(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127474
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】インストルメントパネルのボトムカバー取付け構造
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20060101AFI20170508BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60R13/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-259705(P2012-259705)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104877(P2014-104877A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】高島 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠志
(72)【発明者】
【氏名】北川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 雅也
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−315077(JP,A)
【文献】
特開2006−205928(JP,A)
【文献】
特開2007−168492(JP,A)
【文献】
特開2003−306085(JP,A)
【文献】
特開2008−254482(JP,A)
【文献】
実開平06−033726(JP,U)
【文献】
特開2002−058145(JP,A)
【文献】
実開平04−055419(JP,U)
【文献】
実開平07−038711(JP,U)
【文献】
特開平10−153204(JP,A)
【文献】
特開平11−157365(JP,A)
【文献】
実開昭64−47456(JP,U)
【文献】
特開2011−252525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 13/01−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルにボトムカバーを取り付けるボトムカバー取付け構造において、
弾性変形することで前記ボトムカバーを前記インストルメントパネルに固定する爪部材と、
前記爪部材と一体的に形成され、前記インストルメントパネルにその一部が係脱可能な離脱防止部材とを備え、
前記爪部材は、前記ボトムカバーに形成された一辺側と、前記一辺側に対して間隔を空けて配置された他辺側と、前記一辺側と前記他辺側の端部を接続する曲がり部とによって構成され、前記他辺側は、前記曲がり部を起点として前記曲がり部と反対側の端部が前記一辺側に接近離間する方向に弾性変形可能に構成されていて、
前記離脱防止部材は、前記曲がり部から前記一辺側に向って突出し、その先端が一辺側よりも外方まで延在するように設けられ、前記爪部材が前記インストルメントパネルとの固定状態を占めるときには、前記インストルメントパネルに引っかかる係合可能位置にあり、前記爪部材が前記インストルメントパネルから離脱するよう前記他辺側を前記一辺側に接近する方向に弾性変形させたときには、前記インストルメントパネルとの係合可能位置より前記他辺側である係合離脱位置へと前記爪部材と一体的に移動することを特徴とするボトムカバー取付け構造。
【請求項2】
前記インストルメントパネルは、前記爪部材と前記離脱防止部材が挿入される取付穴を有し、
前記爪部材は、前記固定状態を占めるときに、前記取付穴の縁部に引っかかる係止部と、前記係止部を前記取付穴の縁部に引っかかる位置から引っかかりが解除される位置へと変位させるとともに前記離脱防止部材を前記係合離脱位置へと変位させる操作部と、前記爪部材を前記取付穴から斜め方向に離脱させるように案内する傾斜したガイド部を有し、
前記係止部、前記操作部及び前記ガイド部は、前記他辺側に形成されることを特徴とする請求項1記載のボトムカバー取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に配置されるインストルメントパネルへのボトムカバーの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内に配置されるインストルメントパネルの運転席側や助手席側の下部には、エンジンルーム等からインストルメントパネル内(車室内)に侵入した音を遮音する目的でボトムカバーが装着されている。ボトムカバーは、樹脂性の爪部材やクリップ、スクリュなどの固定部材を使用してインストルメントパネルの下部に取り付けられる。
