【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係る回転機の構造について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、回転機1には、略円筒形状のステータ10と、このステータ10の内周側において回転自在に設けられるロータ20とが備えられており、ステータ10で作られる回転磁界によってロータ20が回転動作するようになっている。ステータ10は、当該ステータ10を覆うケーシング30に固定されており、ロータ20は、ケーシング30に回転自在に設けられたシャフト40に固定されている。
【0026】
ケーシング30は、ステータ10の外周側を覆う略円筒形状のフレーム31と、フレーム31の開口側すなわち軸方向両端側(
図1における右方側および左方側)を覆う略円盤形状のブラケット32,33とを有して成り、このケーシング30におけるフレーム31とブラケット32,33とによって形成される空間S
1に、ステータ10およびロータ20が収納されるようになっている。
【0027】
ブラケット32,33は、その軸方向内側(ブラケット32とブラケット33との間)に収納されるステータ10およびロータ20の軸方向両端部の形状に沿って、径方向外周側(
図1における上方側および下方側)の部分に対して径方向内周側(
図1における上下方向の中央側)の部分が軸方向内側へ窪むように、凹部32a,33aが形成されて成る。
【0028】
このように、ブラケット32,33がロータ20に対応する径方向内周側の部分よりもステータ10に対応する径方向外周側の部分が軸方向外側へ突出した形状であることにより、ロータ20の端部よりも軸方向外側へ突出するステータ10の端部(コイルエンド11)がケーシング30と干渉することなく、空間S
1に収納されるようになっている。
【0029】
凹部32a,33aには、その径方向中心部を軸方向(
図1における左右方向)に貫通する挿通穴32b,33bが形成されており、この挿通穴32b,33bには、シャフト40の端部が挿通されるようになっている。また、挿通穴32b,33bには、ベアリング50が取り付けられており、このベアリング50によって、シャフト40が円滑に回転動作されるようになっている。
【0030】
図示しない駆動部と連結される直結側(
図1における右方側)と反対の反直結側(
図1における左方側)に設置されるブラケット32には、凹部32aの外周側を囲んで軸方向へ突出する円環部34が一体的に形成されると共に、この円環部34の先端側(
図1における左方側)を塞ぐ第一リッド(端板、蓋部材)35が設けられている。これらケーシング30における凹部32aと円環部34と第一リッド35とによって形成される空間(電気室)S
2には、回転機1(シャフト40)の回転位相を検出するレゾルバやエンコーダ等の位置検出器(電気部品)60および当該位置検出器60と電気的に接続されるハーネス部材(電気部品)61が収納されるようになっている。
【0031】
位置検出器60は、シャフト40における一端側(反直結側)の端部に設けられる回転部60aと、この回転部60aと対向してケーシング30における一端側(反直結側)のブラケット32に設けられる固定部60bとから成り、シャフト40(回転機1)の回転位相を検出することができるものである。
図3に示すように、シャフト40の一端側(
図3における上方側)には、円筒形状の延長シャフト41がボルト42によって組み付けられており、位置検出器60の回転部60aは、シャフト40と延長シャフト41とで挟持されるようにしてシャフト40と一体に固定されている。一方、位置検出器60の固定部
60bは、ケーシング30の凹部32aに図示しない機械的締結手段によって固定されている。
【0032】
第一リッド35は、ケーシング30のブラケット32,33と同様に、径方向外周側(
図3における右方側および左方側)の部分に対して径方向内周側(
図3における左右方向の中央側)の部分が軸方向内側(
図3における下方側)へ窪むように、凹部35aが形成されて成る。このように、第一リッド35が径方向内周側の部分よりも径方向外周側の部分が軸方向外側へ突出した形状であることにより、ハーネス部材61が第一リッド35と干渉することなく、空間S
2に収納されるようになっている。
【0033】
第一リッド35の凹部35aには、その径方向中心部を軸方向(
図3における上下方向)に貫通する挿通穴35bが形成されており、この挿通穴35bには、シャフト40の一端部(延長シャフト41)が挿通されるようになっている。
【0034】
ケーシング30には、第一リッド35の凹部35aを塞ぐ第二リッド36が設けられている。これら第一リッド35の凹部35aと第二リッド36とによって形成される空間S
3には、シャフト40の端部(延長シャフト41)が位置すると共に、シャフト40に発生する軸電圧を除電するための軸接地装置70が収納されるようになっている。
【0035】
図2および
図4に示すように、軸接地装置70は、シャフト40に接触する軸接地ブラシ71と、この軸接地ブラシ71を保持する軸接地ブラケット72とを備えている。軸接地ブラケット72は、第一リッド35に図示しない機械的締結手段(ボルト等)によって固定するための取り付け部72aと、取り付け部72aからシャフト40(延長シャフト41)近傍まで延びる延材部72bと、延材部72bから略直角にロータ20側(
図4における下方側)へ折り曲げられてシャフト40(延長シャフト41)と略平行に延びるブラシ取り付け部72cと、ブラシ取り付け部72cの下端(
図4における下方側端部)から折り返される折り返し部72dとを有する。軸接地ブラシ71は、炭素を主原料とする炭素フィラメント(フィラメント材)の束であり、多数の炭素フィラメントが軸接地ブラケット72のブラシ取り付け部72cと折り返し部72dとによって挟持されて成る。
【0036】
