(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6127192
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】防火扉
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20170424BHJP
E06B 3/58 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/58 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-204366(P2016-204366)
(22)【出願日】2016年10月18日
【審査請求日】2016年10月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599070259
【氏名又は名称】株式会社日鋼サッシュ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】清家 昭宏
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−83133(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2138666(EP,A1)
【文献】
特開平9−165974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00− 5/20
E06B 3/54− 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製の扉本体と、該扉本体に嵌めこまれた板硝子と、を含んで構成されている防火扉であって、
前記板硝子は、該板硝子を囲む上下左右の4つの框のうちの一の框と、該一の框と対になる止め部材とにより、前記扉本体に固定されているとともに、
前記板硝子の端部は、前記一の框が有する堤形状部と、前記止め部材が有する堤形状部と、からなる溝の内側で保持されており、
前記止め部材は、前記一の框が上框である場合は、上端の上側を向いた端面、
前記一の框が右框である場合は右端の右側を向いた端面、
前記一の框が左框である場合は左端の左側を向いた端面、
前記一の框が下框である場合は下端の下側を向いた端面において、
前記扉本体に対して固定されているとともに、
前記止め部材は、該止め部材が固定されている前記端面に対して垂直方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されている、
ことを特徴とする防火扉。
【請求項2】
前記一の框は、上框であり、
前記止め部材は、前記扉本体の上端の端面において、前記扉本体に対して固定されるとともに、
前記止め部材は、上方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されている、
ことを特徴とする請求項1記載の防火扉。
【請求項3】
前記一の框は、上框であり、
前記止め部材は、前記扉本体の上端の端面において、前記扉本体に対して固定されるとともに、
前記止め部材は、下方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されている、
ことを特徴とする請求項1記載の防火扉。
【請求項4】
前記一の框には、前記止め部材の結合片を通過させる通過孔が設けられており、
該結合片は、前記止め部材が固定されている端面でねじにより固定されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の防火扉。
【請求項5】
前記止め部材には、前記扉本体の掛止部に掛止される引掛け片が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の防火扉。
【請求項6】
前記框は、折曲げられた框用鋼板により形成されるとともに、
前記掛止部は、前記框用鋼板を折り曲げることにより形成され、
前記止め部材は、折曲げられた止め部材用鋼板により形成されるとともに、
前記引掛け片は、前記止め部材用鋼板を折り曲げることにより形成されている、
ことを特徴とする請求項5記載の防火扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火扉に関する。さらに詳しくは、耐火性の板硝子を有する防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に防火扉と呼ばれている防火戸は、建築基準法の特定防火設備に該当し、「鉄製で鉄板の厚さが1.5mm以上」という要件が定められている(平12年建告第1369号)。しかし、建物の中に用いられる防火扉は、近年では、特定防火設備としての機能を満たすだけでなく、人をひきつけるような意匠性の高さも併せて求められるようになっている。例えば、特許文献1には、硝子窓を設け、デザインのバリエーションを増やすことで、意匠性を向上させた防火扉が開示されている。
【0003】
図11には、特許文献1に示すような、板硝子が設けられている防火扉の従来構造を示す。