一般にインストルメントパネルへのボトムカバーの取付けには、耐熱性、耐衝突性、耐衝撃性の耐久性の点からスクリュを用いるのが好ましい。しかし、作業スペースの制限からスクリュを締緩する工具を使用できない場合がある。そのため、樹脂爪やクリップを用いてインストルメントパネルにボトムカバーを取り付けることもあるが、脱落に対する信頼性は爪部材の変形等があるので、スクリュの場合よりも低くなってしまう。
そこで、樹脂爪やクリップの経年劣化や破損した場合でもボトムカバーがインストルメントパネルから外れないようにするために、離脱防止手段を設けているものがある。このような構成の先行技術としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−157365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
離脱防止手段としてフックを用いる場合、フック形状の突起部は脱落し難い形とするのが一般的である。そのため、必然的にインストルメントパネルへのボトムカバーの着脱時に組み外し難い形状となり、フックの折損も発生しやすくなる。
フックの折損を回避するためには、フックを直接、指や工具で押さえて外せる構造、目視作業できる作業穴の設定がボトムカバーあるいはインストルメントパネルに必要になる。しかし何れも作業性の悪化、作業スペースを要してしまうという課題がある。
本発明は、作業性やスペース効率に優れつつも、取付部位の破損時に確実に保持できるインストルメントパネルのボトムカバー取付け構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るインストルメントパネルにボトムカバーを取り付けるボトムカバー取付け構造は、弾性変形することでボトムカバーをインストルメントパネルに取り付ける爪部材と、爪部材と一体的に形成され、インストルメントパネルにその一部が係脱可能な離脱防止部材とを備え、
爪部材は、ボトムカバーに形成された一辺側と、一辺側に対して間隔を空けて配置された他辺側と、一辺側と他辺側の端部を接続する曲がり部とによって構成され、他辺側は、曲がり部を起点として曲がり部と反対側の端部が一辺側に接近離間する方向に弾性変形可能に構成されていて、離脱防止部材は、
曲がり部から一辺側に向って突出し、その先端が一辺側よりも外方まで延在するように設けられ、爪部材がインストルメントパネルとの取付け状態を占めるときには、インストルメントパネルに引っかかる係合可能位置にあり、爪部材がインストルメントパネルから離脱する
よう他辺側を一辺側に接近する方向に弾性変形
させたときには、インストルメントパネルとの係合可能位置
より他辺側である係合離脱位置へと爪部材と一体的に移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ボトムカバーをインストルメントパネルに取り付ける弾性変形可能な爪部材が、インストルメントパネルから離脱する方向に変形すると、爪部材と一体的に形成された離脱防止部材がインストルメントパネルの一部に爪部材の離脱箇所の近傍で引っかかるので、作業性がよく省スペース化を図れるとともに、取付部位が破損してもボトムカバーをインストルメントパネルに確実に保持することができる。また、ボトムカバーの離脱を防止できることから、離脱による不具合の発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るボトムカバー取付け構造が適用されたインストルメントパネルの概観図。
【
図2】ボトムカバー取付け構造の構成を示す分解斜視図。
【
図3】爪部材と離脱防止部材の構成を示す拡大斜視図。
【
図4】爪部材によってボトムカバーがインストルメントパネルに取り付けられた状態を示す拡大斜視図。
【
図5】(a)はボトムカバーがインストルメントパネルに取付けられた状態を示す断面図、(b)はボトムカバーが離脱防止部材によってインストルメントパネルに引っかかった状態を示す断面図。
【
図6】(a)はボトムカバーがインストルメントパネルに取付けられた状態を示す断面図、(b)は爪部材がインストルメントパネルから離脱する方向に弾性変形するように操作されたときの初期の状態を示す断面図、(c)は爪部材がインストルメントパネルから離脱した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、車室内のフロント側には、樹脂製のインストルメントパネル1が配置されている。インストルメントパネル1には、図示しないエンジンルーム等からインストルメントパネル1内(車室内)に侵入した音を遮音する目的でボトムカバー2が装着されている。
