(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127255
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】振動警報パッチ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/44 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
B60N2/44
【請求項の数】23
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-520646(P2015-520646)
(86)(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公表番号】特表2015-521974(P2015-521974A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013049050
(87)【国際公開番号】WO2014008251
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】61/667,614
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508267912
【氏名又は名称】トヨタ ボウショク アメリカ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ロックウェル,クリストファー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】クルーガー,ジュニアー,ダグラス,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスワナサン,アヌップ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーガンド,ダニエル,ジェローム
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−225877(JP,A)
【文献】
特開2008−132910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の座席のシートクッションであって、
発泡樹脂から形成されるとともに、上面を有するクッションと、
前記クッションの前記上面またはその近傍に配置された少なくとも一つのモータアセンブリと、
を備え、
前記少なくとも一つのモータアセンブリが複数の変換器セルを含むとともに、一片のファブリックを含み、前記複数の変換器セルが、前記一片のファブリック内に封入されて振動警報パッチを画定し、前記振動警報パッチが可撓性を有する、シートクッション。
【請求項2】
前記クッションが、ポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項3】
前記クッションが、実質的に平坦な表面を有するシート部と、前記シート部の両側に配置されたボルスタと、を含み、前記少なくとも一つのモータアセンブリが2つの振動警報パッチを含み、前記2つの振動警報パッチのうちの一つが前記ボルスタのうちの一方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項4】
前記少なくとも一つのモータアセンブリが、道路事象に応答して振動することを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項5】
センサが前記道路事象を検出してコントローラに信号を送信し、前記コントローラが、前記少なくとも一つのモータアセンブリに別の信号を送信して、該少なくとも一つのモータアセンブリを振動させることを特徴とする請求項4に記載のシートクッション。
【請求項6】
前記複数の変換器セルが、ワイヤによって直列に接続されることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項7】
前記複数の変換器セルが、リニア共振アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項8】
前記複数の変換器セルが、9〜16Vの合成電圧を発生させることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項9】
前記一片のファブリックが、ポリエステル織物であることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項10】
前記振動警報パッチが、3mmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項11】
前記複数の変換器セルが、取付手段に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項12】
前記取付手段が、ポリエステルシートであることを特徴とする請求項11に記載のシートクッション。
