特許第6127257号(P6127257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127257
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】床面構造及びそれに用いる排水仕切部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20170508BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20170508BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   E04D13/04 J
   E04B1/64 B
   E04F15/00 T
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-76703(P2013-76703)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201900(P2014-201900A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 覚
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−218060(JP,A)
【文献】 実開平02−134203(JP,U)
【文献】 特開2008−223239(JP,A)
【文献】 特開2007−321337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04B 1/64
E04B 1/00
E04F 15/00−15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の水平部の上面に、水平部の全長に亘る立ち上がり部の下端部を係合又は嵌合させた、略逆T字形の断面形状を有する排水仕切部材を、床面上に設け、床面を排水仕切部材で区画し
前記排水仕切部材の水平部の上面に係合溝若しくは嵌合溝が形成されると共に、前記排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合凸部若しくは嵌合凸部が形成されるか、又は、前記排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合溝若しくは嵌合溝が形成されると共に、前記排水仕切部材の水平部の上面に係合凸部若しくは嵌合凸部が形成されており、
前記係合溝若しくは嵌合溝、又は、前記係合凸部若しくは嵌合凸部が、係合又は嵌合によって変形する変形体を具備すること、
を特徴とする床面構造。
【請求項2】
排水仕切部材の水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成されると共に、排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合凸部又は嵌合凸部が形成され、これらの係合溝又は嵌合溝と係合凸部又は嵌合凸部が係合又は嵌合して水平部と立ち上がり部が一体化されていることを特徴とする、請求項1に記載の床面構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された床面構造に用いられる、水平部と立ち上がり部とで構成される排水仕切部材であって、水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成され、この係合溝又は嵌合溝に係合又は嵌合する係合凸部又は嵌合凸部が立ち上がり部の下端部に形成されていることを特徴とする排水仕切部材。
【請求項4】
水平部が軟質の合成樹脂又はゴムで形成されており、立ち上がり部が水平部よりも硬質の合成樹脂もしくはゴム又は金属、木材又はこれらを組合わせて形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の排水仕切部材。
【請求項5】
水平部の上面に全長に亘って排水溝が形成され、排水溝の前記立ち上がり部と反対側の溝縁の高さが水平部の側端側から立ち上がり部側に近づくにつれて高くなって土手状に溝縁が形成されていることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の排水仕切部材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅のバルコニーや共用廊下などの床面に適用される床面構造と、それに用いる排水仕切部材に関し、更に詳しくは、床面を排水仕切部材で区画することによって、その床面の区画領域内で植物に水やりをしたり床面を水掃除したときの排水が区画領域外の床面に流出するのを防止できるようにした床面構造と、それに用いる分割式の排水仕切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
バルコニーの排水仕切部材として、本出願人が既に提案した以下のようなバルコニーの排水仕切部材が知られている(特許文献1)。
