日に出願された中国特許出願201510295794.3号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0085】
実施例1
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、0.01質量%のポリエチレン顆粒(製品番号:DNDA−7144、茂名石油化学会社から購入)を60℃に加温したキシレン中に入れて、完全に溶解するように攪拌した後、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0086】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、0.5質量%のポリアクリル酸(製品番号:P10680D−AA、百霊威科技株式会社から購入)と、15質量%の水溶性ポリウレタン(北京賽創化工有限責任会社から購入)と、0.01質量%のアシッドブルー 9(温州龍達染料化工有限会社から購入)と、5質量%のアミン−ホルムアルデヒド樹脂系ジシアンジアミドホルムアルデヒド初期縮合物(色定着剤Y−701、広州市君旺生物科学技術有限会社から購入)と残部:水とを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0087】
平版印刷版の製造
上記のようにして得られた下塗り液を、微細構造を有しないアルミニウム基板に塗布して、80℃で60min熱硬化して、厚さが10μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、上記印刷製版インクを画像の形で上記疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ100nmの親水性画像層を形成することにより、平版印刷版を得た。
【0088】
実施例2
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、20質量%のポリ塩化ビニル(製品番号:QS−1000F、▲シ▼▲ハク▼超▲ギョク▼経済貿易株式会社から購入)を酢酸エチル中に入れて、完全に溶解するように攪拌した後、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0089】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、20質量%のポリメタクリル酸(天津格瑞恒業科技有限会社から購入したポリメタクリル酸ナトリウムを塩酸で中和して得られたものである)と、0.1質量%の水溶性フェノール樹脂(無錫市明洋粘結材料有限会社から購入)と、5質量%のアルカリブルー(義烏市裕方顔料会社から購入)と、20質量%の水および残部:エチレングリコールモノメチルエーテルを混合して完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0090】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液をロールコーティング方法で陽極酸化処理済みの亜鉛基板に均一に塗布して、70℃で40min熱硬化させて、厚さ0.01μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、120℃で乾燥して、厚さ1000nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0091】
実施例3
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、10質量%のポリスチレン(製品番号:P8921−S、百霊威科技株式会社から購入)と、0.5質量%の高リンポリエステルポリマー(製品番号:SH802、Fujian Xiamen Kangdilong Trade Co.,Ltd.から購入)を酢酸エチル中に入れて、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0092】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、15質量%のアクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体(アクリル酸の構成単位とメチルアクリレートの構成単位のモル比は1:10であり、河北藍清水処理科技有限会社から購入)と、5質量%のポリエチレングリコール10000(国薬集団化学試剤北京有限会社から購入)と、0.05質量%のビクトリアブルー(義烏市裕方顔料会社から購入)と、0.1質量%の活性染料色定着剤(環境にやさしい色定着剤JW703、広州市君旺生物科学技術有限会社から購入)と、0.1質量%シリコーンエマルジョン(広州道爾化工有限会社から購入)と、残部:エチレングリコールジメチルエーテルとを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過してインク粒子の直径を220nm以下にした。
【0093】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液を押出コーティングにより、平均粒径100nmのナノ粒子でコーティング済みのアルミニウム合金基板(ナノ粒子コーティングの厚さは0.2μm)に均一に塗布して、100℃で30min熱硬化した後、厚さ1μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ500nmの親水性画像層を形成し、平版印刷版を得た。
【0094】
実施例4
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、5質量%のポリスチレン(製品番号:P8921−S、百霊威科技株式会社から購入)と、10質量%のポリ塩化ビニル(製品番号:QS−1000F、▲シ▼▲ハク▼超▲ギョク▼経済貿易株式会社から購入)と、0.2質量%のシランカップリング剤(製品番号:KH−550、南京奥誠化工株式会社から購入)と、残部:酢酸エチルとを混合して、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0095】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、5質量%のアクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体(アクリル酸の構成単位とメチルアクリレートの構成単位のモル比は10:1であり、河北藍清水処理科技有限会社から購入)と、10質量%のポリアクリル酸(製品番号:P10680D−AA、百霊威科技株式会社から購入)と、5質量%のポリエチレングリコール2000(国薬集団化学試剤北京有限会社から購入)と、0.1質量%の黒色染料SP(義烏市裕方顔料会社から購入)と、0.1質量%のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドと、0.05質量%のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルと、残部:エチレングリコールジエチルエーテルとを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0096】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液をスピンコーティング方法により電解砂目立て加工処理済みの基板に均一に塗布して、100℃で30min熱硬化した後、厚さ2μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ200nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0097】
実施例5
