特許第6127248号(P6127248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127248
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-289907(P2011-289907)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-139179(P2013-139179A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】内田 勝也
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−052836(JP,A)
【文献】 特開昭58−211976(JP,A)
【文献】 特開2000−087746(JP,A)
【文献】 特開2002−284044(JP,A)
【文献】 特開平08−091247(JP,A)
【文献】 特開平07−052833(JP,A)
【文献】 特開2006−168635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に冷却対象物を有する車両の下部を覆うアンダーカバーであって、
走行中に、前記アンダーカバーの下面に沿って後ろ向きに流れる走行風を前記アンダーカバーの上面側に導入する通風孔を有する、車体幅方向の中央及び両側に配設される3つの走行風導入部と、
前記走行風導入部の中央の通風孔から上面側に導入された走行風が登坂するように設けられ、前記中央の通風孔の後方下部で後ろに向かって斜め上向きに上昇する形状のガイドスロープと、を備え、
前記ガイドスロープの上面を登坂して、同ガイドスロープから離脱した走行風が前記冷却対象物に当たるように、前記ガイドスロープのスロープ形状が設定され、
前記中央の走行風導入部の上面は、前記アンダーカバーの上面を流れる車両前方下部からの風を二手に分岐するように車幅方向両側に緩やかに低くなる隆起を形成している、
ことを特徴とするアンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部を覆うアンダーカバーに関する。特に、アンダーカバーの下を流れる走行風を取り込んで、車両床下に設置されたエンジン等の冷却対象物に向けて取り込んだ走行風を送風することができるアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ワンボックスカーやトラックなど、いわゆるキャブオーバータイプの車両では、エンジンが客室の床下側に配置される。この場合、エンジンに走行風が当たり難くなり、エンジンを走行風によって冷却することができないという不都合が生じる。また、エンジンから発生する熱が床下にこもりやすくなる点でも好ましくない。
【0003】
特許文献1には、キャブオーバータイプの車両において、車両前部から床下に配設されたエンジンの前部まで中空状のサスペンションフレームを延在させ、当該サスペンションフレームの前端部および後端部を開口することで、車両前端部から取り込んだ走行風をサスペンションフレーム内を通じて床下のエンジンに送風するようにしている。
【0004】
ところで、自動車の下部には、空力特性の向上や、自動車の下部に設置された機器類の保護などを目的としてアンダーカバーが設置される。特許文献2に開示されたアンダーカバーは、下から走行風を導入する通風孔を有しており、アンダーカバーの下を流れる走行風が、通風孔を通じてアンダーカバーの上側に導入され、エンジン、トランスミッション、排気管等の発熱部を冷却するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−330457号公報
【特許文献2】特開2011−189770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、車両前部から床下エンジンの前部までサスペンションフレームを延在させ、しかも、十分な風量を供給するためには、中空部の流路断面を大きく確保する必要があり、サスペンションフレームが大型化したり、車両の重量アップにつながる可能性が高い。
【0007】
また、特許文献2に開示されたアンダーカバーは、単に、通風孔を通じて走行風を下から上へ導入してアンダーカバーより上に設置された発熱部を冷却しようとするものに過ぎない。つまり、同文献のアンダーカバーは、特定の場所に狙いを絞って、導入した走行風を送風できるものではないため、効率的に発熱部を冷却することが困難である。