即ち、この特許文献1に記載されたバルコニーの排水仕切部材は、連続するバルコニーを各住居の相当領域ごとに仕切り板で区切った集合住宅において、バルコニーに敷設された床シートの自家相当領域と隣家相当領域との境界線近傍に設置することで、自家相当領域のバルコニーから隣家相当領域のバルコニーへ排水が流出するのを防止することができる排水仕切部材であって、水平部と立ち上がり部からなる略逆T字形をしており、水平部の厚みが両隣に敷設された床シートと同じ乃至略同じで、その長さがバルコニーの幅と同じ乃至略同じであることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の排水仕切部材をバルコニーなどの床面に敷設して床面を区画した床面構造では、排水仕切部材の敷設箇所によって、排水仕切部材の立ち上がり部が歩行や物を移動させるときの妨げになるといった不都合を生じる場合があり、そのような場合に邪魔な立ち上がり部を一時的に除去しようとしても、立ち上がり部は水平部と不可分一体に形成されて除去できないため、不都合を解消できないという問題があった。
【0005】
また、前記特許文献1の排水仕切部材は水平部と立ち上がり部を分割できず、略逆T字形の立体的形状のまま保管、輸送せざるを得ないため、保管、輸送容積が大きくなって保管、輸送コストが高くつくという問題があり、また、保管、輸送中に破損する恐れもあった。
【0006】
本発明は、上記の問題や恐れを解消することができる床面構造と排水仕切部材を提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため、本発明に係る床面構造は、
帯状の水平部の上面に、水平部の全長に亘る立ち上がり部の下端部を係合又は嵌合させた、略逆T字形の断面形状を有する排水仕切部材を、床面上に設け、床面を排水仕切部材で区画し
前記排水仕切部材の水平部の上面に係合溝若しくは嵌合溝が形成されると共に、前記排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合凸部若しくは嵌合凸部が形成されるか、又は、前記排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合溝若しくは嵌合溝が形成されると共に、前記排水仕切部材の水平部の上面に係合凸部若しくは嵌合凸部が形成され、
前記係合溝若しくは嵌合溝、又は、前記係合凸部若しくは嵌合凸部が、係合又は嵌合によって変形する変形体を具備すること、
を特徴とするものである。
【0008】
本発明の床面構造においては、排水仕切部材の水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成されると共に、排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合凸部又は嵌合凸部が形成され、これらの係合溝又は嵌合溝と係合凸部又は嵌合凸部が係合又は嵌合して水平部と立ち上がり部が一体化されていることが望ましい。
【0009】
また、上記の床面構造に用いられる本発明の排水仕切部材は、水平部と立ち上がり部とで構成される排水仕切部材であって、水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成され、この係合溝又は嵌合溝に係合又は嵌合する係合凸部又は嵌合凸部が立ち上がり部の下端部に形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の排水仕切部材においては、水平部が軟質の合成樹脂又はゴムで形成され、立ち上がり部が水平部よりも硬質の合成樹脂もしくはゴム又は金属、木材又はこれらを組合わせて形成されていることが望ましい。そして、水平部の上面に全長に亘って排水溝が形成され、排水溝の前記立ち上がり部と反対側の溝縁の高さが水平部の側端側から立ち上がり部側に近づくにつれて高くなって土手状に溝縁が形成されていることが望ましい。
【0011】
なお、本発明にいう「係合凸部又は嵌合凸部」には、立ち上がり部の下端部から突き出して水平部の係合溝又は嵌合溝に係合又は嵌合する凸部の他に、水平部の係合溝又は嵌合溝に係合又は嵌合する立ち上がり部の下端部そのものも含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の床面構造のように、水平部の上面に立ち上がり部の下端部を係合又は嵌合させた略逆T字形の断面形状を有する排水仕切部材を床面上に設けて床面を区画すると、例えば、区画領域内で植物に水やりをしたり床面を水掃除したときに区画領域外の床面へ流出しようとする排水が、立ち上がり部に当たって堰き止められるので、区画領域外の床面へ排水が流出するのを防止することができる。
しかも、立ち上がり部の下端部は水平部の上面に係合又は嵌合されているので、立ち上がり部が歩行や物を移動させるときの妨げになるといった不都合を生じる場合には、立ち上がり部を水平部から分離、除去して不都合を解消することができる。また、立ち上がり部が破損したり、立ち上がり部の形状や意匠を変更したい場合に、立ち上がり部の交換も容易である。