本形態において、運転席側に位置するボトムカバー2は、インストルメントパネル1の下部を構成する樹脂製のアンダーカバー3に取り付けられ、助手席側に位置するボトムカバー2はインストルメントパネル1の下部1Aに直接取り付けられている。運転席側と助手席側のボトムカバー2の形状は異なっているが、インストルメントパネル1に対する取付け構造は同一であるので、以下、運転席側のボトムカバー2に関して説明する。
【0009】
樹脂製のボトムカバー2には、
図2に示すように、その一端側2Aには取付け脚部20a、20bが形成されていて、その他端側2Bには取付部22が形成されている。取付け脚部20a、20bはダッシュパネル4に取り付けられ、取付部22はアンダーカバー3に形成された取付部30に着脱可能に取り付けられる。
【0010】
具体的に説明すると、ダッシュパネル4には、クリップ用のピン5a,5bがダッシュパネル4から車室内に向って突設されている。取付け脚部20a、20bには、樹脂製のピン5a,5bが挿通する孔21a、21bが形成されている。取付け脚部20a、20bは、それぞれ孔21a、21bにピン5a,5bを挿通し、クリップ6a、6bをピン5a,5bと孔21a、21bに挿入することで、ダッシュパネル4に取り付けられて固定される。
ボトムカバー2の取付部22には、樹脂製のクリップ7a、7bが挿入されるクリップ孔23a、23bが形成されている。アンダーカバー3の取付部30には、クリップ7a、7bが挿入されるクリップ孔31a、31bが形成されている。ボトムカバー2の取付部22は、アンダーカバー3の取付部30に接合され、クリップ7a、7bを、クリップ孔23a、23b及びクリップ孔31a、31bに挿入することで、ボトムカバー2がアンダーカバー3の下方から取り付けられて固定される。
【0011】
取付部22には
図3、
図4に示すように爪部材40が一体形成されている。取付部30には、
図4に示すように、爪部材40が挿入される取付穴32が形成されている。本形態において、爪部材40と取付穴32は、1つずつ形成されている。爪部材40は樹脂製で、アンダーカバー3にボトムカバー2を取り付けて保持するものである。
爪部材40は、
図3、
図5(a)、
図5(b)に示すように、その一辺側40Aがボトムカバー2と一体成形されていて、その他辺側40Bが一辺側40Aに対して間隔を空けて位置する逆U字形状とされている。他辺側40Bは曲がり部40Cを起点として一辺側40Aに接近/離間する方向に弾性変形するように構成されている。
爪部材40は、
図4、
図5に示すように取付穴32に挿入されて取付け状態を占めるときに、取付穴32の縁部32aに引っかかる係止部41を備えている。爪部材40は、係止部41を取付穴32の縁部32aに引っかかる位置から引っかかりが解除される位置へと変位させる操作部42と、爪部材40を取付穴32から斜め方向に離脱させるように案内する傾斜したガイド部43を備えている。これら係止部41、操作部42及びガイド部43は、弾性変形する他辺側40Bに形成されている。
【0012】
爪部材40には、
図3、
図4に示すように、インストルメントパネル1にその一部が係脱可能な離脱防止部材としてのフック50が一体成形されている。フック50の基端50aは爪部材40の曲がり部40Cから一辺側40Aに向って突出し、その先端50bが一辺側40Aよりも外方まで延在している。フック50の先端50bは、爪部材40がインストルメントパネル1の取付穴32に挿入されて固定状態を占めるときには、縁部32aの反対側に位置する取付穴32の縁部32bに引っかかる係合可能位置にある。フック50の先端50bは、爪部材40が取付穴32から離脱する方向に操作部42によって弾性変形するように操作されたときには、取付穴32の縁部32bとの係合可能位置から係合離脱位置へと爪部材40と一体的に移動するように形成されている。
【0013】
アンダーカバー3は、
図5(a)、
図5(b)に示すように、取付部30の近傍に段差部33が形成されている。取付穴32は、この段差部33にアンダーカバー3を貫通して形成されている。取付穴32の長さLは、爪部材40が
図5(a)に示すように変形前の状態の時には、係止部41とフック50の先端50bがそれぞれ取付穴32の縁部32aと縁部32bに引っかかる長さとされている。爪部材40は、
図6(b)に示すように操作部42により他辺側40Bを一辺側40A側に近接する方向に撓ませた状態で、図中斜め下方にボトムカバー2を移動させたときに、取付穴32から離脱するように構成されている。
【0014】
本形態において、係止部41が引っかかる取付穴32の縁部32aは、フック50の先端50bが引っかかる取付穴32の縁部32bよりも高い位置に形成される。また、フック50は、係止部41よりも高い位置で爪部材40と一体化されている。このため、係止部41が取付穴32の縁部32aに引っかかり、ボトムカバー2がアンダーカバー3に取り付けられて保持されている場合、フック50は、取付穴32の縁部32bよりも上方に位置している。