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、10質量%のポリスチレン(製品番号:P8921−S、百霊威科技株式会社から購入)と、2質量%のポリエチレン(製品番号:DNDA−7144、茂名石油化学会社から購入)を2−ブタノン中に入れて、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0098】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、5質量%のメタクリル酸とメチルアクリレートとの共重合体(メタクリル酸の構成単位とメチルアクリレートの構成単位のモル比は1:5であり、河北藍清水処理科技有限会社から購入)と、2質量%のポリエチレングリコール2000(国薬集団化学試剤北京有限会社から購入)と、0.1質量%の黒色染料SP(義烏市裕方顔料会社から購入)と、残部:エチレングリコールモノメチルエーテルとを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0099】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液を押出コーティングによりナノ粒子を含むコーティング処理済みの基板に塗布して、100℃で30min熱硬化した後、厚さ6μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ300nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0100】
実施例6
疎水性下塗り液の調製
0.01質量%のポリプロピレン顆粒(製品番号:DNDA−7144、茂名石油化学会社から購入)を、25℃のn−ヘプタン中に入れ、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0101】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、0.5質量%のポリアクリル酸(製品番号:P10680D−AA、百霊威科技株式会社から購入)と、15質量%の水溶性ポリウレタン(北京賽創化工有限責任会社から購入)と、0.01質量%のアシッドブルー9(温州龍達染料化工有限会社から購入)と、5質量%のアミン−ホルムアルデヒド樹脂系ジシアンジアミドホルムアルデヒド初期縮合物(色定着剤Y−701、広州市君旺生物科学技術有限会社から購入)と、残部:水とを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0102】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液を微細構造のないアルミニウム基板に塗布して、80℃で60min熱硬化した後、厚さ10.00μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ100nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0103】
実施例7
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、2質量%のポリスチレン(製品番号:P8921−S、百霊威科技株式会社から購入)と、0.2質量%の高リンポリエステルポリマー(製品番号:SH802、Fujian Xiamen Kangdilong Trade Co.,Ltd.から購入)を酢酸エチル中に入れて、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0104】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、1質量%のポリアクリル酸(製品番号:P10680D−AA、百霊威科技株式会社から購入)と、1質量%のポリエチレングリコール10000(国薬集団化学試剤北京有限会社から購入)と、0.05質量%のビクトリアブルー(義烏市裕方顔料会社から購入)と、0.05質量%の活性染料色定着剤(環境にやさしい色定着剤JW703、広州市君旺生物科学技術有限会社から購入)と、0.05質量%のシリコーンエマルジョン(広州道爾化工有限会社から購入)と、残部:エチレングリコールジメチルエーテルとを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0105】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液を押出コーティングで平均粒径100nmのナノ粒子でコーティング済みのアルミニウム合金基板(ナノ粒子コーティングの厚さは0.2μm)に均一に塗布して、100℃で30min熱硬化した後、厚さ1μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ500nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0106】
実施例8
疎水性下塗り液の調製
疎水性下塗り液の合計量を基準にして、10質量%のポリスチレン(製品番号:P8921−S、百霊威科技株式会社から購入)と、2質量%の高リンポリエステルポリマー(製品番号:SH802、Fujian Xiamen Kangdilong Trade Co.,Ltd.から購入)を酢酸エチル中に入れて、完全に溶解するように攪拌してから、ブフナー漏斗を用いて真空下でろ過した。
【0107】
インクジェット印刷製版インクの調製
インクジェット印刷製版インクの合計量を基準にして、10質量%のポリアクリル酸(製品番号:P10680D−AA、百霊威科技株式会社から購入)と、10質量%のポリエチレングリコール10000(国薬集団化学試剤北京有限会社から購入)と、1質量%のビクトリアブルー(義烏市裕方顔料会社から購入)と、1質量%の活性染料色定着剤(環境にやさしい色定着剤JW703、広州市君旺生物科学技術有限会社から購入)と、1質量%のシリコーンエマルジョン(広州道爾化工有限会社から購入)と、残部:エチレングリコールジメチルエーテルとを混合して、完全に溶解してから、インクを多段ろ過して、インク粒子の直径を220nm以下にした。
【0108】
平版印刷版の製造
上記の疎水性下塗り液を押出コーティングで平均粒径100nmのナノ粒子でコーティング済みのアルミニウム合金基板(ナノ粒子コーティングの厚さは0.2μm)に均一に塗布して、100℃で30min熱硬化した後、厚さ1μmの疎水性下塗り層を形成した。インクジェット印刷の方法により、印刷製版インクを画像の形で疎水性下塗り層に出力した後、150℃で乾燥して厚さ500nmの親水性画像層を形成して、平版印刷版を得た。
【0109】
比較例1
実施例1で用いた0.5質量%のポリアクリル酸の代わりに0.5質量%の水溶性ポリウレタンを用いたこと以外は実施例1と同様して平版印刷版を得た。
【0110】
比較例2
実施例1で用いた0.01質量%のポリエチレン顆粒の代わりに0.01質量%のフェノール樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様して平版印刷版を得た。
【0111】
試験例
天津インク工場製造の凸版印刷用水性インクを用いて、上記の実施例1〜8および比較例1〜2の平版印刷版を印刷機に搭載して印刷を行った後、UGRA印刷コントロールストリップ(UGRA printing−down control strips)で印刷耐久性、ライン解像度、およびドット解像度を測定した。
【0112】
これらの結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1より、本発明の平版印刷版は印刷適用性に優れており、印刷耐久性が15000枚以上、印刷版画像のライン解像度は15μmに達することができ、且つ、5−95%のドットが完全かつ明瞭である。これに対し、比較例1、2は、画像部と非画像部を明瞭に区別できない。