更に、上記の変形体を具備することにより、水平部と立ち上がり部との水密性を高め、ガタツキをなくして係合又は嵌合を強固にできる。
【0013】
また、本発明の床面構造において、排水仕切部材の水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成されると共に、排水仕切部材の立ち上がり部の下端部に係合凸部又は嵌合凸部が形成され、これらの係合溝又は嵌合溝と係合凸部又は嵌合凸部が係合又は嵌合して水平部と立ち上がり部が一体化されていると、水平部の上面と立ち上がり部の下端部との係合又は嵌合の構造が簡単となり、しかも、安定して係合又は嵌合させることができ、立ち上がり部の脱着も一層容易になる。
【0014】
また、本発明の排水仕切部材のように、水平部と立ち上がり部とで構成される排水仕切部材であって、水平部の上面に全長に亘って係合溝又は嵌合溝が形成され、この係合溝又は嵌合溝に係合又は嵌合する係合凸部又は嵌合凸部が立ち上がり部の下端部に形成されているものは、これを床面に設けて床面を区画すると上述した作用効果を得ることができ、しかも、水平部と立ち上がり部を分割して保管、輸送できるため、保管、輸送容積が小さくなって保管、輸送コストを下げることが可能となり、また、略逆T字形の立体的形状のまま保管、輸送せざるを得ない前記特許文献1の排水仕切部材のように保管、輸送中に破損する心配も解消することができる。
【0015】
そして、本発明の排水仕切部材において、水平部が軟質の合成樹脂又はゴムで形成され、立ち上がり部が水平部よりも硬質の合成樹脂もしくはゴム又は金属、木材又はこれらを組合わせて形成されているものは、床面に若干の不陸があったとしても、水平部が柔軟であるため不陸に追従して設置することができ、一方、立ち上がり部は剛性があるため倒れたり破損するなどの不具合を未然に防止することができる。また、水平部が柔軟で立ち上がり部が剛性を有していると、水平部の係合溝又は嵌合溝と立ち上がり部の係合凸部又は嵌合凸部との係合又は嵌合による脱着作業も容易に行うことができる。
【0016】
更に、水平部の上面に全長に亘って排水溝が形成され、排水溝の前記立ち上がり部と反対側の溝縁の高さが水平部の側端側から立ち上がり部側に近づくにつれて高くなって土手状に溝縁が形成されていると、区画領域外へ流出しようとする排水が土手状の溝縁を乗り越えて立ち上がり部で堰き止められ、その後、区画領域内へ逆流しようとする排水を溝縁が効果的に抑制することができる。しかも、溝縁の高さが立ち上がり部に近づくにつれて高くなっていると、排水が溝縁を容易に乗り越えることができ、乗り越えるときに排水の勢いがある程度弱められるので、区画領域内への逆流をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る床面構造の斜視図である。
図2図1のX−X線に沿った拡大断面図である。
図3】(a)は同床面構造に用いられる本発明の排水仕切部材の斜視図、(b)は同排水仕切部材の分解断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る床面構造の平面図である。
図5】本発明の更に他の実施形態に係る床面構造の平面図である。
図6】(a)〜(f)はいずれも水平部の上面と立ち上がり部の下端部との異なる係合形態を示す分解部分断面図である。
図7】(a)〜(c)はいずれも水平部の上面と立ち上がり部の下端部との異なる嵌合形態を示す分解部分断面図である。
図8】(a)〜(d)は水平部の上面と立ち上がり部の下端部との更に異なる係合形態を示す分解部分断面図である。
図9】(a)は下端部に係合凸部が連続して形成された立ち上がり部の斜視図、(b)は下端部に係合凸部が不連続に形成された立ち上がり部の斜視図である。
図10】本発明の更に他の実施形態に係る排水仕切部材の断面図である。
図11】本発明の更に他の実施形態に係る排水仕切部材の部分断面図である。
図12】立ち上がり部を分離除去した後の水平部の係合溝にキャップを取付けたところを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る床面構造の実施形態と、本発明に係る排水仕切部材の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る床面構造の斜視図、図2図1のX−X線に沿った拡大断面図、図3の(a)は同床面構造に用いられる本発明の排水仕切部材の斜視図、(b)は同排水仕切部材の分解断面図、図4は本発明の他の実施形態に係る床面構造の平面図、図5は本発明の更に他の実施形態に係る床面構造の平面図である。
【0020】
図1に例示する床面構造は、分割式の排水仕切部材1を集合住宅のバルコニーの床面5上に出幅d方向に設けて床面5を左右に区画し、その片側部分(図1では向かって左側部分)を閉ざされた区画領域CAとしたものである。排水仕切部材1による床面5の区画の仕方は自由であり、例えば、図4に例示する床面構造のように、2つの排水仕切部材1,1を直角に接続して床面5の一つの隅角部を閉ざされた区画領域CAとしたり、図5に例示する床面構造のように、4つの排水仕切部材1,1,1,1を方形に接続して床面5の中央部を閉ざされた区画領域CAとするなど、所望の形状に区画すればよい。また、図示はしていないが、集合住宅の連続したバルコニーの床面における自家領域と隣家領域との境界部分、例えば仕切り板(隔て板)の下側に排水仕切部材を設けて、自家領域の床面と隣家領域の床面を明確に区画してもよい。