図11は、防火扉50の側面断面図である。防火扉50は、扉本体52と、板硝子54とを含んで構成されており、板硝子54は、扉本体52を構成する上框70と下框72との間に位置している。下框72には、2つの堤形状部72aにより上向きに溝が設けられており、板硝子54は、この溝の中でバックアップ材58に挟まれて固定されている。上框70には、下向きの溝が設けられているが、この下向きの溝は、上框70に一体として設けられている堤形状部70aと、この堤形状部70aと平行に設けられている押縁56とにより形成され、板硝子54は、この溝の中でバックアップ材58に挟まれて固定されている。そして押縁56は、ねじ66により上框70の内面下側に固定されている。
【0004】
しかるに、上記のような構成とした場合、押縁56は、上框70と比べて形状が小さくなり熱の影響を受けやすい。このため、火災時に火炎を受けると、押縁56が上框70よりも大きくひずみ、板硝子54が外れる可能性があり、この場合、防火扉50は、特定防火設備の要件を具備できないという問題がある。
また、上框70と押縁56とは、一体として構成することはできないため、扉のデザインに制約が生じ、意匠性を向上させにくいという問題がある。
さらに、押縁56は、ねじ66により上框70の内面下側に固定されているため、ねじ66によっても、そのデザインに制約が生じ、意匠性を向上させにくくなるとともに、押縁56の取り外しを行った場合には、ねじ66の頭部周辺の塗料が剥がれ、その部分のデザインの一体性を保持できず、この点でも意匠性を向上させにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−299765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、耐火性の板硝子を有する、意匠性の高い防火扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の防火扉は、
鉄製の扉本体と、該扉本体に嵌めこまれた板硝子と、を含んで構成されている防火扉であって、前記板硝子は、該板硝子を囲む上下左右の4つの框のうちの一の框と、該一の框と対になる止め部材とにより、前記扉本体に固定されて
いるとともに、前記板硝子の端部は、前記一の框が有する堤形状部と、前記止め部材が有する堤形状部と、からなる溝の内側で保持されており、前記止め部材は、前記一の框
が上框である場合は、上端の上側を向いた端面、前記一の框が右框である場合は右端の右側を向いた端面、前記一の框が左框である場合は左端の左側を向いた端面、前記一の框が下框である場合は下端の下側を向いた端面において、前記扉本体に対して固定されているとともに、前記止め部材は、該止め部材が固定されている前記端面に対して垂直方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されていることを特徴とする。
第2発明の防火扉は、第1発明において、前記一の框は、上框であり、前記止め部材は、前記扉本体の上端の端面において、前記扉本体に対して固定されるとともに、前記止め部材は、上方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されていることを特徴とする。
第3発明の防火扉は、第1発明において、前記一の框は、上框であり、前記止め部材は、前記扉本体の上端の端面において、前記扉本体に対して固定されるとともに、前記止め部材は、下方向に動作させられることにより、前記板硝子が前記扉本体の前後に動作しないように、前記扉本体の掛止部に掛止されていることを特徴とする。
第4発明の防火扉は、第1発明または第2発明において、前記一の框には、前記止め部材の結合片を通過させる通過孔が設けられており、該結合片は、前記止め部材が固定されている端面でねじにより固定されていることを特徴とする。
第5発明の防火扉は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記止め部材には、前記扉本体の掛止部に掛止される引掛け片が設けられていることを特徴とする。
第6発明の防火扉は、第5発明において、前記框は、折曲げられた框用鋼板により形成されるとともに、前記掛止部は、前記框用鋼板を折り曲げることにより形成され、前記止め部材は、折曲げられた止め部材用鋼板により形成されるとともに、前記引掛け片は、前記止め部材用鋼板を折り曲げることにより形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、止め部材が、扉本体の端面において、扉本体に対して固定されていることにより、扉本体の前後や、板硝子が位置する内面側に固定用のねじの頭部が露出することを防止でき、防火扉全体のデザインの制約がなくなり、意匠性が向上する。また、止め部材が、扉本体の上面などの外側の端面に対して垂直方向に動作させられ、扉本体の掛止部に掛止させられていることにより、ねじの固定が端面であっても、確実に板硝子を扉本体に固定することができる。また、止め部材の形状を大きくできるので、框と止め部材とのひずみが同程度となり、板硝子が扉本体から脱落することを防止できる。
第2発明によれば、板硝子を、上框で止め部材により固定することにより、ねじの固定箇所が防火扉の上端、すなわち防火扉の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるため、ねじによる防火扉のデザインの制約がなくなり、この点で意匠性が向上する。また、下框で固定する場合は、ねじの固定箇所が防火扉の下端となり、同様に防火扉の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるものの、床とのスキマが少なく、ねじを回す作業ができない。よって上框で止め部材により固定することにより、板硝子の固定、取り外し作業が容易になり、組立作業の負荷を低減できる。