【0015】
このような構成のボトムカバー取付け構造における固定時とフェイルセーフ時について
図5を用いて説明する。
図5(a)はアンダーカバー3にボトムカバー2が取り付けられた状態を示し、
図5(b)はフェイルセーフ時の状態を示す。
ボトムカバー2は、
図2で説明したようにアンダーカバー3とダッシュパネル4にそれぞれクリップ6a、6b、クリップ7a、7bによって取り付けられて固定されている。このとき爪部材40は、その係止部41が取付穴32の縁部32aに引っかかっている。この状態でクリップ6a、6bやクリップ7a、7bが経年劣化や破損、アンダーカバー3の位置がずれて係止部41と縁部32aとの引っかかりが解除されると、ボトムカバー2は図中下方に自重で落下する。
【0016】
しかし、爪部材40は弾性変形していないので、フック50の先端50bが取付穴32の縁部32bに引っかかり、ボトムカバー2は
図5(b)に示すように、アンダーカバー3に吊り下げられた状態で保持される。このため、取付部位が破損した場合でも確実にボトムカバー2を保持することができる。また、アンダーカバー3からボトムカバー2の離脱を防止できることから、離脱したボトムカバー2が乗員に当たることや、アクセルペダルやブレーキペダルの操作を阻害するという不具合の発生も防止することができる。さらに、フック50が爪部材40の離脱箇所の近傍で取付穴32の縁部32bに引っかかるので、省スペースとなるとともに目視用の開口を設ける必要も無く、作業性も向上する。
【0017】
次に、
図6を用いてボトムカバー2の離脱と、組付け時の儀装について説明する。
図6(a)に示す、爪部材40の係止部41が取付穴32の縁部32aは引っかかる取付け状態を占めるとき、ボトムカバー2はアンダーカバー3に取付られて保持されている。この状態から、メンテナンス時などにボトムカバー2をアンダーカバー3から取り外すには、まず
図2に示したクリップ6a、6b、クリップ7a、7bを取り外し、爪部材40の操作部42を一端側40A側に撓ませるように操作して弾性変形させる。すなわち、爪部材40がアンダーカバー3から離脱する方向に弾性変形するように操作する。
すると、
図6(b)に示すように、係止部41と取付穴32の縁部32aとの引っかかりが解除されるとともに、フック50が取付穴32の縁部32b(アンダーカバー3)との係合可能位置から係合離脱位置へと爪部材40と一体的に移動する。そして爪部材の傾斜したガイド部43を取付穴32の端部32cに当接させる。
そして、
図6(c)に示すように、ガイド部43に沿ってボトムカバー2を図中右斜め方向に下降させると、爪部材40全体が取付穴32から離脱する。そしてボトムカバー2をアンダーカバー3から取り外すことができる。
【0018】
一方、アンダーカバー3にボトムカバー2を装着するには、
図6(c)に示すように、爪部材40の操作部42を一端側40A側に撓ませるように操作して弾性変形させる。この状態から
図6(b)に示すように、フック50と爪部材40を取付穴32内に挿入し、爪部材40の傾斜したガイド部43を取付穴32の端部32cに当接させて持ち上げる。すると、
図6(a)に示すように、爪部材40は、左斜め上方に案内されつつ移動する。そして、操作部42の一端側40A側への弾性変形を解除するすると、爪部材40の係止部41が取付穴32の縁部32aは引っかかる方向に復元して、ボトムカバー2がアンダーカバー3に仮止めされた状態で保持される。
【0019】
あるいは、
図6(b)に示すように、フック50と爪部材40を取付穴32内に挿入し、爪部材40の挿入を推し進める前に、
図5(b)に示すように、予めフック50を取付穴32の縁部32bに引っ掛けることもできる。
図5(b)に示すフック50が取付穴32の縁部32bに引っ掛けた状態において、操作部42の変形を解除し、ボトムカバー2を持ち上げる。すると、爪部材40の傾斜したガイド部43が取付穴32の端部32cに当接し、爪部材40の上昇に伴い操作部42が弾性変形する。そして、爪部材40の係止部41が取付穴32を通過すると、係止部41が取付穴32の縁部32aは引っかかる方向に操作部42が復元してボトムカバー2がアンダーカバー3に仮止めされた状態で保持される。
このため、
図2に示したクリップ6a、6bやクリップ7a、7bでアンダーカバー3やダッシュパネル4にボトムカバー2を取り付ける際に、作業者がボトムカバー2を保持しなくて良く、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0020】
1 インストルメントパネル
2 ボトムカバー
32 取付穴
40 爪部材
41 係止部
42 操作部
43 ガイド部
50 離脱防止部材(フック)