【0021】
上記の排水仕切部材1は、バルコニーの床面5の出幅d(バルコニー前縁の凹溝5aを除いた出幅)と同一もしくは略同一の長さを有するものであって、帯状の水平部2と、該水平部2の全長に亘って該水平部2の幅方向中央部分から立ち上がる立ち上がり部3とを備えた、断面形状が略逆T字形の部材であり、下記のように立ち上がり部3の下端部が水平部2の上面に脱着可能に係合されて、水平部2と立ち上がり部3が分割可能に一体化されたものである。
【0022】
即ち、この排水仕切部材1の水平部2は、図3の(a)(b)に示すように、その幅方向中央部2aの上面が全長に亘って隆起し、この隆起した部分に偏平な逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2bが水平部2の全長に亘って形成されている。一方、立ち上がり部3の下端部には、上記係合溝2bに対応した逆T字形の断面形状を有する係合凸部3bが立ち上がり部3の全長に亘って連続して形成されており、この係合凸部3bが水平部2の係合溝2bに脱着可能に係合されて、水平部2と立ち上がり部3が分割可能に一体化されている。この排水仕切部材1の更に具体的な構成は、後で詳しく説明する。
【0023】
図2に示すように、この排水仕切部材1の平面部2はバルコニーのコンクリート製の床面5に貼着剤6で貼着されており、その両側の床面5には、床材7が床用接着剤8で接着されている。そして、排水仕切部材1の水平部2の両側端と、その両側の床材7の側端は、コーキング材9で水密的に接合されている。なお、コーキング材9に代えて、シーム液や樹脂溶接棒で水密的に接合してもよい。また、図示はしていないが、排水仕切部材1の水平部2の前端と、水平部2及び立ち上がり部3の後端も、同様にコーキング材で水密的にコーキングすることが好ましい。
【0024】
床面5はコンクリート製に限定されるものではなく、モルタル製、木製、金属製など、建築物に採用される一般的な材質の床面であれば、本発明の床面構造を適用することができる。
【0025】
排水仕切部材1の水平部2を貼着する貼着剤6としては、後述する床用接着剤8と同様の接着剤や粘着剤が使用され、特に、一液反応性のウレタン系接着剤などが好ましく使用される。また、貼着剤6として両面粘着テープを用いて、排水仕切部材1の水平部2を貼着してもよく、更に、貼着する必要がない場合には、排水仕切部材1を床面5に単に置き敷きするだけでもよい。
【0026】
床材7としては、バルコニー、ベランダ、廊下などに敷設するのに適した、軟質もしくは半硬質もしくは硬質の塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂で製造された外装用の床材が好ましく使用される。この床材7は長尺シート状のものでもタイル状のものでもよく、また、下層に発泡層や不織布層を有するクッション性の床材であってもよい。なお、床材7は不要であれば省略しもよい。
【0027】
床材7を接着する床用接着剤8としては、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、変成シリコーン系などの硬化型の接着剤やゴム系の接着剤などが使用され、この中でも耐水性に優れたウレタン系やエポキシ系の一液反応性又は二液混合型の接着剤が好ましく使用される。この床用接着剤8は、櫛目ごてを用いて、多数の凸条が間隔をあけて形成されるように塗布することが好ましい。
【0028】
上記の床面構造のように、水平部2の上面の係合溝2bに立ち上がり部3の下端部の係合凸部3bを脱着可能に係合させた略逆T字形の断面形状を有する排水仕切部材1を床面5に設けて床面5を排水仕切部材1で区画すると、閉塞された区画領域CA内の床面の床材7の上で植物に水やりをしたり、区画領域CA内の床面の床材7を水掃除したときに、区画領域CA内の床面の床材7から区画領域CA外の床面5の床材7へ流出しようとする排水が、排水仕切部材1の立ち上がり部3に当たって堰き止められるので、区画領域CA外の床面5の床材7へ排水が流出するのを防止することができる。なお、区画領域CA以外の領域で水を使用した場合においても、区画領域CAへの水の流入が同様に防止できることは、言うまでもない。
【0029】
しかも、立ち上がり部3の下端部の係合凸部3bは、水平部2の上面の係合溝2bに脱着可能に係合されているので、立ち上がり部3が歩行や物を移動させるときの妨げになるなどの不都合を生じる場合には、立ち上がり部3を水平部2から分離、除去して不都合を解消することができ、また、立ち上がり部3が破損した場合や、立ち上がり部3の形状や意匠を変更したい場合に、立ち上がり部3の交換も容易である。加えて、水平部と立ち上がり部を分割して保管、輸送できるため、保管、輸送容積が小さくなって保管、輸送コストを下げることが可能となり、また、略逆T字形の立体的形状のまま保管、輸送せざるを得ない従来の排水仕切部材のように保管、輸送中に破損する心配も解消することができる。