第3発明によれば、板硝子を、上框で止め部材により固定することにより、ねじの固定箇所が防火扉の上端、すなわち防火扉の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるため、ねじによる防火扉のデザインの制約がなくなり、この点で意匠性が向上する。また、下框で固定する場合は、ねじの固定箇所が防火扉の下端となり、同様に防火扉の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるものの、床とのスキマが少なく、ねじを回す作業ができない。よって上框で止め部材により固定することにより、板硝子の固定、取り外し作業が容易になり、組立作業の負荷を低減できる。加えて、止め部材が、下方向に動作させられることにより扉本体の掛止部に掛止されているという構成であることから、止め部材と上框との結合片は、より少ない折り曲げ工程で製作できるシンプルな構成になるので、低コストでの生産が可能となる。
第4発明によれば、一の框には、止め部材の結合片を通過させる通過孔が設けられ、結合片は、止め部材が固定されている端面でねじにより固定されていることにより、結合片が框の中に収容され、框の端面に結合片が露出しないので、止め部材の取り外しのためねじを外したときでも、端面における扉本体部分の塗料が剥げることがない。
第5発明によれば、止め部材には、扉本体の掛止部に掛止される引掛け片が設けられていることにより、引掛け片で掛止するシンプルな構成で止め部材を固定することができ、止め部材の組立や取り外し作業が容易になる。
第6発明によれば、掛止部は框用鋼板を折り曲げることにより構成され、引掛け片は止め部材用鋼板を折り曲げることにより構成されていることにより、別途掛止部や引掛け片を組み付ける必要がなくなり、防火扉のコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防火扉の側面断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る防火扉の側面断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る防火扉の側面断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る防火扉の側面断面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る防火扉の側面断面図である。
【
図10】本発明の第6実施形態に係る防火扉の組立説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図2には、本発明の第1実施形態に係る防火扉10の正面図を、
図1には、
図2の防火扉10の、I-I断面での側面図を、
図3には
図2の防火扉10のIII−III断面での平面図を示す。また
図4には、本実施形態に係る防火扉10の組立説明図を示す。本実施形態に係る防火扉10は、建築基準法で規定されている特定防火設備に該当し、通常の火災の火炎を受けても1時間以上火炎が貫通しない構造となっているほか、意匠性を高めるために硝子窓を設けたり、扉の框にデザインを施す際の制約を少なくできたりする構造となっている。本明細書では、
図1から
図3に示すように、前後左右上下と称する。なお、前後は防火扉10の扉が引かれるほうが前側で、押される方が後側であり、この方向に合わすように人が位置したときの左右を、そのまま左右と称する。
【0011】
図2に示すように、防火扉10は、枠20に図示しない蝶番等で開閉自在に固定されている。防火扉10は、扉本体12と、この扉本体12に嵌めこまれた板硝子14とを含んで構成されている。扉本体12は、上下左右の框、すなわち上框40、下框42、右框44、左框46の4つの框より構成されており、これらの框は、あらかじめ定められた厚さの鋼板を折り曲げて製作されている。
【0012】
板硝子14は、
図2で示すように、長方形であり、それぞれの辺が、扉本体12を構成する上下左右の框により扉本体12に対して硬く固定されている。板硝子14は耐熱硝子であり、内部に金網や、金属線を入れたものが採用されることもある。これは火炎など熱が加えられたときに板硝子14が脱落するのを防止するためである。
【0013】
図1に示すように、下框42には、堤形状部42aが2つ設けられ、これらの2つの堤形状部42aにより、板硝子14が入り込む溝が形成されている。板硝子14と、堤形状部42aとの間には、バックアップ材18が設けられている。下框42にある構成は、
図3に示すように、右框44、左框46にも設けられており、それぞれの堤形状部44a、46aにより形成されている溝に板硝子14が入り込んでいる。
【0014】
図1、
図4に示すように、上框40には、堤形状部40aが1つ設けられ、さらに、この堤形状部40aと対になることで溝を形成する止め部材16が設けられている。堤形状部40aと止め部材16とで形成する溝には、板硝子14が入り込み、板硝子14と堤形状部40aとの間、および板硝子と止め部材との間にはバックアップ材18が設けられている。
【0015】
図1、
図4に示すように、上框40は、1枚の框用鋼板を折り曲げ、略筒状にするように形成されている。また上框40には、後述する止め部材16の引掛け片28が掛止される掛止部30が設けられており、この掛止部30は、框用鋼板を、さらに折り曲げることにより形成される。また、上框40には、この長手方向に沿って2か所、四角形の通過孔24が設けられている。この通過孔24の左右方向の長さは、後述する止め部材16の結合片22が通過できる長さであり、上下方向の長さは、止め部材16が上下方向に動作できる長さである。なお図では通過孔24は、2か所としたが、これに限定されるものではなく、1か所、または3か所以上であっても問題ない。