【請求項13】
発泡樹脂の層が、前記少なくとも一つのモータアセンブリを覆うように配置されることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項14】
発泡樹脂から形成された、上面を有するクッションと、
前記クッションの前記上面またはその近傍に配置された少なくとも一つのモータアセンブリであって、一片のファブリックと、前記一片のファブリック内に封入されて振動警報パッチを画定する複数の変換器セルと、を含み、前記複数の変換器セルが、ワイヤによって直列に接続されており、道路事象に応答して振動し、かつ、前記振動警報パッチが、可撓性を有する、少なくとも一つのモータアセンブリと、
前記道路事象を検出するセンサと、
コントローラと、
を含み、
前記センサが、前記道路事象を検出して前記コントローラに信号を送信し、前記コントローラが、前記少なくとも一つのモータアセンブリに別の信号を送信して、該少なくとも一つのモータアセンブリを振動させる、車用座席アセンブリ。
【請求項15】
前記クッションが、ポリウレタン発泡体から形成されることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項16】
前記複数の変換器セルが、リニア共振アクチュエータであることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項17】
前記一片のファブリックが、ポリエステル織物であることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項18】
前記振動警報パッチが、3mmの厚さを有することを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項19】
発泡樹脂の層が、前記少なくとも一つのモータアセンブリを覆うように配置されることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項20】
前記少なくとも一つのモータアセンブリが、前記クッションの前記上面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項21】
前記振動警報パッチが、折り曲げ可能であることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション。
【請求項22】
前記少なくとも一つのモータアセンブリが、前記クッションの前記上面に配置されることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【請求項23】
前記振動警報パッチが、折り曲げ可能であることを特徴とする請求項14に記載の車用座席アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2012年7月3日出願の米国特許仮出願第61/667,614号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライバーは運転時に非常に多くの視聴覚信号や刺激に曝されうる。運転中に事象が発生した場合、ドライバーの注意を引くように音声または視覚の警報が生成される。一例では、乗物がレーンから逸脱していることをセンサが検出した場合に、事象が発生する。しかしながら、ドライバーが曝されるその他の非常に多くの視聴覚の信号または刺激により、音声または視覚の警報がドライバーの注意を引き付けない場合がある。
【0003】
ドライバーに事象の発生を警告するように触覚による警報が設けられうる。一例では、事象が発生した場合に、シートクッション内に配置されたモータが振動して、ドライバーに対し触覚による警報を提供する。従来のモータは、締結具によって互いに固定された部分を含む金属モータハウジングを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
車の座席のシートクッションが、発泡樹脂から形成されたクッションと、クッションの上面またはその近傍に配置された少なくとも一つのモータアセンブリと、を含む。少なくとも一つのモータアセンブリが、複数の変換器セルを含む。
【0005】
車用座席アセンブリが、発泡樹脂から形成されたクッションと、クッションの上面またはその近傍に配置された少なくとも一つのモータアセンブリと、を含む。少なくとも一つのモータアセンブリは、一片のファブリックと、振動警報パッチを画定するようにその一片のファブリック内に封入された複数の変換器セルと、を含む。複数の変換器セルは、ワイヤによって直列に接続されており、少なくとも一つのモータアセンブリは、道路事象(road event)に応答して振動する。車用座席クッションアセンブリは、道路事象を検出するセンサと、コントローラと、を含む。センサは、道路事象を検出してコントローラに信号を送信し、コントローラは、少なくとも一つのモータアセンブリに別の信号を送信して、その少なくとも一つのモータアセンブリを振動させる。
【0006】