【0030】
本発明の排水仕切部材は、上記のように水平部2の上面に形成した係合溝2bに、立ち上がり部3の下端部に形成した係合凸部3bを脱着可能に係合させたものでもよいし、水平部2の上面に形成した嵌合溝に、立ち上がり部3の下端部に形成した嵌合凸部を脱着可能に嵌合させたものでもよいし、水平部2の上面に形成した係合凸部を、立ち上がり部3の下面に形成した係合溝に脱着可能に係合したものでもよいし、水平部2の上面に形成した嵌合凸部を、立ち上がり部3の下面に形成した嵌合溝に脱着可能に嵌合したものでもよい、
【0031】
図6の(a)〜(f)は、本発明の排水仕切部材における水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部との代表的な係合形態を示す分解部分断面図であって、
図6の(a)に示す係合形態は、前述したように、水平部2の上面に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2bを形成する一方、この係合溝2bに対応した逆T字形の断面形状を有する係合凸部3bを立ち上がり部3の下端部に形成し、この係合凸部3bを上記係合溝2bに脱着可能に係合させたものであり、
図6の(b)に示す係合形態は、水平部2の上面に二等辺台形の中空断面形状を有する係合溝2cを形成する一方、この係合溝2cに対応した二等辺台形の断面形状を有する係合凸部3cを立ち上がり部3の下端部に形成し、この係合凸部3cを上記係合溝2cに脱着可能に係合させたものであり、
図6の(c)に示す係合形態は、水平部2の上面に、左右内側面に凹条20dを有する係合溝2dを形成する一方、この係合溝2dの凹条20dに対応した凸条30dを両側面に有する係合凸部3dを立ち上がり部3の下端部に形成し、この係合凸部3dを上記係合溝2dに挿入して凸条30dを凹条20dに脱着可能に係合させたものであり、
図6の(d)に示す係合形態は、水平部2の上面にL字形の中空断面形状を有する係合溝2eを形成する一方、この係合溝2eに対応したL字形の断面形状を有する係合凸部3eを立ち上がり部3の下端部に形成し、この係合凸部3eを上記係合溝2eに脱着可能に係合させたものであり、
図6の(e)に示す形態は、水平部2の上面にT字形の断面形状を有する係合凸部2fを形成する一方、この係合凸部2fに対応したT字形の中空断面形状を有する係合溝3fを、立ち上がり部3の拡幅された下端部の下面に形成し、この係合溝3fに上記係合凸部2fを脱着可能に係合させたものであり、
図6の(f)に示す係合形態は、水平部2の上面に、左右側面に凹条20gを有する係合凸部2gを形成する一方、この係合凸部2gの凹条20gに対応した凸条30gを左右内側面に有する係合凹溝3gを、立ち上がり部3の拡幅された下端部に形成し、この係合凹溝3gに上記係合凸部2gを挿入して上記凸条30gを上記凹条20gに脱着可能に係合させたものであり、
これらの係合形態を適宜組み合わせた形態としてもよい。
【0032】
また、図7の(a)〜(c)は、本発明の排水仕切部材における水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部との代表的な嵌合形態を示す分解部分断面図であって、
図7の(a)に示す嵌合形態は、水平部2の上面にU字形の中空断面形状を有する嵌合溝2hを形成する一方、この嵌合溝2hに対応した長方形の断面形状を有する嵌合凸部3hを立ち上がり部3の下端部に形成し、この嵌合凸部3hを上記嵌合溝2hに脱着可能に嵌合させたものであり、
図7の(b)に示す嵌合形態は、水平部2の上面にU字形の中空断面形状を有する複数の嵌合溝2iを形成する一方、これらの嵌合溝2iに対応した方形の断面形状を有する複数の嵌合凸部3iを、立ち上がり部3の拡幅された下端部の下面に形成し、これらの嵌合凸部3iを上記の嵌合溝2iに脱着可能に嵌合させたものであり、
図7の(c)に示す嵌合形態は、水平部2の上面に方形の断面形状を有する嵌合凸部2jを形成する一方、この嵌合凸部2jに対応した逆U字形の中空断面形状を有する嵌合溝3jを、立ち上がり部3の拡幅された下端部の下面に形成し、この嵌合溝3jに上記の嵌合凸部2jを脱着可能に嵌合させたものであり、
これらの嵌合形態を適宜組み合わせた形態としてもよい。
【0033】
図8の(a)〜(d)は、本発明の排水仕切部材における水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部との更に異なる係合形態を示す分解部分断面図であって、
図8の(a)に示す係合形態は、水平部2の上面に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2kを形成する一方、立ち上がり部3の下端部に逆T字形の断面形状を有する係合凸部3kを形成し、更に、この係合凸部3kの両側下端の角部に斜めの面取り部30kを設けることで、係合凸部3kを係合溝2kに容易に挿入して係合できるように図ったものである。
【0034】