【0016】
図1、
図4に示すように、止め部材16は、1枚の止め部材用鋼板を折り曲げることにより形成されている。さらに、2か所の結合片22も、この止め部材用鋼板を折り曲げることにより形成される。これらの結合片22は、上框40の上端の端面において、上框40と結合される。また、図示していないが、結合片22には、上框40と結合するためのねじ穴がそれぞれ設けられている。また、引掛け片28についても、止め部材用鋼板を折り曲げることにより形成される。引掛け片28は、上框40の掛止部30に掛止されることで、バックアップ材18を介して、板硝子14を固定する。なお、結合片22についても、通過孔24と同様、2か所に限定されるものではなく、1か所または3か所以上であっても問題ない。
【0017】
図1、
図4により、上框40に止め部材16を結合し、板硝子14を扉本体12に固定する方法を説明する。なお、本実施形態に係る防火扉は、止め部材16は、上框40と対になるように設けられているが、特にこれに限定されず、下框42や、右框44、左框46に設けることもできる。また、上框40のみについて、止め部材16を設ける構成であるが、複数の框に設けることもできる。ただし、4つの框のうち少なくとも1か所には止め部材16を使用する必要がある。さらに本明細書で「外側の端面」とは、
図2において上框42であれば上端の上側を向いた面、下框44であれば下端の下側を向いた面、右框44であれば側端の右側を向いた面、左框46であれば側端の左側を向いた面を言う。
【0018】
止め部材16を外した状態で、硝子板14を下框44、右框44、左框46の各溝に嵌めこみ、それぞれバックアップ材18を挟みこむ。上框40にも、堤形状部40aと板硝子14との間にバックアップ材18を挟み込む。この状態で、止め部材16の結合片22を通過孔24に通過させる。このとき、板硝子14と止め部材18との間にバックアップ材18を挟み込む。またこの際、止め部材16の引掛け片28の上端は、上框40の掛止部30の下端よりも下側に位置している。
【0019】
上記の状態で、止め部材16を、上框40の上端の端面40bに、結合片22が接触するまで、上方向に移動させる。このように移動させると、止め部材16の引掛け片28は、上框40の掛止部30に掛止され、これにより板硝子14が扉本体12の後に向けて動作しないようになる。
【0020】
最後に止め部材16の結合片を、上框40の上端の端面40bからねじ26で固定する。
【0021】
止め部材16が、扉本体12の端面40bにおいて、扉本体12に対して固定されていることにより、扉本体12の前後や、板硝子14が位置する内面側に固定用のねじ26の頭部が露出することを防止でき、防火扉10全体のデザインの制約がなくなり、意匠性が向上する。
【0022】
また、止め部材16が、扉本体12の上面などの端面に対して垂直方向に動作させられ、扉本体12の掛止部30に掛止させられていることにより、ねじ26の固定が端面40bであっても、確実に板硝子14を扉本体12に固定することができる。また、止め部材16の形状を上下に大きくすることができるので、上框40と止め部材16とのひずみが同程度となり、板硝子14が扉本体12から脱落することを防止できる。
【0023】
板硝子14を、上框40で止め部材により固定することにより、ねじ26の固定箇所が防火扉10の上端、すなわち防火扉10の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるため、ねじ26による防火扉10のデザインの制約がなくなり、この点で意匠性が向上する。また、下框42で固定する場合は、ねじ26の固定箇所が防火扉10の下端となり、同様に防火扉10の使用者が通常視認できない部分に位置するようになるものの、床とのスキマが少なく、ねじを回す作業ができない。よって上框40で止め部材16により固定することにより、板硝子14の固定、取り外し作業が容易になり、組立作業の負荷を低減できる。
【0024】
框には、止め部材16の結合片22を通過させる通過孔24が設けられ、結合片22は、止め部材16が固定されている端面の外側からねじ26により固定されていることにより、結合片22が框の中に収容され、框の端面に結合片が露出しないので、止め部材26の取り外しのためねじを外したときでも、扉本体12部分の塗料が剥げることがない。
【0025】
止め部材16には、扉本体12の掛止部30に掛止される引掛け片28が設けられていることにより、引掛け片28で掛止するシンプルな構成で止め部材28を固定することができ、止め部材16の組立や取り外し作業が容易になる。
【0026】
掛止部30は框用鋼板を折り曲げることにより構成され、引掛け片28は止め部材用鋼板を折り曲げることにより構成されていることにより、別途掛止部30や引掛け片28を組み付ける必要がなくなり、防火扉10のコストを削減できる。
【0027】
図5には、本発明の第2実施形態に係る防火扉10の側面断面図を示す。
図5(A)は、止め部材16を上框40に組み付けた状態の側面図であり、