第一リッド35の凹部35aには、軸接地装置70の取り付け部72aを取り付けるための台座部(台座)35cが設けられており、この台座部35cには、機械加工された取り付け座面35dおよび当て付け面(当接面)35eが形成されている。また、台座部35cには、図示しない位置決めピン(ピン部材)を挿入するためのピン穴35fが形成されており、軸接地ブラケット72の取り付け部72aには、ピン穴35fに対応するように、図示しない位置決めピンを挿入するためのピン穴72fが形成されている。
【0037】
よって、軸接地装置70は、取り付け部72aを台座部35cの取り付け座面35dに設置する際に、取り付け部72aの一端面72eを台座部35cの当て付け面35eに当て付けると共に、図示しない位置決めピンを取り付け部72aのピン穴72fおよび台座部35cのピン穴35fに挿入することにより、回転機1における軸接地装置70の位置決め、すなわち、シャフト40(延長シャフト41)に対する軸接地ブラシ71の位置決めがなされるようになっている。
【0038】
また、台座部35cには、図示しないボルトをねじ込むためのねじ穴35gが形成されており、軸接地ブラケット72の取り付け部72aには、台座部35cのねじ穴35gに対応するように、図示しないボルトを挿通するための挿通穴72gが形成されている。
【0039】
よって、軸接地装置70は、取り付け部72aを台座部35cの取り付け座面35dに設置する際に、上述の位置決めと共に、図示しないボルトを取り付け部72aの挿通穴72gに挿通して台座部35cのねじ穴35gにねじ込むことにより、第一リッド35に固定されるようになっている。
【0040】
このとき、軸接地装置70は、軸接地ブラシ71(炭素フィラメント)がシャフト40に略直交する方向(延長シャフト41の軸中心)を向くと共に、その先端部が延長シャフト41に当接するようになっている。先端部が延長シャフト41に略直交して当接するように軸接地ブラシ71を設けることにより、延長シャフト41すなわちロータ20の回転方向(
図2における右回転および左回転)によらずシャフト40に発生する軸電圧を確実にアース(接地)することができる。
【0041】
このように、取り付け部72aの一端面72eを台座部35cの当て付け面35eに当て付けると共に図示しない位置決めピンによって軸接地装置70の位置決めを行うことにより、軸接地装置70を容易かつ小さなスペースで第一リッド35に取り付けることができる。つまり、軸接地装置70を設置するためのスペース(空間S
3)を小さくすることができる。
【0042】
また、第一リッド35の挿通穴35bには、シール80が取り付けられており、このシール80によって、軸接地装置70が収納される空間S
3は、ステータ10およびロータ20が収納される空間S
1ならびに位置検出器60が収納される空間S
2と隔たれている。よって、軸接地装置70における軸接地ブラシ71の摩耗が、ステータ10、ロータ20および位置検出器60等に影響することはない。
【0043】
本実施例に係る回転機の動作について、
図1から
図4を参照して説明する。
【0044】
回転機1が駆動される、すなわち、ステータ10で作られる回転磁界によってロータ20が回転動作されると、シャフト40がロータ20と共に回転動作され、シャフト40の直結側に連結される図示しない駆動部が駆動される(
図1参照)。ここで、回転機1における磁気不平衡によって生ずる電磁誘導電圧や回転摩擦に起因する静電気電圧によって、シャフト40に軸電圧が発生する。
【0045】
このとき、軸接地装置70における軸接地ブラシ71は、シャフト40と連結された延長シャフト41と接しているので、シャフト40に生じた軸電圧は、延長シャフト41および軸接地装置70を介して除電される(
図2から
図4参照)。よって、回転機1においては、軸電圧に起因する軸受部(ベアリング50)での放電は起こらず、電食を生じることはない。
【0046】
軸接地ブラシ71と延長シャフト41との接触状態は、軸接地装置70の台座部35cへの設置(位置決め)、および、軸接地ブラシ71と軸接地ブラケット72との組み付け位置によって決められる。よって、軸接地ブラシ71を軸接地ブラケット72に組み付けた後に、
軸接地ブラケット72から突出する軸接地ブラシ71を所定の長さに切断すると共に、軸接地装置70を台座部35cにおける当て付け面35eとの当接および位置決めピンによって位置決めすることにより、軸接地ブラシ71と延長シャフト41との接触を所望の状態とすることができる。
【0047】
本実施例によれば、位置検出器60等を収容する空間S
2を形成する第一リッド35に
凹部35aを設けることにより、回転機1の大型化、すなわち、回転機1の軸方向への長尺化を伴うことなく、軸接地装置70を収容する空間S
3を形成することができ、軸接地装置70によってシャフト40(延長シャフト41)における軸電圧を除電することができる。
【0048】
よって、例えば、回転機1が新規に製作するものではなく、既設のものであった場合においても、回転機1周辺における取り付けスペースの有無に係わらず、軸接地装置70を追設することができる。つまり、位置検出器60等を収容する空間S
2を形成するもの(蓋部材)を、
凹部35aを有する第一リッド35に交換するだけで、回転機1の大型化、すなわち、回転機1の軸方向への長尺化を伴うことなく、軸接地装置70を収容する空間S
3を形成することができる。
【0049】
もちろん、本発明における端板は、本実施例のように位置検出器60等を収容する空間S
2を形成する第一リッド35に限定されない。本発明における端板として、例えば、位置検出器60以外の電気部品等を収納する空間を形成するリッド部材であっても良く、また、ケーシング30のブラケット32であっても良い。このように、本発明における端板を、ケーシング30のブラケット32とした場合には、ブラケット32に形成される凹部32aが、軸接地装置70を収納する空間となり、当該凹部32aに軸接地装置70を設置することとなる。