そして、図8の(b)に示す係合形態は、水平部2の上面に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2mを形成して、その溝底に柔軟な発泡材などの板状の変形体20mを設ける一方、立ち上がり部3の下端部に逆T字形の断面形状を有する係合凸部3mを形成して、その両側下端の角部に面取り部30mを設け、この面取り部30mによって係合凸部3mを係合溝2mに挿入し易くすると共に、上記変形体20mによってガタツキをなくし、且つ、水平部2と立ち上がり部3との水密性を高めて排水が区画領域外へ流出するのを確実に防止できるように図ったものである。
【0035】
また、図8の(c)に示す係合形態は、水平部2の上面に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2nを形成する一方、立ち上がり部3の下端部に逆T字形の断面形状を有する係合凸部3nを形成して、その両側下端の角部に面取り部30nを設けると共に、両側面に軟質のフィン状の変形体31nを突設し、上記面取り部30nによって係合凸部3nを係合溝2nに挿入し易くすると共に、上記フィン状の変形体31nによってガタツキをなくし、且つ、水平部2と立ち上がり部3との水密性を高めて排水が区画領域外へ流出するのを確実に防止できるように図ったものである。
【0036】
また、図8の(d)に示す係合形態は、水平部2の上面に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2pを形成して、その溝底に軟質のフィン状の変形体20pを設ける一方、立ち上がり部3の下端部の逆T字形の断面形状を有する係合凸部3pを形成して、その両側下端の角部に面取り部30pを設け、この面取り部30pによって係合凸部3pを係合溝2pに挿入し易くすると共に、上記フィン状の変形体20pによってガタツキをなくし、且つ、水平部2と立ち上がり部3との水密性を高めて排水が区画領域外へ流出するのを確実に防止できるように図ったものである。
【0037】
上記の変形体20m,31n,20pは、係合溝2m,2p又は係合凸部3nと一体に設けていても別体で設けていてもよいが、水平部2と立ち上がり部3との水密性を高める観点、及び、ガタツキをなくして係合を強固にする観点から、係合溝2m,2p又は係合凸部3nの全長に亘って設けることが望ましく、また容易に変形できるように係合溝や係合凸部よりも柔軟な材質で形成することが望ましい。
なお、上記のような柔軟な変形体は、嵌合溝に嵌合凸部を嵌合させる形態においても、同様に設けることが望ましい。
【0038】
本発明の排水仕切部材は、上述した係合形態又は嵌合形態のいずれか、或いはこれらの形態の組み合わせにより、水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部を脱着可能に係合又は嵌合して、水平部2と立ち上がり部3を分割可能に一体化したものであるが、水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部を係合して一体化した排水仕切部材は、水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部を嵌合して一体化した排水仕切部材に比べると、立ち上がり部3が水平部2から簡単に外れないという利点があり、一方、水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部を嵌合して一体化した排水仕切部材は、水平部2に対する立ち上がり部3の脱着作業を容易に行えるという利点がある。
【0039】
水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部との係合は、水平部2の上面又は立ち上がり部3の下面に形成した係合溝の一端から、立ち上がり部3の下端部又は水平部2の上面に形成した係合凸部を係合溝の長さ方向にスライドさせて係合させるスライド係合としてもよいし、柔軟な材質を選択したり係合溝と係合凸部の形状を工夫することによって、係合溝に係合凸部を上側から押し込む押し込み係合としてもよいが、後者の押し込み係合にすると、スライド係合させるだけのスペースがない場合でも、水平部2と立ち上がり部3を容易に脱着できるようになる。
【0040】
立ち上がり部3の下端部に形成する係合凸部3bは、図3の(a)(b)、図9の(a)に示すように、立ち上がり部3の下端部の全長に亘って連続して形成する必要は必ずしもなく、図9の(b)に示すように、立ち上がり部3の下端部の全長に亘って不連続に形成されていてもよい。同様に、水平部2の上面に形成する係合凸部も、水平部2の全長に亘って連続して形成する必要がなく、不連続に形成されていてもよい。また、立ち上がり部3の下端部や水平部2の上面に形成する嵌合凸部も、立ち上がり部3や水平部2の全長に亘って連続して形成する必要がなく、不連続に形成されていてもよい。
このように係合凸部や嵌合凸部が不連続に形成されていると、これらを係合溝又は嵌合溝に押し込み係合又は押し込み嵌合する際に、係合凸部や嵌合凸部の長さに応じて脱着に要する力を容易にコントロールできるようになる。
なお、係合溝や嵌合溝は、水平部又は立ち上がり部の全長に亘って連続して形成する必要がある。
【0041】