図5(B)は、止め部材16を上框40から取り外した状態の側面図である。第1実施形態の防火扉10との相違点は、上框40、および止め部材16の形状であり、この形状の違いにより、止め部材16の組立時に止め部材16を下方向へ動作させて、板硝子14を扉本体12に対して固定する。第2実施形態から第6実施形態の防火扉10は、止め部材16を下方向に動作させて、止め部材16を固定位置に位置させる。
【0028】
止め部材16を下方向へ動作させて固定するとは、止め部材16の引掛け片28の下端が、上框40の掛止部30の上端と掛止するように、止め部材16を下方向に動作させることを意味する。この際、止め部材16の結合片22は、上框40の上端の側面40bに接触させる。そして、ねじ26により止め部材16を上框40に固定する。なお、止め部材16を上方向へ動作させて固定する場合、上框40の側面全体を一体とした平面として仕上げるためには、結合片22を一度下方向に折曲げたうえで、再度上方向へ折り曲げることが必要となるが、止め部材を下方向へ動作させて固定する場合、結合片22は止め部材16の最上部で端面側に折り曲げるだけで足りる。このように、止め部材と上框との結合片は、より少ない折り曲げ工程で製作できるシンプルな構成になるので、低コストでの生産が可能となる。
【0029】
図6には、本発明の第3実施形態に係る防火扉10の側面断面図を示す。
図6(A)は、止め部材16を上框40に組み付けた状態の側面図であり、
図6(B)は、止め部材16を上框40から取り外した状態の側面図である。第2実施形態の防火扉10との相違点は、上框40の形状である。上框40の掛止部30の上端部に、溝の幅と同じ長さの延長部30aが設けられている。この延長部30aにより、溝の幅を保持することが容易になる。
【0030】
図7には本発明の第4実施形態に係る防火扉10の側面断面図を、
図8には、第4実施形態に係る防火扉10の組立説明図を示す。第2実施形態の防火扉10との相違点は、上框40、および止め部材16の形状である。上框40には、掛止部30として2つの凸部が水平方向に設けられている。この凸部は、基部よりも、先端部が上框40の長手方向に長い。また、止め部材16の引掛け片28には、引掛け用孔28aが設けられている。この引掛け用孔28は、上側よりも、下側が止め部材16の長手方向に長い。そして引掛け用孔28の下側は、上框40の凸部の先端部が通過できる大きさであり、引掛け用孔28の上側は、上框40の凸部の基部が通過できる大きさである。
【0031】
板硝子14との間にバックアップ材18を挟みながら、上框40の掛止部30である凸部が、止め部材16の引掛け片28にある引掛け用孔28aに入るように、止め部材16が上框40に押し付けられる。この状態で、止め部材16を下方向に動作させ、止め部材16の結合片22を、上框40の上端の端面40bに接触させる。そして、ねじ26により止め部材16を上框40に固定する。なお、本実施形態では、掛止部30として2つの凸部が設けられているが、特にこれに限定されるものではなく、1つである場合も有り、3以上の凸部を設けることも可能である。
【0032】
図9には、本発明の第5実施形態に係る防火扉10の側面断面図を示す。第2実施形態との相違点は、上框40、および止め部材16の形状である。本実施形態では、上框40の掛止部30は、溝を形成するための延長部30aの端部に、上方向に立ち上がるように設けられている。また、止め部材16の引掛り片28は、逆U字形に折曲げられている。本実施形態では、止め部材16の引掛り片28が、上框40の掛止部30にはまり込んで掛止されるように、止め部材16は上方向から動作させられる。そして、止め部材16の結合片22を、上框40の上端の端面40bに接触させ、ねじ26により止め部材16を上框40に固定する。
【0033】
図10には、本発明の第6実施形態に係る防火扉の組立説明図を示す。第2実施形態との相違点は、上框40、および止め部材16の形状である。本実施形態では、上框40には、掛止部30として3つの凸部が上方向に向けて設けられている。また止め部材16の引掛け片28には、引掛け用孔28aが設けられている。本実施形態の組立方法を説明する。板硝子14との間にバックアップ材18を挟みながら、上框40の掛止部30である凸部が、止め部材16の引掛け片28にある引掛け用孔28aに入るように、止め部材16を下方向に動作させる。このとき、止め部材16の結合片22は、上框40の上端の端面40bに接触するので、ねじ26により止め部材16を上框40に固定する。なお、本実施形態では、掛止部30として3つの凸部が上方向に向けて設けられているが、特にこれに限定されるものではなく、1つや2つであっても4つ以上であっても問題ない。
【符号の説明】
【0034】
10 防火扉
12 扉本体
14 板硝子
16 止め部材
22 結合片
24 通過孔
26 ねじ
28 引掛け片
30 掛止部
40 上框
40b 上端面
【要約】
【課題】あらかじめ定められた時間、火炎を遮ることができる特定防火設備でありながら、板硝子を有し、意匠性の高い防火扉を提供する。
【解決手段】板硝子14は、該板硝子を囲む上下左右の框のうちの一の框と、該一の框と対になる止め部材16とにより、扉本体12に固定されており、止め部材16は、扉本体12の端部の端面において、扉本体12に対して固定されているとともに、該側面に対して垂直方向に動作させられることにより、板硝子14が扉本体12の前後に動作しないように、扉本体12の掛止部30に掛止されている防火扉である。この構成により防火扉10全体のデザインの制約がなくなり、意匠性が向上する。また、止め部材16の形状を大きくできるので、框と止め部材16とのひずみが同程度となり、板硝子14が扉本体12から脱落することを防止できる。
【選択図】
図1