以下の記載および図面から、これらの本発明の特徴およびその他の特徴が理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】振動警報パッチの内部コンポーネントを示す図。
【
図7】上面に通気発泡樹脂を有するクッションの斜視図。
【
図8】振動警報パッチを覆うように配置された発泡樹脂の斜視図。
【
図9】クッションのサイドボルスタおよび振動警報パッチの断面図。
【
図10】振動警報パッチの一例の形態を含んだ車の座席を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、車の座席64のクッション20を示す。一例では、車の座席64は運転席である。クッション20は成形工程によって製造されるとともに、シート部22を含み、このシート部は、実質的に平坦な上面24と、それぞれシート部22の片側に配置された2つのサイドボルスタ(side bolster)26と、を有する。一例では、クッション20は、発泡樹脂から形成される。一例では、クッション20は、ポリウレタン発泡体から形成される。クッション20は、成形工程時に形成された成形凹部28を含む。一例では、2つのサイドボルスタ26の各々は、成形凹部28を含む。触覚モータである振動警報パッチ30が、クッション20の各成形凹部28内に配置される。
【0009】
図2は、触覚モータ、例えば振動警報パッチ30の内部コンポーネントを示す。振動警報パッチ30は、複数の変換器セル(transducer cell)32の列を含む。一例では、4つの変換器セル32を有する。一例では、変換器セル32は、それぞれリニア共振アクチュエータ(LRA)である。一例では、変換器セル32は、それぞれコイン型の変換器セルである。リニア共振アクチュエータについて図示および記載するが、変換器セル32は、それぞれ、振動表面変換器セル(vibration surface transducer cell)または偏心回転質量(ERM)モータであってもよい。
【0010】
変換器セル32は、それぞれ実効値で約2Vの定格電圧を有する。それらの変換器セル32は、同じ位相および振動数を有し、変換器セル32の各々からの振動が、座席表面に適用される全振動に加えられる。一例では、変換器セル32は、高いG力定格を有する。一例では、変換器セル32は、約1.4GのG力定格を有する。
【0011】
一例では、変換器セル32は、所望の振動警報を実現するようにワイヤ34によって直列に接続される。別の例では、変換器セル32は、所望の振動警報を実現するようにワイヤ34によって並列に接続される。また変換器セル32は、所望の振動警報を実現するようにワイヤ34によって直列および並列の両方で接続されてもよい。変換器セル32は特定の周波数の交流電圧を用いて、振動共振を発生させる。
【0012】
一例では、各変換器セル32は、同じ位相および振動数を有する。変換器セル32の振動警報が合算されて所望の振動警報を規定する。振動の加法的な性質は、変換器セル32間の間隔の影響を受ける。振動の性質もまた、以下に記載する可撓性取付手段44の減衰および補強の影響を受ける。一例では、振動警報は約12Vである。一例では、振動警報は、約9V〜約16Vである。
【0013】
変換器セル32は、一片のファブリック36の部位36aと部位36bとの間に配置される。一例では、一片のファブリック36は、ポリエステル織物である。一片のファブリック36が折曲部38に沿って折り重ねられて、部位36a,36bを画定する。
図3に示すように、部位36a,36bがそれぞれ接着剤で固定されて、
図4に示すように、それらの間に変換器セル32を保持し、完全に封入する。一例では、接着剤はポリエステル接着剤である。
【0014】
振動警報パッチ30は、薄く、可撓性を有しており、それにより成形クッション20への直接の接着を可能にする。一例では、振動警報パッチ30は、約X+/−1mmの厚さを有する。一例では、Xは約3mmである。以下に説明するように、コントローラ60に接続するようにワイヤ35が振動警報パッチ30から延在する。
【0015】
一例では、ワイヤ34の代わりに、変換器セル32が可撓性取付手段44に取り付けられる。一例では、可撓性取付手段44は、プリント回路である。一例では、可撓性取付手段44は、ポリエステルシートである。一例では、取付手段44は、デラウェア州ウィルミントンのデュポン社のMylar(登録商標)である。
【0016】
別の例では、変換器セル32は、パッチ内に封入される。一例では、パッチはゴムから形成される。パッチを使用することにより、変換器セル32を乗員に近接するように配置することができる。
【0017】
マイクロコントローラ(図示せず)は、各変換器セル32に対し所望のレベルの制御を行うように、モータ駆動回路を制御する複数の出力パルス幅変調比率信号(multiple output PWM percentages signals)を送出する(例えば、175Hz、実効値で2Vの交流信号を出力する)。この装置は複数の振動変換器配置と動作パターンを通して触覚振動を生成する。
【0018】
一例では、各変換器セル32は、精密マイクロドライブ精密触覚Y軸リニア共振アクチュエータ(Precision Microdrives Precision Haptic Y-Axis Linear Resonant Actuator)である。