また、立ち上がり部3を水平部2から取り外す必要がない箇所に排水仕切部材1を設置する場合、例えば、連続するバルコニーの床面の自家領域と隣家領域との境界部分のように、上方に仕切板などが取付けられて歩行することが基本的にない箇所に排水仕切部材1を設置する場合には、立ち上がり部3が歩行の妨げになることがなく、従って、水平部2から立ち上がり部3を取り外す必要がないので、そのような場合には、水平部2の上面と立ち上がり部3の下端部との係合部分又は嵌合部分を接着剤やシーリング材や粘着剤などで固着し、立ち上がり部3を強固に取付けるようにしてもよい。このようにすると、水平部2と立ち上がり部3との係合部分又は嵌合部分の水密性が一層向上する利点もある。
【0042】
水平部2の両側端の厚みは、床材7の厚みが1〜5mm程度であるので、これに合わせて1〜5mm程度とし、水平部2とその両側の床材7との継目部分を面一にすることが望ましい。そして、水平部2の両側端から、係合溝2b又は嵌合溝が形成される幅方向中央部2aに向かって厚みを漸増し、水平部2の幅方向中央部2aの高さ(厚み)を3〜15mm程度とするか、或いは、水平部2の幅方向中央部2aのみを隆起させてその高さ(厚み)を3〜15mm程度とすることが望ましい。なお、水平部2の幅方向中央部2aに係合溝2b又は嵌合溝を形成しないで、係合凸部又は嵌合凸部を形成する場合は、上記のように水平部2の両側端から幅方向中央部2aに向かって水平部2の厚みを漸増したり、水平部2の幅方向中央部2aのみを隆起させたりしなくてもよい。
【0043】
水平部2の幅は限定されないが、50〜100mm程度の幅とするのが適当である。この程度の幅があると、後述する他の実施例の排水仕切部材のように、水平部2の上面に排水溝を形成し、良好な排水性を付与できる利点があるので好ましい。
【0044】
立ち上がり部3の高さも特に限定されないが、20〜50mm程度の高さとするのが適当である。この程度の高さがあると、区画領域ACの内部から外部へ流出しようとする排水を充分に堰き止めて、排水の流出をほぼ確実に防止できるようになる。また、立ち上がり部3の厚みは、強度などを勘案すると、1〜5mm程度とするのが適当である。
【0045】
なお、水平部2及び立ち上がり部3は、長尺物として数m以上の長さで製造しておき、施工現場で区画領域ACの大きさに対応した長さに切断して使用することが望ましい。
【0046】
排水仕切部材1を構成する水平部2や立ち上がり部3は、例えば塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などの合成樹脂を用いて押出成形法などの公知の成形方法で容易に製造される。ただし、アルミニウムやステンレスなどの金属類、ゴム、石、木などの自然素材で形成されてもよい。
特に、水平部2が軟質塩化ビニル樹脂、軟質ポリオレフィン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの軟質の合成樹脂又はゴムで形成され、これよりも硬質の合成樹脂もしくはゴム又は金属、木材又はこれらを組み合わせたもので立ち上がり部3が形成されていると、床面5に若干の不陸があったとしても、水平部2が柔軟であるため不陸に追従して設置することができ、一方、立ち上がり部3は水平部2よりも剛性があるため倒れたり破損するなどの不具合を未然に防止することができる。水平部と立ち上がり部とが軟質系の合成樹脂で一体に形成されている場合や、本願発明のように別体で形成されている場合であっても立ち上がり部が軟質系の合成樹脂で形成されていると、直射日光や気温によって立ち上がり部が波打つなどの外観上や機能上の不具合を生じるおそれがあるが、先述したように、水平部2を軟質の合成樹脂等で形成し、立ち上がり部3をこれよりも硬質の合成樹脂等で形成すると、床面不陸への追従性を確保しながら、前記不具合の発生を防止することができる。加えて、水平部2が柔軟で立ち上がり部3が剛性を有していると、水平部2の係合溝2b又は嵌合溝と立ち上がり部3の係合凸部3b又は嵌合凸部との係合又は嵌合による脱着作業も容易に行うことができる。
また、水平部2と立ち上がり部3の双方が上記の軟質の合成樹脂又はゴムで形成されていると、巻き取ったり、折り曲げたりすることができるので、輸送や包装や保管等の点で有利である。
【0047】
図10は本発明の他の実施形態に係る排水仕切部材の断面図、図11は本発明の更に他の実施形態に係る排水仕切部材の部分断面図である。
【0048】
図10に例示する排水仕切部材1は、水平部2の隆起した幅方向中央部2a(以下、中央隆起部2aという)に逆T字形の中空断面形状を有する係合溝2bを水平部2の全長に亘って形成する一方、立ち上がり部3の下端部に上記係合溝2bに対応した逆T字形の断面形状を有する係合凸部3bを立ち上がり部3の全長に亘って形成し、この係合凸部3bを上記係合溝2bに脱着可能に係合して水平部2と立ち上がり部3を分割可能に一体化したものであって、水平部2の中央隆起部2aの両側の上面には、排水溝2q,2qが水平部2の全長に亘って形成されている。なお、図10において、排水溝2q,2qは、立ち上がり部3の両側に形成されているが、排水溝2qは片側にのみ形成されていてもよいし、必要性がなければ中央隆起部2aを省略してもよい。