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたものであり、車両下部に設置された発熱部等の冷却対象物に対し、特定の場所に狙いを絞って、走行風導入部から導入した走行風を送風することにより、効率よく冷却対象物を冷却することができるアンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンダーカバーは、床下に冷却対象物を有する車両の下部を覆うものであって、走行中に、前記アンダーカバーの下面に沿って後ろ向きに流れる走行風を前記アンダーカバーの上面側に導入する通風孔を有する、車体幅方向の中央及び両側に配設される3つの走行風導入部と、前記走行風導入部の中央の通風孔から上面側に導入された走行風が登坂するように設けられ、前記中央の通風孔の後方下部で後ろに向かって斜め上向きに上昇する形状のガイドスロープと、を備え、前記ガイドスロープの上面を登坂して、同ガイドスロープから離脱した走行風が前記冷却対象物に当たるように、前記ガイドスロープのスロープ形状が設定され、前記中央の走行風導入部の上面は、前記アンダーカバーの上面を流れる車両前方下部からの風を二手に分岐するように車幅方向両側に緩やかに低くなる隆起を形成している、ことを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成を備えるアンダーカバーによれば、走行中に、アンダーカバーの下面に沿って後ろ向きに流れる走行風が走行風導入部からアンダーカバーの上面側に導入され、ガイドスロープを登坂する。この登坂時に、走行風は、慣性によりガイドスロープに押し付けられるため、上下方向よりも車幅方向に拡散する。これにより、冷却対象物が車幅方向に大きなものであっても当該冷却対象物を幅全体的に冷却することができる。また、上下方向に余り拡散しないため、冷却対象物の特定の高さ位置を狙って走行風を送風することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンダーカバーによれは、車両下部に設置された冷却対象物に対し、特定の場所に狙いを絞って導入した走行風を送風することができ、その結果、効率よく冷却対象物を冷却することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るアンダーカバーを示す斜視図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1のB−B断面図に、車両下部の概略構成を2点鎖線にて追加して表した図である。
図4】本発明の実施形態に係るアンダーカバーを示す斜視図である。
図5図1のB−B断面図に、車両下部の概略構成を2点鎖線にて追加して表した図である。
図6】CFDを用いて走行風を流線で可視化して表したシミュレーション結果である。
図7】CFDを用いて車両中央断面における走行風を流線で可視化して表したシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るアンダーカバーは、車両の下部を覆うように設置されるものであって、図1図3に示すように、本体部2、前部支持部3、中間部支持部4、後部支持部5などで構成されている。図に例示するアンダーカバー1の各部2〜5は樹脂、金属などからなる薄板材で形成されている。
【0014】
前部支持部3は、車幅方向に延びており、本体部2の前端に連設されている。前部支持部3の車幅方向両端部と本体部2の車幅方向両端部との間には補強用リブ9が設けられている。前部支持部3は、車両の前後方向に延在する左右のサイドメンバ(不図示)に架設されたクロスメンバ6(図3参照)に締結される。
【0015】
中間部支持部4は、本体部2の両側部の前後方向中間位置に立設されており、その上端に車両の下部にボルト等にて締結されるフランジ7が形成されている。後部支持部5は、本体部2の両側部の後端位置に連設されており、それぞれ、車両の下部にボルト等にて締結される締結面8が形成されている。上記各支持部3,4,5は、本体部2を車両の下部と一定の空間を介在させた状態で支持する。
【0016】
本体部2には、走行風導入部19と、ガイドスロープ25とが設けられている。走行風導入部19は、車両走行中に本体部2の下面に沿って後ろ向きに流れる走行風を本体部2の上面側に導入し、導入した走行風が後述するガイドスロープ25の上昇面25aに当たるように形成されている。この走行風導入部19は、具体的には、本体部2の上下を連通する通風孔19aと、走行風案内部19bとで構成されている。走行風案内部19bは、後方に向かって斜め上方に傾斜した傾斜面を有し、この傾斜面によって効率的に本体部2の下面に沿って流れる走行風を本体部2の上面側に導入する。
【0017】
ガイドスロープ25は、後方に向かって斜め上向きに上昇する上昇面25aと、その上昇面の後端に連続した頂部25bと、その頂部25bより後方に連続して斜め下向きに下降する下降面25bとで構成されている。走行風導入部19から導入された走行風は、ガイドスロープ25の上昇面25aに沿って登坂し、頂部25bを離脱した後、エンジン24(冷却対象物)に吹き当たる。すなわち、走行風がエンジン24に当たるようにガイドスロープ25の上昇面25aのスロープ形状が設定されている。本実施形態においては、ガイドスロープ25を離脱した走行風はエンジン24の上部を狙って吹き当たるようにガイドスロープ25の上昇面25aのスロープ形状が設定されている。なお、図に例示したガイドスロープ25の上昇面25aは、車幅方向には傾斜も湾曲もしていないが、多少の傾斜、湾曲はあってもよい。また、図に例示したガイドスロープ25の上昇面25aは、後方に向かって斜め下向きに湾曲しているが、上昇面25aを平坦な傾斜面としてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、本体部2は、車両前部の下部から斜め後方下向きに吹き出す高温の空気(以下「熱風」という。)を受けることができる位置から、ホイールハウス10(図5参照)より後方の後記所定位置(負圧発生領域S)に至るまで車両の下部を覆うように設けられている。前記熱風は、例えば、走行中にフロントグリルからラジエータ26、コンデンサ27等の熱源を通過した後、車両前部の下部から斜め後方下向きに吹き出す高温の空気である。