図5は、ワイヤ34を含むリニア共振アクチュエータ(LRA)を示す。
【0019】
図6は、
図5の変換器セル32の分解組立図を示す。変換器セル32(リニア共振アクチュエータ)は、変換器セル32の外郭を画定するモータカバー68およびモータシャーシ70を含む。モータカバー68およびモータシャーシ70内に収容されているのは、ウェーブスプリング72、可動マス74、ボイスコイル76、および、ワイヤ34が取り付けられた、開口部84を含むフレキシブルプリント回路基板78(PCB)である。ボイスコイル76は、プリント回路基板78の開口部84に収容される。可動マス74は、ボイスコイルヨーク80と、NeFeBネオジム磁石82と、を含む。
【0020】
リニア共振アクチュエータは、ワイヤ34を介した交流信号によって駆動される。ボイスコイル76を通して励振される電流が磁場を生じさせ、それにより可動マス74内のNeFeBネオジム磁石82をボイスコイル76に反応させて、可動マス74を移動させる。ウェーブスプリング72の可動マス74との接触により振動を生み出す共鳴効果を生じさせる。
【0021】
一例では、各変換器セル32、すなわち
図5,6のリニア共振アクチュエータは次のパラメータを有する。
【0023】
図7は、2つの成形凹部28と、各成形凹部28内に配置された振動警報パッチ30と、を含んだクッション20の斜視図を示す。2つの成形凹部28および2つの振動警報パッチ30のみについて図示および記載したが、クッション20の任意の位置または任意の形態に任意の数の振動警報パッチ30を配置してもよい。マット50がクッション20のシート部22の平坦な上面24に配置される。マット50は、通気を可能にする穴52を含む。一例では、マット50はポリエステルで形成される。
【0024】
図8は、外表面上の2つの振動警報パッチ30の各々の上に配置された発泡樹脂54の層を含んだクッション20の斜視図を示す。発泡樹脂54の層は、2つの振動警報パッチ30を保護する追加のクッション性を提供するとともに、ドライバーが感じる2つの振動警報パッチ30による不快感を防ぐ。一例では、発泡樹脂54の各層はポリウレタン製である。一例では、発泡樹脂54の層は、約Y+/−1mmの厚さを有する。一例では、Yは5である。別の例では、2つの振動警報パッチ30は、成形工程時にクッション20の上面付近に埋め込まれ、発泡樹脂54の層を必要としない。
【0025】
図9は、
図8の線A−Aに沿って切断したクッション20のサイドボルスタ26の断面図を示す。成形凹部28に振動警報パッチ30を固定するように接着剤56が用いられる。トリムカバー58がクッション20を覆うように配置されて、運転時にドライバーが着座する車の座席64の外表面を提供する。
【0026】
図1に戻ると、ワイヤ35が、振動警報パッチ30とコントローラ60との通信を可能にする。コントローラ60はまた道路事象を検出するセンサ62と連通する。一例では、車がレーンからはずれた場合、別の車が接近した場合、正面衝突が発生した場合、あるいは後方衝突が発生した場合に、道路事象が発生する。センサ62が道路事象を検出したときに、信号がコントローラ60に送信される。次いでコントローラ60が、センサ62からの信号に応答して振動警報パッチ30に信号を送信する。コントローラ60からの信号に応答して振動警報パッチ30がクッション20上で振動して、ドライバーが体感できる触覚信号およびフィードバックを提供し、ドライバーに道路事象を警告する。一例では、振動警報パッチ30は、座席−乗員接触部で測定される約175Hzの、50m/s
2を上回る加速度で振動する。複数の変換器セル32を互いに離間させることにより、振動の感知が向上する。
【0027】
別の例では、複数の装置を作動させるようにコントローラ60からの信号が任意の増幅器90(
図4に示す)によって増幅される。別の例では、コントローラ60は、共鳴振動数を低下させるように低頻度の間隔で信号を送信しうる。
【0028】
図10は、6個の振動警報パッチ30a,30b,30c,30d,30e,30fを含む、クッション20およびバックレスト66を含んだ車の座席64を示す。振動警報パッチ30a,30bは、それぞれ、2つのシートボルスタ26のうちの一方に配置される。振動警報パッチ30cは、2つのシートボルスタ26の間のシート部22に配置される。3つの振動警報パッチ30d,30e,30fは、バックレスト66に配置される。振動警報パッチ30d,30eは、それぞれ、シートボルスタ26上の振動警報パッチ30a,30bと揃えられる。振動警報パッチ30fは、振動警報パッチ30cと揃えられる。
図10は振動警報パッチ30の一例の形態または配置を示す。一方、振動警報パッチ30は任意の形態に配置してもよい。
【0029】
上記の記載は本発明の原理の例示に過ぎない。上記の教示に照らして多くの修正および変形が可能である。したがって、特に記載した実施例を用いることなく付記の特許請求の範囲内で本発明が実施されうることを理解されたい。そのため、本発明の真の範囲および内容を決定すべく以下の特許請求の範囲を検討すべきである。