【0049】
この排水溝2q,2qの立ち上がり部3(中央隆起部2a)と反対側の溝縁2r,2rは、図10に示すように、その高さが水平部2の両側端側から立ち上がり部3(中央隆起部2a)に近づくにつれて徐々に高くなって土手状に形成されており、この土手状の溝縁2r,2rの上部は、立ち上がり部3に向かって斜め上方に迫り上がる小さな水返し部に形成されている。そして、この溝縁2rの内側面は凹湾曲面とされている。また、排水溝2q,2qの底面には、小さな二等辺三角形の断面形状を有する複数の凸条2sが排水溝2q,2qの全長に亘って平行に形成されている。
【0050】
一方、立ち上がり部3は、図10に示すように、上端部の幅が拡げられ、この拡幅された上端部の下部両側に水返し部3q,3qが形成されている。この水返し部3q,3qは、立ち上がり部3の垂直な両側面から左右両外側へ小さな曲率半径で凹湾曲しながら迫り出して形成されているが、図11に示すように、立ち上がり部3の上端部と下端部を除いた部分の両側面を曲率半径の大きい凹湾曲面3r,3rとして水返し部3q,3qを形成してもよい。なお、水返し部は凸湾曲させて形成してもよいが、水返しの効率を考慮すると、上記のように凹湾曲している水返し部の方が好ましい。
【0051】
図10に示す排水仕切部材1を、図1に示すように、バルコニーの床面5上に出幅d方向に設けることによって床面5を排水仕切部材1で区画し、閉ざされた区画領域CA内で植物に水やりをしたり床面を水掃除したりすると、区画領域CA外の床面へ流出しようとする排水が水平部2の土手状の溝縁2rを乗り越えて立ち上がり部3に当たり、水返し部3qでほぼ確実に排水溝2qに戻され、排水溝2qを流れてバルコニー前縁の凹溝5aに排出される。従って、排水が区画領域CA外の床面に流出するのを水返し部3qによってほぼ確実に防止することができる。
また、排水溝2qに戻された排水が溝縁2rを超えて区画領域CA内へ逆流しようとしても、溝縁2rの上部の小さな水返し部によって再び排水溝2qに戻されるので、排水の区画領域CA内への逆流も確実に防止することができる。しかも、溝縁2rの内側面は凹湾曲面とされているので、排水が排水溝2qをスムーズに流れ、清掃性も向上する。
そして、排水溝2qの底面には凸条2sが平行に形成されているので、溝縁2rを乗り越えた排水が排水溝2qを横切って立ち上がり部3に当たるときの水勢が凸条2sによって弱められ、また、バルコニー床面5の出幅d方向の流れ勾配が小さくても、凸条2sの整流作用によって排水が排水溝2q内を一層スムーズに流れてバルコニー前縁の凹溝5aに排出されるようになり、排水溝2qの清掃性も一層向上するようになる。
【0052】
また、図11に示すように立ち上がり部3の両側面を曲率半径の大きい凹湾曲面3r,3rとして水返し部3q,3qを形成したものは、土手状の溝縁2fを乗り越えて立ち上がり部3に当たる排水を、曲率半径の大きい凹湾曲面3rとした水返し部3qによって上向きに回転させながらスムーズに反転させて排水溝2qに戻すので、優れた水返し効果を発揮することができ、かつ、反転する排水で凹湾曲面3rが洗われるので汚れも付着し難くなる。
【0053】
排水溝2qの幅は15〜50mm程度とするのが適当であり、また、深さは1〜10mm程度とするのが適当である。この程度の幅と深さがあれば、立ち上がり部3に当たって戻された排水をスムーズに排出することができる。
【0054】
また、溝縁2rの高さ(溝底からの高さ)は4〜20mm程度することが好ましく、この程度の高さがあると、排水溝2qから区画領域CA内へ逆流しようとする排水を確実に排水溝2qへ戻すことができる。この溝縁2rの上部の水返し部は、立ち上がり部3に向かって4〜8mm程度迫り出すように斜め上方に真っ直ぐ又は湾曲させて形成することが好ましく、このようにすれば、優れた水返し効果を発揮することができる。
【0055】
なお、排水溝2q,2qと立ち上がり部3は接近していてもよいが、ある程度の間隔を設けることによって、排水の区画領域CA外への流出や逆流を一層起こし難くしたり、この間隔部分に凸条を設けて排水の流出や逆流をより一層起こし難くしてもよい。
【0056】
また、立ち上がり部3を水平部2から取り外した後は、図12に示すように、キャップ4の下面に形成した係合凸部4b又は嵌合凸部を、水平部2の上面に形成した係合溝2b又は嵌合溝に係合又は嵌合して、係合溝2b又は嵌合溝をキャップ4で塞ぎ、係合溝2b又は嵌合溝にゴミが入ったり、汚れたりしないようにすることが好ましい。このようにキャップ4を取付けても、全体の高さが低いので、歩行等の妨げになる心配は生じない。
【符号の説明】
【0057】
1 排水仕切部材
2 水平部
2b,2c,2d,2e,2k,2m,2n,2p 係合溝
2h,2i 嵌合溝
2f,2g 係合凸部
2j 嵌合凸部
2q 排水溝
2r 溝縁
2s 凸条
3 立ち上がり部
3b,3c,3d,3e 係合凸部
3f,3g 係合溝
3i 嵌合凸部
3q 水返し部
4 キャップ
5 床面
6 貼着剤
7 床材
8 床用接着剤
9 コーキング材
CA 区画領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12