【0019】
アンダーカバー1の本体部2において、上記熱風を受ける部分には、裏面が前記走行風導入部19として機能する隆起部13が形成されている。この隆起部13は、図4の矢印14で示すように斜め後方下向きに吹き出す熱風を、矢印15、16で示すように二手に分岐させ、後方両側部の負圧発生領域Sに向かって流すように形成されている。具体的に、隆起部13は、図5に示すように、本体部2の熱風を受ける部分2aにおいて、後方に向かって緩やかに高くなり、後端所定位置(矢印Pで示す位置)で急落した形状とされている。また、隆起部13の車幅方向については、図2に示すように、車幅方向中央位置から車幅方向両側に向かって緩やかに低くなっている。本実施形態では、隆起部13の後端の急落した部分に通風孔18,19a,20が形成されていることから本体部2の補強を目的として、隆起部13の2カ所に前後方向にリブ21が形成されている。なお、周知のとおり、自動車等の車両下面において、ホイールハウスより後方位置には必ず負圧発生領域が存在する。
【0020】
本体部2において、隆起部13より前側には、図5に示すように、後方の隆起部13に向かう気流を形成しやすくするために、斜め前方下向きに湾曲した湾曲部22が形成されている。
【0021】
また、本体部2においては、隆起部13によって二手に分岐されて、後方両側部に向かって流れる熱風を負圧発生領域Sの負圧作用により本体部2と車両下部との間から排出するため、アンダーカバー1は、負圧発生領域Sに開口した熱風排出口23を有している。本実施形態では、上記熱風排出口23は、中間部支持部4の後端縁と、本体部2の側端縁と、後部支持部5の前端縁と、車両下部とで囲まれる部分に形成される。
【0022】
本実施形態に係るアンダーカバー1を設置した車両によれば、走行中に、アンダーカバー1の下面に沿って後ろ向きに流れる走行風が走行風導入部19からアンダーカバー1の上面側に導入され、ガイドスロープ25の上昇面25aを登坂する。この登坂時に、走行風は、慣性により上昇面25aに押し付けられるため、上下方向よりも車幅方向に拡散し易い。このため、通風孔19aの車幅方向寸法が小さくても、通風孔19aから導入された走行風は、ガイドスロープ25の頂部25bから離脱するまでに、車幅方向に大きく拡散され、冷却対象物が車幅方向に大きなものであっても当該冷却対象物を全体的に冷却することができる。また、走行風はガイドスロープ25を登坂する際に上下方向に余り拡散しないため、冷却対象物の特定の高さ位置を狙って集中的に冷却することが可能である。図3に示すように、本実施形態では、エンジン24の上部を狙って走行風を当てている。エンジン24の上部に当たった低温の走行風は、エンジン24の上部に当たった後、エンジン全体を覆い、エンジンを効率的に冷却する。図6および図7は、CFD(Computational Fluid Dynamics)を用いて走行風を流線で可視化して表したシミュレーション結果である。この図6および図7に示すように、走行風導入部19から導入された低温の走行風はガイドスロープ25から離脱した後、車幅方向に拡散しつつエンジン24の上部に当たり、その後エンジン24全体を覆うように広がっている。また、風洞実験によってもこのシミュレーション結果と同様の結果が得られた。
【0023】
また、本実施形態に係るアンダーカバー1によれば、走行中に、車両前方下部から図4の矢印14に示すように吹き出す熱風がアンダーカバー1の隆起部13に当たって矢印15,16に示すように、二手に分岐し、後方両側部の負圧発生領域Sに開口した熱風排出口23へ向かって流れ、負圧作用により、アンダーカバー1と車両下部との間を流れる熱風がアンダーカバー1の外に排出される。その結果、ラジエータ26、コンデンサ27等の熱源が設置された区画室28内(図5参照)の熱気の排出が促される。
【0024】
また、アンダーカバーに設けられた走行風導入部19と隆起部13とは同じ部位の裏表に形成されているので、走行風導入部19から導入される冷たい走行風と、隆起部13において二手に分岐する熱風とが別々の流路を形成し、温度差のある2つの風が混ざり合うことがないようになっている。したがって、本実施形態に係るアンダーカバー1によれば、1つのアンダーカバー1で既述の2つの異なる作用効果が得られる。
【0025】
<実施形態の変形例>
既述した実施形態に係るアンダーカバー1において、通風孔19以外の通風孔18,20を塞いだもの、リブ21を省略したもの等を採用してもよい。そのようなアンダーカバーであっても既述した作用効果が得られることはいうまでもない。
【0026】
冷却対象物は、エンジンに限定されず、床下に設置され、熱を発生する他の装置、機器類(例えばトランスミッション、排気管など)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば、自動車の下部を覆うように設置されるアンダーカバーに適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 アンダーカバー
24 エンジン(冷却対象物)
19 走行風導入部
25 ガイドスロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7